JP5350416B2 - 炭化タングステンを生成する方法 - Google Patents

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Description

本発明は金属含有材料の高温冶金処理に関し、好適な実施形態では、2段階の高温冶金処理を使用した炭化タングステンの生成に関する。
炭化タングステン(WC)を製造するための2段階的方法は周知である。例えば、1968年3月12日発行の、ゴームズ等による「母岩含有珪酸塩相から金属含有ハロゲン化物相を分離し、ハロゲン化物相の電解により金属を得る方法」と題する米国特許第3,373,097号においては、炭化タングステンを製造する方法が開示されている。その方法は塩化ナトリウム(NaCl)を使用した溶融相の分離に関し、その方法ではタングステンが低密度の上方のハロゲン化物相に伝わり、一方、カルシウム、マンガン及び鉄等の不純物がより密度の高い下方の珪酸塩相に回収される。その分離は、ハロゲン化物塩、灰重石(CaWO)または鉄マンガン重石(Fe, Mn)WO4)のいずれかの精鉱、及び珪酸ナトリウムなどのスラグフォーマの混合物を900℃から1,100℃まで加熱することによって有効化される。高められた温度で15分から1時間経過した後に相分離が完了し、ハロゲン化物相が溶融塩電解による処理のためにデカントされる。
1984年12月18日発行のゴームズ等による「ガススパージングによる溶融タングステン酸塩−ハロゲン化物相からのモノ炭化タングステンの生成」と題する米国特許第4,489,044号であって、1988年2月23日に再発行された再発行特許32,612は、炭化タングステンの製造方法を開示している。その方法は上記の方法に類似しており、溶融相分離による塩化ナトリウム/タングステン酸ナトリウム(NaWO)相の生成に関連している。モノ炭化タングステンは塩化ナトリウム及びタングステン酸ナトリウムの溶融物を炭化水素ガスによって、特には、メタン(CH)あるいは天然ガスによってスパージングすることによって製造される。開示によれば、他のアルカリハロゲン化物が塩化ナトリウムに対して置換可能である。
1985年5月、スペインのマドリッドにおける第3回タングステンシンポジウム(1985年5月13日から17日)において、ゴームズ、ラダッツ及びカラナハンは灰重石または鉄マンガン重石の精鉱から直接、粉末状炭化タングステンを製造する2段階技術に関する発表を行った。精鉱はまず1,050℃で塩化ナトリウム/メタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3)溶融物と反応させられた。その反応により、2つの非混和性の液体、すなわち、投入タングステンの99パーセントを含有するタングステン酸塩−ハロゲン化物(NaCl−NaWO)相、及び、鉄酸化物、マンガン酸化物及びカルシウム酸化物の90から96パーセントを含有する濃縮珪酸塩スラグ相が製造される。相分離の後、タングステン酸塩−ハロゲン化物相は第2工程においてメタンガスによってスパージングされ、粉末状の炭化タングステンが得られる。炭化タングステンは過剰の塩のデカント、冷却、水浸出及びスクレーピングによって反応器から回収される。ジャーナル オブ メタルズ 1985年12月号、29−32頁のゴームズ等による「タングステン酸溶融物のガススパージングによる炭化タングステンの調製」を参照されたい。
上述したすべての方法は最初にスラッギング操作を含み、その操作では、タングステン精鉱が珪質フラックス及び塩化ナトリウム(他のハロゲン化物源が置き換え可能である)と組み合わされる。精鉱に含まれるタングステン化合物(例えば、タングステン酸カルシウム、タングステン酸鉄、又はタングステン酸マンガン)は塩化ナトリウム及び珪酸ナトリウムと反応して、2つの非混和性の相、すなわち、溶融塩及び溶融珪酸塩スラグを生成する。タングステンは優先的に溶融塩相に伝わり、一方、大半の不純物はスラグ相に対して戻される。粘性スラグは塩よりも高密度であり、るつぼ炉の底部に沈殿する。塩の相は、主に塩化ナトリウム及びタングステン酸ナトリウムからなっており、炭化タングステンを製造するための第2段階に送られる。
上記の方法に付随する問題は、低密度のタングステン含有相がハロゲン化物相(例えば、塩化ナトリウム)をも含んでいることである。引き続くスパージング操作の間、このハロゲン化物塩は揮発し、かつ、ガス取り扱いシステムの各種の部品内に堆積する。この塩の付着は、障害物を除去するために、故障時間をしばしば誘発する。塩化ナトリウムはまた、操作コストを象徴する。更に、塩化ナトリウムは極めて腐食性が高く、その存在により、耐食性の材料を使用する必要が生じるため、材料のコストが増加し、その結果、腐食による操作コストが高まる。更に、塩化ナトリウムはスパージング操作中にタングステン酸ナトリウムを希釈し、タングステン酸化物(WO3)の化学活性を効果的に低減させる。
高温冶金処理を使用して金属含有鉱物から金属炭化物(例えば、炭化タングステン)を生成する方法を提供することには利点がある。また、融解金属ハロゲン化物塩を生成する必要なく、金属(例えば、タングステン)炭化物を生成することには利点がある。系中に投入された多くのタングステンを変換して炭化タングステンを得る方法を提供することには利点がある。炭化タングステンが系における長期の故障時間をもたらすことなく有効に且つ経済的に生成される方法を提供することには利点がある。
本発明の一実施形態によれば、高温冶金操作を使用することにより、金属含有材料中の金属を濃縮するための方法が提供される。高温冶金操作には、金属含有材料が少なくともナトリウム化合物又はカリウム化合物の一方の存在下で加熱され、高密度の金属含有相及び低密度のスラグ相を生成する加熱工程が含まれる。多くの金属は高密度の金属含有相に伝わる。2つの相は非混和性であり、高密度の金属含有相は低密度のスラグ相から重力によって分離している。その高い密度ゆえに、高密度の金属含有相はるつぼ炉の底部に沈殿する。2つの相はその後に分離可能である。好ましくは、高密度の金属含有相は第2の高温冶金操作に供され、すなわち、炭素含有ガスによるスパージングに供され、金属炭化物を生成する。
本発明の方法は特にはタングステン含有金属に応用可能であることが見出されているが、その方法は金属含有材料から他の金属を回収するのに使用可能である。そのような他の金属の例には、III-B族の金属(例えば、トリウム)、IV-B族の金属(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム)、V-B族の金属(例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル)、VI-B族の金属(例えば、タングステン)及びVII-B族の金属(例えば、マンガン及びレニウム)がある。より好ましくは、タングステン、チタン及びタンタル等の耐熱性金属である。最も好ましくは、タングステン含有材料である。タングステン含有材料の例には、マンガン重石(MnWO4)、灰重石(CaWO4)、鉄重石(FeWO4)及び鉄マンガン重石((Fe,Mn)WO4)等のタングステン鉱石が含まれる。また、本発明の方法は煙塵や各種の二次材料(例えば、スラグ及びスクラップ)等の他のタングステン含有材料についても効果的であり得る。本発明の方法は多くの材料に関して有用ではあるが、明確にするために、以下に、タングステン含有材料を使用した好適な実施形態について記載する。上述したような他の材料が使用可能であることについては、明白に理解されるべきである。
本発明の他の実施形態によれば、炭化タングステンはタングステン鉱石の精鉱から生成される。タングステン鉱石の精鉱は、第1の溶融物を得るために、ナトリウム化合物又はカリウム化合物の存在下で、約900℃から約1,200℃までの温度で加熱される。第1の溶融物はそれが高密度のタングステン含有相と低密度のスラグ相とに分離するまでその温度に保たれる。高密度タングステン含有相はその後に低密度スラグ相から分離される。高密度タングステン含有相は、第2の溶融物を得るため、約1,050℃から約1,200℃の温度まで加熱される。その後、メタンガスは炭化タングステンを生成するために第2の溶融物にスパージングされる。第2の溶融物の炭化タングステン濃縮部分が取り除かれて、精製された炭化タングステンを得るために精製される。好ましくは、第1の溶融物は塩化ナトリウムの実質的な不在下で生成される。好適な実施形態では、高密度タングステン含有相の低密度スラグ相からの分離を助けるため、及びスパージング段階において炭化タングステンに変換されていないタングステンを再循環するために、スパージングされて消費された塩含有材料の一部が第2の溶融物から第1の溶融物へ再循環される。
本発明の方法の一実施形態におけるフローダイヤグラムである。 1,200℃におけるWO3-Na2O-SiO2系の3成分相図である。 本発明の実施形態に基づく試験的な規模のスラッギング装置を示す。 本発明の実施形態に基づく試験的な規模のスパージング装置を示す。
本発明の一実施形態に従って、タングステン含有物質から、例えば、タングステン酸ナトリウムあるいはタングステン酸カリウム、そして好ましくはタングステン酸ナトリウムのようなタングステン酸塩を形成するための高温冶金処理法が提供される。好ましくは、タングステン酸含有物質は、例えば、マンガン重石(MnWO)、灰重石(CaWO)、鉄重石(FeWO)及び鉄マンガン重石((Fe,Mn)WO)のようなタングステン鉱石、あるいは煙じん及び種々の二次的物質(例えば、スラグ及びスクラップ)のようなタングステン含有物質である。高温冶金スラッギング処理法は、スラグ形成ケイ酸塩(シリカ及びアルカリ金属ケイ酸塩が好ましい)の存在下においてタングステン含有物質を加熱する工程を含む。溶融物は混和不能な二相に分離され、一方は、好ましくはタングステン酸ナトリウムあるいはタングステン酸カリウムである、より高密度のタングステン含有相であり、他方はより低密度のスラグ相である。
本発明の別の実施形態に従って、タングステン含有物質から炭化タングステンを形成するための方法が提供される。好ましくは、同方法は二つの高温冶金処理工程、即ち、第一のスラッギング工程及び第二のスパージング工程を含む。
図1は、本発明の好ましい実施形態の流れ図を示す。タングステン含有精鉱12はシリカ14及びケイ酸ナトリウム16とともに、スラッギング用炉18へ導入される。スラッギング用炉18は、約900℃〜約1200℃、好ましくは約1050℃〜約1150℃、より好ましくは約1050℃の温度にて、約0.5〜2.0時間加熱される。供給物質は、2つの混和不能な相に分離する。より高密度のタングステン含有相(タングステン酸塩)20は、重力によって炉のるつぼの底部に沈降し、より低密度のスラグ相(ケイ酸塩)22は、炉のるつぼの上部に分離される。より高密度のタングステン含有相20はスパージング用炉24に導入される。より低密度のスラグ相22は、廃棄されるか、あるいは更なる処理を施される。より高密度のタングステン含有相20は任意の適切な方法によってより低密度のスラグ相22から分離され得る。例えば、より高密度の相20及びより低密度の相22は、その後、傾斜する、あるいは回転する炉の開口から、例えばトリベのような分離した適切な容器中へ注入される。これに代えて、より高密度のタングステン含有相20を排出するための排出口をるつぼに設けることもできる。スラッギング用炉18からのガス26は、微粒子制御28工程にて処理される。回収された微粒子状物質30は、スラッギング用炉18にて再使用され得、処理されたガス32は大気中へ放出され得る。
より高密度のタングステン含有相20は、スパージング用炉24へ導入される。より高密度のタングステン含有相20は、約1050℃〜約1200℃、好ましくは約1050℃〜約1150℃、より好ましくは約1100℃の温度にて加熱される。例えばメタンのような、炭素含有ガス34はスパージング用炉24へ導入される。炭素含有ガス34はスパージング用炉の温度にて熱分解され、炭化タングステンの形状にて炭素が得られる。スパージング用炉24からのガス36は、例えば、空気40及びメタン42のような炭化水素等の酸素含有ガスを加えてアフター・バーナー38にて処理される。アフター・バーナーガス44は微粒子制御46工程を施される。回収された微粒子状物質48はスラッギング用炉18にて再使用され、処理されたガス50は大気中へ放出される。スパージングされた廃塩51はスラッギング用炉18にて再使用される。
スパージング工程24により、粗炭化タングステン生成物52が得られ、同生成物52は灰色の焼結物に類似する。粗炭化タングステン生成物52は、水55を加えた後、水浸出工程54にて処理され、その後固/液分離工程56にて処理される。液体部分58は晶出装置60に供給され、結晶62はスパージング用炉24にて再使用され得る。固体の粗炭化タングステン結晶64は水68にて粉砕66されるとともに、適切な酸72(例えば、塩酸)を用いて酸浸出処理70される。好ましい実施形態において、粉砕66及び酸浸出70は単一の工程にて実施される。粉砕66は好ましくは、炭化タングステン粉砕媒体を用いてボールミルにて行われる。粗炭化タングステン結晶64は、最初に、塩酸72の希釈水溶液68中にてスラリー状とし、粉砕66は、不純物を遊離し、かつ可溶化するのに十分な時間まで続けられる。粉砕され、酸浸出された懸濁物74は固/液分離工程76にて処理される。固体状の高純度炭化タングステン78は、少なくとも90%の炭化タングステン、より好ましくは少なくとも95%の炭化タングステン、より好ましくは少なくとも99%の炭化タングステンの純度レベルを有すると好ましい。液体80は固体物質84の中和及び沈澱工程82にて処理される。固体沈澱物84は、乾燥後、スラッギング用炉18にて再使用される。
第一の高温冶金処理において、タングステン精鉱及びケイ質フラックスの混合物からなる炉への装入物は、約1050℃にて処理される。精鉱中に含まれるタングステン化合物(例えば、カルシウム、鉄あるいはマンガンのタングステン酸塩)は、ケイ質フラックス(好ましくはケイ酸ナトリウムあるいはシリカ)と反応させ、2つの混和不能な相:溶融塩と溶融ケイ酸塩スラグを生成する。タングステンは優先的に溶融塩相中に分別され、一方、不純物の大部分はスラグ中に排出される。塩はスラグより密度が高く、炉のるつぼの底部に沈降する。主としてタングステン酸ナトリウムから構成される塩の相は、高温冶金処理の第二の工程、即ち、スパージング工程へと送られる。
実施例に使用される精鉱は、一次タングステン鉱としてマンガン重石(MnWO)を含有する。混合装入物が上述の方法にて処理されると、以下に示す化学反応が起こる:
MnWO4(c)+NaSiO3(c)=MnO・SiO2(l)+NaWO4(l)
塩相及びスラグ相の選別は、図2に示す酸化タングステン−酸化ナトリウム−シリカの系内に存在する混和不能な領域の利用によって予測される。タングステン精鉱は1050℃にて溶融し始めると、ケイ酸ナトリウムと反応し、タングステン酸ナトリウムとスラグを生成する。この温度では、スラグとタングステン酸塩は混和せず、重力により分離する。
スラグの詳細な化学的性質は系における過剰のシリカと酸化ナトリウムとの相対的な量に依存する。酸化ナトリウムは望ましいスラグ構成成分である。その理由は、酸化ナトリウムが存在することによってスラグの融点が下がり、完全に液相が形成されるからである。スラグの融点を下げるのに効果的な酸化ナトリウムあるいはその他のフラックス化合物が存在しない場合には、約1250℃以下の温度では、酸化マンガン−シリカの系では液体状のスラグは形成されない。
スラッギング装置の例を図3に示す。ガス注入装置を除いては、スパージング工程(以下に示す)にて有効であるものと基本的には同一の形状の炉がスラッギング工程においても使用され得る。スラッギング工程は、単に溶融と分離操作のみであり、ガスランスあるいは窒素パージラインを必要としない。
第二の高温冶金処理は、溶融塩相内の炭化タングステンの結晶化に有効である。この工程は、第一工程からのタングステン生成溶融塩を約1080〜1100℃の範囲内において加熱した後、メタンあるいはプロパンのような、化学量論的に大過剰の炭化水素ガスにてスパージングすることにより達成される。これらの条件において、炭化水素ガスは熱分解し、炭化タングステンを形成するのに必要とされる、還元剤及び炭素源が供給される。炭化タングステン相は微細結晶として形成され、同結晶は溶融塩相には不溶である。結晶は塩よりも密度が高く、反応器の底部付近に分別される。スパージングオペレーションの最終段階では、廃塩は結晶から分取される。
メタンが炭化水素源として使用される場合、炭化タングステン(WC)生成物の形成を導くための化学反応は全体として以下のように進む:
4CH4(g)+NaWO4(l)=WC(s)+3CO(g)+8H2(g)+Na(l)
大過剰の化学量論的炭化水素ガスが必要とされるので、過剰なガスの一部が熱分解され、炭素及び水素ガスを生成し、以下に示す反応が進む:
CH4(g)=C(s)+2H2(g)
水素ガス及び過剰の炭素原子はアフター・バーナーで酸化される。しかしながら、一部の炭素は不純物として塩相内に残る。従って、スパージング炉内における過剰炭素の生成は最小限であることが望ましい。
プロパンあるいはエチレン(C)のようなその他の炭化水素ガスをメタンに代えて使用することもできる。例えば、エチレンの使用により、スパージング効果が高められる(即ち、溶融物に加えられる炭素のユニット当たりの炭化タングステンの収率が増大する)。
自由流動性の廃塩相を分別後、得られた炭化タングステン結晶は灰色の焼結された外観を呈する分離した相に含まれる。灰色の物質は、適切な量の塩を保持する。塩及びその他の不純物は乾燥工程及び/あるいは湿式粉砕及びそれに続く塩酸、苛性及び水による浸出工程にて除去される。この処理の後、得られた結晶からは約99.3〜99.4%の炭化タングステンが定量される。しかしながら、予備テストにて生成された炭化タングステンは実質的にはより高い不純物濃度であった。このように不純物(主としてクロム及びニッケル)濃度が増大したことは、反応るつぼの融解塩の化学的熱分解に起因すると考えられる。
スラッギング(図3)及びスパージング(図4)に使用される適切な装置の例は、頂部に覆いを備えた傾注炉110を含み、同炉110は、2つのスパージングランス112,114、2つの熱電対116,118、1つの専用窒素ライン120、1つの排気ライン122及び1つの圧力ゲージ124のための空間を備える。主要部は、12.9kWの耐熱性の炉110である。炉110は、長さ0.914メートル、直径12.7センチメートルの高温領域を有し、約1200℃の最大オペレーション温度が可能となる。炉のシェル内には、処理反応容器、即ちるつぼ126が直径10.2センチメートルのインコネル600(Inconel 600)の管より構成されており、最大の浴槽の深さは約45.7センチメートルである。るつぼ126は、洗浄及びメンテナンスのために、蝶番で止められたシェル分割型の炉を開くことにより、取り外しできる。
同様の炉は、スラッギング(図3)及びスパージング(図4)に使用され得る。スラッギングあるいはスパージングオペレーションのいずれにおいても、最初の装入物は、通常冷却した炉126中に加えられ、浴槽の温度を所望の値に昇温するために炉110に電力が加えられる。次の装入は高温の炉110内に行われる。溶融生成物の除去を容易にするために、炉110は、生成物をトリベへ注入するために、垂直な動作位置から完全に180°傾斜させる。
ガススパージングモード(図4)におけるオペレーションのために、施設は窒素127でるつぼ126をパージするとともに、溶融浴槽をメタン、プロパン、エチレンあるいはこれら炭化水素源のガスの混合物128でスパージングできるようにデザインされている。反応器の蓋には、7つのアクセス用ポートが配置されている。それらのポートのうちの2つは、スパージングオペレーション時においてガスランス112,114に使用される。炭化水素ガス128は、ランスのうちの一方112からるつぼ126へ注入され、他方のランス114は、第1のランス112が閉塞された場合に備えて保持される。ランス112,114は、比較的速い流速を与えるために比較的小さな内径(例えば、0.14センチメートル)を有することが好ましく、それにより、ランス112,114における熱分解が最小限に留められる。流入された炭化水素ガス126は、るつぼ126の底部より約5センチメートル上の地点にて、溶融物中へ直接注入される。各スパージングテスト時において、窒素120は又、第3の注入ポートを介して、反応器の蓋より約2.5センチメートル下方にある位置に注入され得る。専用の窒素ランス120は、空気がるつぼ126内に流入することを防ぐために、(容器内の)空間高さ内における正圧を確実にする。流入ガスの全ての流れは流量計130,132,134にて制御される。その他の3つの蓋部ポートは熱電対ウェルとして使用され、メイン(中央)ポート122は処理ガスの排出路として使用される。
装置をデザインする上における第一の問題は、熱分解によって形成される、あるいはアフター・バーナー136におけるスパージング反応の生成物として存在する発生する水素の効果的な輸送方法を確実にすることである。好ましくは、一実施形態において、炉110内の圧力は、反応ガスの流れを吸引ドラフトでバランスをとることにより、最初は水柱で0.25〜0.50ミリメートルに調整される。次いで、専用の窒素ランス120の流れを調節することにより、圧力を水柱で2.5〜5.0ミリメートルまで増大させる。このランス120の先端は、るつぼ126の先端からわずか約5センチメートルの位置に配置され、それにより、ドラフトの大部分が、反応生成物のガスを吸引するが、窒素を吸引しないように使用されることを明記したい。このようにして、大部分の窒素は頂部の覆いから流入し、るつぼ126の頂部は不活性の気体にて維持され、空気が炉110の内部にある生成ガスと接触することを阻止する。反応生成物であるガスはアフター・バーナー136に導入され、HO及びCOに燃焼される。キャリーオーバーの塩はバッグハウス138あるいはスクラバ140にて回収され得る。アフター・バーナー136の排出気体は、バッグハウス138あるいはスクラバ140に到達する前に、空気にて120℃に冷却142され得る。バッグハウス138が使用される場合、ガスはスクラビング装置を通過した後に大気中へ放出され得る。図4に示す実施形態において、アフター・バーナー136の排出気体はスクラバ140を通過し、一方、バッグハウス138は炉110から放出される可能性のある逃避性排出物を処理するために使用される。
処理したガスは、ガス処理装置に通ずる単一の排出ポート122を介してるつぼ126から排出する。ガスは、直径5センチメートルの管を介して直径20.3センチメートル、長さ55.9センチメートル、ステンレススチール製の天然ガスを燃焼したアフター・バーナー136に直接供給される。アフター・バーナー136は、テストの実施される間、点火した状態に保たれた圧力点火バ−ナ−とともに作動するようにデザインされる。酸素144は、発生した水素、残りの炭化水素ガス及び排出ガス流に混入された炭素微粒子を燃焼するために、制御された速度にてアフタ−・バ−ナ−136中に供給される。アフタ−・バ−ナ−136からの排出後、ガスはボ−ルバルブ146(装置のガス圧プロファイルのバランスを保持するために使用される)を通過して、スクラバ140へと流入する。
スクラバ140は、208リットルのポリマー製のドラムとポリ塩化ビニル(PVC)の配管から構成される。スクラバは、約114リットルの水で満たされており、アフター・バーナー装入ガスがリザーバ中にてバブリングされ、ガス流に含まれる可溶性の物質が濃縮除去される。アフター・バーナー排出ガスは、スクラバ140に流入する前に、空気による希釈142および外部冷却コイルシステム148にて冷却される。ガスは直径25センチメートルの送風機150にてスクラバ装置中から吸引される。送風機150から排出するガスは、大気中へ放出される。
外部バッグハウス138及び送風機アセンブリは、るつぼの蓋からの逃避性の排出物を回収するために設定される。バッグハウス138は、各々の直径が約10.2センチメートルである2つの流入ホースが装着されており、同ホースはるつぼの蓋の近くに配置される。従って、逃避性の排出物はバッグハウス138中に吸引され、ろ過された後に大気中へと放出される。
装置全体の複数の重要地点にて温度が監視される。値は、2つの分離した蓋部のポートを介して配置されている熱電対116,118によって測定される。一方の熱電対116によりガス注入地点付近の溶融物の温度が測定され、他方の熱電対118によりるつぼ126中の溶融物の上方にある上部空間、即ち空間高さの温度が監視される。
実施例及び比較テスト
以下の実施例に使用されたタングステン精鉱のサンプルは、市販品を入手した。817kgのサンプルは2つのライニングされていない30ガロン金属製ドラムにて梱包されていた。両方のドラムの内容物はテストを開始する前に完全に混合された。サンプルの約半分はプラスチックでライニングされた55ガロンのドラムにて保存された。サンプルの残りの半量を、約45Kgのロットに分割した。サブサンプルは、混合操作の効果を確認するための比較分析をするためにロットの中から3つを取り出した。控えのサンプルは確認分析用にインベントリに確保された。混合されたマスターサンプルは種々のテストに使用するまで密封された容器中に保存された。
タングステン精鉱の3つのサブサンプルは、その鉱物学的特性及び化学組成の概略を得るために、X線回析(XRD)、X線蛍光分析(XRF)及び発光分光分析のような半定量分析法によって最初にスクリーニングした。次いで、このスクリーニングによって検出された全ての主要成分及び微量成分が、湿式定量分析化学、原子吸光分析(AA)及び誘導結合プラズマ原子分光分析(IPC)を含むより正確な技術によって分析された。ある場合では、複数の分析技術を使用して、精鉱サンプルの化学組成を確認した。化学分析に加えて、タングステン精鉱サンプルの特性には、制限された程度の物理的特性も含まれる。
比較テストA,B及びC
A,B及びCと特定された3つの比較スラッギングテストが5kWの誘導炉装置にて実施された。精鉱サンプルのマンガン重鉱の鉱物学的特性を考慮して、テストはMnO−Na0−SiO系スラグの性質の予備的指標を得るために実施された。装入物の成分は、種々の含量の精鉱、塩化ナトリウム及びスラグ形成体であるケイ酸ナトリウム及びシリカを含んでいた。これらは表Iに示された各々の装入組成に従って加えられた。
これらの実験中に、過剰の塩ヒュームが時として認められ、塩の薄層がベル型誘導炉格納容器のドームの内面上に濃縮されていた。
Figure 0005350416
スラグ及び塩生成物の目視による検査では、相分離に関する問題はなかった。3つのスラグサンプルはガラス質状の外観を呈し、テストAの淡緑色からテストCのエメラルドグリーンまで緑色に着色されていた。最初のテストでは、塩化ナトリウムの大部分は蒸発して、スラグ表面上に暗色の固体として堆積されていた。他の2つのテストでは、各表面のハロゲン化物相は黄色を帯びたオフホワイトを呈した。各テストにて生成されたスラグ及びハロゲン化物相のサンプルは回収され、XRF分析がなされたが、テストAから回収されたハロゲン化物相の量はXRF分析を実施するには不十分であった。
表IIに要約されたXRFのデータから、3つのテストのうちの2つに発生したスラグ及びハロゲン化物相間のタングステンの好ましい分割が示唆される。テストA及びCにおいて生成したスラグサンプルの酸化タングステン(WO)濃度は、それぞれ0.5及び0.7%であったのに対し、Bのスラグの酸化タングステン濃度は1.8%であった。
Figure 0005350416
表IIIに示すように、テストB及びCからのハロゲン化物相サンプルは、主として塩素、ナトリウム及びタングステンから構成されていた。XRF分析のデータに従うと、テストB及びCからのハロゲン化物相サンプルは、それぞれ39及び40%の酸化タングステンを含んでいた。鉄及びマンガンの濃度は、両ハロゲン化物相サンプルにおいて、いずれも0.1%以下であった。その他いくらかの元素も痕跡程度のレベルで検出された。
Figure 0005350416
例1
タングステン酸ナトリウムの生成
例1は、装入物中に塩化ナトリウムが存在しない場合における分離したタングステン酸ナトリウム相を形成する可能性を示すために実施された。テストを成功させるために、タングステン酸ナトリウム及びスラグは、着目すべき温度において混和不能な液体として存在している必要がある。このテストは、5kWの誘導炉において実施された。装入物の組成を表IVに示す。
Figure 0005350416
テスト生成物を目視にて検査したところ、タングステン酸ナトリウム及びスラグの二つの際だった相の形成が認められた。スラグ相は暗緑色の外観を呈し、るつぼの頂部に存在するのに対し、タングステン酸ナトリウム相はオフホワイトを呈し、同るつぼの底部に存在する。タングステン酸ナトリウム相がるつぼの底部に存在するという事実は、同相がより高密度を有すると共により低密度のスラグ相とは混和しないことに起因する。
例1は容易に実施され、相分離も優れていた。この実験の生成物は、2つの生成物相間のそれぞれのタングステン及びマンガンの分配を決定するために分析された。表Vに示すように、例1の分析結果からスラグ及び塩相間のタングステンとマンガンの良好な分配の可能性が確認された。これらの結果から判断すると、精鉱から塩化ナトリウム非存在下においてタングステン酸ナトリウムとしてタングステンを分離することは、有効的な代替方法であるといえる。
Figure 0005350416
比較テストD,E,F,G
装入物内におけるマンガンの珪酸ナトリウムに対する比の変化
比較テストDの目的はマンガンの珪酸ナトリウムに対する高い比、即ち高いMn:Na2SiO3比が、スラグ相及び塩相の間におけるタングステン及びマンガンの分布に与える影響を評価することにある。任意の学説に固執することは望まない。しかし、ナトリウムの特定のレベルをシステム内において維持することは重要と考えられる。スラグ組成を独立変数として扱う複数のテストでは、塩相及びスラグ相の間におけるマンガンの分布はスラグ内の酸化マンガンのレベルが増大するに従って悪影響を受ける。装入物内におけるマンガンの珪酸ナトリウムに対するモル比が1を越えた際、この問題は顕著になる。前記の現象は以下の反応、即ち、
MnWO4(s) + Na2SiO3(s)= MnO・SiO2(l)+ Na2WO4(l)
を完結するための十分な量のナトリウムが存在しないことにより発生すると考えられる。
フラックス消費を低減するために1より大きいMn:Na2SiO3モル比を望む場合、タングステン酸ナトリウムの生成量を最大限にし、かつ塩相内への未反応タングステン酸マンガンの溶解を最小限に抑制するために別のナトリウム源が必要になる。この例で使用する別のナトリウム源は表VIの組成に基づく水酸化ナトリウム(NaOH)である。
Figure 0005350416
明確に識別し得る2つの相が本テストでも形成された。しかし、スラグの外観は前の実験で確認されたスラグの外観とは異なる。本テストにおけるスラグは砂状の外観を呈している。そして、顕微鏡(30倍)で観察した際、同スラグは異なる複数の相の形成と、装入物の不完全な融解とを示す。ハロゲン化物相は前の複数のテストにおけるハロゲン化物相と同じ外観を呈している。表7に示す分析結果が証明するように、水酸化ナトリウムの使用はタングステン及びマンガンの不満足な分布をスラグ相及び塩相の両方において示した。
炉へ装入する装入物内のMn:Na2SiO3比の変化の影響を更に探り、かつ別のナトリウム源及びシリカ源の使用を研究すべく、3つの別の誘導炉テストを実施した。テストEの目的は1のMn:Na2SiO3モル比を備えたスラグ組成がハロゲン化物相及びスラグ相の間におけるタングステン及びマンガンの分布に与える影響を研究することにある。表VIIに示すように、スラグ内におけるタングステンの0.55%の濃度と、ハロゲン化物内におけるマンガンの0.14%の濃度とは、スラグ内における1以下のMn:Na2SiO3モル比を実現するフラックス消費の減少が可能であって、かつ追求する価値があることを示す。
テストFでは、別のナトリウム源として水酸化ナトリウムを使用する代わりに炭酸ナトリウム(Na2CO3)を使用した点を除いてテストDと同じ条件下でマンガン:珪素の比を1.35まで増大させることを試みた。本テストの目的は、別のナトリウム源の選択がタングステン及びマンガンの分布に大きな影響を与えるか否かを決定することにある。表VIIに示すように、スラグ内の1.08%のタングステン濃度をテストDにおける3.9%と比較した際、別のナトリウム源がハロゲン化物相内のタングステンの分布に影響を及ぼし得ることがわかる。
テストGにおける目的は、メタ珪酸ナトリウムのための更に安価な別の原料を代用する試みにおいて、唯一のナトリウム源及びシリカ源としてのシリカ及び炭酸ナトリウムの使用の可能性を研究することにある。表VIIに示すように、スラグ内における0.13%タングステン濃度と、ハロゲン化物内における0.03%マンガン濃度とは原料の代用が可能なことを示す。
Figure 0005350416
例2
例2において、塩化ナトリウムは装入物に全く含まれていない。スラグ組成は混合不能な2つの液体の形成を保証すべく選択されている。混合不能な2つの相の形成と、塩及びスラグ内におけるタングステン及びマンガンの効果的な分布の形成とは例1の結果から予測できる。
表8は例2に関する物質収支を示す。この例に関する最終物質収量(Mass closure)は96.8%である。タングステン物質収支は装入されたタングステンの92.9%がハロゲン化物相に含まれ、さらにタングステンの3.3%がスラグに含まれることを示す。装入物に含まれるタングステンの3.8%のみが不明であった。
Figure 0005350416
分析データから算出された例2のタングステン分布は、装入したタングステンの約97%がタングステン酸塩相内に分離され、差がスラグに含まれることを示す。塩化ナトリウムを含まない状態において効果的なスラッギング・オペレーションが可能な一方で、当業者が過度の実験を行うことなくタングステン分布を改善できることを前記の結果は示す。スラグを炉から流出させる間に塩が炉壁から離間し、かつスラグに同伴することが、例2のスラグ中における比較的高いタングステン濃度の実現に貢献したと考えられる。
オペレーションにおいて、タングステン酸ナトリウム相はリアクタ内においてスラグの下側に分離されている(塩の密度がスラグより大きいことに起因する)。しかし、タングステン酸ナトリウムの更に小さい粘度と、リアクタのジオメトリとにより同タングステン酸ナトリウムは炉から最初に流出する。塩に同伴したスラグの量は僅かであり、同スラグは塩がトリベ内において固化する前に表面に浮かぶ。
例3
スラッギング・オペレーションに対するスパージングされた廃塩のリサイクリング
この例はスパージング・ユニット・オペレーションからスラッギング・ユニット・オペレーションへの廃塩のリサイクリングの効果を示すことを意図している。このリサイクリングの実施は2つの点で望ましい。第1に、スパージング工程中に炭化タングステンに変換されなかった測定可能濃度のタングステン(約15重量%)を廃塩が常には含む点が挙げられる。塩をスラッギング・オペレーションへ戻すことは、タングステンをプロセッシング・サーキット内に維持し、かつオペレーション全体におけるタングステン回収率の経済的なレベルを達成するのに効果的である。第2に、スパージングされた塩に含まれる酸化ナトリウムをタングステン酸ナトリウム生成におけるナトリウム源としてスラッギング・オペレーション中に使用できる点が挙げられる。従って、廃塩のリサイクリングにより、原料の消費量を低減し得る。この例は廃塩のリサイクリングが塩相及びスラグ相の間におけるタングステンの分布に影響を及ぼすか否かを決定することを意図している。
この例は連続して実施される3つの装入サイクルを含む。サイクル1装入物はスパージング・オペレーションからリサイクルされた塩を含まない一般的なスラッギング・オペレーション装入物である。そして、同装入物は26.3%のマンガン酸重石精鉱と、24.7%のメタ珪酸ナトリウム(NaSiO)と、8.4%のシリカ(SiO)と、40.6%の塩化ナトリウム(NaCl)とからなる混合物5kgによって構成されている。サイクル2装入物は1kgの廃塩(前に実施したスパージング・テスト中に形成された廃塩)と、サイクル1に使用したものと同一の複数の成分(サイクル1の複数の成分と同一の割合で混合)4kgとからなる。サイクル3装入物は廃塩2kgと、サイクル1に使用した複数の成分(同じく、サイクル1の割合で混合)4kgとを含む。
各テスト・サイクルの始めにおいて、装入材料を一緒に混合し、次いで炉内に装入し、さらには1,050℃の公称温度で1時間処理した。次いで、炉を傾斜させ、かつ溶融物をトリベ内へ流出させることによって溶融塩を除去した。除去された溶融塩はトリベ内で固化する。炉を垂直オペレーション位置へ戻し、次の装入物を使用してプロセスを繰り返した。スラグ相は3つのサイクルが全て完了するまで除去しなかった。次いで、スラグを炉からトリベ内へ流出させ、かつ固化させた。スラグのサンプルと、3つの塩生成物のサンプルとを準備し、かつ化学分析を行った。
表IXはスラグ及び塩生成物の分析結果の要約を示す。測定された生成物重量と、関連するタングステン分析とに基づいて算出した結果は、タングステンの約99.1%が塩に含まれることを示す。サイクル1、サイクル2及びサイクル3から得られた塩の分析の比較結果は不純物の好ましい低い濃度を全ての3つのサイクルにおいて示す。
Figure 0005350416
例4及び例5
炭化タングステンを生成するためのタングステン酸ナトリウムのスパージング
適切な高い純度の炭化タングステンはタングステン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムの溶融混合物をメタンでスパージングすることによって得られる。その一方、塩化ナトリウムをオペレーションから排除することは幾つかの点においてプロセスを改善する。従って、2つの別例は融解したタングステン酸ナトリウムをメタン・ガスでスパージングすることにより、結晶質炭化タングステン・パウダーを生成できるか否かを示すべく提供する。
各例において、初期溶融物は前に実施したスラッギング・テストにおいて形成されたタングステン酸ナトリウムからなる。これらの例の実施中、メタン・ガスを約11.4リットル/分の流速でタングステン酸ナトリウム浴槽の表面の下側において同浴槽中へ注入し、さらには同タングステン酸ナトリウム浴槽を約1,100℃に維持した。メタン・スパージングは例4において3時間継続し、例5において90分間継続した。各例の最後において、溶融生成物を鋼鉄製トリベ内へ流出させ、かつ固化させた。
生成物が固化し、かつ十分に冷えた後、2つの分離した相、即ち、白色“廃灰分(Spent ash)”と、更に高い密度を有する中灰色相(Medium gray phase)とが確認された。2つの相を分離し、かつX線回折(以下、XRDと称する)分析を実施すべく準備した。例4から得られた生成物は冷却後に更に容易、かつきれいに分離できる。このため、同生成物をXRD分析に使用すべく選択した。白色廃灰分のXRD分析は同白色廃灰分が未反応のタングステン酸ナトリウム(Na2WO4)によって主に構成され、かつ僅かな濃度の別の未確認結晶質相を含むことを示した。高い密度を有する灰色相はタングステン酸ナトリウムと、同タングステン酸ナトリウムより濃度の低い炭化タングステン(WC)及び炭化二タングステン(WC)と、微量濃度の金属タングステンと、白色塩中に生成されたものと同じ微量濃度の未確認結晶質相とを含む。
当業者はプロセスを更に最適化し得る一方、X線回折の結果は炭化タングステンをメタン・スパージング法を通じて形成し得ることを示す。
以上、本発明の各種の実施の形態について詳述したが、同実施の形態の変更及び適合が可能なことは当業者にとって明らかである。但し、同変更及び適合は請求の範囲に開示する本発明の範囲に含まれる。
タングステン含有精鉱 12
シリカ 14
ケイ酸塩 16
スラッギング用炉 18
タングステン酸塩 20
スラグ 22
スパージング用炉 24
スラッギング炉用ガス 26
微粒子制御 28
微粒子 30
処理されたガス 32
炭素含有ガス 34
スパージング炉用ガス 36
アフター・バーナー 38
酸素含有ガス 40
メタン 42
アフター・バーナーガス 44
微粒子制御 46
微粒子 48
処理されたガス50
スパージングされた廃塩 51
粗炭化タングステン生成物 52
水浸出工程 54
水 55
固/液分離 56
液体部分 58
晶出装置 60
結晶 62
固体の粗炭化タングステン結晶 64
粉砕 66
水 68
酸浸出 70
酸 72
粉砕及び酸浸出された懸濁物 74
固/液分離 76
高純度の炭化タングステン 78
液体 80
中和及び沈澱 82
固体沈澱物 84
傾注炉 110
スパージング用ランス112,114
熱電対 116,118
窒素ライン 120
排出ライン 122
圧力ゲージ 124
るつぼ 126
窒素 127
炭化水素ガス 128
流量計 130,132,134
アフター・バーナー 136
バッグハウス 138
スクラバ 140
冷却空気取入口 142
酸素 144
バルブ 146
冷却コイルシステム 148
送風機 150

Claims (14)

  1. 炭化タングステンを生成する方法であって、
    (a)ハロゲン化物塩の不在下において、タングステン酸化物の塩を、その溶融温度よりも高い温度まで加熱して溶融物を形成する工程と、
    (b)前記溶融物に炭化水素ガスをスパージングして炭化タングステン及び溶融塩相を形成する工程と、
    (c)前記溶融塩相から炭化タングステンを分離する工程と
    を有する方法。
  2. 前記炭化タングステンは前記溶融塩相に不溶である請求項1に記載の方法。
  3. 前記タングステン酸化物の塩はタングステン酸塩を含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記タングステン酸化物の塩はタングステン酸ナトリウムまたはタングステン酸カリウムを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記タングステン酸化物の塩はタングステン酸化物の塩を含む溶融物を形成するのに十分な時間にわたり加熱される請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記工程(a)はアルカリ金属化合物の存在下で実施される請求項1〜のいずれか一に記載の方法。
  7. 前記アルカリ金属化合物は、
    i)ナトリウム化合物及びカリウム化合物からなる群、
    ii)珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びそれらの混合物からなる群、または
    iii)シリカ(SiO)とともに用いられ、かつ、少なくとも珪酸ナトリウム(NaSiO)または炭酸ナトリウム(NaCO)を含むナトリウム化合物
    から選択される、請求項に記載の方法。
  8. 前記工程(a)はシリカ(SiO)の存在下において実施される請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記工程(a)は900℃〜1200℃で実施される請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記工程(b)は1050℃〜1200℃で実施され、かつ前記工程(b)は廃塩の形成を含む請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
  11. (d)精製された炭化タングステンを形成するために、前記工程(c)において分離された炭化タングステンを精製する工程を更に有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 精製された炭化タングステンは少なくとも90%の純度を有する請求項11に記載の方法。
  13. 前記工程(a)は、溶融物が高密度相及び低密度相を形成するように十分に加熱する工程を更に有し、タングステンの大部分が前記高密度相に移動する請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記低密度相は、珪酸マンガン、珪酸鉄、及び珪酸アルミニウムのうちの一つを含む珪酸塩を含有し、かつ、前記高密度相を注ぎ出すことによって前記高密度相が前記低密度相から分離される請求項13に記載の方法。
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