JP5350365B2 - 発光素子及び表示パネル - Google Patents

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Description

本発明は、一対の電極の間に与えた印加電圧に応じて発光層を発光させる発光素子等に関する。
近年、フラットパネルディスプレイの1つとして有機エレクトロルミネッセンス(以下「EL」と省略する)現象を利用して画像を表示する有機ELディスプレイの開発が盛んに行われている。
有機ELディスプレイは、有機電界発光素子の発光現象を利用して画像を表示する自発光型のディスプレイであるため、視野角が広く消費電力が小さく、かつ軽量で薄く構成することができる点が特徴である。有機電界発光素子は、2つの電極の間に有機半導体層が形成されており、この有機半導体層の一部には発光層が形成されている(特許文献1参照)。
従来の有機ELディスプレイでは、各有機電界発光素子の内部において発光層が生成した光は、基板や有機半導体層内においてその層が延びる方向(横方向)に光導波しており、その割合は約80%にも到達する。そのため従来の有機電界発光素子は、有機ディスプレイの正面方向への光取り出し効率は一般的に20%程度に留まっており光取り出し効率が悪く、輝度を上げることが困難であった。
このため、有機半導体層内に、発光層からの光取り出し効率を向上させるべく機能層(以下「光取り出し向上層」と称する)を設けた有機電界発光素子が従来より知られている(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。この従来技術では、Agを少なくとも成分の一部として含有する光取り出し向上層を透明電極に接して形成した構成が開示されている。
特開2007−12369号公報 特開2008−28371号公報(表6、第2図) 特開2008−59905号公報(第2図)
上述の特許文献2及び3に記載の従来技術には、Agを少なくとも成分の一部として含有する光取り出し向上層を透明電極に接して形成した構成が開示されているが、この場合、透明電極の屈折率nの値は約2.0以上と大きく、光は屈折率nが高い方向に導波する性質を有するため、発光強度の利得が少なくなる。特に、透明電極とAg層との屈折率差が大きいため、上記導波特性は顕著に発生すると考えられる。
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、透明又は半透明な第1電極と、前記第1電極と対をなす光を反射する第2電極と、前記第1電極から取り出されたホールと、前記第2電極から取り出された電子との再結合によって発光する光電変換層を備える有機半導体層とを有し、前記有機半導体層は、前記第1電極と前記光電変換層との間に、銀又は金を少なくとも成分の一部として含有するとともに部分的に光を反射しかつ透過性を有する光取り出し向上層と、前記第1電極上に形成されており前記第1電極からホールを取り出し易くするホール注入層と、前記ホール注入層によって取り出されたホールを前記光電変換層に輸送するホール輸送層と、前記第2電極から電子を取り出し易くする電子注入層と、前記電子注入層によって取り出された電子を前記光電変換層に輸送する電子輸送層とを有し、前記光取り出し向上層は、前記ホール注入層と前記ホール輸送層との間に形成され、その界面には光を散乱可能となるよう中心平均荒さRaで10nm以下の表面荒さが形成されている。
上記課題を解決するために、請求項8記載の発明は、透明又は半透明な第1電極と、前記第1電極と対をなす光を反射する第2電極と、前記第1電極から取り出されたホールと、前記第2電極から取り出された電子との再結合によって発光する光電変換層を備える有機半導体層とを有し、前記有機半導体層が、前記第1電極と前記光電変換層との間に、銀又は金を少なくとも成分の一部として含有するとともに部分的に光を反射しかつ透過性を有する光取り出し向上層と、前記第1電極上に形成されており前記第1電極からホールを取り出し易くするホール注入層と、前記ホール注入層によって取り出されたホールを前記光電変換層に輸送するホール輸送層と、前記第2電極から電子を取り出し易くする電子注入層と、前記電子注入層によって取り出された電子を前記光電変換層に輸送する電子輸送層とを有し、前記光取り出し向上層は、前記ホール注入層と前記ホール輸送層との間に形成され、その界面には光を散乱可能となるよう中心平均荒さRaで10nm以下の表面荒さが形成されている、発光素子によって各画素が構成されている。
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態としての発光素子が表示パネルの有機電界発光素子3に適用された場合の一例を示す部分断面図である。なお各層の厚さは説明の都合上簡素化しているが、これに限られない。
有機電界発光素子3は有機半導体素子の一例であり、例えば赤色、緑色及び青色に対応させて各々形成される。図示の有機電界発光素子3は1画素を構成している。
有機電界発光素子3は、例えばボトムエミッション型の有機電界発光素子であり、例えば赤色、緑色及び青色の各画素に対応させて各々形成される。有機電界発光素子3は、ガラス基板45上に、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52が順次積層された構造となっている。なお有機電界発光素子3は、発光層49内に電荷及び励起子を各々閉じ込めるための電荷及び励起子拡散層が積層された構造を採用しても良い。
陽極46上には、隣り合う有機電界発光素子3間に、1画素の発光エリアを限定するための発光エリア限定層54が形成されている。この発光エリア限定層54は、絶縁材料で構成されている。
ガラス基板45は、透明、半透明又は不透明な材質によって構成されている。陽極46は第1電極に相当し、ガラス基板45に沿って覆うように形成されている。この陽極46は、後述する発光層49に対してホールを供給する機能を有する。陽極46は、本実施形態では、主としてITO(Indium Tin Oxide)を材質とした金属電極であるものとする。なお、これ以外にも、例えばAu、Ag、Cu又はIZO(Indium Zinc Oxide)を材質としても良く、それらの合金も採用することができる。またその他にも陽極46は、Al、Mo、Ti、Mg又はPtなどを採用することができる。
ホール注入層47は、この陽極46からホールを取り出し易くする機能を有する。このホール注入層47は、例えば、正孔注入層としては、特に限定はないが、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類および無金属フタロシアニン類、カーボン膜、ポリアニリン等の導電性ポリマーを好適に採用することができる。上記ホール輸送層48は、ホール注入層47によって陽極46から取り出されたホールを発光層49に輸送する機能を有する。このホール輸送層48は、例えば、正孔輸送性を有する有機化合物として、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾール、1,1−ビス(4−ジ−p−トリアミノフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノ−ビフェニル、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノ−ビフェニルN−フェニルカルバゾール、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]p−ターフェニル、4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ナフタレン、4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニル−アミノ]p−ターフェニル、4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル、2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン、2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン、2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン、4.4’’−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]ターフェニル、4.4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)フェニル]アミノ}ビフェニル、4,4’−ビス[N−フェニル−N−(2−ピレニル)−アミノ]ビフェニル、2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]フルオレン、4,4’’−ビス(N,N−ジ−p−トリルアミノ)ターフェニル、ビス(N−1−ナフチル)(N−2−ナフチル)アミン等が挙げられる。また、このホール輸送材質はホール注入層を兼ねる事ができる材質でもある。
光取り出し向上層99は、ホール注入層47とホール輸送層48との間に形成されている。光取り出し向上層99は、例えば銀又は金を少なくとも成分の一部として含有するとともに部分的に光を反射しかつ透過性を有する。この光取り出し向上層99の詳細については後述する。
ホール輸送層48は、ホール注入層47と発光層49の間に形成されており、その材質であるNPBがホール移動度を持つホール輸送性の材料として一般的であるが、本実施形態では発光効率向上又は発光効率低下抑止層という機能を発揮する。
上記発光層49は光電変換層に相当し、例えば有機物を材質としており、電界発光現象、つまり、いわゆるエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)現象を使った発光素子である。この発光層49は、複数の電極46,52の間のいずれかに積層されており、印加電圧によって複数の電極46,52の間に生じた電界によって発光する機能を有する。この発光層49は、その外部から電界を用いて受け取ったエネルギーに基づく光を放出する現象を利用し、自ら光を出力する。
電子輸送層50は、発光層49と電子注入層51との間に形成されている。電子輸送層50は、電子注入層51によって陰極52から取り出された電子を効率的に発光層49に輸送する。例えば、発光層49や電子輸送性有機半導体層の主成分の電子輸送性を有する有機化合物としては、p−テルフェニルやクアテルフェニル等の多環化合物およびそれらの誘導体、ナフタレン、テトラセン、ピレン、コロネン、クリセン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ナフタセン、フェナントレン等の縮合多環炭化水素化合物及びそれらの誘導体、フェナントロリン、バソフェナントロリン、フェナントリジン、アクリジン、キノリン、キノキサリン、フェナジン等の縮合複素環化合物およびそれらの誘導体や、フルオロセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体等を挙げることができる。金属キレート錯体化合物、特に金属キレート化オキサノイド化合物では、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス[ベンゾ(f)−8−キノリノラト]亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム等の8−キノリノラト或いはその誘導体を配位子として少なくとも一つ有する金属錯体も挙げることができる。
また、電子輸送性を有する有機化合物として、オキサジアゾール類、トリアジン類、スチルベン誘導体およびジスチリルアリーレン誘導体、スチリル誘導体、ジオレフィン誘導体も好適に使用され得る。
さらに、電子輸送性を有する有機化合物として使用できる有機化合物として、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアゾール、4,4’−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4’−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]スチルベン、2,5−ビス(5.7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス[5−(α,α−ジメチルベンジル)−2−ベンゾオキサゾリル]チオフェン、2,5−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−{2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル}ベンゾオキサゾール、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト(1,2−d)オキサゾール等のベンゾオキサゾール系、2,2’−(p−フェニレンジピニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、2−{2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル}ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等も挙げられる。
さらに、電子輸送性を有する有機化合物として、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等も挙げられる。
また、さらに、電子輸送性を有する有機化合物として、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等が挙げられる。
その他、さらに、電子輸送性を有する有機化合物として、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4’−フェニレンジメチリディン、2,5−キシリレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジメチリディン、4,4’−(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4’−(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、従来有機EL素子の作製に使用されている公知のものを適宜用いることができる。
発光層49上には電子注入層51が積層されている。この電子注入層51は、その陰極52から電子を取り出し易くする機能を有する。この電子注入層51上には陰極52が形成されている。なお、この電子注入層51はバッファー層や陰極52としての機能を含んでいても良い。この有機電界発光素子3は、陽極46と陰極52との間の印加電圧に応じた電界により発光層49が光を出力する。
本実施形態のように有機電界発光素子3が、例えばボトムエミッションタイプである場合、この発光層49は、主として下方に光L(外部光)を放射するが、実際上においては一例として右側に示したように意図しない方向にも光Lを放射してしまう。有機電界発光素子3は、上述した光取り出し向上層99が存在しない構成である場合、発光層49が放射した一部の光Lは、外部光として有機電界発光素子3の外部に取り出されることなく、有機電界発光素子3内において消失してしまいがちである。本実施形態では、このように発光層49が放出した光Lのうち外部光として取り出すことができない光を「内部光」と呼ぶ。
図2は、図1に示す有機電界発光素子3内における光路の一例を示す断面のイメージ図である。なお図示の各層の間には隙間が存在しているが、これは図面の見やすさを考慮し、設けたものであるため、実際には存在していない。また請求項の有機半導体層とは、例えばホール注入層47、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50及び電子注入層51のいずれか又はこれらいずれかの組み合わせを表している。
この有機半導体層においては、その一部、例えば上述した光取り出し向上層99に、金属、例えば銀又は銀の合金を含有させている。つまり光取り出し向上層99は、例えば銀或いは銀の合金又は粒子を含んでいる。この光取り出し向上層99は、その他にも、例えば銀又は銀の合金の薄膜であっても良い。なおこのような金属としては銀に限られず、その代わりに、例えば金を採用しても良い。
有機電界発光素子3は、発光層49は、ホールと電子の再結合によって陽極46、陰極52及び発光層49に沿った方向を含め様々な方向に光を出力する。ここで、一般的な構成を採用した有機電界発光素子を例示した場合、当該一般的な有機電界発送素子においては、電子注入層51、電子輸送層50、発光層49、ホール輸送層48及びホール注入層47などの有機半導体中の横方向への光伝搬は発光量の約40%と云われている。ここでいう横方向とは発光層49に沿った方向に相当する。発光層49では発光点49aにおいて次のような光が生成される。
<第1発光>
第1発光は、左側に例示しているように通常の発光を表している。陽極46側への発光線Lは、透過性を有する光取り出し向上層99及び陽極46を透過して有機電界発光素子3の外部に出力される。ここでいう発光線Lは、上述した光Lに相当する。一方、陰極52側への発光線Lは陰極52で反射され、発光層49、光取り出し向上層99及び陽極46を透過して有機電界発光素子3の外部に出力される。
<第2発光>
第2発光は、中央に図示しているようにマイクロキャビティ効果や多重反射干渉効果を利用した発光を表している。第2発光では上述した第1発光とは異なる点のみを説明する。第2発光では、陽極46側への発光線Lがホール輸送層48にて反射し陰極52側に戻り、この陰極52が反射して再度陽極46へ向かって有機電界発光素子3の外部に出力される。
<第3発光>
第3発光は、ここで、陽極46側への発光線Lのうち発光層49にやや沿った方向への発光線Lは、一般的な構成を採用した従来の有機電界発光素子の内部で消滅しがちであったが、この有機電界発光素子3は、上記光取り出し向上層99の表面荒さに応じて発光線Lが散乱されて、陽極46から有機電界発光素子3の外部に出力される。有機電界発光素子3は、発光層49に備えられた光取り出し向上層99によって光取り出し効率が向上するため、全体として発光量が増大する。このとき各層の屈折率が上述のように設定されていると、横方向への光伝搬を抑制し、さらに光取り出し効率を向上することができる。
<光取り出し効率の検証>
図3は、本実施形態による効果を検証するための第1の比較例としての光取り出し効率の一例を示す図である。この第1の比較例では光取り出し向上層99が設けられていない。
図3に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/トリフェニルアミン誘導体層(32nm)/NPB(38nm)/Alq(60nm)/LiO/Alであるものとする。なおこの場合において、Alqは電子輸送性の発光層であり、発光層49と電子輸送層50とを兼ねるものである(以下においても同様)。また、かっこ内の数値は各層の膜厚を表している。
また各層の屈折率nは、ホール注入層47が1.7〜1.8であり、発光層49が1.7〜1.8であり、ホール輸送層48が1.7〜1.8である。この比較例では、駆動電圧Vは4.50[V]であり、輝度Lは274[cd/m]であり、電流効率ELは3.7[cd/A]である。
図4は、本実施形態による効果を検証するための第2の比較例としての光取り出し効率の一例を示す図である。この第2の比較例ではホール注入層47及び光取り出し向上層99が設けられていない。
図4に示す一例においては、陽極46、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/NPB(42nm)/Alq(60nm)/LiO/Alであるものとする。なお、かっこ内の数値は各層の膜厚を表している。この第2の比較例では、駆動電圧Vは4.9[V]であり、輝度Lは312[cd/m]であり、電流効率ELは4.2[cd/A]である。
図5は、光取り出し向上層99の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。
図5に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/トリフェニルアミン誘導体層(32nm)/Ag(Xnm)/MoO(3nm)/NPB(42nm)/Alq(60nm)/LiO/Alであるものとする。なおこの場合において、MoOは、上述した図2に示す積層構成では特に示さなかったが、光取り出し向上層99であるAgに接して設けられ、光取り出し向上層99と隣接するその他の有機半導体層47〜51等との電荷注入壁の増大、素子の駆動電圧の上昇等を回避する機能を有する機能層である(以下においても同様)。また、かっこ内の数値は各層の膜厚を表している。
また各層の屈折率nは、ホール注入層47が1.7〜1.8であり、光取り出し向上層99が約0.2であり、発光層49が1.7〜1.8であり、ホール輸送層48が1.7〜1.8である。本実施形態における検証例における電流密度は、例えば7.5[mA/cm]としている。
光取り出し向上層99の厚さが例えば15nmである場合、駆動電圧Vは5.27[V]であり、輝度Lは580[cd/m]であり、電流効率ELは7.7[cd/A]である。この検証例では、光取り出し向上層99の厚さが15[nm]のときに光取り出し効率が最大となっている。このようにすると、第1の比較例及び第2の比較例と比べて光取り出し効率を向上させることができている。
図6は、光取り出し向上層99の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。
図6に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/40%−MoO:トリフェニルアミン誘導体混合層(32nm)/Ag(Xnm)/MoO(3nm)/NPB(42nm)/Alq(60nm)/LiO/Alであるものとする。ここで「40%−MoO:トリフェニルアミン誘導体混合層」とは、TPT−1(トリフェニルアミン誘導体)に40%MoOを混合させた層を示している。なお、かっこ内の数値は各層の膜厚を表している。
また各層の屈折率nは、ホール注入層47が2.0より大きく、光取り出し向上層99が約0.2であり、発光層49が1.7〜1.8であり、ホール輸送層48が1.7〜1.8である。なお電子注入層51、電子輸送層50、発光層49、ホール輸送層48及びホール注入層47などの有機半導体層は、全てできる限り屈折率nが低いことが好ましい。
光取り出し向上層99の厚さが例えば15nmである場合、駆動電圧Vは5.10[V]であり、輝度Lは503[cd/m]であり、電流効率ELは6.7[cd/A]である。この検証例では、光取り出し向上層99の厚さが15[nm]のときに光取り出し効率が最大となっている。このようにすると、第1の比較例及び第2の比較例と比べて光取り出し効率を向上させることができている。
図7は、光取り出し向上層99の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。
図7に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/トリフェニルアミン誘導体層(32nm)/Au(Xnm)/MoO(3nm)/NPB(42nm)/Alq(60nm)/LiO/Alであるものとする。なお、かっこ内の数値は各層の膜厚を表している。
また各層の屈折率nは、ホール注入層47が1.7〜1.8であり、光取り出し向上層99が約0.6であり、発光層49が1.7〜1.8であり、ホール輸送層48が1.7〜1.8である。この例では既に説明した例と比べて、光取り出し向上層99の反射率が低下しているとともに屈折率が低下している。
光取り出し向上層99の厚さが例えば15nmである場合、駆動電圧Vは5.29[V]であり、輝度Lは361[cd/m]であり、電流効率ELは4.9[cd/A]である。この検証例では、光取り出し向上層99の厚さが20[nm]のときに光取り出し効率が最大となっている。このようにすると、第1の比較例及び第2の比較例と比べて光取り出し効率を向上させることができている。
図8は、光取り出し向上層99の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。
図8に示す一例においては、上述した図2に示す積層構成に加え、光取り出し向上層99とホール輸送層48との間に第2のホール注入層を設けている。すなわち、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、第2のホール注入層、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/トリフェニルアミン誘導体層(32nm)/Ag(Xnm)/40%−MoO:トリフェニルアミン誘導体混合層(28nm)/NPB(10nm)/Alq(60nm)/LiO/Alであるものとする。なお、かっこ内の数値は各層の膜厚を表している。
また各層の屈折率nは、ホール注入層47が1.7〜1.8であり、光取り出し向上層99が約0.2であり、第2のホール注入層が2.0より大きく、発光層49が1.7〜1.8であり、ホール輸送層48が1.7〜1.8である。すなわちこの例では、光取り出し向上層99を挟む2つのホール注入層のうち、陰極52側である第2のホール注入層側の屈折率nの方が、陽極46側であるホール注入層47の屈折率nより大きくなっている。このため、光取り出し向上層99の厚さが10,15,20nmのいずれの場合であっても、第1の比較例及び第2の比較例と比べて光取り出し効率が低下している。
なお、本実施形態は、上記に限られず、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
上記実施形態における有機電界発光素子3は、各層を次のように構成することもできる。
つまり光取り出し向上層99は透明或いは半透明の薄膜であり、反射率が高い薄膜が好ましく、更に隣接する層より屈折率が低くことが好ましい。この光取り出し向上層99の材質としては、例えばAg,Au,Cu,Al,Pt,Mgの単体の金属、MgAg,MgAuなどの合金系の薄膜、酸化物の薄膜、フッ化物の薄膜、酸化物、フッ化物と金属の混合系の薄膜などを採用することができる。特にAg,Ag合金、Mg合金系は反射率が高く、Agはバルクの屈折率は1以下と低い性質を有する。これらの金属、合金系材料を使用した薄膜は、例えば半透明の10nm以上50nm以下の膜厚として使用することができる。酸化物の薄膜、フッ化物の薄膜、フッ化物と金属の混合系の薄膜は、透明性が高い場合もあるので膜厚は限定されない。さらに、その薄膜は10nm以下でラフネス(界面が平坦ではない)があるので、そのラフネスによって横方向への伝播した光が散乱され、正面方向へ放射される。基板45上の厚さ3nmのAuのラフネスは2.6nmである。
光取り出し向上層99は、膜厚を、例えば10〜50nmとした場合、その透過率が400nm〜700nmの可視域で1%〜99%以下、特に10〜90%、更には20〜70%とすることができる。また光取り出し向上層99は、その反射率が400nm〜700nmの可視域で1%〜99%以下、特に5〜95%、更には10〜70%とすることができる。
発光層49は隣接する層より屈折率が同程度、或いは低いのが望ましい。
1.積層構成の変形例
(1)ボトムエミッションタイプ(第1構成に相当)
有機電界発光素子3の積層構成としては、上述した図2に示す積層構成のように、ホール注入層47とホール輸送層48との間に光取り出し向上層99が形成されている上記実施形態のような構成の他にも、次のような構成を採用することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、上述した図2に示す積層構成の代わりに、図9に示すように、光取り出し向上層99の前後に第1ホール注入層47a及び第2ホール注入層47bが形成されていても良い。この場合、ホール注入層47の屈折率nを、第1ホール注入層47aと第2ホール注入層47b、ホール輸送層48の屈折率nと同程度或いは高くすることで、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用し、光取り出し効率を向上することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、図9に示す上述した積層構成において第1ホール注入層47a及びホール注入層47に代えて、図10に示すようにそれらの位置に混合系ホール注入層47cが形成されていても良い。このようにすると、上述のように光取り出し効率を向上することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、図9に示す積層構成においてホール輸送層48及び第2ホール注入層47bに代えて、図11に示すようにそれらの位置に混合系ホール輸送層48aが形成されていても良い。このようにすると、上述のように光取り出し効率を向上することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、図9に示す積層構成において第1ホール注入層47a及びホール注入層47並びに、ホール輸送層48及び第2ホール注入層47bに代えて、図12に示すように各々それらの位置に混合系ホール注入層47c並びに混合系ホール輸送層48aが形成されていても良い。このようにすると、上述のように光取り出し効率を向上することができる。
(2)トップエミッションタイプ(第2構成に相当)
上述した実施形態は、主としてボトムエミッションタイプの有機電界発光素子3について説明してきたが、光Lが発光層49から陰極52を経由して出力されるトップエミッションタイプの有機電界発光素子にも適用することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、上述した図2に示す積層構成において光取り出し向上層99を、ホール輸送層48とホール注入層47との間の代わりに、図13に示すように電子輸送層50と電子注入層51との間の位置に形成するようにしても良い。このようにすると、光取り出し効率が向上する。
有機電界発光素子の積層構成としては、上述した図13に示す積層構成の代わりに、図14に示すように、光取り出し向上層99の前後に第1電子注入層51a及び第2電子注入層51bが形成されていても良い。このようにすると、上述のように光取り出し効率を向上することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、上述した図14に示す積層構成において第1電子注入層51a及び電子注入層51に代えて、図15に示すようにそれらの位置に混合系電子注入層51cが形成されていても良い。このようにすると、上述のように光取り出し効率を向上することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、上述した図15に示す積層構成において混合系電子注入層51c及び第2電子注入層51bに代えて、それぞれ図16に示すようにそれらの位置に第1電子注入層51a及び混合系電子輸送層50cが形成されていても良い。このようにすると、上述のように光取り出し効率を向上することができる。
有機電界発光素子の層構成としては、上述した図15に示す積層構成において第2電子注入層51b及び電子輸送層50に代えて、図17に示すように各混合系電子注入層51cが形成されていても良い。このようにすると、上述のように光取り出し効率を向上することができる。
上記各変形例においては、陽極46は透明或いは半透明の薄膜が良く、光取り出し向上層99に用いられた材料を使用することができる。第2構成の場合、反射率高い薄膜が良く、光取り出し向上層99に用いられた材料を一部使用でき、かつ金属系、合金系の膜厚は50nm以上が好ましい。
<ホール注入層>
ホール注入層47は、第1ホール注入層47aと第2ホール注入層47b、ホール輸送層48(図9に示す構造)より屈折率を同程度或いは高くすることで、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用できるため、光取り出し効率がより向上する。また、特に膜厚が10nm以下と十分に薄い場合は屈折率の影響を無くすことができる。
<第1ホール注入層>
第1ホール注入層47aは、ホール注入層47より屈折率を同程度或いは低く、第2ホール注入層47b或いはホール輸送層48より屈折率を同程度或いは高くすることで、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用できるため、光取り出し効率がより向上する。また、特に膜厚が10nm以下と十分に薄い場合は屈折率の影響を無くすことができる。
<第2ホール注入層>
第2ホール注入層47bは、ホール注入層47、第1ホール注入層47aより屈折率を同程度或いは低くすることで、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用できるため、光取り出し効率がより向上する。また、特に膜厚が10nm以下と十分に薄い場合は屈折率の影響を無くすことができる。
<ホール輸送層>
ホール輸送層48については上述した第2ホール注入層47bとほぼ同様であるので説明を省略する。
<陰極>
陰極52は、図2、図9〜図12のいずれかに示す構成(第1構成:ボトムエミッションタイプに相当)の場合、反射率高い薄膜が良く、光取り出し向上層99に用いられた材料を一部使用でき、かつ金属系、合金系の膜厚は50nm以上10000nm以下が好ましい。陰極52は、図13〜図17のいずれかに示す構造(第2構成:トップエミッションタイプに相当)の場合、透明或いは半透明の薄膜が良く、光取り出し向上層99に用いられた材料を使用することができ、1nm以上100nm以下が好ましい。
<電子注入層>
電子注入層51には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属などの仕事関数が3.0eVより浅いエネルギーの材料を含有する化合物が使用される。特にCsは2.0eV付近と低い。電子注入層51に電子輸送性を有する有機分子を混合した場合、図10、図11、図15及び図16に示す電子輸送層50は必要なくなる場合がある。電子注入層51は、第1電子注入層51aと第2電子注入層51b、電子輸送層50(図14に示す構造)より屈折率を同程度或いは高くすることで、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用できるため、光取り出し効率がより向上する。また、特に膜厚が10nm以下と十分に薄い場合は屈折率の影響を無くすことができる。
<第1電子注入層>
第1電子注入層51aは、ドープする材料が異なるものの考え方は上述した第1ホール注入層47aとほぼ同様であり、屈折率の考えもほぼ同様である。すなわちこの第1電子注入層51aは、電子注入層51或いは電子輸送層50(図14に示す構造)より屈折率を同程度或いは低く、第2電子注入層51bより屈折率を同程度或いは高くすることで、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用できるため、光取り出し効率がより向上する。また、特に膜厚が10nm以下と十分に薄い場合は屈折率の影響を無くすことができる。
<第2電子注入層>
第2電子注入層51bは、ドープする材料が異なるものの考え方は上述した第2ホール注入層47bとほぼ同様であり、屈折率の考えもほぼ同様である。この第2電子注入層51bは、電子注入層51、第1電子注入層51a(図14に示す構造)より屈折率を同程度或いは低くすることで、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用できるため、光取り出し効率がより向上する。また、特に膜厚が10nm以下と十分に薄い場合は屈折率の影響を無くすことができる。
<電子輸送層>
電子輸送層50は、上述した電子注入層51及び第1電子注入層51aとほぼ同様であるので、説明を省略する。
以上説明したように、本実施形態における発光素子は、透明又は半透明な第1電極46(陽極に相当)と、前記第1電極46と対をなす光を反射する第2電極52(陰極に相当)と、前記第1電極46及び前記第2電極52の一方から取り出されたホールと、前記第1電極46及び前記第2電極52の他方から取り出された電子との再結合によって発光する光電変換層49(発光層に相当)を備える有機半導体層47,48,49,50,51とを有し、前記有機半導体層47,48,49,50,51は、前記第1電極46と前記光電変換層49との間に、銀又は金を少なくとも成分の一部として含有するとともに部分的に光を反射しかつ透過性を有する光取り出し向上層99を備えることを特徴とする。なおこのような構成の発光素子は、上述した有機電界発光素子3のみならず、半導体レーザなどの他の発光素子も適用することができる。
以上説明したように、本実施形態における表示パネルは、透明又は半透明な第1電極46(陽極に相当)と、前記第1電極46と対をなす光を反射する第2電極52(陰極に相当)と、前記第1電極46及び前記第2電極52の一方から取り出されたホールと、前記第1電極46及び前記第2電極52の他方から取り出された電子との再結合によって発光する光電変換層49(発光層に相当)を備える有機半導体層47,48,49,50,51とを有し、前記有機半導体層47,48,49,50,51が、前記第1電極46と前記光電変換層49との間に、銀又は金を少なくとも成分の一部として含有するとともに部分的に光を反射しかつ透過性を有する光取り出し向上層99を備える、発光素子が各画素を構成することを特徴とする。
まず発光素子3は、有機半導体層47,48,49,50,51において、ホールと電子の再結合によって第1電極46側、第2電極52側及び有機半導体層47,48,49,50,51に沿った方向を含め様々な方向に光を出力する。第1電極46側への光は、透過性を有する光取り出し向上層99及び第1電極46を透過して発光素子3の外部に出力される。
一方、第2電極52側への光は、マイクロキャビティ効果、多重反射干渉効果により、第2電極52で反射され、有機半導体層47,48,49,50,51、光取り出し向上層99及び第1電極46を透過して発光素子の外部に出力される。
ここで、第1電極46側への光のうち有機半導体層47,48,49,50,51にやや沿った方向への光は、一般的な構成を採用する従来の有機電界発光素子の内部で消滅しがちであったが、この発光素子3は、上記光取り出し向上層99の表面荒さに応じて散乱されて、第1電極46を経由して発光素子3の外部に出力される。発光素子3は、基板45に工夫をしなくても、有機半導体層47,48,49,50,51に備えられた光取り出し向上層99によって光取り出し効率が向上するため、全体として輝度を上げることができる。
なお、例えば特開2008−28371公報(段落[0031]、[0062]乃至[0073]、表6、図2)や、特開2008−59905号公報(段落[0044]乃至[0047]、[0057]、[0058]、図2)、特開2004−79452号公報(段落[0041]、[0075]乃至[0081]、図3)等には、Agを少なくとも成分の一部として含有する光取り出し向上層99を透明電極(ボトムエミッションの場合には第1電極46、トップエミッションの場合には第2電極52)に接して形成した構成が開示されている。この場合、透明電極の屈折率nの値は約2.0以上と大きく、光は屈折率nが高い方向に導波する性質を有するため、発光強度の利得が少なくなる。特に、透明電極とAg層との屈折率差が大きいため、上記導波特性は顕著に発生すると考えられる。これに対し、本実施形態では、有機半導体層47,48,49,50,51内に光取り出し向上層99を形成しているため、透明電極(ボトムエミッションの場合には第1電極46、トップエミッションの場合には第2電極52)中の導波特性を、光取り出し向上層99を形成しない従来構成の場合と同等とできる上、さらに、有機半導体層47,48,49,50,51内の導波光を取り出すことが可能である。したがって、上記構成に比べ、光取り出し効率を向上させて、全体として輝度を上げることができる。
上記実施形態における発光素子3においては、上述した構成に加えてさらに、前記有機半導体層は、前記第1電極46と前記第2電極52の一方(例えば実施形態では陽極に相当)上に形成されており前記一方の電極からホールを取り出し易くするホール注入層47と、前記ホール注入層47によって取り出されたホールを前記光電変換層49に輸送するホール輸送層48と、前記第1電極46と前記第2電極52の他方(例えば実施形態では陰極に相当)から電子を取り出し易くする電子注入層51と、前記電子注入層51によって取り出された電子を前記光電変換層49に輸送する電子輸送層50とを有することを特徴とする。
このような構成の発光素子は有機電界発光素子と呼ばれている。このような構成とすると、有機電界発光素子は、光電変換層49は、ホールと電子の再結合によって第1電極46側、第2電極52側及び光電変換層49に沿った方向を含め様々な方向に光を出力する。第1電極46側への光は、透過性を有する光取り出し向上層99及び第1電極46を透過して有機電界発光素子3の外部に出力される。
一方、第2電極52側への光は、マイクロキャビティ効果、多重反射干渉効果により、第2電極42で反射され、有機半導体層47,48,49,50,51、光取り出し向上層99及び第1電極46を透過して有機電界発光素子3の外部に出力される。
ここで、第1電極46側への光のうち光電変換層49にやや沿った方向への光は、一般的な構成を採用した従来の有機電界発光素子3の内部で消滅しがちであったが、この有機電界発光素子3は、上記光取り出し向上層99の表面荒さに応じて光が散乱されて第1電極46を経由して有機電界発光素子3の外部に出力される。有機電界発光素子3は、光取り出し向上層99によって光取り出し効率が向上するため、全体として発光量が増大する。
上記実施形態における発光素子3は、上述した構成に加えてさらに、前記第1電極46、前記有機半導体層47,48,49,50,51、前記光取り出し向上層99の順に屈折率が小さくなる又は、前記第1電極46、前記有機半導体層47,48,49,50,51、前記光取り出し向上層99の屈折率が各々同等であることを特徴とする。
このように各層の屈折率が設定されていると、発光素子3は、光が屈折率の低いところから高いところへ向かう性質を利用できるため、光取り出し効率がより向上する。
上記実施形態における発光素子3は、上述した構成に加えてさらに、前記光取り出し向上層99の膜厚が10nm以上50nm以下であることを特徴とする。
このようにすると、光取り出し向上層99を挿入した場合でも発光素子3の機能を維持しつつ光取り出し効率を向上させることができる。
上記実施形態における発光素子3は、上述した構成に加えてさらに、前記光取り出し向上層99は、前記ホール注入層47と前記ホール輸送層48との間に形成されていることを特徴とする。
このようにすると、発光層49が出力した光は、光取り出し向上層99によって効率よく、陽極46側から有機電界発光素子3の外部へと取り出されるようになる。このため有機電界発光素子3は、いわゆるボトムエミッションタイプである場合には特に光取り出し効率が向上するようになる。
上記実施形態における発光素子3は、上述した構成に加えてさらに、前記光取り出し向上層99は、前記電子注入層51と前記電子輸送層50との間に形成されていることを特徴とする。
このようにすると、発光層49が出力した光は、光取り出し向上層99によって効率よく、陰極52側から有機電界発光素子3の外部へと取り出されるようになる。このため有機電界発光素子3は、いわゆるトップエミッションタイプである場合には特に光取り出し効率が向上する。
2.発光層の発光スペクトルを限定する場合
一般に、反射電極である陰極52(トップエミッションタイプでは陽極46。以下同様)と透明又は半透明な陽極46(トップエミッションタイプでは陰極52。以下同様)を有する有機電界発光素子の場合、陽極46とガラス基板45との間に材質の違いによる屈折率差がある上、陰極52の有機半導体層側の面は鏡面であるため、干渉効果によって、発光スペクトルが素子の表示を見る角度(視角)に応じてブルーシフト(青色化)する可能性がある。特に、上述した実施形態のように、光取り出し効率を向上させるために光取り出し向上層99を形成し、マイクロキャビティ効果や多重反射干渉効果を利用した有機電界発光素子の場合、干渉効果を最大限に活用しているため、視角によってより大きく色調がずれる上に、特に白色光を発光させる場合にはホワイトバランスが大きく崩れるという問題が生じる可能性がある。このような場合に、例えばカラーフィルタを用いても、色純度を高めることはできるが、上述のような見る角度によって色が変わるという視角依存性(視野角特性)を改善することはできない。本変形例は、このような問題を解決するために、発光層49の発光スペクトルを限定するものである。
本願発明者等は、発光層49を構成する発光材料を複数種類において変更しつつ、光取り出し向上層99等の厚さを適宜変更し、有機電界発光素子3の輝度L、全光束、CIE(Commission Internationale de L’eclairage)色度座標の変化量等の測定を行った。以下、その詳細について説明する。
本変形例では、発光層49を構成する発光材料として、Alq、Irppy、C545T、赤色Ir錯体、PtOEPの5種類を用いている。これらの発光材料の化学構造式を図18にそれぞれ示す。
図19は、発光層49を構成する上記5種類の発光材料の発光スペクトルの一例を示す図であり、図20は、それらのスペクトルの半値幅及び規格化した発光スペクトル面積の一例を示す図である。
図19に示す例では、横軸に波長(nm)、縦軸に発光強度をとっており、各スペクトルの最大発光強度が1となるように規格化したものを示している。この例では、5種類の発光材料のうち、Alqを実線、Irppyを破線、C545Tを点線、赤色Ir錯体を一点鎖線、PtOEPを二点鎖線にて示している。
図20に示すように、5種類の発光材料Alq、Irppy、C545T、赤色Ir錯体、PtOEPのスペクトルの半値幅(nm)はそれぞれ、110,90,65,90,20となっており、規格化した発光スペクトル面積はそれぞれ、111,88,67,98,33となっている。ここで、規格化した発光スペクトル面積とは、発光スペクトルの最大発光強度が1となるように規格化した場合の波長1nmごとの発光強度の総和のことであり、次式で求められる。

上式において、Tは規格化した発光スペクトル面積、Iλは発光スペクトルの最大発光強度が1となるように規格化した場合の波長がλ(1nm単位)であるときの発光強度、λmax及びλminは発光スペクトルの波長域の最大値及び最小値である。
図21は、発光材料としてAlqを用いた場合の輝度L、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。
図21に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/HIL(Hole Injection Layer:ホール注入層)/Ag(Xnm)/MoO(3nm)/NPB(42nm)/Alq(60nm)/LiO/Alであるものとする。なおこの場合において、前述したように、MoOは機能層であり、またAlqは発光層49と電子輸送層50とを兼ねるものである(以下においても同様)。また、かっこ内の数値は各層の膜厚を表している。
図21において、ΔCIEは、視角を0°(正面)から60°まで変化させた場合の色度変化を表している。また、判定欄は、輝度L、全光束、及びCIE色度座標の変化量の3項目について良否の判定を行い、良判定である項目が3つ以上である場合を○、2つである場合を△、1つ以下である場合を×としている。判定基準は、輝度L及び全光束については最上欄に記載した比較例の発光素子と比較し、比較例よりも値が大きければ良判定とし、色度座標の変化量については、おおよそ0.050以下であるものを良判定とする。これは、一般に色度座標の変化量が約0.050以下である場合には、視角依存性(視野角特性)の向上を実現できると考えられるからである。良判定である項目については図中において斜線で示している。なお、最上欄に記載された比較例は、光取り出し向上層99が形成されておらず、マイクロキャビティ効果や多重反射干渉効果を利用しない有機電界発光素子である場合の一例である。この比較例では、ホール注入層47の材質としてCuPc(銅フタロシアニン)を用いており、その他ではTPA(トリフェニルアミン)を用いている。
図21に示す例では、光取り出し向上層99の厚さが例えば5nmである場合、色度座標の変化量は0.038であり0.050以下であるので良判定であるが、輝度L及び全光束については比較例よりも値が小さくなっており、良判定の項目が1つのみであるため判定は×となっている。また、光取り出し向上層99の厚さが例えば10,15,20,25nmである場合、輝度L及び全光束は比較例よりも値が大きく良判定であるが、色度座標の変化量については0.050より大きくなっており、良判定の項目が2つのみであるためそれぞれ判定は△となっている。
図22は、発光材料としてIrppyを用いた場合の輝度L、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。
図22に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/HIL/Ag(Xnm)/MoO(3nm)/NPB/9%Irppy:TAZ(40nm)/Alq(20nm)/LiO(10nm)/Al(80nm)であるものとする。ここで「9%Irppy:TAZ」とは、TAZ(トリアジン誘導体)に9%Irppyを混合させた層を示している。またここでは、Alqは電子輸送層50として機能する(以下においても同様)。
図22に示す例では、例えば、光取り出し向上層99及びホール輸送層48の厚さがそれぞれ15nm,37nmである場合、18nm,37nmである場合、及び22nm,37nmである場合に、輝度L及び全光束について比較例よりも値が大きくなっており、且つ、色度座標の変化量についてもおおよそ0.050以下(光取り出し向上層99及びホール輸送層48の厚さが22nm,37nmである場合の色度座標の変化量は0.058であり0.050よりも大きな値となっているが、許容範囲内であるためここでは良判定としている)となっており、良判定の項目が3つであるため判定が○となっている。したがって、これらにおいては、比較例と比べて視角依存性(視野角特性)の向上を実現でき、且つ色純度に優れ、且つ光取り出し効率を向上させることができている。その他については、良判定の項目が2つであるためそれぞれ判定は△となっている。
図23は、発光材料としてC545Tを用いた場合の輝度L、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。
図23に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/HIL/Ag(Xnm)/MoO(3nm)/NPB/C545T:Alq(0.75:2,40nm)/Alq(20nm)/LiO(10nm)/Al(80nm)であるものとする。ここで「C545T:Alq(0.75:2,40nm)」とは、C545TとAlqとを0.75:2.0の混合比で混合させた層を示している。
図23に示す例では、例えば、光取り出し向上層99及びホール輸送層48の厚さがそれぞれ15nm,37nmである場合、20nm,37nmである場合、20nm,42nmである場合、25nm,37nmである場合、及び25nm,42nmである場合に、輝度L及び全光束について比較例よりも値が大きく(光取り出し向上層99及びホール輸送層48の厚さが25nm,37nmである場合の全光束は0.95であり比較例の1.00よりも小さな値となっているが、許容範囲内であるためここでは良判定としている)、且つ、色度座標の変化量についても0.050よりも値が小さくなっており、良判定の項目が3つであるため判定が○となっている。したがって、これらにおいては、比較例と比べて視角依存性(視野角特性)の向上を実現でき、且つ色純度に優れ、且つ光取り出し効率を向上させることができている。その他については、良判定の項目が2つであるためそれぞれ判定は△となっている。
図24は、発光材料として赤色Ir錯体を用いた場合の輝度L、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。
図24に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/HIL/Ag(Xnm)/MoO(3nm)/NPB/赤色Ir錯体:キノリン誘導体(40nm)/Alq(37.5nm)/LiO(10nm)/Al(80nm)であるものとする。
図24に示す例では、例えば、光取り出し向上層99及びホール輸送層48の厚さがそれぞれ20nm,52nmである場合、及び20nm,62nmである場合に、輝度L及び全光束について比較例よりも値が大きくなっており、且つ、色度座標の変化量についても0.050よりも大きな値ではあるが許容範囲内であることから、良判定の項目が3つであるため判定が○となっている。したがって、これらにおいては、比較例と比べて視角依存性(視野角特性)の向上を実現でき、且つ色純度に優れ、且つ光取り出し効率を向上させることができている。その他については、良判定の項目が2つであるため判定は△となっている。
図25は、発光材料としてPtOEPを用いた場合の輝度L、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。
図25に示す一例においては、陽極46、ホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51及び陰極52は、各層の区切りを「/」で表すものとして、それぞれITO/HIL/Ag(Xnm)/MoO(3nm)/NPB/9%PtOEP:Alq(40nm)/Alq(37.5nm)/LiO(10nm)/Al(80nm)であるものとする。
図25に示す例では、例えば、光取り出し向上層99及びホール輸送層48の厚さがそれぞれ20nm,52nmである場合、及び20nm,62nmである場合に、輝度L及び全光束について比較例よりも値が大きくなっており、且つ、色度座標の変化量についても0.050より小さな値であり、良判定の項目が3つであるため判定が○となっている。したがって、これらにおいては、比較例と比べて視角依存性(視野角特性)の向上を実現でき、且つ色純度に優れ、且つ光取り出し効率を向上させることができている。その他については、同等以上の項目が2つであるため判定は△となっている。
図26は、発光層49を構成する上記5種類の発光材料について、前述した発光スペクトルの半値幅及び規格化した発光スペクトル面積と、上述した測定結果のうちの色度座標の変化量とを対応させた例を示す図である。
図26に示す例では、各発光材料について、上述した図21乃至図25で示す色度座標の変化量のうち、光取り出し向上層99の厚さが約20nmであり、且つ、機能層(MoO:3nm)とホール輸送層48を合わせた厚さが、各表の最上欄に示す比較例におけるホール輸送層48の厚さと同等となる場合の値を選択して示している。なお、この選択した値を含む行を、上述した図21乃至図25において矢印にて示す。また図26において、色度座標の変化量の欄の「μキャビティ構造無し」とは、各表の最上欄に示す比較例における色度座標の変化量のことであり、「μキャビティ構造有り」は上記選択した色度座標の変化量である。
図27は、上記図26に示す測定結果に基づく、半値幅と色度座標の変化量(μキャビティ構造有り)の関係の一例を示す図である。
図27に示すように、発光スペクトルの半値幅が狭いほど色度座標の変化量も小さくなっている。また、各発光材料の測定値に基づく近似曲線Xが示すように、半値幅が80nm以下の範囲では、色度座標の変化量がほぼ0.03〜0.05の範囲に収まっている。すなわち、発光スペクトルの半値幅が1nm以上80nm以下の範囲においては、前述したように色度座標の変化量が約0.050以下であることから、視角依存性(視野角特性)の向上を実現することができる。
図28は、上記図26に示す測定結果に基づく、発光スペクトル面積と色度座標の変化量(μキャビティ構造有り)の関係の一例を示す図である。
図28に示すように、規格化した発光スペクトル面積が狭いほど色度座標の変化量も小さくなっている。また、各発光材料の測定値に基づく近似曲線Yが示すように、発光スペクトル面積が80以下の範囲では、色度座標の変化量がほぼ0.03〜0.05の範囲に収まっている。すなわち、この発光スペクトル面積が1以上80以下の範囲においては、前述したように色度座標の変化量が約0.050以下であることから、視角依存性(視野角特性)の向上を実現することができる。
上記変形例における発光素子3においては、上述した構成に加えてさらに、光電変換層49の発光スペクトルの半値幅が1nm以上80nm以下、あるいは発光スペクトルの最大発光強度が1となるように規格化した場合の波長1nmごとの発光強度の総和である発光スペクトル面積が、1以上80以下であることを特徴とする。
これにより、CIE色度座標の変化量がほぼ0.03〜0.05の範囲に収まるため、視角依存性(視野角特性)の向上を実現でき、且つ色純度に優れ、且つ光取り出し効率を向上させることができる。
3.光取り出し向上層を不連続または抵抗値を増大させる場合
上述した実施形態のように、光取り出し効率を向上させるために光取り出し向上層99を形成した有機電界発光素子の場合、光取り出し向上層99が反射性、透過性、及び導電性を兼ね備えた材質で構成され、陽極46(トップエミッションタイプでは陰極52。以下同様)とほぼ同等の導電性(抵抗値)を有するため、表示パネル上で多数の画素を点灯させる場合に、陽極46間に短絡が発生してしまい、発光が観測されない、あるいは発光が得られないという問題が生じる可能性がある。本変形例は、このような問題を解決するために、光取り出し向上層99を所定の領域で不連続とする、あるいは抵抗値を増大させるものである。
図29は、有機電界発光素子3が適用された表示パネルの概念的な構成例を、部分的に拡大した部分拡大図と共に示す図である。
図29に示す例では、表示パネルは例えばパッシブマトリックス構成(アクティブマトリックス構成でもよい)となっている。この例では、ガラス基板45上に複数の陽極46(陽極46−1〜46−m)を平行に配置し、その上にホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、及び電子注入層51を積層し、さらにその上に複数の陰極52(陰極52−1〜52−n)を陽極46と直交するように積層することにより、表示パネルが構成されている。
図29中の部分拡大図には、表示パネル中の例えば4つの有機電界発光素子3(4画素)について、各発光素子3と隔壁60、及び光取り出し向上層99が有する分断部65(不連続部に相当)の位置関係を示している。なお、この部分拡大図では、煩雑防止のため、光取り出し向上層99以外の層構成の図示を省略している。隔壁60は、陰極52にほぼ平行な方向に延設されており、陽極46に沿う方向に隣り合う発光素子3同士におけるホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51、及び陰極52を隔てるように設けられている(後述の図30参照)。一方、分断部65は、光取り出し向上層99が分断されることにより不連続となっている部分であり(後述の図31参照)、隔壁60に沿う方向に隣り合う発光素子3同士の間に設けられている。
図30は、図29中A−A線による断面例を示す断面図である。なお、この図30では煩雑防止のため、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、及び電子注入層51を、1つの層として図示している。
図30に示す例では、ガラス基板45上に設けられた陽極46に直交するように発光エリア限定層54を形成し、この発光エリア限定層54上に絶縁材料で構成された逆テーパ状の隔壁60が形成されている。これら発光エリア限定層54及び隔壁60により、上述したように、隣り合う発光素子3同士におけるホール注入層47、光取り出し向上層99、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、電子注入層51、及び陰極52が隔てられている。
図31は、図29中B−B線による断面例を示す断面図である。なお、この図30でも、上記図30と同様に、ホール輸送層48、発光層49、電子輸送層50、及び電子注入層51を1つの層として図示している。
図31に示すように、光取り出し向上層99は、陽極46上以外の領域に分断部65を有している。分断部65は、光取り出し向上層99が分断されることにより不連続となっている部分であり、その部分は例えばホール注入層47又はホール輸送層48と同じ材質で構成してもよいし、その他の材料で構成してもよい。なお、この図31に示す例では、陽極46上以外の領域のみに分断部65を設けるようにしたが、これに限らず、光取り出し向上層99の光取り出し向上機能を損なわない限りにおいては、陽極46上の領域に分断部65を設けてもよい。
上記分断部65の形成方法としては、例えば、プラズマエッチングなどで光取り出し向上層99の所望の箇所をエッチングする、また、ステンレス基材に穴加工し、光取り出し向上層99を形成する等が挙げられる。あるいは、ドナーシートに光取り出し向上層99を形成し、当該光取り出し向上層99を配置したい箇所にレーザー照射によりドナーシートからホール注入層47へ転写することにより、分断部65を形成してもよい。この際、ホール注入層47上にのみ限定されるわけではなく、ホール注入層47ごと陽極46上に転写してもよい。また、光取り出し向上層99の材質を溶解させ、インクジェットで所望のエリアに光取り出し向上層99を形成することにより分断部65を形成してもよい。また、ホール注入層47上に隔壁を設けることにより、光取り出し向上層99を分断してもよい。
上記変形例における発光素子3においては、上述した構成に加えてさらに、光取り出し向上層99は、不連続部65(分断部に相当)を有することを特徴とする。
このようにすると、例えば光取り出し向上層99に不連続部65を設けない構成の場合には、光取り出し向上層99が反射性、透過性、及び導電性を兼ね備えた材質で構成され、陽極46とほぼ同等の導電性(抵抗値)を有するため、表示パネル上で多数の画素を点灯させる場合に陽極46間に短絡が発生してしまい、発光が観測されない、あるいは発光が得られないという問題が生じる可能性があったのに対し、上記変形例では、光取り出し向上層99に不連続部65を設けるため、陽極46間の短絡を防止することができる。これにより、各有機電界発光素子3を独立して発光させることが可能となる。
上記変形例における発光素子3においては、上述した構成に加えてさらに、不連続部65は、光取り出し向上層99の第1電極46上以外の領域に形成されていることを特徴とする。これにより、光取り出し向上層99の光取り出し向上機能を損なうことなく、陽極46間の短絡を防止することができる。
なお、以上では光取り出し向上層99に不連続部65を設ける構成としたが、光取り出し向上層99に抵抗値を増大させた抵抗増大部を設けるようにしてもよい。図32は、この場合における図29中B−B線に対応する断面例を示す断面図である。
図32に示すように、光取り出し向上層99は、陽極46上以外の領域に抵抗増大部66を有している。抵抗増大部66は、例えば、ある程度酸素が存在する雰囲気下での加熱処理(レーザー)、あるいは光取り出し向上層99の薄膜化等により、光取り出し向上層99のその他の部分より抵抗値を増大させた部分である。
上記変形例における発光素子3においては、上述した構成に加えてさらに、光取り出し向上層99は、第1電極46上以外の領域に、抵抗値を増大させた抵抗増大部66を有することを特徴とする。このようにすると、陽極46間の短絡を防止することができるので、各有機電界発光素子3を独立して発光させることが可能となる。
なお、以上では、一例として基板45が陽極46側に配置しているがこれに限られず、陰極52側に配置していても良い。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
本実施形態としての発光素子が表示パネルの有機電界発光素子に適用された場合の一例を示す部分断面図である。 図1に示す有機電界発光素子内における光路の一例を示す断面のイメージ図である。 本実施形態による効果を検証するための第1の比較例としての光取り出し効率の一例を示す図である。 本実施形態による効果を検証するための第2の比較例としての光取り出し効率の一例を示す図である。 光取り出し向上層の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。 光取り出し向上層の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。 光取り出し向上層の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。 光取り出し向上層の厚さに応じた光取り出し効率の一例を示す図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 本実施形態における有機電界発光素子の変形例を示す断面図である。 発光層を構成する5種類の発光材料の化学構造式を示す図である。 発光層を構成する5種類の発光材料の発光スペクトルの一例を示す図である。 発光層を構成する5種類の発光材料の発光スペクトルの半値幅及び規格化した発光スペクトル面積の一例を示す図である。 発光材料としてAlqを用いた場合の輝度、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。 発光材料としてIrppyを用いた場合の輝度、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。 発光材料としてC545Tを用いた場合の輝度、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。 発光材料として赤色Ir錯体を用いた場合の輝度、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。 発光材料としてPtOEPを用いた場合の輝度、全光束、CIE色度座標の変化量の一例を示す図である。 発光層を構成する5種類の発光材料について、発光スペクトルの半値幅及び規格化した発光スペクトル面積と、測定結果のうちの色度座標の変化量とを対応させた例を示す図である。 図26に示す測定結果に基づく、半値幅と色度座標の変化量の関係の一例を示す図である。 図26に示す測定結果に基づく、発光スペクトル面積と色度座標の変化量の関係の一例を示す図である。 有機電界発光素子が適用された表示パネルの概念的な構成例を、部分的に拡大した部分拡大図と共に示す図である。 図29中A−A線による断面例を示す断面図である。 図29中B−B線による断面例を示す断面図である。 光取り出し向上層に抵抗増大部を設ける場合における図29中B−B線に対応する断面例を示す断面図である。
符号の説明
46 陽極(第1電極に相当)
47 ホール注入層
48 ホール輸送層
49 発光層(光電変換層に相当)
50 電子輸送層
51 電子注入層
52 陰極(第2電極に相当)
65 分断部(不連続部に相当)
66 抵抗増大部
99 光取り出し向上層

Claims (8)

  1. 透明又は半透明な第1電極と、
    前記第1電極と対をなす光を反射する第2電極と、
    前記第1電極から取り出されたホールと、前記第2電極から取り出された電子との再結合によって発光する光電変換層を備える有機半導体層とを有し、
    前記有機半導体層は、
    前記第1電極と前記光電変換層との間に、銀又は金を少なくとも成分の一部として含有するとともに部分的に光を反射しかつ透過性を有する光取り出し向上層と、
    前記第1電極上に形成されており前記第1電極からホールを取り出し易くするホール注入層と、
    前記ホール注入層によって取り出されたホールを前記光電変換層に輸送するホール輸送層と、
    前記第2電極から電子を取り出し易くする電子注入層と、
    前記電子注入層によって取り出された電子を前記光電変換層に輸送する電子輸送層と
    を有し、
    前記光取り出し向上層は、
    前記ホール注入層と前記ホール輸送層との間に形成され、その界面には光を散乱可能となるよう中心平均荒さRaで10nm以下の表面荒さが形成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  2. 請求項1記載の発光素子において、
    個別の発光素子におけるそれぞれの屈折率が、
    前記第1電極の屈折率≧前記ホール注入層の屈折率≧前記ホール輸送層の屈折率≧前記光電変換層の屈折率>前記光取り出し向上層の屈折率
    の関係にある
    ことを特徴とする発光素子。
  3. 請求項1記載の発光素子において、
    前記光取り出し向上層の膜厚が10nm以上50nm以下である
    ことを特徴とする発光素子。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の発光素子において、
    前記光電変換層の発光スペクトルの半値幅が1nm以上80nm以下、あるいは前記発光スペクトルの最大発光強度が1となるように規格化した場合の波長1nmごとの発光強度の総和である発光スペクトル面積が、1以上80以下である
    ことを特徴とする発光素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の発光素子において、
    前記光取り出し向上層は、不連続部を有する
    ことを特徴とする発光素子。
  6. 請求項5記載の発光素子において、
    前記不連続部は、前記光取り出し向上層の前記第1電極上以外の領域に形成されている
    ことを特徴とする発光素子。
  7. 請求項1乃至4のいずれかに記載の発光素子において、
    前記光取り出し向上層は、前記第1電極上以外の領域に、抵抗値を増大させた抵抗増大部を有する
    ことを特徴とする発光素子。
  8. 透明又は半透明な第1電極と、
    前記第1電極と対をなす光を反射する第2電極と、
    前記第1電極から取り出されたホールと、前記第2電極から取り出された電子との再結合によって発光する光電変換層を備える有機半導体層とを有し、
    前記有機半導体層が、
    前記第1電極と前記光電変換層との間に、銀又は金を少なくとも成分の一部として含有するとともに部分的に光を反射しかつ透過性を有する光取り出し向上層と、
    前記第1電極上に形成されており前記第1電極からホールを取り出し易くするホール注入層と、
    前記ホール注入層によって取り出されたホールを前記光電変換層に輸送するホール輸送層と、
    前記第2電極から電子を取り出し易くする電子注入層と、
    前記電子注入層によって取り出された電子を前記光電変換層に輸送する電子輸送層と
    を有し、
    前記光取り出し向上層は、
    前記ホール注入層と前記ホール輸送層との間に形成され、その界面には光を散乱可能となるよう中心平均荒さRaで10nm以下の表面荒さが形成されている、発光素子によって各画素が構成されていることを特徴とする表示パネル。
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