JP5348946B2 - 繊維強化複合材料成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
成形材料からFRPを得る方法としては、プリプレグを型に積層しオートクレーブで硬化する製造方法や、中芯材の上下にプリプレグを配置したものを真空バックフィルムに覆い、真空引きしながら加熱硬化する製造方法、プリプレグを成形型内で圧縮成形する製造方法等が知られている。中でも圧縮成形によるFRPの製造方法は、オートクレーブを用いた製造方法や、真空バックフィルムを用いた製造方法と同等の外観および強度のFRPを得られることに加え、成形時間が比較的短時間であるため、大量生産に好適である。また、成形型を加工することも容易であるから、複雑な形状のFRPの製造も容易であるという利点がある。
このような問題に対し、気密構造を有する型を予め加熱した後、型内の片面表面積とプリプレグの片面表面積との比率を一定の範囲となるように、圧縮成形することで、FRPの目曲がりを抑制するFRPの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
そこで本発明は、FRPの外観の向上と、作業効率の向上とが図れるFRPの製造方法を目的とする。さらに、FRPの物性の安定化を図る製造方法を目的とする。
前記成形工程は、前記繊維強化複合材料の片面表面積(S1)と前記成形型の内面の片面表面積(S2)との比であるS1/S2で表される値が、0.8〜1.0となるように、繊維強化複合材料を圧縮成形することが好ましい。
本発明における繊維強化複合材料は、実質的に連続した強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸してなるもの(プリプレグ)のみならず、プリプレグと、その少なくとも片側表面に、短繊維状の強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸したものとを重ねあわせた複合成形材料を含むものである。短繊維状の強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸したものとしては、SMC等を挙げることができる。SMCは、実質的に連続した強化繊維で構成される繊維強化複合材料に比べ、FRPのリブ構造やボス構造を有する複雑な形状に沿いやすい利点を有するが、機械物性が劣る。そこで、両者を重ね合わせて圧縮成形することにより、両者の長所を合わせ持った繊維強化複合材料とすることができる。
繊維強化複合材料の「実質的に連続した強化繊維」の形態は特に限定されず、例えば、強化繊維を一方向に引き揃えたUDプリプレグ、強化繊維を製織した織物プリプレグ等を挙げることができる。例えば、FRPの意匠性を高めるために、FRPの表面は成形材料を織物プリプレグとし、FRPの内部はUDプリプレグとする等、複数の強化形態のものを併用することができる。
成形型の一例について、図1、2を用いて説明する。図1は、成形型の内部(成形室)に繊維強化複合材料を設置し、成形型を締める前の状態を示す図である。図2は、成形型を締めた後の成形型と繊維強化複合材料との状態を示す図である。図1に示すように、成形型は雌型20と、雄型30とで構成され、雌型20と雄型30とが組み合わさる面で成形室10が形成されている。成形型を締めるとは、雌型20と雄型30とを嵌合させることをいう。
成形型は、図2に示すように、雌型20と雄型30とを嵌合させ成形型を締めた際に、成形型の内部を気密に保つ構造を有するものである。また、雌型20と雄型30との接触部50には、シェアエッジ構造となっている。本発明において「気密」とは、図2のように成形型を締め、繊維強化複合材料40(図1)が繊維強化複合材料40の状態(図2)に圧縮された際に、繊維強化複合材料40が成形室10を満たし、かつ、成形室内の繊維強化複合材料40の熱硬化性樹脂組成物が、実質的に流出しない状態をいう。
本エアブロー機構200は、空気口248から加圧空気Aを導入することで、開閉部材232をエアブロー装置底部242側に摺動させ、孔230から開閉部材232を抜くことで、成形室210と空間243が連通する。こうして、孔230を通じて、成形室210へ空気を送り、成形室210の成形品を脱型することができる。また、成形時は、空気口248からの加圧空気Aの導入を停止し、空気口249から加圧空気Bを導入することで、開閉部材232を成形室210側に摺動させ、孔230を閉じることができる。
前処理工程は特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物の圧縮成形の際の最高到達温度まで昇温する間の粘度変化(昇温粘度)における最小値を2〜20Pa・s、好ましくは5〜15Pa・sとすることができれば特に限定されない。例えば、繊維強化複合材料を加熱し、前記昇温粘度の最小値を2〜20Pa・sとする方法が挙げられる。
加熱により前処理工程を行う場合、加熱温度は熱硬化性樹脂組成物の種類に応じて決定することが好ましい。加熱温度が低すぎると、所望する前記昇温粘度の最小値が得られない場合がある。加熱温度が高すぎると、得られるFRPが、過加熱により硬化反応が進行しすぎるおそれがあるためである。
加熱により前処理工程を行う場合、加熱時間は、熱硬化性樹脂組成物の種類と、加熱温度とに応じて決定することが好ましい。加熱時間が短すぎると、所望する前記昇温粘度の最小値が得られない場合がある。加熱時間が長すぎると、得られるFRPが、過加熱に硬化反応が進行しすぎるおそれがあるためである。
「熱硬化性樹脂組成物の圧縮成形の際の最高到達温度まで昇温する間」とは、繊維強化複合材料40を成形型に設置した際の熱硬化性樹脂組成物の温度から、成形型を開ける直前までの熱硬化性樹脂組成物の最高到達温度まで昇温する間をいう。繊維強化複合材料40を成形型に設置した際の熱硬化性樹脂組成物の温度は、熱硬化性樹脂組成物の種類に応じて決定することができ、例えば、室温とすることができる。また、最高到達温度は、熱硬化性樹脂組成物の種類に応じて決定することができる。
調温工程は、雌型20と雄型30とを繊維強化複合材料40の熱硬化性樹脂組成物の硬化温度以上に、調整する工程である。調温工程における成形型の温度範囲は、熱硬化性樹脂組成物の種類を勘案して決定することが好ましい。例えば、熱硬化樹脂組成物の硬化温度から、該熱硬化性樹脂組成物の硬化温度の30℃高い温度の範囲であることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物の硬化温度から、該熱硬化性樹脂組成物の硬化温度の20℃高い温度の範囲であることがより好ましい。硬化温度の30℃を超えると、得られるFRPが、過加熱により強度劣化するおそれがあるためである。エポキシ樹脂組成物を使用する場合には、成形型は120〜160℃に調温することが好ましい。
調温工程は、成形型に繊維強化複合材料40を設置する前に行ってもよいし、繊維強化複合材料40を設置した後に行ってもよいが、硬化時間短縮の観点からは、成形型に繊維強化複合材料40を設置する前に調温工程を行うことが好ましい。
成形工程は、例えば、次のように行う。図1のように、調温工程で調温した雌型20と雄型30とで形成された成形室10に、前処理工程で処理した任意の枚数の繊維強化複合材料40を配置する。次いで、成形型を締め、図2のように雌型20と雄型30とで繊維強化複合材料40を挟み込み、成形室10が繊維強化複合材料40で満たされるように圧縮する。その後、成形型を開けて、成形されたFRPを取り出す。
また、成形型を締める前の繊維強化複合材料40の厚さ(D1)が、成形型を締めた後の繊維強化複合材料40の厚さ(D2)の100〜150%となるように圧縮することが好ましい。上述の範囲であれば、繊維強化複合材料の全面を均等に加圧することができ、得られるFRPの形状が安定するためである。
<昇温粘度における最小値の測定>
昇温粘度における最小値は、レオメトリクス社製レオメーターDSR200で、直径25mmのパラレルプレートを用い、パラレルプレート間の熱硬化性樹脂組成物の厚みを0.5mmとし、角速度10ラジアン/秒で昇温粘度を測定した。測定中は、室温から、本実施例における圧縮成形の際の最高到達温度である140℃まで昇温させて粘度測定を行い、この間の粘度変化における最小値を求めた。
成形型の内部を気密に保つ構造として、成形型を締めた時の雌型と雄型との接触部に、シェアエッジ構造を採用し、雄型のFRP部分の厚さ部分を除く表面積が900cm2である型を雌型・雄型共に140℃に加熱した。
繊維強化複合材料として、一方向に引き揃えた炭素繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸したプリプレグシートTR390E125S(熱硬化性樹脂組成物の硬化温度:130℃、三菱レイヨン株式会社製)を285mm×285mmに切断し、繊維の配向方向が0°と90°に交互になるように20枚積層したプリプレグシート(片面表面積812cm2)を用意した。成形型の内面の片面表面積(S1)と前記繊維強化複合材料の片面表面積(S2)との比であるS1/S2は、812/900=0.9である。
上記のプリプレグシートを70℃の乾燥機に投入し、2時間加熱して、前処理済プリプレグシートAを得た(前処理工程)。前処理済プリプレグシートAの昇温粘度の最小値を求め、その値を表1に示す。
前処理工程を70℃、3時間とした以外は、実施例1と同様にして前処理済プリプレグシートBを得た。前処理済プリプレグシートBの昇温粘度の最小値を求め、その値を表1に示す。また、前処理済プリプレグシートBを用い、実施例1と同様にして、FRPを得た。得られたFRPについて、前記式により求めた樹脂流出率と、外観を観察した結果を表1に示す。
前処理工程を70℃、4時間とした以外は、実施例1と同様にして前処理済プリプレグシートCを得た。前処理済プリプレグシートCの昇温粘度の最小値を求め、その値を表1に示す。また、前処理済プリプレグシートCを用い、実施例1と同様にして、FRPを得た。得られたFRPについて、前記式により求めた樹脂流出率と、外観を観察した結果を表1に示す。
前処理工程を行わなかったプリプレグシートを用い、実施例1と同様にして、FRPを得た。得られたFRPについて、前記式により求めた樹脂流出率と、外観を観察した結果を表1に示す。
前処理工程を70℃、1時間とした以外は、実施例1と同様にして前処理済プリプレグシートEを得た。前処理済プリプレグシートEの昇温粘度の最小値を求め、その値を表1に示す。また、前処理済プリプレグシートEを用い、実施例1と同様にして、FRPを得た。得られたFRPについて、前記式により求めた樹脂流出率と、外観を観察した結果を表1に示す。
前処理工程を70℃、5時間とした以外は、実施例1と同様にして前処理済プリプレグシートFを得た。前処理済プリプレグシートFの昇温粘度の最小値を求め、その値を表1に示す。また、前処理済プリプレグシートFを用い、実施例1と同様にして、FRPを得た。得られたFRPについて、前記式により求めた樹脂流出率と、外観を観察した結果を表1に示す。
加熱処理で、昇温粘度の最小値を2Pa・s未満とした比較例1、2では、得られたFRPの表に樹脂ヒケが発生していた。また、昇温粘度の最小値が20Pa・sを超えたプリプレグを用いた比較例3では、FRPの端部に、未充填部分が発生し、また、断面にボイドが発生しており、外観が劣っていた。
20 雌型
30、220 雄型
Claims (2)
- 成形型を締めた際に成形型の内部を気密に保つ構造を有する成形型を用い、繊維強化複合材料を圧縮成形する、繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
前処理工程と、調温工程と、成形工程と、を有し、
前記前処理工程は、実質的に連続した強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られた繊維強化複合材料を加熱処理して、前記熱硬化性樹脂組成物を増粘させ、
前記調温工程は、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化温度以上に前記成形型を調温し、
前記成形工程は、前記前処理工程を経た後の前記繊維強化複合材料を成形型内に満たし、圧縮成形し、
前記前処理工程を経た後の前記熱硬化性樹脂組成物は、前記成形工程において最高到達温度まで昇温する間の粘度変化における最小値が、2〜20Pa・sである、繊維強化複合材料成形品の製造方法。 - 前記成形工程は、前記成形型を締める前の前記繊維強化複合材料の片面表面積(S1)と前記成形型の内面の片面表面積(S2)との比であるS1/S2で表される値が、0.8〜1.0となるように繊維強化複合材料を圧縮成形することを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化複合材料成形品の製造方法。
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