JP5348393B2 - 積層フィルムの巻取り方法 - Google Patents
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Description
品質の良い巻きロールとは、一般に、巻き取られる際の空気の混入量(層間空気量)が少なく且つ適度な巻固さによって巻き取られた巻きロールと言われている。
巻き品質不良の例を挙げると、硬巻きの場合、古くから知られている菊模様(スターディフェクト)や骨(ゲージバンド)等の不良が挙げられる。一方、軟巻きの場合は竹の子(テレスコープ)やコア抜け等の不良が挙げられる。
これらの巻取り不良は、空気の巻き込みを排除しながら巻きロールを適正な巻き固さになるように巻き取ることによって防止することが重要である。
空気の巻き込みを排除するための方法としては、押圧機構(タッチロール)によって巻きロールを押しつけながらフィルムを巻き取る高分子フィルムの巻取り装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
また、巻取応力解析に対し従来から広く用いられているアルトマン(Altmann)の式を、空気膜の影響(空気膜厚さh、空気膜のヤング率E2、およびウェブ半径方向等価ヤング率Er)を考慮した補正を行い、その補正アルトマンの式によって算出された半径方向応力σrが予めウェブ巻取半径に基づいて設定した適正範囲に入るような最適な巻取速度Vおよび巻取テンションパターンを決定し、ウェブ巻取時における実際のウェブの巻取テンションが、前記最適な巻取テンションパターンになるように制御することにより、ウェブ巻取半径方向にわたって良好な巻取りが出来るとしたウェブの巻取り方法も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
図3は、積層フィルムの巻取り工程の一例を示す説明図である。
この巻取り工程は、フィルム1とフィルム4が積層された2層の積層フィルムの巻き取る工程を示している。
簡単に説明すると、ロールAから引っ張り出されたフィルム1に接着剤2を塗布し、オーブン3に導入する。そこでフィルム1を加熱し接着剤2中の溶剤を蒸発させる。加熱されたフィルム1を、ロールBから引っ張り出されたフィルム4と押圧・接合させてラミネートフィルム5としながらロールCに巻き取る。その後、ロールCをエージング炉6に導入し、そこで時間をかけて加熱し接着剤を硬化させる。その後、ロールCをスリッタ7に導入し用途に応じ所定の幅に切断し、或いは巻き替えを行いパウチ、或いは積層フィルムロールDを製造する。
また、図4はロールCの半径方向応力の変化を示す説明図である。
半径方向応力σrは、フィルムの張力の半径方向成分が重畳される為、内側に行くに従い大きくなる。すなわち、巻き完了時の半径方向応力の関係は、σra>σrb>σrcとなる。
ここで、コア近傍の半径方向応力σraに注目する。エージング中は、熱応力が更に加わるためにクリープ変形し、径が縮小して半径方向応力σraは更に増大する。これに対して、中央の半径方向応力σrbは、raの径縮小によって半径方向応力σrbは低下する。従って、raとrbとの間では半径方向応力差が大きくなり、これによりシワが発生するものと考えられている。
従って、半径方向応力のギャップ(応力差)が小さくなる(適度な巻き固さになる)ように、フィルムを巻き取ることにより、エージング(クリープ変形)に伴うシワの発生は抑制されるものと考えられる。
上記問題の解決を図るため、上記特許文献2に記載されているように初期張力や張力パターン等の巻取り条件を試行錯誤しながら、巻き品質が良いとされた時の巻取り条件を経験的に求め、その巻取り条件で生産し対処しているが、未だ十分な問題解決には至っていないのが現状である。その結果、膨大なアウト損失が発生し、この経済損失を減らすことは重要課題となっている。
上述した通り、薄手積層フィルムを製造する場合、各種ラミネーターやコーターで積層し、それを巻き取る。製品によっては、この積層フィルムを高温下でキュアリングするものもある。その後、スリッター機でスリティングや巻き替えを行い、パウチ製造等の二次加工が施される場合もある。薄手積層フィルムの製造で生じる巻取技術上の一般的な問題は上記品質トラブル(品質不良)があり、これらは初期張力やその後の張力変化パターン、タッチロール有無やその押圧荷重等の巻き取り条件に依るところが大きく、材料構成によって巻き取りの張力条件も大きく影響される難しさがある。
特に、ロール内部でフィルムが座屈変形して発生する巻きしわアウトが顕著であり、これを防止しようと初期張力アップや張力パターンを変更してより硬巻きにすると今度はフィルム間が固着するブロッキングが発生し、パウチの開口性不良を引き起こす。
つまり、上記巻きしわアウトやブロッキング等の問題を解決するために初期張力や張力パターンを変更し、試行錯誤で適正な張力条件を決めるのが従来のアプローチ方法であるが、手間のかかる方法であった。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、その目的は、巻きしわアウトやブロッキング等の発生を好適に抑制し巻き品質の高い巻きロールを好適に製造することが出来る積層フィルムの巻取り方法を提供することである。
前記基準伸びは、前記積層フィルムについての0.1%伸び率であり、該0.1%伸び時張力を基準にした所定伸び時張力(張力設定値)を算出し、次に前記積層フィルムの張力が前記張力設定値になるように制御しながら前記積層フィルムを巻き取り、
巻取り初期においては、前記積層フィルムの張力が0.03〜0.07%の伸び時張力になるように制御しながら前記積層フィルムを巻き取ることを特徴とする。
本願発明は、巻き固さを径方向に対してどのようなパターンにすれば高品質の巻きロールが得られるかを検討した結果、「巻き始め」と「巻き終わり」における内部応力のギャップ(差)が小さければ小さい程、巻き品質が向上し、その内部応力のギャップを小さくするための張力パターンとして、低張力一定巻きが有効であることを見出した。このように、初期張力を低く設定して一定巻きとすることによって、コア部の巻き固さは下げられ、かつ巻き中間付近の巻き固さがより高めになる結果、シワの発生が好適に抑制されることになる。
ところで、巻取り張力を決定するための指標として積層フィルムのヤング率(弾性率)が使用されることが多いが、JISなどで規定される試験方法ではサンプル長が100mm程度であり、ごく小さな伸びの測定には必ずしも適当でない。すなわち、低張力時の積層フィルムの伸びはごく小さいため、JIS規格等の引張試験機を用いて測定した引張荷重−伸びの関係図(相関関係)は、セッティング時の試験片のタルミによるばらつき、引張試験機の引張速度のばらつき、並びに標点間距離の測定精度等が影響して伸びの小さい領域においてはデータの信頼性が低いこと、それに加えて引張荷重−伸びの関係を生産現場にて簡便に測定することが出来ない等の問題があった。
そこで、上記積層フィルムの巻取り方法では、上記問題を解決するために、積層フィルムの試験片を水平にし且つ横方向の移動を拘束した状態で積層フィルムの一端を固定し他端に張力を静的に加えることにより、セッティング時の積層フィルムのタルミによるばらつき(不安定な張力−伸び特性)、並びに試験機の引張速度のばらつきをなくし上記問題を解決した。また、標点間距離の測定精度については、後述するように標点間距離を長く確保することにより測定精度を向上させた。これにより、信頼性の高い積層フィルムの張力−伸びの相関データを取得することが出来るようになる。
また、上記積層フィルムの巻取り方法では、積層フィルムの基準伸びを予め設定し、上記信頼性の高い相関データを用いてその基準伸び時の張力を算出する。そして、実際に積層フィルムを巻き取る際の巻取張力は、その基準伸びを基にした所定伸び時の張力となる。つまり、上記積層フィルムの巻取り方法では「伸び」を基準(ベース)に適正張力が設定されることになる。上記信頼性の高い伸び−張力の相関データから、基準伸び時の張力は容易に求まるため、単純な比例計算によって所定伸び時の張力を容易に求めることが出来る。
また、基準伸び時の張力を求める試験装置は、後述するように簡便に構成することが出来るため、生産現場にて簡便に測定することが出来る。
また、上記基準伸び時の張力、並びにそれから求められる所定伸び時の張力を、積層フィルムごとにデータベース化することにより、積層フィルムを巻き取る適正張力の設定が容易となる。
また、低張力一定巻きは材料にやさしいというメリットもある。
巻きしわは周方向応力がゼロ〜マイナス(圧縮力)のところで発生すると言われている。テーパ率を大きくすると周方向応力がプラス方向へ増大するようになる。つまり、テーパ巻きは巻きしわの抑制に有効と考えられている。
そこで、上記積層フィルムの巻取り方法では、初期の伸び率を低く設定した上でテーパ巻きによって積層フィルムを巻き取ることによって、低張力の効果とテーパ巻きの効果が相俟って巻きしわアウトやブロッキングを好適に抑制することが出来るにした。
この基準伸び時張力測定装置100は、積層フィルムの引張荷重(張力)−伸びの相関関係を正確に測定することが出来る。特に、伸びの小さい範囲における張力−伸びの相関関係を正確に測定することが出来る。その構成は、所定の巾・長さの積層フィルムの試験片10と、試験片10の一端部を拘束する端部拘束治具20と、試験片10の横方向の移動を拘束する横方向拘束治具30と、引張荷重(張力)が加えられた時の試験片10の軸方向の伸びを示すマーカー(標点)40,40と、試験片10の他の端部に張力を加える張力負荷治具50とから構成されている。
先ず、製品巾1080mmにおける0.1%伸び時張力は、172×1080/1000=186[N/m]となる。次に、0.05%伸び時張力は、186×0.05/0.1=93[N/m]となる。従って、製品巾1080mmのケース2の包材を巻き取る際の巻取張力設定値は93[N/m]となる。従って、ケース2の包材の張力は93[N/m]となるように制御され、ケース2の包材がローラによって巻き取られることになる。
20 端部拘束治具
30 横方向拘束治具
40 マーカー
50 張力負荷治具
100 基準伸び時張力測定装置
Claims (2)
- 積層フィルムの試験片を水平に且つ横方向の移動を拘束した状態で前記積層フィルムの試験片の一端を固定し他端に静的な張力を負荷しながら、前記積層フィルムの試験片の表面に0.5m以上隔てて設けられた2標点間の距離を計測することによって該積層フィルムの試験片についての伸びと張力の相関データを取得し、次に該積層フィルムの基準伸びを設定し、次に前記相関データから前記基準伸び時の張力を算出し、該基準伸び時の張力を基にして前記積層フィルムを巻き取る張力を算出・設定することからなる積層フィルムの巻取り方法であり、
前記基準伸びは、前記積層フィルムについての0.1%伸び率であり、該0.1%伸び時張力を基準にした所定伸び時張力(張力設定値)を算出し、次に前記積層フィルムの張力が前記張力設定値になるように制御しながら前記積層フィルムを巻き取り、
巻取り初期においては、前記積層フィルムの張力が0.03〜0.07%の伸び時張力になるように制御しながら前記積層フィルムを巻き取ることを特徴とする積層フィルムの巻取り方法。 - 巻き取りが進むにつれて前記伸び時張力をテーパ率0〜50%の範囲内で低下させながら前記積層フィルムを巻き取る請求項1に記載の積層フィルムの巻取り方法。
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