しかし、上述した従来の地域防犯システム(地域見守システム)は、次のような改善すべき点も存在した。
即ち、この種の地域見守システム(地域防犯システム)は、基本的に、防犯対象者(見守対象者)を見守ることができれば足りるため、子機から親機側への一方向通信、即ち、子機から一定時間(例えば、3分間)間隔毎に送信される定期通報を中継機を介して親機が受信する方式を採用しており、親機側から子機への情報の送信は行われていない。したがって、例えば、親機側から不審者の出没情報や個別の緊急連絡等の緊急情報を子機に連絡したい場合であっても対応できないなど、望ましい双方向通信機能を確保する観点からは更なる改善の余地も残されていた。
一方、中継機(親機)が子機(中継機)から定期通報を受信した場合、中継機(親機)はACK信号を子機(中継機)に送信するため、このACK信号を利用することにより親機側から子機へ情報を送信することも可能である。しかし、バッテリにより動作する子機の電力消費はできるだけ抑えたいため、防犯対象者(見守対象者)が監視範囲から外れることなく一カ所に留まっているような場合には、定期通報の間隔を、例えば、3分間から1時間に切換える第二の定期通報モードを設ける場合もある。この場合、ACK信号を送信する間隔も定期通報の間隔に対応して長くなるため、ACK信号を利用して緊急情報等を送信するには、本来の有効性及び信頼性を確保することができない。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した地域見守システムの通信方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る地域見守システム1の通信方法は、上述した課題を解決するため、無線IDタグを設けた無線通信部2t…を有し、かつ複数の見守対象者H…がそれぞれ携帯可能な複数の子機2…と、無線IDタグを設けたアドホック通信部3t…を有し、かつ所定の地域Ac内における複数の異なる所定場所にそれぞれ設置した複数の中継機3…と、アドホック通信部4tを有する少なくとも一台の親機4と、親機4に接続したサーバコンピュータ6とを備え、少なくとも所定時間Ts間隔毎に子機2…から定期通報Ds…を送信するとともに、この定期通報Ds…を中継機3…が受信したなら子機2…にACK信号Dx…を送信する通信方法であって、中継機3…は、同期生成部7…により共通の同期用データDwを得るとともに、子機2…は、同期用データDwを取得して当該同期用データDwに同期して所定時間Tw間隔毎の受信専用期間Thを設定し、サーバコンピュータ6から特定の子機2に対して子機制御データDcを送信する際に、当該子機2の定期通報Ds…の間隔が通常時(Ts)のときは、中継機3からACK信号Dxに子機制御データDcを付加して送信する第一通信モードMfを実行し、かつ定期通報Ds…の間隔が通常時(Ts)よりも長い(Tm)ときは、中継機3から受信専用期間Thに子機制御データDcを送信する第二通信モードMsを実行するようにしたことを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、子機2は、見守対象者Hの移動を検出する移動検出部8を備え、当該移動の検出時に、通常時の間隔Tsで定期通報Dsを送信するとともに、移動の非検出時に、通常時の間隔Tsよりも長い間隔Tmで定期通報Dsを送信することができ、この移動検出部8には、子機2に付設した振動センサ8sを用いることができる。また、同期生成部7は、中継機3に備えるGPS受信機7sから得る時刻情報を用いて同期用データDwを生成することができる。一方、子機2は、所定の取得タイミングにより中継機3に対してデータ要求信号Drを送信し、中継機3から送信される同期用データDwを受信して取得することができる。他方、サーバコンピュータ6は、全ての中継機3…に対して子機制御データDc…を転送することができるとともに、少なくとも最初に、特定の子機2を直前に受信した中継機3に対して子機制御データDcを転送することもできる。なお、子機制御データDcには、少なくとも、子機2のランプ9aを点灯又は点滅させる制御指令データ,及び/又は子機2のスピーカ9bから音を出力させる制御指令データを含ませることができる。さらに、子機2は、子機制御データDcを受信したならACK信号Dyを中継機3に送信することができる。地域Acとしては、少なくとも通学エリアに適用することができる。
このような手法による本発明に係る地域見守システム1の通信方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 中継機3が定期通報Dsを受信した際に子機2に対して送信するACK信号Dxを利用して子機制御データDcを中継機3(サーバコンピュータ6)側から子機2に送信することに加え、中継機3は、同期生成部7により共通の同期用データDwを得るとともに、子機2は、同期用データDwを取得して当該同期用データDwに同期して所定時間Tw間隔毎の受信専用期間Thを設定し、子機2の定期通報Dsの間隔が通常時(Ts)よりも長い(Tm)ときは、中継機3から受信専用期間Thに子機制御データDcを送信するようにしたため、サーバコンピュータ6(中継機3)側から子機2に対して、緊急情報等を迅速かつタイムリに送信することができる。したがって、地域見守システム1により双方向通信機能を実現する際の望ましい有効性及び信頼性を飛躍的に高めることができる。
(2) 好適な態様により、子機2に、見守対象者Hの移動を検出する移動検出部8を設け、当該移動の検出時に、通常時の間隔Tsで定期通報Dsを送信するとともに、移動の非検出時に、通常時の間隔Tsよりも長い間隔Tmで定期通報Dsを送信するようにすれば、長い間隔Tmで定期通報Dsを送信するいわば省電力モードの実行中であっても、緊急情報等を、サーバコンピュータ6(中継機3)側から子機2に対して迅速かつ確実に送信することができる。
(3) 好適な態様により、移動検出部8に、子機2に付設した振動センサ8sを用いれば、見守対象者Hの歩行時の振動を検出できるため、見守対象者Hの移動を的確に検出できるとともに、実施の容易化及び小型化に寄与できる。
(4) 好適な態様により、中継機3に備えるGPS受信機7sから得る時刻情報を用いて同期用データDwを生成する同期生成部7を設ければ、正確な時刻情報の確保により各中継機3…及び各子機2…を正確に同期させることができ、中継機3から子機2に対する送信を確実に行うことができる。
(5) 好適な態様により、所定の取得タイミングにより子機2から中継機3に対してデータ要求信号Drを送信し、中継機3から送信される同期用データDwを子機2が受信して取得するようにすれば、子機2は自局の定期通報Dsの送信を阻害することなく同期用データDwを取得することができる。
(6) 好適な態様により、サーバコンピュータ6により、全ての中継機3…に対して子機制御データDc…を転送するようにすれば、見守対象者Hが移動中であり、時間の経過により受信する中継機3…が変わる場合であっても、特定の子機2に対して、より確実に送信することができる。
(7) 好適な態様により、サーバコンピュータ6により、少なくとも最初に、特定の子機2を直前に受信した中継機3に対して子機制御データDcを転送するようにすれば、見守対象者Hが移動していない状態であれば、最も高い確率の居場所に対する中継機3に転送できるため、特定の子機2に対して、より確実に送信することができる。
(8) 好適な態様により、子機制御データDcに、少なくとも、子機2のランプ9aを点灯又は点滅させる制御指令データ,及び/又は子機2のスピーカ9bから音を出力させる制御指令データを含ませれば、緊急情報等を見守対象者Hに対して容易に伝達できる。特に、ランプ9aとスピーカ9bの双方を利用すれば、伝達の有効性及び確実性をより高めることができる。
(9) 好適な態様により、子機2により、子機制御データDcを受信したならACK信号Dyを中継機3に送信するようにすれば、緊急情報等を見守対象者Hに対して確実に送信したことを確認できるため、送信漏れ等を回避できる。
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る通信方法の理解を容易にするため、地域見守システム1全体の概略構成について、図7〜図9を参照して説明する。
最初に、地域見守システム1における全体のシステム構成(システム系統)について説明する。図7は、同システム1の全体系統を示す。Acは、地域見守システム1を適用する所定の地域であり、例示は小学生の通学エリアを示すとともに、H…は通学路Rに沿って通学する児童(見守対象者)を示している。また、C…は児童H…が背負っているランドセルであり、図8(a)に、このランドセルCを拡大して示す。図8(a)に示すように、ランドセルCの側面Csには、防水性を有する子機(端末)2を装着する。子機2は、図8(b)に示すように、矩形型に形成した偏平なハウジング12を有し、このハウジング12の表面パネルには、非常ボタン13,機能ボタン14…,ランプ9a及びスピーカ9bを有する。さらに、ハウジング12の内部には、図9(a)に示す電気系回路15を収容する。子機2の電気系回路15は、CPUを含む子機処理部16,メモリ17及び処理プログラム(プログラムメモリ)Psを含むマイクロコンピュータ機能部を備えるとともに、バッテリ19を内蔵する。また、子機処理部16には、上述した非常ボタン13,機能ボタン14…,ランプ9a及びスピーカ9bを接続するとともに、無線IDタグを設けた無線通信部2tを接続する。
8sは、子機2に設けた移動検出部8を構成する振動センサであり、見守対象者Hの移動を検出することができる。即ち、振動センサ8sは、見守対象者Hが移動する際に発生する振動を検出することにより見守対象者Hが移動したものと判断するとともに、振動を検出しないときは見守対象者Hが移動していないものと判断する。このように、移動検出部8に、子機2に付設した振動センサ8sを用いれば、見守対象者Hの歩行時の振動を検出できるため、見守対象者Hの移動を的確に検出できるとともに、実施の容易化及び小型化に寄与できる利点がある。
一方、地域(通学エリア)Ac内における複数の異なる所定場所、即ち、通学路Rの途中における異なる複数の場所には、それぞれ中継機3…を設置する。中継機3…は通学路Rに面した地上高4〜5〔m〕の位置を選定する。図8(c)は、カーブミラー30のポール30pの上部に固定金具31c…を介して支持ステー31s下部を固定し、この支持ステー31sの上端部に中継機3を取付けた場合を示す。図8(c)は、カーブミラー30を利用して設置した場合を示すが、その他、電柱や街灯等の各種公共物等を利用して設置することができる。中継機3は、防水性を有する中継機ボックス32を備え、この中継機ボックス32における天面上に太陽電池33を配設するとともに、底面下に送受信用アンテナ34を配設する。また、中継機ボックス32の内部には、図9(b)に電気系回路35を収容する。中継機3の電気系回路35は、CPUを含む中継機処理部36,メモリ37及び処理プログラム(プログラムメモリ)Psrを含むマイクロコンピュータ機能部を備えるとともに、中継機処理部36に接続したバッテリ39を備える。バッテリ39と太陽電池33は半導体スイッチ40に接続する。この場合、中継機3の電源部は、太陽電池33,バッテリ39,半導体スイッチ40及び中継機処理部36の機能を利用した充放電回路により構成される。これにより、この充放電回路では、バッテリ39の電圧を監視し、一定の電圧を越えた場合には充電を停止するとともに、電圧が最低動作電圧を下回ったときは、中継機処理部36がスタンバイモードに移行することにより、バッテリ39の過放電を防止する。さらに、中継機処理部36には、無線IDタグを設けたアドホック通信部3tを接続する。
また、中継機ボックス32の外面パネルには、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機7sを取付け、このGPS受信機7sは中継機処理部36に接続して同期用データDwを生成する同期生成部7を構成する。GPS受信機7sのNMEA出力には、位置情報(緯度情報及び経度情報)と時刻情報が含まれるため、この時刻情報から得る時刻データ、即ち、1pps(1秒間隔のクロック)の時刻データを用いて同期用データDwを生成する。このように、中継機3に備えるGPS受信機7sから得る時刻情報を用いて同期用データDwを生成する同期生成部7を設ければ、正確な時刻情報の確保により各中継機3…及び各子機2…を正確に同期させることができ、中継機3から子機2に対する送信を確実に行うことができる。
他方、児童Hが通学する小学校には、アドホック通信部4tを有する一台の親機4を設置する。親機4は中継機3と同一のものを利用できるが、電源部には、例えば、AC100〔V〕の商用電源に接続可能な直流電源装置に変更できる。また、親機4は、ゲートウェイ51を介してインターネット(ネットワーク)5に接続する。一方、監視センターには、サーバコンピュータ6を設置し、このサーバコンピュータ6をインターネット5に接続する。これにより、サーバコンピュータ6と親機4はインターネット5を介してデータ送受信を行うことができる。さらに、保護者の所持するパーソナルコンピュータ(パソコン)52或いは携帯電話53とサーバコンピュータ6を、インターネット5を介して双方向通信可能に構成する。
この場合、子機2…及び中継機3…の無線仕様は、電力線からの自立を最優先とし、到達距離が長く、回折性による接続能力が高い特定小電力無線を使用する。例示の特定小電力無線は、429〔MHz〕帯,出力10〔mW〕である。この方式は、通信速度が速くない(数kbps)という弱点もあるため、ネットワークに使用するアプリケーションは文字情報が中心となる。また、無線のコリジョンを回避するため、CSMA/CA with Ack方式を採用するとともに、無線通信システムに適したルーティングプロトコルとして、中継機3…が定期的に各中継機3…の経路情報を受信し、自局の中継経路を構築するプロアクティブ方式を用いたアドホックネットワークシステムを用いている。なお、CSMA/CA with Ack方式とは、通信路が一定時間以上継続して空いていることを確認してから各無線端末がデータを送信する方式であり、実際にデータが正しく送信されたことは、受信側からのACK信号の到着をもって判定する。また、プロアクティブ方式とは、各無線端末間が、通信に先立って無線ネットワークの状況を確認し、中継経路を構築しておく方式である。さらに、アドホックネットワークシステムとは、基地局などの固定局を必要とせず、半固定の無線端末間でデータをホッピングすることにより、柔軟に宛先局へデータ伝送を行う自立分散型ネットワークである。
次に、地域見守システム1の基本的な動作の概要について、図5〜図9を参照して説明する。
今、任意の児童(見守対象者)Hが子機2を携帯し、小学校に登校する場合を想定する。この際、子機2は、定期的に自局の情報をパケットにより送信(発信)する。この場合、子機2には、二つの定期通報モードが設定されており、移動中は、通常の間隔Tsとなる3〔分〕毎に発信する第一定期通報モードを実行し、移動していないときは、通常時の間隔Tsよりも長い間隔Tmとなる1〔時間〕毎に発信する第二定期通報モードを実行する。図5は、各モードの使用態様(実行態様)を示す。子機2の動作中は、子機処理部16により振動センサ8sの出力を監視する(ステップS21)。児童Hの移動中は、振動センサ8sにより歩行時の振動を感知して検出信号を出力する。これにより、子機処理部16は移動中と判断して、3〔分〕毎に定期通報(パケット)を送信する第一定期通報モードを実行する(ステップS22,S23)。一方、児童Hが休息等により移動していないときは、振動センサ8sは振動を検出しないため、検出信号を出力しない。これにより、子機処理部16は移動していないと判断して、1〔時間〕毎に定期通報(パケット)を送信する第二定期通報モードを実行し、通信トラフィックの低減及び電力消費の低減を図っている(ステップS22,S24)。以上のモード選択処理は、バッテリ切れ等により子機2が非動作状態となる場合を除いて常時行われる(ステップS25)。
このように、子機2に、見守対象者Hの移動を検出する移動検出部8を設け、当該移動の検出時に、通常時の間隔Tsで定期通報Dsを送信する第一定期通報モードを実行するとともに、移動の非検出時に、通常時の間隔Tsよりも長い間隔Tmで定期通報Dsを送信する第二定期通報モードを実行するようにすれば、長い間隔Tmで定期通報Dsを送信するいわば省電力モードの実行中であっても、緊急情報等を、サーバコンピュータ6(中継機3)側から子機2に対して、迅速かつ確実に送信することができる。
図6に、子機2が送信するパケットPiのデータフォーマットを示す。このデータフォーマットにおける情報部Pidには、定期通報又は緊急通報の種別,子機2の固有ID等が含まれており、通常時は、定期通報が行われる。定期通報を各中継機3…が受信すれば、受信した各中継機3…は、その受信電界強度データを情報部Pidに付加したパケットを順次親機4まで中継(転送)する。この場合、各中継機3…の中継経路は予め設定されている。
そして、親機4が定期通報を受信すれば、受信した定期情報をゲートウェイ51及びインターネット5を介してサーバコンピュータ6に送信する。サーバコンピュータ6は、定期通報を受信した各中継機3…の子機2に対する受信電界強度に基づいて、最も強い電波を受信した中継機3の位置を子機2の位置としてデータベースに登録(又は更新)する。この場合、子機2の位置は、複数の中継機3…の受信電界強度の大きさの違いから割り出した推定位置であってもよい。一方、サーバコンピュータ6は、子機2の定期通報に基づいて子機2の位置を定期的に把握し、サーバコンピュータ6に予め設定した子機2の指定エリア内であるか否かを監視する。この際、指定エリア外に移動したときは、サーバコンピュータ6から保護者(パソコン52,携帯電話53)及び関係者にEメールにより通知する。他方、非常ボタン13が押された緊急通報の場合には、その受信電界強度データを付加したパケットを優先して親機4まで中継するとともに、サーバコンピュータ6に送信し、サーバコンピュータ6から直ちに保護者(パソコン52,携帯電話53)及び関係者にEメールによる緊急通知を行う。また、保護者は、パソコン52や携帯電話53からサーバコンピュータ6にアクセスし、児童H(子機2)の場所を確認できる。この場合、サーバコンピュータ6へのアクセスは、IDとパスワードの入力が必要となる。
次に、本実施形態に係る地域見守システム1の通信方法について、図1〜図9を参照して説明する。
本実施形態に係る通信方法では、予め、二つの通信モード、即ち、第一通信モードMfと第二通信モードMsを設定し、第一通信モードMfは、子機2の第一定期通報モードに対応して用いるとともに、第二通信モードMsは子機2の第二定期通報モードに対応して用いる。
図3は、各通信モードの実行態様を示す。今、サーバコンピュータ6において、特定の子機2に対して緊急連絡したい事態が発生した場合を想定する。この場合、サーバコンピュータ6は、対応する子機制御データDcを出力する(ステップS1)。また、サーバコンピュータ6は、子機2からの定期通報の状況に応じて、第一定期通報モードが実行されているか第二定期通報モードが実行されているかの確認を行う(ステップS2)。この際、定期通報を3〔分〕間隔で受信していれば、第一定期通報モードであると判断し、定期通報を3〔分〕を超えて未受信であれば、第二定期通報モードであると判断する。
そして、子機2の状況が第一定期通報モード、即ち、子機2の定期通報Ds…の間隔が通常時である判断すれば、地域見守システム1は、第一通信モードMfを実行する(ステップS3,S4)。第一通信モードMfでは、所定時間Ts(例示は3〔分〕)間隔毎に子機2から送信される定期通報Dsを受信し、これに基づき中継機3から子機2にACK信号Dxを送信するため、このACK信号Dxに所定の子機制御データDcを付加して送信する(ステップS5)。
以下、第一通信モードMfの具体的な動作について、図1及び図2(a)を参照して説明する。この場合、子機2では、第一定期通報モードが実行されており、子機2は、3〔分〕間隔毎の発呼時間になれば、定期通報Dsを送信する。定期通報時には、キャリアセンスを実行し、他のキャリアの有無を確認している。これにより、他のキャリアが無い回線空きの状態のときに、20〜200〔ms〕から乱数により発生するランダム待時間を経て送信を実行し、待機している複数の子機2…同士間のコリジョンの発生を回避している。
そして、サーバコンピュータ6において、特定の子機2に対して緊急連絡したい事態が発生すれば、サーバコンピュータ6は、親機4を介して全中継機3…に対応する子機制御データDcを転送する(T101)。これにより、全中継機3…は子機制御データDcを受信して保存(記憶)する(T102)。このように、サーバコンピュータ6により、全ての中継機3…に対して子機制御データDc…を転送するようにすれば、見守対象者Hが移動中であり、時間の経過により受信する中継機3…が切換わる場合であっても、特定の子機2に対して、より確実に送信することができる。
この後、特定の子機2から定期通報Dsが送信されれば、最も近い中継機3が受信して親機4側へ転送する(T103,T104)。この場合、特定の子機2による定期通報Dsであるから、この定期通報Dsに付加されているIDと親機4側から転送されている子機制御データDcに付加されているIDが一致する。したがって、中継機3は、当該子機2に対してACK信号Dxを送信する際に、当該ACK信号Dxに子機制御データDcを付加し、この子機制御データを付加したACK信号(Dx+Dc)を特定の子機2に対して送信する(T105)。これにより、当該子機2はACK信号(Dx+Dc)を受信する(T106)。
この子機制御データDcには、少なくとも、子機2のランプ9aを点灯又は点滅させる制御指令データ,及び/又は子機2のスピーカ9bから音を出力させる制御指令データが含まれる。したがって、例えば、緊急連絡したい内容が「急いで家に帰りなさい」という内容のときに、スピーカ9bから「ピー・ピー・ピー」の音を繰り返す鳴らすというルールを決めておけば、この制御指令データを含む子機制御データDcを送信することにより必要な情報伝達を実現できる。このように、子機制御データDcに、少なくとも、子機2のランプ9aを点灯又は点滅させる制御指令データ,及び/又は子機2のスピーカ9bから音を出力させる制御指令データを含ませれば、緊急情報等を子機2を携帯する児童Hに対して容易に伝達できる。特に、ランプ9aとスピーカ9bの双方を利用すれば、伝達の有効性及び確実性をより高めることができる。
また、子機2は子機制御データDcを受信することにより、対応するACK信号Dyを中継機3へ送信する(T107)。これにより、中継機3は当該ACK信号Dyを受信して親機4側へ転送する(T108)。そして、最終的にサーバコンピュータ6が受信すれば、第一通信モードMfによる子機2への通信処理を終了する(T109,ステップS6,S7)。このように、子機2が子機制御データDcを受信したならACK信号Dyを中継機3に送信するようにすれば、緊急情報等を児童Hに対して確実に送信したことを確認できるため、送信漏れ等を回避できる。
他方、図3のステップS2の確認処理において、子機2の状況が第二定期通報モード、即ち、子機2の定期通報Dsの間隔が通常時よりも長いと判断すれば、地域見守システム1は、第二通信モードMsを実行する(ステップS3,S8)。第二通信モードMsにおいては、中継機3…は同期生成部7…により共通の同期用データDwを得るとともに、子機2…は、同期用データDwを取得して当該同期用データDwに同期して所定時間Tw間隔毎の受信専用期間Thを設定する。そして、サーバコンピュータ6から特定の子機2に対して子機制御データDcを送信する際には、この受信専用期間Thを利用して、中継機3から子機2に子機制御データDcを送信する(ステップS9)。
以下、第二通信モードMsの具体的な動作について、図1及び図2(b)を参照して説明する。この場合、子機2では、第二定期通報モードが実行されており、子機2は、1〔時間〕毎の発呼時間になれば、定期通報Dsを送信する。この際、子機2…同士のコリジョンの発生を回避する必要があるため、キャリアセンスを実行し、他のキャリアの有無を確認している。そして、他のキャリアが無い回線空きの状態のときに、乱数により発生するランダム待時間を経て送信を実行する。なお、図1中、tcが振動センサ8sによる振動が非検出となり、第一通信モードMfから第二通信モードMsに移行した時点を示している。
一方、各中継機3…は同期用データDwを取得する同期処理を行う(T201)。各中継機3…の同期処理は、GPS受信機7sの時刻情報から1pps(1秒間隔のクロック)の時刻データを得、この時刻データを同期用データDwとして用いる。したがって、各中継機3…は、この同期用データDwに同期した動作(処理)を行う。他方、各子機2…においても同期用データDwを取得する同期処理を行う(T202)。この場合、各子機2…は、所定の取得タイミング、例えば、起動時又は予め設定した時間間隔毎に、中継機3に対して同期用データDwを取得するためのデータ要求信号(パケット)Drを送信する。中継機3はデータ要求信号Drを受信することにより、同期用データDw(パケット)を子機2に送信する。このときのパケットPtを図4に示す。このパケットPtの情報部Ptdに同期用データDwが含まれる。このように、所定の取得タイミングにより子機2から中継機3に対してデータ要求信号Drを送信し、中継機3から送信される同期用データDwを子機2が受信して取得するようにすれば、子機2は自局の定期通報Dsの送信を阻害することなく同期用データDwを取得することができる。
子機2は同期用データDwを受信することにより、自局の動作(処理)が同期用データDwに同期するように内部タイマを更新する。さらに、子機2では、所定の時間間隔Tw毎に受信専用期間Thを設定する。この場合、時間間隔Twは、例えば、第一定期通報モードにおける定期通報Dsの時間間隔Tsと同様の3〔分〕間隔に設定できる。また、受信専用期間Thは、子機制御データDcを確実に受信処理できる時間、例えば、数〔秒〕間程度を設定でき、この受信専用期間Thは、上述したように、自局の定期通報Dsの送信を阻害することのないように設定する。これにより、親機4を含む各中継機3…及び各子機2…は、GPSから得る時刻情報(同期用データDw)に対して正確に同期した状態となる。
そして、サーバコンピュータ6において、特定の子機2に対して緊急連絡したい事態が発生した場合、サーバコンピュータ6は、親機4を介して、対応する中継機(指定中継機)3に、対応する子機制御データDcを転送する(T203)。この場合、サーバコンピュータ6(親機4)は、少なくとも、最初に、特定の子機2を直前に受信した中継機3を、指定中継機3として転送する。これにより、指定中継機3は子機制御データDcを受信して保存(記憶)する(T204)。このように、第二通信モードMsにおいて、親機4は、少なくとも最初に、特定の子機2を直前に受信した指定中継機3に対して子機制御データDcを転送するようにすれば、児童Hが移動していない状態における最も高い確率の居場所に対する中継機3に転送できるため、特定の子機2に対して、より確実に送信することができる。
また、指定中継機3は、受信専用期間Zhになったタイミングにより子機制御データDcを特定の子機2に送信する(T205)。この際、子機2は、指定中継機3に対して同期しているとともに、受信専用期間Zhでは受信専用になっているため、子機制御データDcを確実に受信できる(T206)。これにより、子機2では、前述した第一通信モードMfの場合と同様、子機制御データDcに基づく制御(処理)が行われる。さらに、子機2が子機制御データDcを受信すれば、対応するACK信号Dyを指定中継機3に送信する(T207)。そして、指定中継機3はACK信号Dyを受信し、親機4側へ転送する(T208)。
なお、第二通信モードMsでは、指定中継機3への転送時に、児童Hが、既に他に場所へ移動していることも考えられ、この場合には、子機2による受信ができない。したがって、指定中継機3が所定時間内にACK信号Dyを受信しないときは、子機制御データDcを周辺の中継機3…にブロードキャストするとともに、必要により全ての中継機3…にブロードキャストする(T209)。そして、最終的にサーバコンピュータ6がACK信号Dyを受信すれば、第二通信モードMsによる処理を終了する(T210,ステップS10,S7)。
よって、このような本実施形態に係る地域見守システム1の通信方法によれば、中継機3が定期通報Dsを受信した際に子機2に対して送信するACK信号Dxを利用して子機制御データDcを中継機3(サーバコンピュータ6)側から子機2に送信することに加え、中継機3は、同期生成部7により共通の同期用データDwを得るとともに、子機2は、同期用データDwを取得して当該同期用データDwに同期して所定時間Tw間隔毎の受信専用期間Thを設定し、子機2の定期通報Dsの間隔が通常時(Ts)よりも長い(Tm)ときは中継機3から受信専用期間Thに子機制御データDcを子機2に送信するようにしたため、サーバコンピュータ6(中継機3)側から子機2に対して、緊急情報等を、迅速かつタイムリに送信することができる。したがって、地域見守システム1により望ましい双方向通信機能を実現する際の有効性及び信頼性を飛躍的に高めることができる。
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,手法,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、移動検出部8として子機2に付設した振動センサ8sを用いた場合を示したが、見守対象者Hの移動を検出できるものであれば、歩数計や子機2には付設しない他の手段を用いた各種移動検出部8を利用することができる。また、同期生成部7として、中継機3に備えるGPS受信機7sから得る時刻情報を用いて同期用データDwを生成する場合を示したが、GPS以外から得る時刻情報、例えば、電波時計に使用する標準電波送信局からの時刻情報,テレビジョン放送局の放送電波からの時刻情報,私設のクロック発信部等の各種時刻情報(クロック情報)を利用して同期用データDwの生成が可能である。さらに、子機2は、所定の取得タイミングにより中継機3に対してデータ要求信号Drを送信し、中継機3から送信される同期用データDwを受信して取得する場合を示したが、子機2から要求されて送信する場合のみならず、中継機3から一方的に同期用データDwを送信する場合を排除するものではない。一方、サーバコンピュータ6は、第一定期通報モードにおいて全ての中継機3…に対して子機制御データDc…を転送し、第二定期通報モードにおいて子機2を直前に受信した中継機3に対して子機制御データDcを転送する場合を示したが、第一定期通報モードにおいて子機2を直前に受信した中継機3に対して子機制御データDcを転送し、第二定期通報モードにおいて全て(又は一部)の中継機3…に対して子機制御データDc…を転送するなど、各種の転送態様(ブロードキャスト態様)により転送可能である。また、子機制御データDcに、子機2のランプ9aを点灯又は点滅させる制御指令データ,及び/又は子機2のスピーカ9bから音を出力させる制御指令データを含ませる場合を示したが、メッセージによる音声信号を送信してスピーカ9bからメッセージを出力させたり、子機2自身に対する変更プラグラムを送信するなど、各種子機制御データが含まれる。さらに、親機4とサーバコンピュータ6をインターネットを介して接続した場合を示したが、LAN等の他のネットワーク5により接続してもよいし、単なる接続ラインにより接続してもよい。