JP5345800B2 - 乳酸の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、一部のユビキノン生合成に関与する遺伝子を欠損させた大腸菌を用いて効率よく乳酸を生産する方法(特許文献1参照)が知られている。
簡素な培地で乳酸を生産した例としては、クレブシエラ属のcasAB遺伝子、エルウィニア属のcelY遺伝子等を導入した大腸菌をNBS無機塩培地で培養する方法(特許文献2参照)が報告されている。
(1) コリスミ酸ピルビン酸リアーゼ(以下、UbiCともいう)、2−オクタプレニル−6−メトキシ−1,4−ベンゾキノン メチラーゼ(以下、UbiEともいう)、3−ジメチルユビキノン 3−メチルトランスフェラーゼ(以下、UbiGともいう)および2−ポリプレニル−6−メトキシフェノールヒドロキシラーゼ(以下、UbiHともいう)から選ばれる1つ以上の酵素の活性が低下または喪失しており、かつ乳酸を生産する能力を有する微生物を、鉄の含有量が2μmol/l以下である培地に培養し、培養物中に乳酸を生成、蓄積させ、該培養物から乳酸を採取する乳酸の製造方法。
(2) 微生物が、染色体DNA上のUbiC、UbiE、UbiGおよびUbiHから選ばれる酵素をコードする遺伝子の一部または全部を欠損した微生物である、上記(1)の製造方法。
(3) 遺伝子が、以下の[1]〜[4]のいずれかに記載のDNAを有する遺伝子である、上記(2)の製造方法。
[1]配列番号1〜4のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号1〜4のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、UbiC、UbiE、UbiGまたはUbiHの活性を有する蛋白質をコードするDNA
[3]配列番号5〜8のいずれかで表される塩基配列を有するDNA
[4]配列番号5〜8のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUbiC、UbiE、UbiGまたはUbiHの活性を有する蛋白質をコードするDNA
(4) 微生物が、該微生物の野生型株より乳酸を生産する能力の高い微生物である、上記(1)〜(3)のいずれか1つの製造方法。
上記遺伝子の一部または全部が欠損した染色体DNAを有する微生物としては、染色体DNA上における該遺伝子の塩基配列中に塩基の欠失があるため、(1)Ubi酵素をコードする遺伝子のプロモーターまたはオペレーターなどの転写制御が機能せず、Ubi酵素が発現されない微生物、(2)フレームシフトが生じ、Ubi酵素が活性ある酵素として発現されない微生物、および(3)Ubi酵素をコードする遺伝子中の構造遺伝子の一部または全部が欠損している微生物等があげられ、好ましくは(3)の微生物、より好ましくはUbi酵素をコードする遺伝子中の構造遺伝子の全部が欠損している微生物があげられる。
Ubi酵素活性の低下した微生物としては、野生型のUbi酵素を有する微生物に比べ、Ubi酵素の活性が低下している微生物であれば特に限定されないが、通常60%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下に低下した微生物をあげることができる。野生型のUbi酵素を有する微生物としては、Escherichia coliKM22株があげられる。
例えば、以下の[1]〜[4]の遺伝子があげられる。
[1]配列番号1〜4のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする遺伝子
[2]配列番号1〜4のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、かつUbiC、UbiE、UbiGまたはUbiHの活性を有する蛋白質をコードする遺伝子
[3]それぞれ配列番号1〜4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする配列番号5〜8で表される塩基配列を有する遺伝子
[4]配列番号5〜8のいずれかで表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUbiC、UbiE、UbiGまたはUbiHの活性を有する蛋白質をコードする遺伝子
アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な遺伝子としては、例えば上記したBLASTやFASTA等を用いて上記したパラメータ等に基づいて計算したときに、配列番号5〜8のいずれかで表される塩基配列と少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有する遺伝子をあげることができる。
例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、シュードモナス(Pseudomonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、アナベナ(Anabena)属、アナシスティス(Anacystis)属、アスロバクター(Arthrobacter)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、クロマチウム(Chromatium)属、エルビニア(Erwinia)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、フォルミディウム(Phormidium)属、ロドバクター(Rhodobacter)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、ロドスピリウム(Rhodospirillum)属、セネデスムス(Scenedesmus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、シネコッカス(Synechoccus)属、ザイモモナス(Zymomonas)属等に属する微生物があげられ、より具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・メガテリウム(Batillus megaterium)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・イマリオフィルム(Brevibacterium immariophilum)、ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・アセトアシドフィルム(Corynebacterium acetoacidophilum)、ミクロバクテリウム・アンモニアフィルム(Microbacterium ammoniaphilum)、セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)、セラチア・フォンチコラ(Serratia fonticola)、セラチア・リケファシエンス(Serratia liquefaciens)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.) D-0110、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アグロバクテリウム・リゾジーンズ(Agrobacterium rhizogenes)、アグロバクテリウム・ルビ(Agrobacterium rubi)、アナベナ・シリンドリカ(Anabaena cylindrica)、アナベナ・ドリオルム(Anabaena doliolum)、アナベナ・フロスアクア(Anabaena flos-aquae)、アースロバクター・オーレッセンス(Arthrobacter aurescens)、アースロバクター・シトレウス(Arthrobacter citreus)、アースロバクター・グロブフォルミス(Arthrobacter globformis)、アースロバクター・ヒドロカーボグルタミカス(Arthrobacter hydrocarboglutamicus)、アースロバクター・ミソレンス(Arthrobacter mysorens)、アースロバクター・ニコチアナ(Arthrobacter nicotianae)、アースロバクター・パラフィネウス(Arthrobacter paraffineus)、アースロバクター・プロトフォルミエ(Arthrobacter protophormiae)、アースロバクター・ロセオパラフィナス(Arthrobacter roseoparaffinus)、アースロバクター・スルフレウス(Arthrobacter sulfureus)、アースロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)、クロマチウム・ブデリ(Chromatium buderi)、クロマチウム・テピダム(Chromatium tepidum)、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)、クロマチウム・ワーミンギ(Chromatium warmingii)、クロマチウム・フルビアタティレ(Chromatium fluviatile)、エルビニア・ウレドバラ(Erwinia uredovora)、エルビニア・カロトバラ(Erwinia carotovora)、エルビニア・アナス(Erwinia ananas)、エルビニア・ヘリコラ(Erwinia herbicola)、エルビニア・パンクタタ(Erwinia punctata)、エルビニア・テレウス(Erwinia terreus)、メチロバクテリウム・ロデシアナム(Methylobacterium rhodesianum)、メチロバクテリウム・エクソトルクエンス(Methylobacterium extorquens)、フォルミディウム・エスピー(Phormidium sp.) ATCC29409、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドシュードモナス・ブラスチカ(Rhodopseudomonas blastica)、ロドシュードモナス・マリナ(Rhodopseudomonas marina)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドスピリウム・リブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドスピリウム・サレキシゲンス(Rhodospirillum salexigens)、ロドスピリウム・サリナラム(Rhodospirillum salinarum)、ストレプトマイセス・アンボファシエンス(Streptomyces ambofaciens)、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens) 、ストレプトマイセス・アウレウス(Streptomyces aureus)、ストレプトマイセス・フンジシディカス(Streptomyces fungicidicus)、ストレプトマイセス・グリセオクロモゲナス(Streptomyces griseochromogenes)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans、ストレプトマイセス・オリボグリセウス(Streptomyces olivogriseus)、ストレプトマイセス・ラメウス(Streptomyces rameus)、ストレプトマイセス・タナシエンシス(Streptomyces tanashiensis)、ストレプトマイセス・ビナセウス(Streptomyces vinaceus)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)等があげられる。
乳酸を生産する能力を有する微生物は、該能力を有する微生物であれば特に制限されず、自然界から分離された株自身が該能力を有する場合は該株そのものを用いることができる。また、公知の方法により乳酸を生産する能力を人為的に付与することにより、野生型株より乳酸生産能力が向上した微生物も用いることができる。
(a)乳酸の生合成を制御する機構の少なくとも1つを緩和または解除する方法、
(b)乳酸の生合成に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法、
(c)乳酸の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法、
(d)乳酸の生合成経路から乳酸以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化または遮断する方法、および
(e)野生型株に比べ、乳酸のアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法、
等をあげることができる。これらの方法は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
Ubi酵素をコードする遺伝子としては、配列番号1〜4のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする遺伝子、配列番号5〜8のいずれかで表される塩基配列を有する遺伝子等をあげることができる。
相同組換えを利用した方法としては、塩基の欠失、置換または付加が導入された変異遺伝子を、塩基の欠失等を導入したい宿主細胞内では自立複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製した相同組換え用プラスミドを用いる方法をあげることができる。
また、複数の遺伝子に効率よく塩基の欠失、置換または付加を導入する相同組換えを利用した方法としては、直鎖DNAを用いる方法をあげることができる。
本方法は、直鎖DNAを効率よく取り込む微生物であれば、いずれの微生物にも適用できるが、エシェリヒア属に属する微生物が好ましく、エシェリヒア・コリに属する微生物がより好ましく、λファージ由来の組換えタンパク質群(Red組換え系)を発現しているエシェリヒア・コリがさらに好ましくあげられる。
相同組換えに用いられるDNAとしては、
(a)薬剤耐性遺伝子の両端に、塩基の欠失、置換もしくは付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAまたは該DNAと相同性があるDNAを有する直鎖DNA、
(b)塩基の欠失、置換もしくは付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNA、または該DNAと相同性があるDNAを直接連結した直鎖DNA、
(c)薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が連結したDNAの両端に、塩基の欠失、置換もしくは付加の導入対象である染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAまたは該DNAと相同性があるDNAを有する直鎖DNA、
(d)上記(a)の直鎖DNAにおいて、薬剤耐性遺伝子と染色体DNA上の領域の両外側に存在するDNAの間に、さらに酵母由来のFlp recombinase〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 82, 5875 (1985)〕が認識する塩基配列を有するDNA、等をあげることができる。
例えば宿主微生物にエシェリヒア・コリを用いた場合は、薬剤耐性遺伝子としては、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子およびアンピシリン耐性遺伝子等をあげることができる。
酵母由来のFlp recombinaseが認識する塩基配列とは、Flp recombinaseが認識し、相同組換えを触媒する塩基配列であれば、特に限定されないが、好ましくは配列番号9で表される塩基配列があげられる。酵母由来のFlp recombinaseが認識することができ、相同組換えを触媒することができれば、配列番号9で表される塩基配列において1個〜数個の塩基が欠失、置換または付加されていてもよい。
該相同性は、上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて決定することができる。
微生物の染色体DNAに塩基の欠失、置換または付加を導入する方法としては、以下の方法1〜4があげられる。
方法1:上記(a)または(d)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択する方法。
方法2:上記方法1により取得された形質転換株に、上記(b)の直鎖DNAを導入し、該方法により染色体DNA上に挿入された薬剤遺伝子を削除することにより、微生物の染色体DNA上の領域を置換または欠失させる方法。
方法3:
[1]上記(c)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択し、
[2]染色体DNA上の置換または欠失の対象領域の両外側に存在するDNAと相同性を有するDNAを、染色体DNA上における方向と同一の方向で連結したDNAを合成し、上記[1]で得られた形質転換株に導入し、
[3]ネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が発現する条件下において、上記[2]の操作を行った形質転換株を培養し、該培養において生育可能な株を、薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子が染色体DNA上から削除された株として選択する方法。
方法4:
[1]上記(d)の直鎖DNAを宿主微生物に導入し、薬剤耐性を指標に該直鎖DNAが染色体DNA上に相同組換えにより挿入された形質転換株を選択し、
[2]上記[1]で得られた形質転換株にFlp recombinase遺伝子発現プラスミドを導入し、該遺伝子を発現させた後、上記[1]で用いた薬剤に感受性である株を取得する方法。
上記方法2〜4は、最終的に得られる形質転換株の染色体DNA上に薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子等の外来遺伝子を残さない方法であるため、同一の薬剤耐性遺伝子およびネガティブセレクションに用いることができる遺伝子を用いて、該方法を繰り返すことにより、容易に染色体DNA上の位置の異なる2以上の領域に塩基の欠失、置換または付加を有する微生物を製造することができる。
また、本発明に用いる微生物のD−乳酸脱水素酵素(EC 1.1.1.28)活性を低下または喪失させ、さらに好ましくはL−乳酸脱水素酵素(EC.1.1.1.27)活性を強化することにより、L−乳酸の生産性が高い微生物を造成することができ、逆にL−乳酸脱水素酵素活性を低下または喪失させ、さらに好ましくはD−乳酸脱水素酵素活性を強化することにより、D−乳酸の生産性が高い微生物を造成することもできる。
また、D−乳酸脱水素酵素活性またはL−乳酸脱水素酵素活性が強化された微生物は、これらの酵素遺伝子を公知の方法で該微生物に導入することにより取得することができる。該遺伝子は、染色体DNA上に組み込まれていてもよいし、染色体外にプラスミドDNAとして存在していてもよい。
このようにして得た本発明に用いられる微生物を、鉄の含有量が2μmol/l以下、好ましくは1.5μmol/l以下、より好ましくは1μmol/l以下、さらに好ましくは0.3μmol/l以下、特に好ましくは、含有量がゼロである培地に培養し、培養物中に乳酸を生成、蓄積させ、該培養物から乳酸を採取することにより、乳酸を製造する。本発明の方法ではD−乳酸およびL−乳酸のいずれも製造することができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物等を用いることができる。
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
以下に実施例を示すが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
なお、UbiC、E、GおよびHの欠損した株は、例えば以下の方法に準じて調製することもできる。
エシェリヒア・コリKM22株[Gene, 246, 321-330 (2000)]の染色体DNAを鋳型とし、各々の3’末端の25塩基が、KM22株染色体DNA上のカナマイシン耐性遺伝子の両末端にハイブリダイズするように設計してある配列番号15および16で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用い、PCRを行う。
上記で取得したDNA断片を鋳型とし、配列番号19および20、配列番号21および22、配列番号23および24、ならびに配列番号25および26で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用い、PCRを行う。配列番号19、21、23および25で表される塩基配列からなるDNAは、5’末端側にそれぞれubiC遺伝子、ubiE遺伝子、ubiG遺伝子およびubiH遺伝子の5’末端側領域付近との相同配列を有する45塩基からなる塩基配列を有し、3’末端側に配列番号17で表される塩基配列からなるDNAを有している。配列番号20、22、24および26で表される塩基配列を有するDNAは、5’末端側にそれぞれubiC遺伝子、ubiE遺伝子、ubiG遺伝子およびubiH遺伝子の3’末端側領域付近と相同配列を有する45塩基からなる塩基配列を有し、3’末端側に配列番号18で表される塩基配列にハイブリダイズする25塩基からなるDNAを有する。
形質転換した細胞を50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地等の寒天培地上に塗布し、30℃で一晩培養し、生育した株を、それぞれエシェリヒア・コリBW25113株の染色体DNA上のubiC遺伝子、ubiE遺伝子、ubiG遺伝子、またはubiH遺伝子が欠損した株として取得することができる。
(2)コリスミ酸からユビキノンを生合成する酵素のうちUbiC、E、GおよびH以外の酵素、すなわち、4−ヒドロキシ安息香酸ポリプレニルトランスフェラーゼ(以下、UbiAともいう)、2−オクタプレニルフェノールヒドロキシラーゼ(以下、UbiBともいう)、3−ポリプレニル−4―ヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(以下、UbiD/Xともいう)、および2−ポリプレニル−3−メチル−6−メトキシ−1,4−ベンゾキノールヒドロキシラーゼ(以下、UbiFともいう)をコードする遺伝子の欠損株を上記方法に準じて調製(エシェリヒア・コリΔubiA株およびエシェリヒア・コリΔubiB株)、または、奈良先端科学技術大学院大学より入手(エシェリヒア・コリΔubiD株、エシェリヒア・コリΔubiX株およびエシェリヒア・コリΔubiF株)した。
50時間後の培養物を遠心分離した後に上清を0.45μmのフィルターでろ過し、ろ液を、分離カラムとしてSH1011カラム(昭和電工社製)を用い、移動相として20mmol/Lの硫酸を用いる高速液体クロマトグラフィーに供し、セロビオースを内部標準としてD−乳酸量および酢酸量を定量した。
なお、OD6601あたりのD−乳酸生産量はD−乳酸の生産性を知る指標である。数値が高いほど、D−乳酸の生産効率が高いと判断する。
該菌体懸濁液60μlを、6mlの実施例1記載の本培養用液体培地(ただし、鉄濃度は第2表記載の濃度)の入った太型試験管に植菌し、37℃で54時間振とう培養した。実施例1記載の方法と同様の方法により、培養終了後のD−乳酸および酢酸の生成量を調べた。
配列番号10−人工配列の説明:合成DNA
配列番号11−人工配列の説明:合成DNA
配列番号12−人工配列の説明:合成DNA
配列番号13−人工配列の説明:合成DNA
配列番号14−人工配列の説明:合成DNA
配列番号15−人工配列の説明:合成DNA
配列番号16−人工配列の説明:合成DNA
配列番号17−人工配列の説明:合成DNA
配列番号18−人工配列の説明:合成DNA
配列番号19−人工配列の説明:合成DNA
配列番号20−人工配列の説明:合成DNA
配列番号21−人工配列の説明:合成DNA
配列番号22−人工配列の説明:合成DNA
配列番号23−人工配列の説明:合成DNA
配列番号24−人工配列の説明:合成DNA
配列番号25−人工配列の説明:合成DNA
配列番号26−人工配列の説明:合成DNA
Claims (2)
- コリスミ酸ピルビン酸リアーゼ(以下、UbiCともいう)、2−オクタプレニル−6−メトキシ−1,4−ベンゾキノンメチラーゼ(以下、UbiEともいう)、3−デメチルユビキノン 3−メチルトランスフェラーゼ(以下、UbiGともいう)および2−ポリプレニル−6−メトキシフェノールヒドロキシラーゼ(以下、UbiHともいう)から選ばれる1つ以上の酵素の活性が低下または喪失しており、かつ乳酸を生産する能力を有する微生物を、鉄の含有量が2μmol/l以下である培地に培養し、培養物中に乳酸を生成、蓄積させ、該培養物から乳酸を採取する乳酸の製造方法。
- 微生物が、染色体DNA上のUbiC、UbiE、UbiGおよびUbiHから選ばれる酵素をコードする遺伝子の一部または全部を欠損した微生物である、請求項1記載の製造方法。
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