JP4692173B2 - D−乳酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、これをコードする遺伝子およびd−乳酸の製造方法 - Google Patents

D−乳酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、これをコードする遺伝子およびd−乳酸の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、D−乳酸の効率的生産技術に関する。詳しくは、酵母にD−乳酸を産生させるのに適する、D−乳酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドをコードする塩基配列を有するDNA、該DNAを用いた形質転換体、および該形質転換体を利用したD−乳酸の製造方法に関する。
生分解性ポリマーであるポリ乳酸は、CO問題・エネルギー問題の顕在化とともにサスティナビリティー(持続可能性)、LCA(ライフサイクルアセスメント)対応型製品として強い注目を浴びており、その原料である乳酸には効率的で安価な製造法が求められている。
ちなみに現在生産されているポリ乳酸はL−乳酸ポリマーであるが、乳酸にはL−乳酸とD−乳酸の2種類の光学異性体があり、D−乳酸についてもポリマー原料や農薬、医薬の中間体として近年注目が集まりつつある。但しいずれの用途においても、原料たるL−乳酸、D−乳酸には高い光学純度が要求されるのが事実である。
自然界には乳酸菌などの乳酸を効率良く生産する細菌が存在し、それらを用いた乳酸製造法の中には既に実用化されているものもある。例えば、L−乳酸を効率良く生産させる細菌としてラクトバシラス・デルブレッキィ(Lactobacillus delbrueckiiなどがあり、D−乳酸を効率良く生産させる細菌としてバシラス・ラエボラクティカス(Bacillus laevolacticus)の微生物などが知られている(特許文献1)。いずれの場合も嫌気培養で乳酸の蓄積量は高いレベルに達しているが、光学純度が100%とはならずに、L−乳酸とD−乳酸を分離することが非常に困難である。
そのような乳酸の光学純度低下を回避するには、乳酸を本来生産しない微生物によってD−乳酸を生産することが効果的である。そのような微生物にD−乳酸を生産させるためには、他の微生物からのD−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素遺伝子を導入し、発現させる必要がある。また本来D−乳酸を生産しないわけなので、なにかしら別の化合物を生産する微生物である。その別の化合物の生産を抑制しつつ、D−乳酸を生産させるためには特定の遺伝子破壊技術等が必要である。ただ現状的には、遺伝子破壊法がどのような微生物にでも容易に適応できる訳ではなく、乳酸菌など元来乳酸を高生産できる微生物での適応は困難である。なぜなら乳酸菌はゲノム情報が必ずしも十分とは言えず、遺伝子組換えの宿主としても汎用されていないからである。
それに対しゲノム情報が豊富で、遺伝子組換え宿主としての実績が十分にある微生物として酵母や大腸菌が挙げられる。
大腸菌を組換え宿主としてD−乳酸を生産させた試みがある(特許文献2)。副産物の低減が計られて、高光学純度のD−乳酸を生産できるが、乳酸菌の場合と同じく発酵中はアルカリ物質によりpHを制御する必要がある。培養液を中和するとD−乳酸は乳酸塩として存在することになり、ポリマーの原料とするには精製のために解塩操作をおこなう必要がある。
それに対して、酵母は酸性条件でも発酵することができる微生物であり中和することなくD−乳酸を生産することができる。
これまで、酵母によってL−乳酸を生産させようとする試みはいくつか存在している。その中でも最もL−乳酸生産に成功している方法は、ウシ由来のL−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素遺伝子を酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に導入した方法である(非特許文献1)。
また、既知のラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarmu)由来のD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入することで酵母によってD−乳酸を生産させようとする試みも存在している(特許文献3)。しかしながら、炭酸カルシウムで中和を行っているにもかかわらず、酵母によるL−乳酸ほどD−乳酸の高生産は認められていない。また、D−乳酸の光学純度については言及されていない。
酵母によるD−乳酸の生産性がL−乳酸の生産性とくらべ劣る原因は、D−乳酸発酵により適しているD−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素が見つかっていないためであると考えられる。
酵母は本来エタノールを生産する微生物であるため、ピルビン酸からエタノールへの代謝能力が優れている。しかし酵母に乳酸を生産させるためには、そのピルビン酸を乳酸に変換する代謝能力が高い必要がある。その代謝能力を司る酵素が乳酸デヒドロゲナーゼ酵素である。つまりD−乳酸発酵により適したD−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素が重要となる。L−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素は広く研究対象として取り扱われているためピルビン酸との親和性の高いものが数多く知られており、またその遺伝子も数多く知られている(非特許文献2)。
一方、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素はあまり研究対象として取り扱われていないため、知られている遺伝子の数が少ない。
そこで、D−乳酸発酵により適したD−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の遺伝子をクローニングすることができ、その遺伝子を酵母に導入すれば、光学純度の高いD−乳酸を中和操作が不要な低コスト発酵により生産可能となるものと期待されるが、これまでそれを実現する技術は存在しなかった。
特開2003−088392 特開2005−102625 特開2002−136293 イシダら、アプライド アンド エンバイロンメンタル マイクロバイオロジー、アメリカ合衆国、(2004)、71、1964−1970〔Nobuhiro, I., Appl Environ Microbiol, United States (2004) 71 1964-1970〕 エレンら、マイクロバイオロジカル レビュー、アメリカ合衆国、(1980)、44、106−139〔Ellen, I. Garvie, Microbiol. Rev., United States (1980) 44 106-139〕
本発明の目的は、D−乳酸発酵により適したD−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の遺伝子をクローニングし、乳酸を生産しない宿主細胞に導入、発現させることで、高光学純度のD−乳酸を効率的に生産する方法を提供することにある。
本発明者らは、各種のD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子について微生物での発現に対して試みた結果、D−乳酸の産生量を増大させるのに適したDNA配列を見出した。そして、かかるDNA配列を有するDNA構築物を利用することにより、上記した課題を解決するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様からなる。
(1)下記(A)または(B)のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列。
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されているアミノ酸配列であって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列。
(2)下記(a)またはの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列。
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列
(3)下記(c)から(e)の何れかの塩基配列を有するDNA。
(c)配列番号2に記載の塩基配列。
(d)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されている塩基配列であって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
(e)配列番号2に記載の塩基配列もしくはその相補配列またはそれらの一部とストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵
素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
(4)(2)または(3)に記載のDNAを用いて宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体。
(5)前記宿主細胞がサッカロマイセス・セレビシエである、(4)記載の形質転換体。
(6)(4)または(5)に記載の形質転換体に由来する細胞を培養する工程と、該工程から得られる培養物からD−乳酸を分離する工程、とを備える、D−乳酸の製造方法であって、形質転換体に由来する細胞を培養する工程が中和せずに培養する工程である、D−乳酸の製造方法。
本発明によれば、宿主細胞、特に酵母におけるD−乳酸発酵に適したD−乳酸デヒドロゲナーゼ活性を備えるポリペプチドをコードする塩基配列を有するDNAが提供される。このDNAを利用することにより、D−乳酸を高生産可能な形質転換体を容易に得ることができ、ひいては、D−乳酸を効率よく生産することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(ポリペプチド、DNA)
本発明におけるD−乳酸デヒドロゲナーゼ(以下、D−LDHともいう)活性を備えるポリペプチドとしては、好ましくは、乳酸菌などの原核生物由来であり、より好ましくは、有胞子乳酸菌由来であり、さらに好ましくは、バシラス・ラエボラクティカス由来である。例えば、バシラス・ラエボラクティカス由来のD−LDHとして配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを挙げることができる。さらに、本発明におけるポリペプチドは、これらポリペプチドのホモログも包含している。これらのホモログは、天然由来のD−LDHのアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列でありかつD−LDH活性を有しているポリペプチド、および、天然由来のD−LDHとアミノ配列の相同性が少なくとも70%、好ましくは80%以上を有しかつD−LDH活性を有しているポリペプチドを含んでいる。
本発明のDNAは、D−LDH活性を備えるポリペプチドをコードする塩基配列を有する、あるいは当該塩基配列からなるDNAである。
また、本明細書において、DNAは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAなど、その由来を問うものではない。また、1本鎖でも、その相補鎖を有する2本鎖であってもよい。また、天然のあるいは人工のヌクレオチド誘導体を含んでいてもよい。
本発明のDNAは、配列番号2に示す塩基配列からなるDNAのホモログも包含している。ホモログとしては、例えば、これらのDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAを挙げることができる。すなわち、これらのいずれかのDNAの全体若しくは一部あるいはその相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAである。かかるホモログは、同時にD−LDH活性を備えるポリペプチドをコードしている。ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとは、例えば、もとの塩基配列の任意の少なくとも20個、好ましくは25個、より好ましくは少なくとも30個の連続した配列を一つあるいは複数個選択したDNAをプローブDNAとして、当業者の周知のハイブリダイセーション技術(Current Protocols I Molecular Biology edit. Ausubel et al., (1987) Publish . John Wily & SonsSectoin 6.3-6.4)などを用いて、ハイブリダイズするDNAである。ここでストリンジェントな条件としては、例えば50%ホルムアミド存在下でハイブリダイゼーション温度が37℃であり、より厳しい条件としては、約42℃である。さらに厳しい条件としてはホルムアミド存在下で約65℃とすることができる。
また、バシラス・ラエボラクティカス由来のD−LDHのアミノ酸配列、例えば、配列番号1において、1若しくは数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、D−LDH活性を有するポリペプチドをコードするとともに、前記バシラス・ラエボラクティカス由来のD−LDHをコードする塩基配列、例えば、配列番号2の全部若しくは一部からなるDNAあるいはその相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする、DNAも、本発明のDNAに含まれる。また、配列番号2のコード領域に記載の塩基配列によってコードされるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、D−LDH活性を有するポリペプチドをコードするとともに、配列番号2のコード領域において、前記アミノ酸の置換などに対応する塩基の改変がなされた塩基配列を有するDNAも、本発明のDNAに含まれる。なお、アミノ酸配列における変異の数は、もとのポリペプチドの機能が維持できる限り制限されないが、全アミノ酸の70%以内であることが好ましく、より好ましくは、30%以内であり、さらに好ましくは20%以内である。
また、このようなDNAのホモログは、もとのDNAの塩基配列のコード領域に対して、少なくとも80%、好ましくは、90%以上のホモロジーを有する塩基配列を含む、あるいは当該塩基配列からなるDNAであることが好ましい。なお、DNAの塩基配列のホモロジーは、遺伝子解析プログラムBLASTなどによって決定することができる。
本発明のDNAは、化学的に合成することもできるし、長鎖DNAの合成方法として知られている藤本らの手法(藤本英也、合成遺伝子の作製法、植物細胞工学シリーズ7 植物のPCR実験プロトコール、1997、秀潤社、p95−100)を採用して合成することもできる。
また、アミノ酸配列における改変は、改変しようとするアミノ酸配列に、部位特異的変位導入法(Current Protocols I Molecular Biology edit. Ausubel etal., (1987) Publish . John Wily & Sons Sectoin 8.1-8.5)等を用いて、適宜、置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより行うことができる。また、このような改変は、人工的に変異を導入しあるいは合成したものに限られず、人工的な変異処理に基づいてあるいはこれに限られず自然界におけるアミノ酸の変異によっても生じたものも包含される。
(DNA構築物)
本発明のDNAを用いて宿主細胞を形質転換して、このDNAによってコードされるポリペプチドを発現させることにより、そのD−LDH活性により宿主細胞においてD−乳酸を産生させることができる。形質転換にあたっては、本発明のDNAからなるDNAセグメントを、宿主細胞内で発現可能とするDNA構築物を用いる。形質転換のためのDNA構築物の好ましい態様としては、プラスミド(DNA)、バクテリオファージ(DNA)、レトロトランスポゾン(DNA)、人工染色体(YAC、PAC、BAC、MAC等)を、外来遺伝子の導入形態(染色体外あるいは染色体内)や宿主細胞の種類に応じて選択して採用することができる。したがって、本発明のDNA構築物は、本発明のDNAの他、これらのいずれかの態様のベクターの構成セグメントを備えることができる。好ましい原核細胞性ベクター、真核細胞性ベクター、動物細胞性ベクター、植物細胞性ベクターは当該分野において周知である。
なお、プラスミドDNAとしては、例えば、pRS413、pRS415、pRS416、YCp50、pAUR112またはpAUR123などのYCp型大腸菌−酵母シャトルベクター、pYES32またはYEp13などのYEp型大腸菌−酵母シャトルベクター、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pAUR101またはpAUR135などのYIp型大腸菌−酵母シャトルベクター、大腸菌由来のプラスミド(pBR322、pBR325、pUC18、pUC19、pUC119、pTV118N、pTV119N、pBluescript、pHSG298、pHSG396又はpTrc99AなどのColE系プラスミド、pACYC177又はpACYC184などのp1A系プラスミド、pMW118、pMW119、pMW218又はpMW219などのpSC101系プラスミド等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5等)などを挙げることができる。ファージDNAとしては、λファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt100、gt11、zap)、φX174、M13mp18又はM13mp19などを挙げることができる。レトロトランスポゾンとしては、Ty因子などを挙げることができる。YACとしては、pYACC2などを挙げることができる。
本発明のDNA構築物を作製するには、本発明のDNAを含むフラグメントなどを適当な制限酵素で切断し、使用するベクターDNAの制限酵素部位あるいはマルチクローニングサイトに挿入などすることによる。本発明のDNA構築物の第1の態様は、本発明のDNAからなるDNAセグメントを発現可能に連結されるプロモーターセグメントを備えている。すなわち、プロモーターにより制御可能にそのプロモーターの下流側に本発明のDNAセグメントが連結されている。
本発明のDNA、すなわち、D−LDH活性を備えるポリペプチドの発現にあっては、酵母における発現が好ましいことから、酵母中で発現するプロモーターを使用することが好ましい。かかるプロモーターとしては、例えば、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子プロモーター、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーターなどを使用することが好ましい。特に、サッカロマイセス属由来のピルビン酸脱炭酸酵素(1)プロモーターまたはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターが好ましく、サッカロマイセス・セレビシエ由来のピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子プロモーターまたはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターを利用することがより好ましい。これらのプロモーターは、サッカロマイセス属(セレビシエ)のエタノール発酵経路において高発現されているからである。なお、かかるプロモーター配列は、サッカロマイセス属酵母のピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子またはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のゲノムDNAを鋳型とするPCR増幅法によって単離することができる。
また、本発明のDNA構築物の他の態様である第2のDNA構築物は、本発明のDNAの他、宿主染色体の相同組換えのためのDNAセグメントを備える。相同組換え用DNAセグメントは、宿主染色体において本発明のDNAを導入しようとするターゲット部位近傍のDNA配列と相同なDNA配列である。相同組換え用DNAセグメントは、少なくとも1個備えられ、好ましくは、2個備えられている。例えば、2個の相同組換え用DNAセグメントを、染色体上のターゲット部位の上流側と下流側のDNAに相同なDNA配列とし、これらのDNAセグメントの間に本発明のDNAを連結することが好ましい。
相同組換えにより宿主染色体に本発明のDNAを導入する場合、宿主染色体上のプロモーターにより制御可能に本発明のDNAを導入することができる。この場合、目的遺伝子の導入によって、同時に、本来当該プロモーターによって制御されるべき内在性遺伝子を破壊し、この内在性遺伝子に替えて外来の本発明のDNAを発現させることができる。特に、当該プロモーターが、宿主細胞において高発現プロモーターである場合に有用である。
かかる発現系を宿主染色体上に創出するには、宿主染色体において高発現遺伝子をターゲットとし、この遺伝子を制御するプロモーターの下流にプロモーターにより制御を受けるように本発明のDNAを導入するようにすることが好ましい。酵母などのエタノール発酵性微生物を宿主とする場合、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子、特にピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子をターゲットとし、内在性のピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子プロモーターの制御下にD−LDH活性ポリペプチドをコードするDNAを導入することができる。この場合、相同組換え用DNAセグメントは、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子のD−LDHの構造遺伝子領域あるいはその近傍の配列(開始コドンの近傍の配列、開始コドンの上流域の配列、構造遺伝子内の配列などを含む)と相同とすることができる。好ましくは、サッカロマイセス属、特にセレビシエを宿主として、この宿主のピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子をターゲットとするDNA構築物とする。かかるDNA構築物によれば、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子の破壊とこの構造遺伝子部分のD−LDHによる置換を同時に達成することができる。ピルビン酸脱炭酸酵素1は、ピルビン酸からアセトアルデヒドへの付加逆反応を媒介する酵素であり、この遺伝子を破壊することにより、アセトアルデヒドを経たエタノール産生が抑制されることが期待されるとともに、ピルビン酸を基質とするD−LDHによる乳酸産生が促進されることが期待できる。
なお、第1のDNA構築物あっても、宿主染色体との相同組換えのためのDNAセグメントを備えることにより、相同組換え用のDNA構築物とすることができる。第1のDNA構築物にあっては、DNA構築物中のプロモーターセグメントを、宿主染色体との相同組換え用のDNAセグメントに兼用することもできる。例えば、宿主サッカロマイセス・セレビシエに対して、サッカロマイセス・セレビシエ宿主染色体にあるプロモーター、例えば、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子プロモーターをプロモーターセグメントとして有するDNA構築物は、当該遺伝子をターゲット部位とするターゲティングベクターを構成する。この場合、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子の構造遺伝子領域に対する相同配列を備えることが好ましい。
なお、DNA構築物には、ターミネーター他、必要に応じてエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)を連結することができる。選択マーカーとしては、特に限定しないで、薬剤抵抗性遺伝子、栄養要求性遺伝子などを始めとする公知の各種選択マーカー遺伝子を利用できる。例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等を使用することができる。
(DNA構築物による形質転換)
一旦、DNA構築物が構築されたら、適当な宿主細胞に、トランスフォーメーション法や、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈殿法、アグロバクテリウム法、PEG法、直接マイクロインジェクション法等の各種の適切な手段のいずれかにより、これを導入することができる。DNA構築物の導入後、その受容細胞は、選択培地で培養される。
宿主細胞は、エッシェリシア・コリ、バシラス・サチルスなどの細菌、サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Phichia pastoris)などの酵母、sf9、sf21等の昆虫細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などの動物細胞、サツマイモ、タバコなどの植物細胞などとすることができる。好ましくは、酵母などのアルコール発酵を行う微生物あるいは耐酸性微生物であり、例えば、サッカロマイセス・セレビシエなどのサッカロマイセス属を始めとする酵母である。具体的には、サッカロマイセス・セレビシエNBRC10505株である。
DNA構築物によって形質転換された形質転換体においては、DNA構築物の構成成分が染色体上あるいは染色体外因子(人工染色体を含む)上に存在することになる。なお、DNA構築物が染色体外に維持されている場合、あるいは、ランダムインテグレーションにより染色体に組み込まれている場合には、D−LDHの基質であるピルビン酸を基質とする他の酵素、例えば、ピルビン酸脱炭酸酵素の遺伝子(サッカロマイセス属酵母においては、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子)は、ターゲティングベクターによりノックアウトされていることが好ましい。上述のDNA構築物であって、相同組換えを達成できるDNA構築物が導入されると、宿主染色体上の所望のプロモーターあるいは当該プロモーターと置換された当該プロモーターのホモログの下流に当該プロモーターによって制御可能に連結された本発明のDNAであるDNAセグメントが存在することになる。サッカロマイセス属酵母の形質転換体にあっては、宿主染色体上において、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子プロモーターあるいは当該プロモーターと置換された当該プロモーターのホモログの下流に当該プロモーターによって制御可能に本発明のDNAを備えることが好ましい。また、通常、相同組換え体における本発明のDNAの下流側には、選択マーカー遺伝子や、破壊された構造遺伝子の一部(DNA構築物上の相同配列に対応する部位)が存在する。
なお、所望のプロモーター下に本発明のDNAが導入されたか否かの確認は、PCR法やサザンハイブリダイゼーション法により行うことができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、導入部位特異的プライマーによりPCRを行い、PCR産物について、電気泳動において予期されるバンドを検出することによって確認できる。あるいは蛍光色素などで標識したプライマーでPCRを行うことでも確認できる。これらの方法は、当業者において周知である。
(D−乳酸の製造)
DNA構築物が導入されて得られる形質転換体を培養することにより、培養物中に外来遺伝子の発現産物であるD−乳酸が生成する。培養物からD−乳酸を分離する工程を実施することにより、D−乳酸を得ることができる。なお、本発明において培養物とは、培養上清の他、培養細胞あるいは菌体、細胞若しくは菌体の破砕物を包含している。本発明の形質転換体の培養にあたっては、形質転換体の種類に応じて培養条件を選択することができる。このような培養条件は、当業者においては周知である。大腸菌や酵母等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化可能な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれも使用することができる。炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコールを用いることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物の他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等を用いることができる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する倍地としては、一般に使用されているRPMI1640倍地、DMEM倍地またはこれらの培地にウシ胎児血清などを添加した培地を用いることができる。培養は、通常、5%CO2存在下、37℃で1〜30日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
培養は、通常、振とう培養または通気攪拌培養等の好気条件下、30℃で6〜48時間行う。D−乳酸が培地中に蓄積するにしたがって培養液のpHが低下する。しかし、pHを中和し、制御しないほうが好ましい。中和することでD−乳酸が培養液中でD−乳酸塩として存在することとなり、精製工程においてより低コストな蒸留方法が利用できなくなるためである。本発明の形質転換体に由来する細胞を培養することを含む本発明の製造方法によれば、中和することなく、酸性条件においても高効率でD−乳酸を生産することが出来る。培養中は、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加することができる。
上記のようにして得られたD−乳酸培養液からD−乳酸を分離するには、従来より知られている方法によって、分離することができる。例えば、得られたD−乳酸培養液からフィルターにて菌体を分離した後、pHを1以下にしてからジエチルエーテルや酢酸エチル等で抽出する方法、イオン交換樹脂に吸着洗浄した後に溶出する方法、酸触媒の存在下でアルコールと反応させてエステルとし蒸留する方法、カルシウム塩やリチウム塩として晶析する方法などがある。好ましくは、得られたD−乳酸培養液からフィルターにて菌体を分離した後、水分を蒸発させた濃縮D−乳酸溶液を蒸留操作にかける。ここで、蒸留する際には蒸留原液の水分濃度が一定になるように水分を供給しながら蒸留するのが好ましい。D−乳酸水溶液の留出後は、水分を加熱蒸発することにより濃縮し、目的とする濃度の精製D−乳酸を得ることができる。留出液として低沸点成分(エタノール、酢酸等)を含むD−乳酸水溶液を得た場合は、低沸点成分をD−乳酸濃縮過程で除去することが好ましい。なお、蒸留操作後、留出液について必要に応じてイオン交換樹脂、活性炭、クロマト分離等による不純物除去を行い、さらに高純度のD−乳酸を得ることもできる。
以下、実施例をもって本発明の実施の態様を説明するが、これらは単なる例示であり本発明を何等制限するものではない。
(実施例1)バシラス・ラエボラクティカス JCM2513の染色体DNAの調製
バシラス・ラエボラクティカス JCM2513をGYP培地(特開2003−088392号公報)100mlに接種し、温度30℃で24時間培養し、培養物を得た。この培養物を3000rpmで15分間、遠心分離処理し湿潤菌体0.5gを得た後、該菌体から斎藤、三浦の方法(Biochem.Biophys.Acta.,72,619(1963))により染色体DNAを得た。次いで、この染色体DNA60μg及び制限酵素Sau3AI、3ユニットを10mMトリス−塩酸緩衝液(50mM NaCl、10mM MgSO4及び1mM ジチオスレイトール含有(pH 7.4))におのおの混合し、温度37℃で30分間反応させた。反応終了液を常法により、フェノール抽出処理し、エタノール沈澱処理してSau3AIで消化されたバシラス・ラエボラクティカスJCM2513の染色体DNA断片50μgを得た。
(実施例2)プラスミドベクターDNAを利用したバシラス・ラエボラクティカス JCM2513の遺伝子ライブラリーの作製
エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)で自律複製可能なプラスミドベクタ−DNA(pUC19)20μg及び制限酵素BamHI200ユニットを50mMトリス−塩酸緩衝液(100mM NaCl及び10mM硫酸マグネシウム含有(pH7.4))に混合し、温度37℃で2時間反応させて消化液を得、該液を常法によりフェノール抽出及びエタノール沈澱処理した。
この後、プラスミドベクター由来のDNAフラグメントが再結合することを防止するためバクテリアルアルカリホスファターゼ処理により、DNA断片の脱リン酸化を行い、常法によりフェノール抽出処理し、更にエタノール沈澱処理を行った。
このBamHIで消化されたpUC19を1μg、実施例1で得られたSau3AIで消化されたバシラス・ラエボラクティカス JCM2513の染色体DNA断片を1μg、及び2ユニットのT4DNAリガーゼ(宝酒造(株)製)を、66mM塩化マグネシウム、10mMジチオスレイトール及び10mM ATPを含有する66mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に添加し、温度16℃で16時間反応し、DNAを連結させた。次いで該DNA混合物で、常法によりエシェリヒア・コリ JM109を形質転換し、これを50μg/mlのアンピシリンナトリウムを含むLB寒天培地上にまき、約20,000個のコロニーを得、遺伝子ライブラリーとした。約20,000個のコロニーより、組換えDNAの回収を行なった。回収の方法は上記に示した斎藤、三浦の方法に従った。
(実施例3)D−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のスクリーニング用宿主の作製
バシラス・ラエボラクティカス JCM2513株のD−LDH遺伝子のスクリーニングを機能相補によって行った。その原理の詳細は(DOMINIQUE, G., Appl Environ Microbiol, United States (1995) 61 266-272)に記載されている。
つまりエッシェリシア・コリのD−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性およびピルビン酸ギ酸リアーゼ酵素活性を欠失した株を作製する必要がある。
キリルらの方法(Kirill, A., PNAS, United States (2000) 97 6640-6645)によってエッシェリシア・コリのD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldhA)およびピルビン酸ギ酸リアーゼ遺伝子(pflBおよびpflD)を破壊欠失した株を作製した。この作製した株をエシェリヒア・コリ TM33株(coli ΔldhA ΔpflB::Km ΔpflD::Cm )と命名し、D−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のスクリーニング用宿主とした。
(実施例4)D−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のスクリーニング
エシェリヒア・コリ TM33株を50μg/mlのカナマイシン硫酸塩および15μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB培地100mlに接種し、温度37℃で24時間培養し、培養物を得た。この培養物を3,000r.p.m.で15分間、遠心分離処理し湿潤菌体0.8gを得た。この湿潤菌体を10%グリセロール溶液10mlで3度洗浄した後、10%グリセロール溶液0.1mlにけん濁しコンピテントセルとした。このコンピテントセルに実施例2で得たバシラス・ラエボラクティカス JCM2513株の遺伝子ライブラリーを1μl加え、電気穿孔法の常法に従い導入した株を50μg/mlのアンピシリンナトリウムを含むM9GP寒天培地(M9培地+0.4%グルコース+0.2%ペプトン)上にまき、嫌気条件下で生育可能であった株を数株得た。
(実施例5)D−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含有するDNAの塩基配列の解析
上記で得られた組換えDNAを含有するエシェリヒア・コリ TM33/pBL2から常法に従いプラスミドを調製し、得られた組換えDNAを用い塩基配列の決定を行った。塩基配列の決定は、Taq DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオケミカル社製)を用いSangerの方法に従って行った。得られたD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含むDNAの塩基配列は2,995塩基対あった。この配列についてGenetyx(ソフトウェア開発株式会社製)を用いてオープン・リーディング・フレーム検索を行い、本発明のDNA配列(配列番号2)およびコードするポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号1)に仮決定した。
塩基配列、アミノ酸配列おのおのについて既知の配列との相同性比較を行った。用いたデータベースはSWISS−PROTである。その結果、配列番号2に示される遺伝子及びそれにコードされるポリペプチド(配列番号1)は新規であることが確認された。
既知のタンパク質の中でもっとも高い相同性を示したのは、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)のD−乳酸デヒドロゲナーゼの43%であった。
(実施例6)D−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子発現ベクターの作製)
本発明のバシラス・ラエボラクティカスおよび比較対象としてラクトバシラス・プランタラム、およびペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)からD−LDH遺伝子をクローニングした。各D−LDH遺伝子は、全てPCR法によりクローニングを行い、同様の方法で発現ベクターに導入している。クローニング方法を以下に示す。
バシラス・ラエボラクティカス、ラクトバシラス・プランタラムおよびペディオコッカス・アシディラクティシを培養し遠心回収後、UltraClean Microbial DNA Isolation Kit(MO BIO社製)を用いてゲノムDNAの抽出を行った。詳細な操作方法は、付属のプロトコールに従った。得られたゲノムDNAを続くPCRの鋳型とした。
上記で得られたDNAを鋳型として、それぞれPCRによりD−LDH遺伝子のクローニングを行った。PCR増幅反応には、Taqの50倍の正確性を持つとされるKOD-Plus-polymerase(東洋紡)を用いた。反応バッファー、dNTPmixなどは付属のものを使用した。各D−LDH遺伝子増幅用プライマー(バシラス・ラエボラクティカス:配列番号3、4 ラクトバシラス・プランタラム:配列番号5,6 ペディオコッカス・アシディラクティシ:配列番号7,8)は、5末端側にはXhoI認識配列、3末端側にはNotI認識配列がそれぞれ付加されるようにして作製した。
各PCR増幅断片を精製し末端をT4 Polynucleotide Kinase(TAKARA社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーションは、DNA Ligation Kit Ver.2(TAKARA社製)を用いて行った。エシェリヒア・コリ DH5αに形質転換し、プラスミドDNAを回収することにより各種D−LDH遺伝子がサブクローニングされたプラスミドが得られた。この各D−LDH遺伝子が挿入されたpUC118ベクターを制限酵素XhoIおよびNotIで切断し、得られた各DNA断片を酵母発現用ベクターpTRS11(図1)のXhoI/NotI切断部位に導入した。以後、このようにして作製した各D−LDH遺伝子発現ベクターをpTM63(バシラス・ラエボラクティカス由来D−LDH遺伝子(配列番号2))、pTM64(ラクトバシラス・プランタラム由来D−LDH遺伝子、比較例1)、pTM65(ペディオコッカス・アシディラクティシ由来D−LDH遺伝子、比較例2)とそれぞれ示す。
なお、バシラス・ラエボラクティカス JCM2513株由来のD−LDH遺伝子発現ベクターである上記pTM63は、プラスミド単独で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に受託番号FERM P−20542として寄託されている。(寄託日:平成17年5月18日)。
(実施例7)D−LDH遺伝子発現ベクターの酵母への導入
実施例6のようにして得られたpTM63〜65を酵母サッカロマイセス・セレビシエ NBRC10505株に形質転換した。形質転換は、YEASTMAKER Yeast Transformation System(CLONTECH)を用いた酢酸リチウム法により行った。詳細は、付属のプロトコールに従った。宿主とするサッカロマイセス・セレビシエ NBRC10505株はウラシル合成能を欠損した株であり、pTM63〜65の持つURA3遺伝子の働きにより、ウラシル非添加培地上でpTM63〜65の導入された形質転換体の選択が可能である。
このようにして得られた形質転換体へのD−LDH遺伝子発現ベクター導入の確認は、ウラシル非添加の液体培地で培養した形質転換株から、ゲノムDNA抽出キットGenとるくん(TAKARA社製)によりプラスミドDNAを含むゲノムDNAを抽出し、これを鋳型としてPreMix Taq(TAKARA社製)を用いたPCRにより行った。プライマーには、各D−LDH遺伝子をクローニングした際に用いたプライマーを使用した。その結果、全ての形質転換体において、各D−LDH遺伝子が導入されていることを確認した。
(実施例8)無中和培養におけるD−乳酸生産性の比較
実施例7のようにして得られたpTM63〜pTM65が導入されたサッカロマイセス・セレビシエ NBRC10505株(以下、それぞれNBRC10505/pTM63〜65株と示す)を用いてD−乳酸生産テストを行い、各D−LDH遺伝子を比較した。
寒天培地上からNBRC10505/pTM63〜65を少量とり、3mLのウラシル非添加の合成培地(2%グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base without amino acid(DIFCO)、1.92g/L dropout mixture without uracil(SIGMA))に植菌し、30℃で一晩培養した。この前培養液を新しいウラシル非添加の合成培地(5%グルコース、0.67% Yeast Nitrogen Base without amino acid(DIFCO)、1.92g/L dropout mixture without uracil(SIGMA))10mLに2%植菌し、30℃で培養を実施した。培養開始から65時間後の培養液を遠心分離し、得られた上清を膜濾過した後、下記に示す条件でHPLC法により乳酸量を測定した。
カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
また、D−乳酸の光学純度測定は以下の条件でHPLC法により測定した。
カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー社製)
移動相 :1mM 硫酸銅水溶液
流速:1.0ml/min
検出方法 :UV254nm
温度 :30℃
また、D−乳酸の光学純度は次式で計算される。
光学純度(%)=100×(D−L)/(L+D)
ここで、LはL−乳酸の濃度、DはD−乳酸の濃度を表す。
その結果を表1に示す。
Figure 0004692173
D−LDH遺伝子が導入されていないNBRC10505株では、乳酸を全く生産していないのに対し、各D−LDH遺伝子発現ベクターを導入したNBRC10505/pTM63〜65株では、D−乳酸の生産が確認できた。株による乳酸生産量の差は、導入した各D−LDH遺伝子の違いに起因していると考えられる。
すなわち、NBRC10505/pTM63株のD−乳酸生産量が最も多いことから、バシラス・ラエボラクティカス由来のD−LDH遺伝子がD−乳酸発酵により適していることがわかった。
図1は、本発明で用いられる酵母用発現ベクターpTRS11のフィジカルマップを示す図である。

Claims (6)

  1. 下記(A)または(B)のアミノ酸配列を有するポリペプチド。
    (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列。
    (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されているアミノ酸配列であって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列。
  2. 下記(a)またはの塩基配列を有するDNA。
    (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列。
    (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列
  3. 下記(c)から(e)の何れかの塩基配列を有するDNA。
    (c)配列番号2に記載の塩基配列。
    (d)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加されている塩基配列であって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
    (e)配列番号2に記載の塩基配列もしくはその相補配列またはそれらの一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、D−乳酸デヒドロゲナーゼ酵素活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
  4. 請求項2または3に記載のDNAを用いて宿主細胞を形質転換させて得られる形質転換体。
  5. 宿主細胞がサッカロマイセス・セレビシエである、請求項記載の形質転換体。
  6. 請求項4または5に記載の形質転換体に由来する細胞を培養する工程と、該工程から得られる培養物からD−乳酸を分離する工程、とを備える、D−乳酸の製造方法であって、形質転換体に由来する細胞を培養する工程が中和せずに培養する工程である、D−乳酸の製造方法。
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