JP5342899B2 - ワインの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ワインの製造方法関し、特に、ワインの品質の管理に関する。
一般に、ワインの製造においては、酸化防止剤として亜硫酸塩が添加される(例えば、特許文献1参照)。一方、亜硫酸塩を添加することなく製造された、いわゆる酸化防止剤無添加ワインに対する需要が高まっている。
特開平6−78741号公報
しかしながら、酸化防止剤無添加ワインは、亜硫酸塩が添加されないために、製造や保存の過程で品質が劣化しやすいという問題がある。そこで、従来、例えば、酸化防止剤無添加ワインを出荷する前に、官能検査を実施することにより、その品質を管理することが行われていた。
しかしながら、官能検査はヒトの嗅覚及び味覚により行うものであるため、工業的規模で製造される酸化防止剤無添加ワインの品質を管理する方法としては必ずしも十分なものではなかった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、ワインの品質を効果的に管理することができるワインの製造方法を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るワインの製造方法は、果汁原料及び酵母を準備する準備工程と、前記果汁原料に前記酵母を添加してアルコール発酵を行い粗ワインを得る発酵工程と、前記粗ワインに所定の処理を施して製品ワインを得る発酵後工程と、を含み、前記準備工程、前記発酵工程及び前記発酵後工程のうち少なくとも一つの工程で採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量することを特徴とする。本発明によれば、ワインの品質を効果的に管理することができるワインの製造方法を提供することができる。
また、前記定量の結果に基づいて、その後の工程に関する条件を決定し、前記決定された条件で前記その後の工程を実施することとしてもよい。こうすれば、ワインの品質をより効果的に管理することができる。
また、この場合、前記準備工程において、前記果汁原料として使用され得る、複数の候補果汁原料を準備し、前記複数の候補果汁原料から採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、前記定量の結果に基づいて、前記複数の候補果汁原料のうち1つ又は複数を選択し、前記選択された候補果汁原料を前記果汁原料として使用することとしてもよい。こうすれば、果汁原料の選択により異臭の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
また、前記準備工程において、前記果汁原料として使用され得る、複数の候補果汁原料を準備し、前記複数の候補果汁原料を使用して予備的にワインを製造し、前記予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、前記定量の結果に基づいて、前記複数の候補果汁原料のうち1つ又は複数を選択し、前記選択された候補果汁原料を前記果汁原料として使用することとしてもよい。こうすれば、果汁原料の選択により異臭の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
また、前記準備工程において、前記酵母として使用され得る、複数の候補酵母を準備し、前記複数の候補酵母を使用して予備的にワインを製造し、前記予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、前記定量の結果に基づいて、前記複数の候補酵母のうち1つを選択し、前記選択された候補酵母を前記酵母として使用することとしてもよい。こうすれば、酵母の選択により異臭の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
また、前記準備工程において、前記アルコール発酵で使用され得る複数の発酵条件を準備し、前記複数の発酵条件で予備的にワインを製造し、前記予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、前記定量の結果に基づいて、前記複数の発酵条件のうち1つを選択し、前記選択された発酵条件にて前記アルコール発酵を行うこととしてもよい。こうすれば、発酵条件の選択により異臭の発生を効果的に防止又は抑制することができる。
また、前記採取されたサンプルに酸化処理を施し、前記酸化処理が施されたサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量することとしてもよい。こうすれば、潜在的な異臭の発生を効果的に評価することができる。
本発明によれば、ワインの品質を効果的に管理することができるワインの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るワインの製造方法の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るワインの製造方法の一例において2−アセチル−1−ピロリンの定量結果に基づき製造条件を決定する際に実施される主な工程を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るワインの製造方法の一例において2−アセチル−1−ピロリンを定量する際に実施される主な工程を示す説明図である。 酸化劣化させた無添加ワインをにおい嗅ぎガスクロマトグラフ質量分析装置で分析した結果の一例を示す説明図である。 無添加ワインの品質劣化に伴う異臭強度と2−アセチル−1−ピロリンとの関係を検討した結果の一例を示す説明図である。 種々の無添加ワインについて異臭強度と2−アセチル−1−ピロリンとの関係を検討した結果の一例を示す説明図である。 無添加ワインに対する酸化処理条件と2−アセチル−1−ピロリン濃度との関係を検討した結果の一例を示す説明図である。 製造ロットが異なる無添加ワインについて酸化処理前後の2−アセチル−1−ピロリン濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。 無添加ワインの壜製品及びPET製品について酸化処理前後の2−アセチル−1−ピロリン濃度を評価した結果の一例を示す説明図である。
以下に、本発明の一実施形態に係るワインの製造方法(以下、「本製造方法」という。)について説明する。ここで、本実施形態におけるワインは、例えば、日本国の酒税法に規定される果実酒、甘味果実酒、発泡酒を含み、果汁原料に酵母を添加してアルコール発酵を行うことにより製造される酒類である。ただし、本発明は本実施形態に限られるものではない。
図1は、本製造方法の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。図1に示すように、本製造方法は、果汁原料及び酵母を準備する準備工程10と、当該果汁原料に当該酵母を添加してアルコール発酵を行い粗ワインを得る発酵工程20と、当該粗ワインに所定の処理を施して製品ワインを得る発酵後工程30と、を含む。
準備工程10において準備する果汁原料は、当該果汁原料に酵母を添加することによりアルコール発酵を行うことのできるものであれば特に限られず、例えば、ブドウ果汁、リンゴ果汁、モモ果汁等の果汁を含有するものを使用することができる。
ブドウ果汁を含有する果汁原料を使用する場合、当該ブドウ果汁は、ブドウを破砕機で処理して潰すことによって調製することができる。なお、このとき、ブドウから果梗を除去する。ブドウとしては、ワインの製造に使用できる果汁が得られるものであれば特に限られず、例えば、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランを使用することができる。また、ブドウ果汁としては、凍結や濃縮等の処理が施されたものを使用することもできる。
また、果汁原料は、果汁以外にも果実由来の原料を含有することができる。すなわち、例えば、ブドウ果汁を使用してワインを製造する場合、果汁原料は、ブドウ果実を潰して得られた果汁に加え、果肉、果皮及び種子を含有することができる。一方、果汁のみを選択的に取り出し、実質的に果汁のみからなる果汁原料を調製することもできる。
また、果汁原料に、酵母が資化可能な糖類を添加することにより、当該果汁原料の糖度を所望の範囲(例えば、10〜30度)に調整することもできる。このような果汁原料としては、例えば、従来のワインの製造に使用されていたものを使用することができる。
また、準備工程10で準備する酵母は、上述の果汁原料に添加することでアルコール発酵を行うことができるものであれば特に限られず、例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ等のワイン酵母を好ましく使用することができる。
発酵工程20においては、準備工程10で調製された果汁原料に酵母を添加して主発酵を行い、次いで貯酒を行う。すなわち、まず、果汁原料に酵母を添加して発酵液を調製する。次いで、この発酵液を、発酵タンク内において、所定の温度(例えば、5℃〜35℃)で所定の期間(例えば、5〜25日間)維持することにより主発酵を行う。さらに、主発酵後の発酵液に固形成分や酵母の量を低減する処理を施した後、当該発酵液を貯酒タンクに移送する。そして、この主発酵後の発酵液を、貯酒タンク内において、所定の温度(例えば、5℃〜20℃)で所定の期間(例えば、5日〜6ヶ月間)維持することにより貯酒を行う。
こうして、発酵工程20においては、酵母のアルコール発酵により生成されたエタノールに加え、当該酵母の代謝産物である種々のエステル等の香味成分を含有する粗ワインが得られる。
発酵後工程30においては、発酵工程20で得られた粗ワインに所定の処理を施して、最終的に製品ワインを得る。すなわち、例えば、粗ワインにろ過処理を施す。ろ過処理には、珪藻土、メンブレンフィルター、活性炭、ベントナイト等のろ材、ろ過助剤、清澄化剤等を使用することができる。この結果、清澄な製品ワインを得ることができる。
また、発酵後工程30においては、製品ワインを所定の容器に封入することができる。容器としては、製品ワインの保存に適したものであれば特に限られず、例えば、ガラス製の容器(いわゆるガラス壜等)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂製の容器(いわゆるPETボトル等)、紙製の容器(いわゆる紙パック等)、樽を使用することができる。これらの容器に製品ワインを封入する際には、空寸部分(当該製品ワインと接触する気相部分)に窒素ガス等の不活性ガスを封入することが好ましい。
また、発酵後工程30においては、製品ワインを所定の期間、保存することもできる。すなわち、例えば、製品ワインを容器に封入した後、市場に流通させるまでの間(例えば、出荷するまでの間)、所定の条件で保存する。なお、こうして製造される製品ワインのアルコール(エタノール)濃度は、例えば、1〜20%とすることができる。
そして、本製造方法においては、上述の準備工程10、発酵工程20及び発酵後工程30のうち少なくとも一つの工程で採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリン(以下、「2−AP」という。)を定量する。この2−APは、以下の構造式(I)で表される化合物である。
Figure 0005342899
ここで、本発明は、2−APがワインの品質管理の指標として有効であるという、発明者らが独自に見出した知見に基づくものである。すなわち、発明者らは、まず、亜硫酸塩等の酸化防止剤を一切添加することなく製造されたワイン(以下、「無添加ワイン」という。)において、例えば、保存時間の経過に伴い、当該無添加ワインに異臭が発生しやすいことに着目した。
そして、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、この異臭の主な原因物質として2−APを特定し、さらに無添加ワインに含有される2−APの濃度が増加するにつれて当該異臭も強くなることを突き止めた。
したがって、本製造方法においては、製造過程の1又は複数のタイミングで2−APの定量を実施する。そして、この2−APの定量結果に基づいて、品質の管理を行う。すなわち、例えば、2−APの定量結果に基づいて、その後の工程に関する条件を決定し、当該決定された条件で当該その後の工程を実施する。
図2は、複数の製造条件候補のうちから、2−APの定量結果に基づいて一つの製造条件を決定する際に実施される主な工程を示す説明図である。すなわち、この場合、図2に示すように、製造条件に関する複数の候補を準備する工程40、当該複数の候補について2−APを定量及び比較する工程41、当該複数の候補のうちから、当該定量及び比較の結果に基づいて、1つ又は複数の候補を選択する工程42を順次実施する。
具体的に、例えば、準備工程10において、果汁原料として使用され得る、複数の候補果汁原料を準備し(工程40)、当該複数の候補果汁原料から採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し(工程41)、当該定量の結果に基づいて、当該複数の候補果汁原料のうち1つ又は複数を選択し(工程42)、当該選択された候補果汁原料を当該果汁原料として使用する。
すなわち、果汁原料に含有される2−AP量は、使用する果実の種類や、果実を破砕及び圧搾する条件等、その調製条件によって変化する。そこで、まず、調製条件が互いに異なる複数の果汁原料(例えば、種類や収穫時期の異なる果実から得られた果汁を使用した複数の果汁原料)を、発酵工程20で使用し得る果汁原料の候補として準備する。次いで、複数の候補に含有される2−APの濃度を測定する。なお、2−APの濃度は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いて測定することができる。
そして、複数の候補間で2−AP濃度を比較し、当該比較の結果に基づいて、当該複数の候補のうち1つ又は複数を選択する。すなわち、例えば、複数の候補のうち、2−AP濃度が最も低いものを選択することができる。また、例えば、複数の候補のうち一部であって、2−AP濃度が他の候補より低い複数のものを選択することもできる。
また、複数の候補について2−AP濃度以外の側面に係る特性を評価し、当該評価結果と2−APの定量結果とに基づいて、当該候補のうち1つ又は複数を選択してもよい。すなわち、この場合、例えば、複数の候補について官能検査を実施する。そして、例えば、第一の候補の2−AP濃度が最も低いのに対し、第二の候補は2−AP濃度が当該第一の候補より僅かに高いが官能検査において当該第一の候補より顕著に優れている場合、複数の候補のうち当該第二の候補を選択することもできる。
この点、果汁原料には、2−APに基づく異臭を効果的にマスキングする成分(例えば、特定の香気成分)が含有されていることがある。そこで、例えば、第一の候補と第二の候補とでは2−AP濃度は同程度であるが、当該第一の候補に比べて当該第二の候補に含有されるマスキング成分の量が多い場合には、当該第二の候補を選択することができる。なお、マスキング成分の量は、例えば、GC/MSによる分析や官能検査によって評価することができる。
一方、果汁原料に含有されるマスキング成分が除去されやすいものである場合(例えば、当該マスキング成分が揮発性の香気成分である場合)には、準備工程10において2−APに基づく異臭が十分にマスキングされているとしても、その後の製造工程や、製品ワインの保存期間にマスキングの効果が低減されて、当該2−APに基づく異臭が顕在化する可能性がある。
したがって、例えば、第一の候補の2−AP濃度が最も低いのに対して、第二の候補は当該第一の候補より2−AP濃度が高く且つマスキング成分の量も多く、その結果、官能検査において当該第二の候補の方が優れていると判断された場合であっても、当該マスキング成分によるマスキング効果が失われる可能性が高い場合には、2−AP濃度がより低い当該第一の候補を選択することもできる。こうして準備工程10において複数の候補から選択された1つ又は複数の果汁原料は、続く発酵工程20におけるアルコール発酵に使用される。すなわち、複数の果汁原料が選択された場合には、これらをブレンドした果汁原料を調製し、当該ブレンド果汁原料をアルコール発酵に使用する。
また、例えば、準備工程10において、果汁原料として使用され得る、複数の候補果汁原料を準備し(工程40)、当該複数の候補果汁原料を使用して予備的にワインを製造し、当該予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し(工程41)、当該定量の結果に基づいて、当該複数の候補果汁原料のうち1つ又は複数を選択し(工程42)、当該選択された候補果汁原料を当該果汁原料として使用する。
すなわち、上述の例と同様に、調製条件が互いに異なる複数の果汁原料を、発酵工程20で使用し得る果汁原料の候補として準備する。次いで、予備的な検討として、複数の候補のそれぞれと、所定の酵母と、を使用して所定の発酵条件でアルコール発酵を行い、粗ワイン又は製品ワインを製造する。さらに、各候補を使用して得られた粗ワイン又は製品ワインに含有される2−APの濃度を測定する。
そして、複数の候補間で2−AP濃度を比較し、当該比較の結果に基づいて、当該複数の候補のうち1つ又は複数を選択する。また、上述の例と同様に、複数の候補について2−AP濃度以外の側面に係る特性を評価し、当該評価結果と2−APの定量結果とに基づいて、当該候補のうち1つ又は複数の果汁原料を選択してもよい。この評価結果としては、例えば、予備的な検討で得られた粗ワイン又は製品ワインについて実施された官能検査の結果やマスキング成分の定量結果を挙げることができる。
また、例えば、準備工程10において、酵母として使用され得る、複数の候補酵母を準備し(工程40)、当該複数の候補酵母を使用して予備的にワインを製造し、当該予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−APを定量し(工程41)、当該定量の結果に基づいて、当該複数の候補酵母のうち1つを選択し(工程42)、当該選択された候補酵母を当該酵母として使用する。
すなわち、2−APの生成は酵母の代謝にも関連しており、粗ワインや製品ワインに含有される2−AP量は、使用する酵母の種類によっても変化する。そこで、まず、代謝能が互いに異なる複数の酵母(例えば、互いに異なる複数の酵母株)を、発酵工程20で使用し得る酵母の候補として準備する。
次いで、予備的な検討として、複数の候補のそれぞれと、所定の果汁原料と、を使用して所定の発酵条件でアルコール発酵を行い、粗ワイン又は製品ワインを製造する。さらに、各候補を使用して得られた粗ワイン又は製品ワインに含有される2−APの濃度を測定する。
そして、複数の候補間で2−AP濃度を比較し、当該比較の結果に基づいて、当該複数の候補のうち一つを選択する。すなわち、例えば、複数の候補のうち、予備検討で得られた粗ワイン又は製品ワインにおける2−AP濃度が最も低いものを選択することができる。なお、予備的なワインの製造においては、実際に使用する果汁原料及び発酵条件を採用することが好ましい。
また、上述の果汁原料を選択する場合と同様、複数の候補について2−AP濃度以外の側面に係る特性を評価し、当該評価結果と2−APの定量結果とに基づいて、当該候補のうち一つを選択してもよい。
すなわち、例えば、2−APの定量と官能検査とを実施して、複数の候補のうち、官能検査の結果が比較的よいものを選択することができる。また、例えば、マスキング成分の評価も行い、複数の候補のうち、マスキング成分の量が比較的多いものを選択することもできる。こうして準備工程10において複数の候補から選択された酵母は、続く発酵工程20におけるアルコール発酵に使用される。
また、例えば、準備工程10において、アルコール発酵で使用され得る複数の発酵条件を準備し(工程40)、当該複数の発酵条件で予備的にワインを製造し、当該予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−APを定量し(工程41)、当該定量の結果に基づいて、当該複数の発酵条件のうち1つを選択し(工程42)、当該選択された発酵条件にて前記アルコール発酵を行う。
すなわち、上述のとおり、2−APの生成は酵母の代謝にも関連しており、粗ワインや製品ワインに含有される2−AP量は、使用する発酵条件によっても変化する。そこで、まず、発酵温度や発酵期間等の酵母の代謝を変化させ得る条件が互いに異なる複数の発酵条件を、発酵工程20で使用し得る発酵条件の候補として準備する。
次いで、予備的な検討として、複数の発酵条件でアルコール発酵を行い、粗ワイン又は製品ワインを製造する。さらに、各発酵条件を使用して得られた粗ワイン又は製品ワインに含有される2−APの濃度を測定する。
そして、複数の発酵条件間で2−AP濃度を比較し、当該比較の結果に基づいて、当該複数の発酵条件のうち一つを選択する。すなわち、例えば、複数の発酵条件のうち、予備検討で得られた粗ワイン又は製品ワインにおける2−AP濃度が最も低いものを選択することができる。なお、予備的なワインの製造においては、実際に使用する果汁原料及び酵母を採用することが好ましい。
また、上述の果汁原料や酵母を選択する場合と同様、複数の発酵条件について2−AP濃度以外の側面に係る特性を評価し、当該評価結果と2−APの定量結果とに基づいて、当該発酵条件のうち一つを選択してもよい。
すなわち、例えば、2−APの定量と官能検査とを実施して、複数の発酵条件のうち、官能検査の結果が比較的よいものを選択することができる。また、例えば、マスキング成分の評価も行い、複数の発酵条件のうち、マスキング成分の量が比較的多いものを選択することもできる。こうして準備工程10において複数の候補から選択された発酵条件は、続く発酵工程20におけるアルコール発酵に使用される。
また、発酵工程20や発酵後工程30において2−APの定量を行い、当該2−APの定量結果に基づいて、その後の工程に関する条件を決定し、当該決定された条件で当該その後の工程を実施することもできる。
すなわち、例えば、発酵後工程30において、主発酵及び貯酒を経て得られた粗ワインから採取したサンプルに含有される2−APの濃度を測定し、測定された当該濃度が所定の閾値を上回るか否かを判断し、当該濃度が当該閾値を上回る場合には、その後の工程において2−APに基づく異臭の発生を抑制する措置を講じることもできる。なお、この閾値は、例えば、予め2−AP濃度と異臭強度との関係を検討しておき、所定以上の強さの異臭を発生させる濃度として決定することができる。
この異臭発生を抑制する措置としては、例えば、粗ワイン及び製品ワインと酸素との接触を回避又は軽減する措置(例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下における粗ワイン及び製品ワインの移送や処理、酸素透過性の低い容器の選択)や、粗ワイン及び製品ワインの加熱を回避又は軽減する措置(例えば、粗ワイン及び製品ワインを加熱する温度や時間の低減)が挙げられる。
また、これらの措置を講じることが当初から決定されている場合であっても、2−AP濃度が閾値を上回る場合には、当該措置をより厳密に行うように製造条件の変更を行うことにより、2−APに基づく異臭の発生を効果的に抑制することができる。
また、2−APの定量においては、まず、採取されたサンプルに酸化処理を施し、次いで、酸化処理が施されたサンプルに含有される2−APを定量することもできる。
図3は、この場合に2−APの定量において実施される主な工程を示す説明図である。すなわち、図3に示すように、まず、サンプルを採取する工程50、当該サンプルを強制的に酸化する工程51、酸化処理された当該サンプルに含有される2−APを定量する工程52を順次実施する。
ここで、強制的な酸化処理後における2−AP濃度がワインの品質管理の有効な指標となり得るという知見は、本発明の発明者らが独自に見出したものである。すなわち、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ワインを強制的に酸化させることにより、当該ワインに含有される2−APの濃度が顕著に増加することを見出した。
さらに、発明者らは、製造ロット等の違いにより製造直後は2−AP濃度が互いに異なる複数のワインを強制的に酸化すると、これらの2−AP濃度が増加して略一律の値に落ち着くことを見出した。
これらの知見によれば、ワインには、酸化により2−APを生成する前駆物質が含有されており、当該ワインを強制的に酸化することにより、当該前駆物質の全部又は大部分を2−APに変換し、当該ワインの潜在的な異臭発生能を顕在化させることができる。
したがって、本製造方法において採取されたサンプルを強制的に酸化し、酸化された当該サンプル中の2−APを定量することにより、当該サンプルに含有される前駆物質の量も加味して、将来(例えば、所定期間の保存の後)発生し得る異臭の強さを予め評価することができる。
なお、サンプルに施す酸化処理は、当該サンプル中の2−AP濃度を増加させる処理であれば特に限られず、例えば、当該サンプルを所定温度(例えば、30〜50℃)に加熱した状態で所定時間(例えば、1週間〜1ヶ月)保存する方法や、当該サンプルに接触させる酸素の量を増加させる方法を採用することができる。
このサンプルの酸化処理後に2−APを定量する方法は、上述した例を含め、本製造方法で実施するあらゆる2−AP定量において採用することができる。
このような本製造方法は、亜硫酸塩等の酸化防止剤を全く使用することのない無添加ワインを製造する方法として特に好ましく実現することができる。この場合、酸化による劣化及びこれに伴う異臭の発生が本来的に起こりやすい無添加ワインの製造方法において、その品質を効果的に管理することができる。
また、本製造方法は、無添加ワインに限られず、亜硫酸塩等の酸化防止剤が添加されたワインの製造方法としても実現することができる。すなわち、十分な量の酸化防止剤を添加したワインにおいては、2−APに基づく異臭の発生は、当該酸化防止剤によって効果的に抑制される。
しかしながら、例えば、酸化防止剤の添加量が比較的低い場合や、使用される酸化防止剤の酸化防止能が比較的弱いあるいは低下した場合には、製造や保存の過程で2−APが増加し、これに伴って異臭が発生し得る。したがって、これらの場合においても、2−APの定量によって、ワインの品質を効果的に管理することができる。
本製造方法における2−APの定量に基づく品質の管理は、従来の官能検査のみによる管理に比べて、客観性や再現性に優れ、工業規模でのワインの製造に適用する上で有用である。
また、上述のとおり、2−APの濃度が比較的高く潜在的に比較的高い異臭発生能を有しているにもかかわらずマスキングによって異臭が認識されないワインは、従来の官能検査では2−AP濃度が低いものと区別することができなかったが、本製造方法によれば、2−APを特異的に定量して評価できるため、マスキングの有無に関わらず当該潜在的な異臭発生能を正確に評価することができる。
また、上述の例では、2−APを定量して評価する場合について説明したが、例えば、2−APに代えて、又は2−APに加えて、2−APの前駆物質を定量して評価することもできる。すなわち、この場合、本方法は、上述したような準備工程10、発酵工程20及び発酵後工程30のうち少なくとも一つの工程で採取したサンプルに含有される、2−AP又は前駆物質の一方又は両方を定量することを特徴とするワインの製造方法となる。
そして、前駆物質を定量することによっても、当該前駆物質の化学反応により生成された2−APに基づく異臭の発生の可能性を評価し、ワインの品質を効果的に管理することができる。また、前駆物質を指標とする場合には、その定量前に、採取されたサンプルに酸化処理を施す必要はない。なお、採取されたサンプルに含有される前駆物質は、例えば、GC/MSにより定量することができる。
実施例1においては、無添加ワインに特有の異臭に関連する化合物として2−APを検出した。まず、無添加ワインを製造した。すなわち、ブドウの果汁を含有し、糖度が23度である白ワイン用の果汁原料を準備した。次いで、この果汁原料にワイン酵母(サッカロミセス・セレヴィシエ)を添加し、主発酵及び貯酒を行った。そして、貯酒後の粗ワインにろ過処理を施して、清澄な無添加の白ワインを製造した。次に無添加ワインを容量720mLの複数のガラス壜に充填し、密封した。
この複数のガラス壜のうち一部のガラス壜を開封して、その内部に充填されていた無添加ワインを12mL抜き取り、再び当該ガラス壜を密封した。そして、このガラス壜を40℃で1週間保存することにより、強制的に酸化劣化させたサンプル(酸化劣化サンプル)を調製した。また、上記複数のガラス壜のうち他の一部のガラス壜を未開封のまま40℃で1週間保存することにより、熱劣化させたサンプル(対照サンプル)を調製した。
次に、酸化劣化サンプル200mLを、ロータリーエバポレーターを用いて50〜60℃で減圧蒸留した。半分程度蒸留を行ったところで操作者が留液のにおいを嗅いだところ、酸化劣化サンプルを特徴付けている異臭が弱かった。そこで残渣に水酸化ナトリウムを加え、アルカリ性にして蒸留を行った。そして、操作者がアルカリ性留液のにおいを嗅いだところ、酸化劣化サンプルを特徴付けている異臭があることを確認できた。このアルカリ性留液をエーテルで2回抽出し、硫酸ナトリウムで脱水した後、スナイダー管を使用して0.5mLまで濃縮したものを分析サンプルとした。また、対照サンプルについても同様の処理を行い、分析サンプルを得た。
そして、これら酸化劣化サンプル及び対照サンプルのそれぞれから調製された分析サンプルを、におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC−O)(Agilent 5980A GC、TCD検出器、アジレント・テクノロジー株式会社)及びGC/MS(Perkin−Elmer Clarus 500、株式会社パーキンエルマージャパン)により分析した。
図4に、分析により得られたGC/MSクロマトグラムの一例を示す。図4において、上段のクロマトグラムは、酸化劣化サンプルの結果を示し、下段のクロマトグラムは、対照サンプルの結果を示す。図4に示すように、上段のクロマトグラムにおいてのみ、矢印の指す位置に異臭に関連する2−APに特異的なピークが検出された。
実施例2においては、2−APと異臭との関連性を確認した。まず、上述の実施例1と同様にして無添加ワインを製造し、容量720mLの複数のガラス壜に充填して密封した。そして、この複数のガラス壜のうち一部のガラス壜を開封して、その内部に充填されていた無添加ワインを12mLを抜き取り、再び当該ガラス壜を密封した。そして、このガラス壜を40℃で2週間保持することにより強制的に酸化劣化させたサンプル(酸化劣化サンプル)を調製した。この酸化劣化サンプルをGC/MS(Agilent 6980N GC、5975MSD、アジレント・テクノロジー株式会社)で分析した結果、当該酸化劣化サンプルに含有されている2−APの濃度は30.9μg/Lであった。
一方、上記複数のガラス壜のうち酸化劣化させていない他の一部のガラス壜を開封して、その内部の未処理の無添加ワインに、合成した2−APの標準液を添加したサンプル(標準液添加サンプル)を調製した。この標準液添加サンプルをGC/MSで分析した結果、当該標準液添加サンプルに含有されている2−APの濃度は31.2μg/Lであった。
なお、酸化劣化させていない未処理の無添加ワインのサンプル(未処理サンプル)についても同様の分析を行った結果、当該未処理サンプルに含有されている2−APの濃度は3.5μg/Lであった。
そして、これら未処理サンプル、酸化劣化サンプル及び標準液添加サンプルのそれぞれについて、熟練した11人のパネリストによる官能検査を行った。官能検査においては、各サンプルにおいて、酸化劣化により無添加ワインに特異的に発生する異臭の強度がどの程度であるかを数値で評価した。
図5は、官能検査の結果を示す。図5において、縦軸の異臭強度の数値が大きいほど、異臭が強いことを示す。また、エラーバーは標準偏差を示し、記号「**」は危険率1%、記号「*」は危険率5%でそれぞれ統計的に有意な差があったことを示している。
すなわち、図5に示すように、2−APの含有量が未処理サンプルの約9倍である酸化劣化サンプル及び標準液添加サンプルの異臭強度は、当該未処理サンプルに比べて有意に高かった。そして、酸化劣化サンプルの異臭強度は、2−APの含有量が同程度である標準液添加サンプルの異臭強度と同程度であった。したがって、無添加ワインの酸化劣化に伴って発生する異臭の主な原因物質が2−APであることが確認された。
実施例3においては、2−AP濃度と異臭強度との相関関係を確認した。製造条件、保存状態、製造ロット、強制的な酸化劣化の有無等の条件が互いに異なる複数の無添加ワインを準備した。そして、各無添加ワインについて、上述の実施例2と同様に、GC/MSによる2−AP濃度の測定及び7〜12人の熟練パネリストによる官能検査を行った。
図6は、これらの分析により得られた、2−AP濃度と異臭強度との相関を示すグラフである。図6において、横軸は各無添加ワインに含有されている2−APの濃度(μg/L)、縦軸は官能検査における異臭強度をそれぞれ示している。また、図6にプロットされている各点は、各無添加ワインに対応している。
図6に示すように、無添加ワインに含有される2−APの濃度と異臭強度との間には、直線関係が成立することが確認された(相関係数R=0.80)。したがって、無添加ワインの酸化劣化に伴って発生する異臭の主な原因物質が2−APであることが再確認された。
ただし、図6には、近似直線から大きく外れた点も認められた。例えば、図6において、2−AP濃度が約20μg/Lの位置にプロットされ、且つ異臭強度が2強と比較的低く評価された点が示されている。
このように2−AP濃度が比較的高いにもかかわらず、異臭が強く認識されない無添加ワインにおいては、当該2−APに基づく異臭をマスキングする香気成分が含有されていると考えられる。そして、従来、このように製造直後に異臭がマスキングされている無添加ワインは、従来の官能検査では、図6に示すように異臭の発生はないと判断されていた。
しかしながら、香気成分の多くはエステル成分であり、一般に、無添加ワインを保存する時間の経過に伴って、当該エステル成分は加水分解等の化学反応によって徐々に消失する。また、揮発性の香気成分は、密閉保存の場合にはほとんど揮発しないものの、保存容器の種類や保存条件によっては徐々に揮発して消失することもあり得る。したがって、製造直後の時点で香気成分により異臭がマスキングされている無添加ワインであっても、その後、保存されている間にマスキング効果が低減され、2−APに基づく異臭が徐々に顕著になる可能性がある。
この点、無添加ワインに含有されている2−APの濃度を定量することにより、マスキングされている場合であっても2−APに基づく異臭発生の可能性(潜在的な異臭強度)を確実に評価することができる。
実施例4では、ワインにおける2−APの生成条件について検討した。まず、実施例1と同様に無添加ワインを製造した。次いで、この無添加ワインの一部を容量720mLのガラス壜に充填し、密封した。次に、この複数のガラス壜のうち一部のガラス壜を開封して、その内部に充填されている無添加ワインを12mL抜き取り、再び密封した。このような無添加ワインの入ったガラス壜を複数本準備し、その一部を未開封のまま40℃で1週間又は2週間、加熱保存した。
その後、ガラス壜を開封して、保存された無添加ワインに含有される2−APの濃度をGC/MSで測定した。また、上記複数のガラス壜のうち加熱保存していない他の一部のガラス壜を開封し、その内部に充填されている無添加ワインについても、同様に2−AP濃度を測定した。
一方、上記複数のガラス壜のうち加熱保存していないさらに他の一部のガラス壜を開封し、その内部に充填されている無添加ワインに、酸化防止剤として有効な量の亜硫酸塩を添加して、亜硫酸添加ワインを製造した。次いで、この亜硫酸添加ワインの一部を12mL抜き取り、再び当該ガラス壜を密封した。そして、このガラス壜を40℃で2週間、加熱保存した。その後、ガラス壜を開封して、保存された亜硫酸添加ワインに含有される2−APの濃度をGC/MSで測定した。
また、上記複数のガラス壜のうち加熱保存していないさらに他の一部のガラス壜を開封し、その内部に充填されている無添加ワインを360mL抜き取り、再び密封した。このような無添加ワインの入ったガラス壜を複数本準備し、その一部を未開封のまま40℃で1週間又は50℃で1週間、加熱保存した。その後、ガラス壜を開封して、保存された無添加ワインに含有される2−APの濃度をGC/MSで測定した。
図7には、各ワインに含有される2−AP濃度を測定した結果を示す。図7において、横軸の「40℃−12」は、12mLのワインが抜き取られたガラス壜内で保存されたワインについての結果を示し、「40℃−360」及び「50℃−360」は、360mLのワインが抜き取られたガラス壜内で保存されたワインについての結果を示す。
図7に示すように、酸化劣化処理を施さない無添加ワインの2−AP濃度は5.7μg/Lであったのに対し、12mLのワインが抜き取られたガラス壜内で40℃で1週間保存された無添加ワインの2−AP濃度は15.9μg/Lに上昇し、さらに保存期間が2週間になると33.5μg/Lまで増加した。一方、12mLのワインが抜き取られたガラス壜内で40℃で2週間保存された亜硫酸添加ワインの2−AP濃度は6.9μg/Lと低値に維持された。
これらの結果より、無添加ワインにおいては、保存時間の経過に伴って2−APが新たに生成され、2−APの量が次第に増加することが確認された。これに対し、ワインに亜硫酸塩を添加することで、2−APの新たな生成が顕著に抑制されることも確認された。
また、360mLのワインが抜き取られたガラス壜内で保存された無添加ワインに含有される2−APの濃度は、40℃で1週間保存されることで32.5μg/Lに上昇し、50℃で1週間保存されることで41.1μg/Lまで上昇した。
これらの結果により、これらの条件で保存された無添加ワインにおける2−APの新たな生成(含有量の増加)は、当該無添加ワインに接触する酸素ガスの量が多いほど、保存温度が高くなるほど、また保存時間が長くなるほど、促進されることが確認された。
実施例5では、製造ロットの異なる複数のワインにおける2−AP濃度を検討した。まず、製造時期の違いにより製造ロットが互いに異なる5種類の無添加ワインを準備した。各無添加ワインは、容量720mLのガラス壜に充填され、密封されていた。そして、各製造ロットの無添加ワインを12mL抜き取り、再び当該ガラス壜を密封した。そして、このガラス壜を40℃で2週間保存することにより強制的に酸化劣化させたサンプルを調製した。その後、酸化劣化後の各サンプルに含有されている2−AP濃度をGC/MSにより測定した。また、酸化劣化処理を施していない各製造ロットの無添加ワインについても、同様に2−AP濃度を測定した。
図8は、製造ロットが異なる5種類の無添加ワイン(ロット1〜ロット5)について2−AP濃度を測定した結果を示す。なお、ロット1は、上述の実施例1において調製した酸化劣化サンプル及び未処理サンプルである。
図8に示すように、製造直後の無添加ワインにおける2−AP濃度は、製造ロットによってかなりのばらつきがあることが確認された。これに対し、酸化劣化処理後の無添加ワインにおける2−AP濃度は、いずれの製造ロットについても約30μg/Lであった。
すなわち、製造直後に2−AP濃度が互いに異なる複数の無添加ワインにおいても、保存により最終的に生成される2−APの濃度に大差はないと考えられた。これは、例えば、製造ロットが異なっても、無添加ワインに含有されている2−APの原料成分(2−APの前駆物質等)の量は同程度であることによるものと推測される。
実施例6においては、無添加ワインの保存容器の材質と2−AP濃度との関係を検討した。まず、上述の実施例1と同様にして無添加ワインを製造した。次に、この無添加ワインの一部を複数のガラス壜に封入した。また、無添加ワインの他の一部を複数のPETボトルに封入した。そして、これら複数のガラス壜及びPETボトルの一部を未開封のまま40℃で1ヶ月保存した。
その後、容器を開封して、保存された無添加ワインに含有される2−APの濃度をGC/MSで測定した。また、加熱保存していないガラス壜及びPETボトルについても開封して、無添加ワインに含有される2−APの濃度を同様に測定した。
図9には、2−AP濃度の測定結果を示す。図9に示すように、ガラス壜内の無添加ワインにおいては、加熱保存による2−AP濃度の増加は見られなかった。
一方、PETボトル内の無添加ワインにおいては、加熱保存によって2−AP濃度の顕著な増加が認められた。これは、PETボトルは、ガラス壜に比べて、外気に含有されている酸素ガスを透過させやすいことによるものと考えられた。
したがって、ガラス壜で出荷及び保存される無添加ワインに比べて、PETボトル等のガス透過性の高い容器で出荷及び保存される無添加ワインにおいては、2−AP濃度に基づく品質管理がより重要であると考えられた。
10 準備工程、20 発酵工程、30 発酵後工程、40 複数の候補を準備する工程、41 2−アセチル−1−ピロリンを定量する工程、42 複数の候補のうち1つ又は複数を選択する工程、50 サンプルを採取する工程、51 サンプルに酸化処理を施す工程、52 2−アセチル−1−ピロリンを定量する工程。

Claims (5)

  1. 果汁原料及びワイン酵母を準備する準備工程と、
    前記果汁原料に前記ワイン酵母を添加してアルコール発酵を行い粗ワインを得る発酵工程と、
    前記粗ワインに所定の処理を施して製品ワインを得る発酵後工程と、
    を含み、
    前記準備工程において、
    前記ワイン酵母として使用され得る、複数の候補ワイン酵母を準備し、
    前記複数の候補ワイン酵母を使用して予備的にワインを製造し、
    前記予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、
    前記定量の結果に基づいて、前記複数の候補ワイン酵母のうち1つを選択し、
    前記選択された候補ワイン酵母を前記ワイン酵母として使用する
    ことを特徴とするワインの製造方法。
  2. 果汁原料及びワイン酵母を準備する準備工程と、
    前記果汁原料に前記ワイン酵母を添加してアルコール発酵を行い粗ワインを得る発酵工程と、
    前記粗ワインに所定の処理を施して製品ワインを得る発酵後工程と、
    を含み、
    前記準備工程において、
    前記アルコール発酵で使用され得る複数の発酵条件を準備し、
    前記複数の発酵条件で予備的にワインを製造し、
    前記予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、
    前記定量の結果に基づいて、前記複数の発酵条件のうち1つを選択し、
    前記発酵工程において、
    前記選択された発酵条件にて前記アルコール発酵を行う
    ことを特徴とするワインの製造方法。
  3. 前記準備工程において、
    前記果汁原料として使用され得る、複数の候補果汁原料を準備し、
    前記複数の候補果汁原料から採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、
    前記定量の結果に基づいて、前記複数の候補果汁原料のうち1つ又は複数を選択し、
    前記選択された候補果汁原料を前記果汁原料として使用する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載されたワインの製造方法。
  4. 前記準備工程において、
    前記果汁原料として使用され得る、複数の候補果汁原料を準備し、
    前記複数の候補果汁原料を使用して予備的にワインを製造し、
    前記予備的なワインの製造において採取したサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量し、
    前記定量の結果に基づいて、前記複数の候補果汁原料のうち1つ又は複数を選択し、
    前記選択された候補果汁原料を前記果汁原料として使用する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載されたワインの製造方法。
  5. 前記採取されたサンプルに酸化処理を施し、
    前記酸化処理が施されたサンプルに含有される2−アセチル−1−ピロリンを定量する
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載されたワインの製造方法。
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