図1はこの発明の第1実施例に係る汎用エンジンの制御装置を全体的に示す概略図である。
図1において、符号10は汎用エンジン(汎用内燃機関)を示す。エンジン10は空冷式の4サイクル単気筒OHV型でガソリンを燃料とし、例えば400cc程度の排気量を有し、農業、建設などの産業用小型作業機、具体的には発電機の動力源として使用(接続)可能な汎用内燃機関からなる。
エンジン10のシリンダブロック10aの内部に形成されたシリンダ(気筒)12には、ピストン14が往復動自在に収容される。シリンダブロック10aにはシリンダヘッド10bが取り付けられ、ピストン14の頂部との間に燃焼室16が形成される。
燃焼室16には吸気管20が接続される。吸気管20にはスロットルバルブ22が配置されると共に、その下流の吸気ポートの付近にはインジェクタ24が配置される。インジェクタ24は燃料供給管26を介して燃料タンク30に接続される。
より具体的には、インジェクタ24は第1の燃料供給管26aを介してサブ燃料タンク32に接続されると共に、サブ燃料タンク32は第2の燃料供給管26bを介して燃料タンク30に接続される。
第2の燃料供給管26bには低圧ポンプ34が介挿され、燃料タンク30に貯留された燃料(ガソリン)を汲み上げてサブ燃料タンク32に圧送する。サブ燃料タンク32には燃料ポンプ(高圧ポンプ)36が配置される。
燃料ポンプ36は圧送されてフィルタ32aで濾過された燃料を高圧に加圧し、レギュレータ32bで調圧しつつ、燃料供給管26aを介してインジェクタ24に圧送する。サブ燃料タンク32の燃料の一部は戻し管26cを介して燃料タンク30に戻される。
エアクリーナ(図示せず)から吸入された吸気は吸気管20を流れ、スロットルバルブ22で流量を調整されて吸気ポートに至り、インジェクタ24から噴射された燃料と混合して混合気を形成する。
混合気は吸気バルブ40が開かれるとき、燃焼室16に流入し、点火プラグ42で点火されて燃焼してピストン14を駆動する。燃焼によって生じた排ガスは排気バルブ44が開かれるとき、排気管46を流れて外部に放出される。
シリンダブロック10aにはシリンダヘッド10bと対向する側においてクランクケース(図示せず)が取り付けられ、その内部にはクランクシャフト50が回転自在に収容される。クランクシャフト50はピストン14にコンロッド14aを介して連結され、ピストン14の駆動に応じて回転する。
クランクケースにはクランクシャフト50と平行してカムシャフト(図示せず)が回転自在に収容され、ギヤ機構(図示せず)を介してクランクシャフト50に連結されて駆動される。カムシャフトは吸気側カムと排気側カムを備え、図示しないプッシュロッドとロッカーアームを介して吸気バルブ40と排気バルブ44を開閉する。
クランクシャフト50の他端にはフライホイール52が取り付けられる。フライホイール52の外側位置においてクランクケースにはパルサコイル(クランク角センサ)54が取り付けられ、フライホイール52の表面側に取り付けられた1個のマグネット(永久磁石片。図示せず)と相対回転してその磁束と交錯することで、上死点付近の所定のクランク角度でクランクシャフト50の1回転当たり(360度当たり)1個の出力を生じる。
また、クランクケースの内側位置にはパワーコイル(発電コイル。オルタネータ)56が取り付けられ、フライホイール52の裏面側に取り付けられた8個のマグネット(永久磁石片。図示せず)との相対回転に伴ってマグネットの磁束と交錯して起電力を生じるACG(交流発電機)として機能する。生じた起電力は整流された後、バッテリ(図示せず)に供給されてバッテリを充電する一方、整流された直流は交流出力に変換されて図示しないコネクタなどを介して電気負荷(例えば電動工具)60に供給自在とされる。
このように、エンジン10には発電機(作業機)として機能するパワーコイル56などの負荷が接続される。ここで負荷は「原動機から出るエネルギ(出力)を消費する機械設備またはその機械設備が消費する動力(仕事率)の大きさ」を意味する。
スロットルバルブ22は電動モータ(アクチュエータ。より具体的にはステッピングモータ)64が連結される。電動モータ64は、操作者のアクセルレバー62の操作と独立に、スロットルバルブ22を開閉するように構成される。即ち、スロットルバルブ22はDrive By Wire型に構成される。
吸気管20においてスロットルバルブ22の配置位置の上流にはサーミスタなどからなる吸気温度センサ70が配置され、その部位を流れる吸気の温度を示す出力を生じる。また、シリンダブロック10aにおいてシリンダヘッド10bの近傍位置には同様にサーミスタなどからなるエンジン温度センサ72が配置され、その部位の温度、即ち、エンジン10の温度(エンジン温度。正確にはシリンダヘッド10bの温度)Tを示す出力を生じる。
また、エンジン10のハウジング上の適宜位置には操作者(ユーザ)に操作自在な操作スイッチ76が配置される。操作スイッチ76は、操作者によってオン位置に操作される(オンされる)とき運転指示を示す出力を生じる一方、オフ位置に操作される(オフされる)とき停止指示を示す出力を生じる。
これらセンサ70,72とスイッチ76と前記したパルサコイル54ならびにパワーコイル56の出力は、ECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)80に送られる。ECU80はその出力に基づいてインジェクタ24、点火プラグ42および電動モータ64などの動作を制御する。
図2はECU80の構成を中心に示すブロック図である。ECU80はエンジン回転数検出ブロック80a、電力変換ブロック80b、ガバナ制御ブロック80c、燃料噴射量算出ブロック80dおよび点火時期算出ブロック80eを備える。
エンジン回転数検出ブロック80aは、パルサコイル54の出力をカウントしてエンジン回転数NEを検出する。尚、エンジン回転数NEはパワーコイル56の出力から検出しても良い。
電力変換ブロック80bは、パワーコイル56から出力された交流を直流に整流し、整流された直流を所定の電圧値まで昇圧し、昇圧された直流を交流に変換して発電出力(作業機の出力)Pとして電気負荷60に出力する。また、電力変換ブロック80bは、発電出力Pに応じて目標回転数Ndを決定、正確には発電出力Pに基づいてその出力を維持できるようなエンジン10の回転数(目標回転数)Ndを決定する。
ガバナ制御ブロック80cは、エンジン回転数検出ブロック80aから入力されるエンジン回転数NEが電力変換ブロック80bから入力される目標回転数Ndとなるように(一致するように)電動モータ64を介してスロットルバルブ22を開閉させ、スロットル開度を調整する。
具体的には、検出されたエンジン回転数NEが目標回転数Ndより小さい場合、現在のスロットル開度指令値THより所定開度だけ増大させたスロットル開度指令値THを出力する。逆に、エンジン回転数NEが目標回転数Ndより大きい場合、現在出力しているスロットル開度指令値THより所定開度だけ減少させたスロットル開度指令値THを出力する。出力されたスロットル開度指令値THは電動モータ64に送信され、電動モータ64によってスロットル開度が調整される。即ち、この実施例に係るエンジン10は、電動モータ64,ECU80などから構成される機構からなる電子ガバナを備える。
このようにECU80は電動モータ64の回転量を指令することから、スロットル開度センサを必要とすることなく、自らの指令値THからスロットルバルブ22の開度(スロットル開度)を算出(検出)する。スロットル開度は全閉位置付近を0、全開位置付近を100としたときの%で算出される。
燃料噴射量算出ブロック80dは、エンジン回転数検出ブロック80aで検出されたエンジン回転数NEとガバナ制御ブロック80cから入力されたスロットル開度指令値THに基づいて予め設定された燃料噴射量マップ(特性)に従って基本噴射量を算出、即ち、スロットルスピード方式といわれる手法で算出する。
さらに、燃料噴射量算出ブロック80dは、暖機時においてエンジン温度センサ72の出力からエンジン温度Tを検出すると共に、検出されたエンジン温度Tと電力変換ブロック80bから入力される発電出力Pとに基づいて暖機補正係数を算出する。
具体的には、エンジン温度Tに基づき、予め設定された暖機補正係数初期値マップ(特性)と暖機補正係数減算量マップ(特性)を検索して暖機補正係数初期値(初期値)と暖機補正係数減算量を算出すると共に、発電出力Pに基づいて予め設定された発電出力補正係数マップ(特性)を検索して発電出力補正係数を算出する。
これら暖機補正係数初期値、暖機補正係数減算量および発電出力補正係数から暖機補正係数を求め、前記した基本噴射量に暖機補正係数を乗算することで暖機時の燃料噴射量を算出し、それを最終燃料噴射量指令値Qfとしてインジェクタ24に送信する。インジェクタ24は、送信された指令値Qfに応じた開弁時間だけ開弁して燃料を噴射する。この暖機時の燃料噴射量の算出については後に詳説する。
点火時期算出ブロック80eは、パルサコイル54の出力などから点火時期を算出し、点火コイルなどの点火装置82を介して点火プラグ42の点火動作を制御する。尚、燃料噴射時期と点火時期はパルサコイル54の出力に合わせて実行される。
図3は、ECU80によって実行される処理のうち、操作スイッチ76がオンされてからエンジン10の暖機運転が終了するまでの燃料噴射量の暖機補正処理を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、先ずS10において、エンジン温度Tに基づいて算出される始動噴射量をインジェクタ24から噴射させる始動時制御を実行し、燃料噴射量を増量する。具体的には、始動開始時のエンジン温度Tから図4に示す始動噴射量マップを検索して始動噴射量を算出し、算出された始動噴射量をインジェクタ24から噴射させる。始動噴射量は、エンジン10の始動動作に必要な燃料噴射量とされると共に、図示の如く、エンジン温度Tが上昇するにつれて段階的に減少するように設定される。
次いでS12に進み、エンジン10の始動が完了したか否か判断、具体的には、エンジン回転数NEが完爆回転数(例えば1000rpm)に達したか否か判断し、否定されるときはS10の処理に戻る一方、肯定されるときはS14以降に進む。S14からS20までの処理は、燃料噴射量を増量してエンジン10を暖機する暖機制御を示す。
暖機制御においては、先ずS14でエンジン温度Tから図5に示す暖機補正係数初期値マップを検索して暖機補正係数初期値(初期値)を決定する。図示の如く、暖機補正係数初期値は、1.0以上の乗算項からなり、エンジン温度Tが上昇するにつれて徐々に減少するように設定される。
次いでS16に進み、作業機の出力を検出、具体的には、発電機(作業機)として機能するパワーコイル56の発電出力Pを検出する。次いでS18に進み、基本噴射量と、発電出力Pなどに基づいて暖機補正係数を算出すると共に、算出された暖機補正係数で基本噴射量を補正して暖機時の燃料噴射量を算出してインジェクタ24から噴射させる。
具体的に暖機時の燃料噴射量は以下の式に従って算出する。
暖機時の燃料噴射量=基本噴射量×暖機補正係数 ・・・式(1)
上記で暖機補正係数は、下記の式(2)(3)を用いて算出する。
暖機補正係数=暖機補正係数初期値−最終暖機補正係数減算量 ・・・式(2)
最終暖機補正係数減算量=暖機補正係数減算量×発電出力補正係数・・・式(3)
式(1)の基本噴射量は、スロットル開度(正確にはスロットル開度指令値TH)とエンジン回転数NEとに基づいて燃料噴射量マップを検索して算出する。
暖機補正係数は、1.0以上の乗算項からなり、エンジン10が所定数(例えば1回)回転する度に暖機補正係数初期値から1.0に向けて最終暖機補正係数減算量(所定値)ずつ減少するように算出する。即ち、エンジン10が所定数回転する度に式(2)(3)の計算を行って暖機補正係数を算出する。尚、暖機補正係数の2回目以降の計算のとき、式(2)の暖機補正係数初期値は「(前回算出された)暖機補正係数」とする。また、暖機補正係数は、エンジン10の回転に代え、所定時間が経過する度に最終暖機補正係数減算量ずつ減少するように算出しても良い。
最終暖機補正係数減算量は、式(3)に示す如く、暖機補正係数減算量に発電出力補正係数を乗算して求める。暖機補正係数減算量は、エンジン温度Tから図5に示す暖機補正係数減算量マップを検索して算出する。暖機補正係数減算量は、エンジン温度Tの上昇に比例して徐々に増加し、エンジン温度Tが暖機が終了したと推定できる値(例えば100℃)のときは0とされる。
発電出力補正係数は、1.0以上の乗算項からなると共に、S16で検出された発電出力Pに基づいて図6に示す発電出力補正係数マップを検索して算出する。図示の如く、発電出力補正係数は、発電出力Pが比較的小さいとき(具体的には、0から値aまでの間にあるとき)は1.0とされると共に、発電出力Pが値a以上のとき(換言すれば、発電出力Pが比較的大きいとき)、発電出力Pが増大するにつれて徐々に増加するように設定される。また、発電出力補正係数は、発電出力Pが前記した値aに比して大きい値b以上であるとき、上限値(例えば1.75)となるように設定される。
これにより、発電出力Pが比較的大きいときは、発電出力補正係数は増加し、式(3)で求められる最終暖機補正係数減算量は増加する。最終暖機補正係数減算量の増加により、式(2)で暖機補正係数が減少し、結果として式(1)の暖機時の燃料噴射量は減少することとなる。
この発電出力Pが比較的大きいときに暖機時の燃料噴射量を減少させる理由について説明すると、発電出力Pが比較的大きくエンジン10に対する負荷が高いときは、燃焼室16での爆発によって生じる熱エネルギも比較的高くなる。一方、発電出力Pが比較的小さく低負荷であるときは、前記した爆発による熱エネルギも比較的低くなる。
このことから、発電出力Pに基づき、負荷の多寡および前記した爆発による熱エネルギの大きさを推定することができる。従って、例えば発電出力Pが大きく、高負荷で前記熱エネルギが大きいと推定される場合、その熱エネルギが生じる分だけエンジン10の暖機が促進される(進んでいる)ため、暖機時の燃料噴射量を最初に算出した値よりも少なくすることが可能となる。
以上から、S18の処理においては、発電出力Pが比較的大きい場合、暖機が進んでいることから、その進捗状態に応じて上記の如く発電出力補正係数を増加させて最終暖機補正係数減算量を増やし、式(1)で算出される暖機時の燃料噴射量を減少させるようにした。
図3フロー・チャートにおいては、次いでS20に進み、現在の暖機補正係数が1.0より大きいか否か判定する。S20で肯定されるときはS16に戻る一方、否定されるとき、即ち、暖機補正係数が式(2)によって減少して1.0以下になったときはS22に進んで暖機制御を終了し、プログラムを終了する。別言すれば、暖機補正係数が1.0になるまで暖機制御を実行する。尚、暖機終了後は通常の燃料噴射制御が行われるが、それは本願の要旨と直接の関係を有しないので説明を省略する。
図7は上記した処理を説明するグラフである。図において、横軸はエンジン10が回転した回数である。
以下説明すると、エンジン10が停止した状態で操作スイッチ76がオンされると、先ず始動噴射量をインジェクタ24から噴射させる始動時制御を実行する(S10)。次いでエンジン10が例えばr1回回転してエンジン10の始動が完了すると(S12)、発電出力Pに基づいて算出された暖機補正係数で基本噴射量を補正して算出した暖機時の燃料噴射量をインジェクタ24から噴射させる暖機制御を開始する(S16,S18)。
暖機補正係数はエンジン10が所定数回転する度に、暖機補正係数初期値から最終暖機補正係数減算量ずつ減少するように算出されるため、暖機時の燃料噴射量も徐々に減少する。
また、例えばエンジン10がr2回あるいはr3回回転したときに発電出力Pが変わった場合、換言すれば、負荷が変動してエンジン10の暖機状態(具体的には進捗状態)が変化した場合、それに応じて発電出力補正係数を増減させることで、最終暖機補正係数減算量が増減し、よってエンジン10の暖機状態に応じた適切な暖機時の燃料噴射量が算出されてインジェクタ24から噴射される。
そして、エンジン10がr4回回転し、暖機補正係数が1.0になって暖機時の燃料噴射量が基本噴射量と同じ値になったとき、暖機制御を終了する、逆に言えば、暖機補正係数が1.0になるまで暖機制御を実行する(S20,S22)。
このように、第1実施例にあっては、作業機(発電機)の動力源として使用可能な汎用エンジン10のスロットル開度(スロットル開度指令値)THとエンジン回転数NEとに基づいて基本噴射量を算出すると共に、作業機の出力(発電出力P)を検出し、検出された作業機の出力に基づいて基本噴射量を補正して暖機時の燃料噴射量を算出してインジェクタ24から噴射させる暖機制御を実行するように構成、即ち、潤滑油の温度に代えて、エンジン10の暖機状態に影響を及ぼす作業機の出力を用いて暖機時の燃料噴射量を算出するように構成したので、エンジン10の暖機状態(具体的には暖機の進捗状態)に応じた適切な燃料噴射量を算出でき、よって暖機運転時間を短縮することが可能になると共に、燃料消費量を低減させることができる。
また、汎用エンジン10が外気温によって暖機状態(具体的には暖機の進捗状態)が変化し易い空冷式の汎用エンジンからなる場合であっても、上記の如く構成することで、暖機状態に応じた適切な燃料噴射量を算出することが可能となる。
また、暖機制御実行手段は、作業機の出力に基づいて暖機補正係数を算出すると共に、汎用エンジン10の始動が完了した後に暖機補正係数で基本噴射量を補正して暖機時の燃料噴射量を算出するように構成したので、エンジン10の暖機状態に応じた暖機補正係数から適切な燃料噴射量を算出でき、よって暖機運転時間をより短縮することが可能になると共に、燃料消費量をより一層低減させることができる。
また、暖機補正係数は、暖機補正係数初期値から作業機の出力に基づいて算出される最終暖機補正係数減算量ずつ減少するように算出される如く構成したので、エンジン10の暖機が進むにつれて暖機補正係数を徐々に(段階的に)減少させることができ、よってエンジン10の暖機状態に応じた適切な燃料噴射量を算出することができる。
また、暖機補正係数は、汎用エンジン10が所定数回転する度または所定時間が経過する度に算出されるように構成したので、時間の経過に伴って、換言すれば、エンジン10の暖機が進むにつれて暖機補正係数を確実に減少させることができ、よってエンジン10の暖機状態により適した燃料噴射量を算出することができる。
また、暖機補正係数が1.0以上の乗算項からなり、汎用エンジン10が所定数回転する度または所定時間が経過する度に1.0に向けて最終暖機補正係数減算量ずつ減少するように算出される如く構成したので、エンジン10の暖機が進むにつれて暖機補正係数を1.0に向けて徐々に減少させることができ、よってエンジン10の暖機状態により一層適した燃料噴射量を算出することができる。
また、暖機制御実行手段は、暖機補正係数が1.0になるまで暖機制御を実行するように構成したので、エンジン10の暖機が完了する適切な時期まで暖機制御を実行(継続)することが可能となる。
また、汎用エンジン10は、エンジン回転数NEが作業機の出力に応じて決定される目標回転数Ndとなるようにスロットルバルブ22を開閉する電動モータ64を備えてなるように構成、具体的には、電子ガバナを備えるように構成したので、電動モータ64を駆動させるスロットル開度指令値THに基づいてスロットル開度を算出(検出)できるため、スロットル開度センサを不要にでき、簡素な構成でエンジン10の暖機状態に適した燃料噴射量を算出することができる。
また、汎用エンジン10は、発電機(具体的にはパワーコイル56)の動力源として使用されると共に、作業機出力検出手段によって検出される出力は発電機の発電出力Pであるように構成、即ち、潤滑油の温度に代えて、エンジン10の暖機状態に影響を及ぼす発電機の発電出力Pを用いて暖機時の燃料噴射量を算出するように構成したので、発電機の動力源として使用される汎用エンジン10において暖機状態(具体的には暖機の進捗状態)に応じた適切な燃料噴射量を算出することができる。
次いで、この発明の第2実施例に係る汎用エンジンの制御装置について説明する。
第1実施例との相違点に焦点をおいて説明すると、第2実施例にあっては、エンジン10を、発電機に代えてポンプの動力源として使用するようにした。
具体的には、図1に想像線で示す如く、クランクシャフト50の一端にポンプ(より具体的には液体用ポンプ(水ポンプ)。作業機)からなる負荷84が接続される。図示は省略するが、ポンプは例えば渦巻ポンプからなり、吸水口を介して内部に吸入された水を吐出口から適宜な供給先へ吐出(排出)する。
前記した吐出口付近には、図1に想像線で示すように、吐出量センサ(流量センサ)86が配置され、吐出口から排出される吐出量Q1に応じた信号をECU80へ出力する。尚、第2実施例においては、パワーコイル56の出力はバッテリの充電に供されると共に、電気負荷60は除去されるものとする。また、第1実施例と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図8はECU80の構成を中心に示す、図2と同様なブロック図である。
ECU80は、吐出量検出ブロック80fを備えると共に、第1実施例の電力変換ブロック80bは除去される。
吐出量検出ブロック80fは、吐出量センサ86の出力からポンプの吐出量(作業機の出力)Q1を検出して燃料噴射量算出ブロック80dに送出すると共に、検出された吐出量Q1に応じて目標回転数Ndを決定、正確には吐出量Q1に基づいてその出力を維持できるようなエンジン10の回転数(目標回転数)Ndを決定してガバナ制御ブロック80cに送る。
燃料噴射量算出ブロック80dは、エンジン温度Tと吐出量検出ブロック80fから入力される吐出量Q1とに基づいて暖機補正係数を算出する。具体的には、エンジン温度Tに基づいて暖機補正係数初期値と暖機補正係数減算量を算出すると共に、吐出量Q1に基づいて予め設定された吐出量補正係数マップ(特性)を検索して吐出量補正係数を算出する。これら暖機補正係数初期値、暖機補正係数減算量および吐出量補正係数から暖機補正係数を求め、基本噴射量に暖機補正係数を乗算することで暖機時の燃料噴射量を算出する。
図3の燃料噴射量の暖機補正処理を示すフロー・チャートについて説明すると、S10からS14までの処理を実行した後、S16に進み、作業機の出力を検出、具体的には、ポンプの吐出量Q1を検出する。次いでS18に進み、基本噴射量と、吐出量Q1などに基づいて暖機補正係数を算出すると共に、算出された暖機補正係数で基本噴射量を補正して暖機時の燃料噴射量を算出してインジェクタ24から噴射させる。
具体的に暖機時の燃料噴射量は以下の式に従って算出する。
暖機時の燃料噴射量=基本噴射量×暖機補正係数 ・・・式(1)
暖機補正係数=暖機補正係数初期値−最終暖機補正係数減算量 ・・・式(2)
最終暖機補正係数減算量=暖機補正係数減算量×吐出量補正係数 ・・・式(4)
式(1)(2)は第1実施例のそれと同じである。式(4)の最終暖機補正係数減算量は、暖機補正係数減算量に吐出量補正係数を乗算して求める。吐出量補正係数は、1.0以上の乗算項からなると共に、S16で検出された吐出量Q1に基づいて図9に示す吐出量補正係数マップを検索して算出する。
図示の如く、吐出量補正係数は、吐出量Q1が比較的小さいとき(具体的には、0から値a1までの間にあるとき)は1.0とされ、吐出量Q1が値a1以上で比較的大きいとき、吐出量Q1が増大するにつれて徐々に増加するように設定される。また、吐出量補正係数は、吐出量Q1が前記した値a1に比して大きい値b1以上であるとき、上限値(例えば1.75)となるように設定される。
これにより、吐出量Q1が比較的大きいときは、吐出量補正係数は増加し、式(4)で求められる最終暖機補正係数減算量は増加する。最終暖機補正係数減算量の増加により、式(2)で暖機補正係数が減少し、結果として式(1)の暖機時の燃料噴射量は減少することとなる。
この吐出量Q1が比較的大きいときに暖機時の燃料噴射量を減少させる理由については、第1実施例と同様である。即ち、吐出量Q1が比較的大きくエンジン10に対する負荷が高いときは、燃焼室16での爆発によって生じる熱エネルギも比較的高くなる一方、吐出量Q1が比較的小さく低負荷であるときは、爆発による熱エネルギも比較的低くなる。
このことから、吐出量Q1に基づき、負荷の多寡および前記した爆発による熱エネルギの大きさを推定でき、よって例えば吐出量Q1が大きく、高負荷で熱エネルギが大きいと推定される場合、その熱エネルギが生じる分だけエンジン10の暖機が促進される(進んでいる)ため、暖機時の燃料噴射量を最初に算出した値よりも少なくすることが可能となる。
従って、S18の処理においては、吐出量Q1が比較的大きい場合、暖機が進んでいることから、その進捗状態に応じて上記の如く吐出量補正係数を増加させて最終暖機補正係数減算量を増やし、式(1)で算出される暖機時の燃料噴射量を減少させるようにした。その後はS20,S22の処理を実行してプログラムを終了する。
このように、第2実施例にあっては、汎用エンジン10は、ポンプ(負荷84)の動力源として使用されると共に、作業機出力検出手段によって検出される出力はポンプの吐出量Q1であるように構成、即ち、潤滑油の温度に代えて、エンジンの暖機状態に影響を及ぼすポンプの吐出量Q1を用いて暖機時の燃料噴射量を算出するように構成したので、ポンプの動力源として使用される汎用エンジン10において暖機状態(具体的には暖機の進捗状態)により適した燃料噴射量を算出することができる。
尚、残余の効果は第1実施例と同一であるので、説明を省略する。
次いで、この発明の第4実施例に係る汎用エンジンの制御装置について説明する。
第2実施例との相違点に焦点をおいて説明すると、第4実施例にあっては、エンジン10を、ポンプに代えて動力噴霧機の動力源として使用するようにした。
具体的には、図1に想像線で示す如く、クランクシャフト50の一端に動力噴霧機(作業機)からなる負荷84が接続される。尚、理解の便宜および図示の簡略化のため、負荷を第2実施例と同じ符号84で示す。
図示は省略するが、動力噴霧機はエンジン10によって駆動されるポンプ(液体用ポンプ(水ポンプ))などを有する動力噴霧機本体と、ポンプによって加圧された液体(例えば農薬など)を操作者の噴霧指示に応じて霧状に放出(散布)するノズルを備える。ポンプは、吸水口を介して内部に吸入された液体を吐出口からノズルへ吐出(排出)するように構成される。ポンプの吐出口付近には、第2実施例と同様、吐出量センサ(流量センサ)86が配置されて吐出量Q3を示す信号をECU80へ出力する。
図3フロー・チャートにおいては、S10〜S14の処理を実行した後、S16に進んで作業機の出力を検出、具体的には、動力噴霧機のポンプの吐出量Q3を検出する。次いでS18に進み、基本噴射量と、吐出量Q3などに基づいて暖機補正係数を算出すると共に、算出された暖機補正係数で基本噴射量を補正して暖機時の燃料噴射量を算出してインジェクタ24から噴射させる。S18での暖機時の燃料噴射量の計算式は上記した式(1)(2)(4)と同じである。
式(4)の吐出量補正係数は、1.0以上の乗算項からなると共に、S16で検出された吐出量Q3に基づいて図9に示す吐出量補正係数マップを検索して算出する。図9に示すように、吐出量補正係数は、吐出量Q3が0から値a3までの間にあって比較的小さいときは1.0とされると共に、吐出量Q3が値a3以上のとき(換言すれば、吐出量Q3が比較的大きいとき)、吐出量Q3が増大するにつれて徐々に増加するように設定される。また、吐出量補正係数は、吐出量Q3が前記した値a3に比して大きい値b3以上であるとき、上限値(例えば1.75)とされる。
これにより、動力噴霧機のポンプの吐出量Q3が比較的大きいときは、吐出量補正係数は増加し、最終暖機補正係数減算量は増加すると共に、それに伴って暖機補正係数は減少し、結果として暖機時の燃料噴射量は減少することとなる。
この吐出量Q3が比較的大きいときに暖機時の燃料噴射量を減少させる理由については、第2実施例と同様である。
以上から、S18の処理においては、動力噴霧機の吐出量Q3が比較的大きい場合、暖機が進んでいることから、その進捗状態に応じて上記の如く吐出量補正係数を増加させて最終暖機補正係数減算量を増やし、式(1)で算出される暖機時の燃料噴射量を減少させるようにした。
このように、第4実施例にあっては、汎用エンジン10は、動力噴霧機(負荷84)の動力源として使用されると共に、作業機出力検出手段によって検出される出力は動力噴霧機の吐出量Q3であるように構成、即ち、潤滑油の温度に代えて、エンジンの暖機状態に影響を及ぼす動力噴霧機の吐出量Q3を用いて暖機時の燃料噴射量を算出するように構成したので、動力噴霧機の動力源として使用される汎用エンジン10において暖機状態(具体的には暖機の進捗状態)に即した燃料噴射量を算出することができる。
尚、残余の効果は従前の実施例と同一であるので、説明を省略する。
以上の如く、この発明の第1から第4実施例にあっては、作業機(発電機。ポンプ。高圧洗浄機。動力噴霧機。負荷84)の動力源として使用可能な汎用エンジンの吸気管20に配置されたスロットルバルブ22のスロットル開度(スロットル開度指令値)THとエンジン回転数NEとに基づいて基本噴射量を算出する基本噴射量算出手段と(ECU80。S18)、前記作業機の出力を検出する作業機出力検出手段と(ECU80。吐出量センサ86。S16)、前記検出された作業機の出力に基づいて前記算出された基本噴射量を補正して暖機時の燃料噴射量を算出してインジェクタ24から噴射させる暖機制御を実行する暖機制御実行手段と(ECU80。S18)を備える如く構成した。
また、前記暖機制御実行手段は、前記検出された作業機の出力に基づいて暖機補正係数を算出すると共に、前記汎用エンジン10の始動が完了した後に前記算出された暖機補正係数で前記基本噴射量を補正して前記暖機時の燃料噴射量を算出する如く構成した(S18)。
また、前記暖機補正係数は、初期値(暖機補正係数初期値)から前記作業機の出力に基づいて算出される所定値(最終暖機補正係数減算量)ずつ減少するように算出される如く構成した(S18)。
また、前記暖機補正係数は、前記汎用エンジン10が所定数回転する度または所定時間が経過する度に算出される如く構成した(S18)。
また、前記暖機補正係数が1.0以上の乗算項からなり、前記汎用エンジン10が所定数回転する度または所定時間が経過する度に1.0に向けて前記所定値ずつ減少するように算出されると共に(S18)、前記暖機制御実行手段は、前記暖機補正係数が1.0になるまで前記暖機制御を実行する如く構成した(S20,S22)。
また、前記汎用エンジン10は、前記エンジン回転数NEが前記作業機の出力に応じて決定される目標回転数Ndとなるように前記スロットルバルブ22を開閉するアクチュエータ(電動モータ)64を備えてなる如く構成した。
また、第1実施例にあっては、前記汎用エンジン10は、発電機の動力源として使用されると共に、前記作業機出力検出手段によって検出される出力は前記発電機の発電出力Pである如く構成した。
また、第2実施例にあっては、前記汎用エンジン10は、ポンプの動力源として使用されると共に、前記作業機出力検出手段によって検出される出力は前記ポンプの吐出量Q1である如く構成した。
また、第3実施例にあっては、前記汎用エンジン10は、高圧洗浄機の動力源として使用されると共に、前記作業機出力検出手段によって検出される出力は前記高圧洗浄機の吐出量Q2である如く構成した。
また、第4実施例にあっては、前記汎用エンジン10は、動力噴霧機の動力源として使用されると共に、前記作業機出力検出手段によって検出される出力は前記動力噴霧機の吐出量Q3である如く構成した。
尚、上記において、暖機補正係数、暖機補正係数初期値、発電出力補正係数および吐出量補正係数を乗算項としたが、加算項であっても良い。また、発電出力補正係数や吐出量補正係数、暖機補正係数初期値、暖機補正係数減算量などを具体的な値で示したが、それらは例示であって限定されるものではない。