JP5339805B2 - 吹き付け装置及びコンクリート用補修材の吹き付け工法 - Google Patents
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Description
本発明では、補修材を収納するタンク部分とノズル部分とを、接続具を介しホースで接続する構造としたので、作業員は軽量なノズル部分だけを保持すればよい。従って、作業員に対する肉体的な負担が少なくなる。また熟練を要せずとも、補修材を施工面の目標位置へ吹き付けるのが容易になるから、的確な断面修復作業を実施できる。
材料タンクをノズルと分離したことにより、材料タンクを据え置き型に出来るから、タンク容量を大きくすることが可能である。従って、所定の施工面積を補修するにあたり、補修材の充填回数を少なくでき、あるいは補修材の補充作業を不要にできるので、作業能率が向上する。
接続具に加圧空気受入口を設け、ホース内の補修材に加圧空気を作用させる構造としたので、ホース内の補修材を押し出してほとんど残存させることがない。
加圧空気を用いて、補修材を材料タンクからホースへ押し出す構造としたので、動力源としてはエアコンプレッサー等の加圧空気供給装置だけを準備すればよく、補修材の圧送ポンプが不要であるから、構成が簡単である。なお、エンジン式のエアコンプレッサーを使用すれば、電源も不要にできる。
材料タンクと加圧空気供給装置との連絡は耐圧チューブ等の変形可能な部材でなされるから、材料タンク及び加圧空気供給装置をそれぞれ別個に適当個所へ設置することが可能である。従って、材料タンクを補修現場近くに設置して、材料タンクとノズルとを連絡するホースの長さを短く(1〜2m程度)することができる。これにより、ホース洗浄の手間を軽減できる。
さらに、補修現場近くには材料タンクだけを設置すればよいから、補修個所が点在するときには、材料タンクだけを移動させればよいので、優れた機動性を発揮する。
加圧空気を材料タンクに作用させて補修材を押し出すのに合わせて、中蓋もタンク内を下降する。そして、中蓋には半径方向のスリットを形成したから、請求項5に記載する如く、中蓋は、タンクの円錐形部分を下降するとき、内表面の縮径に合わせてスリットを挟む部分が重合し、円錐形に変形する。その結果、中蓋による補修材の押し出しが確実になり、補修材のタンク残量を低減することができる。
(前処理工程)
コンクリート構造物における断面修復が必要な個所へ補修材を吹き付け施工するに先立ち、ハツリ作業を行なってコンクリートの劣化部分・不良部分を除去する。しかる後、必要に応じ、プライマーをスプレー、ローラ、ブラシ等により塗布する。さらに修復個所に鉄筋が露出している場合は、浮き錆や汚れを除去したのち、防錆剤処理を施すことが望ましい。
次に、補修材を水と混練する。補修材の軟らかさは、施工時の気温や施工面の状態に基づき設定する。通常は、ミニスランプ値(JIS A 1171:2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」6.2スランプ試験による)が概ね30〜100mmの範囲内で用いるのが好ましい。
水と混練した補修材Sを、材料タンク1内へ投入し、その上面に中蓋6を配置した後、蓋部1Bで密閉する。この材料タンク1を、施工現場付近の適当個所に設置し、蓋部1Bの加圧空気導入口2と、接続具10の加圧空気受入口13aとに、空気配管P1,P2を接続する。また、接続具10の材料送出口12aにホース4を接続する。
上部空気配管P1のストップ弁V1、並びに、接続具10の開閉弁V4及びストップ弁V5を閉じた状態で、エアコンプレッサー等の加圧空気供給装置20を起動させ、加圧空気を材料タンク1及び接続具10へ供給する。加圧空気の作用圧力はレギュレータR1,R2により設定することができ、実用的には0.3〜0.4MPaの範囲とする。但し、接続具10側のレギュレータR2の圧力値を、蓋部1B側のレギュレータR1の圧力値より低くならないように設定した方が、結果が良好になる傾向が見られる。圧力の設定が終了したら、上部空気配管P1のストップ弁V1及び接続具10のストップ弁V5を開き、材料タンク1内と、接続具10の二次側管部12及び空気供給管部13とに加圧空気が作用する状態にしたのち、接続具10の開閉弁V4を開く。これにより、材料タンク1内の補修材Sが、上部空気配管P1を通じ中蓋6を介して作用する加圧空気の圧力により、材料吐出口3から接続具10内へ押し出される。そして、接続具10内へ押し出された補修材Sは、下部空気配管P2を通じて作用する加圧空気の圧力により、ホース4へ送り出され、ノズル5先端から霧状に噴出して、目標の施工面へ吹き付けられる。
所要の吹き付け作業が終わったならば、接続具10の開閉弁V4を閉じて、補修材Sの材料タンク1からの流出を停止させたのち、上部空気配管P1の圧力、及び、下部空気配管P2の圧力を降下させる。下部空気配管P2の圧力を降下させる前に、接続具10の開閉弁V4を閉じることにより、接続具10及びホース4内に残留する補修材Sをノズル5から排出することができるので、補修作業終了後の接続具10及びホース4の洗浄作業が簡単になる。また、補修作業を途中で一時中断するときも、接続具10及びホース4内から補修材Sを排除できるから、作業再開時に行なう接続具10及びホース4の洗浄作業を簡単にできる。
図5(A)に示す如く、材料タンク1内に収納した補修材Sの上面に中蓋6を配置することにより、上部空気配管P1を通じて供給される加圧空気の圧力を、補修材Sの表面に均一に作用させることができるから、補修材Sの押し出し効率が良好になる。
補修材Sの吹き付け作業を実行するに従い、材料タンク1内の補修材Sの貯留量が減少するが、材料タンク1の下部側は円錐形状となっているため、中蓋6が変形しないとすると、補修材Sの上面が円錐部a2の上端よりも下がったときには、中蓋6と補修材Sとの密着度が低下して、補修材Sの押し出し効率が悪くなる。しかるに本発明では、中蓋6に半径方向のスリット6aを形成したので、図5(B)に示す如く、中蓋6が材料タンク1の円錐部a1の上端よりも下降するときは、タンク内表面の縮径に合わせて、中蓋6におけるスリット6aを挟む部分6bが重なり合うことにより、中蓋6が円錐形に変形する。
図5(C)に示すように、中蓋6が下降するほど、重なり合う部分6bの割合は大きくなり、やがて中蓋6は、補修材Sのほとんどを材料タンク1から排出すると共に、円錐部a1にほぼ等しい頂角の円錐形状に達する。このような中蓋6の作用により、補修材Sの上面が円錐部a1の上端以下となったときでも、補修材Sの押し出し効率を良好に保つことができる。
(吹き付け装置)
・材料タンク
高さ600mm/円錐部高さ202mm/最大内径254mm/容量16.5リットル/鋼鉄製/肉厚6mm
・中蓋
直径240mm/厚さ3mm/天然ゴム製
・加圧空気供給装置(エアコンプレッサー)
出力307kw/空気吐出量 毎分400リットル/最大使用圧力0.99MPa
・BASFポゾリス株式会社製 ポリマーセメント系断面修復材「エマコS99P」
・調整方法
容量約20リットルのペール缶に、目標ミニスランプ値に応じて計量した練り混ぜ水を入れ、ハンドミキサで撹拌しながら補修材1袋(25kg)を徐々に投入し、全量投入後、2分間練り混ぜた。
・BASFポゾリス株式会社製 アクリル樹脂系吸水防止下地処理材「マスターシール520」(主成分特殊アクリル酸エステル)
(1)吹き付け性状確認試験
補修材の軟らかさ(ミニスランプ値)、及び、材料タンクと接続管とに作用させる空気圧の大きさが、吹き付け性状に及ぼす影響を調べたものである。
前記の調整方法により、目標ミニスランプ値を30・40・50・60mmのいずれかに設定して調整した補修材を材料タンクに投入し、中蓋を配置する。そして、上部空気配管P1のレギュレータR1のゲージ圧力(以下、上部圧力という)及び下部空気配管P2のレギュレータR2のゲージ圧力(以下、下部圧力という)を0.2〜0.35MPaの範囲で設定し、ノズルから吐出させた補修材の吹き付け状態を目視により観察した。
(補修材温度)
練り上がり後の温度をアルコール温度計で測定した。
(ミニスランプ値:補修材の軟らかさ)
JIS A1171:2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」6.2スランプ試験による。
(吐出流量)
材料タンク内へ投入した補修材総重量(1袋25kg+混練水重量)、補修材吹き付け時の吐出時間、材料タンク内の補修材残量から、単位時間当たりの吐出流量を算出した。
補修材の軟らかさ(ミニスランプ値)が、補修材の圧縮強度に及ぼす影響を調べた。
(試験方法)
JIS A 1108:2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じる。
(供試体)
内径Φ=5cm深さ10cmのプラスチック製簡易型枠に、吹き付け前(練り上がり直後)の補修材を充填したもの、及び、吹き付け装置により補修材を吹き付けて充填したものを作製し、材齢2日で脱型したのち、材齢7日まで気中養生したものを供試体とした。
(単位容積質量)
JIS A 1171:2000「ポリマーセメントモルタルの試験方法」6.3単位容積質量試験に基づき、前記プラスチック製簡易型枠に、吹き付け前(練り上がり直後)の補修材を充填したもの、及び、吹き付け装置により補修材を吹き付けて充填したものを用いて測定した。
補修材の軟らかさ(ミニスランプ値)が、補修材の付着強度に及ぼす影響を調べた。
(供試体)
JIS A5371:2004「プレキャスト無筋コンクリート製品」の規定に従い、図7(A)(B)に示す平面寸法300×300mm厚さ60mmの下地コンクリート板31を製作し、その三側面に取り付けた木枠32を利用して、同図(C)に示す如く下地コンクリート板31の表面から所定距離d(10,15,20mmの3種類)だけ離れた位置に、鉄筋(D19)33a,33bを中央で直交するように配設し、これを供試基板30とする。そして、この供試基板30を天井面に設置し、本発明吹き付け装置により、前記補修材「エマコS99P」を、その表面に吹き付けたのち、材齢7日まで気中養生したものを、後述の各試験に用いる供試体とした。
「コンクリート構造物補修の手引き[第三版](西日本旅客鉄道株式会社 平成15年4月)」の付属資料2−1 JRWCT A1−2003「JR西日本 断面修復材・層間付着力実地試験」に準じて行なった。
層間付着強度の測定個所は、図7(C)に示す鉄筋裏間隔d=10,15,20mmとした3種類の供試体それぞれについて、図(A)に符号Xで示す領域とする。
「コンクリート構造物補修の手引き[第三版](西日本旅客鉄道株式会社 平成15年4月)」の付属資料2−1 JRWCT A1−2003「JR西日本 断面修復材・界面付着力実地試験」に準じて行なった。
層間付着強度の測定個所は、図7(C)に示す鉄筋裏間隔d=10,15,20mmとした3種類の供試体それぞれについて、図(A)に符号Yで示す部分を用いる。
(1)吹き付け性状確認試験
試験結果を[表1]に示す。
(試番1〜4)
上部圧力を0.3MPa、下部圧力を0.35MPaに設定すると、ミニスランプ値が30〜60mmの範囲のいずれの補修材についても、霧状に吐出する良好な吹き付け状態が得られた。
但し、試番3の補修材が硬めのとき(ミニスランプ値が小さい場合)については、吹き付け状態が若干変動する傾向が見られたが、施工後の品質に影響を及ぼすほどではなかった。
上部圧力及び下部圧力を等しく0.3MPaに設定した場合、目標ミニスランプ値の設定を50mmとしたものについては、吹き付け性状は良好で問題がなかった。(試番5)
目標ミニスランプ値を30mmに設定したものは、補修材が硬めのため、脈動しながら吐出する現象が見られた。(試番6)
ミニスランプ値が60mmの若干軟らかい補修材の場合は、吹き付けの勢いで補修材が吹き飛ばされる現象が見られた。(試番7)
上部圧力を0.2MPa、下部圧力を0.35MPaに設定した場合、目標ミニスランプ値を50mmとした比較的軟らかい補修材のときは、吐出流量が不足する傾向がある。
上部圧力を0.3MPaに対し、下部圧力をそれより低く0.25MPaに設定した場合(ミニスランプ値50mm)は、補修材を吹き出させることができなかった。
図6(A)に示すように、接続具10の形態を、一次側管部11と二次側管部12とを同軸とし、その途中に空気供給管部13を設ける構成とした場合は、概ね補修材の良好な吹き付け状態を得ることができた。(上部圧力0.3MPa、下部圧力0.35MPa、目標ミニスランプ値40〜60mm)
但し、接続具10の姿勢が鉛直方向であり、ホース4を接続する材料送出口12aが下端なので、ホース4の有効長を確保しにくい欠点がある。
図6(B)に示すように、接続具10の形態を、一次側管部11に対し二次側管部12を直角に折曲させ、折曲部Qよりも下流側に空気供給管部13を設ける構成とした場合、概ね補修材の良好な吹き付け状態を得ることができた。(上部圧力0.3MPa、下部圧力0.35MPa、ミニスランプ値36mm)
但し、吹き付け終了後、接続具10における開閉弁V4から、空気供給管部13の接続部Jまでの部分に補修材が残留する問題があった。
試験結果を[表2]に示す。
目標ミニスランプ値を30・50・60mmに設定して、軟らかさが硬め・標準・軟らかめの補修材を用意し、さらに標準軟らかさ(目標ミニスランプ値50mm)の補修材については吹き付け時の下部圧力を異ならせて、製作した供試体の圧縮強度を測定したところ、いずれも施工品質に問題のない値が得られた。
試験結果を[表3]に示す。使用した補修材は、圧縮強度試験を行なったものと共通である。
(層間付着力試験)
いずれの条件においても平均値が1.0N/mm2以上であり、規定値を満足する。
但し、ただ一つの供試体において測定値が1.0N/mm2に達しなかったが、これは今回の試験では、供試体の材齢7日で評価したためと推察される。通常、材齢28日に達すれば強度が20〜30%程度向上することが知られているので、実用上は問題の無い値であると考えられる。
いずれの条件においても平均値が1.0N/mm2以上、個々の測定値についても、すべて0.85N/mm2以上であり、規定値を満足する。
Claims (5)
- 上部に加圧空気導入口を有し下部に材料吐出口を有する材料タンクと、材料タンクの材料吐出口に連接され途中に加圧空気受入口を有する接続具と、基端部が接続具の材料送出口に接続され先端部にノズルが装着されたホースと、材料タンクの加圧空気導入口及び接続具の加圧空気受入口それぞれに加圧空気を送給する加圧空気供給装置とから構成し、
前記材料タンクにおける少なくとも下部側の内表面が下方へ向かって縮径する円錐形に形成され、可撓性部材により円板状に製作され半径方向のスリットが形成された中蓋を、材料タンク内に収納した吹き付け材料の上面に配置したことを特徴とする吹き付け装置。 - 前記接続具は、材料タンクの材料吐出口に連接される一次側管部と、ホースが接続され材料送出口を含む二次側管部と、加圧空気受入口を含む空気供給管部とから成り、一次側管部に対し二次側管部が90度以下の角度で折曲するように形成され、空気供給管部が二次側管部に対し同軸に接続されている請求項1に記載の吹き付け装置。
- 加圧空気供給装置と材料タンクの加圧空気導入口とを連絡する配管の途中、及び、加圧空気供給装置と接続具の加圧空気受入口とを連絡する配管の途中に、空気圧を調節するレギュレータを設けた請求項1又は2に記載の吹き付け装置。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吹き付け装置を用いたコンクリート用補修材の吹き付け工法であって、
前記材料タンク内にコンクリート用の補修材を収納し、加圧空気導入口から材料タンク内へ加圧空気を供給することにより、補修材を、材料タンク内から前記接続具を介して、ホース内へ押し出すと同時に、押し出された補修材に加圧空気を作用させて、補修材をホース先端から目標物へ向かって吹き付けることを特徴とするコンクリート用補修材の吹き付け工法。 - 前記加圧空気導入口から材料タンク内へ供給した加圧空気により中蓋を介して補修材を材料タンク内から押し出すにあたり、材料タンクにおける内表面が円錐形の部分を中蓋が下降するときは、内表面の縮径に合わせて中蓋におけるスリットを挟む部分を重合させることにより、中蓋を円錐形に変形させる請求項4に記載するコンクリート用補修材の吹き付け工法。
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