JP5339684B2 - 画像形成方法 - Google Patents

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本発明は、画像形成法に関する。
インクジェット記録方法は、インクを記録媒体に吐出して画像を記録する方法であり、複雑な装置を必要としないため、ランニングコストが低く抑えられ、インクジェット記録装置の小型化やカラー化等が容易である。このため、従来からインクジェット記録方法を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等のさまざまな記録装置が広く使用されている。
このようなインクジェット記録技術においては、ブラックインク及びカラーインク(例えば、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク、レッドインク、グリーンインク及びブルーインク等)を用いて多色の画像を形成することが行われている。この中で、ブラックインクは、画像濃度及び文字品位を優れたものとすること等を目的として、色材として顔料を含有するインクが用いられている(特許文献1参照)。
一方で、インクジェット記録方法においては、異なる色相を有する複数のインクを隣接して記録媒体に付与する場合、前記異なる色相を有する複数のインクで形成する画像の境界部でインクが混ざり合う現象(ブリーディング)が発生するという問題がある。特に、ブラックインク及びカラーインクにより形成された画像の境界部においてブリーディングが発生すると、画像品位の低下へ与える影響が大きい。このため、優れた耐ブリーディング性を得るために様々な技術の開発が行なわれている。
その代表的な解決方法は、異なる色相を有する複数のインクを隣接して記録媒体に付与する際に、少なくとも1種類のインクにおいて、増粘を生じさせる、又は、色材の凝集若しくは沈殿を生じさせて、ブリーディングの発生を抑制する方法である。例えば、アニオン性インク及びカチオン性インクにおいて、これらのインクの何れか一方がインクと同じイオン性を有するポリマーを含有するものとする。そして、これらのインクを互いに接触するように記録媒体に付与する方法が開示されている(特許文献2参照)。又、第1のインクと、前記第1のインク中の色材と反応して沈殿物を生成する沈殿剤を含有する第2のインクを用いて、これらのインクを互いに接触するように記録媒体に付与する方法が開示されている(特許文献3参照)。そして前記沈殿剤には多価金属が用いられている。
一方、近年、インクの目詰まりを生じないことやインクの吐出を安定に行うこと等の信頼性について、今まで以上に高いレベルが要求されている。例えば、反応性インクを用いる際に、記録ヘッドの吐出口を有する面に付着する凝集物や、ワイピング時におけるインク中の成分の凝集等によって引き起こされるインクの目詰まりを防ぐことに関する提案がある。例えば、ひとつのオリフィスプレートに、互いに反応する複数のインクの吐出口をそれぞれ設けた記録ヘッドを用いて記録を行う際に、インクの反応により生成した凝集物が何れかのインクに再溶解や再分散が可能であることが開示されている(特許文献4参照)。
しかし、上記したような何れの技術においても、インクを適用するインクジェット記録装置によっては、近年求められる高いレベルの信頼性が十分に得られない場合があった。
更に、従来から、インクの吐出口をキャッピングするために、吸引機構を有するキャップを用いて、インクの吐出口周辺部に存在する蒸発等により濃縮されたインクや凝集物を、吸引動作により排除することが行われている。
特開2000−198955号公報 特許第2889817号公報 特許第3538209号公報 特開2005−161842号公報
上記したような優れた耐ブリーディング性を得るための技術により、画像品位は改善されてきている。しかし、従来の技術においては、優れた耐ブリーディング性を得るために、インクを効率よく反応させること、即ち、インクの反応性を如何に向上するかということに重点が置かれていたため、十分な信頼性が得られない場合があった。そこで、前記したような問題を解決するために、互いに反応する複数のインクを吐出する吐出口を、複数のキャップでキャッピングすることが広く行われていた。しかし、前記したような複数のキャップを用いることは、インクジェット記録装置の大型化や機構の複雑化、更にはコストの上昇という結果を招いていた。
そこで本発明者らは、信頼性を得ることと、インクジェット記録装置の小型化や機構の簡略化、更にはコストを低減すること、を共に達成するために検討を行った。即ち、顔料インクの吐出口、及び、前記顔料インクと反応するインクの吐出口、を同一のキャップ(放置時専用のキャップ)を用いてキャッピングすることについて検討を行った。その結果、上記した構成とすること、即ち互いに反応する複数のインクの吐出口を同一のキャップを用いてキャッピングをすることだけでは、近年求められる高いレベルの信頼性が十分に得られないことがわかった。更には、信頼性を十分に得るためにはその他の手段が必要であり、インクジェット記録装置の小型化や機構の単純化、ましてやコストの低減は達成できないことがわかった。
一方で、本発明者らは、特許文献2〜4において開示されている、互いに反応する複数のインクの吐出口を、吸引機構を有するひとつのキャップを用いてキャッピングすることについて検討を行った。その結果、吸引動作を行う際に、互いに反応する複数のインクが接触し合うことにより凝集物が発生することや、前記凝集物が記録ヘッドに付着することにより、信頼性が悪化することがわかった。
従って、本発明の第1の目的は、耐ブリーディング性と信頼性を両立した画像形成方法を提供することにある。
又、本発明の第2の目的は、前記第1の課題を解決することに加えて、更に、優れた画像品位を得ることができる画像形成方法を提供することにある。
近年、インクジェット記録方法においては、画像品位をより優れたものとするために、2回以上記録ヘッドを主走査方向に往復走査することによって記録ヘッドの長さと同じ幅の画像を記録する方法(以降、多パス記録と呼ぶ)が行われている。しかし、多パス記録を行った場合、ノズル数を多くしても、又は、記録ヘッドの長さを大きくしても、十分に記録時間を短縮することができない場合がある。そこで、記録時間を短縮するために、主走査の往方向及び復方向の双方向で記録する方法(以降、往復記録と呼ぶ)や、1回の主走査で記録ヘッドの長さと同じ幅の画像を記録する方法(以降、1パス記録と呼ぶ)が試みられている。1パス記録と往復記録を組み合わせて記録を行う、即ち、1パス往復記録を行うことにより、記録媒体上において同一の箇所を複数回走査する必要がなくなるため、記録時間を大幅に短縮することができる。しかし、本発明者らの検討の結果、1パス往復記録のように高速で記録を行うと、顔料インクと、前記顔料インクと反応するインクとを重ねて記録媒体に付与する場合に、往復ムラが顕著に発生することがわかった。
従って、本発明の第3の目的は、前記第1の課題及び第2の課題を解決することに加えて、更に、往復記録で画像を形成する際に、往復ムラの発生を抑制することができる画像形成方法を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。
即ち、本発明の第1の目的にかかる画像形成方法は、顔料を含有する第1のインクを吐出する工程と、前記第1のインクを吐出する吐出口をキャップでキャッピングし、前記キャップ内のインクを排除する工程と、を有し、前記第1のインクの吐出口と共に前記キャップでキャッピングされる吐出口から吐出されるインクのうち、下記式(B)で表される前記第1のインクとの混合増粘率Y(%)が0より大きいインク全てに関し、それぞれのインクの吐出口と前記第1のインクの吐出口との吐出口間距離X(mm)(但し、X>0)及びそれぞれのインクの前記混合増粘率Y(%)が下記式(A)の関係を満たすことを特徴とする。
式(A):Y≦0.60X+50.0
式(B):(2種のインクの混合増粘率Y(%))=[(2種のインクを等しい体積で混合した混合インクの粘度)−(2種のインクの粘度の平均)]/(2種のインクの粘度の平均)×100
又、本発明の別の実施態様にかかる記録ユニットは、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、顔料インクと、前記顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インクの少なくとも1種類を含み、前記記録ユニットが、前記顔料インクの吐出口と、前記反応性インクの吐出口を、同一のキャップでキャッピングするものであり、前記キャップが、前記キャップ内のインクを排除するための排除手段を具備してなり、前記顔料インク及び前記反応性インクを等しい体積で混合したときの混合増粘率をY(%)、前記顔料インクの吐出口及び前記反応性インクの吐出口との吐出口間距離をX(mm)(但し、X>0)としたときに、前記同一のキャップで吐出口をキャッピングする顔料インク及び反応性インクにおける、前記Y及び前記Xが、下記式(A)の関係を満たすことを特徴とする。
Y≦0.60X+50.0 式(A)
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録装置は、顔料インクの吐出口と、前記顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インクの少なくとも1種類の吐出口とを同一のキャップでキャッピングし、前記キャップが、前記キャップ内のインクを排除するための排除手段を具備するインクジェット記録装置において、前記顔料インク及び前記反応性インクを等しい体積で混合したときの混合増粘率をY(%)、前記顔料インクの吐出口及び前記反応性インクの吐出口との吐出口間距離をX(mm)(但し、X>0)としたときに、前記同一のキャップで吐出口をキャッピングする顔料インク及び反応性インクにおける、前記Y及び前記Xが、下記式(A)の関係を満たすことを特徴とする。
Y≦0.60X+50.0 式(A)
本発明の第1の目的にかかる第1発明によれば、画像品位と信頼性を両立した画像形成方法を提供することができる。
又、本発明の第2の目的にかかる第2発明によれば、前記第1の課題を解決することに加えて、更に、優れた画像品位を得ることができる画像形成方法を提供することができる。又、本発明の第3の目的にかかる第3発明によれば、前記第1の課題及び第2の課題を解決することに加えて、更に、往復記録で画像を形成する際に、往復ムラの発生を低減することができる画像形成方法を提供することができる
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、詳細に説明する。
尚、本発明においては、色材が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。
従来、互いに反応する複数のインクを用いて優れた画像品位を得ることは可能であったが、この互いに反応する複数のインクの吐出口を同一のキャップでキャッピングすることができる信頼性と画像品位を両立することは困難であった。特に、前記キャップがインクを排除するための排除手段として、インクを吸引する機構(所謂、吸引回復機構)を兼ねる場合、互いに反応する複数のインクを吐出するそれぞれの吐出口を同一のキャップでキャッピングすることは不可能であると考えられていた。
そこで、本発明者らは、画像品位と信頼性を両立することを目的として検討を行った。その結果、顔料インクと、前記顔料インクと反応するインクの間での反応性と、それぞれのインクの吐出口の最短距離(吐出口間距離)を特定の関係とすることで、画像品位と信頼性を両立できることを見出した。その結果、本発明の第1の目的にかかる第1発明を為すに至った。
本発明者らが更に検討を行った結果、顔料インクの吐出口と、前記顔料インクと反応するそれぞれの反応性インクとの吐出口間距離の関係を規定することで、上記した効果に加えて優れた画像品位が得られることを見出した。その結果、本発明の第2の目的にかかる第2発明を為すに至った。
又、本発明者らが、更なる検討を行った結果、インクの吐出口の順序及びインクの色相を特定のものとすることで、往復記録で画像を形成する際に、往復ムラの発生を抑制できることを見出した。その結果、本発明の第3の目的にかかる第3発明を為すに至った。尚、往復ムラとは、インクジェット記録方法において、往記録及び復記録でインクを付与する順序が異なる方法で記録を行う場合に、往記録及び復記録におけるインクを付与する順序が異なることにより発生する色ムラのことである。
(顔料インク及び反応性インクの関係)
本発明にかかる顔料インクは、前記顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インク(以下、単に「反応性インク」と呼ぶことがある)と共に用いる。前記反応性インクは、顔料の分散状態を不安定化する成分を含有するものとすることが好ましい。本発明においては、前記顔料の分散状態を不安定化する成分として、顔料の分散状態を不安定化する染料や、顔料の分散状態を不安定化する反応性成分等を用いることができる。
本発明にかかる顔料インクは、混合増粘率をY(%)、吐出口間距離をX(mm)(但し、X>0)としたときに、同一のキャップで吐出口をキャッピングする顔料インク及び反応性インクにおける、Y及びXが下記式(A)の関係を満たすことを特徴とする。尚、混合増粘率Y(%)及び吐出口間距離X(mm)の詳細は後述する。
Y≦0.60X+50.0 式(A)
又、本発明の別の実施態様にかかる顔料インクは、同一のキャップで吐出口をキャッピングする顔料インク及び反応性インクにおける、前記Y及び前記Xが更に下記式(1)及び式(2)の関係を満たすことを特徴とする。
X≧1.5 式(1)
Y≧2.1X+10.0 式(2)
本発明においては、混合増粘率Yと吐出口間距離Xを用いる。以下に、顔料インクと、前記顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インクとを用いる場合に、混合増粘率Yと吐出口間距離Xが特定の関係を満たすことで、画像品位及び信頼性を共に優れたものとすることができる理由を示す。
〔混合増粘率Y〕
顔料インク及び反応性インクを用いて形成する画像における画像品位は、これらの顔料インク及び反応性インクが互いに反応する際にどの程度強く反応するかということに関係する。本発明において「反応する」こととは、顔料インク及び反応性インクが接触して混合した際に、顔料インク中の顔料の分散状態が不安定化することである。具体的には、顔料が凝集、沈殿することや、顔料インクが増粘すること等の現象が起こることを意味する。本発明においては、顔料インク及び反応性インクの反応性を、下記で説明する混合増粘率を用いて表す。
混合増粘率とは、顔料インク及び反応性インクを等しい体積で混合した時の、顔料インク及び反応性インクの平均粘度と比較した粘度の増加率であり、その単位は「%」である。例えば、互いに反応する2種類のインクをインクA及びインクBとした場合、混合インクの粘度、インクA及びインクBの粘度の平均から、下記の式に基づいて混合増粘率を算出する。尚、混合インクの粘度とは、インクA及びインクBを等しい体積で混合して、30分撹拌した後の液体(混合インク)の粘度のことをいう。又、インクA及びインクBの粘度の平均とは、インクA及びインクBの粘度の値を足して、インクの数(ここでは2)で割った値である。尚、本発明においては、粘度はVISCONIC ED形(東京計器製)を用いて、温度25℃の条件で測定した。
Figure 0005339684
混合増粘率は、顔料インク及び反応性インクの反応性の高さを示すものであり、この混合増粘率の値が大きいほど顔料インク及び反応性インクの反応性が高くなる。又、混合増粘率の値が大きいほど顔料インク及び反応性インクが混合することにより生じる凝集物や沈殿物の量が多くなる。この凝集物や沈殿物は、信頼性に与える影響が大きい。例えば、インクジェット記録装置がキャップ内のインクを排除するための排除手段を有する場合、前記キャップ内において顔料インク及び反応性インクが反応することで発生する凝集物や沈殿物の影響により、信頼性が得られない場合がある。又、前記キャップ内のインクを排除するために必要な構成、即ちチューブ、ポンプ、及び廃インクを保持する部材等が、顔料インク及び反応性インクが反応することで発生する凝集物や沈殿物の影響によりその役割を損ない、信頼性が得られない場合がある。混合増粘率Y(%)は、互いに反応する複数のインクにおける値であるので、0より大きい値を取るものとする。本発明においては、混合増粘率Yの下限は、10%以上、更には13%以上、特には18%以上であることが好ましい。混合増粘率Yの下限が10%より低い場合、顔料インク及び反応性インクの反応性が低く、耐ブリーディング性等の画像品位を向上する効果が得られない場合がある。又、混合増粘率Yの上限は、70%以下、更には66%以下、特には60%以下であることが好ましい。混合増粘率Yの上限が70%より高い場合、十分な信頼性が得られない場合がある。
〔吐出口間距離X〕
吐出口間距離とは、顔料インクの吐出口及び反応性インクの吐出口の間の距離のことである。例えば、互いに反応する2種類のインクをインクA及びインクBとしたときの吐出口間距離とは、以下のとおりである。本発明における吐出口間距離Xを、図15を用いて説明する。即ち、吐出口間距離38とは、図15中の矢印が示す距離、つまり、インクAを吐出する吐出口37とインクBを吐出する吐出口39における、「インクAの吐出口の縁部及びインクBの吐出口の縁部、の最短距離」のことであり、その単位は「mm」である。尚、インクA及びインクBを吐出する吐出口が複数ある場合は、「インクAの吐出口の縁部及びインクBの吐出口の縁部、の距離」が最短となるそれぞれの吐出口間における、吐出口間距離とする。吐出口間距離X(mm)は、距離を示す値であるので、0より大きい値を取るものとする(即ち、X>0とする)。本発明においては、吐出口間距離Xの下限は、0.0mmより大きいこと、更には1.5mm以上であることが好ましく、又、吐出口間距離Xの上限は、26.0mm以下、更には22.0mm以下であることが好ましい。尚、吐出口間距離を大きくするほど、キャップやインクジェット記録装置本体の大きさも大きくする必要がある。このため、顔料インク及び反応性インクを同一のキャップで収容するという観点からは、吐出口間距離Xの上限は26.0mm以下であることが好ましい。又、あまりに吐出口間距離を大きくし過ぎると、顔料インク及び反応性インクを記録媒体に付与する時間的な間隔が大きくなるため、これらのインクが互いに接触した際に反応が十分に起こらず、この結果、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
〔混合増粘率Y及び吐出口間距離Xの関係が信頼性に与える影響〕
本発明では、混合増粘率Y及び吐出口間距離Xが、下記式(A)の関係を満たすことを特徴とする(但し、X>0)。
Y≦0.60X+50.0 式(A)
式(A)は、吐出口間距離Xが大きい場合は、混合増粘率Yが大きい、即ち、顔料インク及び反応性インクの反応性が高い組み合わせであっても、優れた信頼性が得られることを示している。以下に、図1及び図2を用いて、混合増粘率Y及び吐出口間距離Xの関係が信頼性に与える影響について説明する。
・混合増粘率Yと吐出口間距離Xが、式(A)の関係を満たす場合
図1は、吐出口間距離が大きく、混合増粘率Yと吐出口間距離Xが、式(A)の関係を満たす場合の記録ヘッド部、及びキャップ内からインクを排除するための排除手段である吸引部の模式図である。図1−(a)は、キャップを介してインクを吸引する場合の、インクの流れを表している。記録ヘッド1000において、反応性インクは吐出口1001から、又、顔料インクは吐出口1002から、それぞれ図1−(a)中の矢印で示すように、キャップ1003及びキャップ内吸収体1005を通り、更にチューブ1004を通って吸引される。図1−(b)は、キャップを介してインクの吸引を開始した直後の、反応性インク中の反応性成分1006と顔料インク中の顔料1007が吸引される状態を表している。キャップ内吸収体1005におけるチューブ1004の近傍において、反応性インク及び顔料インクは互いに接触して混合する。図1−(c)は、図1−(b)の状態から、更に吸引を行った状態を表している。反応性インク及び顔料インクが互いに接触して混合した結果、反応性インク中の反応性成分1006及び顔料インク中の顔料1007が反応して、反応物の壁1008を形成する。そして、反応物の壁1008が形成された後は、顔料インク中の顔料と反応性インク中の反応性成分は、この反応物の壁が存在することにより互いに接触しないため、図1−(c)の状態が維持されることになる。本発明においては、上記したメカニズムにより、優れた信頼性が得られると考えられる。
但し、吐出口間距離が大きい場合であっても、反応性が高すぎる、即ち混合増粘率が高すぎると、信頼性が低下する場合がある。これは、吸引動作により反応性インク及び顔料インクのミスト等が発生した場合に、以下のような現象が起こるためであると考えられる。即ち、記録ヘッドとキャップが形成する空間において顔料と反応性成分が反応物を形成するために、吸引が行われる前に、前記反応物が、反応物の壁で捕捉されることにより、反応物の壁が成長して、反応物の塊が形成される。そして、反応物の塊が成長して記録ヘッドに付着することで、信頼性が低下する場合がある。しかし、混合増粘率Yと吐出口間距離Xが、本発明が規定する関係を満足することで、優れた信頼性が得られる。
又、画像を形成する際に、記録を行う最初の部分等において、吸引動作は行わずにキャップ内に予備的な吐出のみを行う場合がある。しかし、予備的に吐出を行う場合は、キャップ内に吐出されるインクの量が少ない。従って、吐出口間距離が大きく、混合増粘率Y及び吐出口間距離Xが、式(A)の関係を満たす場合、予備的な吐出程度のインクの量であれば、キャップ内における顔料インク及び反応性インクの混合は少なく、信頼性への影響はほとんどない。
・混合増粘率Yと吐出口間距離Xが、式(A)の関係を満たさない場合
図2は、吐出口間距離が小さく、混合増粘率Yと吐出口間距離Xが、式(A)の関係を満たさない場合の記録ヘッド部、及びキャップ内からインクを排除するための排除手段である吸引部の模式図である。図2−(a)は、キャップを介してインクを吸引する場合の、インクの流れを表している。記録ヘッド1000において、反応性インクは吐出口1001から、又、顔料インクは吐出口1002から、それぞれ図2−(a)中の矢印で示すように、キャップ1003及びキャップ内吸収体1005を通り、更にチューブ1004を通って吸引される。図2−(b)は、キャップを介してインクの吸引を開始した直後の、反応性インク中の反応性成分1006と顔料インク中の顔料1007が吸引される状態を表している。キャップ内吸収体1005におけるチューブ1004の近傍において、反応性インク及び顔料インクが互いに接触して混合する。ここで図1−(b)と比較するとわかるように、吐出口間距離が小さいと、キャップ1003内における反応性インク及び顔料インクの接触や混合が増える。図2−(c)は、図2−(b)の状態から、更に吸引を行った状態を表している。反応性インク及び顔料インクが互いに接触して混合した結果、反応性インク中の反応性成分1006及び顔料インク中の顔料1007が反応して、反応物の塊1009を形成する。この反応物の塊1009は更に吸引を行うことにより成長して大きくなる。そして、図2−(c)に示される状態のように反応物の塊1009が記録ヘッド1000に付着することで、信頼性が得られなくなると考えられる。
又、このとき、画像を形成する際に、記録を行う最初の部分等において、吸引動作は行わずにキャップ内に予備的な吐出のみを行う場合、信頼性が低下する場合がある。予備的に吐出を行う場合は、キャップ内に吐出されるインクの量は少ない。しかし、キャップ内に吐出された反応性インク及び顔料インクが混合する現象は、混合増粘率Yと吐出口間距離Xが式(A)の関係を満たさない場合は、上記で述べた混合増粘率Yと吐出口間距離Xが式(A)の関係を満たす場合と比較して起こりやすい。その結果、反応物が発生して、記録ヘッドに付着することにより、信頼性が低下する。
〔混合増粘率Y及び吐出口間距離Xの関係が画像品位に与える影響〕
混合増粘率Y及び吐出口間距離Xの関係は画像品位にも影響を与える。優れた画像品位を得るためは、顔料インク中の水性媒体と顔料を含む固形分との分離(固液分離)が速やかに起こること、及び、反応性インク及び顔料インクの反応により形成された凝集物が記録媒体の表面に残ることが必要となる。
本発明における優れた画像品位を得るという効果は、反応性インクを顔料インクよりも先に記録媒体に付与して画像を形成する場合に、より顕著に得ることができる。しかし、顔料インクを反応性インクよりも先に記録媒体に付与して画像を形成する場合においても、本発明の優れた画像品位を得るという効果が得られることに変りはない。
以下に、効果がより顕著である反応性インクを顔料インクよりも先に記録媒体に付与して画像を形成する場合を例にあげて説明する。この場合、反応性インクが付与されることにより、記録媒体のインクの浸透性は高められた状態となり、その後、顔料インクが前記記録媒体に付与される。しかし、先に記録媒体に付与された反応性インクは、顔料インクが前記記録媒体に付与されるまでの間は継続して記録媒体の深さ方向へと浸透していく。このため、反応性インクが記録媒体に付与されてから顔料インクが記録媒体に付与されるまでの時間が長いほど、反応性インクが記録媒体の深さ方向へとより浸透することになる。従って、反応性インク及び顔料インクを記録媒体に付与する間隔が長いほど、反応性インク及び顔料インクの反応は記録媒体の深さ方向に浸透した位置で起こることになり、インクの反応により画像品位を向上する効果は低くなる。そして、反応性インク及び顔料インクを記録媒体に付与する間隔は、吐出口間距離に依存するため、吐出口間距離が大きいほど、反応性インク及び顔料インクの反応性を高くする、即ち、混合増粘率を大きくする必要がある。このように、反応性インク及び顔料インクを記録媒体に付与する間隔は、画像品位と密接に関連しており、反応性インク及び顔料インクを記録媒体に付与する間隔は、吐出口間距離、更には混合増粘率と関連する。
上記で述べたように、吐出口間距離、更には、混合増粘率は、信頼性に加えて画像品位にも影響を与える。従来、互いに反応する複数のインクを用いて優れた画像品位を得ることは可能であるが、この互いに反応する複数のインクの吐出口を同一のキャップでキャッピングすることができる信頼性と画像品位を両立することは困難であると考えられていた。特に、前記キャップが、インクを排除するための排除手段として、インク吸引機構を兼ねる場合、互いに反応する複数のインクを吐出するそれぞれの吐出口を同一のキャップでキャッピングすることは不可能であると考えられていた。即ち、通常、同一のキャップを用いることが好ましいと考えられる吐出口間距離の範囲においては、信頼性と画像品位を両立することは不可能であるということである。以下、このことについて図を用いて説明する。図3は、上記したような従来の考え方における、画像品位を得ることができる領域及び信頼性を得ることができる領域(同一のキャップを用いた場合)を示す概念図である。図3において、縦軸は混合増粘率Y(%)、横軸は吐出口間距離X(mm)である。尚、横軸である吐出口間距離Xは、上記した同一のキャップを用いることが好ましいと考えられる吐出口間距離の一般的な範囲を示す。図3において、画像品位の境界線1よりも混合増粘率Yが大きい場合に優れた画像品位が得られ、又、信頼性の境界線2よりも混合増粘率Yが小さい場合に優れた信頼性が得られる。図3からわかるように、従来の顔料インクの吐出口と反応性インクの吐出口とを同一キャップでキャッピングする系においては、同一のキャップを用いることが好ましいと考えられる吐出口間距離の範囲には、画像品位と信頼性を両立できる領域は存在しない。
そこで、画像品位と信頼性を両立するために、互いに反応する複数のインクの混合を防ぐ、即ち、互いに反応する複数のインクを吐出するそれぞれの吐出口を複数の異なるキャップでキャッピングすることが行われてきた。以下、このことについて図を用いて説明する。図4は、画像品位を得ることができる領域及び信頼性を得ることができる領域(複数のキャップを用いた場合)を示すグラフである。図4において、縦軸は混合増粘率Y(%)、横軸は吐出口間距離X(mm)である。尚、横軸である吐出口間距離Xは、複数のキャップを用いることから、同一のキャップを用いることが好ましいと考えられる吐出口間距離の範囲よりも大きい範囲にずれている。図4において、画像品位の境界線3よりも混合増粘率Yが大きい場合に優れた画像品位が得られ、又、信頼性の境界線4よりも混合増粘率Yが小さい場合に優れた信頼性が得られる。図4から明らかであるように、同一のキャップを用いることが好ましいと考えられる吐出口間距離の範囲であっても、複数のキャップを用いることで、信頼性を得ることができる領域が広がり、画像品位と信頼性を両立することができる領域が存在するようになる。尚、図4のグラフ中において、ハッチングされた領域が、画像品位と信頼性を両立することができる領域を示す。
しかし、前記したような複数のキャップを用いることは、インクジェット記録装置の大型化や機構の複雑化、更にはコストの上昇という結果を招いていた。このため、インクジェット記録装置の小型化や機構の単純化、コストの低減という観点から、反応性インクの吐出口及び顔料インクの吐出口を同一のキャップでキャッピングすることが強く求められてきた。
そこで本発明者らが検討を行った結果、反応性インクの吐出口及び顔料インクの吐出口を同一のキャップを用いてキャッピングする場合においても、信頼性と画像品位を両立することができる条件が存在することを見出した。以下、このことについて図を用いて説明する。図5は、画像品位を得ることができる領域及び信頼性を得ることができる領域(同一のキャップを用いた場合)を示すグラフである。図5において、縦軸は混合増粘率Y(%)、横軸は吐出口間距離X(mm)である。尚、横軸である吐出口間距離Xは、図3と同様に、同一のキャップを用いることが好ましいと考えられる吐出口間距離の範囲の一般的な範囲を示す。図5において、画像品位の境界線5よりも混合増粘率Yが大きい場合に優れた画像品位が得られ、又、信頼性の境界線6よりも混合増粘率Yが小さい場合に優れた信頼性が得られる。尚、図5のグラフ中において、ハッチングされた領域が、画像品位と信頼性を両立することができる領域を示す。
〔本発明における3つの境界線〕
本発明においては、混合増粘率及び吐出口間距離を用いて、(1)実現可能である最小の吐出口間距離、(2)画像品位、(3)信頼性、の3つの観点から境界線を設定した。以下、図を用いてこのことを詳細に説明する。図6は、本発明における、画像品位が得られる領域及び信頼性が得られる領域を示すグラフである。
(1)実現可能である最小の吐出口間距離(図6における直線7)
図6における直線7は、現在の技術水準で実現可能である、最小の吐出口間距離を示すものである。ひとつのプレートにインク流路が異なる複数の吐出口列を形成する場合、吐出口列を形成する工程と記録ヘッドの信頼性の観点から、吐出口間距離の最小値には限界がある。又、複数のプレートに吐出口列が形成されたプレートを、接着剤等を用いて貼り合わせることにより、並べて用いることもできる。しかし、吐出口とプレートの端はある程度の距離を必要とすること、又、複数のプレートを貼り合わせるためには「のりしろ」の部分が必要なことから、やはり吐出口間距離の最小値には限界がある。これらのことから、本発明における、現在の技術水準で実現可能である最小の吐出口間距離を定めた。尚、技術水準が向上することで、最小の吐出口間距離を小さくすることができれば、本発明の効果を損なわない限り、吐出口間距離の最小値は下記の式(1)の範囲よりも小さくしても構わない。但し、吐出口間距離X(mm)は、距離を示す値であるので、0より大きい値を取るものとする。
(2)画像品位(図6における直線8)
図6における直線8は、画像品位を得るための、吐出口間距離と混合増粘率の関係である。この境界線よりも混合増粘率が大きい場合、互いに反応する複数のインクは十分な反応性を有し、優れた画像品位が得られる。又、この境界線よりも混合増粘率が小さい場合は、互いに反応する複数のインクの反応性が不十分であり、反応性インクを用いる効果が得られない。
一般に、互いに反応する複数のインクの吐出口間距離が大きいほど、反応性、即ち、混合増粘率を大きくする必要がある。この理由は以下の通りである。記録媒体に先に付与されたインクは、時間の経過と共に記録媒体の深さ方向へと浸透する。そして、吐出口間距離が大きい、つまり、互いに反応する複数のインクが記録媒体に付与される時間差が大きいと、互いに反応する複数のインクが混合されるのが遅くなる。この結果、記録媒体の深さ方向に沈み込んだ部分において反応が起こることになり、優れた画像品位が得られない場合がある。このため、互いに反応する複数のインクの反応性を大きくすることで、記録媒体にインクが付与された後に、なるべく早く反応が起きるようにする必要があるためである。
これまでは、互いに反応する複数のインクを用いた場合、反応性が低くても、吐出口間距離が大きい場合には、ある程度の画像品位が得られると考えられていた。しかし、これは、顔料インクを反応性インクよりも先に記録媒体に付与する場合にのみ得られる効果である。顔料インクを先に記録媒体に付与する場合、その後に反応性インクを記録媒体に付与するまでの間に、顔料インクが蒸発や固液分離を起こすことにより、顔料の分散状態が不安定になる。この結果、顔料インクだけを記録媒体に付与した状態でも、ある程度の画像品位が得られることになる。その後、更に反応性インクを記録媒体に付与して、前記反応性インクが顔料インクと接触することで反応が生じ、画像品位が得られることになる。このことから、顔料インクを反応性インクよりも先に記録媒体に付与する場合においては、吐出口間距離が大きくても、ある程度の画像品位が得られるのである。
しかし、反応性インクを顔料インクよりも先に記録媒体に付与する場合は、上記した現象とは異なる現象が起こる。反応性インクを先に記録媒体に付与する場合、反応性インクが付与されることにより、記録媒体のインクの浸透性が高められた状態となり、その後、顔料インクが記録媒体に付与される。この結果、顔料インクはより記録媒体の深さ方向へ浸透しやすくなるため、画像品位を優れたものとするためには、反応性を大きくする必要がある。
更に、記録媒体上において、反応性インクを付与した領域に隣接するように顔料インクを付与する場合、反応性インクが記録媒体に付与されることにより記録媒体のインクの浸透性が高められている。このため、顔料インクは、記録媒体上において、反応性インクが付与されることにより浸透性が高められた領域に引き込まれるように浸透することになる。この結果、顔料インクで形成した画像と反応性インクで形成した画像との境界が白くぼやける現象が生じる。このことからも、反応性インクを顔料インクよりも先に記録媒体に付与する場合は、吐出口間距離を大きくするほど、反応性を高くする必要がある。
本発明においては、上記したようなことを考慮して、画像品位を得るための境界線を得た。この際、上記したように、顔料インクよりも先に反応性インクを記録媒体へ付与する場合の方が画像品位を得るためには厳しくなる傾向があるため、これを重視した。
(3)信頼性(図6における直線9)
図6における直線9は、信頼性を得るための、吐出口間距離と混合増粘率の関係である。この境界線よりも混合増粘率が大きい場合、互いに反応する複数のインクの反応性が高すぎるために、信頼性が得られない。又、この境界線よりも混合増粘率が小さい場合は、互いに反応する複数のインクの反応性が適切であり、優れた信頼性が得られる。
従来、顔料インクの吐出口と反応性インクの吐出口をそれぞれ異なるキャップでキャッピングしていたので、ミストによる固着が信頼性に大きく影響を与えていた。吐出口間距離が大きくなればなるほど、記録中のミストによる固着は生じにくくなるため、混合増粘率は高くすることができる。このことから、従来の画像信頼性を得るための、吐出口間距離と混合増粘率の関係は、図4における直線4で示される境界線となっていた。
しかし、顔料インクの吐出口と反応性インクの吐出口を同一のキャップでキャッピングすることを前提にした場合、信頼性に大きく影響を与えるのは、以下の2つの現象を考慮する必要がある。即ち、ミストによる固着だけではなく、同一のキャップでキャッピングして吸引を行う際に、キャップ内の吸収体中におけるインクの混合により生じる凝集物の堆積をも考慮する必要がある。このため、異なるキャップでキャッピングする場合と、同一のキャップでキャッピングする場合を比較すると、吐出口間距離が同じであっても、信頼性を得るための吐出口間距離と混合増粘率の関係は異なるものとなる。上記で述べたように、同一のキャップでキャッピングして吸引を行う際の、キャップ内の吸収体中におけるインクの混合は、互いに反応する複数のインクの吐出口間距離が大きいほど起こりにくくなる。
本発明においては、上記したようなことを考慮して、信頼性を得るための境界線を得た。即ち、互いに反応する複数のインクの吐出口間距離が大きく、混合増粘率が大きい場合であっても、信頼性を得ることができる境界線を得た。この信頼性の境界線は、ワイパーを用いたワイピング機構部分に特別な機構を用いてない場合は、互いに反応する複数のインクの吐出口を同一のワイパーでワイピングする際の、吐出口間距離と混合増粘率の関係でもある。
本発明においては、上記で説明した(1)から(3)の3つの条件を全て同時に満たすことで、画像品位及び信頼性を共に優れたものとすることができる。本発明者らの検討の結果、上記した3つの条件は、下記の(1)式、(2)式、及び(3)式で表されることが判明した。
X≧1.5 式(1)
Y≧2.1X+10.0 式(2)
Y≦0.60X+50.0 式(3)
本発明においては、顔料インクと、前記顔料インクと反応するインクの反応性、即ち、混合増粘率と、それぞれのインクの吐出口間距離を特定の関係とする。このことにより、これらのインクの吐出口を、インクを排除するための手段、例えば、吸引回復機構を備えた同一のキャップでキャッピングすることを可能としている。つまり、従来の顔料インクと、前記顔料インクと反応するインクの組み合わせは、吐出口間距離に対して反応性が高い、即ち、混合増粘率が大きいため、本発明の規定は満たさない。
(顔料インクと反応性インクの反応)
本発明においては、顔料インクと反応性インクとが混合された時に、顔料インク中の顔料の分散状態が不安定化するように、顔料インクと反応性インクの組成をそれぞれ選択することが好ましい。具体的には、(1)反応性インクが、顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する染料を含有する態様、(2)反応性インクが、顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性成分等を含有する態様、等が挙げられる。前記した(1)の態様は、具体的には、例えば以下の(A)、(B)、又は(C)とすることができ、又、前記した(2)の態様は、具体的には、例えば以下の(D)又は(E)とすることができる。
(A)顔料インク中の顔料がアニオン性基を有し、反応性インク中の染料がカチオン性基を有する態様。この場合、顔料インクと反応性インクとを混合すると、染料のカチオン性基が顔料のアニオン性基と反応して、顔料の分散破壊、凝集が起こり、又、インクが増粘する。
(B)顔料インク中の顔料がカチオン性基を有し、反応性インク中の染料がアニオン性基を有する態様。この場合、顔料インクと反応性インクとを混合すると、染料のアニオン性基が顔料のカチオン性基と反応して、顔料の分散破壊、凝集が起こり、又、インクが増粘する。
(C)顔料インク中の顔料がアニオン性基を有し、反応性インク中の染料が可溶化基を多く持つアニオン性基を有する態様。この場合、顔料インクと反応性インクとを混合すると、染料の対イオン(カチオン)が顔料のアニオン性基と反応して、顔料の分散破壊、凝集が起こり、又、インクが増粘する。
(D)顔料インク中の顔料がアニオン性基を有し、反応性インクが反応性成分として、例えば、多価金属を含有する態様。この場合、顔料インクと反応性インクとを混合すると、多価金属塩を構成する陽イオン(多価金属イオン)が顔料のアニオン性基と反応して、顔料の分散破壊、凝集が起こり、又、インクが増粘する。尚、多価金属塩は、インク中では多価金属イオンと陰イオンに解離して存在するが、この場合も、インクが多価金属塩を含有する、と表現する。インクが多価金属を含有するための具体的な手段は、例えば、インクが多価金属塩を含有することが挙げられる。前記多価金属イオンは、具体的には、例えば、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+及びAl3+が挙げられる。又、前記陰イオンは、具体的には、例えば、NO 、SO 2−、Clであることが好ましい。本発明においては、反応性インクの保存安定性や、反応性インクと接触する部材(インクジェット記録装置を構成するインク流路等)を溶解しない等の観点から、上記した多価金属イオンの中でも特に、Mg2+を用いることが好ましい。又、溶解度の観点から、上記した陰イオンの中でも、NO 、SO 2−、Clを用いることが好ましく、水への溶解度が優れているため、NO を用いることが特に好ましい。反応性インク中の多価金属の含有量(質量%)は、反応性インクの全質量を基準として、0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、多価金属塩の形態では0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
(E)顔料インク中の顔料がpHで安定に分散していて、反応性インクがpHであり、顔料インクと反応性インクとを混合した混合インクがpHとなるように各インクのpHを調整する態様。この場合、顔料インクと反応性インクを混合すると、顔料インクのpHが変化して、顔料の分散破壊、凝集が起こり、又、インクが増粘する。ここで、pHは顔料の分散が安定なpHの領域であり、pHは顔料の分散が不安定なpHの領域である。
(反応性インクの種類)
本発明にかかる顔料インクは、1種類の反応性インクと共に用いることで、十分に優れた画像品位及び信頼性を得ることができる。しかし、本発明においては、顔料インクと反応性インクの反応性、即ち、混合増粘率をある一定の範囲に抑えることで、顔料インクの吐出口と反応性インクの吐出口を同一のキャップでキャッピングすることを可能としている。このため、反応性インクを1種類のみ用いる場合には、画像品位の向上には限界がある。従って、更に優れた画像品位を得るためには、顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インクを少なくとも2種類用いることが特に好ましい。例えば、反応性インクを2種類用いる場合、顔料インクと各反応性インクを混合した時に、混合増粘率が相対的に大きい反応性インクを強反応性インク、混合増粘率が相対的に小さい反応性インクを弱反応性インクとする。
反応性インクを2種類以上用いる際は、信頼性を得るためには、反応性、即ち、混合増粘率が最も小さい弱反応性インクの吐出口を顔料インクの吐出口と同一のキャップでキャッピングすることが好ましい。
顔料インクと前記顔料インクと同一のキャップでキャッピングする弱反応性インクとの混合増粘率をY(%)、前記顔料インクと前記弱反応性インクの吐出口との吐出口間距離X(mm)(但し、X>0)とする。この時、混合増粘率Y(%)及び吐出口間距離X(mm)の関係が、下記式(A)の関係を満たすことが必要である。
Y≦0.60X+50.0 式(A)
この場合においても、顔料インクと弱反応性インクの吐出口との吐出口間距離X(mm)、顔料インクと弱反応性インクとの混合増粘率をY(%)が、下記式(1)及び式(2)の関係を満たすことが好ましい。
X≧1.5 式(1)
Y≧2.1X+10.0 式(2)
又、強反応性インクの吐出口は、顔料インクの吐出口と同一のキャップ、又は異なるキャップでキャッピングすることができる。顔料インクの吐出口と強反応性インクの吐出口を同一のキャップでキャッピングする場合は、以下の2つの条件を満たすことが必要となる。即ち、顔料インクと弱反応性インクとの混合増粘率Y(%)と、顔料インクと弱反応性インクの吐出口との吐出口間距離X(mm)との関係が、下記式(A)の関係を満たすことが必要となる。更に、顔料インクと強反応性インクとの混合増粘率Y(%)と、顔料インクと強反応性インクとの吐出口間距離X(mm)(但し、X>0)との関係も、下記式(A)の関係を満たすことが必要である。
Y≦0.60X+50.0 式(A)
この場合においても、顔料インクと強反応性インクの吐出口との吐出口間距離をX(mm)、顔料インクと強反応性インクとの混合増粘率をY(%)が、下記式(1)及び式(2)の関係を満たすことが好ましい。
X≧1.5 式(1)
Y≧2.1X+10.0 式(2)
2種類以上の反応性インクを用いる場合、吐出口間距離は、反応性が相対的に高い、即ち、混合増粘率が相対的に大きい強反応性インクと顔料インクの吐出口間距離が、弱反応性インクと顔料インクの吐出口間距離よりも大きいことが必要である。これは、画像品位の境界線に関して上記でも述べたように、互いに反応する複数のインクを用いる場合の画像品位には、反応性、即ち、混合増粘率と吐出口間距離が関係するためである。強反応性インク又は弱反応性インクを用いる場合の画像品位をそれぞれ同等のものとするためには、強反応性インクを用いる場合は弱反応性インクを用いる場合よりも吐出口間距離を大きくする必要がある。このようにインクの反応性に応じて吐出口間距離を設定することにより、顔料インクと組み合わせて用いる反応性インクとして、反応性が異なるインクを用いる場合であって同様の画像を形成することができる。又、これにより、信頼性をも向上することができる。
又、顔料インクの吐出口は、2種類の反応性インクの各吐出口に挟まれる位置に設定することが好ましい。これは、往復記録を行う際に、顔料インクと反応性インクとを記録媒体に付与する順序を常に同じにすることにより、往復ムラを低減することが可能になるからである。
(顔料インクと反応性インクの色相)
反応性インクは顔料インクと同じ色相であることが好ましい。又、2種類以上の反応性インクを用いる場合は、少なくとも1種類の反応性インクが顔料インクと同じ色相であることが好ましい。更には、顔料インクの吐出口と同一のキャップでキャッピングする反応性インクが、顔料インクと同じ色相であることが特に好ましい。これは、同一のキャップでキャッピングする際に、顔料インクと反応性インクが同じ色相であれば、顔料インクと反応性インクが混色した場合においても、記録の始めの部分等における画像の発色性に問題が生じにくいためある。本発明においては、顔料インクと反応性インクを重ねて記録媒体に付与して、これらのインクを互いに反応させることで、優れた画像品位や耐ブリーディング性が得られる。従って、本発明のインクを用いて形成した画像は、顔料インクと反応性インクの色材が混色した画像である。このとき、顔料インクと反応性インクが同じ色相ではない場合、異なる色相の色材が重ねて記録媒体に付与されることで、顔料インクの色相とは異なる画像となるために好ましくない。
反応性インクが顔料インクと異なる色相である場合は、その他の色相のインクを用いて、顔料インクと同じ色相になるように調整することが好ましい。例えば、顔料インクがブラックの色相、反応性インクがシアンの色相を有する場合は、記録媒体上において、反応性インクを付与した領域に例えばマゼンタインクやイエローインクを重ねて付与することで色相を調節することが好ましい。
又、例えば、2種類の反応性インクのうち、1種類が同じ色相の反応性インクであり、他の1種類が異なる色相の反応性インクである場合、異なる色相の反応性インクを用いる際に、その他の色相のインクを用いて色相を調節することが好ましい。このようにすることにより、同じ色相の反応性インクを用いて形成した画像と色相が同じになるためにある。
尚、本発明において、顔料インクと反応性インクが同じ色相であることとは、以下のことをいう。顔料インクがブラックインクである場合、顔料インクと反応性インクの彩度の差ΔCが、0以上15以下、好ましくは、0以上10以下であることをいう。彩度の差がこれよりも大きいと、反応性インクの色相が鮮明になるため、顔料インクと混合する際に、反応性インクの色相の影響により、形成する画像の色相が異なるものとなることがある。又、顔料インクがカラーインクである場合、顔料インクと反応性インクの色相角の差Δhが、0以上60以下、好ましくは、0以上30以下であることをいう。色相角の差がこれよりも大きいと、顔料インクと反応性インクとの色相の違いが大きくなり、顔料インクと混合する際に、反応性インクの色相の影響により、形成する画像の色相が異なるものとなることがある。又、反応性インクの明度Lは顔料インクと近い値とすることが好ましい。顔料インクと反応性インクが同じ色相であるインクの組み合わせとして、例えば、顔料インク及び反応性インクが共にブラックインクである場合等が挙げられる。反応性インクが異なる色相であることとは、上記したような範囲を外れることであり、具体的には、例えば、顔料インクがブラックインクである場合に、反応性インクがマゼンタインク、イエローインク、シアンインク等であることをいう。
本発明においては、顔料インク及び反応性インクが共にブラックインクであることが特に好ましい。又、2種類以上の反応性インクを用いる場合は、少なくとも1種類の反応性インク及び顔料インクが共にブラックインクであることが好ましい。このとき、反応性インクとして、例えば、シアンインクやマゼンタインク、特にはシアンインクを組み合わせて用いることが特に好ましい。このとき更に、反応性インクであるブラックインクは弱反応性インクであり、シアンインクは強反応性インクであることが特に好ましい。又、顔料インクがブラックインクであり、顔料インクの吐出口と同一のキャップでキャッピングする反応性インクが、ブラックインクであることが特に好ましい。
(顔料インク及び反応性インクの物性等)
本発明においては、顔料インクと反応性インクの吐出体積を小さくすることが好ましい。この理由は以下の通りである。顔料インクの吐出体積が小さい場合、インク滴の表面積が大きくなり、記録媒体に付着する前にインクを構成する水性媒体等の蒸発が素早く起こる。顔料インクにおいては、この蒸発に伴って顔料の分散状態が不安定になるので、吐出体積が小さいほど顔料インク単独での分散状態の不安定化がより進むことになる。分散が不安定な状態で反応性インクと接触して反応すると、分散状態の不安定化が更に加速することになり、画像品位が向上する。このような効果を得るためには、顔料インクの吐出体積を5pl以下とすることが好ましい。又、反応性インクの吐出体積は小さいほど、前記反応性インクを記録媒体に付与した際の1ドットあたりの面積が小さいため、記録媒体の一定領域に一定量のインクを付与する際に、ドット配置の自由度を大きくすることができる。この結果、顔料インクと反応性インクを効果的に反応させることができるため、画像品位が向上する。このような効果を得るためには、反応性インクの吐出体積を5pl以下とすることが好ましい。
又、顔料インクと反応性インクの粘度は、吐出安定性を得ること、及び、混合インクの粘度を適切なものとするために、何れも1mPa・s以上5mPa・s以下とすることが好ましい。
[顔料インク]
(色材)
顔料インクに用いる色材は、ブラックインクに用いる顔料はカーボンブラックであり、ブラックインク以外に用いる顔料は有機顔料であることが好ましい。顔料インク中における、顔料の分散の形態は、自己分散型、樹脂等を分散剤として用いた樹脂分散型、等の何れの形態であってもよい。これらの顔料は単独では勿論のこと、2種類以上を混合して用いてもよい。又、調色等の目的のために、顔料に加えて染料を用いることもできる。
顔料インク中の顔料の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、更には1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
〔自己分散型顔料〕
本発明においては、少なくとも1つの親水性基が顔料粒子の表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して結合している自己分散型顔料を用いることが好ましい。このような自己分散型顔料を用いることにより、顔料をインク中に分散するための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。
顔料粒子の表面に結合している親水性基は、具体的には、例えば、−COO(M)、−SO(M)、−POH(M)、−PO(M、−(COO(M))等が挙げられる。尚、式中「M」は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムであり、nは2以上の整数である。又、前記他の原子団(−R−)は、炭素原子数1乃至12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。勿論、本発明はこれに限られるものではない。尚、インク中の親水性基の形態は、その一部が解離した状態、若しくは完全に解離した状態の何れの形態であってもよい。
本発明においてはとりわけ、ジアゾカップリング法により得られる、上記した−R−(COOM基という構造を一部分に有する化合物を表面に結合している顔料を好適に用いることができる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
これらの中でも特に、顔料粒子の表面に−R−(COOM基が結合している自己分散型顔料を用いることで、優れた画像品位及び耐ブリーディング性が得られるため、特に好ましい。この理由は、インク中における、自己分散型顔料と水溶性有機溶剤との相互作用が大きく関与していると推測される。即ち、顔料粒子の表面に−R−(COOM基が結合している場合、特に、顔料粒子の表面に前記−R−(COOM基がより高密度に結合している場合、以下のような現象が起こると考えられる。
インク中において、顔料粒子の表面に結合している−R−(COOM基が存在することで立体障害等が起こりやすくなる。このため、−R−(COOMが結合した顔料粒子とその近傍に存在する水溶性有機溶剤は、従来の自己分散型顔料とその近傍に存在する水溶性有機溶剤と比較して溶媒和しにくくなる。その結果、インクが記録媒体に付与された際に、インク中の水性媒体と、顔料を含む固形分との分離(固液分離)が極めて速やかに引き起こされると考えられる。又、インクに含有される水溶性有機溶剤が顔料に対して溶媒和しにくい場合、インク中における溶媒和による顔料の分散状態を安定化する効果が小さくなるため、記録媒体における顔料同士の凝集がより顕著に起こると考えられる。
尚、本発明における溶媒和とは、顔料と水溶性有機溶剤の親和性を意味するものであり、顔料が水溶性有機溶剤に対する親和性のある部位をどの程度有するかに依存する。水溶性有機溶剤に対する親和性のある部位は、例えば、顔料粒子の表面において、親水性基が結合していない部位が挙げられる。例えば、イオン性を有する基が高密度で顔料粒子の表面に結合している場合、顔料粒子の表面において、水溶性有機溶剤に対する親和性のある部位が露出している面積は小さい。又、親水性基がより高密度に顔料粒子の表面を覆っている場合は以下のようになる。即ち、親水性基による立体障害の影響と、顔料の水溶性有機溶剤に対する親和性を有する部位の減少の影響、の相乗効果により、水溶性有機溶剤は顔料に対して溶媒和しにくくなる。
又、前記顔料粒子の表面に結合している−R−において、−(COOM)が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、−(COOM)を結合していることが好ましい。又、前記nが2であることや、前記RがCであることが好ましい。これは、前記した構成とすることで、画像品位及び耐ブリーディング性について優れた効果が得られるためである。尚、前記顔料粒子の表面に結合している−R−において、−(COOM)が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、−(COOM)を結合していることとは、R中の隣り合う2つ以上の炭素原子が共に−(COOM)基を有することである。これは、具体的には、下記式(1)のような構造を有することである。本発明においては、顔料粒子の表面に、下記式(1)で表される基が結合した自己分散型顔料を用いることが好ましい。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
式(1)
Figure 0005339684
又、顔料インクにおいては、前記−R−(COOM基がより高密度に顔料粒子の表面に結合していることが好ましい。具体的には、例えば、顔料粒子の表面における親水性基密度が、2.00μmol/m以上であることが好ましい。これは、前記で述べた溶媒和の程度に起因する固液分離がより促進され、上記した効果がより顕著に得られるためである。尚、本発明においては、顔料粒子における親水性基密度は、顔料の比表面積や、顔料粒子の表面に結合している官能基の構造等により大きく影響を受けるため、この範囲に限られるものではない。
更に、本発明にかかる水性インクにおいては、前記Mがアンモニウムである場合、より優れた耐水性が得られるため、特に好ましい。これは、当該インクが記録媒体に付与されると、このアンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発して顔料粒子の表面に結合している親水性基がH型(酸型)となり、親水性が低下することによるものと考えられる。ここで、Mがアンモニウムである自己分散型顔料は、以下の方法で得ることができる。例えば、Mがアルカリ金属である自己分散型顔料をについて、イオン交換法を行うことでMをアンモニウムに置換する方法や、酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してMをアンモニウムにする方法等が挙げられる。
〔樹脂分散型顔料〕
顔料インクは、顔料をインク中に分散するための分散剤(樹脂)を用いることができる。分散剤は、水溶性を有するものであれば何れのものも用いることができる。本発明においては特に、親水性基を有し、その作用により顔料を水性媒体に安定に分散することができるものが好ましい。分散剤は、重量平均分子量が、1,000乃至30,000、更には3,000乃至15,000のものを用いることが好ましい。顔料インク中の分散剤の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。又、顔料インク中の顔料の含有量及び分散剤の含有量の比率(P/B比=顔料の含有量/分散剤の含有量)は、0.02以上150以下であることが好ましい。
分散剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。
スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体。スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体。スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体。スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体。ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体。又はこれらの共重合体の塩等。
〔カーボンブラック〕
ブラックインクに用いる顔料はカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等を用いることができる。具体的には、例えば、以下の市販品等を用いることができる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190 ULTRA−II、1170、1255(以上コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:400R、330R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、ヴァルカンXC−72R(以上キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック(SpecialBlack):6、5、4A、4(以上デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学製)。
又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを用いることもできる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を用いてもよい。
〔有機顔料〕
ブラックインク以外に用いる顔料は、各種の有機顔料が挙げられる。有機顔料は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。
トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料。インジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料。チオインジゴ系顔料。ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等。
又、本発明で用いることのできる有機顔料を、カラーインデックス(COLOUR INDEX)ナンバーで示すと、下記のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71等。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192等。又、C.I.ピグメントレッド:215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50等。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等。C.I.ピグメントグリーン:7、36等。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26等。
(塩)
顔料インクは、塩を含有することが好ましい。これにより、記録媒体の種類によって画像品位が大きく変化することがなく、又、画像濃度が高く、優れた画像品位を安定して得ることができる顔料インクとすることができる。更に、ブラックの画像領域において、顔料インクのみで形成した画像と、反応性インクと顔料インクとの混合によって形成した画像とが混在する場合に、これらの画像濃度がほぼ等しくなり、視覚的に違和感のない画像を形成することができる。
顔料インク中の塩の形態は、その一部が解離した状態、又は完全に解離した状態の何れの形態であってもよい。
顔料インクに用いることができる塩の具体例は、例えば、(M)NO、CHCOO(M)、CCOO(M)、C(COO(M))、C(COO(M))、(MSO等が挙げられる。尚、式中「M」はアルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
顔料インク中における、塩の含有量は、本発明の効果が十分得られる範囲で含有されていれば良い。具体的には、塩の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。含有量が0.05質量%を下回ると本発明の効果が得られない場合があり、10.0質量%を上回るとインクの保存安定性等が得られない場合がある。
又、前記Mがアンモニウムである場合、より優れた耐水性が得られるために、より好ましい。中でも特に、NHNO、C(COONH、C(COONH、(NHSO等は比較的短い時間で耐水性が発現するため、特に好ましい。又、塩が、C(COO(M))、C(COO(M))、(MSOである場合、保存時等に、インク中の水分が蒸発した際にも顔料の分散安定性がとりわけ優れているため、より好ましい。又、顔料粒子の表面に−R−(COOM基が結合している自己分散型顔料において、例えば、nが2の場合には、前記自己分散型顔料と組み合わせて用いる塩として2価の塩を用いることが好ましい。これは、即ち、顔料粒子表面の官能基の価数及び塩の価数が同じである場合、本発明の効果がより顕著に得られるため、特に好ましい。具体的には、顔料粒子表面に−R−(COOM基が結合している自己分散型顔料と、C(COO(M))、C(COO(M))、(MSOという塩の組み合わせ等が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
(水性媒体)
顔料インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることが好ましい。水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を用いることが好ましい。顔料インク中の水の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。又、前記水溶性有機溶剤は、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。顔料インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。下記の水溶性有機溶剤は、単独でも又は混合物としても用いることができる。
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1乃至6のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基の炭素数が2乃至6のアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等。
(その他の成分)
顔料インクは、保湿性維持のために前記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性化合物を用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の保湿性化合物の含有量(質量%)は、一般には、顔料インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、更には、3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
更に、顔料インクは、所望の物性値を持つインクとするために前記した成分以外にも必要に応じて種々の化合物を含有してもよい。具体的には、例えば、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等が挙げられる。又、顔料インクには、更に、水溶性染料等を添加することもできる。
又、必要に応じてポリマー等を顔料インクに添加することにより、画像の耐擦過性や耐マーカー性を向上することができる。とりわけ、イオン性基を有さないノニオン性ポリマーはインクの信頼性に与える影響が少なく、好適に用いることができる。
[反応性インク]
本発明で用いる反応性インクは、顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する作用を有するものとする必要がある。具体的には、(1)反応性インクが、顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する染料を含有する構成、(2)反応性インクが、顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性成分等を含有する構成、のどちらかの構成とすることが好ましい。より具体的には、反応性インクが、上記で説明した(A)〜(E)の何れかの構成となるようにすることが好ましい。
(色材)
反応性インクに用いる色材は、染料、具体的には、例えば、酸性染料、直接染料等であることが好ましい。染料は、既存のものでも、又は新規に合成したものであっても、適切な色調と濃度を有するものであれば用いることができ、単独でも又は混合物としても用いることができる。本発明の反応性インクにおける色材の含有量(質量%)は、反応性インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。含有量が0.1質量%未満であると十分な画像品位が得られない場合があり、含有量が10.0質量%を超えると固着回復性が得られない場合がある。
〔イエロー色材〕
・C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132等。
・C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99等。
・C.I.リアクティブイエロー:2、3、17、25、37、4等。
・C.I.フードイエロー:3等。
・下記一般式(I)で表される化合物。
一般式(I)
Figure 0005339684
(一般式(I)中、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機アミンのカチオン、又はアンモニウムイオンであり、nはそれぞれ独立に1又は2である。)
前記一般式(I)において、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機アミンのカチオン、又はアンモニウムイオンである。アルカリ金属の具体例は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の具体例は、例えば、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。有機アミンの具体例は、例えば、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が挙げられる。本発明においては、Mが、水素原子、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、アンモニウムイオン、モノエタノールアミンイオン、ジエタノールアミンイオン、トリエタノールアミンイオン等のアルカノールアミンイオン等であることが好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物の具体例は、下記表1の構造である化合物が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。尚、表1においては、便宜上、下記一般式(II)に示すようにA環、B環として、スルホン基の置換位置を示す。スルホン基の置換位置は下記一般式(II)で定義した通りである。
一般式(II)
Figure 0005339684
Figure 0005339684
前記一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例は、下記例示化合物Y1が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
例示化合物Y1
Figure 0005339684
〔マゼンタ色材〕
・C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230等。
・C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289等。
・C.I.フードレッド:87、92、94等。
・C.I.ダイレクトバイオレット107等。
・下記一般式(III)で表される化合物又はその塩
一般式(III)
Figure 0005339684
(前記一般式(III)中、Rは、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロヘキシル基、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル基、又はシアノアルキル基であり、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至8のアルキル基、又はカルボキシル基(但し、R、R、R、R、及びRすべてが水素原子である場合を除く。)である。)
下記の例示化合物M1〜M7は、前記一般式(III)で表される化合物又はその塩の好ましい例示化合物である。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。尚、下記例示化合物M1〜M7において可溶化基は全てH型で記載してあるが、塩を形成していても良い。
Figure 0005339684
前記一般式(III)で表される化合物又はその塩の好ましい具体例は、例示化合物M1のナトリウム塩である、下記例示化合物M1(ナトリウム塩)が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
例示化合物M1(ナトリウム塩)
Figure 0005339684
〔シアン色材〕
・C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226、307等。
・C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、112、117、127、138、158、161、203、204、221、244等。
・下記一般式(IV)で表される化合物
一般式(IV)
Figure 0005339684
(一般式(IV)中、Mは、アルカリ金属又はアンモニウムであり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、スルホン酸基、カルボキシル基(但し、R及びRが同時に水素原子となる場合を除く。)であり、Yは、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、又はモノ若しくはジアルキルアミノ基であり、l、m、nはそれぞれl=0乃至2、m=1乃至3、n=1乃至3(但し、l+m+n=3乃至4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
前記一般式(IV)において、Mは、アルカリ金属又はアンモニウムである。アルカリ金属の具体例は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
上記色材は、一般式(IV)における4位及び4’位のみに、無置換スルファモイル基(−SONH)又は置換スルファモイル基(一般式(V)で表される基)を選択的に導入したフタロシアニン誘導体である。尚、一般式(IV)で表される化合物の合成には、4−スルホフタル酸誘導体、又は、4−スルホフタル酸誘導体及び(無水)フタル酸誘導体を、金属化合物の存在下で反応することで得られるフタロシアニン化合物を原料に用いる。更に、前記フタロシアニン化合物におけるスルホン酸基をクロロスルホン酸基に変換した後、有機アミンの存在下でアミノ化剤を反応して得られる。
一般式(V)
Figure 0005339684
一般式(V)で表される置換スルファモイル基の好ましい具体例を以下に示す。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。尚、一般式(IV)で表される置換スルファモイル基は、遊離酸の形で示す。
Figure 0005339684
前記一般式(V)で表される化合物の好ましい具体例は、その発色性と耐環境ガス性のバランスから、上記例示置換基1が置換した化合物、即ち、下記例示化合物C1が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
例示化合物C1
Figure 0005339684
〔レッド色材〕
・C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230等。
・C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289等。
・C.I.リアクティブレッド:7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59等。
・C.I.フードレッド:87、92、94等。
〔グリーン色材〕
・C.I.アシッドグリーン:1、3、5、6、9、12、15、16、19、21、25、28、81、84等。
・C.I.ダイレクトグリーン:26、59、67等。
・C.I.フードグリーン:3等。
・C.I.リアクティブグリーン:5、6、12、19、21等。
〔ブルー色材〕
・C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226等。
・C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161等。
・C.I.リアクティブブルー:4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100等。
〔ブラック色材〕
・C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195等。
・C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156等。
・C.I.フードブラック:1、2等。
・下記一般式(VI)で表される化合物又はその塩
一般式(VI)
Figure 0005339684
(一般式(VI)中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1乃至4のアルキル基;炭素数1乃至4のアルコキシ基;ヒドロキシル基;炭素数1乃至4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されているアルコキシ基;カルボキシル基若しくはスルホン酸基で更に置換されてもよい炭素数1乃至4のアルコキシ基;又は、フェニル基、アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基であり、nは0又は1である。)尚、一般式(VI)におけるn=0とは、SOHの位置がHであることを示す。
・下記一般式(VII)で表される化合物又はその塩
一般式(VII)
Figure 0005339684
(一般式(VII)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1乃至4のアルキル基;又は炭素数1乃至4のアルコキシ基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子;炭素数1乃至4のアルキル基;炭素数1乃至4のアルコキシ基;ヒドロキシル基;ヒドロキシル基若しくは炭素数1乃至4のアルコキシ基で置換されていても良い炭素数1乃至4のアルキル基;ヒドロキシル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されていてもよい炭素数1乃至4のアルコキシ基;又は、アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基であり、nは0又は1である。)尚、一般式(VII)におけるn=0とは、SOHの位置がHであることを示す。
・下記一般式(VIII)で表される4,4’−ジニトロスチルベン−2,2’−ジスルホン酸及び下記一般式(IX)で表される化合物の縮合染料、又は、前記縮合染料の還元によって得られる染料(縮合後又は還元後の染料の対イオンは、水素イオン、アルカリ金属イオン、有機アミンのカチオン、又はアンモニウムイオンである)、又はその塩
一般式(VIII)
Figure 0005339684
(一般式(VIII)中、Mは水素原子又はアルカリ金属原子である。)
一般式(IX)
Figure 0005339684
(一般式(IX)中、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルホン酸基、カルボキシル基、炭素数1乃至4のアルキル基、又は炭素数1乃至4のアルコキシ基である。)
本発明においては、一般式(VI)で表される化合物又はその塩が例示化合物Bk1であり、又、一般式(VII)で表される化合物又はその塩が例示化合物Bk2であることが特に好ましい。更には、一般式(VIII)及び一般式(IX)の縮合染料が、C.I.ダイレクトオレンジ39であることが特に好ましい。
例示化合物Bk1
Figure 0005339684
例示化合物Bk2
Figure 0005339684
(水性媒体)
反応性インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることが好ましい。具体的には、顔料インクに用いる水性媒体と同様の構成とすることができる。反応性インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、反応性インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。又、反応性インク中の水の含有量(質量%)は、反応性インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
(その他の成分)
反応性インクは、保湿性維持のために前記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性化合物を用いてもよい。更に、反応性インクは、所望の物性値を持つインクとするために前記した成分以外にも必要に応じて種々の化合物を含有してもよい。この場合の化合物は、顔料インクに用いる化合物と同様のものを用いることができる。
[その他のインク]
本発明においては、顔料インク及び反応性インクの他に、その他のインクを組み合わせて用いることができる。本発明におけるその他のインクとは、例えば、多価金属等を含有しない、即ち、顔料インクと反応しないインク(非反応性インク)を含む。前記非反応性インクは、少なくとも、色材、水性媒体等を含有することが好ましく、その含有量等は上記した反応性インクと同様のものとすることができる。尚、その他のインクの色材は、染料を用いることが好ましい。
[キャップ]
本発明にかかる顔料インクは、顔料インクの吐出口と、前記顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インクの吐出口とを同一のキャップでキャッピングするインクジェット記録装置に用いることが必要である。又、前記インクジェット記録装置が、キャップ内のインクを排除するための排除手段を有することが必要である。本発明においては、前記キャップ内のインクを排除するための排除手段が、キャップに吸引ポンプとつながったチューブを接合することにより、キャップ内のインクを排除するための排除手段であることが好ましい。又、前記キャップが、キャップ内にインクを吸収する部材を有することが好ましい。このインクを吸収する部材として、キャップ内吸収体を用いることで、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
図8は、記録ヘッドとキャップの関係を示す概略図である。インクジェット記録装置は、記録ヘッド1101をキャッピングするキャップ1107において、吸引ポンプ1106を用いてキャップ1107内を減圧してインクを吸引する。その後インクは、インク吸収体1104及び回復チューブ1105を通って吸引されて、廃インクとなる。連通弁1102及び大気連通孔1103を用いることにより、減圧状態のキャップ1107内を大気圧の状態にゆっくり戻す。回復系チューブ1105はキャップ1107内のどこに配置しても構わない。しかし、顔料インクと反応性インクを吸引する際の混色を少なくするために、顔料インクと反応性インクの吐出口の中央付近に配置することが好ましい。勿論、本発明は図8に示される構成に限られるものではない。
[画像形成方法]
本発明にかかる顔料インクは、反応性インクにより形成される画像、及び、顔料インクにより形成される画像、がそれぞれ隣接してなる画像を形成する画像形成方法に適用することが好ましい。本発明にかかる顔料インクは、顔料インクを吐出する工程、前記顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インクの少なくとも1種類を吐出する工程、及び、前記顔料インクの吐出口と前記反応性インクの吐出口とを同一のキャップでキャッピングし、前記キャップ内のインクを排除する工程、を有する画像形成方法に適用することが、特に好ましい。本発明にかかる画像形成方法においては、顔料インクと、前記顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性インクとを、記録媒体上において混合するようにインクジェット記録方式で付与することで、画像品位を向上することができる。又、上記のように形成した領域とその他のインクで形成した領域が隣接する画像においても、ブリーディングの発生を抑制することができる。更に、顔料インクで形成した領域と反応性インクで形成した領域が隣接する画像の場合は、これらの領域の境界部におけるブリーディングの発生を抑制することができる。
ここで、顔料インクと反応性インクとの混合とは、例えば、顔料インクと反応性インクとを液体状態で互いに接触して混合する形態が挙げられる。具体的には、反応性インクの後に顔料インクを記録媒体に付与する工程、又は、顔料インクの後に反応性インクを記録媒体に付与する工程、の少なくとも一方の工程を含む形態とすることができる。
又、本発明は、顔料インクと反応性インクとが液体状態で混合される形態に限定されない。例えば、反応性インクが記録媒体に浸透した後に顔料インクを記録媒体に付与する工程、又は、顔料インクが記録媒体に浸透した後に反応性インクを記録媒体に付与する工程、の少なくとも一方の工程を含む形態とすることができる。本発明においては、この形態であっても、前記反応性インクの作用により、顔料インク中の顔料の分散状態を不安定化する効果が得られる場合には、顔料インクと反応性インクとの混合とみなす。尚、本発明にかかる画像形成方法においては、必要に応じて、画像の色調を調整する工程を有するものとすることが好ましい。
画像を形成する際には、顔料インク及び反応性インクの吐出体積を小さくすることが好ましい。これは、吐出体積が小さいほど、インクを記録媒体に付与した際の1ドットあたりの面積が小さいため、記録媒体の一定領域に一定量のインクを付与する際に、ドット配置の自由度を大きくすることができる。この結果、顔料インクと反応性インクを効果的に反応させることができる。これにより、混合増粘率が等しいインクセットを用いる場合であっても、画像品位をより向上することができる。
[インクジェット記録方法]
上記で説明した反応性インクや顔料インクは、インクをインクジェット方法で吐出して記録を行うインクジェット記録方法に適用することが特に好ましい。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出する方法、及びインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出する方法等がある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
[インクセット]
本発明にかかる顔料インクは、複数のインクを有するインクセットに適用することが好ましい。特に、上記で説明した顔料インクと反応性インクを有するインクセットとすることが好ましい。
インクセットは、インクカートリッジが複数一体になったインクカートリッジ自体は勿論のこと、単独のインクカートリッジを複数組み合わせて用いる場合も含み、更に、前記インクカートリッジ及び記録ヘッドを一体としたものも含まれる。
又、前記インクカートリッジを、以下のように組み合わせて用いる場合も、本発明のインクセットの一例として挙げられる。前記インクカートリッジを、更に別のブラックインクを収容するインクカートリッジと組み合わせて用いる場合。前記インクカートリッジを、更にブラックインク、淡シアンインク及び淡マゼンタインクをそれぞれ収容するインクカートリッジを一体にしたインクカートリッジと組み合わせて用いる場合。
更に、インクセットにおいて、単独のインクカートリッジを複数組み合わせて用いる場合の具体例には、以下の形態のものが挙げられる。シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクをそれぞれ収容する独立したインクカートリッジと、更に別のブラックインクを収容するインクカートリッジとを組み合わせて用いる場合。ブラックインク、淡シアンインク、及び淡マゼンタインクをそれぞれ収容するインクカートリッジを組み合わせて用いる場合。レッドインクを収容する単独のインクカートリッジを追加して用いる場合。グリーンインクを収容する単独のインクカートリッジを追加して用いる場合。
特に、単独のインクカートリッジと、更に別のブラックインクを収容するインクカートリッジと組み合わせて用いるインクセットの形態であることが好ましい。
[インクカートリッジ]
上記で説明した反応性インクや顔料インクを用いてインクジェット記録を行うのに好適なインクカートリッジは、これらのインクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジが挙げられる。以下にインクカートリッジの具体例を示す。
図9は、インクカートリッジの概略説明図である。図9において、インクカートリッジは、上部で大気連通口112を介して大気に連通し、下部でインク供給口に連通する。そして、前記インクカートリッジは、内部に負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室134、及び、液体のインクを収容する実質的に密閉された液体収容室136、を仕切壁138で仕切る構造を有する。負圧発生部材収容室134及び液体収容室136は、インクカートリッジの底部付近で仕切壁138に形成された連通孔140、及び液体供給動作時に液体収容室への大気の導入を促進するための大気導入溝(大気導入路)150を介してのみ連通されている。負圧発生部材収容室134を形成するインクカートリッジの上壁には、内部に突出する形態で複数個のリブが一体に成形され、負圧発生部材収容室134に圧縮状態で収容される負圧発生部材と当接している。このリブにより、上壁と負圧発生部材の上面との間にエアバッファ室が形成されている。又、液体供給口114を備えたインク供給筒には、負圧発生部材より毛管力が高く、且つ物理的強度が大きい圧接体146が設けられており、負圧発生部材と圧接している。
負圧発生部材収容室134内には、負圧発生部材として、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂の繊維からなる第一の負圧発生部材132B及び第二の負圧発生部材132A、の2つの毛管力発生型負圧発生部材を収容している。132Cはこの2つの負圧発生部材の境界層であり、境界層132Cの仕切壁138との交差部分は、連通部を下方にしたインクカートリッジの使用時の姿勢において大気導入溝(大気導入路)150の上端部より上方に存在している。又、負圧発生部材内に収容されるインクは、インクの液面Lで示されるように、上記境界層132Cよりも上方まで存在している。
ここで、第一の負圧発生部材132Bと第二の負圧発生部材132Aの境界層は圧接しており、負圧発生部材の境界層近傍は他の部位と比較して圧縮率が高く、毛管力が強い状態となっている。即ち、第一の負圧発生部材132Bの毛管力をP1、第二の負圧発生部材132Aの毛管力をP2、負圧発生部材同士の界面の持つ毛管力をPSとすると、P2<P1<PSとなっている。
図10は、インクカートリッジの別の形態を示す概略説明図である。図10に示す形態のインクカートリッジは、例えば、顔料インク、顔料と同じ色相の反応性インク、顔料と異なる色相のインク、の3種類のインクを収容する容器41と、容器41を覆う蓋部材42とを有する。インクカートリッジは、顔料インク、顔料と同じ色相の反応性インク、顔料と異なる色相のインク、の各インクについての、顔料インク供給口43Y、顔料と同じ色相の反応性インクの供給口43M、及び顔料と異なる色相のインク供給口43Cを有する。容器41の内部は、3種類のインクを収容するために、互いに平行に配置された2つの仕切板411及び412により、容量がほぼ等しい3つの空間に仕切られる。これら3つの空間は、互いにインクカートリッジホルダへインクカートリッジを装着する際のインクカートリッジの挿入方向に沿って並んでいる。これらの空間にそれぞれ、顔料インクを吸収して保持するインク吸収体44Y、顔料と同じ色相の反応性インクを吸収して保持するインク吸収体44M、及び顔料と異なる色相のインクを吸収して保持するインク吸収体44Cが収容されている。又、インク供給口に各インクを供給するインク供給部材45Y、45M、45Cがインク吸収体の下部に接して収容されている。負圧発生部材であるインク吸収体44Y、44M、44C内に収容されているインクは、インクの液面Lで示されるように、それぞれのインク吸収体の上部まで存在している。
[記録ユニット]
上記で説明した反応性インクや顔料インクを用いて記録を行うのに好適な記録ユニットは、これらのインクを収容するインク収容部と、記録ヘッドとを備えた記録ユニットが挙げられる。特に、前記記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる記録ユニットが挙げられる。
[インクジェット記録装置]
上記で説明した反応性インクや顔料インクを用いて記録を行うのに好適なインクジェット記録装置として、往復記録が可能なインクジェット記録装置について、図11及び図12を用いて説明する。
図11はインクジェット記録装置の一例を示す概略説明図である。シャーシ10は、所定の剛性を有する複数の板状金属部材で構成され、インクジェット記録装置の骨格をなす。シャーシ10には、記録媒体を給送する給送部11、記録媒体を所定の記録位置へ導くと共に排出部12へ導く搬送部13、記録媒体に所定の記録を行うプリント部、プリント部の回復動作を行うヘッド回復部14とが組み込まれている。プリント部は、キャリッジ軸15に沿って走査可能に支持されたキャリッジ16、キャリッジ16にヘッドセットレバー17を介して着脱可能に搭載されるヘッドカートリッジ、ヘッドカートリッジを所定の装着位置に位置決めするキャリッジカバー20を有する。ヘッドカートリッジに対するキャリッジ16の別の係合部には、コンタクトフレキシブルプリントケーブル(以下、コンタクトFPCと略す)22の一端部が連結されている。このコンタクトFPC22の一端部に形成された図示しないコンタクト部と、ヘッドカートリッジに設けられた外部信号入力端子であるコンタクト部301とが電気的に接触して各種の情報の授受やヘッドカートリッジへの電力の供給等を行うようになっている。
図12はヘッドカートリッジの一例を示す概略説明図である。ここでは、インクセットの一例として、非反応性イエローインク、非反応性マゼンタインク、強反応性シアンインク、顔料ブラックインク、及び弱反応性ブラックインクを用いる場合を例とって説明する。図12中において、101、102、103、104、及び105はそれぞれ、強反応性シアンインク用、非反応性マゼンタインク用、非反応性イエローインク用、顔料ブラックインク用、及び弱反応性ブラックインク用の記録ヘッドである。又、ここでは、強反応性シアンインクの吐出口列201、及び弱反応性ブラックインクの吐出口列205を例にとって説明する。図12に示した記録ヘッドにおいては、電気的接点301を通して記録信号等の電気信号のやりとりが行なわれる。
用いるインクの数や操作性等の観点から、必要に応じて1つのインクジェット記録装置に2つ以上の記録ヘッドを用いることが可能である。この場合においては、ノズルからのインクの蒸発を抑制することや吸引動作の効率の観点から、同一のキャップでキャッピングする吐出口は同一の記録ヘッドに配置することが好ましい。
尚、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッドについて一例を挙げて述べた。この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス型の何れにも適用可能である。オンデマンド型の場合には、記録情報に対応して核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を電気熱変換体に印加することによって熱エネルギーを発生させる。これにより、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介してインクを吐出して、インク滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長、収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。
又、第二の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態は、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備えてなる。この形態においては、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インク滴を吐出する。
又、インクジェット記録装置は、記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものであっても、それらが分離不能に一体になったものであっても用いることができる。又、インクカートリッジは記録ヘッドに対して分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもの、又はインクジェット記録装置の固定部位に設けられて、チューブ等のインク供給部材を介して記録ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。更に、記録ヘッドに対して好ましい負圧を作用するための構成をインクカートリッジに設ける場合には、以下の構成とすることができる。即ち、インクカートリッジのインク収納部に吸収体を配置した形態、又は可撓性のインク収容袋とこれに対してその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態等を採用することができる。又、インクジェット記録装置は、上述のようにシリアル記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列してなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。尚、以下の記載で「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
[顔料インクの調製]
(顔料分散液Aの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、比表面積が220m/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥して、自己分散型カーボンブラックAを調製した。更に、上記で得られた自己分散型カーボンブラックAに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散して、分散液を調製した。前記の方法により、カーボンブラック粒子表面に−C−(COONa)基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックAが水中に分散された状態の顔料分散液Aを得た。
尚、上記で調製した自己分散型カーボンブラックAのイオン性基密度を測定したところ、3.1μmol/mであった。この際に用いたイオン性基密度の測定方法は、上記で調製した顔料分散体A中のナトリウムイオン濃度をイオンメーター(東亜DKK製)を用いて測定し、その値から自己分散型カーボンブラックAのイオン性基密度に換算した。
(顔料分散液Bの調製)
上記で得られた顔料分散液Aに対して、イオン交換法によりナトリウムイオンをアンモニウムイオンに置換して、自己分散型カーボンブラックBを調製した。更に、前記で得られた自己分散型カーボンブラックBに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散して、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面に−C−(COONH基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックBが水中に分散された状態の顔料分散液Bを得た。
尚、上記で調製した自己分散型カーボンブラックBのイオン性基密度は、3.1μmol/mであった。
(インクの調製)
下記表2に示す成分を混合し、十分に撹拌して分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過を行い、顔料インクを調製した。
Figure 0005339684
[反応性インクの調製]
(例示化合物M1の合成)
キシレン中で、下記化合物(1)、炭酸ナトリウム、ベンゾイル酢酸エチルエステルとを反応して、反応物をろ過、洗浄した。これをN,N−ジメチルホルムアミド中で、メタアミノアセトアニリド、酢酸銅、炭酸ナトリウムを順次添加して反応を行い、反応物をろ過、洗浄した。更に、これを、発煙硫酸中でスルホン化を行った後、ろ過、洗浄して、これを、水酸化ナトリウムの存在下で、シアヌルクロライドと縮合反応を行った。この反応液中に、アンスラニル酸を添加して、水酸化ナトリウムの存在下で縮合反応を行った。これをろ過、洗浄を行うことにより、下記の例示化合物M1を得た。
化合物(1)
Figure 0005339684
例示化合物M1
Figure 0005339684
(例示化合物Bk1の合成)
下記化合物(2)を、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、更に亜硝酸ナトリウム水溶液を添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液を、6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,5−ジスルホン酸のアルカリ水溶液に滴下してカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過、洗浄を行った。次いで、前記化合物を、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加してジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸、炭酸ナトリウムを添加して、終夜撹拌して反応液Aを得た。次に、1−アミノ−2−ベンゼンスルホン酸を、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、更に亜硝酸ナトリウム水溶液を添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液を、6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸のアルカリ水溶液に滴下してカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過、洗浄を行った。次いで、前記化合物を、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加してジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液を、前記反応液Aに添加してカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過、洗浄を行うことにより、下記の例示化合物Bk1を得た。
化合物(2)
Figure 0005339684
例示化合物Bk1
Figure 0005339684
(例示化合物Bk2の合成)
下記化合物(3)を、炭酸ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、更に塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、6−フェニルアミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸水溶液を添加して、炭酸ナトリウムの存在下で溶解して、溶液Bを得た。次に、2−アミノスルホン酸を、水酸化ナトリウムの存在下で溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加して、ジアゾ化を行った。次に、6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸を、水酸化ナトリウムの存在下で溶解して、無水酢酸を添加して、アセチル化を行った。ここに上記で得られたジアゾ混濁液を、炭酸ナトリウムの存在下で滴下して、カップリング反応を行い、反応液Cを得た。この反応液Cに、水酸化ナトリウム、次いで塩化ナトリウムを添加して塩析を行い、化合物を得た。この化合物を水酸化ナトリウムの存在下で、水に溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、炭酸ナトリウムの存在下で、溶液Bを滴下して、カップリング反応を完結して、反応液を得た。この反応液を塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過を行うことにより化合物Dを得た。N,N−ジメチルホルムアミドに、2−ニトロ−4−クレゾール、トルエン、水酸化カリウムを添加して、トルエンとの共沸により水を留去して、プロパンスルトンを滴下した。その後、水酸化ナトリウムを添加して、これを濃縮後、オートクレーブにて、パラジウムカーボンを添加して、水素ガスを封入して溶液を得た。これを、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加することでジアゾ化を行い、上記で得られた反応液Cを滴下して、水酸化ナトリウムの存在下でカップリング反応を完結して、反応液を得た。この反応液に塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加することによりジアゾ化を行い、このジアゾ混濁液を前記化合物Dを溶解した水溶液に添加して、カップリング反応を完結した。これを塩化ナトリウムにより塩析した後、ろ過、洗浄を行うことにより、例示化合物Bk1を得た。
化合物(3)
Figure 0005339684
例示化合物Bk2
Figure 0005339684
(例示化合物C1の合成)
(1)銅フタロシアニンテトラスルホン酸テトラナトリウム塩(化合物(4))の合成
化合物(4)
Figure 0005339684
スルホラン、4−スルホフタル酸モノナトリウム塩、塩化アンモニウム、尿素、モリブデン酸アンモニウム、塩化銅(II)を混合して、撹拌した後、メタノールで洗浄を行った。その後、水を加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、溶液のpHを11に調整した。得られた溶液に撹拌下で塩酸水溶液を加え、更に塩化ナトリウムを徐々に加え、結晶を析出させた。得られた結晶を濾別したものを、20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、続いてメタノールを加えた。析出した結晶を濾別して、70%メタノール水溶液で洗浄した後に乾燥して、化合物(4)の銅フタロシアニンテトラスルホン酸テトラナトリウム塩を青色結晶として得た。
(2)銅フタロシアニンテトラスルホン酸クロライド(化合物(5))の合成
化合物(5)
Figure 0005339684
クロロスルホン酸中に、上記で得られた銅フタロシアニンテトラスルホン酸テトラナトリウム塩(化合物(4))を徐々に加え、更に、塩化チオニルを滴下して、反応を行った。その後、反応液を冷却して、析出した結晶をろ過して、銅フタロシアニンテトラスルホン酸クロライドのウェットケーキを得た。
(3)下記化合物(6)の合成
化合物(6)は、一般式(V)において、Yがアミノ基、R及びRが2位及び5位に置換したスルホン酸基である化合物である。
化合物(6)
Figure 0005339684
氷水中に、リパールOH、塩化シアヌル、アニリン−2,5−ジスルホン酸モノナトリウム塩を加え、水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら反応を行った。次に、反応液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、反応液のpHを10に調整した。この反応液に、28%アンモニア水、エチレンジアミンを加えて、反応を行った。得られた反応液に、塩化ナトリウム、濃塩酸を滴下して、結晶を析出させた。析出した結晶をろ過分取して、20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキに、メタノール及び水を加え、更にろ過して、メタノールで洗浄を行った後、乾燥して、化合物(6)を得た。
(4)例示化合物C1の合成
氷水中に、(2)で得られた銅フタロシアニンテトラスルホン酸クロライド(化合物(5))のウェットケーキを加え、撹拌を行って懸濁して、更に、アンモニア水、(3)で得られた化合物(6)を添加して、反応を行った。これに、水、塩化ナトリウムを加えて、結晶を析出させた。得られた結晶をろ過して、塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、再度ろ過を行った後、洗浄、乾燥することにより、青色結晶として例示化合物C1を得た。上記反応から、この化合物は例示化合物C1であり、一般式(IV)における置換基数の平均がl=0、m=1.0〜2.0、n=2.0〜3.0の範囲で表される色材であると推定される。
(反応性インクの調製)
下記表3に示す成分を混合し、十分に撹拌して溶解した後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルターにて加圧ろ過を行い、反応性インク1〜10を調製した。
Figure 0005339684
化合物(7)
Figure 0005339684
[評価]
上記で得られた反応性インク1〜10をそれぞれキヤノン製BJF870用のインクカートリッジに充填した。その後、前記インクカートリッジと顔料インクを充填したインクカートリッジをそれぞれ、インクジェット記録装置BJF870(キヤノン製)を改造したものに搭載した。前記インクジェット記録装置は、顔料インクの吐出口と反応性インクの吐出口を同一キャップでキャッピングするものである。又、前記インクジェット記録装置は、キャップ内を減圧することによりキャップ内のインクを排除するための排除手段として、吸引ポンプを有してなり、吸引動作を行うことで、キャップ内のインクを排除することができる。更に、前記キャップはその内部にインクを吸収する部材を具備するものである。記録媒体は、A4サイズの記録媒体(製品名:オフィスプランナー;キヤノン製)を用いた。尚、インクジェット記録装置BJF870を用いて形成するベタ画像の100%デューティとは、600dpi×600dpiに4.5plのインクを4滴付与することを意味する。
(混合増粘率の測定)
上記で得られた顔料インク及び各反応性インクを組み合わせて、下記のようにして混合増粘率Yの値を求めた。先ず、顔料インク及び反応性インクの粘度を測定した。そして、顔料インク及び反応性インクをそれぞれ等しい体積で混合して、30分撹拌した後、混合インクの粘度を測定した。このようにして測定した粘度の値から、下記式に基づいて、混合増粘率の値を求めた。尚、粘度の測定は、温度25℃の条件で、VISCONIC ED形(東京計器製)を用いて行った。得られた混合増粘率の値を表2及び表5に示す。
Figure 0005339684
(吸引動作と信頼性の関係)
先ず、吸引機構の有無による、信頼性の評価を行った。尚、実施例1〜4及び比較例1〜10の顔料インク及び反応性インクにおける、混合増粘率及び吐出口間距離の関係を図7のグラフに示す。
〔信頼性〕
上記した記録媒体の全面に、顔料インクを150%デューティ、及び、反応性インクを25%デューティとなるように重ねて付与して画像を形成した。画像を形成する際には、反応性インク、顔料インクの順序で記録媒体に各インクを付与した。そして、顔料インクの吐出口及び反応性インクの吐出口を同一のキャップを用いてキャッピングして6時間放置した。その後、実施例1〜4及び比較例5〜7については、吸引動作を行った後BJF870のノズルチェックパターンの記録を行った。又、比較例1〜4及び8〜10については、吸引動作を行わずにノズルチェックパターンの記録を行った。得られたノズルチェックパターンを目視で確認して評価を行った。信頼性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
A:不吐出及びヨレがない。
C:不吐出又はヨレが目立つ。
Figure 0005339684
(吸引動作を行う場合における評価)
次に、吸引動作を行う場合における、信頼性、画像品位、耐ブリーディング性、及び色調の評価を行った。尚、実施例5〜18及び比較例11〜15の顔料インク及び反応性インクにおける、混合増粘率及び吐出口間距離の関係を図7のグラフに示す。
〔信頼性〕
上記した記録媒体の全面に、顔料インクを150%デューティ、及び、反応性インクを25%デューティとなるように重ねて付与して画像を形成した。画像を形成する際には、反応性インク、顔料インクの順序で記録媒体に各インクを付与した。その後、吸引動作を行い、更に1時間放置するという、記録、回復、放置のサイクルを10回繰り返してして行った。その後、BJF870のノズルチェックパターンの記録を行った。得られたノズルチェックパターンを目視で確認して評価を行った。信頼性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
A:不吐出及びヨレがない。
C:不吐出又はヨレが目立つ。
〔画像品位〕
上記した記録媒体に、顔料インクを150%デューティ、及び、反応性インクを25%デューティとなるように重ねて付与した画像(1)、顔料インクを150%デューティとなるように付与した画像(2)、を形成した。尚、画像(1)は、顔料インク、反応性インクの順序で記録媒体に各インクを付与した。得られた画像を1日放置した後、画像(1)及び画像(2)における画像濃度を目視で確認して評価を行った。画像品位の評価基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
A:画像(1)の画像濃度が、画像(2)の画像濃度よりも高い。
B:画像(1)及び画像(2)の画像濃度が同等である。
C:画像(1)の画像濃度が、画像(2)の画像濃度よりも低い。
〔耐ブリーディング性〕
上記した記録媒体に、顔料インクで形成する画像と反応性インクで形成する画像が隣接する記録パターンを形成した。具体的には、文字及び罫線は顔料インクを100%デューティとして、又、背景は反応性インクを50%デューティとして、画像を形成した。この際、反応性インク、顔料インクの順序で記録媒体に各インクを付与した。得られた画像の境界部における滲みの程度を目視で確認して評価を行った。耐ブリーディング性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
A:境界部に滲みがない。
B:境界部にやや滲みがある。
C:境界部に滲みがかなりある。
〔色調〕
上記した記録媒体に、顔料インクを150%デューティ、及び、反応性インクを25%デューティとなるように重ねて付与した画像(1)、顔料インクのみを150%デューティとなるように付与した画像(2)、を形成した。尚、画像(1)を形成する際には、反応性インク、顔料インクの順序で記録媒体に各インクを付与した。得られた画像(1)及び画像(2)における色調を目視で確認して評価を行った。色調の評価基準は以下の通りである。評価結果を表5に示す。
A:画像(1)及び画像(2)における色調の違いがない。
B:画像(1)及び画像(2)における色調の違いがややある。
C:画像(1)及び画像(2)における色調の違いがかなりある。
Figure 0005339684
(2種類の反応性インクを用いる場合における評価)
次に、2種類の反応性インクを用いる場合における、画像品位及び往復ムラの評価を行った。弱反応性インクとして反応性インク4、強反応性インクとして反応性インク9を用いた。顔料インクと弱反応性インクの吐出口間距離は1.7mm、顔料インクと強反応性インクの吐出口間距離は16mmとした。尚、インクジェット記録装置は、上記と同様のBJF870(キヤノン製)を改造したものを用いた。このとき、弱反応性インクの吐出口と顔料インクの吐出口を同一のキャップでキャッピングして、又、強反応性インクの吐出口と顔料インクの吐出口は別のキャップでキャッピングした。又、記録媒体は、上記と同様のA4サイズの記録媒体(製品名:オフィスプランナー;キヤノン製)を用いた。
各インクの吐出口を以下のように設定することにより、記録媒体へ各インクを付与する順序を設定した。図13に示す構成の記録ヘッドを用いる場合、顔料インクの吐出口を31、弱反応性インクの吐出口を32、強反応性インクの吐出口を33とした。又、図14に示す構成の記録ヘッドを用いる場合、弱反応性インクの吐出口を34、顔料インクの吐出口を35、強反応性インクの吐出口を36とした。
(画像品位)
上記した記録媒体に、顔料インクを150%デューティ、及び、各反応性インクをそれぞれ25%デューティとなるように、表6に示す順序で重ねて付与した実施例19〜22の画像(1)をそれぞれ形成した。又、比較を行うために、上記した記録媒体に、顔料インクを150%デューティ、及び、反応性インク3を25%デューティとなるように重ねて付与した画像(2)を形成した。画像(2)を形成する際には、記録パスの往記録において、顔料インク、反応性インク3の順序で記録媒体に各インクを付与した。2種類の反応性インクを用いて形成した実施例19〜22の画像(1)、及び1種類の反応性インクを用いて形成した画像(2)における画像濃度を目視で確認して評価を行った。画像品位の評価基準は以下の通りである。評価結果を表6に示す。
A:画像(1)の画像濃度が、画像(2)の画像濃度よりも高い。
C:画像(1)の画像濃度が、画像(2)の画像濃度と同等、又は、画像(1)の画像濃度が、画像(2)の画像濃度よりも低い。
Figure 0005339684
(往復ムラ)
上記した記録媒体に、顔料インクを150%デューティ、及び、各反応性インクをそれぞれ25%デューティとなるように、表7に示す順序で重ねて付与した実施例23及び24の画像を形成した。図13に示す構成の記録ヘッドを用いる場合、顔料インク、弱反応性インク、強反応性インクの順序で各インクを付与して形成した画像(1)、及び、強反応性インク、弱反応性インク、顔料インクの順序で各インクを付与して形成した画像(2)を比較した。又、図14に示す構成の記録ヘッドを用いる場合、弱反応性インク、顔料インク、強反応性インクの順序で各インクを付与して形成した画像(3)、及び、強反応性インク、顔料インク、弱反応性インクの順序で各インクを付与して形成した画像(4)を比較した。図13及び図14に示す構成の記録ヘッドを用いて往記録及び復記録で得られた各画像における往復ムラを目視で確認して評価を行った。往復ムラの評価基準は以下の通りである。評価結果を表7に示す。
A:往復ムラがない。
B:往復ムラが若干ある。
C:往復ムラがかなりある。
Figure 0005339684
混合増粘率Y及び吐出口間距離Xが、式(A)の関係を満たす場合の記録ヘッド部及び吸引部の模式図である。 混合増粘率Y及び吐出口間距離Xが、式(A)の関係を満たさない場合の記録ヘッド部及び吸引部の模式図である。 従来の考え方における、画像品位が得られる領域及び信頼性が得られる領域(同一のキャップを用いた場合)を示すグラフである。 画像品位が得られる領域及び信頼性が得られる領域(複数のキャップを用いた場合)を示すグラフである。 画像品位が得られる領域及び信頼性が得られる領域(同一のキャップを用いた場合)を示すグラフである。 本発明における、画像品位が得られる領域及び信頼性が得られる領域を示すグラフである。 実施例1〜18及び比較例1〜13の顔料インク及び反応性インクにおける、混合増粘率及び吐出口間距離の関係を示すグラフである。 記録ヘッドとキャップの関係を示す概略図である。 インクカートリッジの概略説明図である。 インクカートリッジの概略説明図である。 インクジェット記録装置の一例を示す概略図である。 記録ヘッドカートリッジの一例を示す概略図である。 実施例19、20、及び23における、顔料インク及び各反応性インクの吐出口列を示す図である。 実施例21、22、及び24における、顔料インク及び各反応性インクの吐出口列を示す図である。 吐出口間距離Xを説明するための図である。
符号の説明
1、3、5、8 画像品位の境界線
2、4、6、9 信頼性の境界線
7 吐出口間距離の最小値を示す直線
10 シャーシ
11 給送部
12 排出部
13 搬送部
14 ヘッド回復部
15 キャリッジ軸
16 キャリッジ
17 ヘッドセットレバー
20 キャリッジカバー
22 コンタクトフレキシブルプリントケーブル(コンタクトFPC)
31 顔料インクの吐出口
32 弱反応性インクの吐出口
33 強反応性インクの吐出口
34 弱反応性インクの吐出口
35 顔料インクの吐出
36 強反応性インクの吐出口
37 インクAの吐出口
38 吐出口間距離X
39 インクBの吐出口
41 容器
42 蓋部材
43Y、43M、43C インク供給口
44Y、44M、44C インク吸収体
45Y、45M、45C インク供給部材
411、412 仕切板
L 液体−気体界面
101 強反応性シアンインク用記録ヘッド
102 非反応性マゼンタインク用記録ヘッド
103 非反応性イエローインク用記録ヘッド
104 顔料ブラックインク用記録ヘッド
105 弱反応性ブラックインク用記録ヘッド
112 大気連通口
114 液体供給口
132A 第二の負圧発生部材
132B 第一の負圧発生部材
132C 第一の負圧発生部材と第二の負圧発生部材の境界層
134 負圧発生部材収容室
136 液体収容室
138 仕切壁
140 連通孔
146 圧接体
150 大気導入溝(大気導入路)
201 強反応性シアンインクの吐出口列
204 顔料ブラックインクの吐出口列
205 弱反応性ブラックインクの吐出口列
301 電気的接点
401 実施例1、5、比較例1の吐出口間距離と混合増粘率の関係
402 実施例2、6、比較例2の吐出口間距離と混合増粘率の関係
403 実施例3、7、比較例3の吐出口間距離と混合増粘率の関係
404 実施例4、8、比較例4の吐出口間距離と混合増粘率の関係
405 実施例9の吐出口間距離と混合増粘率の関係
406 実施例10の吐出口間距離と混合増粘率の関係
407 実施例11の吐出口間距離と混合増粘率の関係
408 実施例12の吐出口間距離と混合増粘率の関係
409 実施例13の吐出口間距離と混合増粘率の関係
410 実施例14の吐出口間距離と混合増粘率の関係
501 比較例5、8、11の吐出口間距離と混合増粘率の関係
502 比較例6、9、12の吐出口間距離と混合増粘率の関係
503 比較例7、10、13の吐出口間距離と混合増粘率の関係
504 実施例15の吐出口間距離と混合増粘率の関係
505 実施例16の吐出口間距離と混合増粘率の関係
506 実施例17の吐出口間距離と混合増粘率の関係
507 実施例18の吐出口間距離と混合増粘率の関係
1000 記録ヘッド
1001 反応性インクの吐出口
1002 顔料インクの吐出口
1003 キャップ
1004 チューブ
1005 キャップ内吸収体
1006 反応性成分
1007 顔料
1008 反応物の壁
1009 反応物の塊
1101 ヘッド
1102 連通弁
1103 大気連通孔
1104 インク吸収体
1105 回復系チューブ
1106 吸引ポンプ
1107 キャップ

Claims (5)

  1. 顔料を含有する第1のインクを吐出する工程と、前記第1のインクを吐出する吐出口をキャップでキャッピングし、前記キャップ内のインクを排除する工程と、を有する画像形成方法であって、
    前記第1のインクの吐出口と共に前記キャップでキャッピングされる吐出口から吐出されるインクのうち、下記式(B)で表される前記第1のインクとの混合増粘率Y(%)が0より大きいインク全てに関し、それぞれのインクの吐出口と前記第1のインクの吐出口との吐出口間距離X(mm)(但し、X>0)及びそれぞれのインクの前記混合増粘率Y(%)が下記式(A)の関係を満たすことを特徴とする画像形成方法。
    式(A):Y≦0.60X+50.0
    式(B):(2種のインクの混合増粘率Y(%))=[(2種のインクを等しい体積で混合した混合インクの粘度)−(2種のインクの粘度の平均)]/(2種のインクの粘度の平均)×100
  2. 前記キャップ内のインクを排除する工程が、吸引ポンプを用いてキャップ内を減圧することによりキャップ内のインクを排除する工程である請求項1に記載の画像形成方法。
  3. 前記キャップが、前記キャップ内にインクを吸収する部材を具備する請求項1又は2に記載の画像形成方法。
  4. 前記式(B)で表される前記第1のインクとの混合増粘率Y(%)が0より大きいインク全ての、前記第1のインクの吐出口との吐出口間距離X(mm)(但し、X>0)及び前記混合増粘率Y(%)が、下記式(1)及び式(2)の関係を満たす請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成方法。
    式(1):X≧1.5
    式(2):Y≧2.1X+10.0
  5. 前記第1のインク及び前記第1のインクの吐出口と共に前記キャップでキャッピングされる吐出口から吐出されるインクをインクジェット方法で吐出して記録を行う請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成方法。
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