JP5339649B2 - 軟部組織治療器具 - Google Patents

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Description

本発明は、軟部組織を治療するのに最適なチタンフィルムを用いた軟部組織治療器具に関する。
チタンは福祉・医療分野にとって理想的な材料である。この理由は材料特性そのものにある。チタンの特性は、
(1)強度が高い
(2)軽量である
(3)耐食性に優れている
(4)生体適合性が高い
などの特性を有している。
(1),(2)については、鉄系材料は強度に優れているが、密度に対する引張り強度の比である比強度が低いが、チタン(合金)は強度と比強度ともに優れている。この軽量特性は福祉・医療で用いるときに重要な要素である。
さらに福祉・医療の分野においては、(3)と(4)の特性を避けて通れない。福祉分野では、接触部位などに炎症(金属アレルギーなど)を生じさせない程度の生体適合性があればよいが、医療分野に用いるにはインプラント(生体埋め込み)材料として用いられることが多い。チタンは他の材料と置き換えることができない諸特性を有している。
医療分野へのチタンの普及は確実に浸透している。特に人工骨などの生体代替品の需要率は、高齢者の増加と相まって拡大することが想定されている。また国内では、医療器具としての承認問題の遅れによって、多くの海外製品が輸入、利用されている。
これは、金銭的な市場問題だけではなく、加工やノウハウなどの競争力、技術的な蓄積の源泉が低下していくことの懸念がある。
インプラント材における研究指針としては、
(1)細胞毒性(イオン,摩耗粉,錯体などの影響)
(2)生体親和性(顕微鏡の組織観察は定性的情報)
(3)力学的特性(圧縮,衝撃,疲労特性など)
(4)動物体内実験(in vivoによるイオンの溶出実験→in vitroに反映させる手法の確立)
などが求められるため、製品開発にも多くの時間が費やされる。
アメリカでは、チタンではないが、網状化エラストマー系マトリックスを、ヒトやその他の動物等の局部的な治療に適用する開発がなされている(特許文献1)。
特許文献1に示された技術は、特許文献1の図1に示されるように、エラストマー系マトリックスの固相が有機構造を有しており、多くの交差の間に広がり相互接続する相対的に薄い壁体の多様性を含有する構造になっている。前記交差は、3本以上の壁体がお互いに出会う実質的な構造配置であり、4本又は5本以上の前記壁体は、前記交差でお互いに出会うか、
又はその位置で、2本の前記交差がお互いに組み合わされている。
その1つの実施態様において、前記壁体は紙の平面の上下に交差間で三次元の方法で伸び、特定の平面を支持しないものであり、前記交差で接続する他の壁体と関連し、いかなる与えられた壁体も、いかなる方向において交差から伸びている。前記壁体及び交差は、一般に形状を曲げることができ、それらの間で多数の細孔又は固相における間質腔を定義している。
そして、前記エラストマー系マトリックスの固相の構造部材、すなわち壁体及び交差は、あたかもいくつかが単一のシートから切断されたかのように層をなす構成を有する3次元の構造をなしている。
特表2007−521843号公報
しかしながら、特許文献1に示された網目状のエラストマー系マトリックスは、その材料としてエラストマーを用いるため、軟部組織の治療に適用した場合、治療後における軟部組織との生体親和性の点で問題があり、長期間埋め込まれたとしても、軟部組織と一体化せずに軟部組織から分離した状態で埋め込まれている。このことは、特にエラストマーとしてシリコン材を用いた場合に顕著に現れる。
従って、永久的に軟部組織とともに体内に埋め込んで置くことによって発がんイオン物質の溶出ないしは催奇形性を誘発する危険性があるため、摘出手術が必要となり、生体にストレスを与えてしまうという問題がある。
本発明の目的は、軟部組織の治療に最適、すなわち軟部組織の人工筋膜を実現する礎となり、且つ国際競争に打ち勝つだけの資質をもつ軟部組織治療器具を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係る軟部組織治療器具は、軟部組織に縫合して前記軟部組織の患部治療に用いる軟部組織治療器具であって、チタン材をシート状に引き延ばして柔軟性と防縮性を付与したチタンフィルムと、前記チタンフィルムを貫通して形成された2以上の孔とを有し、
前記孔は、縫合糸を通す口径を有し、かつその開口縁に、前記縫合糸が食い込む脆弱加工がされており、
さらに、前記2以上の孔を多角形状に配列し、前記2以上の孔で囲まれた領域内に切り出し用の切り代を形成したことを特徴とするものである。
本発明によれば、チタンフィルムの柔軟性と防縮性を利用することにより、軟部組織を保形することができ、しかも、チタンフィルムを用いているため、構成材料からの毒性イオンの溶出がないので、軟部組織との親和性がよく、永久的に軟部組織とともに体内に埋め込んで置くことができ、摘出手術が不要となり、生体へのストレスを回避することができる。
さらに、前記チタンフィルムに形成した孔は、縫合糸を通す口径を有しているため、前記孔に縫合糸を通して軟部組織にチタンフィルムを縫合することにより、チタンフィルムによって軟部組織を補強することができる。更に、チタンフィルムの生体親和性により、欠如した軟部組織をチタンフィルムによって代替することができる。
さらに、前記孔の開口縁に、縫合糸が食い込む脆弱加工を施したことにより、前記孔の開口縁によって縫合糸を切断することがなく、縫合に必要な力でもってチタンフィルムを軟部組織に縫合することができる。
さらに、前記2以上の孔を多角形状に配列し、前記2以上の孔で囲まれた領域内に切り出し用の切り代を形成しているため、治療する軟部組織の形状に合わせてチタンフィルムを自由に切り出すことができ、無駄な余剰部分を生み出すことなく、チタンフィルムのほぼ全面を軟部組織の治療に有効に用いることができ、高価なチタン材を有効に利用することができる。
(a)は、本発明に実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて軟部組織の治療を行う状態を模式化した断面図、(b)は、前記軟部組織治療器具の孔に手術用糸を通して縫合した状態を示す拡大図である。 (a)は、チタンフィルムの孔を走査電子顕微鏡(SEM)により30倍の倍率で観察した写真、(b)は、チタンフィルムの孔を走査電子顕微鏡(SEM)により100倍の倍率で観察した写真である。 (a)は、チタンフィルムの孔を走査電子顕微鏡(SEM)により100倍の倍率で観察した写真、(b)は、縫合糸を結糸した状態におけるチタンフィルムの孔を走査電子顕微鏡(SEM)により30倍の倍率で観察した写真である。 (a)は、切り出したフィルム片の切り口縁を断端処理した状態を走査電子顕微鏡(SEM)により500倍の倍率で観察した写真、(b)は、切り出したフィルム片の切り口縁を断端処理しない前の状態を走査電子顕微鏡(SEM)により500倍の倍率で観察した写真である。 (a)、は本発明に実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて軟部組織の治療を行った術後の状態を模式化した断面図、(b)は、比較例として一般的に用いられている不織布を使って軟部組織を治療した術後の状態を模式化した断面図である。 (a)は、本発明に実施形態に係るチタンフィルムを示すものであって、孔を8角形状に配列した表面図、(b)は、孔の位置関係を示す拡大図である。 (a)は、本発明に実施形態に係る軟部組織治療器具を示すものであって、孔を6角形状に配列した表面図、(b)は、孔の位置関係を示す拡大図である。 (a)は、孔を6角形状に配列した場合におけるフィルム片の切り出し形状を示すとともに、切り出し方向を示す図、(b)は、孔を8角形状に配列した場合における切り出し方向を示す図である。 孔を6角形状に配列した本発明の実施形態に係るチタンフィルムを撮影した写真である。 前記軟部組織治療器具からフィルム片を切り出して、そのフィルム片の縁部に火炎処理を施している状態を示す写真である。 前記軟部組織治療器具からフィルム片を切り出して、そのフィルム片の縁部に火炎処理を施した状態を撮影した写真である。 筋膜及び表皮構造に見立てた皮付きの鳥のモモ肉を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて軟部組織を治療する場合と比較するために、不織布を、筋膜に見立てた鳥のモモ肉の皮に縫合した状態を示す写真である。 比較例であり、表皮構造に見立てた鳥のモモ肉の皮を引き寄せて縫合して、表皮構造で不織布を覆った状態を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具から切り出したフィルム片に火炎処理を施し、そのフィルム片を筋膜に見立てた鳥の皮に縫合した状態を示す写真である。 本発明の実施形態において、表皮構造に見立てた鳥のモモ肉の皮を引き寄せて縫合して、表皮構造でフィルム片を覆った状態を示す写真である。 筋膜を備えていない軟部組織を鳥のモモ肉に見立てて、本発明の実施形態に係るチタンフィルムから切り出したフィルム片を用いて、軟部組織に見立てた鳥のモモ肉を開口して軟部組織を治療する状態を示す写真である。 前記フィルム片で軟部組織の患部を覆い、前記フィルム片を前記患部に縫合した状態を示す写真である。 前記フィルム片を縫合した軟部組織を鉗子で互いに逆方向に引張ることにより、前記フィルム片による軟部組織の保形性を実験した状態を示す写真である。 表皮構造に見立てた鳥のモモ肉の皮を引き寄せて縫合して、その表皮構造で前記フィルム片を覆った状態を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて動物の外科的処置をした場合を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて動物の外科的処置をした場合を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて動物の外科的処置をした場合を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて動物の外科的処置をした場合を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて動物の外科的処置をした場合を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて動物の外科的処置をした場合を示す写真である。 本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて動物の外科的処置をした場合を示す写真である。 ステンレス鋼網(ネット)を用いて試作した軟部組織治療器具を示す図である。 (a)は、ステンレス鋼ネットの軟部組織治療器具をハサミでカットした端縁を走査電子顕微鏡(SEM)により500倍の倍率で観察した写真、(b)は、ステンレス鋼ネットの軟部組織治療器具をハサミでカットした端縁を走査電子顕微鏡(SEM)により1500倍の倍率で観察した写真である。 (a)は、ステンレス鋼ネットの軟部組織治療器具をハサミでカットした端縁を電解エッチング処理した状態を走査電子顕微鏡(SEM)により500倍の倍率で観察した写真、(b)は、ステンレス鋼ネットの軟部組織治療器具をハサミでカットした端縁を電解エッチング処理した状態を走査電子顕微鏡(SEM)により2000倍の倍率で観察した写真である。 (a)は、ステンレス鋼ネットの軟部組織治療器具をハサミでカットした端縁を火炎処理処理した状態を走査電子顕微鏡(SEM)により500倍の倍率で観察した写真、(b)は、ステンレス鋼ネットの軟部組織治療器具をハサミでカットした端縁を火炎処理した状態を走査電子顕微鏡(SEM)により2000倍の倍率で観察した写真である。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を完成させるに至った経緯について説明する。本発明者は、オーステナイト系ステンレス鋼(18Cr−8Ni−Fe)であるSUS304をネット状に編んだ治療器具を開発した。図28に示す様に、SUS304を線引きして線径20μmの線材15を加工し、それら線材15を用いて1インチ(25.4mm)の間の網目の数であるメッシュが290(マイクロメッシュ300)である金網状に平織りした。SUS304は線引きによる加工硬化が生じるものであり、線材15を細く加工すればするほど線材15の硬さが高くなる(加工硬化現象)ものであり、生体にとっては刺激が強すぎる結果となる。そこで、SUS304を線引きする際の線材15の線径をφ20μmに設定した。
平織りした金網状シートを適当な大きさのシート片にハサミでカットし、そのカットした線材15の先端形状について走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を図29(a)(b)に示す。図22(a)の観察倍率が500倍、図29(b)の観察倍率が1500倍である。
図29(a)(b)から明らかなように、SUS304の線材15を平織りした場合、その線材15をハサミでカットしたままでは、その先端形状が鋭利な形状であるため、生体への刺激が強すぎることが分かる。
そこで、SUS304の線材15の断端処理を施した。先ず、前記線材15の端断処理として、10%過塩素酸と20%グリセリンと70%エタノールとを用いた電解エッチング処理を施した。走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図30(a)(b)に示す。図30(a)は、観察倍率が500倍、図30(b)は観察倍率が2000倍である。
図30(a)(b)から明らかなように、電解エッチング処理を施すことにより、線材15の先端形状が図30(a)(b)の場合よりも鋭利になり、さらに生体への刺激が強すぎることが分かる。
次に、前記線材15の端断処理として火炎処理を施した。走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図31(a)(b)に示す。図31(a)は、観察倍率が500倍、図31(b)は観察倍率が2000倍である。
図31(a)(b)からすると、加熱による火炎処理を施すことにより、線材15の先端形状が軟化することになる。しかし、火炎処理によりSUS304の線材15の先端に酸化被膜(写真ではささくれの様な被膜)16が生成されるため、この酸化被膜16を完全に洗浄除去しないと、酸化した物質が生体内に長期間遺留した場合に、その酸化した領域が癌化する可能性があり、生体の治療に用いることは不適当である。
また図28に示す様に、SUS304から線引きした線材15を平織りしているため、金網状シートを所望の形状にカットした際に、平織りした線材15同士が解れてしまい、カットしたシートを軟部組織に縫合することが困難であることも分かった。
また、ステンレス鋼ネットを用いた治療器具は、治療後における軟部組織との生体親和性の点で問題があり、長期間埋め込まれたとしても、軟部組織と一体化せずに軟部組織から分離した状態で埋め込まれている。そのため、永久的に軟部組織とともに体内に埋め込んで置くことができず、摘出手術が必要となり、ストレスを与えてしまうという問題もあることが分かった。
さらに、ステンレス鋼ネットの場合、金属イオンの溶出があることが分かった。
以上の検証結果からすると、次の様なことが分かった。
(1)軟部組織治療器具の素材にステンレス鋼ネットを用いることは、生体との親和性に欠けること
(2)ステンレス鋼から線引きした線材を平織りすることは、カットしたシートと軟部組織との融合性に問題があること
(3)ステンレス鋼の線材を平織りした場合、線材間に形成される孔は、縫合糸を通す役目に止まり、ステンレス鋼ネットの生体との非親和性のために、軟部組織との関係で有効利用できないこと
(4)ステンレス鋼から線引きした線材の場合、加工硬化の問題が生じてカットした線材の先端が生体に刺激を与えること
(5)前記線材の断端処理に電解エッチング処理や火炎処理を用いると、問題が生じること。本来、軟部組織の治療に迅速性が要求されることからすると、簡易な火炎処理を採用することが望まれるが、この火炎処理を採用できないことは、治療時間が長引いて生体にストレスを与える結果になること
(6)金属イオンの溶出の可能性があり、また線材による生体への刺激により漿液が溜まること
以上の検証結果からすると、ステンレス鋼ネットをチタン材に転換するだけでは軟部組織の治療に適合しないものであり、軟部組織を治療するという観点からチタン材に創意工夫を施す必要があることが分かった。
本発明者は、ステンレス鋼を用いた軟部組織の治療を開発する過程において、軟部組織の治療に最適な治療器具としては、次のことが要求されるとの見識を得た。
(1)生体適合性に優れ、異物反応が起きにくいこと
(2)皮下識や皮膚を縫合するに当たり、適度の張りがあること
(3)患部により密着して緊張縫合の役割を兼ねること
(4)皮下に緩んだ寄りや起伏を作らず、漿液が溜まりにくく、組織密着性が高いこと
(5)生体適合性に優れ、手間が掛からず、自ら伸張しており、手術がしやすいこと
(6)MRI(Magnetic Resonance Imaging system:磁気共鳴画像装置)などを用いる場合、磁力をもたないこと
(7)線材を平織りする場合に比べ、カット周縁部にバリがでないこと
これらの見識に立って、本発明者は、チタン材に次の観点から創意工夫を施すことにより、チタン材を用いた軟部組織の治療に最適な治療器具を開発した。
以下に、本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を図に基づいて詳細に説明する。本発明に係る軟部組織治療器具は図1(a)(b)(c)に示す様に、軟部組織1に縫合して前記軟部組織1の患部治療に用いる軟部組織治療器具であって、図6(a)(b)及び図7(a)(b)に示す様に、チタン材をシート状に引き延ばして柔軟性と防縮性を付与したチタンフィルム2と、前記チタンフィルム2を貫通して形成された2以上の孔3,3・・・とを有し、図2(a)(b)及び図3(a)(b)に示す様に、前記孔3は、縫合糸8を通す口径を有し、かつその開口縁3aに、前記縫合糸8が食い込む脆弱加工9がされており、さらに、図8(a)(b)に示す様に前記2以上の孔3を多角形状に配列し、前記2以上の孔で囲まれた領域4内に切り出し用の切り代5を形成したことを特徴とするものである。
ここで、外科手術で縫合を行う際には手術用縫合糸を使って縫合を行うものである。本発明の実施形態では、手術用縫合糸8をチタンフィルム2の孔3に通して縫合を行うこととなる。
一般に金属シートに孔を明けた場合、孔の中央部位と開口縁とが同一径となって孔加工されるため、孔の開口縁が直角をなして鋭利な刃物のように加工される。この孔に縫合糸を通して緊締すると、縫合糸が鋭利な孔の開口縁によって切断されてしまうこととなる。
本発明の実施形態における前記孔3は図1(b),図2(a)(b)及び図3(a)に示す様に、縫合糸8を通す口径を有し、かつその開口縁3aに、前記縫合糸8が食い込む脆弱加工9を施している。
チタンフィルム2の孔3に縫合糸8を通して、この縫合糸8を結糸した状態を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した状態を図2(a)(b)及び図3(a)(b)に示す。
図2(a)(b)及び図3(a)から明らかなように、図3(b)に示す様に縫合糸8を結糸した状態では、縫合糸8は、孔3の開口縁3aに施された脆弱加工9の領域で開口縁3aに食い込んでいることが分かる。従って、図3(b)に示す様に、縫合糸8を結糸した状態でも、縫合糸8は孔3の開口縁3aによって切断されることはなかった。
また、チタンフィルム2と軟部組織1との生体親和性によって、縫合糸8には軟部組織1の一部が再生して食い込むこととなるが、本発明の実施形態によれば、孔3の開口縁3aには脆弱加工9が施されているため、軟部組織1の再生力によって変形することにより、孔3の開口縁3aは軟部組織1に馴染むこととなり、軟部組織1にストレスを与えることはないものである。
また、金属シートの場合、切り出した際に切り口縁が鋭利になって生体にストレスを与えるものであり、本発明の実施形態においてもチタンフィルム2をハサミで切断した場合、その断端処理が必要となる。チタンによる軟部組織の治療では、このストレスを回避すべきである。
断端処理を行うために、ステンレス素材を線引きによって糸状に加工し、これらを平織りすることも考えられるが、ステンレス素材を細く加工すればするほど硬さが高くなり、生体にとって刺激が強すぎる結果となる。また、線引きした糸状素材を平織りした場合、ハサミで切断して火炎処理を施したときに、平織り材が燃えてしまう場合がある。
そこで、本発明の実施形態では、チタン材をシート状に引き延ばしてチタンフィルム2に柔軟性と防縮性を付与し、かつ、前記チタンフィルム2の膜厚を20μm〜60μmの範囲に設定し、前記チタンフィルム2に孔3をエッチング処理により形成している。
本発明の実施形態によれば、チタンフィルム2はチタン材を引き延ばしてシート状に形成し、そのチタンフィルム2の膜厚を20μm〜60μmの範囲に設定して、孔3をエッチング処理により形成しているため、平織り構造ではなくシート構造であるため、チタンフィルム2から切り出したフィルム片6の切り口縁6aは、2以上の糸状金属繊維が並列に並んだ切り口形状ではなく、膜厚20μm〜60μmの短冊状の切り口縁となる。
チタンフィルム2から切り出したフィルム片6の切り口縁6aを走査電子顕微鏡(SEM)で観察した状態を図4(a)(b)に示す。
図4(b)に示す様に、チタンフィルム2からハサミで切り出したままでのフィルム片6の切り口縁6aを示すものであり、フィルム片6の切り口縁6aには、切り子6bが残存している。
本発明の実施形態では図10に示す様に、前記フィルム片6の切り口縁6aに火炎処理19を施すことにより酸化チタン膜7を形成して断端処理を施している。
図4(a)に示す様に、本発明の実施形態におけるフィルム片6の切り口縁6aに火炎処理19による酸化チタン膜7を形成して断端処理を施すことにより、フィルム片6の切り口縁6aは生体に対して滑らかな端縁となり、生体へストレスを与える事を回避することができるものである。
フィルム片6の切り口縁6aに形成される酸化チタン膜7は、同じ酸化でもその生成量が極めて少ない(薄め)ために、生体に与える酸化の影響はほとんどないと考えられる。
したがって、チタンフィルム2の膜厚を上記寸法範囲に設定して孔3をエッチング処理で得ているため、平織り構造ではなくシート構造となり、ハサミでの切り出しが容易となる。また、前記チタンフィルム2から切り出したフィルム片6の切り口縁6aにライターによる火炎処理19による酸化チタン膜7が形成されて断端処理がなされるため、チタン製のフィルム片6の切り口縁6aが生体にストレスを与える事がなく、生体液によってイオンが溶出することはない。
以上説明したように本発明の実施形態によれば、チタンフィルムの柔軟性と防縮性を利用することにより、軟部組織を保形することができ、しかも、チタンフィルムを用いているため、軟部組織との親和性がよく、永久的に軟部組織とともに体内に埋め込んで置くことができ、摘出手術が不要となり、ストレスを回避することができる。
さらに、前記チタンフィルムに形成した孔は、縫合糸を通す口径を有しているため、前記孔に縫合糸を通して軟部組織にチタンフィルムを縫合することにより、チタンフィルムによって軟部組織を補強することができるばかりでなく、チタンフィルムの生体親和性により、欠如した軟部組織をチタンフィルムによって代替することができる。
さらに、前記孔の開口縁に、縫合糸が食い込む脆弱加工がされているため、前記孔の開口縁によって縫合糸を切断することがなく、縫合に必要な力でもってチタンフィルムを軟部組織に縫合することができる。
さらに、前記2以上の孔を多角形状に配列し、前記2以上の孔で囲まれた領域内に切り出し用の切り代を形成しているため、治療する軟部組織の形状に合わせてチタンフィルムを自由に切り出すことができ、無駄な余剰部分を生み出すことなく、チタンフィルムのほぼ全面を軟部組織の治療に有効に用いることができ、高価なチタン材を有効に利用することができる。
上述した様に、本発明の実施形態では、平織り構造ではなく、1枚のシート構造であるため、チタン材を引き延ばしてシート状に形成されたフィルクシート2はその柔軟性と防縮性を維持しており、平織り構造のように伸縮することはない。また、前記チタンフィルム2の膜厚を20μm〜60μmの範囲に設定したため、軟部組織1の患部に密着し、皮下に弛んだ寄りや起伏を作らないため、漿液が溜まりにくく、組織密着性が高いものである。また、チタンフィルム2は平織り構造のように伸縮性がないため、ハサミで容易にフィルム片6を切り出すことができるものである。
発明者の一人である獣医師の伊東彰仁(イトウペットクリニック)による外科手術の経験及び後述する軟部組織治療器具を用いた外科の擬似手術及び動物の外科的処理の結果から、
(1)生体適合性に優れ、異物反応が起きにくいこと
(2)皮下識や皮膚を縫合するに当たり、適度の張りがあること
(3)患部により密着して緊張縫合の役割を兼ねること
(4)皮下に緩んだ寄りや起伏を作らず、漿液が溜まりにくく、組織密着性が高いこと
(5)生体適合性に優れ、手間が掛からず、自ら伸張しており、手術がしやすいこと
(6)MRI(Magnetic Resonance Imaging system:磁気共鳴画像装置)などを用いる場合、磁力をもたないこと
(7)線材を平織りする場合に比べ、カット周縁部からのバリがでないこと
等の良好な結果を得ている。これらの効果は、数字で表すことはできないものであり、発明者の一人である獣医師の伊東彰仁(イトウペットクリニック)による外科手術の経験から得ている。
また、外科手術が行われる手術室には引火性の高い薬品が多く存在している。そのため、大掛かりな高熱を加える処理は厳禁である。また、チタンフィルム2からフィルム片6の切り出しは、表皮をメスで切り開いて軟部組織の患部を目視してフィルム片6の大きさや形状が決めるものであるから、施術中にフィルム片6の切り出しが行われることとなる。
したがって、施術中にフィルム片6を切り出すと共に、そのフィルム片6の切り口縁6aに簡易に火炎処理を行う素材でなければならない。
本発明の実施形態では、チタンフィルム2の膜厚を20μm〜60μmの範囲に設定することにより、施術中にハサミにより容易に切り出すことができ、施術者に施術中でのストレスを掛けることはなく、しかも、ライターの火で火炎処理を行うことにより、前記チタンフィルム2から切り出したフィルム片6の切り口縁6aに火炎処理による酸化チタン膜7を形成することにより断端処理を施すことができる(図4(a),図10,図11)。
次に、外科手術に用いる針とチタンフィルム2の孔3との関係について説明する。外科手術に用いる針としては、丸針や角針などが在る。これらの針は、手元側に前方に向けて円弧状或いは角型形状に屈曲成形され、その先端に軟部組織1に突き刺す針先を備えた構造になっている。そして、手術用針を用いる場合、外科用手術針の針先端を軟部組織に突き刺し、その円弧状或いは角型形状に屈曲した形状を利用してその針先端を軟部組織から引き出すことにより縫合を行うようになっている。したがって、針先端を軟部組織に突き刺した位置と、針先端を軟部組織から引き出した位置とは、直線上にある。
本発明の実施形態では図6(a)(b),図7(a)(b)及び図8(a)(b)に示す様に、2以上の孔3を角型形状に配列している。図8(a)を使って説明すると、隣接する孔を3,3とすると、隣接する孔3,3は、直線上に配置されることとなる。そのため、外科手術針の針先端を例えば隣接する一方の孔3に通して軟部組織1に突き刺す際、その針先端を軟部組織1に突き刺す方向を隣接する他方の孔3に向けることにより、軟部組織1から引き出した手術用針の針先端の位置は必然的に前記他方の孔3の位置となる。
したがって、本発明の実施形態におけるチタンフィルム2の孔3は、施術者に外科手術用針を軟部組織1に突き刺す方向を示唆する指標となるため、施術者はチタンフィルム2の隣接する孔3の向きを軟部組織1の患部に手術針を突き刺す方向に向けることにより、縫合を容易に行うことができることとなる。
本発明の実施形態では、前記隣接する孔3の間隔は、外科手術用針が軟部組織1の患部を縫合する間隔に合わせて設定している。この孔3の間隔は、外科手術用針で軟部組織1の患部を縫合する間隔が変更されれば、その縫合間隔に合わせて設定する必要がある。
チタンフィルム2に形成する孔3の径は、外科手術用針の径及び再生した軟部組織1の一部が食い込めることを考慮して2mm〜6mmの範囲に設定している。この孔3の径は、現在使用されている外科手術用針の径及び軟部組織1との親和性に対応して設定しているものであり、その外科手術用針の径が変更されれば、その設定を変更する必要がある。但し、軟部組織1との生体親和性を維持するためには、経験上最低でも2mm程度の径が必要となる。
上述した様に、チタンフィルム2に形成される孔3の内、隣接する孔3の間隔は後述するように、外科用手術針の寸法を考慮して規定されるものであり、しかも、チタンフィルム2から切り出したフィルム片6内に縫合に必要な数多くの孔3が存在することが要求される。また、切り出したフィルム片6の周縁部位での孔3の位置は、手術用糸の使用量を必要最小限に抑えることを考慮すると、フィルム片6の切り口縁6aに近づける必要がある。また、チタン材の原価が他の金属に比べて高価であること、及び隣接する孔3の間隔は外科用手術針の寸法によって規定されることを考慮すると、孔3の個数と、それ以外の患部にあてがう部位との割合を考慮する必要がある。また、後述するように、2以上の孔3で囲まれた領域4に切り代5を形成するものであり、この切り代5による切り出し方向を多く確保可能であり、しかも、切り代5での切り残し無駄を極力少なくする必要がある。
また、外科手術にチタンフィルムを用いる場合、軟部組織1の患部の大きさ及び形状に合わせてフィルム片6を切り出す必要がある。軟部組織1の患部の大きさ及び形状に合わせて切り出す際、孔の部分で切り出す場合も生じる。孔の部分で切り出した場合、孔が半割されるから、孔の部分に鋭利な突起が形成されてしまい、それが起因して生体にストレスを与える事となる。
本発明の実施形態では、図7(a)(b)及び図8(a)に示す様に前記2以上の孔3の配列を6角形状、或いは図6(a)(b)及び図8(b)に示す8角形状とし、前記2以上の孔3で囲まれた内側に6角形状或いは8角形状の領域4を確保することにより、その領域4内に切り出し用の切り代5を形成している。
前記2以上の孔3で囲まれた内側に切り出し用の切り代5を形成したことによる効果を図8に基づいて具体的に説明する。
図8(a)の例では、チタンフィルム2の6個の孔3を6角形状(特に正6角形)に配列して、6個の孔3で囲まれた領域4に切り出し用の切り代5を形成している。なお、図6(a)では、チタンフィルム2から切り出すフィルム片6の大きさ及び形状を、最小の大きさであって円形及び三角状に切り出す場合を例にとって説明するが、切り出すフィルム片6の大きさ及び形状は図8(a)に図示したものに限られるもではない。
図8(a)から明らかなように、チタンフィルム2からフィルム片6を切り出す際、1つの6角形状の領域4では、隣接する2つの孔3,3に切り込みCを入れた場合、その切り出し方向を5つの方向C,C,C,C,Cに設定できるものである。これは、6個の孔3を6角形状に配列して、その6個の孔3で囲まれた領域4に切り代5を形成しているためである。
したがって、図8(a)に示す様に、6個の切り代5を利用することにより、実線で囲んだ円形のフィルム片6を、孔3を通らずに切り出すことができ、これによりフィルム片6の切り口縁6aには孔3による突起が形成されることはないのである。
また、チタンフィルム2からフィルム片6を実線で示す様に円形状に切り出した場合、前記切り出したフィルム片6の切り口縁6aに接近した位置に6個の孔3を確保することとなり、フィルム片6を軟部組織1に縫合する十分な孔6を確保することができる。また、フィルム片6を切り出す円形状の直径を拡大することにより、図15に示す様に前記フィルム片6の切り口縁6aに接近した位置に確保する孔3の個数を増やすことができると共に、切り口縁6aより内側に、それぞれに手術用糸8を通す孔3を数多く確保することができる。
また、図8(a)において、チタンフィルム2からフィルム片6を2点鎖線で示す様に三角形状に切り出した場合であっても、前記切り出したフィルム片6の切り口縁6aに接近した位置に3個の孔3を確保することとなり、フィルム片6を軟部組織1に縫合する十分な孔6を確保することができる。また、フィルム片6を切り出す三角形を拡大することにより、前記フィルム片6の切り口縁6aに接近した位置に確保する孔3の個数を増やすことができると共に、切り口縁6aより内側に、それぞれに縫合糸8を通す孔3を数多く確保することができる。
以上のことからして、軟部組織1の筋膜にフィルム片6を縫合する外科手術ばかりでなく、筋膜が欠落した軟部組織1にフィルム片6を直接縫合する外科手術にも応用することができるものである。
次に、図8(b)に示す例について説明する。図8(b)では、8個の孔3を8角形状(特に正8角形)に配列している。上述した様に、隣接する孔3の間隔が外科手術用針の寸法によって規定されてしまうものであるから、図8(a)に示す6角形の配列と比較すると、8個の孔3によって囲まれる領域4の大きさが拡大することにはなるが、図8(b)から明らかなように、8個の孔3を8角形に配列すると、1つの8角形状の領域4では、隣接する2つの孔3,3に切り込みCを入れた場合、その切り出し方向を5つの方向C ,C,C,C,C,C,Cに設定できることとなる。また、隣接する8角形状の領域4の辺によって三角形状のスペースSが形成されることとなるが、この三角形状のスペースSが切り代5の一部となって切り出す方向を追加する役目を果たすことができる。
以上のように、本発明の実施形態によれば、チタンフィルム2からフィルム片6を切り出す際の切り代5を確保でき、孔3の部分で切り出すことがないため、フィルム片6の切り口縁6aに孔3による突起が形成されることはなく、軟部組織1にフィルム片6を縫合しても生体にストレスを与えることはない。
なお、2以上の孔3を三角形,四角形或いは5角形に配列することも可能であるが、切り出したフィルム片6に残す孔3の数、或いは2以上の孔3の内側に形成される角型の領域4を配置して切り出す際の歩留まり等の問題からすると、6角形が最適であり、8角形でも切り出し方向が増えることを考慮すると、採用することが可能である。しかし、切り出しの歩留まり等を考慮せずに、孔3の位置を避けてフィルム片6を切り出すのであれば、三角形,四角形或いは5角形ばかりでなく、6角形及び8角形以外の多角形状を採用することも可能である。
次に、本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いて軟部組織1の患部を治療する治療方法について説明する。この軟部組織の治療方法に、生命が存在する生体を用いる事には問題があるため、図12に示す様に鳥のモモ肉を軟部組織1に見立てて、軟部組織1の治療方法について説明する。なお、この治療の実験は、発明者の一人である獣医師の伊東彰仁(イトウペットクリニック)が担当した。
先ず、図9に示す様に、6個の孔3を6角形に配列した軟部組織治療器具のチタンフィルム2を用意した。図9に示すチタンフィルム2は図6に示す様に、膜厚が30μm、孔3の径がφ2mm、孔3同士の間隔が6mmにそれぞれ設定してある。孔3同士の間隔は、外科手術用丸針の寸法を考慮して6mmに設定した。
次に、図8(a)に示す様に、6個の孔3で囲まれた6角形の領域4に形成された切り出し用の切り代5を使って、孔3の部分で切り出さないように、チタンフィルム2からフィルム片6を切り出した。そして、図10に示す様に、ライターの火炎で前記フィルム片6の切り口縁6aに火炎処理19を施して、図11に示す様に、前記フィルム片6の切り口縁6aに酸化チタン膜7を形成して断端処理を施した。
前記フィルム片6の切り口縁6aに、切り出しの際に形成される切り口の鋭利性がなくなり、その切り口縁6aが生体にストレスを与えることはないことが確認できた。
本発明の実施形態に係る軟部組織の治療方法との比較のために、一般に用いられている不織布10を用いた治療方法も実験した。この場合、両者を比較するために、不織布10及びフィルム片6の形状を図13及び図15に示す様にほぼ同一形状に切り出した。
図13に示す様に、比較例として不織布10の周縁を筋膜に見立てた鳥のモモ肉の皮に手術用糸11を用いて縫合した。次に図14に示す様に、表皮13に見立てた鳥のモモ肉の皮を引き寄せて縫合糸12で縫合した。
図14から明らかなように、不織布10は柔軟性と防縮性がないために、表皮13を引き寄せて縫合した際に、皺寄ってしまった。この状態を模式化して図示すると、図5(b)に示す様に、軟部組織1を覆っている不織布10に皺が寄ってしまい、不織布10と軟部組織1との間に空間14が形成されてしまった。
図13及び図14の結果からすると、
(1)皮下組織や皮膚を縫合するに当たり、張りがないこと、
(2)患部により密着せず筋膜の緊張の役割を兼ねられないこと、
(3)皮下に弛んだ寄りや起伏が作られ、漿液が溜まり易く、組織密着性が低い、
(4)生体適合性に劣り、手間がかかり、手術がし難い、
という評価結果になった。
これに対して、本発明の実施形態では図15に示す様に、切り出して火炎処理19を施したフィルム片6を筋膜1aに見立てた鳥のモモ肉の皮にあてがい、フィルム片6に設けた孔3を使ってフィルム片6を筋膜1aに見立てた鳥のモモ肉の皮に縫合糸8で縫合した。この状態を模式化して図示すると、図1(a)のようになる。この場合、縫合糸8がフィルム片6の孔3の開口縁で切断されることはなかった。
次に図16に示す様に、表皮13に見立てた鳥のモモ肉の皮を引き寄せて糸12で縫合した。図16から明らかなように、筋膜1aに縫合したフィルム片6は、その自身が備えた柔軟性と防縮性によりあてがった際の形状を保っていた。これを模式化して図示すると、図5(a)のようになる。図5(a)及び図16から明らかなように、筋膜1aに縫合したフィルム片6は、それ自身の柔軟性と防縮性により、筋膜1aを元の形状に保形していた。
図15及び図16の結果からすると、本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いた軟部組織の治療方法では、
(1)皮下組織や皮膚を縫合するに当たり、適度の張りがあり、
(2)患部により密着して組織緊張の役割を兼ねており、
(3)皮下に弛んだ寄りや起伏を作らないため、漿液が溜まりにくく、組織密着性が高く、
(4)生体適合性に優れ、手間がかからず、自ら伸展していることにより手術がしやすいこと等の良好な評価結果が得られた。
次に、筋膜がない軟部組織1の治療に適用した例を説明する。
図17に示す様に、鉗子18により表皮13を広げて軟部組織1の患部1bを露出させた。次に図18に示す様に、フィルム片6を軟部組織1の患部1bにあてがい、フィルム片6の周辺の孔3によりフィルム片6を軟部組織1に縫合した。また、フィルム片6の周縁から内側に入った箇所にある隣接する孔3,3を使ってフィルム片6を軟部組織1に縫合糸8で縫合した。このように、フィルム片6の周辺及び内側に形成された孔3を使うことにより、フィルム片6を軟部組織1に縫合糸8で均等に縫合させた。この状態を模式化して図示すると、図1(c)のようになる。
次に図19に示す様に、フィルム片6を縫合した軟部組織1の部分を鉗子18により引張り力を与えたが、フィルム片6により軟部組織1の患部が保形されており、その引張り力により軟部組織の患部が拡がることはなかった。
次に図20に示す様に、表皮13に見立てた鳥のモモ肉の皮を引き寄せて縫合糸17で縫合した。図20から明らかなように、軟部組織1に直接縫合したフィルム片6は、その自身が備えた柔軟性と防縮性によりあてがった際の形状を保っていた。これを模式化して図示すると、図5(c)のようになる。
図17〜図20の結果からすると、本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を用いた軟部組織については、
(1)皮下組織や皮膚を縫合するに当たり、適度の張りがあり、
(2)患部により密着して組織緊張の役割を兼ねており、
(3)皮下に弛んだ寄りや起伏を作らないため、漿液が溜まりにくく、組織密着性が高く、
(4)生体適合性に優れ、手間がかからなく、自ら伸展していることにより手術がしやすいこと等の良好な評価結果が得られた。
以上に説明したように良好な評価結果が得られたので、本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具を動物の治療に用いた例を説明する。
図21に示す症例は、ミニチュアダックス6歳のオスであって、肛門右側(図右下側の膨らんだ箇所)に発生した会陰ヘルニアで、外科的処置が必要と診断されたものである。
次に、患部を開き、チタンフィルム2から患部の大きさに合わせてフィルム片6を切り出し、その切り口縁6aに図10に示す様な断端処理を施し、図22に示す様に前記フィルム片6を皮下識と筋膜との間の空間に埋め込む。この場合、図22から明らかなようにフィルム片6は自ら伸展し、撓まないことが分かる。
次に図23に示す様に、フィルム片6の孔3を使い、フィルム片6を筋膜面に固定する。この際、筋膜が薄いため、過分に固定して掛かる力を分散しないと、固定してある箇所が引き千切れてしまう虞がある。本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具におけるチタンフィルム2には、多数の孔3が形成されているため、これらの孔3を使うことにより、フィルム片6に加わる力を分散してフィルム片6を筋膜に固定することができる。
次に図24に示す様に、皮下識と皮膚とを縫合し、閉創する。このとき、図25に示す様に、フィルム片6が伸展していることが分かる。次に図26に示す様に、表皮を縫合して術式終了する。
図27に示す様に、術後3日目にして、漿液が溜まることなどの異物反応などは見られず、傷も順調に回復していることが分かる。
以上説明した動物への外科的処置に本発明の実施形態に係る軟部組織治療器具が適合し、それによる障害が生じないことが実証できた。
本発明は、軟部組織の治療に最適な軟部組織治療器具を提供する事ができると共に、その軟部組織治療器具を用いて軟部組織の治療を最適に行う事ができるものである。
1 軟部組織
2 チタンフィルム
3 チタンフィルムに形成した孔
3a 孔の開口縁
4 2以上の孔で囲まれた領域
5 切り代
6 フィルム片
7 酸化チタン膜
8 縫合糸
9 脆弱加工

Claims (3)

  1. 軟部組織に縫合して前記軟部組織の患部治療に用いる軟部組織治療器具であって、
    チタン材をシート状に引き延ばして柔軟性と防縮性を付与したチタンフィルムと、前記チタンフィルムを貫通して形成された2以上の孔とを有し、
    前記孔は、縫合糸を通す口径を有し、かつその開口縁に、前記縫合糸が食い込む脆弱加工がされており、
    さらに、前記2以上の孔を多角形状に配列し、前記2以上の孔で囲まれた領域内に切り出し用の切り代を形成したことを特徴とする軟部組織治療器具。
  2. 前記チタンフィルムから切り出したフィルム片の切り口縁に火炎処理による酸化チタン膜を形成して断端処理を施した請求項1に記載の軟部組織治療器具。
  3. 前記チタンフィルムの膜厚を20μm〜60μmの範囲に設定した請求項1に記載の軟部組織治療器具。
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