JP5339605B2 - 経路探索方法およびシステム - Google Patents

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Description

本発明は、インターネット等のネットワークを対象とした経路探索方法およびシステムに係り、特に、送信元ノードと宛先ノードとの間に設定された通常経路(default path)とノードやリンクを共有しないdisjoint(相互に素)な経路の探索に好適な経路探索方法およびシステムに関する。
インターネットが世界に広域かつ密に普及するにつれてネットワーク接続は大きな冗長度を持つようになった。その結果、インターネットでは目的地までの異なる経路が多数存在することがわかっている。しかしながら、現在のインターネットでは、一般的に送信元ノードと宛先ノートとの間に単一の経路しか提供されない。もし、通常経路とは異なり、かつ通常経路とノードやリンクを共有しないdisjointな経路を自由に扱うことが可能になれば、複数経路の同時接続による速度の向上や故障率の低下、さらには障害復旧時間の短縮等に役立つ。非特許文献1,2には、通常経路と異なるdisjointな経路の発見や利用法に関する研究報告が開示されている。
さらに、インターネットにおいてオーバーレイネットワークを利用すれば、one-hop disjoint path (OHDP)を用いた通信が可能となる。OHDPとは、ある一つの中継点で2つのインターネットの経路を繋いで構築された、通常経路とは交わらないdisjoint な経路を意味し、適正な中継点(ノード)を発見できれば容易に確立できる。OHDPに関しては、例えば地震などの災害時において、経路制御の収束を待つことなく中継点を利用した迂回路を利用できるなどの有効性が認知されている。非特許文献3には、インターネット上のある2点間の通常経路に対する複数のOHDPをランダムに選択しながら探索する技術が開示されている。
K. Gummadi, H. Madhyastha, S. Gribble, H. Levy, and D. Wetherall. Improving the Reliability of Internet Paths with One-hop Source Routing. Proc. 6th USENIX OSDI. J. Han and F. Jahanian. Impact of path diversity on multi-homed and overlay networks. Dependable Systems and Networks, 2004 International Conference on, pages 29.38. J. Wu, Y. Zhang, Z. Mao, and K. Shin. Internet routing resilience to failures:analysis and implications. Proceedings of the 2007 ACM CoNEXT conference, 2007.
インターネット上の膨大な経路の中から通常経路とdisjointな経路を効率良く探し出すために、従来の多くの研究では、インターネット上のある2点間の通常経路に対する複数のOHDP をランダムに選択して評価したり、あるいはBGP 情報から得られたグラフから推測したりするなど、膨大な通信コストや計算コストの発生を余儀なくされていた。
本発明の目的は、上記の従来技術の課題を解決し、インターネットが経路制御に用いた既存の経路情報を再利用し、検索空間を小さく定義し直すことで、通信コストや計算コストを低く抑えながら、通常経路とdisjointな経路を正確かつ効率的に探索できる経路探索方法およびシステムを提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、経路探索要求に応答して送信元ノードから宛先ノードへ至る経路を探索する経路探索システムにおいて、以下のような手段を講じた点に特徴がある。
(1)ネットワーク上の複数のルータから経路情報を収集する手段と、収集した経路情報を蓄積するデータベースと、経路情報を収集したルータ同士のペアごとに、その一方のルータから送信元ノードへ至る経路と他方のルータから宛先ノードへ至る経路とが交差する交点ノードを算出する交点算出手段とを具備し、送信元ノードから交点ノードを中継して宛先ノードへ至る経路を探索結果とすることを特徴とする。
(2)交点ノードの履歴を管理する手段と、交点ノードの履歴に基づいて経路の探索範囲を予め絞り込む探索範囲絞込手段とを具備したことを特徴とする。
(3)送信元ノードから交点ノードを中継して宛先ノードへ至る複数の経路候補を評価する評価手段をさらに具備し、評価の高い経路候補を探索結果とすることを特徴とする。
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1)送信元ノードSから宛先ノードDへ至る通常経路以外の経路を、tracerouteなどの経路探索用のトラヒックを新たに生じさせることなく、ルータにより収集されて一般に公開されている既知の経路情報を再利用して探索できるので、経路探索を小さな通信コストで実現できるようになる。
(2)送信元ノードSから宛先ノードDへ至る通常経路以外の経路を、2本の経路の交点を算出するという単純な手法で探索できるので、経路探索を小さな計算コストで実現できるようになる。
(3)送信元ノードSから宛先ノードDへ至る通常経路以外の多数の経路を単純な手法で探索できるので、通常経路とdisjointな経路を簡単に発見できるようになる。
(4)交点履歴に基づいて、経路候補が中継(反射)する交点算出用のルータペアや経路を予め絞り込むようにしたので、経路探索の計算コストを更に削減できるようになる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る経路探索方法の基本的な考え方を模式的に示した図であり、ここではAS(Autonomous System)レベルでのOHDP (one-hop disjoint path)の効率的な探索に焦点を当て、AS70に存在する送信元ノードSからAS7に存在する宛先ノードDへ至る経路の探索を例にして説明する。
送信元ノードSおよび宛先ノードDの各ASとは別に2つのAS(AS1,AS10)に注目したとき、AS1から宛先ノードDへ至る経路P1(AS1→AS2→AS3→AS100→AS5→AS6→AS7)とAS10から送信元ノードS へ至る経路P2(AS10→AS20→AS30→AS100→AS50→AS60→AS70)とがAS100で交差していれば、送信元ノードSと宛先ノードDとの間には交点のAS100で反射(中継)する経路(AS70→AS60→AS50→AS100→AS5→AS6→AS7)が存在することが判る。
さらに、着目した2つのAS1,AS10のBGPルータがBGPテーブルの経路情報を公開していれば、新たにtracerouteなどを実行して経路情報を取得することなく、AS1から宛先ノードD(AS7)へ至る経路P1およびAS10から送信元ノードS (AS70)へ至る経路P2の経路情報を取得できるので、少ない計算量で効率よくOHDPを探索できることが判る。
なお、送信元ノードSからAS100へ至る経路(AS70→AS60→AS50→AS100)は前記経路P2の一部の反転経路であるため、厳密には経路P2と異なるが、ネットワーク上の経路はある程度の確率で対称性を有することから、実質的には送信元ノードSから交点AS100へ至る経路を前記経路P2の反転経路で代用できる。
そこで、本発明では各ASにおいて経路情報を公開しているBGPルータRに注目し、図2に示したように、一組のノードペア(送信元ノードSおよび宛先ノードDのペア)に対して多数のBGPルータRの組合せ(ルータペア)を適用し、経路長が最短で、かつ通常経路Psdとdisjointな経路を確立できる交点AS(I)を探索するようにしている。すなわち、経路情報を提供するBGPルータRがn個であれば、n(n-1)組のルータペア(Ri,Rj)から交点AS(I)を求めて経路を探索する。
図3は、本発明の経路探索システムが適用されるネットワークの構成を示した図であり、多数のAS(AS1,AS2,AS3…)の集合体であるインターネットNWには、送信元ノードSおよび宛先ノードDのノードペアならびに本発明に係る経路探索システム1が接続されている。前記経路探索システム1は、送信元ノードSから経路要求(1)を受信すると、送信元ノードSから宛先ノードDへ至る経路であって、通常経路Psdとdisjointな一ないし複数の経路候補P(S,I,D)を探索し、これを経路応答(2)として送信元ノードSへ返信する。
図4は、前記経路探索システム1の主要部の構成を示した機能ブロック図である。経路情報収集部101は、経路情報を公開しているASのBGPルータRから、そのBGPテーブルに登録されている経路情報を収集し、これを各BGPルータの識別子と対応付けて経路情報データベース(DB)102へ蓄積する。経路要求受信部103は、送信元ノードSから当該送信元ノードSおよび宛先ノードDのアドレスペア(s,d)を含む経路要求を受信すると、これに応答して経路情報探索部104へ経路探索を要求する。
経路情報探索部104は探索範囲絞込部104aを含み、後に詳述するように、経路情報DB102に経路情報が登録されている多数のBGPルータRを対象に、送信元ノードSまたは宛先ノードDへ至る経路上に交点ノードIとしての履歴を有するASが存在するか否かを判定し、交点ノードIが存在する経路または当該経路を与えたBGPルータRのみに経路探索範囲を予め絞り込む。そして、絞り込まれた探索範囲を対象に、BGPルータペア(Ri,Rj)の各BGPルータから送信元ノードSおよび宛先ノードDへ至る各経路を、前記経路情報DB102に登録されている経路情報に基づいて探索する。
交点算出部105は、図5に示したように、ルータペア(Ri,Rj)の一方Riから宛先ノードDへ至る経路P(i,D)とルータペア(Ri,Rj)の他方Rjから送信元ノードSへ至る経路P(j,S)との交点ノードIij、および図6に示したように、ルータペア(Ri,Rj)の他方Rjから宛先ノードDへ至る経路P(j,D)とルータペア(Ri,Rj)の一方Riから送信元ノードSへ至る経路P(i,S)との交点ノードIjiを算出する。経路候補探索部106は、前記送信元ノードSから交点ノードIij,Ijiで反射して宛先ノードDへ至る経路P(S,Iij,R),P(S,Iji,R)を経路候補として探索する。
経路評価部107は、図5に示したように送信元ノードSから交点ノードIijで反射して宛先ノードDへ至る経路P(S,Iij,R)と通常経路Psdとを比較し、共有するAS数やリンク数等に基づいて経路P(S,Iij,R)を評価する。前記経路評価部107はさらに、図6に示したように送信元ノードSから交点ノードIjiで反射して宛先ノードDへ至る経路P(S,Iji,R)と通常経路Psdとを比較して経路P(S,Iji,R)を評価する。前記経路評価部107で高い評価の得られた経路候補P(S,I,R)およびその交点ノードIは、前記経路要求に対する応答として経路応答返信部108から送信元ノードSへ通知される。
交点DB109には、今回の送信元/宛先のアドレスペア(s,d)にかかわらず前記経路評価部107で高い評価の得られた全ての経路候補P(S,I,R)の交点ノードIが履歴情報として蓄積される。この交点履歴は、前記経路情報探索部104の探索範囲絞込部104aにおいて探索範囲を予め絞り込む際に利用される。
次いで、前記探索範囲絞込部104aについて、その作用効果を説明する。発明者等は、上記交点ノードIに着目してdisjointな経路を探索する方式の有効性を検証するために、2種類のルータセットと2種類のノードセットとの組み合わせである計4種類のデータセットDS1,DS2,DS3,DS4を用意した。
ルータセットとは、経路情報を公開しているBGPルータペア(Ri,Rj)の集合であり、本実施形態では、多数のASとEBGP(External BGP)接続を行って各ASが送信するBGP経路更新メッセージを収集し、BGP経路表を定期的に公開しているRIPE [http://www.ripe.net/]の経路表およびRouteViews [http://www.ripe.net/]の経路表をルータセットとした。
ノードセットとは通常経路Psdが既知である送信元ノードSおよび宛先ノードDのノードペア(S,D)の集合であり、本実施形態ではPlanetLab [http://www.planet-lab.org] により提供される経路情報およびCAIDA [https://ark.caida.org/skitter-by-number/list-006]により提供される経路情報をノードセットとした。各データセットDS1,DS2,DS3,DS4の内訳は以下の通りである。
DS1:RIPEのルータセットおよびPlanetLabのノードセット
DS2:RIPEのルータセットおよびCAIDAのノードセット
DS3:RouteViewsのルータセットおよびPlanetLabのノードセット
DS4:RouteViewsのルータセットおよびCAIDAのノードセット
発明者が上記4種類のデータセットDS1,DS2,DS3,DS4を対象に調査したところ、一部のASが高頻度で交点ノードとなり、例えば、全世界に2万個あるAS のうち、たった10個の交点ノードが全ノードペア(S,D)の65−85%に対して、通常経路Psdと全ての中継ノード(AS)およびリングが異なるdisjointな経路を提供することが判った。
図7,8は、小数の交点ノードが多くのルータペア(Ri,Rj)およびノードペア(S,D)の組合せに関して高い頻度で交点ノードと成り得る事を示した図である。
ここでは始めに、4種類の各データセットDS1,DS2,DS3,DS4における多数のルータペア(Ri,Rj)およびノードペア(S,D)の組合せについてdisjointな経路を提供する交点ノードIを探索し、さらに交点となる頻度の高い上位20個の交点ノードを抽出した。次いで、前記データセットDS1,DS2,DS3,DS4のルータペア(Ri,Rj)およびノードペア(S,D)の組合せに関して、交点履歴のあるノードの集合(交点ノード候補)の中から交点ノードを発見できる確率を、当該交点ノード候補に前記抽出した上位20個の交点ノードを一つずつ追加しながら求めた。
図7は、交点ノード候補に追加した交点ノード数(横軸)とdisjointな最適経路を発見できたノードペア(S,D)の確率(縦軸)との関係を示した図であり、例えば8個の交点ノードが、データセットDS1,DS2に関しては65−70%、データセットDS3,DS4に関しては約90%の確率でノードペア(S,D)にdisjointな最適経路を提供でき、いずれのデータセットでも、20個の交点ノードで約100%のノードペア(S,D)に最適経路を提供できることが判る。
図8は、disjointな最適経路を与える交点ノードは発見できなかったものの、一部のノードしか重複せず、実使用上は最適経路と同等に機能できる準最適経路を与える交点ノードのみを発見できたルータペアおよびノードペア(S,D)の組合せを対象に、上記と同様にして、準最適経路の交点となる頻度の高い上位20個について、交点ノード候補に追加した交点ノード数と準最適経路を発見できたノードペア(S,D)の確率との関係を示した図である。いずれのデータセットでも、20個の交点ノードで約100%のノードペア(S,D)に準最適経路を提供できることが判る。
そこで、本実施形態では経路情報探索部104に探索範囲絞込部104aを設けると共に、OHDP を構築する交点ノードとなったASの履歴情報を交点DB109に蓄積し、交点ノードIとなる頻度の高いASを含む経路を送信元ノードSまたは宛先ノードDとの間に確立できるルータあるいは当該経路のみを探索対象とすることで探索の効率化を図るようにしている。
次いで、フローチャートを参照して本実施形態の動作を詳細に説明する。図9は、本実施形態における経路探索サーバ1の動作を示したフローチャートである。
ステップS1において、送信元ノードSから送信された経路要求が前記経路要求受信部103で受信されるとステップS2へ進む。ステップS2では、後述するステップS3の交点算出において注目する探索範囲をノードペア(S,D)ごとに予め絞り込むための「探索範囲絞込処理」が前記探索範囲絞込部104aで実行される。
図10は、前記「探索範囲絞込処理(ステップS2)」の手順を示したフローチャートであり、ステップS10では、OHDPを与える確率の高いASの集合Mから、一つの交点ASが今回の注目交点ノードItとして抽出される。本実施形態では、前記交点DB109が集合Mとされ、交点頻度の高いASから順に注目交点ノードItとして抽出される。ステップS11では、経路情報を公開しているBGPルータRの集合から一つのBGPルータが今回の注目ルータRtとして抽出される。
ステップS12では、前記注目ルータRtから予め収集されて経路情報DB102に蓄積されている経路情報に基づいて、当該注目ルータRtから送信元ノードSへ至る経路P(Rt,S)に前記注目交点ノードItが含まれるか否かが判定される。今回の注目交点ノードItが含まれていればステップS13へ進み、今回の経路P(Rt,S)が絞込経路集合Qsに登録される。ステップS14では、前記注目ルータRtから宛先ノードdへ至る経路P(Rt,D)に前記注目交点ノードItが含まれるか否かが判定される。今回の注目交点ノードItが含まれていればステップS15へ進み、今回のP(Rt,D)が絞込経路集合Qdに登録される。
ステップS16では、所定数のBGPルータRについて上記の処理が完了したか否かが判定される。完了していなければステップS11へ戻り、注目ルータRtを変更しながら上記の処理が繰り返される。ステップS17では、集合M(交点DB109)に既登録であって交点頻度が上位である所定数(例えば、20個)の交点ノードIについて上記の処理が完了したか否かが判定される。完了していなければステップS10へ戻り、注目交点ノードItを変更しながら上記の処理が繰り返される。
以上の処理が完了すると、絞込経路集合Qs,Qdには、各BGPルータから送信元ノードSまたは宛先ノードDに至る多数の経路のうち、その経路上に前記集合Mに属する交点ノードIが存在する経路のみが登録されることになる。
図9へ戻り、続くステップS3では、前記絞込経路集合Q,Qdのそれぞれから抽出した経路P(Ri,S),P(Rj,D)の交点ノードIを算出し、さらに送信元ノードSから当該交点ノードIを中継して宛先ノードDへ至る経路候補(S,I,D)が、通常経路Psdとdisjointな経路であるか否かを評価する「交点算出および経路評価処理」が実行される。
図11は、前記「交点算出および経路評価処理(ステップS3)」の手順を示したフローチャートである。
ステップS20では、絞込経路集合Qsからの中から一つの経路P(Ri,S)が抽出され、さらに絞込経路集合Qdからの中から一つの経路P(Rj,D)が抽出される。ステップS21では、経路P(Ri,S)と経路P(Rj,D)とが交差する交点ノードIijが前記交点算出部105において算出される。なお、図12に一例を示したように、複数の交点ノードIij1,Iij2が存在する場合には、経路のホップ数が最小となる一つの交点ノード(ここでは、交点ノードIij1)が選択されるようにしても良い。
ステップS22では、前記経路候補探索部106により、交点ノードIijを中継して送信元ノードSから宛先ノードDへ至る経路、すなわち経路P(Rj,S)を反転した経路P(S,Rj)と経路P(Ri,D)とを交点ノードIijで繋いで得られる経路候補(S,Iij,R)が探索される。ステップS23では、前記経路評価部107において、前記経路候補(S,Iij,R)が通常経路Psdと比較され、送信元ノードSおよび宛先ノードDを除いて共有するAS数やリンク数が算出される。
ステップS24では、前記経路候補(S,Iij,R)の共有ASや共有リンク数が所定の条件を満足するか否かが判定される。本実施形態では、経路候補をOHDPとする条件として、図15に示したように共有AS数が「0」[同図(a)]、「1」[同図(b)]あるいは「2」[同図(c)]のように予め設定されている。
一般にdisjoint な経路とは、通常経路Psdに対して構成要素であるノードやリンクが完全に交わりを持たない最適経路として定義される。しかしながら、通信の効率や堅牢性の観点からは、ノードやリンクの一部が共有状態となる経路あっても、その共有部分が少ない場合には有用である場合も多い。そこで、本実施形態では完全にdisjointな最適経路のみならず、ノードやリンクの一部が通常経路Psdと共有状態にある準最適経路についても、所定の条件下ではdisjoint な経路とみなして、その交点ノードが経路探索の結果とされる。なお、複数経路の探索を要求されている場合にはステップS20へ戻り、ルータペアを変更しながら上記の処理が繰り返されて他の交点ノードが更に算出される。
ステップS25では、前記算出された交点ノードIijが交点DB109に登録される。本実施形態では、交点DB109において各交点ノードIに頻度情報が付加されており、登録しようとする交点ノードIが交点DB109に既登録であれば、その頻度情報が更新(例えば、交点回数のインクリメント)され、交点頻度が上位の交点ノードIのみが前記図10のステップS10において交点ASの集合Mとして利用される。
図9へ戻り、ステップS4では、前記ステップS24で判別された一ないし複数の交点ノードIが送信元ノードSへ経路応答として通知される。
次いで、前記「探索範囲絞込処理(ステップS2)」および「交点算出および経路評価処理(ステップS3)」の他の実施形態について、それぞれ図13,14のフローチャートを参照して説明する。
上記の実施形態では、disjoint な経路の探索範囲が、経路情報を公開しているBGPルータとノードペア(S,D)とを結ぶ経路のうち、交点ノードIとしての頻度が高いASを含む経路に絞り込まれるものとして説明したが、本実施形態では、disjoint な経路の探索範囲が、経路情報を公開しているBGPルータのうち、ノードペア(S,D)へ至る経路が交点ノードIとしての頻度が高いASを含むBGPルータに絞り込まれるようにしている。
図13の「探索範囲絞込処理(図9のステップS2)」において、ステップS30では、OHDPを与える確率の高いASの集合Mから、一つの交点ASが今回の注目交点ノードItとして抽出される。本実施形態でも、前記交点DB109が集合Mとされ、交点頻度の高いASから順に注目交点ノードItとして抽出される。ステップS31では、経路情報を公開しているBGPルータRの集合から一つのBGPルータが今回の注目ルータRtとして抽出される。
ステップS32,S33では、前記注目ルータRtから予め収集されて経路情報DB102に蓄積されている経路情報に基づいて、当該注目ルータRtから送信元ノードSへ至る経路P(Rt,S)、または注目ルータRtから宛先ノードDへ至る経路P(Rt,D)に前記注目交点ノードItが含まれるか否かが判定される。いずれかの経路に今回の注目交点ノードItが含まれていればステップS34へ進み、今回の注目ルータRtが絞込ルータ集合Qに登録される。
ステップS35では、所定数のBGPルータRについて上記の処理が完了したか否かが判定される。完了していなければステップS31へ戻り、注目ルータRtを変更しながら上記の処理が繰り返される。ステップS36では、集合M(交点DB109)に既登録であって交点頻度が上位である所定数(例えば、20個)の交点ノードIについて上記の処理が完了したか否かが判定される。完了していなければステップS30へ戻り、注目交点ノードItを変更しながら上記の処理が繰り返される。
以上の処理が完了すると、絞込ルータ集合Qには、多数のBGPルータのうち送信元ノードSまたは宛先ノードDに至る経路上に前記集合Mに属する交点ノードIが存在するBGPルータのみが登録されることになる。
図9へ戻り、続くステップS3では、前記絞込ルータ集合Qから抽出したルータペア(Ri,Rj)の各ルータRi,Rjからノードペア(S,D)の各ノードS,Dへ至る経路の交点ノードIを算出し、さらに送信元ノードSから当該交点ノードIを中継して宛先ノードDへ至る経路候補(S,I,D)が、通常経路Psdとdisjointな経路であるか否かを評価する「交点算出および経路評価処理」が実行される。
図14は、前記「交点算出および経路評価処理(ステップS3)」の手順を示したフローチャートである。
ステップS40では、絞込ルータ集合Qの中から2つのルータが今回の注目ルータペア(Ri,Rj)として抽出される。ステップS41では、前記図5に示したように、注目ルータペアの一方Riから宛先ノードDへ至る経路P(Ri,D)が、前記経路情報探索部104により経路情報DB102から抽出される。ステップS42では、注目ルータペアの他方Rjから送信元ノードSへ至る経路P(Rj,S)が経路情報DB102から抽出される。ステップS43では、経路P(Ri,D)と経路P(Rj,S)とが交差する交点ノードIijが前記交点算出部105において算出される。
ステップS44では、前記図6に示したように、注目ルータペアの他方Rjから宛先ノードDへ至る経路P(Rj,D)が、前記経路情報探索部104により経路情報DB102から抽出される。ステップS45では、注目ルータペアの一方Riから送信元ノードSへ至る経路P(Ri,S)が経路情報DB102から抽出される。ステップS46では、経路P(Rj,D)と経路P(Ri,S)とが交差する交点ノードIjiが前記交点算出部105において算出される。
ステップS47では、前記経路候補探索部106により、交点ノードIijを中継して送信元ノードSから宛先ノードDへ至る経路、すなわち経路P(Rj,S)を反転した経路P(S,Rj)と経路P(Ri,D)とを交点ノードIijで繋いで得られる経路候補(S,Iij,R)が探索され、さらに前記交点ノードIjiを中継して送信元ノードSから宛先ノードDへ至る経路、すなわち経路P(Ri,S)を反転した経路P(S,Ri)と経路P(Rj,D)とを交点ノードIjiで繋いで得られる経路候補(S,Iji,R)が探索される。
ステップS48では、前記経路評価部107において、経路候補(S,Iij,R)が通常経路Psdと比較され、送信元ノードSおよび宛先ノードDを除いて共有するAS数やリンク数が算出される。さらに、経路候補(S,Iji,R)についても同様に通常経路Psdと比較され、共有するAS数やリンク数が算出される。
ステップS49では、前記各経路候補(S,Iij,R),(S,Iji,R)の共有ASや共有リンク数が所定の条件を満足するか否かが判定される。本実施形態でも完全にdisjointな最適経路のみならず、ノードやリンクの一部が通常経路Psdと共有状態にある準最適経路についても、所定の条件下ではdisjoint な経路とみなして、その交点ノードが経路探索の結果とされる。なお、複数経路の探索を要求されている場合にはステップS40へ戻り、ルータペアを変更しながら上記の処理が繰り返されて他の交点ノードが更に算出される。ステップS50では、前記算出された交点ノードIij,Ijiが交点DB109に登録される。
図9へ戻り、ステップS4では、前記ステップS49で判別された一ないし複数の交点ノードIが送信元ノードSへ経路応答として通知される。
なお、上記の実施形態では、多数の交点ノードIの中から頻度の高い交点ノードIが経路応答として通知されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、各交点ノードを中継する経路のホップ数を比較し、ホップ数が少ない上位の一ないし複数の交点ノードIが送信元ノードSへ経路応答として通知されるようにしても良い。
また、上記の実施形態では、経路評価部107により複数の経路候補(S,Iij,R)が通常経路Psdと比較され、送信元ノードSおよび宛先ノードDを除いて共有するAS数やリンク数の少ない経路候補、さらにはホップ数の少ない経路候補ほど高い評価が得られるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、例えば中継したいノードや中継したくないノードが既知であれば、これらを予めポリシーベース(図示せず)に登録しておき、中継したいノードを中継しない経路候補や中継したくないノードを中継する経路候補に評価値を下げるペナルティを設定しても良い。このようにすれば、例えばバックボーンの脆弱なノードや輻輳の頻発するノードを中継しないように設定できるので、より好ましい経路を探索できるようになる。
さらに、上記の各実施形態では交点ノードの履歴に基づいて経路の探索範囲を予め絞り込み、絞り込まれた探索範囲内で経路探索が行われるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、探索範囲を絞り込まずに探索を行っても良い。あるいは最初に探索範囲を絞り込んで優先的に経路探索を行い、評価が所定の条件を満足する経路候補を探索できなかった場合のみ、探索範囲を絞り込まずに改めて探索を行うようにしても良い。
さらに、上記の各実施形態では、本発明を送信元/宛先ノード間に確立あるいは予定されている通常経路とdisjointな最適経路や準最適経路の探索を例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、送信元/宛先ノード間に新規に確立する経路(通常経路)の探索にも適用できる。
図16は、送信元/宛先ノード間に通常経路を新規に確立するシステムの構成を示した機能ブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
経路決定部110は、今回のノードペア(S,D)に関して複数の交点ノードが発見された場合に、例えば経路長(本実施形態では、ホップ数)に基づいて最良の経路を決定し、これを経路応答返信部108から送信元ノードSへ通知すると共に、当該最良の経路が中継する交点ノードIを経路情報探索部104の探索範囲絞込部104aへ通知する。
本実施形態によれば、送信元ノードSと宛先ノードDとの間に確立する経路を、tracerouteなどの経路探索用のトラヒックを新たに生じさせることなく、ルータにより収集されて一般に公開されている既知の経路情報を再利用して探索できるので、経路探索を小さな通信コストで実現できるようになる。
本発明に係る経路探索方法の基本的な考え方を示した図(その1)である。 本発明に係る経路探索方法の基本的な考え方を示した図(その2)である。 本発明の経路探索システムが適用されるネットワークの構成を示した図である。 本発明に係る経路探索システムの第1実施形態の機能ブロック図である。 交点算出部の機能を説明した図である。 交点算出部の機能を説明した図である。 探索範囲絞込部104aの作用効果を説明するための図(その1)である。 探索範囲絞込部104aの作用効果を説明するための図(その2)である。 経路探索システムの動作を示したフローチャートである。 探索範囲絞込処理(その1)の手順を示したフローチャートである。 交点算出および経路評価処理(その1)の手順を示したフローチャートである。 交点ノードが複数存在する場合の交点の選択方法を示した図である。 探索範囲絞込処理(その2)の手順を示したフローチャートである。 交点算出および経路評価処理(その2)の手順を示したフローチャートである。 経路候補の評価方法の一例を示した図である。 本発明に係る経路探索システムの他の実施形態の機能ブロック図である。
1…経路探索システム,101…経路情報収集部,102…経路情報データベース,103…経路要求受信部,104…経路情報探索部,104a…探索範囲絞込部,105…交点算出部,106…経路候補探索部,107…経路評価部,108…経路応答返信部,109…交点データベース,110…経路決定部

Claims (14)

  1. 経路探索要求に応答して送信元ノードから宛先ノードへ至る経路を探索する経路探索システムにおいて、
    ネットワーク上の複数のルータから経路情報を収集する手段と、
    前記収集した経路情報を蓄積するデータベースと、
    経路情報を収集したルータ同士のペアごとに、その一方のルータから送信元ノードへ至る経路と他方のルータから宛先ノードへ至る経路とが交差する交点ノードを算出する交点算出手段とを具備し、
    前記送信元ノードから交点ノードを中継して宛先ノードへ至る経路を探索結果とすることを特徴とする経路探索システム。
  2. 前記送信元ノードから交点ノードを中継して宛先ノードへ至る複数の経路候補を評価する評価手段をさらに具備し、
    評価の高い経路候補を探索結果とすることを特徴とする請求項1に記載の経路探索システム。
  3. 前記評価手段は、送信元ノードから宛先ノードへ至る通常経路と各経路候補とを比較し、共有する中継ノードが少ない経路候補ほど高く評価することを特徴とする請求項2に記載の経路探索システム。
  4. 前記評価手段は、送信元ノードから宛先ノードへ至る通常経路と各経路候補とを比較し、共有するリンクが少ない経路候補ほど高く評価することを特徴とする請求項2に記載の経路探索システム。
  5. 前記評価手段は、経路長の短い経路候補ほど高く評価することを特徴とする請求項2に記載の経路探索システム。
  6. 前記評価手段は、予め設定されたノードを中継する経路候補の評価を高くすることを特徴とする請求項2に記載の経路探索システム。
  7. 前記評価手段は、予め設定されたノードを中継しない経路候補の評価を高くすることを特徴とする請求項2に記載の経路探索システム。
  8. 前記評価の高い経路候補が中継する交点ノードの履歴を管理する手段と、
    前記交点ノードの履歴に基づいて経路の探索範囲を予め絞り込む探索範囲絞込手段とを具備したことを特徴とする請求項ないし7のいずれかに記載の経路探索システム。
  9. 前記探索範囲絞込手段は、経路情報を収集した各ルータから送信元ノードおよび宛先ノードへ至る各経路に交点ノードとしての履歴を有するノードが存在するか否かを判定し、各ルータから送信元ノードおよび宛先ノードへ至る経路を前記交点ノードが存在する経路に絞り込み、
    前記交点算出手段は、前記絞り込まれた経路同士の交点を算出することを特徴とする請求項8に記載の経路探索システム。
  10. 前記探索範囲絞込手段は、経路情報を収集した各ルータから送信元ノードおよび宛先ノードへ至る各経路に交点ノードとしての履歴を有するノードが存在するか否かを判定し、前記ルータを前記交点ノードが存在する経路を与えるルータに絞り込み、
    前記交点算出手段は、前記絞り込まれたルータ同士のペアごとに、送信元ノードへ至る経路と宛先ノードへ至る経路との交点を算出することを特徴とする請求項8に記載の経路探索システム。
  11. 始めに経路の探索範囲を絞り込んで探索を行い、評価が所定の条件を満足する経路候補を探索できないと、次いで経路の探索範囲を絞り込まずに探索を行うことを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の経路探索システム。
  12. 経路探索要求に応答して送信元ノードから宛先ノードへ至る経路を探索する経路探索方法において、
    ネットワーク上の複数のルータから経路情報を収集する第1手順と、
    経路情報を収集したルータ同士のペアごとに、その一方のルータから送信元ノードへ至る経路と他方のルータから宛先ノードへ至る経路とが交差する交点ノードを算出する第2手順と、
    前記送信元ノードから交点ノードを中継して宛先ノードへ至る経路候補を探索する第3手順とを含むことを特徴とする経路探索方法。
  13. 前記経路候補を評価する第4手順と、
    前記第2手順から第4手順までを繰り返して、評価が所定の基準値を超える少なくとも一つの経路候補を探索結果とする第5手順とを含むことを特徴とする請求項12に記載の経路探索方法。
  14. 前記評価が所定の基準値を超える経路候補が中継する交点ノードの履歴を管理する手順と、
    前記交点ノードの履歴に基づいて経路の探索範囲を予め絞り込む手順とを具備したことを特徴とする請求項13に記載の経路探索方法。
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