以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態》
図1は、実施形態に係る過給装置を採用したエンジン1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載されたディーゼルエンジンであって、複数の気筒11a(1つのみ図示)が設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下側に配設され、潤滑油が貯溜されたオイルパン13とを有している。このエンジン1の各気筒11a内には、ピストン14が往復動可能にそれぞれ嵌挿されていて、このピストン14の頂面には深皿形燃焼室14aを区画するキャビティが形成されている。このピストン14は、コンロッド14bを介してクランクシャフト15と連結されている。シリンダブロック11には、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW1が配設されている。
前記シリンダヘッド12には、各気筒11a毎に吸気ポート16及び排気ポート17が形成されているとともに、これら吸気ポート16及び排気ポート17の燃焼室14a側の開口を開閉する吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ配設されている。これら吸排気弁21,22をそれぞれ駆動する動弁系において、排気弁側には、当該排気弁22の作動状態を通常モードと特殊モードとに切り替える油圧作動式の可変機構(図示省略。以下、VVM(Variable Valve Motion)と称する)が設けられている。このVVMは、その詳細な図示は省略するが、カム山を1つ有する第1カムとカム山を2つ有する第2カムとの、カムプロファイルの異なる2種類のカム、及び、その第1及び第2カムのいずれか一方のカムの作動状態を選択的に排気弁に伝達するロストモーション機構を含んで構成されており、第1カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22の作動状態が、排気行程中において一度だけ開弁される通常モードとなるのに対し、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22の作動状態が、排気行程中において開弁すると共に、吸気行程中においても開弁するような、いわゆる排気の二度開きを行う特殊モードとなる。特殊モードは、内部EGRに係る制御の際に利用され得る。尚、こうした通常モードと特殊モードとの切り替えを可能にする上で、排気弁を電磁アクチュエータによって駆動する電磁駆動式の動弁系を採用してもよい。
また、前記シリンダヘッド12には、燃料を噴射するインジェクタ18と、エンジン1の冷間時に吸入空気を暖めて燃料の着火性を高めるためのグロープラグ19とが設けられている。前記インジェクタ18は、その燃料噴射口が燃焼室14aの天井面から該燃焼室14aに臨むように配設されていて、圧縮行程上死点付近で燃焼室14aに燃料を直接噴射供給するようになっている。
本実施形態の車両は、マニュアルトランスミッションを備えたMT車であって、エンジン1の駆動に伴う出力トルクは、クランクシャフト15に対しクラッチ機構71を介して連結された手動変速機72を通じて駆動輪73に伝達されることになる。尚、クラッチ機構71には、運転者が踏み込み操作をするクラッチペダル(図示省略)及び、クラッチペダルの操作量(ストローク量)を検出するクラッチペダルセンサSW10が含まれ、手動変速機52には、運転者が手動で操作するシフトレバー(図示省略)及び、シフトレバーがニュートラル位置にある(手動変速機52がニュートラル状態にあってギヤイン状態ではない)ときにオンとなるニュートラルセンサSW11が含まれる。
前記エンジン1の一側面には、各気筒11aの吸気ポート16に連通するように吸気通路30が接続されている。一方、前記エンジン1の他側面には、各気筒11aの燃焼室14aからの既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。これら吸気通路30及び排気通路40には、吸入空気の過給を行う大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62とが配設されている。
吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。一方、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク33が配設されている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒11a毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各気筒11aの吸気ポート16にそれぞれ接続されている。また、サージタンク33には、燃焼室14aに供給される空気の圧力を検出する過給圧センサSW2が配設されている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク33との間には、上流側から順に、吸入空気の温度を検出する吸気温度センサSW3と、詳しくは後述する大型及び小型ターボ過給機61,62のコンプレッサ61a,62aと、該コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気の温度を検出する過給空気温度センサSW4と、該コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気を冷却するインタークーラ35と、前記各気筒11aの燃焼室14aへの吸入空気量を調節するスロットル弁36とが配設されている。このスロットル弁36は、基本的には全開状態とされるが、エンジン1の停止時には、ショックが生じないように全閉状態とされる。
前記排気通路40の上流側の部分は、各気筒11a毎に分岐して排気ポート17の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。
この排気通路40における排気マニホールドよりも下流側には、上流側から順に、小型及び大型ターボ過給機62,61のタービン62b,61bと、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置41と、サイレンサ42とが配設されている。
この排気浄化装置41は、酸化触媒41aと、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、フィルタという)41bとを有しており、上流側から、この順に並んでいる。酸化触媒41a及びフィルタ41bは1つのケース内に収容されている。前記酸化触媒41aは、白金又は白金にパラジウムを加えたもの等を担持した酸化触媒を有していて、排気ガス中のCO及びHCが酸化されてCO2及びH2Oが生成する反応を促すものである。この酸化触媒41aが触媒を構成する。また、前記フィルタ41bは、エンジン1の排気ガス中に含まれる煤等の微粒子を捕集するものである。尚、フィルタ41bに酸化触媒をコーティングしてもよい。また、酸化触媒41aとフィルタ41bの間には、酸化触媒41aを通過した排気ガスの温度を検出する排気温度センサSW5が配設されている。
また、前記吸気通路30における前記サージタンク33とスロットル弁36との間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型コンプレッサ62aよりも下流側部分)と、前記排気通路40における前記排気マニホールドと小型ターボ過給機62の小型タービン62bとの間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりも上流側部分)とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するための排気ガス還流通路50によって接続されている。この排気ガス還流通路50は、EGRクーラ52が配設された主通路51と、主通路51から分岐してEGRクーラ52をバイパスした後、再び主通路51に合流するクーラバイパス通路53とを有している。EGRクーラ52は、流通する排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するものである。主通路51には、主通路51を流通する排気ガスの流量を調整するための排気ガス還流弁51aが配設されている。一方、クーラバイパス通路53には、クーラバイパス通路53を流通する排気ガスの流量を調整するためのクーラバイパス弁53aが配設されている。
さらに、エンジン1には、クランクシャフト15の回転角を検出する2つのクランク角センサSW6,SW7が設けられている。一方のクランク角センサSW6から出力される検出信号に基づいてエンジン回転数(回転速度)が検出されると共に、両クランク角センサSW6,SW7から出力される位相のずれた検出信号に基づいてクランク角位置が検出されるようになっている。また、エンジン1には、車両のアクセルペダル(図示省略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW8と、車両のブレーキペダル(図示省略)の操作を検出するブレーキペダルセンサSW9と、車両の速度を検出する車速センサSW12とが設けられている。
ここで、大型ターボ過給機61及び小型ターボ過給機62の構成について詳しく説明する。
大型ターボ過給機61は、吸気通路30に配設された大型コンプレッサ61aと、排気通路40に配設された大型タービン61bとを有している。大型コンプレッサ61aは、吸気通路30におけるエアクリーナ31とインタークーラ35との間(詳しくは、吸気温度センサSW3と過給空気温度センサSW4との間)に配設されている。一方、大型タービン61bは、排気通路40における排気マニホールドと酸化触媒41aとの間に配設されている。
小型ターボ過給機62は、吸気通路30に配設された小型コンプレッサ62aと、排気通路40に配設された小型タービン62bとを有している。小型コンプレッサ62aは、吸気通路30における大型コンプレッサ61aの下流側に配設されている。一方、小型タービン62bは、排気通路40における大型タービン61bの上流側に配設されている。この小型ターボ過給機62がターボ過給機を、小型コンプレッサ62aがコンプレッサを構成する。小型ターボ過給機62は、相対的に小型のものであり、大型ターボ過給機61は、相対的に大型のものである。すなわち、大型ターボ過給機61の大型タービン61bの方が小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりもイナーシャが大きい。
すなわち、吸気通路30においては、上流側から順に大型コンプレッサ61aと小型コンプレッサ62aとが直列に配設され、排気通路40においては、上流側から順に小型タービン62bと大型タービン61bとが直列に配設されている。これら大型及び小型タービン61b,62bが排気ガス流により回転し、これら大型及び小型タービン61b,62bの回転により、該大型及び小型タービン61b,62bとそれぞれ連結された前記大型及び小型コンプレッサ61a,62aがそれぞれ作動する。尚、吸気通路30における大型コンプレッサ61aと小型コンプレッサ62aとの間には、大型コンプレッサ61aで過給された吸気の圧力を検出する中間圧センサSW13が設けられている。
そして、吸気通路30には、小型コンプレッサ62aをバイパスする吸気バイパス通路63が接続されている。この吸気バイパス通路63には、該吸気バイパス通路63へ流れる空気量を調整するための吸気バイパス弁63aが配設されている。この吸気バイパス弁63aは、無通電時には全閉状態(ノーマルクローズ)となるように構成されている。これにより、吸気バイパス弁63aが故障したときに、吸気が吸気バイパス通路63を介して循環することによる小型コンプレッサ62aの過回転を防止することができる。
一方、排気通路40には、小型タービン62bをバイパスする小型排気バイパス通路64と、大型タービン61bをバイパスする大型排気バイパス通路65とが接続されている。小型排気バイパス通路64には、該小型排気バイパス通路64へ流れる排気量を調整するためのレギュレートバルブ64aが配設され、大型排気バイパス通路65には、該大型排気バイパス通路65へ流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ65aが配設されている。レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aは共に、無通電時には全開状態(ノーマルオープン)となるように構成されている。
これら大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62は、それらが配設された吸気通路30及び排気通路40の部分も含めて、一体的にユニット化されて、過給機ユニット60を構成している。この過給機ユニット60は、エンジン1に取り付けられている。そして、過給機ユニット60の吸気通路30の出口は、インタークーラ35の上流端と、ゴムホース30aを介して接続されている。つまり、インタークーラ35は、車体に取り付けられており、エンジン1に取り付けられた過給機ユニット60とは異なる振動が生じる。そこで、過給機ユニット60とインタークーラ35との異なる振動が互いに影響し合わないように、それぞれの振動をゴムホース30aで吸収するようにしている。同様の理由から、インタークーラ35の下流端と、吸気通路30のスロットル弁36の上流部分とも、ゴムホース30bを介して接続されている。
このように構成されたターボ過給機付きのエンジン1は、パワートレイン・コントロール・モジュール(以下、PCMという)10によって制御される。PCM10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマクロプロセッサで構成されている。このPCM10が制御手段を構成する。PCM10は、図2に示すように、前記センサSW1〜SW13の検出信号が入力され、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってエンジン1や車両の状態を判定し、これに応じてインジェクタ18、動弁系のVVM、各種の弁のアクチュエータへ制御信号を出力する。また、PCM10は、エンジン1の始動時に、インジェクタ18やスタータモータ(図示省略)へ制御信号を出力すると共に、必要に応じてグロープラグ19へも制御信号を出力する。さらに、PCM10は、タイミングベルト等によりクランクシャフト15に連結されたオルタネータ(図示省略)に内蔵されたレギュレータ回路に制御信号を出力することによって、車両の電気負荷及び車両バッテリの電圧等に対応した発電量の制御を実行する。
また、PCM10は、エンジンの運転状態において大型及び小型ターボ過給機61,62の動作を制御している。具体的には、PCM10は、吸気バイパス弁63a、レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aの各開度をエンジン1の運転状態に応じて設定した開度にそれぞれ制御する。
詳しくは、PCM10は、図3に示す、エンジン回転数とエンジン負荷とをパラメータとするマップにおける低負荷且つ低回転側の領域A(エンジン負荷が所定負荷(エンジン回転数が大きいほど小さくなる)以下の領域)では、吸気バイパス弁63a及びレギュレートバルブ64aを全開以外の開度とし、ウエストゲートバルブ65aを全閉状態とすることによって、大型及び小型ターボ過給機61,62の両方を作動させる。一方、高負荷且つ高回転側の領域B(エンジン負荷が前記所定負荷よりも大きい領域)では、小型ターボ過給機62が排気抵抗になるため、吸気バイパス弁63a及びレギュレートバルブ64aを全開状態とし、ウエストゲートバルブ65aを全閉状態に近い開度にすることによって、小型ターボ過給機62をバイパスさせて大型ターボ過給機61のみを作動させる。尚、ウエストゲートバルブ65a、過回転を防止するために少し開き気味に設定している。
また、PCM10は、酸化触媒41aが未活性状態のときには、レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aの少なくとも一方を開状態にすることによって、酸化触媒41aを活性化させる。例えば、ウエストゲートバルブ65aを開状態にすることによって、排気が大型タービン61bをバイパスして、酸化触媒41aへ流入する。つまり、排気熱が大型タービン61bで放熱されることなく、酸化触媒41aまで運搬されることになる。その結果、酸化触媒41aの温度が早期に上昇して、酸化触媒41aが活性化する。
本実施形態では、PCM10は、燃費の低減やCO2の排出抑制等を目的として、所定の自動停止条件が成立したときにエンジン1を自動停止させると共に、その後、所定の始動条件が成立したときにエンジン1を再始動させるように、いわゆるアイドルストップ制御を行う。
具体的には、PCM10は、自動停止条件が成立すると、インジェクタ18による燃料の噴射を停止させる。例えば、ブレーキペダルセンサSW9の検出信号に基づいて判定されるブレーキペダルの踏み込み操作が所定時間継続すると共に、車速センサSW12の検出信号に基づいて判定される車速が予め設定した微低速(例えば、時速2〜5km)以下となって車両が実質、停止していることを、自動停止条件とすることができる。この自動停止の際には、スロットル弁36の開閉制御及びオルタネータ制御を併せて行うことにより、エンジン1の再始動に適したピストン位置でエンジン1を停止させるようにする。
その後、始動条件が成立すると、PCM10は、各気筒11aへの燃料供給を開始して、その燃焼によりエンジン1を短時間で再始動させる(いわゆる、燃焼始動)。本実施形態では、PCM10は、それと共に、スタータモータを駆動させることによって気筒内の圧力を高めている。また、例えば、車両バッテリの残容量が少なくなって充電が必要になったこと、空調装置のコンプレッサの作動が必要になったこと、又はアクセル開度センサSW8若しくはクラッチペダルセンサSW10からの検出信号に基づいて乗員によるアクセル操作若しくはクラッチ操作が検出されたこと等を、始動条件とすることができる。この内、車両バッテリの残容量が少なくなって充電が必要になったことや、空調装置のコンプレッサの作動が必要になったことは、発進要求を伴わない始動条件ということができ、逆に、アクセル操作若しくはクラッチ操作が検出されたことは、発進要求を伴う始動条件ということができる。
本実施形態では、前記アイドルストップ制御の再始動時も含めて、車両の停止状態から発進するときには、所定の発進制御を行っている。以下に、PCM10による発進制御について、図4のフローチャート及び図5,6のタイミングチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップSa1において、車両が停止中か否かを判定する。この判定は、例えば、車速センサSW12の検出信号に基づいて判定することができる。そして、車両が停止しているときには、ステップSa2へ進む一方、車両が停止していないときには、リターンへ進む。
ステップSa2においては、アイドリング(アイドル運転)が停止しているか否かを判定する。この判定は、例えば、クランク角センサSW6の検出信号に基づいて判定することができる。そして、アイドリングが停止しているときにはステップSa3へ進む一方、アイドリングが停止していない、即ち、アイドル運転中のときはステップSa10へ進む。
ステップSa3においては、再始動要求があったか否か、即ち、始動条件が成立したか否かを判定する。始動条件が成立したときにはステップSa4へ進む一方、始動条件が成立していないときにはステップSa3を繰り返し、始動条件が成立するまで待機する。
ステップSa4においては、前述の如く、燃料供給を開始してエンジン1を燃焼始動させる。続いて、ステップSa5において、発進要求があったか否かを判定する。すなわち、成立した始動条件が発進要求を伴うものであったか否かを判定する。ここで、発進要求とは、発進しようとする乗員の意思表示であって、例えば、クラッチペダルの踏み込み等の加速準備操作の有無等によって判定することができる。そして、発進要求があったときにはステップSa6へ進む一方、発進要求がないときにはステップSa10へ進む。つまり、発進要求を伴わない再始動のときは、エンジン1の始動後、アイドル運転へと移行するため、ステップSa10へ進む。このステップSa10は、ステップSa2においてアイドル運転中と判定された場合のステップである。
そして、発進要求があったときには、ステップSa6においてスロットル弁36の絞り制御を行う。具体的には、スロットル弁36を所定の絞り値まで絞る。この所定の絞り値は、エンジン1の燃焼始動を実行でき且つエンジン1の運転を維持できる値又はそれ以上の値である。
スロットル弁36が絞られると、吸気量が減少する。小型タービン62bへの入力エネルギが同等だとすると、吸気量が減少したときには、図7に示すように、圧力比が増大し、吸気の流速が上昇する。その結果、小型コンプレッサ62aも回転速度が上昇する。こうして、小型コンプレッサ62aの回転速度が早期に上昇する。
このようにステップSa3〜Sa6では、アイドリングストップ中に始動条件が成立したときに、それが発進要求を伴う場合には、エンジン1を燃焼始動させると共にスロットル弁36を絞る一方、それが発進要求を伴わない場合には、エンジン1を燃焼始動させて(スロットル弁36を絞ることなく)アイドル運転に移行する。
その後、ステップSa7において、スロットル弁36を絞った後、所定の継続時間が経過したか否かを判定する。この所定の継続時間は、例えば、小型コンプレッサ62aの回転速度が前記スロットル弁36の絞り量に応じた回転速度まで上昇するのに要する時間に設定されている。換言すれば、ステップSa7では、小型コンプレッサ62aの回転速度がスロットル弁36の所定の絞り値に応じた回転速度まで上昇したか否かを判定している。そして、該継続時間が経過しているときには、ステップSa9へ進む一方、該継続時間が経過していないときには、ステップSa8へ進む。
ステップSa8においては、クラッチミート状態か否かを判定する。この判定は、例えば、クラッチペダルセンサSW10の検出信号に基づいて判定することができる。すなわち、クラッチペダルセンサSW10の検出信号からクラッチペダルのストローク量を求め、そのストローク量が所定値未満となると、クラッチミートと判定する。この所定量は、クラッチミートと判定できるストローク量に設定することができる。それと共に、アクセルがONか否か、即ち、アクセルペダル踏み込まれているか否かを判定する。この判定は、例えば、アクセル開度センサSW8の検出信号に基づいて行うことができる。つまり、ステップSa8では、乗員による加速操作が実行されたか否かを判定している。そして、クラッチミートとなり且つアクセルがONのとき(加速操作が実行されたとき)には、ステップSa9へ進む一方、クラッチミートとなっていないか又はアクセルがONでないとき(加速操作が実行されていないとき)には、ステップSa7へ戻り、ステップSa7,8を繰り返す。
そして、ステップSa9においては、スロットル弁36を全開状態にする。こうして、スロットル弁36の絞り制御を完了すると共に、発進制御を完了して、リターンする。
つまりステップSa7〜9では、スロットル弁36の絞り制御の停止条件を判定している。具体的には、小型コンプレッサ62aの回転速度がスロットル弁36の所定の絞り値に応じた回転速度まで上昇したか否か、及び、乗員が加速操作を実行したか否かを監視している。そして、何れか一方の条件が成立したときに、スロットル弁36の絞り制御を停止している。
例えば、アイドリングストップ中に乗員によるクラッチ操作があったときには、図5(A)のTa1に示すように、クラッチペダルのストローク(踏み込み量)が所定量となったときに、始動条件成立と判定する。この所定量は、例えば、クラッチ機構71が解放されシフトレバーの操作が可能となる程度の量等、ギヤイン状態へ移行する準備が実行されたと判定できる値に設定することができる。始動条件が成立すると、エンジン1を燃焼始動させる。エンジン1が始動すると、図5(E)のTa1に示すように、エンジン回転数が上昇していく。それと共に、クラッチ操作による始動条件の成立なので、発進要求があったと判定し、図5(D)のTa1に示すように、スロットル弁36の絞り制御が行われる。このエンジン1の始動とスロットル弁36の絞り制御は略同時に行われる。尚、エンジン1の始動を待ってからスロットル弁36の絞り制御を開始してもよい。
その後、実際に発進するための加速操作が行われる。つまり、図5(C)のTa2に示すように、シフトレバーがニュートラル位置から所望のシフト位置へ操作され、図5(B)のTa3に示すように、アクセルペダルが踏み込まれ、図5(A)のTa4に示すように、踏み込まれていたクラッチペダルが戻され、クラッチミート状態になる。その結果、図5(E)のTa4に示すように、エンジン回転数が上昇していく。本実施形態では、クラッチミートとなり且つアクセルペダルが踏み込まれているときに加速操作が実行されたと判定する。この例では、時間的に後に行われる、クラッチミートのときに加速操作が実行されたと判定している。加速操作の実行が検出されると、図5(D)のTa4に示すように、スロットル弁36が全開状態にされる。つまり、クラッチミートとなってエンジン回転数が上昇し始めるのと略同時にスロットル弁36が全開状態にされる。そのため、加速時には十分な吸気量が確保され、加速を良好に行うことができる。また、これに先立った絞り制御によって小型コンプレッサ62a及び小型タービン62bの回転速度が或る程度、上昇しているため、小型コンプレッサ62aを容易に回転駆動することができ、アクセルペダルの操作に応じて吸気を応答性よく過給することができる。
尚、この例では、アクセルONとクラッチミートの両方が成立することにより加速操作があったと判定しているが、アクセルON及びクラッチミートの何れかがあったときに加速操作があったと判定してもよい。ただし、クラッチミート後に初めて車両が加速されるため、クラッチミートを加速操作の判定の条件に入れることによって、車両が加速される直前までスロットル弁36の絞り制御を行うことができ、絞り制御の時間を長くすることができる。
一方、アイドリング中の場合は、ステップSa10において、ギヤイン状態か否かを判定する。このギヤイン状態は、シフトレバーセンサSW11からの検出信号がOFFとなることによって判定することができる。つまり、ステップSa10では、アイドリング中に加速準備操作などの発進要求があったか否かを判定する。そして、ギヤイン状態となったときには、ステップSa6へ進む一方、ギヤイン状態でないときには、ステップSa10を繰り返して、ギヤイン状態となるまで待機する。このステップSa10は、アイドリングストップ中に発進要求を伴わない始動条件が成立した後も実行される。つまり、ステップSa10は、アイドル運転状態において行われるステップである。尚、アイドリング中の発進要求の判定は、ギヤイン状態に基づくものに限られない。発進要求を判定できる限りにおいては、様々な事象を発進要件成立の条件とすることができ、例えば、始動条件成立時の発進要求の有無のように、クラッチ操作に基づいて発進要求の有無を判定してもよい。
その後のステップSa6以降のフローは、アイドリングストップ中に発進要求を伴う始動条件が成立した場合のフローと同様である。
例えば、アイドリングストップ中に空調装置のコンプレッサの作動が必要になったときには、図6(E)のTb1に示すように、エンジン1が燃焼始動され、エンジン回転数が上昇していき、やがて、アイドリング状態となる。その後、乗員が車両を発進させようとするときには、図6(A)のTb2に示すように、クラッチペダルを踏み込み、図6(C)のTb3に示すように、シフトレバーがニュートラル位置から所望のシフト位置へ操作される。こうして、加速のための加速準備操作が行われる。本実施形態では、シフトレバーのニュートラル位置からの操作があったときに加速準備操作があったと判定して、図6(D)のTb3に示すように、スロットル弁36の絞り制御を行う。その後、図6(B)のTb4に示すように、アクセルペダルが踏み込まれ、図6(A)のTb5に示すように、踏み込まれていたクラッチペダルが戻され、クラッチミート状態になる。こうして、実際に加速操作が行われる。クラッチミートの検出により加速操作の実行が判定されると、図6(D)のTb5に示すように、スロットル弁36を全開状態にする。
つまり、車両がアイドリング状態から発進する場合であっても、加速準備操作が行われたとき(本実施形態では、ギヤイン状態になったとき)に、加速操作に先立って、絞り制御によって小型コンプレッサ62a及び小型タービン62bの回転速度を或る程度上昇させておくことができる。そして、実際に加速操作が行われたときには、小型コンプレッサ62a及び小型タービン62bの回転速度が既に或る程度上昇しているため、該小型タービン62bを容易に回転駆動することができ、吸気を応答性よく過給することができる。このとき、スロットル弁36を全開状態にすることによって吸気量を十分に確保して、良好な加速を行うことができる。
したがって、本実施形態によれば、発進要求があったときにスロットル弁36を一時的に絞ることによって、小型コンプレッサ62aの回転速度を上昇させることができるため、加速時には加速操作に対して応答性よく小型タービン62b及び小型コンプレッサ62aを回転させて、吸気を過給することができる。こうして、発進性能及び加速性能を向上させることができる。
特に、アイドリングストップ状態からの発進時においては、小型タービン62b及び小型コンプレッサ62aが停止しているため、小型タービン62bを回転駆動させるのに大きなエネルギが必要となる。本実施形態では、発進時の加速に先だって、又は加速の初期にスロットル弁36を一時的に絞ることにより、小型タービン62b及び小型コンプレッサ62aの回転速度を早期に上昇させることによって、アイドリングストップ状態からの発進時における発進性能及び加速性能を向上させることができる。
また、このときのスロットル弁36の絞りは一時的であり、スロットル弁36はいずれは全開状態となるため、加速時には十分な吸気量を確保することができ、良好な加速を実現することができる。
−変形例−
以下に、本実施形態の変形例について説明する。変形例に係る車両は、オートマチックトランスミッションを備えたAT車である。AT車の場合には、始動条件の成立・不成立、発進要求の有無や、加速準備操作の有無、加速操作の有無が、MT車と異なる。そこで、AT車の発進制御について、図8のフローチャート及び図9,10のタイミングチャートを参照しながら説明する。
AT車の発進制御の基本的な流れは、MT車の発進制御と同様である。ただし、具体的な始動条件や、発進要求や、加速準備操作や、加速操作の内容が、AT車とMT車とでは異なる。
詳しくは、ステップSb1,2は、MT車のステップSa1,2と同じである。そして、ステップSb3において、始動条件が成立したか否かを判定する。AT車においては、クラッチ操作の代わりに、ブレーキペダルの操作が解除されたことを始動条件とすることができる。このブレーキペダル操作の解除は、ブレーキペダルセンサSW9の検出信号に基づいて判定することができる。ブレーキペダル操作の解除は、発進要求を伴う始動条件である。尚、AT車であっても、車両バッテリの残容量が少なくなって充電が必要になったことや、空調装置のコンプレッサの作動が必要になったことは、発進要求を伴わない始動条件となる。
ステップSb4においては、MT車のステップSa4と同様に、エンジン1を再始動させる。そして、ステップSb5においては、MT車のステップSa5と同様に、成立した始動条件が発進要求を伴うものであったか否かを判定する。そして、発進要求があったときにはステップSb6へ進む一方、発進要求がないときにはステップSb10へ進む。
ステップSb6及びその後のステップSb7は、MT車のステップSa6,7と同様に、スロットル弁36を絞り、所定の継続時間が経過したか否かを判定する。そして、該継続時間が経過しているときには、ステップSb9へ進む一方、該継続時間が経過していないときには、ステップSb8へ進む。
ステップSb8においては、MT車のステップSa8と同様に、加速操作が実行されたか否かを判定する。ただし、加速操作の内容が、MT車の場合と異なる。具体的には、アクセル開度センサSW8の検出信号に基づいてアクセル開度が所定値α以上となったか否か、又は、クランク角センサSW6の検出信号に基づいてエンジン回転数が所定値β以上となったか否かを判定する。このアクセル開度の所定値αは、乗員が加速を行うべくアクセルペダルを踏み込んだと判定できるアクセル開度に設定することができる。また、エンジン回転数の所定値βは、乗員が加速を行うべくアクセルペダルを踏み込んだと判定できるエンジン回転数に設定することができる。そして、アクセル開度が所定値α以上となるか又はエンジン回転数が所定値β以上となったときには、ステップSb9へ進む一方、アクセル開度が所定値α以上とならず且つエンジン回転数が所定値β以上とならないときには、ステップSb7へ戻り、ステップSb7,8を繰り返す。
ステップSb9では、MT車のステップSa9と同様に、スロットル弁36を全開状態にする。
一方、アイドリング中の発進要求を判定するステップSb10においては、発進要求を判定する事象がMT車と異なる。具体的には、ブレーキペダル操作の解除の有無で発進要求の有無を判定する。つまり、ステップSb10は、ステップSb5と同様であり、ブレーキペダル操作の解除があったときには、発進要求があったとして、ステップSb6へ進む一方、ブレーキペダル操作の解除がない(即ち、ブレーキペダルが踏み込まれたまま)ときには、発進要求がないとして、ステップSb10を繰り返す。
例えば、図9(A)のTc1に示すように、アイドリングストップ中に乗員によるブレーキ操作の解除があったときには、ブレーキペダルセンサSW9からの検出信号がOFFとなり、始動条件が成立したと判定する。始動条件が成立すると、エンジン1を燃焼始動させる。エンジン1が始動すると、図9(D)のTc1に示すように、エンジン回転数が上昇していく。それと共に、ブレーキ操作の解除による始動条件の成立なので、発信要求があったと判定し、図5(C)のTc1に示すように、スロットル弁36の絞り制御が行われる。スロットル弁36が絞られると、吸気量が減少することによって、圧力比が増大して、吸気の流速が上昇する。その結果、小型コンプレッサ62aも回転速度が上昇する。こうして、小型コンプレッサ62aの回転速度が早期に上昇する。
その後、図9(B)のTc2に示すように、加速操作、即ち、アクセルペダルの踏み込みが実行される。そして、図9(B)のTc3に示すように、アクセル開度が所定値以上になると、加速操作が実行されたと判定し、図9(C)のTc3に示すように、スロットル弁36を全開状態にする。その結果、アクセルペダルが踏み込まれてエンジン回転数が上昇しはじめるのと略同時にスロットル弁36が全開状態にされる。そのため、加速時には十分な吸気量が確保され、加速を良好に行うことができる。また、これに先だった絞り制御によって小型コンプレッサ62a及び小型タービン62bの回転速度が或る程度、上昇しているため、小型コンプレッサ62aを容易に回転駆動することができ、アクセルペダルの操作に応じて吸気を応答性よく過給することができる。
一方、アイドリングストップ中に空調装置のコンプレッサの作動が必要になったときには、図10(D)のTd1に示すように、エンジン1が燃焼始動され、エンジン回転数が上昇していき、やがて、アイドリング状態となる。その後、乗員が車両を発進させようとするときには、図10(A)のTd2に示すように、ブレーキペダルの踏み込みが解除される。ブレーキペダルの踏み込みの解除があったときには、加速準備操作があったと判定して、図10(C)のTd2に示すように、スロットル弁36の絞り制御を行う。その後、図10(B)のTd3に示すように、アクセルペダルが踏み込まれ、実際に加速操作が行われる。その結果、図10(E)のTd3に示すように、エンジン回転数が上昇していく。図10の例では、アクセル開度が所定値以上となる前に、エンジン回転数が所定値以上となることによって加速操作が実行されたと判定する。よって、エンジン回転数が所定値以上となったタイミング(Td4)でスロットル弁36を全開状態にする。
つまり、車両がアイドリング状態から発進する場合であっても、加速準備操作が行われたとき(本変形例では、ブレーキペダル操作が解除されたとき)に、加速操作に先立って、絞り制御によって小型コンプレッサ62a及び小型タービン62bの回転速度を或る程度上昇させておくことができる。そして、実際に加速操作が行われたときには、スロットル弁36を全開状態にすることによって吸気量を十分に確保すると共に、回転速度が既に或る程度上昇している小型タービン62bに排気エネルギを与えて、吸気を応答性よく過給することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
例えば、以上の説明ではディーゼルエンジンについて説明したが、本実施形態をディーゼルエンジンだけでなく、ガソリンエンジンに適用してもよい。
また、前記実施形態では、大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62とを有する多段ターボ過給システムを備えているが、これに限られるものではない。すなわち、ターボ過給機は1つであってもよいし、さらなるターボ過給機を備えていてもよい。
また、前記実施形態では、アイドリングストップ中において発進要求が検出されたときにすぐにスロットル弁36の絞り制御を実行しているが、これに限られるものではない。例えば、アイドリングストップ中に発進要求が検出された後、エンジン1が始動され、完爆が完了したことを待ってからスロットル弁36の絞り制御を実行してもよい。この完爆判定は、例えば、クランク角センサSW6の検出信号からのエンジン回転数に基づいて行うことができる。あるいは、完爆判定は、燃料供給の開始からの経過時間によっても判定することができる。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。