本発明は、周辺質結合タンパク質(GGBP)よりも高い融解温度(Tm)を有する、機能性の修飾されたGGBPに関する。
グルコースーガラクトース結合タンパク質は、周知のクラスの周辺質結合タンパク質のメンバーであり、これらのタンパク質は、タンパク質のアミノ酸配列(一次構造)ではなく、むしろ三次元の立体配置(三次構造)を特徴とする。このクラスの各メンバーは、特徴的なローブ−ヒンジ−ローブ(lobe-hinge-lobe)のモチーフを有する。参照によって本明細書に組み入れられている非特許文献1を参照されたい。PBPは、通常、PBPのローブ間の間隙領域(cleft region)において、分析物に特異的に結合する。さらに、間隙領域において分析物に結合すると、次いで、PBPの立体構造の変化(conformational change)が生じ、これによって、分析物の分析が可能になる。一般に、分析物との特異的な結合後のPBPの立体構造の変化は、2つのローブ領域が、ヒンジ領域の周りでおよびヒンジ領域を介して、互いの方向に向かって曲がることを特徴とする。参照によって組み入れられている非特許文献2を参照されたい。PBPの例には、これらに限定されないが、グルコース−ガラクトース結合タンパク質(GGBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、リボース結合タンパク質(RBP)、アラビノース結合タンパク質(ABP)、ジペプチド結合タンパク質(DPBP)、グルタミン酸結合タンパク質(GluBP)、鉄結合タンパク質(FeBP)、ヒスチジン結合タンパク質(HBP)、リン酸結合タンパク質(PhosBP)、グルタミン結合タンパク質(QBP)、ロイシン結合タンパク質(LBP)、ロイシン−イソロイシン−バリン−結合タンパク質(LIVBP)、オリゴペプチド結合タンパク質(OppA)、またはそれらの誘導体、ならびに周辺質結合タンパク質様タンパク質I(PBP様I)および周辺質結合タンパク質様タンパク質II(PBP様II)として知られているタンパク質のファミリーに属するその他のタンパク質が含まれる。
本発明の目的では、グルコース−ガラクトース結合タンパク質(GGBP)は、本明細書に記載するこれらの構造的な特徴を有し、グルコースおよび/またはガラクトースに特異的に結合することができるタンパク質のいずれをも含む。
特に、本発明は、GGBPのうちの修飾したものに関する。「修飾タンパク質」は、参照タンパク質またはポリペプチドの一次構造(アミノ酸配列)中の1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失または置換によって生み出すことができるタンパク質を意味するために使用する。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用する。参照タンパク質は、野生型タンパク質である必要はないが、熱安定性を高める目的で修飾の標的とする、いずれかのタンパク質であることができる。したがって、参照タンパク質は、配列が、野生型タンパク質から前もって修飾されたタンパク質であることができる。もちろん、参照タンパク質は、特定の生物体からの野生型タンパク質であっても、またはそうでなくてもよい。さらに、「野生型タンパク質」という用語は、「リーダー配列」を有する野生型タンパク質または「リーダー配列」を有しない野生型タンパク質を含む。
本発明の修飾GGBPは、機能性および熱安定性を有する。本明細書で使用する場合、機能性の修飾GGBPは、対象の分析物に特異的に結合することが可能である。特に、分析物が修飾GGBPに結合すると、特徴的な「リガンドが媒介してヒンジを曲げる動き(ligand−mediated−hinge−bending motion)」が生じ、これは、野生型GGBPが分析物に結合する場合に認められるもの、すなわち、2つのローブ領域がヒンジ領域を介して互いの方向に向かって曲がるのに類似する。非特許文献1を参照されたい。しかし、ローブ領域の動きの程度は、野生型GGBPの場合と同一である必要はない。
1つの例では、本発明の修飾ポリペプチドは、修飾GGBPであることができ、参照タンパク質中の「表面」アミノ酸が変異している。タンパク質の「表面アミノ酸」という句は、当技術分野での使用に従って使用し、一般に、溶媒またはその他の環境に暴露することができる、折り畳まれたタンパク質の残基を意味するために使用する。したがって、本発明の1つの具体的な実施形態は、参照GGBPの1つまたは複数の表面残基が変異している修飾GGBPに関する。特に、表面アスパラギン残基および表面グルタミン残基を、置換の標的とすることができる。例を挙げると、例えば、配列番号1のアスパラギン39(N39)、アスパラギン84(N84)、アスパラギン130(N130)、アスパラギン200(N200)、アスパラギン226(N226)、アスパラギン259(N259)、アスパラギン260(N260)、アスパラギン271(N271)、アスパラギン283(N283)、およびアスパラギン302(N302)の位置に対応しているアスパラギン残基を、置換の標的とすることができる。同様に、それに加えてまたはそれに代わって、例えば、配列番号1のグルタミン51(Q51)、グルタミン83(Q83)、グルタミン175(Q175)、グルタミン177(Q177)、およびロイシン178(L178)の位置に対応しているグルタミン残基もまた置換の標的とすることができる。修飾の標的とすることができる表面アミノ酸の例には、これらに限定されないが、図3に図解する残基が含まれる。また、その他の表面残基を、置換のために、例えば、(ワールドワイドウェブ上のwww.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgiで利用できる)NCBIの分子モデリングのデータベース(MMDB)のアクセッション記録番号2GBPに基づいて選択することもできる。したがって、本発明の1つの具体的な実施形態は、参照GGBP中の少なくとも1つの表面グルタミンのアミノ酸が変異している修飾GGBPに関する。本発明の別の具体的な実施形態は、参照GGBP中の少なくとも1つの表面アスパラギンのアミノ酸が変異している修飾GGBPに関する。本発明のさらに別の具体的な実施形態は、参照GGBP中の少なくとも1つの表面グルタミンのアミノ酸および1つの表面アスパラギンのアミノ酸が変異している修飾GGBPに関する。もちろん、本発明の修飾GGBPは、追加の修飾も含んでよく、表面のアスパラギンおよびグルタミンのみが、修飾の標的となる必要はない。
追加の実施形態では、アミノ酸は、ペプチドまたはタンパク質中の残基のアミド分解(deamidation)またはアミド分解の可能性に基づいて変異のために標的化される。当業者であれば認識しているように、アミド分解は、アミド基が変化する化学反応である。ペプチドに関しては、アミド分解は、アミド含有アミノ酸を含有するタンパク質またはペプチドの官能基を、分解または破壊することができる可能性がある。アミド含有アミノ酸の例には、これらに限定されないが、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。アミド分解は、一般に、温度およびpHが上昇すると、より急速に起きる。したがって、アミド分解の過程は、ペプチドおよびタンパク質を、熱により不活性化されやすくする。参照によって組み入れられている非特許文献3を参照されたい。したがって、1つの実施形態では、アミド分解を起こしやすいアミノ酸を、置換または欠失の標的とする。アミド分解を起こしやすいアミノ酸を決定するために使用する方法によって、本発明の範囲が限定されてはならない。1つの具体的な実施形態では、フーリエ変換質量分析(FTMS)を使用して、アスパラギン残基等の感受性の残基における相対的なアミド分解を測定することができる。
本明細書で使用する場合、「に対応する(correspond(s) to)」および「に対応している(corresponding to)」という用語は、配列アライメントに関する場合には、参照タンパク質、例えば、野生型大腸菌(E.coli)GGBP内の掲げられた位置、および参照タンパク質上の位置に整列する修飾GGBP中の位置を意味することを意図する。したがって、対象のGGBPのアミノ酸配列を、参照GGBP、例えば、配列番号1のアミノ酸配列と整列させると、参照GGBP配列の掲げられた特定の位置「に対応する」、対象のGGBPの配列中のアミノ酸は、参照GGBP配列のこれらの位置に整列するアミノ酸であるが、参照GGBP配列のこれらのぴったりの番号の位置に必ずしも存在するとは限らない。配列間の対応しているアミノ酸を決定する目的で配列を整列させるための方法を、以下に記載する。
本発明の1つの実施形態では、修飾GGBPは、大腸菌(E.coli)からの修飾野生型GGBPである。したがって、この実施形態では、修飾GGBPの参照タンパク質は、以下の配列番号1のアミノ酸配列を含む野生型GGBPであり、The National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースから、GenBankアクセッション番号2GBPとして利用でき、その全記録は参照によって組み入れられている。NCBI GenBankデータベースは、ワールドワイドウェブ上のwww.ncbi.nih.gov/Genbankに存在する。
特定の実施形態では、修飾GGBPは、配列番号1の以下の残基のうちの1つまたは複数に対応している位置において、1つまたは複数の残基の置換を含む:チロシン12(Y12)、アスパラギン15(N15)、アスパラギン39(N39)、セリン41(S41)、アスパラギン43(N43)、アスパラギン49(N49)、アスパラギン酸50(D50)、グルタミン51(Q51)、イソロイシン52(I52)、グリシン82(G82)、グルタミン83(Q83)、アスパラギン84(N84)、アラニン128(A128)、アラニン129(A129)、アスパラギン130(N130)、グルタミン131(Q131)、グリシン132(G132)、トロプトファン133(W133)、グルタミン175(Q175)、グルタミン177(Q177)、ロイシン178(L178)、グリシン198(G198)、プロリン199(P199)、アスパラギン200(N200)、アスパラギン202(N202)、リジン203(K203)アスパラギン226(N226)、アスパラギン259(N259)、アスパラギン260(N260)、アスパラギン酸267(D267)、アラニン269(A269)、リジン270(K270)、アスパラギン271(N271)、アスパラギン283(N283)、トリプトファン284(W284)およびアスパラギン302(N302)。
本発明の別の実施形態では、修飾GGBPは、大腸菌(E.coli)からの修飾野生型GGBPであり、野生型GGBPは、天然のリーダー配列を有する。したがって、この実施形態では、修飾GGBPの参照タンパク質は、以下の配列番号2のアミノ酸配列を含み、GenBankアクセッション番号P02927として利用でき、その全記録は参照によって組み入れられている。
特定の実施形態では、修飾GGBPは、配列番号2の以下の残基のうちの1つまたは複数に対応している位置において、1つまたは複数の残基の置換を含む:チロシン35(Y35)、アスパラギン38(N38)、アスパラギン62(N62)、セリン64(S64)、アスパラギン66(N66)、アスパラギン72(N72)、アスパラギン酸73(D73)、グルタミン74(Q74)、イソロイシン75(I75)、グリシン105(G105)、グルタミン106(Q106)、アスパラギン107(N107)、アラニン151(A151)、アラニン152(A152)、アスパラギン153(N153)、グルタミン154(Q154)、グリシン155(G155)、トリプトファン156(W156)、グルタミン198(Q198)、グルタミン200(Q200)、ロイシン201(L201)、グリシン221(G221)、プロリン222(P222)、アスパラギン223(N223)、アスパラギン202(N225)、リジン226(K226)アスパラギン249(N249)、アスパラギン282(N282)、アスパラギン283(N283)、アスパラギン酸290(D290)、アラニン292(A292)、リジン293(K293)、アスパラギン294(N294)、アスパラギン306(N306)、トリプトファン307(W307)およびアスパラギン325(N302)。
本発明の別の実施形態では、修飾GGBPは、すでに修飾されているGGBPが、さらに修飾されたものであり、このすでに修飾されているGGBPは、野生型(大腸菌(E.coli))GGBPと比較して3つのアミノ酸の置換を有し、「3M−GGBP」と名付けられている。配列番号1と比較してE149C、A213R、L238Sに対応している置換を有する3M−GGBPの構築は、参照によって組み入れられている特許文献1に記載されている。したがって、この実施形態では、修飾GGBPの参照タンパク質は、以下の配列番号3のアミノ酸配列を含む3M−GGBPである。
特定の実施形態では、修飾GGBPは、配列番号3の以下の残基のうちの1つまたは複数に対応している位置において、1つまたは複数の残基の置換を含む:チロシン12(Y12)、アスパラギン15(N15)、アスパラギン39(N39)、セリン41(S41)、アスパラギン(N43)、アスパラギン49(N49)、アスパラギン酸50(D50)、グルタミン51(Q51)、イソロイシン(I52)、グリシン82(G82)、グルタミン83(Q83)、アスパラギン84(N84)、アラニン128(A128)、アラニン129(A129)、アスパラギン130(N130)、グルタミン(Q131)、グリシン132(G132)、トリプトファン133(W133)、グルタミン175(Q175)、グルタミン177(Q177)、ロイシン178(L178)、グリシン198(G198)、プロリン199(P199)、アスパラギン200(N200)、アスパラギン(N202)、リジン(K203)アスパラギン226(N226)、アスパラギン259(N259)、アスパラギン260(N260)、アスパラギン酸267(D267)、アラニン269(A269)、リジン270(K270)、アスパラギン271(N271)、アスパラギン283(N283)、トリプトファン284(W284)およびアスパラギン302(N302)。
本発明の別の実施形態では、修飾GGBPは、すでに修飾されているGGBPが、さらに修飾されたものであり、このすでに修飾されているGGBPは、野生型(大腸菌(E.coli))GGBPと比較してトリプトファン183のシステイン(W183C)への単一のアミノ酸置換を有し、「W183C−GGBP」または「W183」と名付けられている。したがって、この実施形態では、修飾GGBPの参照タンパク質は、以下の配列番号4のアミノ酸配列を含むW183C−GGBPである。
特定の実施形態では、修飾GGBPは、配列番号4の以下の残基のうちの1つまたは複数に対応している位置において、1つまたは複数の残基の置換を含む:チロシン12(Y12)、アスパラギン15(N15)、アスパラギン39(N39)、セリン41(S41)、アスパラギン(N43)、アスパラギン49(N49)、アスパラギン酸50(D50)、グルタミン51(Q51)、イソロイシン(I52)、グリシン82(G82)、グルタミン83(Q83)、アスパラギン84(N84)、アラニン128(A128)、アラニン129(A129)、アスパラギン130(N130)、グルタミン(Q131)、グリシン132(G132)、トリプトファン133(W133)、グルタミン175(Q175)、グルタミン177(Q177)、ロイシン178(L178)、グリシン198(G198)、プロリン199(P199)、アスパラギン200(N200)、アスパラギン(N202)、リジン(K203)アスパラギン226(N226)、アスパラギン259(N259)、アスパラギン260(N260)、アスパラギン酸267(D267)、アラニン269(A269)、リジン270(K270)、アスパラギン271(N271)、アスパラギン283(N283)、トリプトファン284(W284)およびアスパラギン302(N302)。
いくつかの実施形態では、野生型または参照タンパク質上での修飾の標的とする各アミノ酸は、標的部位において単一のアミノ酸で置換することによって修飾され、その結果、1つまたは複数の置換が、一対一の様式で起きる。例えば、野生型大腸菌(E.coli)GGBP(配列番号1)の39位のアスパラギンを、異なるアミノ酸、例えば、イソロイシンまたはバリンで置換することによって修飾することができる。その他の実施形態では、2つ以上のアミノ酸が、標的部位でかつ標的部位に隣接して(しかし必ずしも直接隣接する必要はない)置換されており、その結果、野生型または参照タンパク質上での「座位」が変異している。例えば、野生型大腸菌(E.coli)GGBP(配列番号1)の83位のグルタミンを、参照GGBPの83位を中心にして、2つ以上のアミノ酸で置換することによって修飾することができる。すなわち、83位の単一のグルタミンを標的とする置換において、グルタミン酸、リジンおよびアスパラギン酸でそれぞれ82〜84位において置換することができる。
また、本発明は、修飾GGBPの参照タンパク質が、配列番号1、2、3または4のアミノ酸配列と、少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む、修飾GGBPも意図する。特異的な実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号1、2、3または4のアミノ酸配列と、少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%および99%同一である。その他の実施形態では、参照GGBPは、これらに限定されないが、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、スルフォロバス・ソルファタリカス(S.solfataricus)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)、ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、エルシニア・エンテロコリチカ(Y.enterocolitica)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、枯草菌(B.subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・チフィムリウム(S.typhimurium)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)を含む、大腸菌(E.coli)以外の種からの野生型GGBPであることができるであろう。
GGBPをコードする参照アミノ酸配列と、少なくとも、例えば、約95%「同一である」アミノ酸配列を有するポリペプチドは、ポリペプチドのアミノ酸配列が、参照GGBPをコードする参照アミノ酸配列の100個のアミノ酸あたり約5つまでの修飾を含むことができる以外は、当該アミノ酸配列が、参照配列と同一であることを意味すると理解される。すなわち、参照アミノ酸配列と、少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を有するペプチドを得るためには、約5%までの参照配列のアミノ酸残基を、欠失させるか、別のアミノ酸で置換することができる、または参照配列中の全アミノ酸の約5%までの、いくつかのアミノ酸を、参照配列中に挿入することができる。参照配列のこれらの修飾は、参照アミノ酸配列のN末端またはC末端の位置で生じても、あるいはそれらの末端の位置の間のどこかで、参照配列中のアミノ酸の間で個々にまたは参照配列内で1つまたは複数の近接する群としてのいずれかで分散して生じてもよい。
本明細書で使用する場合、「同一性」は、参照ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列と比較したヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性の尺度である。一般に、最高次数の一致が得られるように配列を整列させる。「同一性」自体は、当技術分野で認識されている意味を有し、公開されている技法を使用して計算することができる。(例えば、非特許文献4〜8を参照)。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列間の同一性を測定するためのいくつかの方法が存在するが、「同一性」という用語は、当業者にはよく知られている(非特許文献9を参照)。2つの配列間の同一性または類似性を決定するために通常利用する方法には、これらに限定されないが、非特許文献10および9に開示されているものが含まれる。また、コンピュータプログラムが、同一性および類似性を計算する方法およびアルゴリズムを含む場合もある。2つの配列間の同一性および類似性を決定するためのコンピュータプログラムの方法の例には、これらに限定されないが、GCGプログラムパッケージ(非特許文献11を参照)、BLASTP、ExPASy、BLASTN、FASTA(非特許文献12を参照)、およびFASTDBが含まれる。同一性および類似性を決定するための方法の例が、参照によって組み入れられている非特許文献13で議論されている。本発明の1つの実施形態では、2つ以上のポリペプチド間の同一性を決定するために使用するアルゴリズムは、BLASTPである。
本発明の別の実施形態では、2つ以上のポリペプチド間の同一性を決定するために使用するアルゴリズムは、FASTDBであり、これは、参照によって組み入れられている非特許文献14のアルゴリズムに基づいている。FASTDBの配列アライメントの場合、問合わせ配列および対象配列は、アミノ酸配列である。配列アライメントの結果は、パーセント同一性で示す。パーセント同一性を計算するためにアミノ酸配列のFASTDBアライメントにおいて使用することができるパラメータには、これらに限定されないが、Matrix=PAM、k−tuple=2、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=20、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty 0.05、Window Size=500または対象アミノ配列の長さのいずれか短い方が含まれる。
対象配列が、内部の付加または欠失によるのではなく、N末端またはC末端の付加または欠失により、問合わせ配列よりも短いまたは長い場合には、手作業で補正することができる。これは、FASTDBプログラムは、パーセント同一性を計算する場合、対象配列のN末端およびC末端の切断も付加も考慮に入れないからである。5’末端または3’末端で切断されている対象配列の場合、問合わせ配列と比較して、一致/整列していない問合わせ配列(この問合わせ配列は、参照配列に対しては、N末端およびC末端となる。)の塩基の数を、問合わせ配列の全塩基のパーセントとして計算することによって、パーセント同一性を補正する。FASTDB配列アライメントの結果が、一致/整列を決定する。次いで、アライメントパーセントを、上記のFASTDBプログラムによって、特定したパラメータを使用して計算したパーセント同一性から差し引くと、最終的なパーセント同一性スコアが得られる。この補正したスコアを、アライメントがどのように相互に「対応する」かを決定する目的およびパーセント同一性を決定する目的で使用することができる。参照または対象のそれぞれの配列のN末端またはC末端を越えて伸長している問合わせ(対象)配列または参照配列の残基は、パーセント同一性スコアを手作業で調整する場合に考慮に入れることができる。すなわち、パーセント同一性スコアまたはアライメントの番号付けを手作業で調整する際に、比較配列のN末端またはC末端と一致/配列しない残基を数えることができる。
例えば、90個のアミノ酸残基の対象配列を、100個の残基の参照配列と整列させて、パーセント同一性を決定する。欠失が、対象配列のN末端で生じており、したがって、FASTDBアライメントは、N末端における最初の10個の残基の一致/整列を示さない。10個の不対の残基は、配列の10%(一致しないN末端およびC末端における残基の数/問合わせ配列中の残基の総数)に相当し、したがって、10%を、FASTDBプログラムによって計算したパーセント同一性スコアから差し引く。残りの90個の残基が、完全に一致する場合には、最終的なパーセント同一性は、90%となるであろう。別の例では、90個の残基の対象配列を、100個の残基の参照配列と比較する。今回は、欠失は、内部の欠失であり、したがって、問合わせ配列と一致/整列しない残基は、対象配列のN末端にもC末端にも存在しない。この場合には、FASTDBによって計算したパーセント同一性は、手作業で補正しない。
本発明の修飾GGBPは、参照GGBPと比較して、増加した安定性(例えば、熱安定性、洗剤に対する安定性、pH安定性、凍結/解凍に対する安定性)、または水性溶媒中での向上した溶解性等、改善された特徴を有することができる。特に、本発明の修飾GGBPは、熱に対して安定、または加熱に対して安定である。「熱安定性の(thermostable)」または「加熱安定性の(heat stable)」という用語は、本明細書では互換的に使用し、修飾GGBPが、修飾GGBPを誘導した参照GGBPよりも高い融解温度を有することを示すために使用する。融解温度は、この用語がタンパク質に関する場合には、本明細書では当技術分野での使用に従って使用する。すなわち、融解温度は、試料中の折り畳まれているタンパク質の個体数と折り畳まれていないタンパク質の個体数が等しい温度である。タンパク質の融解温度を決定する多数の方法が存在し、本発明が、タンパク質の融解温度を決定する方法によって限定されてはならない。参照タンパク質および修飾タンパク質の融解温度を決定する方法が同一であるならば、熱安定性タンパク質は、本発明の目的では、参照タンパク質よりも高い融解温度を有するタンパク質である。タンパク質の融解温度を測定する方法の1つの例には、これに限定されないが、円二色性が含まれる。これは、右円偏光と左円偏光との吸収の差を測定して、タンパク質の三次元の立体配置をモニターする分光学的な方法である。円二色性の方法は、参照によって組み入れられている非特許文献15で議論されている。
本発明では、分析物と修飾されたグルコース−ガラクトース結合タンパク質とが、結合のパートナーとして作用する。本明細書で使用する場合、「結合する(associates)」または「結合する(binds)」という用語は、特異的な結合を指す。特異的な結合の親和性は、これに限定されないが、平衡解離定数(Kd)等の相対的な結合定数を計算することによって評価することができる。Kdは、半分の結合性の分子が結合しているまたはその逆の場合の、遊離の分析物の濃度として計算することができる。対象の分析物が、グルコースである場合には、例えば、結合パートナーについてのKdの値は、約0.0001mMから約30mMの間であることができる。したがって、本発明の修飾されたグルコース−ガラクトース結合タンパク質は、例えば、グルコース等の分析物が関与する生物学的な反応の動態を追跡することを可能にする、分析物のin vitroまたはin vivoにおけるアッセイおよび臨床におけるアッセイにおいて使用することができる。参照タンパク質よりも大きな解離定数を有するタンパク質または修飾タンパク質は、タンパク質または修飾タンパク質の標的分析物に対する結合がより弱いこと、または修飾GGBPの結合親和性が減少したことを意味する。逆に、参照タンパク質よりも小さな解離定数を有するタンパク質または修飾タンパク質は、タンパク質または修飾タンパク質の標的分析物に対する結合がより強いこと、または修飾GGBPの結合親和性が増加したことを意味する。例えば、約1mMのKdを有するタンパク質は、約0.1mMのKdを有するタンパク質よりも「弱い」結合親和性を有するとみなされる。
したがって、本発明の1つの実施形態では、分析物の結合パートナーに対する修飾GGBPの結合親和性は、同一の分析物の結合パートナーに対する野生型GGBPの結合親和性と実質的に同一である。本明細書で使用する場合、結合親和性を比較して「実質的に同一の」という用語は、分析物の結合パートナーに対して測定した修飾GGBPと参照GGBPとの結合親和性の差が、一桁以内であることを示す。例えば、結合親和性を決定および比較するために使用した測定基準が、解離定数である場合、一方のタンパク質が、他方のタンパク質よりも測定すると弱いにもかかわらず、約1mMのKdを有するタンパク質は、約0.1mMのKdを有するタンパク質と、実質的に同一の結合親和性を有するとみなされる。しかし、明確に表現すれば、1つのタンパク質が、別のタンパク質と比較して、より弱い結合親和性を有する場合があるが、本発明の目的では、それでも、これら2つのタンパク質は、「実質的に同一の」結合親和性を有することになるであろう。
別の実施形態では、結合パートナーに対する修飾GGBPの結合親和性は、同一の分析物の結合パートナーに対する参照GGBPの結合親和性と比較して変化している。本明細書で使用する場合、同一の分析物の結合パートナーに対する修飾GGBPと参照GGBPとの結合親和性の差が、一桁以内ではない場合には、結合親和性が「変化している」。1つの実施形態では、本発明は、分析物の結合パートナーに対する修飾GGBPの結合親和性を、同一の分析物に対する参照GGBPの結合親和性と比較して減少させる方法に関する。別の実施形態では、本発明は、分析物の結合パートナーに対する修飾GGBPの結合親和性を、同一の分析物に対する参照GGBPの結合親和性と比較して増加させる方法に関する。
同様に、本発明の一態様は、標的に対する結合性分子の親和性を変化させ、同時に修飾GGBPの熱安定性もまた高める方法に関する。1つの実施形態では、本発明は、分析物の結合パートナーに対する修飾GGBPの結合親和性を、同一の結合パートナーに対する参照GGBPの結合親和性と比較して減少させる方法に関する。別の実施形態では、本発明は、修飾GGBPの選択性を、参照GGBPの選択性と比較して変化させる方法に関する。
別の実施形態では、結合パートナーに対する修飾GGBPの相対的、絶対的またはレシオメトリックな蛍光応答が、同一の分析物の結合パートナーに対する参照GGBPの蛍光応答と比較して変化している。この参照GGBPの蛍光応答は、相対的、絶対的またはレシオメトリックであることができる。相対的な蛍光を決定および測定する方法は、参照によって組み入れられている非特許文献16に記載されている。レシオメトリックな蛍光を決定および測定する方法は、参照によって組み入れられている非特許文献17に記載されている。本明細書で使用する場合、分析物との結合時の修飾GGBPの蛍光が、同一の分析物との結合時の参照GGBPの蛍光とは、一桁超異なる場合には、相対的な蛍光応答が「変化している」。1つの実施形態では、本発明は、分析物の結合パートナーに対する修飾GGBPの蛍光を、同一の分析物に対する参照GGBPの蛍光と比較して減少させる方法に関する。別の実施形態では、本発明は、分析物の結合パートナーに対する修飾GGBPの結合親和性を、同一の分析物に対する参照GGBPの結合親和性と比較して増加させる方法に関する。
別の特異的な実施形態では、修飾タンパク質は、2つ以上の分析物に特異的な様式で結合するように修飾することができる。実際に、修飾タンパク質は、別の標的リガンドに加えて、参照GGBPと同一のリガンドに対する特異性を有することができる。
同様に、修飾タンパク質は、参照結合性タンパク質が結合しない、1つまたは複数の分析物に結合することが可能である場合がある。タンパク質の選択性または特異性を変化させる方法が、記載されている。例えば、参照によって本明細書に組み入れられている非特許文献18は、新しい分析物結合特性をタンパク質に提供する、周辺質結合タンパク質内の結合部位を再設計するための方法を開示している。これらの修飾結合性タンパク質は、立体構造の変化を起こす能力を保持しており、それによって、分析物の結合によって直接生じるシグナルを発生させることができる。5位と17位との間のアミノ酸に変化を導入することによって、Loogerらは、いくつかの修飾タンパク質を構築し、それぞれが、TNT(トリニトロトルエン)、L−乳酸(L-lactate)またはセロトニンに対する新しい選択性を有した。例えば、Loogerらは、ABP、GGBP、RBP、HBPおよびQBPからL−乳酸結合タンパク質を産生した。1つの実施形態では、発明品は、L−乳酸に特異的に結合する変異型熱安定性GGBPを含む。この実施形態では、参照GGBPは、グルコースおよびガラクトースに対する結合特異性が除去されていて、今では、L−乳酸に特異的に結合することができる、前もって変異させたGGBPであろう。次いで、この参照GGBPを、本発明の目的で、修飾された、L−乳酸特異的GGBPの熱安定性を高めるように変異させる。
修飾された熱安定性のGGBPは、試料中の分析物を検出または測定するために標識されてもよいが、そうでなければならないとは限らない。本発明の標識されていない、修飾された熱安定性のGGBPを使用するアッセイの例には、これらに限定されないが、表面プラズモン共鳴法(SPR)および表面増強ラマン分光法(SERS)が含まれる。別の実施形態では、参照GGBPおよび修飾された熱安定性のGGBPは、1つまたは複数の標識部分もまた含むことができる。本明細書で使用する場合、「標識部分」は、検出可能なシグナルを有するまたは有するようになる化合物またはイオンを意味することを意図する。本発明で使用する標識は、GGBPのローブ領域における立体構造の変化を示すために使用することができる。ローブ領域における変化の例には、これらに限定されないが、三次元の立体構造の変化、タンパク質性の結合ドメインのアミノ酸側鎖の配向の変化、および結合ドメインの酸化還元状態が含まれる。タンパク質の一次構造への1つまたは複数の残基の付加/置換と共に、現在の方法および組成で使用する標識部分のうちのいくつかは、還元、酸化、共役および縮合の反応等の化学的手段によって結合させることができる。タンパク質を標識するために通常使用する残基の例には、これらに限定されないが、リジンおよびシステインが含まれる。例えば、いずれかのチオール反応性の基を使用して、標識部分、例えば、フルオロフォアを、ポリペプチドの一次構造中の天然のまたは操作した(engineered)システインに結合させることができる。参照によって組み入れられている特許文献1は、PBPの種々のシステインの変異を記載している。また、例えば、リジン残基を、フルオロフォアのスクシンイミドエステル誘導体を使用して標識することもできる。参照によって本明細書に組み入れられている非特許文献19を参照されたい。
本発明の標識部分は、放射活性があっても、またはなくてもよい。放射標識の例には、これらに限定されないが、3Hおよび32Pが含まれ、これらは、放射線測定器を用いて測定することができる。放射活性がない標識の例には、これらに限定されないが、遷移金属、ランタニドイオンおよびその他の化合物が含まれる。放射活性がないシグナルには、これらに限定されないが、分光光度計を用いて視覚的に観察または測定することができる蛍光、リン光、生物発光、電気化学および化学発光による色素、染料またはその他の色素原、スピン標識分析器を用いて測定することができるスピン標識、ならびに蛍光標識(フルオロフォア)が含まれる。蛍光標識の場合、出力シグナルが、適切な分子付加物の励起によって発生し、これを、染料が吸収する光で励起することによって可視化する、または標準的な蛍光光度計もしくは画像システムを用いて測定することができる。標識の追加の例には、これらに限定されないが、リン光染料、タンデム色素および粒子が含まれる。標識は、出力シグナルがシグナル化合物の化学的な修飾によって発生する化学発光物質;金属含有物質;または酵素であることができる。酵素によって、酵素依存性のシグナルが二次的に発生し、例えば、無色の物質から変色した産物を形成する。また、標識という用語は、「タグ」またはハプテンも含み、これらは、共役分子に選択的に結合するので、共役分子を、後から基質と併せて添加して、検出可能なシグナルを発生させるために使用することができる。例えば、ビオチンを標識として使用し、続いて、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のアビジンまたはストレプトアビジンとの複合体(conjugate)を使用して、ビオチン標識に結合させ、その後に、比色分析基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB))またはAmplex Red試薬(Molecular Probes,Inc.)のような蛍光発生基質を使用して、HRPの存在を検出することができる。多数の標識が、当業者に知られており、これらに限定されないが、粒子、フルオロフォア、ハプテン、酵素、ならびにそれらの比色分析基質、蛍光発生基質および化学発光基質、ならびに参照によって本明細書に組み入れられている非特許文献20に記載されている、その他の標識を含む。
本発明のフルオロフォアは、280nm以上で最大吸収を示す、いずれかの化学的な部分であり、タンパク質またはその他の試薬に共有結合しても、スペクトルの特性を保持する。本発明のフルオロフォアには、これらに限定されないが、ピレン(参照によって組み入れられている特許文献2に開示されている、対応する誘導体化合物のうちのいずれかを含む)、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールまたはベンズインドール、オキサゾールまたはベンゾオキサゾール、チアゾールまたはベンゾチアゾール、4−アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)、シアニン、カルボシアニン(参照によって組み入れられている特許文献3〜25中のいずれかの対応する化合物を含む)、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸、アントラニル酸、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン(borapolyazaindacene)(参照によって組み入れられている特許文献26〜30に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、キサンテン(参照によって組み入れられている特許文献31〜36に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、オキサジン(参照によって組み入れられている特許文献37に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)またはベンゾオキサジン、カルバジン(参照によって組み入れられている特許文献38に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、フェナレノン、クマリン(参照によって組み入れられている特許文献39〜42に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、ベンゾフラン(参照によって組み入れられている特許文献43および44に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、ベンズフェナレノン(benzphenalenone)(参照によって組み入れられている特許文献45に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、ならびにそれらの誘導体が挙含まれる。本明細書で使用する場合、オキサジンは、レゾルフィン(参照によって組み入れられている特許文献46に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン、およびそれらのベンゾ置換類似体を含む。追加の標識部分には、これらに限定されないが、2006年12月14日公開の特許文献47、および特許文献48に記載されている化合物も含まれる。これらの文献は、参照によって組み入れられている。
フルオロフォアが、キサンテンである場合、このフルオロフォアは、任意選択的に、フルオレセイン、ロドール(参照によって組み入れられている特許文献49および50に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)、またはローダミン(参照によって組み入れられている特許文献51〜53中のいずれかの対応する化合物を含む)である。本明細書で使用する場合、フルオレセインは、ベンゾ−もしくはジベンゾフルオレセイン、セミナフトフルオレセインまたはナフトフルオレセインを含む。同様に、本明細書で使用する場合、ロドールは、セミナフトロダフルオル(seminaphtorhodafluor)(参照によって組み入れられている特許文献54に開示されている、いずれかの対応する化合物を含む)を含む。あるいは、フルオロフォアは、連結を介して結合しているキサンテンであり、この連結は、キサンテンの9位における単一の共有結合である。好ましいキサンテンは、9位で結合している3H−キサンテン−6−オール−3−オンの誘導体、9位で結合している6−アミノ−3H−キサンテン−3−オンの誘導体、または9位で結合している6−アミノ−3H−キサンテン−3−イミンの誘導体を含む。
本発明における使用のためのフルオロフォアには、これらに限定されないが、キサンテン(ロドール、ローダミン、フルオレセイン、およびそれらの誘導体)、クマリン、シアニン、ピレン、オキサジンおよびボラポリアザインダセンが含まれる。最も好ましいのは、スルホン化キサンテン、フッ素化キサンテン、スルホン化クマリン、フッ素化クマリンおよびスルホン化シアニンである。フルオロフォアの選択によって、GGBPまたはその他の標識試薬複合体の吸収および蛍光発光の特性が決定されるであろう。フルオロフォア標識の物性は、スペクトルの特徴(吸収、発光およびストークスシフト)、蛍光の強度、寿命、偏光ならびに光退色の速度を含み、これらはいずれも、1つのフルオロフォアを別のフルオロフォアと区別するために使用することができる。
典型的には、フルオロフォアは、1つまたは複数の芳香環またはヘテロ芳香環を含有し、これらは、任意選択的に、これらに限定されないが、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アルキル、パーフルオロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、アシル、アリールもしくはヘテロアリールの環の系、ベンゾ、または当技術分野で既知のフルオロフォア上に典型的に存在するその他の置換基を含めた、多様な置換基によって1回または複数回置換されている。
フルオロフォア標識の特異的な例が、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、5−TMRIA(テトラメチルローダミン−5−ヨードアセトアミド)、(9−(2(または4)−(N−(2−マレイミジルエチル)−スルホンアミジル)−4(または2)−スルホフェニル)−2,3,6,7,12,13,16,17−オクタヒドロ−(1H,5H,11H,15H−キサンテノ(2,3,4−ij:5,6,7−i’j’)ジキノリジン−18−イウム塩)(Texas Red(登録商標))、2−(5−(1−(6−(N−(2−マレイミジルエチル)−アミノ)−6−オキソへキシル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−1,3−プロピルジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム塩(Cy(商標)3)、N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)エチレンジアミン(IANBDアミド)、N−((2−(ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(IANBDエステル)、6−アクリロイル−2−ジメチルアミノナフタレン(アクリロダン)、ピレン、6−アミノ−2,3−ジヒドロ−2−(2−((ヨードアセチル)アミノ)エチル)−1,3−ジオキソ−1H−ベンズ(デ)イソキノリン−5,8−二スルホン酸塩(ルシファーイエロー)、2−(5−(1−(6−(N−(2−マレイミジルエチル)−アミノ)−6−オキソへキシル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−5−スルホ−2H−インドール−2−イリデン)−1,3−ペンタジエニル)−l−エチル−3,3−ジメチル−5−スルホ−3H−インドリウム塩(Cy(商標)5)、4−(5−(4−ジメチルアミノフェニル)オキサゾール−2−イル)フェニル−N−(2−ブロモアセトアミドエチル)スルホンアミド(Dapoxyl(登録商標)(2−ブロモアセトアミドエチル)スルホンアミド))、(N−(4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−2−イル)ヨードアセトアミド(BODIPY(登録商標)507/545IA)、N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジフェニル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオニル)−N’−ヨードアセチルエチレンジアミン(BODIPY 530/550IA)、5−((((2−ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−l−スルホン酸(1,5−IAEDANS)、およびカルボキシ−X−ローダミン,5/6−ヨードアセトアミド(XRIA5,6)からなる群から選択される。標識の別の例は、BODIPY−FL−ヒドラジドである。その他の発光標識は、ユーロピウム(Eu3+)およびテルビウム(Tb3+)等のランタニド、ならびにルテニウム[Ru(II)]、レニウム[Re(I)]またはオスミウム[Os(II)]の金属−配位子の複合体、典型的には、フェナンスロリン等のジイミン配位子との複合体を含む。参照によって組み入れられている2006年12月14日公開の特許文献55は、本発明のために有用である場合がある追加のフルオロフォアを開示している。
フルオロフォアに加えて、酵素もまた、標識として有用である。検出可能なシグナルの増幅を得ることができ、その結果、アッセイの感受性が増加することから、酵素標識が望ましい。酵素自体は、検出可能なシグナルを発生することができないが、例えば、蛍光シグナル、比色分析シグナルまたは発光シグナル等の検出可能なシグナルを発生させるように基質を変換させることによって、シグナルを発生させることが可能である。標識試薬上の1つの酵素が、複数の基質を検出可能なシグナルに変換させることができるので、酵素は、検出可能なシグナルを増幅する。これは、試料中に存在する標的の量が少ない場合、または酵素に比べて同等またはより強力なシグナルを発生するフルオロフォアが存在しない場合に有利である。酵素の基質は、好ましい測定可能な産物、例えば、比色分析産物、蛍光産物または化学発光産物をもたらすように選択される。そのような基質は、当技術分野で広範に使用されており、それらのうちの多くは、上記の非特許文献20に記載されている。
具体的な実施形態では、比色分析基質または蛍光発生基質と酵素との組合せは、西洋ワサビペルオキシダーゼのような酸化還元酵素と、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)および3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)のような基質とを使用し、これらは、特徴的な色(それぞれ、褐色および赤色)を発生させる。検出可能な産物をもたらす、その他の比色分析に用いる酸化還元酵素の基質には、これらに限定されないが、2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、4−クロロ−l−ナフトールが含まれる。蛍光発生基質には、これらに限定されないが、ホモバニリン酸または4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル酢酸、Amplex(登録商標)Red試薬およびその変異体(特許文献56を参照)を含めた還元型フェノキサジンおよび還元型ベンゾチアジン、ならびにジヒドロフルオレセイン(参照によって組み入れられている特許文献31を参照)を含めた還元型ジヒドロキサンテン、ならびにジヒドロローダミン123を含めたジヒドロローダミンが含まれる。ペルオキシダーゼの基質はチラミド(参照によって組み入れられている特許文献57〜59を参照)があり、これらは、酵素が作用する前に内因的に検出可能であるが、チラミドシグナル増幅(TSA)として説明されている過程におけるペルオキシダーゼの作用によって、「適所に固定」されているという点でペルオキシダーゼの基質の他とは異なるクラスである。こうした基質は、試料中の標的を標識するために広範に利用され、この試料には、細胞、組織またはそれらを顕微鏡法、フローサイトメトリー、光学的走査および蛍光定量法によって続けて検出するためのアレイがある。
別の好ましい比色分析基質(および場合によっては、蛍光発生基質)と酵素との組合せとして、リン酸5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル(BCIP)、リン酸6−クロロ−3−インドリル、リン酸5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル、リン酸p−ニトロフェニル、またはリン酸o−ニトロフェニルのような比色分析基質と組み合せた、あるいは、リン酸4−メチルウンベリフェリル、リン酸6,8−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリニル(DiFMUP、参照によって組み入れられている特許文献42を参照)、二リン酸フルオレセイン、リン酸3−O−メチルフルオレセイン、リン酸レゾルフィン、リン酸9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)(リン酸DDAO)、またはELF97、ELF39もしくは関連するホスフェート(参照によって組み入れられている特許文献60および61を参照)のような蛍光発生基質と組み合せた、酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼのようなホスファターゼ酵素、またはそのようなホスファターゼの組換え体を使用する。
追加の酵素には、これらに限定されないが、適切な基質が知られている、コリンエステラーゼおよびペプチダーゼのようなヒドロラーゼ、チトクロームオキシダーゼのようなオキシダーゼ、ならびにレダクターゼが含まれる。本発明の具体的な実施形態は、化学発光シグナルを発生させるための酵素および適切な基質、例えば、これらに限定されないが、天然および組換え形態のルシフェラーゼおよびエクオリンを含む。ホスファターゼ、グリコシダーゼおよびオキシダーゼの場合に化学発光を発生させる基質、例として、ジオキセタン、ルミノール、イソルミノールおよびアクリジニウムの安定なエステルを含有する基質もまた有用である。
追加の実施形態は、ビオチンのようなハプテンを含む。ビオチンは、検出可能なシグナルをさらに増幅する酵素系で機能することができ、かつ単離の目的でアフィニティークロマトグラフィーにおいて使用するタグとして機能することができることから、有用である。検出の目的では、アビジン−HRP等、ビオチンに対して親和性を有する酵素複合体が使用される。続いて、ペルオキシダーゼの基質を添加して、検出可能なシグナルを発生させる。
また、ハプテンは、ホルモン、天然に存在するおよび合成の薬物、汚染物質、アレルゲン、影響因子分子、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学中間体、ヌクレオチドおよびこれらに類するものも含む。
また、蛍光タンパク質は、本発明の試薬を標識するための標識としても有用である。したがって、1つの実施形態では、参照GGBPは、機能性のGGBPと蛍光タンパク質とを含む融合タンパク質であり、蛍光タンパク質が、少なくとも1つの標識として作用する。そうなると、修飾された、熱安定性、機能性のGGBPは、蛍光タンパク質を含むことになる。別の実施形態では、この発明の修飾タンパク質は、2つ、3つまたは4つ以上の蛍光タンパク質を含んでよい。この発明の融合タンパク質が、2つ以上の蛍光タンパク質を含有する場合、蛍光タンパク質は、化学的に同一であっても、またはそうでなくてもよい。蛍光タンパク質は、当技術分野において容易に認識される。現在の発明の融合タンパク質の一部となる蛍光タンパク質の例には、これらに限定されないが、緑色蛍光タンパク質(GFP、AcGFP、ZsGreen)、赤方偏移GFP(rs−GFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed2、HcRedl、dsRed−Expressを含めたRFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP、Zsyellow)、シアン蛍光タンパク質(CFP、AmCyan)、青色蛍光タンパク質(BFP)およびフィコビリタンパク質、ならびにこれらのタンパク質の増強されたものおよび変異体が含まれる。いくつかの蛍光タンパク質の場合には、増強とは、タンパク質の輝度を増加させること、またはより迅速に成熟する発色団を有するタンパク質を生み出すことによる発光の最適化を指す。こうした増強は、蛍光タンパク質中に変異を操作すること(engineering mutations)によって達成することができる。
蛍光タンパク質、特に、フィコビリタンパク質は、タンデム色素で標識した標識試薬を生み出すのにとりわけ有用である。したがって、現在の発明の1つの実施形態では、融合タンパク質の測定可能なシグナルは、実際には、供与体分子から受容体分子への励起エネルギーの移動(共鳴エネルギー移動)である。特に、共鳴エネルギー移動は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の形態をとる。本発明の修飾タンパク質が、分析物(複数の分析物)を測定または定量化するためにFRETを利用する場合、融合タンパク質は、供与体または受容体であることができる。FRETに関して使用する場合の「供与体」および「受容体」という用語は、当技術分野においては容易に理解される。すなわち、供与体は、光の光子を吸収し、続いて、受容体分子へのエネルギー移動を開始する分子である。受容体分子は、供与体が開始したエネルギー移動を受け取り、次いで、光の光子を放射する分子である。FRETの効率は、2つの蛍光パートナー間の距離に依存し、E=R0 6/(R0 6+r6)によって数学的に表すことができる。ただし、Eは、エネルギー移動の効率であり、rは、蛍光の供与体/受容体の対の間の距離(オングストローム)であり、R0は、Forster距離(オングストローム)である。Forster距離は、当技術分野で容易に利用できる技法によって実験的に決定することができ、FRETが、所与の蛍光の供与体/受容体の対について、最大可能FRET値の1/2となる距離である。特に有用な組合せは、参照によって組み入れられている特許文献62〜64に開示されているフィコビリタンパク質と、特許文献51に開示されているスルホローダミンフルオロフォア、または特許文献20および19に開示されているスルホン化シアニンフルオロフォア;または参照によって組み入れられている特許文献32に開示されているスルホン化キサンテン誘導体との組合せ、ならびに参照によって組み入れられている特許文献65に開示されている組合せである。
本発明が提供する融合タンパク質のその他の種類には、これに限定されないが、分泌シグナルおよびその他の異種性の機能性領域を有する融合体が含まれる。したがって、例えば、追加のアミノ酸、特に電荷のあるアミノ酸の領域を、タンパク質のN末端に付加させて、精製の間またはそれに続く取扱いおよび保管の間の宿主中での安定性および持続性を改善することができる。また、精製を促進するために、ある領域をタンパク質に付加してもよい。例えば、参照タンパク質および/または熱安定性タンパク質は、「ヒスチジンタグ」(「ヒスタグ」)または「リジンタグ」を含むことができる。ヒスチジンタグの例には、これらに限定されないが、hexaH、heptaHおよびhexaHNが含まれる。精製タグの追加の例が、参照によって組み入れられている非特許文献21および22に開示されている。リジンタグの例には、これらに限定されないが、pentaL、heptaLおよびFLAGが含まれる。また、溶解性タグの追加の例も、非特許文献21に開示されている。そのような領域は、タンパク質の最終的な精製の前に除去してよい。とりわけ、分泌または排泄のいずれかを生じさせるため、安定性を改善するため、および精製を促進するためのペプチド部分のタンパク質への付加は、当技術分野ではよく知れられている日常的な技法であり、タグを収容するために、末端におけるアミノ酸の修飾を含めることができる。例えば、配列番号3および4において、タグを収容するために、C末端のアミノ酸(リジン)を、例えば、アルギニンおよびセリンに修飾することができる。もちろん、また、タグを収容するために、N末端のアミノ酸残基を修飾してもよい。特に有用な1つの融合タンパク質は、タンパク質を可溶化するために使用することができる免疫グロブリンからの異種性の領域を含む。例えば、特許文献66は、免疫グロブリン分子の定常領域の種々の部分を、別のヒトタンパク質またはその一部と一緒に含む融合タンパク質を開示している。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は、治療および診断において使用するために極めて有利であり、したがって、その結果、例えば、改善された薬物動態特性が得られる(特許文献67を参照)。他方、いくつかの使用では、融合タンパク質を、記載する有利な様式で、発現させて、検出および精製してから、Fc部分を検出することが可能であることが望ましいであろう。
この発明の融合タンパク質を、組換え細胞培養物から、これらに限定されないが、硫酸アンモニウムまたはエタノールによる沈殿、酸による抽出、アニオンまたはカチオンの交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、例えば、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた、周知の方法によって回収および精製することができる。また、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も、精製のために利用することができる。融合タンパク質が、単離および/または精製の間に変性する場合は、タンパク質の再折り畳みのための周知の技法を利用して、活性な立体構造を再生させることができる。
本発明の融合タンパク質には、これらに限定されないが、化学合成過程の産物、および例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物の細胞を含めた、原核生物または真核生物の宿主から組換えの技法によって産生した産物が含まれる。組換えによる産生過程において利用する宿主に応じて、本発明のタンパク質は、グリコシル化されていても、または非グリコシル化されていてもよい。さらに、本発明の融合タンパク質は、場合によっては、宿主が媒介する過程の結果として、最初の修飾されたメチオニン残基もまた含んでよい。
また、修飾された熱安定性のGGBPを、翻訳後プロセシングのような天然の過程または当技術分野ではよく知られている化学修飾の技法のいずれかによって修飾してもよい。そのような修飾は、基本的な文書およびより詳細なモノグラフ、ならびに研究の膨大な文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含めた、ポリペプチド鎖のどこでも起こすことができる。所与のポリペプチドまたはタンパク質において、同一の種類の修飾が、いくつかの部位で、同一または異なる程度で存在してよいことが理解されるであろう。また、所与のポリペプチドまたはタンパク質は、2つ以上の修飾を含有してもよい。修飾の例には、これらに限定されないが、グリコシル化、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化のような転移RNAが媒介するアミノ酸のタンパク質への付加、およびユビキチン化が含まれる。ポリペプチドまたはタンパク質は、ユビキチン化の結果として、枝分れさえすることができ、ポリペプチドまたはタンパク質は、枝分れを有する環状または枝分れを有しない環状である場合がある(例えば、非特許文献23〜26を参照。これらの文献はいずれも、参照によって本明細書に組み入れられている)。
本発明の参照タンパク質は、当業者によく知られている技法によって修飾することができる。そのような技法の例には、これらに限定されないが、変異誘発および修飾タンパク質の直接的な合成が含まれる。
本発明の修飾された熱安定性のタンパク質は、単離することができる。本明細書で使用する場合、「単離されたタンパク質」は、天然の環境から完全または部分的に取り出されているタンパク質を意味することを意図する。例えば、細胞から取り出されているまたは精製されているポリペプチドは、単離されたとみなされる。さらに、宿主細胞中に含有される、組換えによって産生したポリペプチド分子も、本発明の目的では、単離されたとみなされる。同様に、合成されているタンパク質は、単離されたタンパク質であるとみなされる。
また、本発明は、単離された核酸およびこれらの核酸を含む構築物にも関する。本発明の核酸は、DNA、またはRNA、例えば、mRNAであることができる。核酸分子は、二本鎖または一本鎖であることができ、一本鎖のRNAまたはDNAは、コード鎖またはセンス鎖、あるいは非コード鎖またはアンチセンス鎖であることができる。特に、核酸は、本発明のポリペプチドをコードすることができる。必要に応じて、単離された核酸のヌクレオチド配列は、(例えば、制御配列をはじめとする)非コード3’配列および非コード5’配列のような追加の非コード配列を含むことができる。さらに、本発明の核酸を、マーカー配列、例えば、当該ポリペプチドの単離または精製を支援するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸として使用することができる。代表的な配列には、これらに限定されないが、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質、ポリ−ヒスチジン(例えば、His6)、ポリ−HN、ポリ−リジン、赤血球凝集素、HSV−タグが含まれる。
本発明の核酸分子は、「単離された」状態にある。本発明で使用する場合、「単離された」核酸分子またはヌクレオチド配列は、核酸分子またはヌクレオチド配列であって、(ゲノム配列中のように)通常であれば遺伝子またはヌクレオチドの配列に隣接するヌクレオチド配列が隣接しないもの、および/または天然の環境(例えば、細胞、組織)から完全または部分的に取り出されているものを意味することを意図する。例えば、本発明の単離された核酸は、核酸が天然に存在する複雑な細胞環境に関して実質的に単離することができる。場合によっては、この単離された物質が、組成物(例えば、その他の物質を含有する粗抽出物)、緩衝系または試薬混合物の一部を形成するであろう。その他の場合には、この物質は、例えば、PAGEまたはHPLC等のカラムクロマトグラフィーによって決定される本質的な均一度まで精製することができる。したがって、単離された核酸分子またはヌクレオチド配列は、化学的に、組換えDNA技術を使用して、またはいずれかのその他の適切な方法を使用して合成された核酸分子またはヌクレオチド配列を含むことができる。したがって、ベクター中に含有される組換え核酸は、本明細書で使用する場合の「単離された」の定義内に含まれる。また、単離されたヌクレオチド配列は、異種性の生物体中の組換え核酸分子(例えば、DNA、RNA)、および溶液中の部分的または実質的に精製された核酸も含む。また、本発明のDNA分子のin vivoおよびin vitroの両方のRNA転写物も、「単離された」ヌクレオチド配列によって包含される。
また、本発明は、以下に記載するように、ポリペプチドの機能性断片または機能性誘導体をコードするヌクレオチド配列のような、本発明のヌクレオチド配列の変異体(variations)も包含する。そのような変異体は、天然に存在する、または種々の突然変異原および変異原性の過程によって誘発された変異体のような、天然に存在しないものであることができる。意図する変異体には、これらに限定されないが、付加および欠失をはじめとする、保存的または非保存的なアミノ酸変化を得ることができる、1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失および置換が含まれる。本発明の一態様では、本発明の核酸分子およびタンパク質の変異体は、結合ドメイン内に、サイレントなまたは保存性の修飾を含む。すなわち、本発明の修飾された熱安定性のGGBPと比較して、コードされたポリペプチドの特徴および活性が、修飾によって実質的に変化しない。別の実施形態では、本発明の核酸分子およびタンパク質の変異体は、結合ドメイン内に、サイレントでも保存性でもない修飾を含む。すなわち、本発明の修飾された熱安定性のGGBPと比較して、コードされたポリペプチドの特徴および活性が、修飾によって実質的に変化してよい。
また、本明細書に記載する発明は、本明細書に記載する単離された核酸分子の断片にも関する。「断片」という用語は、少なくとも約25個の近接するヌクレオチドから少なくとも約50個以上の近接するヌクレオチドの長さである、本明細書に記載するヌクレオチド配列の部分を包含することを意図する。そのような断片は、プローブおよびプライマーとして有用である場合がある。特に、プライマーおよびプローブは、本明細書に記載するポリペプチドをコードする核酸分子に選択的にハイブリダイズすることができる。例えば、以下に記載するように、活性を保持するポリペプチドをコードする断片は、特に有用である。
また、本発明は、本明細書に記載するヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載するポリペプチドおよび熱安定性GGBPをコードするヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする核酸分子)に選択的にハイブリダイズする場合のような、高厳密度(high stringency)条件下でハイブリダイズする核酸分子にも関する。ハイブリダイゼーションのプローブは、塩基に特異的な様式で、核酸の相補鎖に結合する合成オリゴヌクレオチドを含む。適切なプローブは、非特許文献27に記載されているように、ポリペプチドの核酸を含む。
そのような核酸分子は、例えば、高厳密度条件下の特異的なハイブリダイゼーションによって検出および/または単離することができる。ハイブリダイゼーションのための「厳密度条件」は、ある特定の核酸が第2の核酸にハイブリダイズするのを可能にするインキュベーションおよび洗浄の条件、例えば、温度および緩衝液の濃度の条件を指す当技術分野の用語である。第1の核酸が、第2の核酸に完全に、すなわち、100%相補的であっても、あるいは第1の核酸と第2の核酸とが、完全ではない、例えば、60%、75%、85%または95%以上である、何らかの程度の相補性を共有してもよい。例えば、完全に相補的な核酸とより低い相補性の核酸とを区別する特定の高厳密度条件を使用することができる。
核酸ハイブリダイゼーションのための「高厳密度条件」、「中等度厳密度条件」および「低厳密度条件」が、参照によって組み入れられている非特許文献28に説明されている。ハイブリダイゼーションの厳密度を決定する的確な条件は、洗浄用緩衝液のイオン強度、例えば、0.2×SSC、0.1×SSC、温度、例えば、室温、42℃、68℃等、およびホルムアミド等の不安定化剤またはSDS等の変性剤の濃度のみならず、核酸配列の長さ、塩基の組成、ハイブリダイズする配列間のパーセントミスマッチおよびその他の同一でない配列内にある当該配列のサブセットの発生頻度のような要因によっても異なる。したがって、高厳密度条件、中等度厳密度条件または低厳密度条件は、経験的に決定してよい。
ハイブリダイゼーションが起きない厳密度のレベルから、ハイブリダイゼーションが最初に観察されるレベルまで、ハイブリダイゼーション条件を変化させることによって、所与の配列を試料中の最も類似する配列とハイブリダイズさせることができる条件を決定することができる。
典型的な条件が、参照によって組み入れられている非特許文献29に記載されている。洗浄は、通常、ハイブリッドの相補性の最小レベルを決定するように、条件が設定されるステップである。一般に、相同なハイブリダイゼーションのみが生じる最も低い温度から始め、SSC濃度を一定に保ちながら、最終の洗浄温度を1度(℃)ずつ下げると、ハイブリダイズする配列間のミスマッチの最大の程度を1%ずつ増加させる。一般に、SSC濃度を2倍にすると、Tmが上昇する。これらのガイドラインを使用して、求められるミスマッチのレベルに応じて、高い、中等度のまたは低い厳密度について、洗浄温度を経験的に決定することができる。典型的な高厳密度条件には、これに限定されないが、50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中、37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC中、60℃での洗浄が含まれる。条件の厳密度が順に高まる例には、ハイブリダイゼーション後の、0.2%SSCおよび0.1%SDS、室温周辺での洗浄(低厳密度条件);0.2%SSCおよび0.1%SDS、約42℃での洗浄(中等度厳密度条件);ならびに0.1%SSC、約68℃での洗浄(高厳密度条件)が含まれる。洗浄は、これらの条件のうちの1つのみ、例えば、高厳密度条件を使用して行うことができ、洗浄は、2つ以上の厳密度条件を厳密度が増加する順で包含してよい。最適条件は、関与する特定のハイブリダイゼーション反応に応じて変化するものであり、経験的に決定することができる。
当技術分野で知られているように、標的核酸分子と使用するプライマーまたはプローブとの間で、同様の程度の同一性または類似性を維持しながら、例として与えられたパラメータのうちの1つまたは複数を変化させることによって、同等な条件を決定することができる。ハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列は、例えば、本発明の核酸を含む生物体の同定のためおよび/または本発明の核酸を単離するためのプローブおよびプライマーとして有用である。「プライマー」という用語は、本明細書では、当技術分野での使用に従って使用し、適切な緩衝液中および適切な温度での適切な条件下において、鋳型によって導かれるDNA合成の開始点として作用する一本鎖のオリゴヌクレオチドを指す。プライマーの適切な長さは、プライマーの意図する使用によって異なるが、典型的には、約15個から約30個までのヌクレオチドの範囲である。一般に、短いプライマー分子は、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためには、より低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型の厳密な配列を反映する必要はないが、鋳型とハイブリダイズするのに十分に相補的である必要がある。「プライマー部位」という用語は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAの領域を指す。「プライマー対」という用語は、増幅しようとするDNA配列の5’末端とハイブリダイズする、5’(上流)プライマーと、増幅しようとする配列の3’末端の相補体とハイブリダイズする、3’(下流)プライマーとを含む一対のプライマーを指す。
本明細書に記載する核酸は、当技術分野で知られている方法によって増幅することができる。例えば、増幅を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって達成することができる。非特許文献30〜34、および特許文献68を参照されたい。これらの文献はいずれも、参照によって組み入れられている。その他の適切な増幅方法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(非特許文献35および36を参照。この2つの文献は、参照によって組み入れられている)、転写増幅(transcription amplification)(参照によって組み入れられている非特許文献37を参照)、ならびに自己維持配列複製(self-sustained sequence replication)(参照によって組み入れられている非特許文献38を参照)および核酸配列に基づく増幅(NASBA,nucleic acid based sequence amplification)が含まれる。
また、本発明は、本発明のDNA分子を含むベクター、本発明のベクターを用いて遺伝子操作されている宿主細胞、および本発明のタンパク質の組換え技法による産生にも関する。
本発明のこの態様によると、ベクターは、例えば、プラスミドベクター、一本鎖または二本鎖のファージベクター、あるいは一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAのウイルスベクターであってよい。そのようなベクターは、DNAおよびRNAを細胞中に導入するための周知の技法によって、ポリヌクレオチド、好ましくは、DNAとして、細胞中に導入することができる。ウイルスベクターは、複製可能でも、または複製欠損でもよい。複製欠損の場合、一般に、ウイルスの増殖は、補完性の宿主細胞中でのみ生じるであろう。
ベクターの中でも、好ましいのは、特定の観点では、本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質の発現のためのベクターである。一般に、そのようなベクターは、宿主中での発現に有効なシス作動性の制御領域を含み、この領域は、発現させようとするポリヌクレオチドに動作可能に連結している。適切なトランス作動性の因子は、宿主によって、補完性のベクターによって、または宿主中に導入するとベクター自体によって供給される。
非常に多様な発現ベクターを、本発明のタンパク質を発現させるために使用することができる。そのようなベクターは、染色体、エピソームおよびウイルスに由来するベクター、例えば、細菌性プラスミド、バクテリオファージ、酵母のエピソーム、酵母の染色体エレメント、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、バキュロウイルス、パポバウイルス、例として、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスのようなウイルス、ならびにそれらの組合せに由来するベクター、例として、コスミドおよびファージミドのようなプラスミドおよびバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するベクターを含む。いずれも、本発明のこの態様によって、発現のために使用することができる。一般に、ポリヌクレオチドまたはタンパク質を宿主中で維持、増殖または発現するのに適切であれば、いずれのベクターも、これに関する発現のために使用してよい。
発現ベクター中のDNA配列は、例えば、mRNAの転写を導くプロモーターをはじめとする、適切な発現制御配列(複数の配列)に動作可能に連結している。そのようなプロモーターの代表には、これらに限定されないが、周知のプロモーターのほんの数個を挙げてみれば、ファージラムダPLプロモーター、大腸菌(E.coli)のlac、trpおよびtacのプロモーター、HIVプロモーター、SV40の早期および後期のプロモーター、ならびにレトロウイルスのLTRのプロモーターが含まれる。一般に、発現構築物は、転写、開始および終結のための部位、ならびに転写された領域においては、翻訳のためのリボゾーム結合部位を含有するであろう。構築物が発現する成熟した転写物のコード部分は、開始点における翻訳開始AUGと、翻訳しようとするポリペプチドの末端に適切に位置する終結コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含むであろう。
さらに、構築物は、発現を制御しかつ引き起こす制御領域を含んでよい。一般に、そのような領域、例として、リプレッサー結合部位およびエンハンサーなどは、転写を制御することによって動作するであろう。
一般に、増殖および発現のためのベクターは、選択可能なマーカーを含むであろう。また、そのようなマーカーは、増幅にも適する場合もあれば、またはベクターが、この目的の追加のマーカーを含有する場合もある。この点に関しては、発現ベクターは、好ましくは、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含有して、形質転換されている宿主細胞の選択のための表現型形質を提供する。好ましいマーカーには、真核細胞の培養の場合は、ジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、ならびに大腸菌(E.coli)およびその他の細菌の場合は、テトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリンの耐性遺伝子が含まれる。
適切なDNA配列、ならびに適切なプロモーターおよびその他の適切な制御配列を含有するベクターを、所望のポリペプチドの宿主中での発現に適した多様な周知の技法を使用して、適切な宿主中に導入することができる。適切な宿主の代表的な例には、細菌細胞、例として、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)およびサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)の細胞;真菌細胞、例として、酵母細胞;昆虫細胞、例として、ショウジョウバエS2およびスポドプテラSf9の細胞;動物細胞、例として、CHO、COSおよびボーズ(Bowes)メラノーマの細胞;および植物細胞が含まれる。非常に多様な発現構築物に対する宿主が、よく知られており、当業者であれば、本開示によって、本発明のタンパク質のうちの1つを発現させるための適切な宿主を選択することできるであろう。
細菌において使用するためのベクターの例には、これらに限定されないが、Qiagen(Valencia、カリフォルニア州)から入手できるpQE70、pQE60およびpQE−9;Nature Technology Corp(Lincoln、ネブラスカ州)から入手できるpVEXK−HN−K6、Stratagene(La Jolla、カリフォルニア州)から入手できるpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNHSA、pNH16a、pNH18A、pNH46A;Amersham−Pharmacia Biotech(Piscataway、ニュージャージー州)から入手できるptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5;ならびにClontech(Palo Alto、カリフォルニア州)から入手できるpEGFP−C1、pEYFP−C1、pDsRed2−C1、pDsRed2−Express−C1、およびpAcGFP1、pAcGFP−Cl、pZsYellow−Clが含まれる。真核生物ベクターの例には、これらに限定されないが、Stratageneから入手できるpW−LNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTIおよびpSG;Pharmaciaから入手できるpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL;ならびにClontechから入手できるpCMVDsRed2−express、pIRES2−DsRed2、pDsRed2−Mito、pCMV−EGFPが含まれる。多くのその他の市販されている周知のベクターが、当業者には入手可能である。宿主細胞中での発現のための適切なベクターおよびプロモーターの選択は、周知の手順であり、発現ベクターの構築、ベクターの宿主中への導入および宿主中での発現のための必須の技法は、当技術分野では日常的な技術である。
また、本発明は、上記の構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は、哺乳動物細胞等のより高等な真核細胞、または酵母細胞等のより下等な真核細胞であることができ、あるいは細菌細胞等の原核細胞であることもできる。宿主細胞は、構築物を用いて、安定または一過性に形質移入することができる。ポリヌクレオチドを、単独で、またはその他のポリヌクレオチドと共に導入してよい。そのようなその他のポリヌクレオチドは、独立に導入しても、同時に導入しても、または本発明のポリヌクレオチドに結合させて導入してもよい。
構築物の宿主細胞中への導入は、リン酸カルシウムによる形質移入、DEAE−デキストラン媒介形質移入、カチオン性脂質媒介形質移入、エレクトロポレーション、形質導入、感染またはその他の方法によって達成することができる。そのような方法は、参照によって組み入れられている非特許文献39等、多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
また、この発明は、修飾された熱安定性のGGBPを産生する方法にも関し、この方法は、修飾された熱安定性のGGBPが発現されるような条件下で、本発明の宿主細胞を培養するステップと、当該タンパク質を回収するステップとを含む。現在の発明のタンパク質を発現するのに要求される培養条件は、現在の発明のポリヌクレオチドを収容している宿主細胞によって異なる。各細胞型についての培養条件は、当技術分野でよく知られており、必要であれば、容易に最適化することができる。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸、またはそのような核酸を含む構築物を、選択された宿主細胞に適した方法、例えば、形質転換、形質移入、エレクトロポレーション、感染によって、適切な宿主細胞中に導入することができ、当該核酸は、本明細書に記載するように、1つまたは複数の発現制御エレメントに動作可能に連結した状態となっている。宿主は、in vitroまたはin vivoでの発現に適した条件下で維持することができ、それによって、コードされたポリペプチドが産生される。例えば、宿主細胞を、インデュサー、適切な塩を補充した適切な培地、増殖因子、抗生物質、栄養補助剤等の存在下で維持することができ、これらは、タンパク質の発現を促進することができる。追加の実施形態では、本発明の修飾された熱安定性のGGBPは、修飾された熱安定性のGGBPをコードする核酸のin vitroでの翻訳、化学合成またはいずれかのその他の適切な方法によって産生することができる。必要に応じて、修飾された熱安定性のGGBPを、タンパク質が産生または分泌される宿主細胞またはその他の環境から単離することができる。したがって、修飾された熱安定性のGGBPを産生する方法は、遺伝子導入されている動物または植物の宿主細胞中でのポリペプチドの発現を包含することを理解されたい。参照によって組み入れられている特許文献69〜71を参照されたい。
本発明の修飾された熱安定性のGGBPは、工業的な過程等の多様な適用例において、および試料中の分析物の量を検出、モニターまたは測定するためのバイオセンサーの成分として有用である。バイオセンサーは、定量的または半定量的な特異的分析の情報を、GGBPまたは修飾GGBP等の生物学的認識の要素を使用して提供することが可能な装置であり、この要素は、変換する(検出する)要素と組み合さっている。分析物の例には、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類等の炭水化物、これらに限定されないが、オリゴペプチド、ポリペプチドおよび成熟タンパク質を含めたタンパク質、ペプチドおよびアミノ酸、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、脂肪酸、リポタンパク質、プロテオグリカン、糖タンパク質、有機化合物、無機化合物、イオン、ならびに合成および天然のポリマーが含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、分析物は、炭水化物である。具体的には、炭水化物の分析物は、グルコース、ガラクトースまたはリボースのような糖であることができる。より具体的には、分析物は、グルコースであることができる。
分析物は、試料中で測定される。本明細書で使用する場合、試料は、測定しようとする分析物を含有することを疑うことができる、いずれかの環境であることができる。したがって、試料には、これらに限定されないが、溶液、細胞、体液、組織またはその一部、および臓器またはその一部が含まれる。試料が、細胞を含む場合、細胞は、原核細胞または真核細胞、例えば、動物細胞であることができる。動物細胞の例には、これらに限定されないが、昆虫、鳥類、ならびに例えば、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ヒトおよび非ヒトの霊長類等の哺乳動物が含まれる。本発明の範囲が、検査する細胞型によって限定されてはならない。体液の例には、これらに限定されないが、血液、尿、唾液、滑液、間質液、脳脊髄液、リンパ液、胆汁および羊水が含まれる。本発明の方法の範囲が、検査する体液の種類によって限定されてはならない。「対象」および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用し、動物、具体的には、哺乳動物、より具体的には、ヒトまたは非ヒトの霊長類を意味するために使用する。
試料は、天然の環境から取り出されていても、またはそうでなくてもよい。したがって、検査する試料の部分は、試料の残りの部分または試料を含有する場合がある対象から分離または取り出される必要はない。例えば、対象の血液を、グルコースについて、血液の一部を患者から取り出すことなく検査することができる。もちろん、また、試料を、天然の環境から取り出してもよい。さらに、試料を、検査する前に処理することもできる。例えば、試料を、希釈または濃縮してよく;試料を、精製してよく、および/または内部標準のような、少なくとも1つの化合物を、試料に添加してよい。また、試料は、この発明の方法の前またはそれと同時に、物理的に変化(例えば、遠心分離、親和性による分離)させても、または化学的に変化(例えば、酸、塩基または緩衝液の添加、加熱)させてもよい。また、処理は、検査の前の試料の凍結および/または保存も含む。
本発明の別の実施形態は、GGBPを滅菌する方法に関する。周辺質結合タンパク質(PBP)を滅菌する方法は、参照によって本明細書に組み入れられている2007年2月22日公開の特許文献72に記載されている。具体的には、本発明の滅菌方法は、本発明の熱安定性GGBPを、少なくとも1つの放射線源に暴露するステップを含む。
本発明の1つの実施形態では、熱安定性GGBPを、放射線に対する暴露の前に、少なくとも1つのフリーラジカル捕捉剤の存在下に置く。フリーラジカル捕捉剤は、当技術分野では、よく知られており、本発明は、熱安定性GGBPが暴露される捕捉剤の個性(identity)に制限されてはならない。フリーラジカル捕捉剤の例には、これらに限定されないが、アスコルビン酸、グルタチオン、トコフェロールおよびトコトリエノールが含まれる。フリーラジカル捕捉剤の追加の例には、酵素が含まれ、これらに限定されないが、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ等がある。1つの特異的な実施形態では、フリーラジカル捕捉剤は、アスコルビン酸ナトリウムである。より具体的な実施形態では、アスコルビン酸ナトリウムは、少なくとも約5mM、10mM、15mM、25mM、35mM、50mM、75mM、100mM、125mM、150mM、175mM、200mM、250mM、300mMまたはそれを越える濃度で存在する。例えば、本発明のアクリロダンで標識した熱安定性GGBPの溶液(100μM)を、0、25または200mMのL(+)−アスコルビン酸ナトリム塩を含有するリン酸緩衝食塩水中で調製することができる。次いで、滅菌を、ガンマまたはe−ビームの照射を用いて行うことができる(例えば、約10から約20kGy)。
また、熱安定性GGBPを、これに限定されないが、バイオセンサー等の装置中に置くことができる。1つの実施形態では、バイオセンサーは、熱安定性GGBPを封入するマトリックスを含む。本明細書で使用する場合、「マトリックス」は、少なくとも1つの結合性分子を有する、本質的に三次元の環境を指し、この分子は、リガンド−タンパク質の相互作用からの検出可能なシグナルを測定する目的で、当該環境中に固定されている。熱安定性GGBPを封入することが可能なマトリックスの例が、参照によって組み入れられている2005年10月27日公開の特許文献73に開示されている。マトリックスの成分と熱安定性GGBPとの関係は、これらに限定されないが、共有結合性、イオン性およびファンデルワールスの相互作用、ならびにそれらの組合せを含む。マトリックスと熱安定性GGBPとの空間的な関係は、マトリックスの体積の一部または全部の中または上での不均一および均一な分布を含む。マトリックスは、有機、無機、ガラス、金属、プラスチックまたはそれらの組合せからなることができる。また、マトリックスは、バイオセンサーが繊維またはその他の小型の最小侵襲性のプローブの遠位の末端において組み入れられることを可能にし、このプローブは、患者の組織内に挿入されて、患者への突発性の、連続的なまたはプログラムされた読取りを可能にする。バイオセンサーから患者への情報を、例えば、遠隔測定手段、視覚的手段、聴覚的手段、または例えば、特許文献74〜78、および非特許文献40で教示されている、当技術分野で既知のその他の手段によって提供することができる。これらの文献はいずれも、参照によって組み入れられている。情報は、分析物の濃度または濃度変化が情報として適切であれば、それを得るのに適した電気的なもの、機械的なものおよび化学線を含む。
上記で言及したように、熱安定性GGBPを、ヒドロゲルのようなマトリックス内に封入することができ、次いで、これを埋込み型の装置として使用することができる。本明細書で使用する場合、「封入する(entrap)」という用語およびその変形は、「被包する(encapsulate)」と互換的に使用し、結合性分子を、マトリックスの成分内またはその上に固定化することを意味するために使用する。マトリックスは、分析物を透過させることができるのであれば、円板、円柱、パッチ、ナノ粒子、ミクロスフェア、多孔性ポリマー、オープンセル発泡体およびそれらの組合せのうちの1種または複数を含めた、いずれかの所望の形態または形状であることができる。さらに、マトリックスは、バイオセンサーの浸出も阻止する。マトリックスは、光源からの光、あるいはレポーター基へのまたはそれからの、いずれかのその他の測定光が、バイオセンサーを通過するのを可能にする。in vivoでの適用例で使用する場合、バイオセンサーは、分析物の実質的に生理的な範囲に暴露されることになり、分析物の濃度変化の決定または検出が望まれるであろう。決定または検出は、連続的な、プログラムされた、および突発性の検出手段を含む。したがって、本発明の1つの実施形態では、想定するin vivoバイオセンサーは、少なくとも1つの変異型結合性タンパク質を、分析物の透過が可能な封入型または被包型のマトリックス中に含み、それによって、変異型結合性タンパク質が、変化する分析物の濃度に暴露されると、検出可能な可逆性のシグナルを提供し、この検出可能な可逆性のシグナルは、分析物の濃度に関係付けることができる。いくつかの実施形態では、埋込み型のバイオセンサーは、哺乳動物の皮膚の上皮−真皮の接合部内またはその下に埋め込んで、間質液、組織またはその他の体液と相互作用させることができる。1つの具体的な実施形態では、バイオセンサーは、皮膚内に、約2mm未満の深さで埋め込まれる。より特異的な実施形態では、バイオセンサーは、皮膚内に、約1mm未満の深さで埋め込まれる。さらにより特異的な実施形態では、バイオセンサーは、皮膚内に、約0.8mm未満の深さで埋め込まれる。埋込み体から患者への情報は、例えば、遠隔測定手段、視覚的手段、聴覚的手段、またはすでに述べた当技術分野で既知のその他の手段によって提供することができる。
マトリックスは、生体適合性材料から調製すること、または、マトリックスに、身体との有害反応を最小化することが可能な材料を組み入れることができる。埋込み体に関する有害反応は、炎症、タンパク質の汚染、組織の壊死、免疫応答および有毒物質の浸出を含む。そのような材料および処理は、当技術分野ではよく知られかつ実行されており、例えば、非特許文献41および42に教示されている。
本発明の一態様では、熱安定性GGBPは、ヒドロゲルから実質的に誘導したマトリックス内に封入することができる。「ヒドロゲル」という用語は、水に不溶性の含水性材料を意味するために使用する。
多数のヒドロゲルを、本発明において使用することができる。ヒドロゲルは、例えば、多糖類、例として、アガロース、デキストラン、カラゲナン、アルギン酸、デンプン、セルロース、またはこれらの誘導体、例として、カルボキシメチル誘導体等、あるいは水膨潤性の有機ポリマー、例として、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、スチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、ビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、およびそれらの誘導体等であってよい。共有結合架橋ネットワークを提供する誘導体が好ましい。ポリペプチドに基づいた、それを含むヒドロゲルの合成、ならびに生物医学および薬学における適用例が、幾人かの研究者によって記載されている(例えば、非特許文献43を参照)。水溶性のUV架橋結合性ポリマーから誘導した、典型的なヒドロゲルのマトリックスは、PolyScience、Warrington、ペンシルベニア州から入手できるポリ(ビニルアルコール),N−メチル−4(4’−ホルミルスチリル)ピリジニウムメトサルフェートアセタール(CAS登録番号[107845−59−0])を含む。
マトリックス中で使用しようとする、ヒドロゲルのようなポリマーを、本発明で使用する場合には、官能性をもたせることができる。もちろん、その他のマトリックスにおいて使用されるポリマーもまた、官能性をもたせてよい。すなわち、ポリマーまたはポリマーをなすモノマーは、ヒドロゲルのような高分子マトリックスが化学反応、例えば、共有結合ができるように、反応性の基を有する必要がある。本明細書において使用する場合および一般に、「反応性の基」は、第2の基と化学的に反応することができる化学基である。ポリマーまたはポリマーをなすモノマーの反応性の基は、それ自体が化学的な構成要素の全体であっても、また化学的な構成要素の全体の一部、例として、これらに限定されないが、単一の原子またはイオンであってもよい。さらに、当該の反応性の基が反応することが可能である第2の基は、ポリマーまたはポリマーをなすモノマーの反応性の基と同一であるかまたは異なることができる。反応性の基の例には、これらに限定されないが、ハロゲン、アミン、アミド、アルデヒド、アクリレート、ビニル、ヒドロキシルおよびカルボキシルが含まれる。1つの実施形態では、ヒドロゲルのポリマーまたはポリマーをなすモノマーは、カルボン酸、サルフェート、ヒドロキシまたはアミンの基で官能性をもたせる必要がある。本発明の別の実施形態では、ヒドロゲルのポリマーまたはポリマーをなすモノマーは、1つまたは複数のアクリレート基で官能性をもたせる。1つの特定の実施形態では、アクリレートの官能基は、末端の基である。マトリックスのポリマーまたはポリマーをなすモノマーの反応性の基は、バイオセンサーのマトリックスの部分のいずれかの成分、例として、これらに限定されないが、マトリックス内の別のポリマーまたはモノマー、結合性タンパク質および添加剤と反応性であることができる。
本発明で使用する、いずれのヒドロゲルの芯も、いったん形成されると、高分子ヒドロゲルを形成するポリマーを含む必要がある。適用に関わらず、本明細書中の「ポリマー」という用語は、複数のモノマー単位からなる分子を指すために使用する。本発明で使用することができる適切なポリマーは、これらに限定されないが、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、加水分解されたポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタンポリエチレンアミン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、セルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ペクチニン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、硫酸化ヘパリン(heparin sulfate)、キトサン、カルボキシメチルキトサン、キチン、コラーゲン、プルラン、ジェラン、キサンタン、カルボキシメチルデキストラン、コンドロイチン硫酸、カチオン性グアー、カチオン性デンプン、ならびにそれらの塩およびエステルからなる群から選択されたポリマーのうちの1種または複数を含むことができる。また、マトリックスのポリマー、例として、ヒドロゲルは、2種以上の異なるモノマーを含んでもよい。マトリックス中での使用のためのコポリマーを生み出すために使用するモノマーには、これらに限定されないが、アクリレート、メタクリレート、メタクリル酸、アルキルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、アミノアルキルアクリレート、アミノアルキルメタクリレート、アミノアルキルアクリルアミドの四級アルキル塩、アミノアルキルメタクリルアミドの四級アルキル塩、およびそれらの組合せが含まれる。もちろん、マトリックスのポリマー成分は、その他のポリマーの混合物を含んでよい。本発明の1つの特定の実施形態では、ヒドロゲルのバイオセンサーが、結合性分子とマトリックスとを含み、当該マトリックスが、(ヒドロキシエチルメタクリレート)とメタクリル酸とのコポリマーのヒドロゲルを含む。本発明の別の特定の実施形態では、ヒドロゲルのバイオセンサーが、結合性分子と、(ヒドロキシエチルメタクリレート)、メタクリル酸およびメタクリルアミドの四級アルキル塩のコポリマーのマトリックスのヒドロゲルとを含む。
マトリックス中で使用するポリマーを、修飾して、求核基または求電子基を含有させることができる。実際に、本発明で使用するポリマーは、繰り返しのモノマー単位を含有しないが、多官能性である、すなわち、2つ以上の求核性または求電子性の官能基を含有する、多官能性小分子をさらに含んでもよい。これらの多官能性基は、複数の共有結合形成反応によって、従来のポリマー中に容易に組み入れることができる。例えば、PEGは、1つまたは複数のアミノ基を含有するように修飾して、求核基を提供することができる。1つまたは複数の求核基を含有する、その他のポリマーの例には、これらに限定されないが、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス−(2−アミノエチル)アミン、およびトリス−(2−アミノエチル)アミンのようなポリアミンが含まれる。求電子基の例には、これらに限定されないが、スクシンイミドエステル、エポキシド、ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、オキシカルボニルイミダゾール、炭酸ニトロフェニル、トレシレート(tresylate)、メシレート、トシレート、カルボキシレート、およびイソシアネートが含まれる。1つの実施形態では、組成は、ビス−アミン末端化ポリ(エチレングリコール)を含む。
ポリマーは、物理的または化学的のいずれかで架橋結合して、ヒドロゲルのようなマトリックスを形成することができる必要がある。物理的な架橋結合には、これらに限定されないが、放射線処理、例えば、電子ビーム、ガンマ線、X線、紫外線のような、非化学的な過程、アニオンによる処理、およびカチオンによる処理が含まれる。また、ポリマーの架橋結合は、共有結合架橋のような化学的な架橋結合も含むことができる。例えば、化学的な架橋結合系は、これらに限定されなが、当技術分野でよく知られている酵素の使用を含むことができる。化学的な共有結合架橋の別の例は、過酸化物の使用を含む。架橋結合試薬が、ポリマーの少なくとも2つの部分と反応して、三次元のネットワークを生み出すと、化学的な架橋結合を生じさせることができる。また、多官能性のモノマーを、架橋結合の過程の間に使用しても、共有結合架橋を生じさせることができる。例えば、アクリレートモノマーを、二官能性アクリレートモノマーと重合させて、架橋結合したポリマーを形成することができる。架橋結合試薬が、少なくとも部分的に水または有機溶媒に溶解し、架橋結合したポリマーを形成することができるのであれば、いずれの架橋結合試薬も本発明に適するであろう。例えば、ポリマーが、アミン末端化PEGである場合、架橋結合試薬は、PEG−アミン基と反応することができ、実質的に水に溶解性である必要がある。別の例では、水中またはジメチルホルムアミド中で、(ヒドロキシエチルメタクリレート)モノマーとメタクリル酸モノマーとを、ポリ(エチレングリコール)−ビス−アルキルアクリレート架橋結合試薬と共に重合させて、高分子ヒドロゲルを形成することができる。
架橋結合させようとするポリマーが、アミン(第一、二または三級)、チオール、チオエーテル、エステル、ニトリル等のような求核基の官能基を有する場合には、架橋結合試薬は、求電子基を含有する分子であることができる。求電子基の例は、本明細書に記載されている。同様に、架橋結合させようとするポリマーが、求電子基の官能基を有する場合には、架橋結合試薬は、求核基を含有する分子であることができる。当業者であれば、本実施形態の範囲から逸脱することなく、上記で記載した求核性官能基と求電子性官能基とを交換することができることを理解されたい。また、結合性の分子が、必要な求核性官能基および求電子性官能基を提供する場合があることも理解されたい。例えば、結合性分子がタンパク質である場合、求核性官能基および求電子性官能基が、タンパク質中の天然に存在するアミノ酸として存在していてもよく、または求核性官能基および求電子性官能基が、本明細書に記載する化学的な技法を使用して、タンパク質に導入されていてもよい。
ヒドロゲル等のマトリックスを形成するために、ポリマーを調製するか、または架橋結合させるためのその他の一般的な方法が、当技術分野ではよく知られている。例えば、いずれも参照によって本明細書に組み入れられている非特許文献44および45は、ヒドロゲルの形成を報告している。ヒドロゲルのマトリックスを、各センサーの先端、例えば、針に適用してから、Hgランプ下で、>360nmの波長を用いて、約15秒間硬化させることができる。
熱安定性GGBPは、ヒドロゲル(これに限定されない)のようなマトリックスに共有結合させる、またはその内部に非共有結合的に封入もしくは被包することができる。本発明の1つの実施形態では、結合性分子は、ヒドロゲルに共有結合している、すなわち、その内部に封入されている。結合性分子のヒドロゲルに対する共有結合が、結合性分子の標的リガンドに対する結合を妨げてはならない。さらに、結合性分子のヒドロゲルに対する共有結合は、分解に抵抗性でなければならない。1つの実施形態の官能基は、結合性分子をヒドロゲルとカップリングさせる役目を果たす、ヒドロゲルのポリマーまたはその他の成分である。結合性分子は、いずれかの多くの方法において、ヒドロゲルとカップリングさせることができる。例えば、ヒドロゲルと結合性分子との間のカップリング反応には、これらに限定されないが、ジアゾニウムのカップリング、イソチオシアノのカップリング、ヒドラジドのカップリング、アミド形成、ジスルフィドのカップリング、無水マレイン酸のカップリング、チオラクトンのカップリング、およびジクロロトリアジンのカップリングが含まれる。2つの官能基間のこれらのカップリング反応は、十分に文書化されており、当業者にはよく知られているとみなされる。例えば、結合性分子中のアミノ官能基は、ヒドロゲルの1つまたは複数の成分のカルボキシル官能基と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)またはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のようなカップリング剤を使用して、共有結合によってカップリングさせることができる。結合性分子のアミノおよびカルボキシルの官能基と、上記で記載したヒドロゲルの1つまたは複数の成分とは、本実施形態の範囲から逸脱することなく置き換えることができることを理解されたい。
1つの実施形態では、マトリックスは、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)とメタクリル酸(MAA)とを含む。PEGDMAのMAAに対する比は、特定の実施形態間で変化することができる。1つの実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約10:90モル%から約90:10モル%までの範囲であることができる。1つの具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約20:80モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約21:79モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約23:77モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約25:75モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約27:73モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約29:71モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約30:70モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約35:65モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約40:60モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約42:58モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約44:56モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約46:54モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約48:52モル%である。別の具体的な実施形態では、PEGDMA:MAAの比は、約50:50モル%である。また、HMPPのような開始剤も、ヒドロゲル中に種々の濃度で存在してよい。例えば、光開始剤は、全体積の約0.10%から約5%までの濃度で存在してよい。1つの実施形態では、光開始剤は、約0.1%から約1%までの濃度で存在する。具体的な実施形態では、光開始剤は、全体積の少なくとも約0.20%で存在する。具体的な実施形態では、光開始剤は、全体積の少なくとも約0.25%で存在する。具体的な実施形態では、光開始剤は、全体積の少なくとも約0.30%で存在する。具体的な実施形態では、光開始剤は、全体積の少なくとも約0.35%で存在する。具体的な実施形態では、光開始剤は、全体積の少なくとも約0.40%で存在する。
本明細書で議論するように、本発明のバイオセンサーは、高分子マトリックス中に封入された熱安定性GGBPを含むことができ、これは、続いて、針の先端内に含有される。いくつかのセンサー、例として、皮下の埋込み体は、時間のずれを示すことが多い。特に、より大きなゲージのセンサー、すなわち、21および25のゲージは太過ぎて、浅い皮膚深度では正確に読み取ることができない。浅い深度の皮膚組織におけるグルコースレベルは、血液中のグルコース値と比較した場合、時間の遅れが、仮にあったとしも、ほとんどないようである。この浅い深度の貫通によって、正確なグルコース濃度レベルのための間質液の試料採取が、ほとんど時間のずれなしで可能となる。したがって、1つの実施形態では、バイオセンサーの針は、31ゲージまたはそれより細い針であり、これによって、対象の皮膚に、浅い深度、例えば、約2mm未満、約1mm未満または約0.8mm未満でさえ貫通することが可能となり、ほとんどまたは全く時間のずれなしで、正確なグルコースの読みを提供する。
また、本発明は、本発明の熱安定性GGBPを含む装置にも関する。一般に、この装置は、(i)近位末端および遠位末端を有する光学コンジット(optical conduit)と;(ii)光学コンジットの遠位末端と光学的に近接している検出要素とを含み、この検出要素は、本発明の熱安定性GGBPのうちの少なくとも1つと、少なくとも1つのレポーター基とを含む。
光学コンジットは、長さが約0.1cmから1メーターまで変化することができ、光を、光学系の内外および検出要素の内外に連結する。例えば、光学コンジットは、レンズ、反射チャネル、針または光ファイバーであってよい。光ファイバーは、(単一モードまたは多重モードの)光ファイバーの一本鎖であっても、あるいは2本以上のファイバーの束であってもよい。1つの実施形態では、繊維の束は、二股に分かれている。繊維は、患者の皮膚に貫通できるように、先細になっていても、またはなっていなくてもよい。
光学系は、光学コンジットの近位末端に接続することができる。光学系は、1つまたは複数の励起源と1つまたは複数の検出器の組合せからなる。また、光学系は、フィルター、二色性の要素、電源、ならびにシグナルの検出および調節のための電子部品からもなってよい。光学系は、任意選択的に、マイクロプロセッサを含んでよい。
光学系は、1つまたは複数の光の測定波長(interrogating wavelengths)を光学コンジット中に連結することによって、連続的または断続的のいずれかで、試料を測定する。次いで、その1つまたは複数の測定波長が、光学コンジットを通過し、検出要素に照射する。分析物の濃度の変化が、波長、強度、寿命、エネルギー移動の効率および/または検出要素の一部であるレポーター基の発光の偏光の変化を起こすことができる。得られた変化した発光のシグナルが、光学コンジットを通過して、光学系に戻り、そこで、シグナルが検出され、解釈され、かつ保存および/または表示される。特定の実施形態では、光学系は、複数の励起源を含む。これらの源の1つまたは複数は、検出されたシグナルを動的にシグナル処理することができるように調節することができ、それによって、シグナル対ノイズおよび検出感度を増強する。また、装置による電力消費を減少させるように、または光退色のような望まれない現象を最小化することによって、検出要素の寿命を延長するように調節を行ってもよい。また、光学系は、1つまたは複数の電磁エネルギーの検出器も含むことができ、この検出器は、レポーター基および光学的に参照する基からの発光シグナルを検出するため、ならびに内部的な参照および/または較正のために使用することができる。装置が電池の電力によって動作できるように、光学系の全体的な電力は、少ない消費に保たれる。
以下の実施例は、例示的なものであって、本明細書に記載する発明の範囲を限定する意図はない。
(実施例1)
修飾された熱安定性のGGBPの構築および産生
いくつかのアスパラギンおよびグルタミンの残基を含めた、「3M−GGBP」と名付けられているGGBP(配列番号3)のアミノ酸残基を、BLASTP検索によって決定した野生型大腸菌(E.coli)GGBP(配列番号1)中の類似のアミノ酸配列とのコンセンサスアライメントに基づいて、置換のために選択した。特に、3M−GGBPの以下の21個のアミノ酸を、置換のために選択した:アスパラギン39(N39)、アスパラギン酸50(D50)、グルタミン51(Q51)、グリシン82(G82)、グルタミン83(Q83)、アスパラギン84(N84)、アスパラギン130(N130)、グルタミン175(Q175)、グルタミン177(Q177)、ロイシン178(L178)、グリシン198(G198)、プロリン199(P199)、アスパラギン200(N200)、アスパラギン226(N226)、アスパラギン259(N259)、アスパラギン260(N260)、リジン270(K270)、アスパラギン271(N271)、アスパラギン283(N283)、トリプトファン284(W284)、およびアスパラギン302(N302)。
次いで、3M−GGBPの21個の選択した残基のそれぞれを、別々に置換して、13種の最初の修飾GGBPを生み出した。BLASTP検索によって決定した野生型大腸菌(E.coli)GGBP(配列番号1)に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質のアライメントを使用して、置換アミノ酸の同一性を決定した(表Iを参照)。修飾3M−GGBPは、3M−GGBP構築物中で、QuickChange(商標)法(Stratagene)を使用して産生した。オリゴヌクレオチドを、標的残基をその他のアミノ酸で置換するように設計した。いくつかの場合には、オリゴヌクレオチドは、特定の座位、例えば、G82、Q83およびN84における、3個までのアミノ酸を置換するように設計した。標準的な反応混合物、PCRおよび設計したオリゴヌクレオチドを使用して、鋳型3M−GGBPプラスミド中で、変異を作製した。PCR後、QuickChangeのプロトコールに従って、産物を、DpnIで消化し、大腸菌(E.coli)中に形質転換した。大腸菌(E.coli)中への形質転換後、プラスミドDNAを精製し、所望の配列変化を、DNA配列決定によって確認した。以下の表Iに示す13種の変異のそれぞれを、このようにして産生および確認して、修飾3M−GGBPのためのDNA鋳型を生み出した。
同様に、「W183C」と名付けられているGGBP(配列番号4)のアミノ酸を修飾することができる。特に、W183Cの以下の21個のアミノ酸を、置換のために選択した:アスパラギン39(N39)、アスパラギン酸50(D50)、グルタミン51(Q51)、グリシン82(G82)、グルタミン83(Q83)、アスパラギン84(N84)、アスパラギン130(N130)、グルタミン175(Q175)、グルタミン177(Q177)、ロイシン178(L178)、グリシン198(G198)、プロリン199(P199)、アスパラギン200(N200)、アスパラギン226(N226)、アスパラギン259(N259)、アスパラギン260(N260)、リジン270(K270)、アスパラギン271(N271)、アスパラギン283(N283)トリプトファン284(W284)、およびアスパラギン302(N302)。
3M−GGBP中に上記で設けた同一の置換を、W183Cを修飾するための置換として選択した。修飾W183Cは、W183C構築物中で、QuickChange(商標)法(Stratagene)を使用して産生した。標準的な反応混合物、PCRおよび設計したオリゴヌクレオチドを使用して、鋳型3M−GGBPプラスミド中で、変異を作製した。PCR後、QuickChangeのプロトコールに従って、産物を、DpnIで消化し、大腸菌(E.coli)中に形質転換した。大腸菌(E.coli)中への形質転換後、プラスミドDNAを精製し、所望の配列変化を、DNA配列決定によって確認した。
修飾GGBPを、標準的なプロトコール(Qiagen)に従って、大腸菌(E.coli)株Sg13009から発現させた。誘導後、細菌を、Bugbusterタンパク質抽出試薬(Novagen)を使用して溶菌し、Talconコバルト2+樹脂(Clontech)を使用してIMACによって精製した。溶液中の精製されたタンパク質を、100kDaのカットオフフィルターを通してろ過し、次いで、10kDaのカットオフフィルター(Millipore)を使用して濃縮した。タンパク質(1〜2mg/ml)を4℃で、1M NaCl、10mM Tris−HClおよび50mM NaPO4(pH8)を含有する溶液中に透析し、4℃で保存した。これらの条件下で、タンパク質は、少なくとも6カ月間活性を有した。精製からの収量は、約10mg/lであった。
(実施例2)
修飾GGBPの融解温度の決定
円二色性(CD)スペクトルを、JASCO J−810上で行った。精製されたフルオロフォア標識タンパク質の試料は、(137mM NaCl、10mM リン酸および2.7 mM KCl、pH7.4からなる)リン酸緩衝食塩水(PBS)中に徹底的に透析した。3M−GGBPおよびW183C−GGBPの二次構造の損失を、222nmにおけるCDシグナルを温度の関数として記録することによって観察した。実験の間、試料の温度は、20℃と80℃との間で、約1℃/分の速度で変化させた。移行の中間点における見かけの融解温度(Tm)を、実験のデータ点をシグモイド関数に当てはめる(CDシグナル対温度)ことによって得た。
以下の表IIは、13種の修飾GGBPのそれぞれの円二色性研究からの結果を示す。修飾タンパク質1、3、5および10が、参照タンパク質と比較して最も大きなTmの上昇を有した。
(実施例3)
複数のアミノ酸置換を有する修飾された熱安定性のGGBPの構築
実施例2の結果に基づいて、先の実施例からの残基置換番号N391、G82E、Q83K、N84D、Q175E、Q177H、L178M、N259EおよびN260Sを含む、2種の別々の修飾GGBPを構築した。この実施例では、2種の参照タンパク質は、3M−GGBPおよびW183Cであった。両方の修飾タンパク質を、実施例1と同様に構築した。手短にいうと、置換された座位をコードする構築物を構築し、確認のためにDNAを配列決定した。次いで、プラスミドDNAを鋳型DNAとして使用して、置換された座位を加え、したがって、各配列が、N39I、G82E、Q83K、N84D、Q175E、Q177H、L178M、N259EおよびN260Sに対応している置換を含む点で異なる、3M−GGBPタンパク質(配列番号3)またはW183C(配列番号4)をコードするプラスミドDNAベクターを産生した。
(実施例4)
修飾された熱安定性のGGBPの標識化
参照によって組み入れられている2005年5月26日公開の特許文献79を使用して、変異1、3、5および10(表Iを参照)を有するW183CであるSM4タンパク質を、蛍光の構成要素(アクリロダン)で標識し、表Iからの変異1、3、5および10を有する3M−GGBPを、蛍光の構成要素(IANBD)で標識した。
SM4は、以下のように標識した。ジメチルスルホキシド(DMSO−6.14mL)を、実施例5の(親和性タグを有する)修飾GGBPタンパク質の溶液(60.3mL PBS、pH7.4中の100mg)に添加した。次いで、DMSO中の12mMアクリロダンの565μLの一定分量(aliquot)を、溶液に添加した。溶液中のDMSOの最終的なパーセントは、約10%であった。フラスコを、アルミ箔で覆い、室温で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を26,712RCF(相対遠心力)で10分間遠心分離した。上清を取り出し、5μmのSuporフィルター(Pall Corporation、East Hills、ニューヨーク州、米国)を通過させた。
アクリロダンで標識した後、SM4は、凍結保存のために、緩衝液に移した。タンパク質を、0.01M MES、30mMグルコース(pH5.5〜5.7)の溶液に対して、緩衝液を3回交換して24時間透析した。透析後、タンパク質を、定量化し、同一の緩衝液を使用して希釈して、100μM溶液とした。次いで、バイアルを、保存のために、−70℃の冷凍庫中に直接置いた。これらの条件下で、タンパク質は、少なくとも3カ月間は安定である。
SM4タンパク質を凍結乾燥するために、タンパク質溶液を、炭酸水素アンモニウム(50mM、pH7)に対して、緩衝液を3回交換して24時間透析した。タンパク質は、0.2μmのSuporフィルター(Pall)を通過させ、褐色バイアル中に分注した(aliquoted)(2mg/バイアル)。バイアルを、−70℃で3時間凍結し、次いで、タンパク質を20時間凍結乾燥した。最終的な収量は、約86mgのタンパク質であり、染料/タンパク質の比は、約0.94であった。これらの条件下で、タンパク質は、少なくとも6カ月間は安定である。タンパク質の凍結保存のために、タンパク質溶液を、0.01M MESの溶液(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、30mMグルコース(pH5.5〜5.7)の溶液に対して、緩衝液を3回交換して24時間透析した。タンパク質を凍結して、−70℃で保存した。
(実施例5)
修飾および標識されたGGBPの融解温度の決定
実施例2と同一のプロトコールを使用して、実施例3で調製した修飾GGBP(修飾された3M−GGBPおよびW183C)の融解温度を決定した。修飾W183C−GGBPの測定Tmは、参照タンパク質(W183C)よりも約9.4℃高かった(図1)。同様に、上記の表Iからの置換番号1、3、5および10を有する修飾3M−GGBPも、より高いTmを示した。以下の表IIIは、本発明の2種の修飾GGBPについてのTmの上昇を示す。
(実施例6)
親和性タグを有する修飾GGBP
SM4タンパク質を、大きなタンパク質収量(6〜7g/L)をもたらすベクター中にクローン化した。このベクターは、親和性による精製および複合体形成の目的で、W183C(1,3,5,10)タンパク質上に追加の30残基を取り付けた。ベクターは、ポリペプチドのN末端上に、N末端からC末端の方向に、アミノ酸配列MGHNHNHNHNHNHNGGDDDDK(配列番号5)を、およびC末端上に、N末端からC末端の方向に、アミノ酸配列GGKKKKKKEE(配列番号6)を添加する。このタンパク質の融解温度は、末端の付加が存在する状態では、PBS(0.1g/L CaCl2(無水)および0.1g/L MgCl2−6H2Oを有する)中で、約53℃であると決定された。一方、このタンパク質の融解温度は、末端の付加が存在しない状態では、PBS中で、約55.4℃であると決定された。末端の付加を有するSM4のグルコース親和性は、19.6mMであると測定され、蛍光応答(Qr)は、4.8として測定された。
(実施例7)
標識した修飾された熱安定性のGGBPを使用した、分析物の濃度の測定
修飾された熱安定性の3Mタンパク質およびW183Cタンパク質について、非特許文献18(参照によって組み入れられている)に開示されている蛍光アッセイを使用して、タンパク質のグルコース結合活性を確認した。染料−タンパク質のカップリングを、IANBDと名付けられているフルオロフォア(N,N’−ジメチル−N−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)エチレンジアミンまたはアクリロダンを用いて、製造業者(Molecular Probes)の記載に従い行った。
手短にいうと、0.5mlの3M−GGBP(1〜2mg/ml)を、2.5モル過剰量のジチオトレイトールで30分間処理した。次いで、DMSO中の10倍モル過剰のIANBDの溶液(0.5mg/100μL)を添加した。遮光しながら、タンパク質と染料とを、25℃で4時間穏やかに混合してから、未反応の染料を、Nap−5カラムクロマトグラフィー(Amersham Biosciences)によって除去した。
カップリングの効率を、以下の吸光度によって決定した。
式中、Axは、染料の吸収最大波長における吸光度の値であり、εは、染料の吸収最大におけるモル消衰係数である。MWp、mgp/mlおよびモルp(moleP)はそれぞれ、タンパク質の分子量、濃度およびモル数である。染料のモル数は、モルd(moled)である。
PBS中の0.1μMタンパク質中に、グルコースの濃度を増加させて滴定し、蛍光の変化をモニターすることによって、結合定数を決定した。Kdを、PisarchickおよびThompsonから適合させた以下の関係から決定した(非特許文献46を参照)。
式中、Fは、蛍光の強度であり、Finfは、無限大での蛍光であり、F0は、0における蛍光である。
式中、[Glc]freeは、遊離のグルコースの濃度であり、[Glc]totおよび[Prot]totは、グルコースおよびタンパク質のそれぞれの全濃度である。SM4の場合、514〜540nmの蛍光曲線下の面積の450〜470nmにおける曲線下の面積に対する比を、上記の式において、蛍光の強度の代わりに使用した。しかし、この発明は、蛍光を測定する場合またはグルコースの濃度を評価する場合の蛍光の特定の波長領域に限定されない。
結合実験の結果は、実施例3に従って産生した、アクリロダン標識SM4もまた、参照W183C−アクリロダンと比較して、蛍光応答が増加することを実証している(表IIIを参照)。図2は、IANBDで標識した3M−GGBP(1,3,5,10)を、グルコースの濃度を増加させて(0、5、10、30、50および100mM)滴定した場合の蛍光の強度の増加を示す。
(実施例8)
GGBPの選択された残基におけるアミド分解を定量化するための液体クロマトグラフィーフーリエ変換質量分析(LC−FTMS)
追加のアミド分解の部位を同定するために、液体クロマトグラフィー−フーリエ変換質量分析(LC−FTMS)を使用して、W183CおよびSM4中のアスパラギン残基におけるアミド分解を定量化した。(実施例5からの)W183CおよびSM4は、25℃での保存または熱処理(60℃で18時間)のいずれかを行った後、トリプシンで消化した。次いで、ペプチドを、15cmのPep−Map C18キャピラリーカラム(75ミクロンid)を使用して、約5%から約95%までのアセトニトリルの30分の勾配を用いて分離し、LC−FTMSによって分析した。アミド分解は、約1ダルトンの質量シフトを起こす。試料を、アミド分解の二重項について調べ、相対的なアミド分解のピークの比として報告した。この場合、より小さな比は、残基のより大きな程度のアミド分解を示す。表IVに、ペプチド配列の残基の相対的なアミド分解のレベルを示し、数字が小さくなると、アミド分解のレベルが大きくなる。表Vは、定量的なアミド分解の過程によって同定した可能性のあるアミノ酸置換を示す。
<配列表における配列の簡単な説明>
配列番号1は、野生型(大腸菌(E.coli))GGBPのアミノ酸配列である(GenBankアクセッション番号2GBP)。
配列番号2は、野生型(大腸菌(E.coli))GGBPのアミノ酸配列である(GenBankアクセッション番号P0AEE5)。
配列番号3は、3M−GGBPのアミノ酸配列であり、これは、野生型GGBP(配列番号1)と比較して、以下の残基の置換を有する:E149C、A213RおよびL238S。
配列番号4は、W183C−GGBPのアミノ酸配列であり、これは、野生型GGBPと比較して、W183Cの残基の置換を有する。
配列番号5は、アミノ酸タグのアミノ酸配列であり、これは、対象のポリペプチドのN’末端に付加することができ、ペプチドの精製に有用である。
配列番号6は、アミノ酸タグのアミノ酸配列であり、これは、対象のポリペプチドのC’末端に付加することができ、ペプチドの精製およびタンパク質の結合に有用である。