JP5334120B2 - 超電導材料、超電導薄膜及びその製造方法 - Google Patents

超電導材料、超電導薄膜及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、超伝導転移温度(Tc)の高い鉄ヒ素系超電導材料、超伝導薄膜及びこれらの製造方法に関する。
近年、室温超伝導を目指す超伝導材料の開発が盛んに行われている。超伝導材料は、線材、薄膜、バルク材の形状で利用され、例えば超伝導送電線、超電導磁石(例としてリニアモーターカーやMRI用磁石)、超伝導デバイスに利用されている。その中で、高温超伝導体の材料として、鉄系超伝導体が報告され、開発が進められている。鉄系超伝導体として、化学式LnFeOPh(LnはY及び希土類元素の少なくとも一種であり、Phは、P、As、及びSbのうちの少なくとも1種)で示され、ZrCuSiAs型(空間群P4/nmm)の結晶構造を有する超伝導化合物が知られている(特許文献1)。特許文献1では、フッ素をドープした化学式LaFeOPh(Phは、P、As、及びSbのうちの少なくとも1種)を提案し、LaFeO0.940.06Asで超伝導転移温度が7K付近の超伝導体が得られることが記載されている。
本発明者らは、LnFeAsO1−y(Lnは、ランタノイド元素でLn=La,Ce,Pr,Nd,Sm等、yは酸素欠損率)という化学式で表される新しい超伝導体(最高Tc〜54K)を開発した(非特許文献1、2)。この物質の新しい点は、従来フッ素を用いないと超伝導材料にならなかった物質LnFeAsOを、酸素を欠損させる(1−y)だけで、50Kを超える高いTcを得た点にある。
特開2007−320829号公報
伊豫彰他、「鉄ヒ素系新高温超伝導体の合成と基礎物性」固体物理、Vol.43,No.10,2008,p.53−64 伊豫彰、「鉄系新超伝導体の高圧合成」高圧力の科学と技術、Vol.19,No2,p.106−112
従来の鉄系超伝導材料(特許文献1)では、フッ素をドープして超伝導転移温度Tcの高い材料を得ている。しかしながら、フッ素がドープされにくいこと、安定なフッ素化合物LnOFが不純物として試料に残留しやすいことから、良質な試料の合成が困難であった。
フッ素をドープしないで高いTcを得るために、本発明者らは、酸素欠損型の鉄ヒ素系材料を開発した(非特許文献1、2)。このLnFeAsO1−y(Lnは、ランタノイド元素でLn=La,Ce,Pr,Nd,Sm等)では、酸素の欠損量を多くするにつれ結晶格子が収縮し、Tcを向上できることがわかっている。なお、本発明者らは、LnFeAsO1−yで高いTcが得られる結晶構造上の特徴を見つけて出願をしている(特願2008−301827)。
LnFeAsO1−yで高いTcが得られる結晶構造上を実現する為には、酸素を欠損させて結晶格子を収縮させることが重要であった。50K以上の高いTcを持つ超電導材料を得るためには、多くの酸素を欠損させる必要が有る。しかしながら、多くの酸素を欠損させると試料の合成が困難になるという問題があった。
良質なバルク材合成や薄膜作製がより実用的な方法で作製できる鉄ヒ素系超伝導材料が望まれている。また、従来のフッ素を含む材料の薄膜作製では、フッ素が入りにくいため、超伝導になる薄膜を作製することが困難であるという問題があった。
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、鉄ヒ素系超伝導材料において、高いTcを有する良質な超電導材料を得て、焼結体、単結晶体、薄膜を提供することを目的とするものである。また、そのための製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
本発明の鉄ヒ素系超電導材料は、水素を含有することを特徴とする。本発明の鉄ヒ素系超電導材料は、ZrCuSiAs型の結晶構造を有することを特徴とする。本発明の鉄ヒ素系超電導材料は、酸素欠損型に水素を含有させることが好ましいが、酸素欠損型でない化学式LnFeAsOで表される母物質に水素を含有させても良い。具体的には、酸素欠損型とは、化学式LnFeAsO1−y(Y及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上で0.5以下)で表される物質である。yが0の場合は実質的に酸素欠損型でない母物質を表している。
本発明の鉄ヒ素系超電導材料は、化学式LnFeAsO1−y(Y及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表されることを特徴とする。具体例は、LnはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dyなどである。
本発明の方法は、鉄ヒ素系超電導材料を製造する方法であって、水素を含有させることを特徴とする。本発明の方法における鉄ヒ素系超電導材料は、ZrCuSiAs型の結晶構造を有することを特徴とする。具体的には、水素を含む物質を出発原料として用いて、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導材料を製造することを特徴とする。また、ZrCuSiAs型の結晶構造を有する化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下)を合成した後に、水素を含有させて製造することを特徴とする。
本発明の鉄ヒ素系超電導薄膜は、水素を含有することを特徴とする。本発明の鉄ヒ素系超電導薄膜は、ZrCuSiAs型の結晶構造を有することを特徴とする。本発明の鉄ヒ素系超電導薄膜の製造方法は、水素を含有する物質をターゲットとして用いて、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導薄膜を成膜することを特徴とする。また、水素を含む原料ガスを用いて、前記超電導薄膜を成膜することを特徴とする。また、水素ガスを含む雰囲気中で前記超電導薄膜を製造することを特徴とする。
本発明は、鉄ヒ素系超伝導材料に水素を含有させることにより、良質な超伝導体が得られた。水素を含有させることによって、結晶格子を大きく収縮させることができ、そのため、酸素を多く欠損させることなく、高いTcの超電導材料を得ることができた。また、結晶中に入らなかった余分な水素は、超電導材料から製造過程で自然に出て行くので、超電導材料中の不純物が少なくできるという効果が有る。
本発明の鉄ヒ素系超電導材料は、酸素欠損型が好ましいが、酸素欠損型でない化学式LnFeAsOに水素を含有させても効果を奏する。酸素欠損型であれば、酸素が欠損した場所に水素が入りやすくなるため、より水素を含有させやすい効果があるので好ましい。
本発明では、水素を含有させることにより、LnがLa、Ceの場合、従来のフッ素置換型、酸素欠損型に比べて、Tcが高くなる効果が得られた。また、水素を含有させることにより、LnがPrの場合、従来の酸素置換型に比べてTcが高くなる効果が得られた。また、水素を含有させることにより、従来のフッ素置換型に比べて純度の高い試料が得られた。即ち、実際に原料に水素を混ぜ込んで多結晶試料を合成することにより、不純物が大幅に低下する効果が得られた。水素を含有させることにより、フッ素を用いる場合と比較して、格子を収縮させる効果が大きいので、優れた超伝導特性を得ることができた。従来のフッ素置換型鉄ヒ素系超伝導材料では、フッ素を含む原材料を用いるので、どうしても材料中に、安定なフッ素化合物LnOFが不純物として残留し超伝導特性に影響を及ぼしていたが、本発明では、水素を含む原料を用いるので、余分な水素は材料外に自然に吐き出されて材料中に残留しないために、不純物による悪影響が少ない。余分な水素は、一時的にLn(OH)になると推測されるが、この化合物は高温では分解するため、試料中には残らないと考えられる。
本発明は、水素を含有させることにより、結晶格子を大きく収縮させることができるので、高圧合成において、従来より小さな圧力でTcの高い超電導材料を製造することができる。
本発明の超電導薄膜は、水素を含有させることにより、優れた超電導特性を示す。さらに、薄膜の格子定数を大きく変化させることができるため、基板と超電導薄膜の格子定数のマッチングを取りやすくなる。また、薄膜の格子定数を大きく変化させることができるため、用いる基板の選択肢が広がる。よって、水素を含有させることにより従来困難であった薄膜の形成が容易になった。
本発明の実施例1の超電導材料の粉末X線回折パターンを示す図。 本発明の実施例2の超電導材料(Ln=Sm)の格子定数(a軸長)と超電導転移温度(Tc)の関係を示す図。 本発明の実施例3の超電導材料(Ln=La)の帯磁率の温度依存性を示す図。
本発明の超電導材料は、水素を材料の構成要素として含むLnFeAsOをベースとする鉄系高温超電導材料であり、化学式で書くとLnFeAsO1−yに関する。ここで、Lnは、Y及びランタノイド元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)からなる群から選択される少なくとも一種の元素を表す。ランタノイドの具体的な元素として、例えば、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dyが挙げられる。これらの元素は、比較的良質な試料が合成しやすくTcが高い。酸素欠損率yは、LnFeAsO結晶からの酸素の欠損率を示している。y=0は、酸素が欠損していないことを示し、y=1は酸素がないことを示している。1−yは酸素が欠損していることを表している。上記化学式において、xとyは、等しくなくてよい。また、(1−y)とxの和が、1より大きくても良い。この場合は、水素原子が小さいので、結晶の隙間に入る可能性がある。即ち、(1−y)とxの和が、1以下でも1以上でもよい。
本発明の超電導材料を作製するには、LnFeAsOを母物質とする鉄系高温超電導材料を合成するときに、水素を材料の構成要素として用いることにより、超電導特性を飛躍的に高めることができる。本発明の超電導体の母物質であるLnFeAsOは、ZrCuSiAs型の結晶構造を有している。本発明では、水素を含有させることにより、鉄ヒ素系超電導材料の格子定数を収縮させてTcの高い超電導材料を作製した。以下、実施の形態について述べる。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1は、多結晶体の超電導材料に関する。従来のLnFeAsOの製造において用いていた原料に、水素を含有させるための原料として、Ln(OH)という水酸化物を用いる。ここでLnはランタニドの元素の少なくとも1つ以上を表す。まず、原料であるLnAs,Ln(OH),As,Fe,Feを適切な比率(例えばLnFeAsO0.70.2)で混合する。具体的には、LnAs前駆体、As、Fe粉(フルウチ化学、99.9%、100mesh)、αFe(レアメタリック、99.9%)とLn(OH)とを混合して混合粉とした。原料は、Ln:Fe:As:O:H=1:1:1:(1−y):xの組成比になるように秤量する。酸素量はFeとFe混合比により調節できる。
次に混合粉を加圧してペレット状にする。ペレットに適切な圧力(1〜5万気圧)を加えた状態で、適切な温度(約800℃〜1200℃)で加熱する。以上の高圧合成法で行う。Smより原子番号が大きなランタノイドでは、Tc、格子定数の合成圧力依存性が大きい。一方LnがLaからNdまでは2GPa程度の圧力で合成できるので、より小型で簡便な高圧装置でも合成が可能である。なお、合成方法については、高圧合成法に限定するものではない。封管法を用いてもよい。
(実施例1)
実施例1では、ランタノイドとしてSmを用いて超電導材料を合成した。原料としてSmAs、Sm(OH)、As、Fe、Feを適切な比率で混合した。SmFeAsO1−yにおける酸素欠損率yが0.2、水素の含有量xが0.15となるように、粉末の組成比を調整した。yはLnFeAsO結晶からの酸素の欠損率を示している。混合粉を加圧してペレット状にする。ペレットに2万気圧を加えた状態で、1100℃で加熱した。以上のような合成法で、SmFeAsO0.80.15の焼結体を合成した。
比較例1として、水素を原料に混ぜない点以外は同様の製法でSmFeAsO0.8を合成した。
図1に、実施例1のSmFeAsO0.80.15と比較例1のSmFeAsO0.8の粉末X線回折パターンを示す。比較例のSmFeAsO0.8(図1下段)では、黒丸で示す不純物SmAsのピークが見られるのに対して、実施例1のSmFeAsO0.80.15(図1上段)では、不純物に由来するピークが無いので純度が高くなっていることがわかる。なお、図1の右上の黒丸は、黒丸がSmAsを示す説明のためのものである。また、実施例1のSmFeAsO0.80.15(図1上段)は、結晶格子の格子定数のa軸長が3.911Å、c軸長が3.443Åである。一方、水素を含有しない比較例1は、a軸長が3.927Å、c軸長が3.469Åである。このように、実施例1のSmFeAsO0.80.15の格子定数は、SmFeAsO0.8の格子定数より小さくなっている。また、比較例1のSmFeAsO0.8の超電導転移温度(Tc)が、約40Kであるのに対し、実施例1のSmFeAsO0.80.15のTcは約54Kであった。
(実施例2)
本実施例では、ランタノイドとしてSmを用い、結晶格子の格子定数のa軸長の異なる超電導材料を合成して、超電導材料の特性を調べた。原料としてSmAs、Sm(OH)、As、Fe、Feを適切な比率で混合した。SmFeAsO1−yにおける酸素欠損率yが0.15〜0.25、水素の含有量xが0.1〜0.2になるように原料の組成比を調整して、a軸長の異なる超電導材料を作製して、格子定数a軸長と超電導転移温度(Tc)の関係を調べた。実施例1と同様に合成した。
比較例2として、水素を原料に混ぜない点以外は同様の製法でSmFeAsO1−yを合成した。酸素欠損率yを0.15〜0.35に変化させてa軸長の異なる超電導材料を作製して、格子定数a軸長と超電導転移温度(Tc)の関係を調べた。
図2に、実施例2のSmFeAsO1−y(黒丸)と、水素を加えていない比較例2のSmFeAsO1−y(白丸)の、格子定数a軸長と超電導転移温度(Tc)の関係を示す。SmFeAsO1−yでは、a軸長が3.915Åまでしか縮まないのに対して、SmFeAsO1−yでは、3.897Åにまで大きく縮んでいる。水素を含有させた超電導材料におけるこの性質は、格子の収縮が超電導を引き起こすFe系超電導体にとって、大変都合が良い。また、図1に示すように、SmAs不純物を大きく減らす効果もあった。
(実施例3)
本実施例では、ランタノイドとしてLaを用いた。原料としてLaAs、La(OH)、As、Fe、Feを適切な比率で混合した。原料の粉末の量は、LaFeAsO1−yにおける酸素欠損率yが0.3、水素の含有量xが0.3となるように、粉末の混合量を調整した。酸素欠損率はLaFeAsO結晶からの酸素の欠損率を示している。混合粉を加圧してペレット状にする。ペレットに2万気圧を加えた状態で、1100℃で加熱した。以上の高圧合成法で、LaFeAsO0.70.3を合成した。
比較例3として、水素を原料に混ぜない点以外は同様の製法でLaFeAsO0.7を合成した。
図3に、水素を加えた超電導材料LaFeAsO1−y(例LaFeAsO0.70.3)と、水素を加えていない超電導材料LaFeAsO1−y(例LaFeAsO0.7)との、帯磁率の温度依存性を示す。帯磁率に変化が出る温度(図3中に矢印で示す)が、超電導転移温度(Tc)である。LaFeAsO1−yでは、Tcは最高でも28Kであるのに対して、LaFeAsO1−yでは、35Kにまで上昇している。このTcは、LaFeAsOを母物質とする超電導体の最高記録である。なお、格子定数(a軸長)が、LaFeAsO0.7で4.02Åであるのに対して、LaFeAsO0.70.3では、3.99Åと縮まっているのが、Tcが増加した原因である。このように、Hを入れることにより、格子がより大きく収縮するためTcの高い超電導材料が実現する。
(実施例4)
本実施例では、ランタノイドとして、実施例3のLaに換えて、Ce、Prで実施した。LnとしてCeを用いた場合は、水素を含有させることにより、酸素欠損型およびフッ素置換型の場合と比べてTcが40Kから45Kに上昇した。また、LnとしてPrを用いた場合は、水素を含有させることにより、酸素欠損型の場合と比べてTcが45Kから50Kに上昇した。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、超電導薄膜の作製に関する。化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導薄膜を成膜する。超電導薄膜を作製する方法の一つとして、AsHなど水素を含む原料ガスを用いる。水素を含むガスを用いて、気相成長方法又は分子線エピタキシー法などによって成膜する。水素を含むガスとして、AsHなど水素を含む原料ガスや蒸気がある。
また、超電導薄膜を作製する方法の一つとして、実施の形態1で示したような水素を含むターゲットを用意して、スパッタリングやレーザーアブレーションにより薄膜試料を作製する。ここで、ターゲットは必ずしもLnFeAsO1−y超伝導体である必要は無く、Ln、Fe、As、O、Hが含まれる混合物でもよい。最終的に形成される膜の状態で、LnFeAsO1−yになっているようにターゲットを準備する。
また、超電導薄膜を作製する方法として、水素ガスを含む雰囲気中で薄膜を合成する方法、または、薄膜を合成した後に、水素を含む雰囲気中で処理する方法により、水素を含有させる。
上記実施例2で判明したように、鉄ヒ素系超電導材料に水素を含有させることにより、格子の収縮を引き起こす性質は、薄膜においても同様の性質がある。これを利用すれば、薄膜試料をある結晶基板の上にエピタキシャル成長させる時に、試料の格子定数を大きく変化させることができるため、基板と試料の格子定数のマッチングを取りやすくなる。また、薄膜成長に用いる基板の選択肢が広がる。したがって、水素を含有させることにより従来困難であった薄膜の形成が容易になった。
以上の実施の形態1及び2で示したものは、代表的な例である。実施の形態1では、Hを含む原料を用いて、LnFeAsO1−y超電導材料を合成する方法として、Ln(OH)という水酸化物を用いる例を示したが、Hを含む原料であれば、固体、ガス、液体など原料の形態を問わず、製造方法に応じて適宜最適な形態で水素を添加含有させることができる。
本発明のLnFeAsO1−yにおいて、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下であれば、本発明の、格子定数が収縮する性質が顕著であり、Tcを向上させる効果があるので、好ましい。yが0の場合は、酸素が欠損しない場合である。また、yが0より大きく0.5以下であるとき、酸素欠損型による効果があるのでさらに好ましい。実施例で示したy(実施例1では、0.2、実施例2では、0.15〜0.25、実施例3では0.3)に限定されないことは明らかである。酸素欠損型による効果は、本発明者らによる非特許文献1及び2で知られているように、鉄ヒ素系超電導材料において、酸素欠損率が大きくなるにつれてa軸長が減少し優れた超電導材料となる。yが0.5より大きいと物質を合成しにくくTcの向上効果が減少する。特にyが0.15以上0.3以下の数値範囲であると、Tcが50K以上(LnがNd、Sm、Gd、Tb、Dyの場合)であるので特に好ましい。また、LnがLa、Ce、Prの場合も、水素を含有しないものに比較してTcの向上効果が大きい。
本発明において水素の含有量xは、xは0.01以上0.5以下であれば、Tcを向上させる効果があるので、好ましい。xが0.01より小さいときは、水素含有の効果が水素を含有させない場合に比して十分でない。さらに、xが0.05以上で0.3以下のとき、Tcが50K以上であるのでより好ましい。
上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
本発明の鉄系超電導材料は、多結晶体、焼結体、単結晶体、薄膜の形態で製作できるので、超電導送電線、超超電導磁石、超電導デバイスなどに利用でき、有用である。また、高い超電導転移温度を有し、高純度の材料であるので、臨界電流密度の向上につながり、応用上有用である。

Claims (7)

  1. ZrCuSiAs型の結晶構造を有し、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表されることを特徴とする鉄ヒ素系超電導材料。
  2. 水素を含む物質を出発原料として用いて、ZrCuSiAs型の結晶構造を有し、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導材料を高圧合成法又は封管法により製造することを特徴とする鉄ヒ素系超電導材料の製造方法。
  3. ZrCuSiAs型の結晶構造を有する化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下)を合成した後に、水素を含有させて、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導材料を製造することを特徴とする鉄ヒ素系超電導材料の製造方法。
  4. ZrCuSiAs型の結晶構造を有し、化学式LnFeAsO 1−y (ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表されることを特徴とする鉄ヒ素系超電導薄膜。
  5. 水素を含有する物質をターゲットとして用いて、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導薄膜をスパッタリング又はレーザーアブレーションにより成膜することを特徴とする鉄ヒ素系超電導薄膜の製造方法。
  6. 水素を含む原料ガスを用いて、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導薄膜を気相成長方法又は分子線エピタキシー法により成膜することを特徴とする鉄ヒ素系超電導薄膜の製造方法。
  7. 水素ガスを含む雰囲気中で、化学式LnFeAsO1−y(ただし、LnはY及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素、yは0以上0.5以下、xは0.01以上0.5以下)で表される超電導薄膜を製造することを特徴とする鉄ヒ素系超電導薄膜の製造方法。
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