本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本発明のエンジンの制御装置は、油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダなどの建設機械に搭載されるエンジンを制御する制御装置として好適に適用することができるものである。
また、本発明のエンジンの制御装置としては、以下で説明する形状、構成以外にも本発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
図1は、本発明の実施形態に係わるエンジンの制御装置における油圧回路図である。エンジン2はディーゼルエンジンであり、そのエンジン出力トルクの制御は、エンジン2のシリンダ内に噴射する燃料の量を調整することによって行われる。この燃料の調整は、従来から公知の燃料噴射装置3によって行うことができる。また、作業モードは、作業モード設定手段44を操作することによって、エコノミーモード、パワーモード等を設定することができる。
エンジン2の出力軸5には可変容量型油圧ポンプ6(以下、油圧ポンプ6という。)が連結されており、出力軸5が回転することにより油圧ポンプ6が駆動される。油圧ポンプ6の斜板6aの傾転角は、ポンプ制御装置8によって制御され、斜板6aの傾転角が変化することで油圧ポンプ6のポンプ容量D(cc/rev)が変化する。
ポンプ制御装置8は、斜板6aの傾転角を制御するサーボシリンダ12と、ポンプ圧と油圧アクチュエータ10の負荷圧との差圧に応じて制御されるLS弁(ロードセンシング弁)17と、から構成されている。サーボシリンダ12は、斜板6aに作用するサーボピストン14を備えており、油圧ポンプ6から吐出された圧油が、油路27a、27bを介して供給されている。LS弁17は、油路27aの油圧(ポンプ吐出圧)とパイロット油路28の油圧(油圧アクチュエータ10の負荷圧)との差圧に応じて作動し、サーボピストン14を制御する構成となっている。
サーボピストン14の制御によって、油圧ポンプ6における斜板6aの傾転角が制御される。制御弁9は、操作レバー11aの操作量に応じて操作レバー装置11から出力されるパイロット圧によって制御される。制御弁9が制御されることで、油圧アクチュエータ10に供給される流量が制御されることになる。このポンプ制御装置8は、公知のロードセンシング制御装置によって構成することができる。
また、油路27aの油圧(ポンプ吐出圧)が供給されるLS弁17の一端には、油路27aから分岐された油路から電磁比例弁16を介したパイロット圧が供給されている。電磁比例弁16は、コントローラ7からの指令値によって、LS弁17の一端に供給されるパイロット圧を調整できるよう構成されている。コントローラ7は、電磁比例弁16の指令値を制御することによって、油圧ポンプ6の斜板6aの角度(ポンプ容量に相当)を制限することができる。
従って、コントローラ7は、後述するポンプ吸収トルク制限ラインを設定することによって、エンジン回転数センサ20で検出されるエンジン回転数に応じてポンプ吸収トルクを制限することができる。尚、ポンプ吸収トルクを制限する手段は、上記以外の手段によって構成することもできる。ポンプ吸収トルクを制限する手段は、従来から公知であるトルク制御弁を別途設けて制限してもよい。
油圧ポンプ6から吐出された圧油は、吐出油路25を通って制御弁9に供給される。制御弁9は、5ポート3位置に切換えることのできる切換弁として構成されており、制御弁9から出力する圧油を油路26a、26bに対して選択的に供給することで、油圧アクチュエータ10を作動させることができる。
尚、油圧アクチュエータとしては、例示した油圧シリンダ型の油圧アクチュエータに限定されて解釈されるものではなく、油圧モータでもよく、また、ロータリー型の油圧アクチュエータとして構成することもできる。また、制御弁9と油圧アクチュエータ10との組を1組だけ例示しているが、制御弁9と油圧アクチュエータ10との組は、複数組構成されている。また、1つの制御弁で複数の油圧アクチュエータを操作するように構成することもできる。
また、操作レバー装置11は、例えば、操作レバー11aを作業者からみて前後及び左右の2つの操作方向に操作できるよう構成し、それぞれの操作方向によって、異なる制御弁を切り換えられるように構成しておくこともできる。
操作レバー装置11で操作される油圧アクチュエータとして、例えば、建設機械における油圧ショベルを例に挙げて説明すれば、ブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、バケット用油圧シリンダ、左走行用油圧モータ、右走行用油圧モータ及び旋回モータ等が、油圧アクチュエータとして用いられることになる。図1ではこれらの各油圧アクチュエータのうちで、例えば、ブーム用油圧シリンダを代表させて示していることになる。
操作レバー11aを中立位置から操作したとき、操作レバー11aの操作方向及び操作量に応じて、操作レバー装置11からはパイロット圧が出力される。出力されたパイロット圧は、制御弁9の左右のパイロットポートのいずれかに加えられることになる。これにより、制御弁9は、中立位置である(II)位置から左右の(I)位置又は(III)位置に切換えられる。
制御弁9が(II)位置から(I)位置に切換えられると、油圧ポンプ6からの吐出圧油を、油路26bから油圧アクチュエータ10のヘッド側に供給することができ、油圧アクチュエータ10のピストンを伸長させることができる。このとき、油圧アクチュエータ10のロッド側における圧油は、油路26aから制御弁9を通ってタンク22に排出されることになる。
同様に、制御弁9が(III)位置に切換えられると、油圧ポンプ6からの吐出圧油は、油路26aから油圧アクチュエータ10のロッド側に供給することができ、油圧アクチュエータ10のピストンを短縮させることができる。このとき、油圧アクチュエータ10のヘッド側における圧油は、油路26bから制御弁9を通ってタンク22に排出されることになる。
吐出油路25の途中からは、油路27cが分岐しており、油路27cにはアンロード弁15が配設されている。アンロード弁15はタンク22に接続しており、油路27cを遮断する位置と連通する位置とに切換えることができる。油路27cにおける油圧は、アンロード弁15を連通位置に切換える押圧力として作用する。
また、油圧アクチュエータ10の負荷圧が作用しているパイロット油路28のパイロット圧及びバネの押圧力は、アンロード弁15を遮断位置に切換える押圧力として作用する。そして、アンロード弁15は、パイロット油路28のパイロット圧及びバネの押圧力と、油路27cにおける油圧との差圧によって制御されることになる。
ここで、作業者が指令手段としての燃料ダイヤル4を操作して、可変に指令できる指令値の中から一つの指令値を選択すると、選択した指令値に対応した第1目標エンジン回転数を設定することができる。このようにして設定した第1目標エンジン回転数に応じて、ポンプ吸収トルクとエンジン出力トルクとをマッチングさせる高速制御領域を設定することができる。
即ち、図2で示すように、燃料ダイヤル4の操作に応じて第1目標エンジン回転数である目標エンジン回転数Nbが設定されると、第1目標エンジン回転数Nbに応じた高速制御領域Fbが選択されることになる。
尚、エンジン回転数N´b は、目標エンジン回転数をNbに設定した場合における、無負荷時のエンジンの摩擦トルクと油圧系のロストルクとの合計値とエンジン出力トルクとがマッチングする点の回転数である。そして、目標エンジン回転数Nbが燃料ダイヤル4の操作に応じて設定されると、エンジン出力トルク特性ラインR上のエンジン回転数Nbにおける点Kbと無負荷時の点(エンジン回転数N´b)とを結んだ線が高速制御領域Fbとして設定されることになる。
尚、燃料ダイヤル4の操作に応じて第1目標エンジン回転数として目標エンジン回転数N´bが設定され、第1目標エンジン回転数N´bに応じて高速制御領域Fbが設定されてもよい。
ここで、作業者が燃料ダイヤル4を操作して、最初に選択した第1目標エンジン回転数Nbより低い第1目標エンジン回転数Ncを設定すると、高速制御領域としては低い回転数側における高速制御領域Fcが設定されることになる。
このように、燃料ダイヤル4が設定されることにより、燃料ダイヤル4で選択できる第1目標エンジン回転数に対応して、1つの高速制御領域を設定することができる。即ち、燃料ダイヤル4を選択することによって、例えば、図2で示すように最大馬力点K1を通る高速制御領域Faと、同高速制御領域Faから低い回転数側における複数の高速制御領域Fb、Fc、・・・の中から任意の高速制御領域、あるいは、これらの高速制御領域の中間にある任意の高速制御領域を設定することができる。
図3のエンジン出力トルク特性ラインにおいてエンジン出力トルク特性ラインRで規定される領域が、エンジン2が出し得る性能を示している。エンジン2の出力(馬力)が最大になるところは、エンジン出力トルク特性ラインR上の最大馬力点K1(以下、最大馬力点K1という。)である。Mはエンジン2の等燃費曲線を示しており、等燃費曲線の中心側が燃費最小領域となっている。エンジン出力トルク特性ラインR上のK3は、エンジン2のトルクが最大となる最大出力トルク点を示している。
以下では、燃料ダイヤル4の指令値に対応してエンジンの最大目標エンジン回転数である第1目標エンジン回転数N1が設定され、第1目標エンジン回転数N1に対応して、最大馬力点K1を通る高速制御領域F1が設定された場合を例に挙げて説明する。
尚、図1で示した燃料ダイヤル4の指令値に対応して、エンジン回転数として定格回転数となる第1目標エンジン回転数N1(図2では、定格回転数をNhとして表示しているが、図3では第1目標エンジン回転数N1は定格回転数でもある。)、第1目標エンジン回転数N1に対応した最大馬力点K1を通る高速制御領域F1が、設定された場合についての説明を以下で行う。
しかし、本発明は、最大馬力点K1を通る高速制御領域F1が設定された場合に限定されるものではない。例えば、設定された第1目標エンジン回転数に対応した高速制御領域として、図2における複数の高速制御領域Fb、Fc、・・・の中から、あるいは、複数の高速制御領域Fb、Fc、・・・の中間における任意の高速制御領域を設定した場合であったとしても、設定した各高速制御領域に対して本発明を好適に適用することができる。
図3には、エンジン出力トルクが増大していくときの様子が示されている。本願発明では、作業者が燃料ダイヤル4での指令値に対応して設定した第1目標エンジン回転数N1に応じて、高速制御領域F1を設定することができる。そして、第1目標エンジン回転数N1よりも低い回転数である第2目標エンジン回転数N2を設定し、第2目標エンジン回転数N2に応じた高速制御領域F2に基づいて、エンジンの駆動制御を開始させている。尚、第2目標エンジン回転数N2は、後述するように選択した作業モードに応じて変更される。
コントローラ7は、例えば、プログラムメモリやワークメモリとして使用される記憶装置と、プログラムを実行するCPUと、を有するコンピュータにより実現することができる。そして、コントローラ7の記憶装置には、図7に示すTable1〜Table3等が記憶されている。
次に、コントローラ7の制御について、図4のブロック図を用いて説明する。図4において、コントローラ7内の高速制御領域選択演算部32には、燃料ダイヤル4の指令値が入力されるとともに、ポンプトルク演算部31で演算した油圧ポンプ6が必要とするポンプトルクの指令値、斜板角センサ39により検出されるポンプ容量、及び作業モード判定部45からの判別結果が入力される。
ポンプトルク演算部31には、ポンプ圧力センサ38で検出した油圧ポンプ6から吐出したポンプ圧力(ポンプ吐出圧)と、斜板角センサ39で検出した油圧ポンプ6の斜板角(ポンプ容量)とが入力される。ポンプトルク演算部31では、入力した油圧ポンプ6の斜板角と油圧ポンプ6のポンプ圧力とから、ポンプトルク(エンジン出力トルク)を演算する。
尚、ポンプトルク演算部31、ポンプ圧力センサ38及び斜板角センサ39は、エンジン出力トルクを検出する検出手段としての機能を備えることになる。また、斜板角センサ39は、油圧ポンプのポンプ容量を検出する検出手段としての機能を備えることになる。
即ち、一般に、油圧ポンプ6のポンプ吐出圧P(ポンプ圧力P)と吐出容量D(ポンプ容量D)とエンジン出力トルクTとの関係は、T=P・D/200πとして表すことができる。
作業モード設定手段44で選択された作業モードは、作業モード判定部45に入力され、作業者によってどの作業モードが選択されたのかを判別することができる。作業モードとしては、パワーモード(第1作業モード)と、エンジン出力トルクを低く規定するエコノミーモード(第2作業モード)とを設けておくことができる。また、必要に応じて、エコノミーモードとパワーモードとの中間における状態を、例えば、通常モードとして設けておくこともできる。
高速制御領域選択演算部32では、作業モード判定部45からの入力信号を基にして、図5(a)〜(c)で示すような第1目標エンジン回転数と第2目標エンジン回転数との対応関係を示した対応表の中から、作業モード設定手段44で選択された作業モードの種類に対応した対応表を選択することになる。例えば、作業モード設定手段44でパワーモードが選択された場合には、図5(a)に示す対応表を選ぶことができ、エコノミーモードが選択された場合には、図5(c)に示す対応表を選ぶことができる。そして、エコノミーモードとパワーモードとの中間に設けた通常モードが選択された場合には、図5(b)に示す対応表を選ぶことができる。
そして、高速制御領域選択演算部32では、エンジン2の駆動制御を行わせる高速制御領域指令値をエンジン2に指令させる。尚、図5(a)〜(c)で示した対応表は、例示であって建設機械等に応じた対応表を適宜設定することができる。
また、ポンプ圧力センサ38は、例えば、図1の吐出油路25におけるポンプ圧力を検出できるように構成されている。そして、斜板角センサ39は、油圧ポンプ6の斜板角を検出するセンサとして構成されている。
このように、作業者が指令手段としての燃料ダイヤル4を操作して、可変に指令できる指令値の中から一つの指令値を選択すると、選択した指令値に対応した第1目標エンジン回転数N1を設定することができる。このようにして設定した第1目標エンジン回転数N1に応じて、ポンプ吸収トルクとエンジン出力トルクとをマッチングさせる高速制御領域F1を設定することができる。
また、第1目標エンジン回転数N1と第2目標エンジン回転数N2との対応関係は、図5(a)〜(c)の対応表の中から、選択した作業モードに対応した対応表を選択することができる。例えば、作業モードとしてパワーモードが選択されたときには、例えば、図5(a)の対応表を選択することができる。また、エコノミーモードが選択されたときには、例えば、図5(c)の対応表を選択することができる。
作業モードとしてパワーモードが選択されたときには、図5(a)に示すように、第1目標エンジン回転数N1が2000rpmよりも大きな回転数から2000rpmまでの間における回転数に設定されているときには、第2目標エンジン回転数N2としては、一定の1800rpmに設定される。
そして、設定された第1目標エンジン回転数が2000rpm以下であって、最大馬力点K3(図3参照。)でのエンジン回転数1500rpmとの間に設定されたときには、設定された第1目標エンジン回転数N1が減少するのに対応して、第1目標エンジン回転数N1を第2目標エンジン回転数N2に下げるときの下げ幅も、図5(a)の実線で示すように、直線状に減少するように設定されている。
尚、図5(a)〜(c)において示した第1目標エンジン回転数N1及び第2目標エンジン回転数N2の具体的な数値は、例示であって本願発明は、図5で示した数値に限定されるものではない。建設機械に搭載したエンジンや油圧ポンプ等の特性に応じて適宜変更することができるものである。
このように構成しておくことによって、設定した各作業モードにおいて、燃料ダイヤル4の指令値によって設定した第1目標エンジン回転数N1から第2目標エンジン回転数N2を設定するときの条件を決定することができる。しかも、燃料ダイヤル4の指令値が低いほど、即ち、第1目標エンジン回転数N1を低く設定しても、第2目標エンジン回転数N2も同じように低く設定することができる。
このように、第1目標エンジン回転数N1と第2目標エンジン回転数N2との対応関係を設定することができるので、設定した各作業モードにおいて、燃料ダイヤル4の指令値に対応して第1目標エンジン回転数N1を設定すれば、燃費効率を大きく向上させることができる。
本願発明では、第1目標エンジン回転数N1と第2目標エンジン回転数N2との 対応関係を、図1、図4で示す作業モード設定手段44によって選択された作業モードに対応させて、図5(a)〜図5(c)等で示す対応表を作成している。そして、図5(a)〜図5(c)で示す対応表の中から選択した対応表に基づいて、燃料ダイヤル4の指令値で設定した第1目標エンジン回転数N1に対応した第2目標エンジン回転数N2を、図4で示す高速制御領域選択演算部32において設定することになる。
このため、高速制御領域選択演算部32は、燃料ダイヤル4で指令された指令値に応じて第1目標エンジン回転数N1を設定し、第1目標エンジン回転数N1と作業モード設定手段44で選択された作業モードに基づいて、第1目標エンジン回転数N1よりも低い回転数である第2目標エンジン回転数N2を設定する第1設定手段としての機能を備えている。
次に、図6を用いて、作業モード設定手段によってパワーモードが選択された場合と、作業モード設定手段によってエコノミーモードが選択された場合について、第2目標エンジン回転数の決定方法についてそれぞれ説明する。パワーモードが選択された場合は、エンジン2は、第1エンジン出力トルク特性ラインRP(点線で示す)に基づいて制御される。第1エンジン出力トルク特性ラインRPは、最大出力トルク点をK3P、最大馬力点をK1Pとして規定されている。
エコノミーモードが選択された場合は、エンジン2は、第1エンジン出力トルク特性ラインRPよりもエンジン出力トルクが低く制限された第2エンジン出力トルク特性ラインRE(実線で示す)に基づいて制御される。第2エンジン出力トルク特性ラインREは、最大出力トルク点をK3E、最大馬力点をK1Eとして規定されている。
また、油圧ポンプ6は、ポンプ吸収トルク制限ライン(PcP、PcE)に基づいて制御される。ポンプ吸収トルク制限ラインは、エンジン馬力の調整とエンストの防止のために設けられている。コントローラ7は、エンジン回転数センサ20によって計測されたエンジン回転数に応じて、エンジン出力トルクがポンプ吸収トルク制限ラインを超えないように油圧ポンプ6の斜板6aの角度を制御する。
従って、コントローラ7は、設定されたポンプ吸収トルク制限ラインを越えない範囲で油圧ポンプ6の斜板を制御する。そして、油圧ポンプ6の容量の上限が制限されることによって、エンジン回転数とエンジン出力トルクとを制御することができる。ポンプ吸収トルク制限ラインは、エンジン回転数を変数として、エンジン回転数が高いほどエンジン出力トルクが高くなる単調増加関数になるように設計されている。
以下、作業モード設定手段44によって、パワーモードが選択された場合について説明する。パワーモードが選択された場合は、燃料ダイヤル4の指令値に応じて設定される第1目標エンジン回転数N1よりも低い回転数である第2目標エンジン回転数N2Pが設定される。エンジン2は、第2目標エンジン回転数N2Pに応じた高速制御領域F2Pに沿って制御され、ポンプ容量又はエンジン出力トルクが所定値より大きくなると第1目標エンジン回転数N1に応じた高速制御領域F1に沿って制御される。
第2目標エンジン回転数N2Pは、以下のように設定するのが好ましい。第1目標エンジン回転数N1よりも低い回転数である第2目標エンジン回転数は、低いほど燃料消費量の低減効果は大きい。しかし、第2目標エンジン回転数が所定回転数よりも低く設定された場合、油圧アクチュエータは、供給される流量が不足し作動不良を起こす恐れがある。
図6において説明すると、第2目標エンジン回転数がN2Pよりも低い回転数であるN2Eが設定された場合、エンジン2がL2E点におけるエンジン出力トルクを出力しているときに、急負荷が加わったときを考える。このときエンジン2は、L2E点におけるエンジン出力トルク状態から急にK2E点に向けてエンジン出力トルクが増大する。しかし、エンジン出力トルクはX点で第1ポンプ吸収トルク特性ラインPcPに干渉する。その結果、油圧ポンプ6のポンプ吸収トルクが制限されるので、ポンプ容量が制限されることになる。従って、油圧アクチュエータ10は、供給される流量が減少し作動不良を起こす。
そこで、第2目標エンジン回転数は、第1エンジン出力トルク特性ラインRPと第1ポンプ吸収トルク制限ラインPcPとの交点Y2Pにおけるエンジン回転数N2P(N2P近傍を含む)以上であることが好ましい。更に、燃料消費量の低減を考慮すれば、第2目標エンジン回転数は、N2P(N2P近傍を含む)が好ましい。
次に、以下、作業モード設定手段44によって、エコノミーモードが選択された場合について説明する。エコノミーモードが選択された場合は、燃料ダイヤル4の指令値に応じて設定される第1目標エンジン回転数N1よりも低い回転数である第2目標エンジン回転数は以下のように設定される。エコノミーモードが選択された場合は、第1エンジン出力トルク特性ラインRPよりもエンジン出力トルクを低く規定する第2エンジン出力トルク特性ラインREに基づいてエンジンが制御される。
従って、パワーモードが選択された場合と同じ第1ポンプ吸収トルク制限ラインPcPが設定される場合、第2目標エンジン回転数は、第2エンジン出力トルク特性ラインREと第1ポンプ吸収トルク制限ラインPcPとの交点Y2E´におけるエンジン回転数N2E´に設定することが好ましい。そして、エンジン2はエンジン回転数N2E´に応じた高速制御領域F2E´に沿って制御される。
ここで、エコノミーモードは、パワーモードよりも作業性を低下させる代わりに、燃料消費量を低減させるモードである。従って、ポンプ吸収トルク制限ラインとエンジン出力トルク制限ラインの交点であるマッチング回転数は、パワーモードよりも低い回転数であって、燃費効率の良いところに設定することができる。従って、エコノミーモードは、第1ポンプ吸収トルク制限ラインPcPより低い回転数側に第2ポンプ吸収トルク制限ラインPcEを設定することもできる。
このように、第2目標エンジン回転数は、第2エンジン出力トルク特性ラインREと第2ポンプ吸収トルク制限ラインPcEとの交点Y2Eにおけるエンジン回転数N2Eまで低減しても油圧アクチュエータ10への圧油流量は不足しない。即ち、第2目標エンジン回転数はN2E(N2E近傍を含む)以上であることが好ましい。更に、燃料消費量の低減考慮すれば、第2目標エンジン回転数は、N2E(N2E近傍を含む)が好ましい。そして、エンジン2は、N2Eに応じた高速制御領域F2Eに沿って制御される。
パワーモードが選択されたときの第2目標エンジン回転数N2Pと、エコノミーモードが選択されたときの第2目標エンジン回転数N2Eとの回転数差は、第1エンジン出力トルク特性ラインRPと第1ポンプ吸収トルク制限ラインPcPとの交点であるマッチング点Y2Pでの第1目標マッチング回転数と、第2エンジン出力トルク特性ラインREと第2ポンプ吸収トルク制限ラインPcEとの交点であるマッチング点Y2Eでの第2目標マッチング回転数と、の回転数差以下に設定されることが好ましい。
このように構成しておくことによって、第2目標エンジン回転数は、ポンプ吸収トルク制限ラインで規制される目標マッチング回転数よりも高い回転数に設定しておくことができる。これにより、アクチュエータに供給される圧油は、流量不足を生じない。そして、作業者は、エコノミーモードを選択しても、作業機の操作性に違和感がない。
また、第1エンジン出力トルク特性ライン上RPにおける最大出力トルク点K3Pでのエンジン回転数と第1目標マッチング回転数N2Pとの回転数差は、第2エンジン出力トルク特性ラインREにおける最大出力トルク点K3Eでのエンジン回転数と第2目標マッチング回転数N2Eとの回転数差と等しい(略等しいことを含む)ことが好ましい。
このように構成しておくことによって、パワーモードが選択された場合であっても、また、エコノミーモードが選択された場合であっても、エンストが発生し易くなる最大出力トルク点でのエンジン回転数と目標マッチング回転数との間に、所望の回転数差を持たせておくことができる。これにより、目標マッチング回転数は、最大出力トルク点での目標エンジン回転数よりも十分に高い回転数に設定することができるので、エンストの発生が確実に防止できる。
このように、作業モードとしてエコノミーモードを選択しても、アクチュエータの操作に悪影響を与えることなく、エンジン回転数を下げた状態からエンジンの駆動制御を開始することができるので、燃費低減効果を大きくすることができる。そして、燃費低減効果を大きくするために、第2目標エンジン回転数を低下させても、第2目標エンジン回転数を低下させたことに起因した流量不足が生じるのを防止しておくことができる。
次に、図3を用いて、エンジンの駆動制御について説明する。
以下においては、作業モードとしてパワーモードが選択された場合について、図3を用いた説明を行うが、作業モードとしてエコノミーモードが選択された場合でも、作業モードとしてパワーモードが選択された場合と同様にエンジンの駆動制御を行うことができる。
即ち、以下の説明において、作業モードとしてエコノミーモードが選択された場合には、図6に示すように、第2目標エンジン回転数としてN2Eが設定され、高速制御領域としてはF2Eが設定されることになる。また、図6に示しているパワーモードでの符号をエコノミーモードでの符号に読み替えることで、エコノミーモードが選択された場合についての説明を行うことができる。
エンジン2の駆動制御として、第2目標エンジン回転数N2に基づいた高速制御領域F2に沿った制御が行われているときには、油圧ポンプ6のポンプ容量Dが予め設定した第1ポンプ容量D1(図3では、第1設定位置Bとして、第1ポンプ容量D1となった状態を示している。)になるまでは、高速制御領域F2に沿った制御が行われる。即ち、エンジン出力トルクが第1設定位置B点に達するまでは、高速制御領域F2に沿った制御が行われる。
そして、油圧ポンプ6のポンプ容量Dが、第1ポンプ容量D1以上となったときには、ポンプ容量Dと目標エンジン回転数Nとの対応関係に基づいて、エンジン2の目標エンジン回転数Nが求められることになる。
このようにして、エンジン2は、ポンプ容量に対応する目標エンジン回転数Nに応じて、高速制御領域F2から高速制御領域F1に移行するように制御される。そして、エンジン2によって駆動されている油圧ポンプ6のポンプ容量Dが、予め設定した第2ポンプ容量D2(D2>D1)(図3では、第2設定位置Aとして、第2ポンプ容量D2となった状態を示している。)となったときには、第1目標エンジン回転数N1に基づいた高速制御領域F1に沿ったエンジン2の駆動制御が行われることになる。即ち、エンジン出力トルクが第2設定位置Aに達すると、高速制御領域F1に沿った制御が行われる。
高速制御領域F1までのシフトが行われた後で、油圧アクチュエータ10の負荷が増大していくと、高速制御領域F1に沿ってエンジン出力トルクは上昇する。高速制御領域F1において、油圧アクチュエータ10の負荷が増大した場合には、油圧ポンプ6のポンプ容量Dは最大ポンプ容量まで増大するとともに、エンジン出力トルクは最大馬力点K1まで上昇する。
また、高速制御領域F1と高速制御領域F2との間を移行中に、油圧アクチュエータ10の負荷が増大して、エンジン出力トルクTがエンジン出力トルク特性ラインRまで上昇した場合や、高速制御領域F1から最大馬力点K1まで上昇した場合には、その後は、エンジン出力トルク特性ラインR上でエンジン回転数とエンジン出力トルクとがマッチングする。
次に、図7で示した制御フローについて説明を行う。
尚、以下における制御フローの説明では、作業モードとしてエコノミーモードが選択された場合について説明を行っている。しかし、パワーモードが選択された場合には、図6において第2目標エンジン回転数N2Eを、第2目標エンジン回転数N2Pに読み替え、高速制御領域F2Eを高速制御領域F2Pに読み替え、また、図6に示しているエコノミーモードでの符号をパワーモードでの符号に読み替えることで、エコノミーモードが選択された場合と同様の制御を行うことができる。そのため、パワーモードが選択された場合については、その説明を省略している。
図7のステップS1において、コントローラ7が、作業モード設定手段44で選択された作業モードの情報を作業モード判定部45で読み取ると、ステップS2に移る。
ステップS2では、作業モード判定部45からの情報に基づいて、Table1又は図5に示した第1目標エンジン回転数と第2目標エンジン回転数との対応表候補の中から、作業モード設定手段44で選択された作業モードに該当する対応表を選択する。対応表の選択を行うと、ステップS3に移る。
ステップS3では、コントローラ7は選択した対応表に応じて、目標マッチング点を設定する。即ち、図6に示すように、第1エンジン出力トルク特性ラインRP上におけるマッチング点Y2Pにおけるエンジン回転数N2Pと最大出力トルク点K3Pにおけるエンジン回転数との回転数差が、第2エンジン出力トルク特性ラインRE上におけるマッチング点Y2Eにおけるエンジン回転数と最大出力トルク点K3Eにおけるエンジン回転数との回転数差と等しく(略等し状態を含む)なるように、目標マッチング点Y2Eを設定する。
目標マッチング点Y2Eは、第2エンジン出力トルク特性ラインREとポンプ吸収トルク制限ラインPcEとの交点として設定することができるので、目標マッチング点Y2Eを設定することは、ポンプ吸収トルク制限ラインPcEを設定することでもある。また、目標マッチング点Y2Eが設定されると、第2目標エンジン回転数の好ましい回転数が決定できることになる。
ステップS3において、目標マッチング点を設定すると、ステップS4に移る。
ステップS4では、コントローラ7は燃料ダイヤル4の指令値を読み取る。指令値を読み取ると、ステップ5に移る。
ステップS5では、コントローラ7は、読み取った燃料ダイヤル4の指令値に応じて、第1目標エンジン回転数N1を設定し、設定した第1目標エンジン回転数N1に基づいて高速制御領域F1を設定する。
尚、読み取った燃料ダイヤル4の指令値に応じて、エンジン2の第1目標エンジン回転数N1を最初に設定する旨の説明を行っているが、最初に高速制御領域F1を設定して、設定した高速制御領域F1に対応して第1目標エンジン回転数N1を設定することもできる。あるいは、読み取った燃料ダイヤル4の指令値に応じて、第1目標エンジン回転数N1と高速制御領域F1とを同時に設定することもできる。
図3で示すように、第1目標エンジン回転数N1及び高速制御領域F1が設定されると、ステップS6に移る。
ステップS6では、コントローラ7は、Table1又は図5に示した対応表から選択した対応表に基づいて、第1目標エンジン回転数N1、高速制御領域F1に対応した第2目標エンジン回転数N2E、第2目標エンジン回転数N2Eに対応した高速制御領域F2Eを設定する。このとき、第2目標エンジン回転数N2Eは、ステップS3で設定した目標マッチング点での目標マッチング回転数、または、目標マッチング回転数に近い回転数となるように設定される。
尚、Table1及び図5で示している回転数の数値は、例示であって建設機械に応じて適宜設定することができるものである。
高速制御領域F2Eがコントローラ7によって設定されると、ステップS7に移る。
ステップS7では、ポンプ容量から目標エンジン回転数を設定するTable2、エンジン出力トルクから目標エンジン回転数を設定するTable3において、第1目標エンジン回転数N1が上限値となり第2目標エンジン回転数N2Eが下限値となるように補正を行う。そして、ステップS8に移る。
ステップS8では、設定した第2目標エンジン回転数N2Eに応じた高速制御領域F2Eに沿ったエンジン2の駆動制御を開始して、ステップS9又はステップS12に移る。
検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nでエンジン2の駆動制御が行われるときには、ステップS9からステップS11の制御が行われる。検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nでエンジン2の駆動制御が行われるときには、ステップS12からステップS15の制御が行われる。
最初に、ステップS9からステップS11における、検出したポンプ容量に対応した目標エンジン回転数を求める制御ステップについて説明する。
ステップS9では、斜板角センサ39で検出した斜板角に基づいて油圧ポンプ6のポンプ容量Dが読み取られる。ステップS9において、ポンプ容量Dが読み取られるとステップS10に移動する。
ステップS10における、検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nを求める制御の概略は次の通りである。即ち、図8で示すように、エンジンが第2目標エンジン回転数N2Eに基づいて制御されているときには、油圧ポンプ6のポンプ容量Dが所定の第1ポンプ容量D1になるまでは、第2目標エンジン回転数N2Eに基づいて制御される。
検出したポンプ容量Dが、第1ポンプ容量D1以上となったときには、図8で示すような予め設定したポンプ容量Dと目標エンジン回転数Nとの対応関係に基づいて、検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nが求められることになる。そしてこのときには、エンジン2の駆動制御としては、求めた目標エンジン回転数Nnとなるように制御されることになる。
そして、目標エンジン回転数Nnが、第1目標エンジン回転数N1又は第2目標エンジン回転数N2Eとなるまでの間は、検出したポンプ容量Dnに対応した目標エンジン回転数Nnを常に求めていくことになり、求めた目標エンジン回転数Nnでエンジン2の駆動を常に制御することになる。尚、この制御において、高速制御領域選択演算部32は、第2目標エンジン回転数N2Eを下限値として、ポンプ容量に対応した目標エンジン回転数を設定する第2設定手段としての機能を備えている。
例えば、現時点における検出したポンプ容量Dが、ポンプ容量Dnであるときには、目標エンジン回転数Nとしては目標エンジン回転数Nnとして求めることができる。そして、ポンプ容量Dnの状態からポンプ容量Dn+1の状態に変化したことが検出されれば、図8からポンプ容量Dn+1に対応した目標エンジン回転数Nn+1が新たに求められる。そして、新たに求められた目標エンジン回転数Nn+1となるようにエンジン2に対する駆動制御が行われる。
検出されたポンプ容量Dが、所定の第2ポンプ容量D2となったときには、第1目標エンジン回転数N1に基づき、高速制御領域F1に沿ってエンジン2の駆動制御が行われることになる。そして、第1目標エンジン回転数N1に基づいて、エンジン2の駆動制御が行われているときには、油圧ポンプ6のポンプ容量Dが第2ポンプ容量D2以下となるまでは、高速制御領域F1に沿ったエンジン2の駆動制御が行われ続けることになる。
図7に戻って、制御ステップS10についての説明を続ける。ステップS10において、Table2で示す予め設定したポンプ容量Dと目標エンジン回転数Nとの対応関係に基づいて、検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nが求められると、ステップS11に移る。
ステップS11では、油圧ポンプ6のポンプ容量の変化率、ポンプ吐出圧力の変化率、あるいはエンジン出力トルクTの変化率に応じて、目標エンジン回転数Nの値を修正する。即ち、これらの変化率、即ち、増加する度合いが高いときには、目標エンジン回転数Nを高め側に修正させることもできる。
尚、ステップS11として、目標エンジン回転数Nの値を修正する制御ステップを記載しているが、ステップS11の制御を飛ばすように構成しておくこともできる。
次に、ステップS12からステップS15における、検出したエンジン出力トルクに対応した目標エンジン回転数を求める制御ステップについて説明する。
ステップS12において、斜板角センサ39からの検出信号とポンプ圧力センサ38からの検出信号を読み取ると、ステップS13に移動する。
ステップS13では、ステップS12において読み取ったポンプ容量及びポンプ圧力の検出信号に基づいて、エンジン出力トルクTを算出する。エンジン出力トルクTが算出されるとステップS14に移動する。
ステップS14における、検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nを求める制御の概略は次の通りである。即ち、図9で示すように、エンジンが第2目標エンジン回転数N2Eに基づいて制御されているときには、検出されたエンジン出力トルクTが所定の第1エンジン出力トルクT1になるまで、エンジンは第2目標エンジン回転数N2Eに基づいて制御される。
検出されたエンジン出力トルクTが、第1エンジン出力トルクT1以上となったときには、図9で示すような予め設定したエンジン出力トルクTと目標エンジン回転数Nとの対応関係に基づいて、検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nが求められることになる。そしてこのときには、エンジン2の駆動制御としては、求めた目標エンジン回転数Nとなるように制御されることになる。
そして、目標エンジン回転数Nが、第1目標エンジン回転数N1又は第2目標エンジン回転数N2Eとなるまでの間は、検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nが常に求められていくことになり、求めた目標エンジン回転数Nによってエンジン2の駆動制御が行われる。
例えば、現時点における検出したエンジン出力トルクTが、エンジン出力トルクTnであるときには、目標エンジン回転数Nとしては目標エンジン回転数Nnが求められる。そして、エンジン出力トルクTが、エンジン出力トルクTnの状態からエンジン出力トルクTn+1の状態に変化したことが検出されれば、エンジン出力トルクTn+1に対応した目標エンジン回転数Nn+1が新たに求められる。そして、新たに求められた目標エンジン回転数Nn+1となるようにエンジン2に対する駆動制御が行われる。
検出されたエンジン出力トルクTが、所定の第2エンジン出力トルクT2となったときには、第1目標エンジン回転数N1に基づいた高速制御領域F1に沿って、エンジン2の駆動制御が行われることになる。そして、高速制御領域F1に沿ったエンジン2の駆動制御が行われているときには、検出したエンジン出力トルクTが、第2エンジン出力トルクT2以下となるまでは、高速制御領域F1に沿ったエンジン2の駆動制御が行われ続けることになる。
また、検出されたエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nを求めてエンジン2の駆動制御を行うことにより、図10で示すように、エンジン出力トルク特性ライン上でエンジン2が出し得る最大馬力点K1Eを通過させることができる。
また、検出されたエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nを求めてエンジン2の駆動制御を行うことにより、図10で示すように、エンジン出力トルク特性ライン上でエンジン2が出し得る最大馬力点を通過させることができる。
図7に戻って、制御ステップS14についての説明を続ける。ステップS14において、予め設定したエンジン出力トルクTと目標エンジン回転数Nとの対応関係を示したTable3に基づいて、検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nが求められると、ステップS15に移る。
ステップS15では、油圧ポンプ6のポンプ容量の変化率、ポンプ吐出圧力の変化率、あるいはエンジン出力トルクTの変化率に応じて、目標エンジン回転数Nの値を修正する。即ち、これらの変化率、即ち、増加する度合いが高いときには、目標エンジン回転数Nを高め側に修正させることもできる。
尚、ステップS15として、目標エンジン回転数Nの値を修正する制御ステップを記載しているが、ステップS15の制御を飛ばすように構成しておくこともできる。
検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nと、検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nとのうちで、回転数の高い方の目標エンジン回転数を使う場合には、ステップS9〜ステップS11の制御とステップS12〜ステップS15の制御とが両方が行われる。この場合には、ステップS11及びステップS15のステップが終了した後にステップS16の制御が行われる。
検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nによって、エンジン2の駆動制御を行う場合や、検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nによって、エンジン2の駆動制御を行う場合には、ステップS16の制御をスキップしてステップS17に移動する。
ステップS16では、検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nと、検出したエンジン出力トルクTに対応した目標エンジン回転数Nとのうちで、回転数の高い方の目標エンジン回転数が選択される。高い方の目標エンジン回転数が選択されると、ステップS17に移動する。
ステップS17は、目標エンジン回転数Nを用いてエンジンの駆動制御を行わせるため、図4で示す高速制御領域選択演算部32から高速制御領域指令値が出力されるようにする。ステップS17の制御が行われると、ステップS1の制御に戻り、ステップS1から始まる制御が繰り返し行われることになる。
次に、作業時における制御について、図1を用いて概説する。即ち、例えば、作業者が作業モードとしてパワーモードを選択し、操作レバー11aを深く操作して、油圧ショベルの作業機速度を増速させようとした場合を例に挙げて、ポンプ容量Dを検出して行う制御について説明を行う。
尚、図3、図6(図6は、より構成を明確にするため。)を用いた以下の説明では、作業モードとしてパワーモードが選択された場合について説明を行っている。しかし、エコノミーモードが選択された場合には、図6における第2目標エンジン回転数N2Pを、第2目標エンジン回転数N2Eに読み替え、高速制御領域F2Pを高速制御領域F2Eに読み替え、また、図6に示しているパワーモードでの符号をエコノミーモードでの符号に読み替えることで、パワーモードが選択された場合と同様の制御を行うことができる。そのため、エコノミーモードが選択された場合については、その説明を省略している。
エンジン出力トルクTを検出して行う制御についての説明は省略するが、ポンプ容量Dを検出する制御と同様の制御が行われることになる。また、作業モードとしてエコノミーモードが選択された場合には、第2目標エンジン回転数が低く設定されるが、第2目標エンジン回転数から開始されるエンジンの駆動制御は、パワーモードが選択された場合と同様の駆動制御が行われることになる。
図1における作業モード設定手段44でパワーモードが選択され、操作レバー11aが深く操作されたときに、これによって制御弁9が例えば(I)位置に切り換えられたとする。そしてこのときには、制御弁9の(I)位置における開口面積9aは増大し、吐出油路25におけるポンプ吐出圧とパイロット油路28における負荷圧との差圧は低下する。また、ロードセンシング制御装置として構成されているポンプ制御装置8は、油圧ポンプ6のポンプ容量Dを増大する方向に作動する。
第1目標エンジン回転数N1や高速制御領域F1は、燃料ダイヤル4の設定によって設定することができる。そして、例えば、エンジンの定格回転とした第1目標エンジン回転数N1と第2目標エンジン回転数N2(図6では、N2P)の対応関係は、作業モード設定手段44で選択された作業モードに応じて設定することができる。
高速制御領域F2(図6では、F2P)において油圧ポンプ6のポンプ容量が、第1ポンプ容量D1となった状態から、作業機速度を増速させるために作業者が操作レバー11aを更に深く操作したときには、検出したポンプ容量Dに対応した目標エンジン回転数Nとなるように、エンジン2の駆動制御が行われることになる。そして、このとき、高速制御領域F2(図6では、F2P)から高速制御領域F1の間で、順次最適な高速制御領域にシフトする制御が行われることになる。
高速制御領域F1までのシフトが行われた後で、油圧アクチュエータ10の負荷が増大していくと、エンジン出力トルクは上昇する。高速制御領域F1において、油圧アクチュエータ10の負荷が増大した場合には、エンジン出力トルクは最大馬力点K1まで上昇する。また、高速制御領域F1と高速制御領域F2(図6では、F2P)との間で、油圧アクチュエータ10の負荷が更に増大して、エンジン出力トルクTがエンジン出力トルク特性ラインRまで上昇した場合や、高速制御領域F1から最大馬力点K1まで上昇した場合には、その後は、エンジン出力トルク特性ラインR上でエンジン回転数とエンジン出力トルクとがマッチングする。
このように推移することができるので、高速制御領域F1までのシフトが行われた場合には、作業機は従来どおりに最大馬力で駆動することができる。
即ち、高速制御領域F2(図6では、F2P)から高速制御領域F1にシフトした場合には、図3の点線L1に示すようにエンジン出力トルク特性ラインRに向かって上昇する制御が行われることになる。また、点線L2に示した態は、高速制御領域F2(図6では、F2P)から高速制御領域F1にシフトしている途中の高速制御領域Fnから直接エンジン出力トルク特性ラインRに向かって上昇する制御を示している。点線L3の矢印で示した状態が、従来から行われている高速制御領域F1の状態のままで制御が行われた場合の様子を示している。尚、高速制御領域Fnは、検出したポンプ容量D又は検出したエンジン出力トルクTの値によって、目標エンジン回転数Nが変動するため、高速制御領域Fnも変動することになる。
上述の実施例では、油圧回路としてロードセンシング制御装置を備えた油圧回路の例で説明を行った。しかし、油圧回路がオープンセンタタイプとして構成されていた場合であっても、同様に行うことができる。
このように本願発明では、エンジンの燃費効率を高めて、燃料ダイヤル4での指令値に対応して設定した第1目標エンジン回転数N1に応じて、高速制御領域F1を設定し、設定した第1目標エンジン回転数N1、高速制御領域F1及び作業モード設定手段44で選択された作業モードに応じて、予め設定した低い回転数側の第2目標エンジン回転数N2(図6では、N2E)及び高速制御領域F2(図6では、F2E)を設定し、第2目標エンジン回転数N2(図6では、N2E)または高速制御領域F2(図6では、F2E)に基づいて、エンジンの駆動制御を開始することができる。
しかも、作業モード設定手段44で選択された作業モードに応じて予め設定した、第1目標エンジン回転数N1と第2目標エンジン回転数N2(図6では、N2E)との対応表を用いて、第1目標エンジン回転数N1を第2目標エンジン回転数N2(図6では、N2E)に下げるときの下げ幅を設定することができる。
このように本願発明では、高いエンジン出力トルクを必要としない領域では、低い回転数側の第2目標エンジン回転数N2(図6では、N2E)に基づいて、エンジンの回転を制御することができ、しかも、作業モード設定手段44でエコノミーモードが選択された場合には、パワーモードを選択した場合に比べて第2目標エンジン回転数を低く設定することができる。これによって、エコノミーモードが選択された場合には、エンジンの燃費効率を大いに高めておくことができる。
また、大きなポンプ容量または高いエンジン出力トルクを必要とする領域では、検出したポンプ容量Dに応じて予め設定した目標エンジン回転数Nとなるように、エンジンの駆動制御を行わせることができ、作業機を操作する上で必要とする作業速度を充分に得ることができる。
また、エンジンの高出力状態からエンジン出力トルクTを減少させていくときにも、検出したポンプ容量Dに応じて、予め設定した目標エンジン回転数Nとなるように、エンジンの駆動制御を行わせることで、燃費の向上を図ることができる。