JP5323760B2 - ケーブルシースの収縮防止構造 - Google Patents

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本発明は、ケーブル外皮を形成するケーブルシースの収縮防止構造に関する。
従来、導体、絶縁体及び遮蔽テープ等をケーブルシースで被覆して構成されるケーブルにおいては、ケーブル内の発熱や外気の変化によってケーブルシースが熱収縮してケーブル内部が露出するいわゆるシュリンクバック現象が起きる場合がある。シュリンクバックが起きると、露出した部分からケーブル内部に湿気や水分が入り込むことでケーブルが劣化し、電気的性能が低下するといった問題が生じる。
かかる問題を解決すべく、例えば特許文献1には、ケーブル端末部においてケーブルシースを剥ぎ取った部分に絶縁テープを設け、その近傍にはケーブルシースの上から鋼線を螺旋状に巻き付けてケーブルシースを締め付ける方法が記載されている。また、特許文献2には、ケーブル端末部の近傍においてケーブルシースの上から螺旋状の金属ばねを巻き付け、その金属ばねを針金でブラケットに固定するとともに、加熱により金属ばねの内面とケーブルシース表面を融着させて固定する方法が記載されている。
特開平10−145929号公報 実開昭62−21728号公報
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の方法にあっては、シュリンクバックを有効に防止するためには、鋼線又は金属ばねをケーブルに対して広い範囲で巻き付けなければならず、取り付け作業が大掛かりになって作業効率が良くない。また、鋼線又は金属ばねが広い範囲でケーブルを直接的に拘束するので、ケーブル表面及びケーブル内部が破損する可能性もある。
本発明は上記課題を解決しようとしてなされたものであり、ケーブルシースのシュリンクバックを抑制するとともに、取り付け作業が簡単であって、ケーブル外部及び内部に破損を生じにくいケーブルシースの収縮防止構造を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
ケーブルシースの外周に設けられた弾性被覆部と、
前記弾性被覆部の外周に巻き付けられた定荷重ばねと、を備え、
前記定荷重ばねは、自然時の内径が前記弾性被覆部の外径よりも小さく設定されていることを特徴とするケーブルシースの収縮防止構造が提供される。
好ましくは、所定位置に固定された固定部を更に備え、
前記固定部は、ケーブルの長さ方向において、前記ケーブルの端末部から遠ざかる方向への前記弾性被覆部及び前記定荷重ばねの移動を制限する。
好ましくは、前記弾性被覆部の表面と前記ケーブルシースとの間には段差面が形成され、
前記段差面が前記固定部に係止されることで、前記弾性被覆部及び前記定荷重ばねの移動が制限されている。
好ましくは、前記ケーブルの長さ方向における前記定荷重ばねの幅が、前記ケーブルの長さ方向における前記弾性被覆部の幅よりも小さい。
好ましくは、前記弾性被覆部は、帯状のゴムテープ、具体的にはシリコンゴムテープ、EPゴム(エチレンプロピレンゴム;Ethylene Propylene Methylene Linkage)テープ、クロロプレン(ネオプレン)ゴムテープ等が前記ケーブルシースの外周に巻き付けられてなる。
本発明によれば、定荷重ばねがケーブルシースを付勢するのでシュリンクバックをゴムテープ、定荷重ばねの段差を利用して効果的に抑制することができる。ケーブル外周に弾性被覆部を設け、その外周に定荷重ばねを設けるのみの構造であるので、簡単な作業で取り付けることができる。また、弾性被覆部を介して定荷重ばねを設けているので、ケーブルの外部及び内部に破損を生じにくい。
第1の実施の形態におけるケーブルシースの収縮防止構造を説明する斜視図である。 図1に示したII-II線に沿った面の矢視断面図である。 第2の実施の形態におけるケーブルシースの収縮防止構造を説明する平面図である。
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態について図1及び図2を参照して説明する。図1は、ケーブル1に対してケーブルシースの収縮防止構造を適用した場合について示す斜視図であり、図2は、図1に示したII-II線に沿った面の矢視断面図である。
ケーブル1の外周には、固定部2、弾性被覆部3及び定荷重ばね4が設けられている。
ケーブル1は、図2に示すように、複数の銅線を撚り合わせてなる導体11の外周に、内部半導電層12、絶縁層13、外部半導電層14、遮蔽層15及び押さえ巻き層16を中心側から順に同心円状に配置し、更にこれをケーブルシース17で被覆して構成されている。ケーブルシース17は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンその他の熱可塑性樹脂で構成される。なお、ケーブル1はかかる構成に限られるものではなく、少なくともケーブルシースを有していればよい。
固定部2は、所定位置に固定されている部材である。固定部2は、ケーブル1の外周を囲って設けられているが、ケーブル1に対して固定されているものではない。つまり、ケーブルシース17が収縮しても固定部2の位置は変わらない。なお、固定部2の形状は図示例に限られるものではなく、後述する弾性被覆部3を係止できる形状であればよい。
弾性被覆部3は、帯状のシリコンゴムテープをケーブルシース17の周方向に巻き付けてなり、ケーブル1に対して略同心円状に設けられている。弾性被覆部3はシリコンゴムからなるため、その摩擦力によりケーブルシース17に対して滑りにくくなっている。このシリコンゴムテープは厚さ1mm程度、幅3〜4cmであって、ケーブル1に対して2回巻き付けられている。したがって弾性被覆部3の厚さは2mm程度であり、弾性被覆部3の表面とケーブルシース17との間に段差面31,32が形成されている。この段差面31,32のうちケーブル1の端末部10から離れて位置する段差面32が、固定部2に当接している。これにより、弾性被覆部3が固定部2に係止され、弾性被覆部3がケーブル1の端末部10から遠ざかる方向へ移動しないように固定されている。
なお、弾性被覆部3を構成するシリコンゴムテープは、上記した寸法及び巻き付け回数に限られるものではなく、これらは取り付け箇所や実施状況に応じて適宜変更可能である。また、弾性被覆部3は、シリコンゴムテープを巻き付けて形成されるものでなくともよく、例えばチューブ状に形成されたシリコンゴム等であってもよい。また、弾性被覆部3の素材はシリコンゴムに限られるものではなく、ケーブルシース17に対して滑りにくい素材であって、ある程度のクッション性を有するものであればよい。
また、弾性被覆部3は、シリコンゴムテープを強く引っ張りながらケーブルシース17に巻き付けられて構成されているものであってもよい。
定荷重ばね4は、市販のものを用いることができ、弾性被覆部3の外周面に巻回して取り付けられている。定荷重ばね4のケーブル1の長さ方向における幅は、図1に示すように弾性被覆部3の幅よりも小さいものが好ましく、例えば2.5cm程度である。また、取り付け前における定荷重ばね4の自然時の径は、弾性被覆部3を取り付けたケーブル1の径よりも少し小さい。ここで自然時とは、定荷重ばね4が「何ら引っ張り力のかかっていない状態」にあることをいう。これにより、定荷重ばね4は弾性被覆部3を介してケーブル1に一定の荷重を加え、ケーブルシース17をケーブル1の中心に近づく方向へ押し付ける。このように、定荷重ばね4は弾性被覆部3を介してケーブル1を締め付けているため、ケーブル1内部の遮蔽層15等に座屈や皺が生じず、ケーブルシース17の表面を傷つけることもない。また、弾性被覆部3は定荷重ばね4による付勢力でケーブルシース17に密着し、ケーブルシース17に対してより滑りにくくなっている。
なお、定荷重ばね4の幅は上記値に限られるものではなく、取り付け箇所や実施状況に応じて適宜変更可能である。
本実施形態の作用について説明する。
ケーブル1の発熱や外気の変化等によって、ケーブルシース17には長さ方向に収縮する応力が発生する。しかし、ケーブル1には定荷重ばね4が弾性被覆部3を介して巻き付けられており、定荷重ばね4がケーブルシース17をケーブル1の中心に近づける方向に付勢している。したがってケーブルシース17がケーブル1内部の遮蔽層15等に押し付けられてケーブルシース17が収縮する応力に対抗でき、シュリンクバックを抑制している。また、弾性被覆部3が固定部2に係止されているので、弾性被覆部3及び定荷重ばね4が端末部10から遠ざかる方向に移動しないように固定されている。
以上、本実施形態によれば、定荷重ばね4がケーブルシース17をケーブル1の中心に近づける方向に付勢することによりケーブルシース17が遮蔽層15等に押し付けられており、ケーブルシース17の収縮を防止するとともにシュリンクバックが抑制される。また、ケーブル1の外周に弾性被覆部3を設け、その外周に定荷重ばね4を設けているので、取り付け作業が大掛かりにならず簡単な作業で取り付けることができる。つまり、ケーブル設置後に後から取り付けることができるとともに、狭い作業スペースでも取り付け作業を行うことができる。更に、定荷重ばね4は、シリコンゴム製の弾性被覆部3を介して取り付けられているため、定荷重ばね4がケーブルシース17を傷つけることがなく、しかもケーブル1内部の遮蔽層15に座屈や皺を生じにくい。
また、弾性被覆部3がシリコンゴムテープを強く引っ張りながら巻き付けられて構成されていた場合には、弾性被覆部3自体もケーブルシース17を締め付けることができ、上記したケーブルシース17の収縮防止効果が更に高まることとなる。
更に、弾性被覆部3の幅は3〜4cmで足り、定荷重ばね4の幅も弾性被覆部3より小さいため、取り付け箇所を狭い範囲に留めることができる。また、ケーブルシース17の拘束を定荷重ばね4により行っているため、ケーブル1がその径方向に熱膨張したとしてもこれに追従して許容できる。
なお、本実施形態では、固定部2が弾性被覆部3及び定荷重ばね4よりも端末部10から離れた位置に設けられているが、弾性被覆部3及び定荷重ばね4が端末部10から遠ざかる方向へ移動しないように固定することができれば、固定部2を何れの位置に設けてもよい。
<第2の実施の形態>
続いて本発明の第2の実施の形態について図3を参照して説明する。第1の実施形態に対応する箇所については同一の符号を付し、説明を省略する。
図3は、CVTケーブル(トリプレックス型架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル;TriplexCross-linked Polyethylene Insulated Vinyl Sheath Cable)5に対してケーブルシースの収縮防止構造を適用した場合について示す平面図であり、端末部52の一部を断面で示している。
CVTケーブル5は3本のCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル;Cross-linked Polyethylene Insulated Vinyl Sheath Cable)51からなり、各CVケーブル51の端部には端末部52が設けられている。端末部52には、ケーブルシース53が剥ぎ取られた露出部54が形成されており、該露出部54が端子55に電気的に接続されている。露出部54は保護層56に被覆されている。
第2の実施の形態においては、固定部2が設けられておらず、その代わりにブラケット6が設けられている。ブラケット6は、3本のCVケーブル51を束ねて所定位置に固定する部材であり、従来から取り付けられているものである。
3本のCVケーブル51の端末部52にはそれぞれ弾性被覆部3及び定荷重ばね4が取り付けられ、各弾性被覆部3の段差面32がブラケット6に係止されている。これにより弾性被覆部3及び定荷重ばね4が端末部52から遠ざかる方向へ移動しないように固定されている。
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、各CVケーブル51に取り付けた弾性被覆部3を既存のブラケット6に係止することで、第1の実施の形態における固定部2を省略することができる。
なお、本発明はケーブルシースが収縮する場合だけでなく、ケーブルシースがケーブルの長さ方向に膨張する場合等にも適用可能である。
1 ケーブル
2 固定部
3 弾性被覆部
4 定荷重ばね
5 CVTケーブル
6 ブラケット
10 端末部
17 ケーブルシース
31 段差面
32 段差面

Claims (5)

  1. ケーブルシースの外周に設けられた弾性被覆部と、
    前記弾性被覆部の外周に巻き付けられた定荷重ばねと、を備え、
    前記定荷重ばねは、自然時の内径が前記弾性被覆部の外径よりも小さく設定されていることを特徴とするケーブルシースの収縮防止構造。
  2. 所定位置に固定された固定部を更に備え、
    前記固定部は、ケーブルの長さ方向において、前記ケーブルの端末部から遠ざかる方向への前記弾性被覆部及び前記定荷重ばねの移動を制限することを特徴とする請求項1に記載のケーブルシースの収縮防止構造。
  3. 前記弾性被覆部の表面と前記ケーブルシースとの間には段差面が形成され、
    前記段差面が前記固定部に係止されることで、前記弾性被覆部及び前記定荷重ばねの移動が制限されていることを特徴とする請求項2に記載のケーブルシースの収縮防止構造。
  4. 前記ケーブルの長さ方向における前記定荷重ばねの幅が、前記ケーブルの長さ方向における前記弾性被覆部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のケーブルシースの収縮防止構造。
  5. 前記弾性被覆部は、帯状のゴムテープが前記ケーブルシースの外周に巻き付けられてなることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のケーブルシースの収縮防止構造。
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