JP5321403B2 - 無線信号の受信機、受信方法、受信用プロセッサ及びプログラム - Google Patents

無線信号の受信機、受信方法、受信用プロセッサ及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、例えば高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)の分野において好適な無線信号の受信機、受信方法、当該受信機に搭載される無線信号の受信用プロセッサ、及び、プログラムに関する。
無線通信においては、送信機から送信される信号電力が一定であっても、距離や電波の伝搬路によって受信機が受信する信号レベルが変化する。そこで、受信機側での信号レベルを一定に保つために、AGC(Automatic Gain Control)回路が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、高度道路交通システム(ITS)の分野では、車両に搭載された車載通信装置同士や、これらと道路側のインフラ設備に装備された路側通信装置との間で通信を行うことにより、道路交通の安全性を高める技術が検討されている。
例えば、出会い頭衝突や右直衝突等の事故が予想される各車両に対して、車両の現在位置等を含む車両情報をお互いの車載通信装置が情報交換できれば、衝突の危険性を車両の運転者に警告したり、場合によっては運転操作介入を自動的に行ったりすることができ、事故防止に役立てることができる。
特に、交差点付近では車両同士の出会い頭衝突が発生し易いので、上記のような事故を防止する必要性が高い。
しかし、都市部の交差点付近には高層建造物が林立するため、車両同士の間で電波の見通しが良くないことが多く、車載通信装置間で互いの情報を交換するのは困難である。
このため、路側通信装置が車両情報の仲介役となり、交差点近傍の多数の車載通信装置から収集した車両の現在位置等の車両情報を各車載通信装置に伝送するようにすれば、各車両が他車の車両情報をほぼリアルタイムに察知することができ、道路交通の安全性を高めることができる。
この場合、各車載通信装置間のアクセス制御方式としては、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access /Collision Avoidance)が用いられると推定される。すなわち、各車載通信装置は、他の車載通信装置から無線信号の送信がないことを確認した上で、順に無線信号を外部に送信する。
このため、存在しない筈の端末からの送信要求によって正規の車載通信装置の送信が阻害される、いわゆる隠れ端末のような問題がなければ、各車載通信装置から送信された無線信号(電波信号)は互いに重複せずに、時系列的に並んで送信されることになる。
なお、上記高度道路交通システムで使用する無線信号は、例えばIEEE802.11a/g/pの規格に準じる場合には、この規格に基づくプロトコルデータユニット(Protocol Data Unit:以下、「PDU」という。)の単位で送信される。また、このPDUの1つのフレーム長さは約1m秒程度であり、各フレーム間には約40μ秒程度の時間的隙間(ガードタイム)が設けられる。
特開2002−84153号公報
上記高度道路交通システムでは、位置が異なる多数の車載通信装置から送信される無線信号を、1台の路側通信装置が確実に受信する必要があるが、各車載通信装置からの電波の強度は相互に大幅に異なる。
例えば、電波の強度は、自由空間に近い田舎では距離の2乗に反比例し、建造物の多い都市部では距離の4乗に反比例して、電波が減衰すると言われている。都市部での電波の減衰は建造物による電波の反射が主な原因である。
また、各車載通信装置が送信する無線信号は電波の反射によってマルチパスの状態となり、フェージングが発生し得るので、同じ車載通信装置から送信された無線信号であっても、僅かな条件の違いで路側通信装置が受信する信号レベルが急激に低下することが想定される。この低下の程度は、例えば32dBにも及ぶことが確認されている。
この点、路側通信装置の受信機には、前記AGC回路が搭載されているので、レベル差の大きい無線信号に対しても利得制御機能によって受信レベルの均一化が図られる。
すなわち、路側通信装置の受信機では、受信信号強度の上昇によって無線信号の到達を検出すると、入力信号のレベル(受信信号強度)に合わせてAGC回路のゲインを設定し、その無線信号がノイズであるか、或いは復調すべき正規のPDU(以下、「正規パケット」ということがある。)であるかを判定するようになっている。
しかしながら、高度道路交通システムに用いる路側通信装置の場合には、ノイズの多い環境であることと、隠れ端末が存在し得るという特殊性から、比較的弱い無線信号(正規信号だけでなく、ノイズも含む「電波」の意味。)の到達後に、それより強い正規の無線信号が連続して到達することがある。
この場合、前の無線信号が正規パケットであるか否かを判定している最中に、次の無線信号が到達すると、次の無線信号が正規パケットであるか否かの判定処理が間に合わず、次の無線信号に含まれる正規パケットを取り逃がす恐れがある。
また、次の無線信号が正規パケットであるか否かを判定するためには、AGC回路でのゲインを次の無線信号に合わせる必要がある。
この場合、従来の受信機では、ある無線信号が正規パケットであるか否かの判定中は、その判定が終了するまでAGC回路のゲインを維持するので、前の無線信号に対する判定中に、より強い次の無線信号が到達した場合には、AGC回路でのゲインが高すぎて次の無線信号が飽和(サチュレーション)することがある。
このように、後に到達した無線信号が飽和すると、この無線信号が正規パケットか否かの判定ができなくなり、仮にそれが正規パケットであった場合でもノイズと判定されてしまい、後の無線信号に含まれる有用な正規パケットが捕捉できなくなる。
一方、高度道路交通システムを想定すると、交差点付近に設置される路側通信装置に近い車両からの車両情報ほどより有用であると考えられるので、後から到達した強度の大きい無線信号を確実に受信することは極めて重要である。
本発明は、上記のような課題に鑑み、弱い正規信号やノイズの到達後に、より強い後の正規信号が連続して到達した場合でも、当該後の正規信号を確実に受信することができる無線信号の受信機等を提供することを目的とする。
(1) 受信レベルの上昇によって受信信号の到達を検出可能な検出部と、到達が検出された前記受信信号が正規のプロトコルデータユニット(Protocol Data Unit:以下、「PDU」という。)であるか否かを当該PDUのプリアンブルを用いて判定する判定処理を実行する判定部と、正規と判定された前記PDUのデータ復調を行う復調部と、を備えた無線信号の受信機であって、前記検出部は、前記判定処理中における前記受信レベルの更なる上昇により、既に到達した先の受信信号と連続する、発信源の異なる後の受信信号の到達を検出可能であり、前記判定部は、前記後の受信信号の到達が検出された場合に、当該後の受信信号を判定対象とすることを特徴とする。
本発明の受信機によれば、上記検出部が、判定処理中における受信レベルの更なる上昇により、既に到達した先の受信信号と連続する、発信源の異なる後の受信信号の到達を検出可能であり、上記判定部が、後の受信信号の到達が検出された場合に当該後の受信信号を判定対象とするので、判定処理中に到達した後の受信信号が正規のPDUである場合にこれを取り逃がすことがない。
このため、弱い無線信号(ノイズも含む「電波」の意味。)の到達後に、より強い後の正規信号が連続して到達した場合でも、後の正規信号に含まれる正規のPDUをデータ復調でき、当該後の正規信号を確実に受信することができる。
(2) 本発明の受信機において、入力信号に対する増幅率を可変に設定可能な増幅回路(例えば、AGC回路)と、前記受信レベルに対応して前記増幅回路の増幅率を制御するゲイン制御部とを更に備えている場合には、前記ゲイン制御部は、前記後の受信信号の到達が検出された場合に、前記先の受信信号の到達を検出した時よりも前記増幅回路の増幅率を低下させることが好ましい。
この場合、上記ゲイン制御部が、後の受信信号の到達が検出された場合に、先の受信信号の到達を検出した時よりも増幅回路の増幅率を低下させるので、より強い後の受信信号が到達しても、増幅回路でのゲインをより強い後の受信信号に合わせることができ、当該後の受信信号の飽和を防止することができる。
このため、強い方の後の受信信号が正規のPDUである場合に、それがノイズと判定されることがなく、後の受信信号を正規のPDUとして確実に受信できるようになる。
(3) また、本発明の受信機において、前記判定部は、前記後の受信信号の到達が検出された場合に、前記先の受信信号の到達時刻をリセットし、前記後の受信信号の到達時刻を基準として判定を開始することが好ましい。
この場合、後の受信信号が正規のPDUである場合に、先の受信信号の到達時刻ではなく後の受信信号の到達時刻を基準として、正規のPDUであるか否かの判定が行われるので、その受信時刻を正確に特定することができ、正規のPDUに対するデータ復調を正確に実行することができる。
(4) また、本発明の受信機において、前記ゲイン制御部は、前記先の及び後の受信信号の到達が検出された時には前記増幅回路の増幅率を高速に変化させるが、それ以外の期間は当該増幅回路の増幅率をほぼ一定に維持することが好ましい。
この場合、上記ゲイン制御部が、無線信号の到達の検出時以外の期間は、増幅回路の増幅率をほぼ一定に維持するので、例えば、プリアンブルに対する自己相関値によって正規のPDUか否かを判定する場合に、自己相関値を安定させることができ、正規のPDUの判定処理を確実に行うことができる。
(5) 本発明の受信方法は、本発明の受信機が行う無線信号の受信方法であって、当該受信機と同様の作用効果を奏する。
(6) 本発明の受信用プロセッサは、本発明の受信機に搭載される無線信号の受信用プロセッサであって、当該受信機と同様の作用効果を奏する。
(7) また、本発明のプログラムは、本発明の無線信号の受信機としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記受信機と同様の作用効果を奏する。なお、この場合のコンピュータには、汎用プロセッサ又は組み込み用プロセッサ、その他の演算処理回路が含まれる。
以上の通り、本発明によれば、受信レベルの更なる上昇により、連続して到達する、発信源の異なる後の受信信号が検出された場合に、当該後の受信信号を正規信号か否かの判定対象とするようにしたので、弱い正規信号やノイズの到達後に、より強い後の正規信号が連続して到達した場合でも、当該後の正規信号を確実に受信することができる。
高度道路交通システムの全体構成を示すための道路平面図である。 路側通信装置に搭載された第1実施形態に係る受信機の内部構成を示すブロック図である。 (a)は異なる位置にある2台の車両が無線信号を送信する場合の道路側面図であり、(b)及び(c)はその各車両が送信する無線信号のフレームと、その無線信号の可変アンプ(AGC回路)への入力波形とを示す図であり、(d)は携帯電話などから受信機がノイズを受信する場合の説明図である。
従来の受信機が、強い正規パケットの到達前にノイズを受信した場合のタイムチャートであり、(a)は可変アンプの入力波形、(b)はRSSIの時間的変化、(c)は可変アンプのゲインの時間的変化、(d)は可変アンプの出力波形、(e)は自己相関信号の時間的変化を示している。 第1実施形態の受信機が、強い正規パケットの到達前にノイズを受信した場合のタイムチャートであり、(a)は可変アンプの入力波形、(b)はノイズに対するRSSIの時間的変化、(c)はノイズに対する可変アンプのゲインの時間的変化、(d)はノイズ及び正規パケットに対するRSSIの時間的変化、(e)はノイズ及び正規パケットに対する可変アンプのゲインの時間的変化、(f)は可変アンプの出力波形、(g)は自己相関信号の時間的変化を示している。
受信用プロセッサによる処理内容の具体例を示す状態遷移図である。 (a)は正規パケットを受信した場合の状態遷移を示すタイムチャートであり、(b)はノイズを受信した場合の状態遷移を示すタイムチャートである。 (a)はレベル2の状態でより強い無線信号を検出した場合の状態遷移を示すタイムチャートであり、(b)はレベル3の状態でより強い無線信号を検出した場合の状態遷移を示すタイムチャートである。
路側通信装置に搭載された第2実施形態に係る受信機の内部構成を示すブロック図である。 受信用プロセッサによる処理内容の具体例を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る受信機が、強い正規パケットの到達前にノイズを受信した場合のタイムチャートであり、(a)は可変アンプの入力波形、(b)はRSSIの時間的変化、(c)は第1受信系の可変アンプのゲインの時間的変化、(d)は第1受信系の可変アンプの出力波形、(e)は第2受信系の可変アンプのゲインの時間的変化、(f)は第2受信系の可変アンプの出力波形を示している。 第2実施形態に係る受信機が、フェージングによってレベルが漸増する正規パケットを受信した場合のタイムチャートであり、(a)は可変アンプの入力波形、(b)はRSSIの時間的変化、(c)は第1受信系の可変アンプのゲインの時間的変化、(d)は第1受信系の可変アンプの出力波形、(e)は第2受信系の可変アンプのゲインの時間的変化、(f)は第2受信系の可変アンプの出力波形を示している。
〔第1実施形態〕
〔システムの全体構成〕
図1は、高度道路交通システムの全体構成を示すための道路平面図である。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交差点付近に設けられた路側通信装置1と、この装置1と通信可能な複数の車載通信装置3とから構成されており、図1の中央付近に示す路側通信装置1は、例えば交差点の信号機2の支柱に設置されている。
道路を走行する各車両には、それぞれ、路側通信装置1と通信可能な車載通信装置3が搭載されている。路側通信装置1は、その通信可能エリア内にある多数(例えば200台程度が想定される。)の車載通信装置3と通信可能である。
路側通信装置1は、交通管制センターの中央装置4と接続され、この中央装置4と路側通信装置1との間は有線(無線でも可)で接続されている。また、各交差点に位置する路側通信装置1同士の路路間通信と、路側通信装置1と車載通信装置3との間の路車及び車路間通信と、車載通信装置3同士の車車間通信には、無線通信が用いられる。このうち車載通信装置3同士の車車間通信には、CSMA/CAが用いられると推定される。
本実施形態では、通信装置1,3間の無線通信の変調方式として、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)が採用されている。
この方式は、送信データを多数の搬送波(サブキャリア)に乗せるマルチキャリアのデジタル変調方式であり、各サブキャリアは互いに直交しているため、周波数軸で重なりが生じる程に密にデータを並べられる利点がある。
更に、本実施形態の車載通信装置3は、IEEE802.11a/g/pに準拠したフォーマットの無線信号を、CSMA/CAによるアクセス制御方式を用いて送信する。
このため、各車載通信装置3が送信する正規のフレーム(例えば、長さ約1m秒)は、互いに重複せずに時系列的に並んで送信され、このフレーム間には、例えば40μ秒程度の時間的な隙間がある。各車載通信装置3の送信機から送信されるフレーム数は、いわゆるバーストモードの場合を除いて原則として1つである。
なお、通常、「フレーム」は、レイヤ2の通信で使われるPDUの呼び名であり、「パケット」は、レイヤ3の通信で使われる呼び名であることが多いが、本明細書では、特にそのような区別を意識せず、「パケット」と「フレーム」をいずれも単なるPDUの一種として併用している。
また、単に「信号」と言えば、一般には、必要な情報を含む「狭義の信号」のことをいい、この狭義の信号を妨害する「ノイズ」と区別する意味で使用されるが、本明細書において単に「信号」というときは、かかる「狭義の信号」と「ノイズ」の双方を含めた「広義の信号」のことを意味するものとする。従って、本明細書における「受信信号」及び「無線信号」には、送信側が乗せた情報を有する狭義の信号(正規のPDU)と、その情報を有しない或いはその情報が崩れたノイズとの双方が含まれる。
〔路側通信装置の受信機〕
次に、路側通信装置1に搭載された受信機の内部構成について説明する。
図2は、路側通信装置1内の受信機1Rの内部構成を示すブロック図である。
なお、本発明は、ノイズを含む前の無線信号の後に連続して到達する、より強い車載通信装置3の送信信号を路側通信装置1が適切に受信するための新たな方策を提案するものであるから、以下において、路側通信装置1を「受信機1R」、車載通信装置3を「送信機3S」として説明する。
路側通信装置1内の受信機1Rは、図1に示す各構成要素を図示の通り接続することによって構成されている。
すなわち、受信機1Rは、左側から順に、アンテナ101、バンドパスフィルタ102、ローノイズアンプ103、アッテネータ104、ローノイズアンプ105、AGC回路よりなる可変アンプ106、直交復調器107、A/D変換器108、検波回路109、及び受信用プロセッサ110を備えている。
まず、各送信機3Sから送信された無線信号はアンテナ101によって受信され、この受信信号のうち、所定帯域の信号がバンドパスフィルタ102によって抽出される。
抽出された信号は、ローノイズアンプ103、アッテネータ104、ローノイズアンプ105、及び、自動利得制御機能を有する増幅回路である可変アンプ106によって、全体的に増幅されるようになっている。
可変アンプ106の出力信号は、直交復調器107により同相成分であるI信号と、直交成分であるQ信号とに復調され、この各成分の信号は次段のA/D変換器108によりデジタル化されて、受信用プロセッサ110に入力される。
また、ローノイズアンプ105の出力信号、すなわち、可変アンプ(AGC回路)106への入力信号は検波回路109で包絡線検波され、この包絡線の信号レベルである受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication 以下、本明細書において、「受信レベル」ということがある。)も受信用プロセッサ110に入力される。
本実施形態の受信用プロセッサ110は、例えば、単一受信系の制御プログラムを記憶したFPGA(Field Programmable Gate Array )よりなり、その制御プログラムの実行によって実現される機能部として、検出部110Aと、ゲイン制御部110Bと、判定部110Cと、復調部110Dとを備えている。
このうち、検出部110Aは、RSSIを所定の閾値Th1,Th2と比較することにより、可変アンプ106への入力信号のレベルの上昇を常に監視しており、RSSIが閾値Th1,Th2を超えたか否かによって何らかの無線信号の到達を検出する。
一方、ゲイン制御部110Bは、上記RSSIの値に対応して、アッテネータ104の減衰率や可変アンプ106の増幅率(ゲイン)を可変に設定可能である。
また、判定部110Cは、RSSIの上昇によって検出部110Aが無線信号の到達を検出すると、デジタル化された前記I信号とQ信号に対して正規パケットであるか否かの判定処理を行い、復調部110Dは、判定部110Cが正規と判定した場合には、そのI信号とQ信号にデータ復調を行い、その正規パケットに含まれるヘッダ及びデータ情報を抽出する。
なお、IEEE802.11a/g/pのショートプリアンブルは10回繰り返し信号により構成されているので、上記判定部110Cによる正規パケットか否かの判定処理は、具体的には、受信フレームの先頭部分のプリアンブル(図3(b)参照)に対する自己相関値が所定の閾値を超えたか否かによって行われる。
また、本実施形態のゲイン制御部110Bは、無線信号の到達が検出された場合に、可変アンプ106の増幅率を高速に変化させるが、それ以外の期間は当該可変アンプ106の増幅率をほぼ一定に維持するようになっている。
このように、無線信号の到達の検出時以外の期間は、可変アンプ106の増幅率がほぼ一定に維持されるので、例えば、プリアンブルに対する自己相関値によって正規パケット否かを判定する場合には、その自己相関値を安定させることができ、正規パケットの判定処理を確実に行えるという利点がある。
なお、上記各機能部分を有する受信用プロセッサ110が実行する、より具体的な処理内容(図6)については、後述する。
〔各車両の送信信号とその入力波形〕
図3(a)は、異なる位置にある2台の車両A,Bが無線信号を送信する場合の道路側面図であり、図3(b)及び(c)は、その各車両A,Bが送信する無線信号のフレームと、その無線信号の可変アンプ(AGC回路)106への入力波形とを示す図であり、図3(d)は携帯電話などから受信機がノイズを受信する場合の説明図である。
図3に示す例では、受信機1Rから遠い方の車両Bでの送信時刻をt1とし、近い方の車両Aでの送信時刻をt2(>t1)として、車両Aからの無線信号が車両Bからの無線信号よりも遅れて到着したと仮定している。
図3(b)に示すように、車両A,Bの送信信号のフレームには、先頭から順に、プリアンブル、ヘッダ、データ及びCRC(Cyclic Redundancy Code)を含んでいる。このCRCは、IEEE802.11a/g/pのフォーマットにおける、デジタル信号のフレーム末尾に含まれているエラー検出用の符号データである。
従って、フレーム末尾のCRCを検出することにより、各フレームの受信が終了したことを検出することができる。
一方、図3(b)に示すように、異なる位置にある車両A,Bの送信信号の可変アンプ106への入力波形には、大きな信号レベル差があり、同一車両に関する入力波形でもフェージングによって信号レベルが変動する。
また、送信機3SはCSMA/CA方式でフレームを送信するため、車両A,Bがいずれも正規の車載通信装置3を搭載しており、車両Aが車両Bからの電波を適切に受信しておれば、これらの車両A,Bが送信する各フレームは互いに重複せず、図3(b)に示すように、受信機1Rに到達する両車両A,Bのフレーム間には所定のガードタイムΔt(例えば40μ秒)が存在する。
ところが、車両Aが車両Bからの電波を適切に受信していない場合(車両Bが「隠れ端末」となっている場合)には、例えば図3(c)に示すように、車両Bからの比較的弱い正規信号が先に受信機1Rに到達してから、それより強い車両Aからの正規信号が、車両Bからの正規信号と重なった状態で連続して受信機1Rに到達することがある。
また、図3(d)に示すように、携帯電話など他の周波数帯を用いる機器から発せられた電波の一部が、比較的弱いノイズとなって先に受信機1Rに到達し、その後、より強い車両Aの正規信号がそのノイズと重なった状態で連続して受信機1Rに到達することもある。
このように、強い正規パケット(図3の車両A)の到達前に、それより弱い正規パケット(図3の車両B)やノイズが到達することにより、両者が重畳した状態で受信機1Rのアンテナ101に連続的に届く場合がある。
〔無線信号の連続到達とその課題〕
図4は、従来の受信機が、強い正規パケットの到達前に弱いノイズを受信した場合のタイムチャートであり、弱い無線信号の到達後に、より強い次の無線信号が連続して到達した場合の、従来の受信機の課題を示すものである。
図4(a)は、上記の場合における可変アンプ106の入力波形を、図4(b)はRSSIの時間的変化を、図4(c)は可変アンプ106のゲインの時間的変化を、それぞれ示している。
図4(a)及び(b)に示すように、この場合、先に受信機に到達したノイズによりいったんRSSI(受信レベル)が上昇し、その後に連続して到達した正規パケットによってRSSIが更に上昇している。
このさい、最初のノイズによってRSSIが所定の閾値Th1を超え、これによって何らかの無線信号の到達が検出されると、そのRSSIの値に対応して可変アンプ106のゲインが設定され(図4(c)参照)、先に到達した無線信号(この場合はノイズ)に対して正規パケットであるか否かの判定処理が行われる。
このように、先に到達した受信信号が結果的にノイズであったとしても、その判定処理(例えば自己相関値を用いる。)には所定の時間を要するが、かかるノイズに対する判定処理の最中に、次の正規パケットが到達した場合には、当該次の正規パケットに対する判定処理が間に合わないことがある。
このため、図4で想定する場合のように、実際にはノイズの後に到達した無線信号が正規パケットであるにも拘わらず、正規パケットに対するプリアンブルの判別を行えず、当該正規パケットを取り逃がす恐れがある。
一方、次の無線信号が正規パケットであるか否かを判定するためには、可変アンプ106のゲインを次の無線信号に合わせる必要があるが、従来の受信機では、ある無線信号が正規パケットであるか否かの判定中は、その判定が終了するまで可変アンプ106のゲインを固定して維持するようになっている。
このため、図4(d)に示すように、前の無線信号(この場合はノイズ)に対する判定処理中に、より強い次の正規パケットが到達した場合には、この正規パケットにとっては可変アンプ106でのゲインが高すぎて飽和することがある。
このように、次の正規パケットが飽和すると、図4(e)に示すように、その正規パケットの自己相関信号も崩れてしまうので、次の無線信号が正規パケットか否かの判定処理を適切に実行できなくなる。従って、仮に後の無線信号が正規パケットであった場合でも、これがノイズと判定されてしまい、後の無線信号に含まれる有用な正規パケットが捕捉できなくなる。
なお、図4における先に到達する弱いノイズを、弱い正規信号(図3(c)中の車両Bからの正規パケット)に置き換えた場合も、上記と同様の現象が生じる。
また、本実施形態のような高度道路交通システムを想定すると、図3(a)に示すように、交差点付近に設置される路側通信装置1から遠い車両Bよりも、その装置1により近い方の車両Aからの車両情報ほど有用であると考えられる。
従って、高度道路交通システムを構成する路側通信装置1の受信機1Rの場合には、後から到達したより強度の大きい無線信号を確実に受信することは、極めて重要な課題であると言える。
〔課題に対する対策と第1実施形態の効果〕
そこで、本実施形態の受信用プロセッサ110では、検出部110Aが、ある無線信号に対する正規パケットか否かの判定又はそのデータ復調中においても、RSSIの更なる上昇によって、既に到達した先の受信信号と連続する、発信源の異なる後の受信信号の到達を検出できるようにし、かつ、判定部110Cが、後の受信信号の到達が検出された場合に、当該後の受信信号を判定対象とすることにより、後の受信信号が正規パケットである場合に、これを取り逃がすことがないようにした。
図5は、第1実施形態の受信機1Rが、強い正規パケットの到達前に弱いノイズを受信した場合のタイムチャートであり、弱い無線信号の到達後により強い次の無線信号が連続して到達した場合の、第1実施形態の受信機1Rの効果を示すものである。
図5(a)は、上記の場合における可変アンプ106の入力波形を、図5(b)はノイズに対するRSSIの時間的変化を、図5(c)はノイズに対する可変アンプ106のゲインの時間的変化を、それぞれ示している。
この場合、図5(b)に示すように、先に受信機1Rに到達したノイズによりいったんRSSIが上昇して所定の閾値Th1を超えると、検出部110Aが無線信号の到達を検出する。このとき、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bは、図5(c)に示すように、そのRSSIの値に対応して可変アンプ106のゲインを下げて追従させる。
一方、受信用プロセッサ110の検出部110Aは、上記閾値Th1に加えて、連続して到達し得る次の強い無線信号を検出するための第2の閾値Th2を更に保持している。なお、路側通信装置1の設置場所によって異なるが、例えば、Th1=−85dBM、Th2=Th1+5dBMに設定される。
検出部110Aは、判定部110Cが前の無線信号(この場合はノイズ)に対する判定処理の期間中(或いは、そのデータ復調中)であっても、第2の閾値Th2を超えるRSSIの上昇があるか否かを監視している。
また、図5(d)及び(e)に示すように、受信用プロセッサ110の判定部110Cは、RSSIが第2の閾値Th2を超えて次のより強い無線信号(この場合は正規パケット)の到達が検出された場合には、前の無線信号に対する自己相関の計算(或いは、そのデータ復調)を即座に取りやめ、ゲイン制御部110Bは、次の無線信号に合わせて可変アンプ106のゲインを更に下げて追従させる。
これにより、図5(f)に示すように、次の無線信号が可変アンプ106に対して飽和するのが防止され、次の無線信号に対して正規パケットか否かの判定処理を行える状態となる。
そこで、判定部110Cは、正規パケットか否かの判定処理の対象を次の無線信号に切り替える。すなわち、判定部110Cは、より強い次の無線信号の到達が検出された場合には、前の無線信号から当該次の無線信号に判定対象を切り替える。従って、判定部110Cが当該次の無線信号を正規と判定した場合には、復調部110Dが次の無線信号に含まれるパケットに対するデータ復調を行うことになる。
また、受信用プロセッサ110の判定部110Cは、次の無線信号の到達が検出された場合には、その前の無線信号(この場合はノイズ)の到達時刻(具体的には、閾値Th1を超えた時刻)をリセットし、次の無線信号の到達時刻(具体的には、閾値Th2を超えた時刻)を基準として判定処理を行い、正規パケットの受信時刻を決定する。
このため、次の無線信号に含まれる正規パケットに対するデータ復調を、正確に実行することができる。
以上の通り、第1実施形態の受信機1R及び受信用プロセッサ110によれば、検出部110Aが、既に到達した先の受信信号に対する判定処理又はデータ復調中においても、RSSIの更なる上昇によって連続する、発信源の異なる後の受信信号の到達を検出可能であり、判定部110Cが、後の受信信号の到達が検出された場合に、後の受信信号を判定対象とするので、後の受信信号が正規パケットである場合にこれを取り逃がすことがない。
このため、ノイズや正規信号よりなる弱い無線信号の到達後に、より強い後の正規信号が連続して到達した場合でも、後の受信信号に含まれる正規パケットをデータ復調でき、当該後の正規信号を確実に受信することができる。
また、ゲイン制御部110Bは、後の受信信号の到達が検出された場合に、先の受信信号の到達を検出した時よりも可変アンプ106の増幅率を低下させるので、より強い後の受信信号が到達しても、可変アンプ106でのゲインをより強い後の受信信号に合わせることができ、当該後の受信信号の飽和を防止することができる。
このため、強い方の後の受信信号が正規パケットである場合に、それがノイズと判定されることがなく、後の受信信号を正規パケットとして確実に受信することができる。
このように、第1実施形態の受信機1R及び受信用プロセッサ110によれば、図1の路側通信装置1のようなノイズの多い環境に設置される通信装置に使用しても、ノイズや弱い正規パケットの後から連続的に到達する正規パケット(図3の車両Aからの正規パケット)を安定して受信することができる。
なお、図5の場合とは逆に、前の弱い無線信号が正規パケットであり、次のより強い無線信号がノイズであることも考えられるが、この場合には、後から到達した強いノイズの重畳によって、正規パケットの復調がそもそも困難であると考えられるので、さほど大きな問題ではない。
〔受信用プロセッサの処理内容の具体例〕
図6は、受信用プロセッサ110による処理内容の具体例を示す状態遷移図である。
図6に示すように、受信用プロセッサ110は、レベル0〜レベル3までの4つの動作状態を有している。このうち、レベル0は、RSSIの上昇を検出していないデフォルト状態であり、この場合、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bは、レベルの小さい無線信号でも捉えられるように、可変アンプ106のゲインを高めのデフォルト値に設定している。
レベル1は、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bが、RSSIの値に合わせて可変アンプ106のゲインを急激に追従させる高速追従状態であり、レベル2は、そのゲイン制御部110Bが、可変アンプ106のゲイン変化が緩やかになるように設定するとともに、同プロセッサ110の判定部110Cが、到達した無線信号が正規パケットか否かを判定する判定処理状態である。
また、レベル3は、受信用プロセッサ110の復調部110Dが、正規パケットに対するデータ復調を行う復調処理状態である。
図6に示すように、受信用プロセッサ110は、RSSIが第1の閾値Th1を超えた場合(入出力条件S1)に、動作状態をレベル0からレベル1に遷移させ、可変アンプ106に固有の所定の追従時間T1が経過した場合(入出力条件S2)に、動作状態をレベル1からレベル2に遷移させる。
また、受信用プロセッサ110は、正規パケットか否かの所定の判定時間T2内に正規パケットを観測した場合(入出力条件S3)に、動作状態をレベル2からレベル3に遷移させ、正規パケットに対するデータ復調が完了した場合(入出力条件S4)に、動作状態をレベル3からレベル0に戻す。
更に、受信用プロセッサ110は、正規パケットか否かの所定の判定時間T2内に正規パケットを観測しない場合(入力条件S5)は、到達した無線信号がノイズと見なせるので、動作状態をレベル2からレベル0に戻す。
ここまでの処理は、通常の受信用プロセッサ110でも行うものであるが、本実施形態の受信用プロセッサ110は、図6に破線で示す入出力条件S6及びS7を新たに設けた点に特徴がある。
すなわち、受信用プロセッサ110は、レベル2(判定処理状態)において、RSSIが更に第2の閾値Th2を超えた場合(入出力条件S6)には、動作状態をレベル1に戻すようになっている。
また、受信用プロセッサ110は、レベル3(復調処理状態)の場合であっても、RSSIが更に第2の閾値Th2を超えた場合(入出力条件S7)には、動作状態をレベル1に戻すようになっている。
従って、これらの条件S6及びS7を設定したことにより、前の無線信号に対する判定処理や復調処理が行われていても、可変アンプ106に対する入力信号のレベル(RSSI)の更なる上昇によって次の無線信号の到達が検出された場合には、前の無線信号に対するそれらの処理が途中で取りやめられ、次の無線信号に関する判定処理と復調処理に動作状態が移行し、当該次の無線信号に判定対象が切り替えられることになる。
〔無線信号の受信時における状態遷移例〕
図7(a)は、正規パケットを受信した場合の状態遷移を示すタイムチャートであり、図7(b)は、ノイズを受信した場合の状態遷移を示すタイムチャートである。
図7(a)に示すように、受信機1Rが正規パケットのみを受けた場合には、RSSIが閾値Th1を超えることによって動作状態がレベル1に上がり、可変アンプ106のゲインがそれに合わせて急激に追従する。
次に、所定の追従時間T1が経過すると、動作状態がレベル2に上がり、検出した無線信号に対して正規パケットか否かの判定処理が行われる。
また、図7(a)では無線信号が正規パケットであるから、動作状態はレベル2からレベル3に上がり、当該正規パケットに対してデータ復調が行われる。
一方、図7(b)に示すように、受信機1Rがノイズのみを受けた場合も、レベル0→レベル1→レベル2まで動作状態が遷移する。
しかし、図7(b)では無線信号がノイズであるから、レベル2の判定処理において正規パケットが観測されないので、所定の判定時間T2が経過した時点で、動作状態がレベル2からレベル0に戻る。
図8(a)は、レベル2の状態でより強い無線信号を検出した場合の状態遷移を示すタイムチャートであり、図8(b)は、レベル3の状態でより強い無線信号を検出した場合の状態遷移を示すタイムチャートである。
図8(a)に示すように、受信機1Rが最初の無線信号(ノイズを含む。)を受けると、RSSIが閾値Th1を超えることによって動作状態がレベル1に上がり、可変アンプ106のゲインがそれに合わせて急激に追従する。
次に、所定の追従時間T1が経過すると、動作状態がレベル2に上がり、検出した最初の無線信号に対して正規パケットか否かの判定処理が行われる。
図8(a)では、最初の無線信号に対する判定処理中に、RSSIが第2の閾値Th2を超えて新たに次の無線信号が検出されている。これにより、動作状態がレベル2からレベル1に戻る。
その後、戻ったレベル1において、次の無線信号のRSSIに合わせて可変アンプ106のゲインが急激に追従し、所定の追従時間T1が経過してから、動作状態が再びレベル2に上がる。
この2回目のレベル2において、次の無線信号に対して正規パケットか否かの判定処理が行われる。図8(a)では次の無線信号が正規パケットであり、動作状態がレベル2からレベル3に上がり、当該正規パケットに対してデータ復調が行われる。
一方、図8(b)は、最初の無線信号が弱い正規パケットである場合を想定しており、この場合、レベル0→レベル1→レベル2→レベル3まで動作状態が遷移する。
また、図8(b)では、最初の正規パケットに対する復調処理中に、RSSIが第2の閾値Th2を超えて新たに次の無線信号が検出されている。これにより、動作状態がレベル3からレベル1に戻る。
その後、戻ったレベル1において、次の無線信号のRSSIに合わせて可変アンプ106のゲインが急激に追従し、所定の追従時間T1が経過してから、動作状態が再びレベル2に上がる。
この2回目のレベル2において、次の無線信号に対して正規パケットか否かの判定処理が行われる。図8(b)の場合も次の無線信号が正規パケットであり、動作状態がレベル2からレベル3に上がり、当該正規パケットに対してデータ復調が行われる。
〔第2実施形態〕
図9は、路側通信装置1に搭載された第2実施形態に係る受信機1Rの内部構成を示すブロック図である。
図9に示すように、本実施形態の受信機1Rが第1実施形態のそれと異なるところは、第1受信系1Aと第2受信系1Bの2つの受信系を備えた受信機1Rが採用されている点にある。この受信機1Rの各受信系1A,1Bは、それぞれ第1実施形態に係る受信機1Rの受信系と同じ構成要素101〜109を備えている。
もっとも、これらの受信系1A,1Bは1つの受信用プロセッサ110によって制御処理されるようになっており、各受信系1A,1BのA/D変換器108と検波回路109の出力信号は、いずれも1つの受信用プロセッサ110に入力される。
本実施形態の受信用プロセッサ110は、例えば、複数受信系の制御プログラムを記憶したFPGAよりなり、その制御プログラムの実行によって実現される機能部として、検出部110Aと、ゲイン制御部110Bと、判定部110Cと、復調部110Dとを備えている。
このうち、検出部110Aは、両受信系1A,1Bの可変アンプ106への入力信号のレベル(RSSI)の上昇を常に監視しており、RSSIが小さい方の第1の閾値Th1を超えたか否かによって、弱い方の無線信号(以下、「第1無線信号」ということがある。)の到達を検出する。
また、検出部110Aは、RSSIが大きい方の第2の閾値Th2を超えたか否かによって、強い方の無線信号(以下、「第2無線信号」ということがある。)の到達を検出する。
このように、本実施形態の受信機1Rにおいても、未検知の無線信号が到来する前のデフォルト状態において、強弱2種類の無線信号(第1及び第2無線信号)の連続的到達を検出可能な受信体勢になっている。
一方、ゲイン制御部110Bは、各受信系1A,1BでのRSSIの値に対応して、各受信系1A,1Bのアッテネータ104の減衰率や可変アンプ106に増幅率を、それぞれ独立して可変に設定可能である。
そして、ゲイン制御部110Bは、第1無線信号の到達が検出された場合には、第1受信系1Aの増幅率のみをRSSIの値に合わせて追従させ、第2無線信号の到達が検出された場合には、第2受信系1Bの増幅率のみをRSSIの値に合わせて追従させる。
この場合、第2無線信号の方が第1無線信号よりも強度が大きいので、可変アンプ106に対するゲインの設定は、第1受信系1Aよりも第2受信系1Bの方が低めに設定されることになる。
また、判定部110Cは、連続する第1及び第2無線信号の到達を検出部110Aが検出した場合に、各受信系1A,1Bが出力するデジタル化されたI信号とQ信号に対し、それらの信号のいずれが正規パケットであるかの判定処理を行う。
この判定処理は、第1実施形態と同様に、プリアンブルに対する自己相関値によって行っても良いし、RSSIの差分値又は加算値の利用、或いは、パターン認識法によって行うこともできる。
そして、復調部110Dは、判定部110Cが正規と判定したパケット(I信号とQ信号)に対してデータ復調を行い、その正規パケットに含まれるヘッダ及びデータ情報を抽出する。
また、判定部110Cは、強い方の無線信号である第2無線信号が正規パケットであると判定した場合には、第1無線信号が正規パケットであるか否かに拘わらず、無条件に当該第2無線信号を判定対象とするようになっている。
その理由は、前記した通り、ITSにおいては、路側通信装置1により近い車両情報ほど有用であるため、前に到達した弱い方の第1無線信号よりも、後に到達した強い方の第2無線信号を確実に受信すべきだからである。
〔受信用プロセッサの処理内容の具体例〕
図10は、受信用プロセッサ110の処理内容の具体例を示すフローチャートである。
図10に示すように、受信用プロセッサ110での受信処理は、前半の「プリアンブル検索モード」と後半の「データ復調モード」とに大きく別れており、「プリアンブル検索モード」では、第1及び第2無線信号のプリアンブルを利用して正規パケットの有無を判定する。
また、「データ復調モード」は、プリアンブルによる同期確立を条件として、後続のデータ受信のために実行されるモードである。このモードでは、例えば最大比合成法によって、各受信系1A,1Bの出力信号(I信号とQ信号)を合成した合成信号に対するデータ復調が実行される。
なお、各受信系1A,1Bの出力信号の合成方法としては、最大比合成法の他に、選択合成法や等利得合成法を採用してもよい。以下、図10のフローチャートに沿って、受信用プロセッサ110による無線信号の受信処理をより詳細に説明する。
図10に示すように、受信用プロセッサ110は、まずプリアンブル検索モード(図10のステップST1)を実行する。
このプリアンブル検索モードでは、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bは、検出部110Aが第1の閾値Th1を超えるRSSIの上昇を検出すると、そのRSSIの値に合わせて第1受信系1Aの可変アンプ106の増幅率を追従させる。
また、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bは、検出部110Aが第2の閾値Th2を超えるRSSIの上昇を検出すると、そのRSSIの値に合わせて第2受信系1Bの可変アンプ106の増幅率を追従させる。
このように、プリアンブル検索モードにおいては、受信用プロセッサ110は、各受信系1A,1Bに含まれる可変アンプ106に対して、それぞれ独立して増幅率(ゲイン)を設定する(図10のステップST2)。
次に、受信用プロセッサ110の判定部110Cは、各受信系1A,1Bが受信した無線信号に対して、自己相関値の計算等によってプリアンブルを探索し、これによって正規パケットの有無を判定する(図10のステップST3)。
判定部110Cは、上記判定において、プリアンブルが見つからなかった場合には、プリアンブル検索モードを繰り返し実行し、プリアンブルが見つかった場合には、次のデータ復調モードに移行する(図10のステップST4)。
一方、データ復調モードでは、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bが、両受信系1A,1Bの可変アンプの増幅率を共通の値に設定し直し(図10のステップST5)、同プロセッサ110の復調部110Dが、両受信系1A,1Bからの出力信号を最大比合成法等によって合成し、データ復調を行う(図10のステップST6)。
次に、復調部110Dは、前記CRCの検出等によって一連のフレーム受信が完了したか否かを判定し(図10のステップST7)、完了と判定した場合には、動作モードを最初のプリアンブル検索モードに戻し、未完と判定した場合は、当該データ復調モードを繰り返し実行する。
〔第2実施形態の効果(1)〕
図11は、第2実施形態の受信機1Rが、強い正規パケットの到達前に弱いノイズを受信した場合のタイムチャートであり、弱い無線信号の到達後により強い次の無線信号が連続して到達した場合の、第2実施形態の受信機1Rの効果を示すものである。
図11(a)は、上記の場合における可変アンプの入力波形を、図11(b)はRSSIの時間的変化を、それぞれ示している。
また、図11(c)は第1受信系1Aの可変アンプ106のゲインの時間的変化を、図11(d)は第1受信系1Aの可変アンプ106の出力波形を、それぞれ示している。
更に、図11(e)は第2受信系1Bの可変アンプ106のゲインの時間的変化を、図11(f)は第2受信系1Bの可変アンプ106の出力波形を、それぞれ示している。
図11(b)に示すように、先に受信機1Rに到達したノイズによってRSSIが第1の閾値Th1を超えると、受信用プロセッサ110の検出部110Aが弱い方の第1無線信号の到達を検出する。
このとき、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bは、図11(c)に示すように、上記RSSIの値に対応して、第1受信系1Aに含まれる可変アンプ106のゲインを下げ、第1受信系1AにおけるゲインをRSSIに追従させる。
また、ゲイン制御部110Bが第1受信系1Aに対して行うゲイン操作は、最初に到達した第1無線信号の検出時のみであり、後でより強い正規パケットが到達しても、第1受信系1Aのゲインはそのまま維持される。
このため、図11(d)に示すように、後に到達した正規パケットは、第1受信系1Aの可変アンプ106に対して飽和することがある。
一方、図11(b)に示すように、後に連続して受信機1Rに到達した正規パケットによってRSSIが第2の閾値Th1を超えると、検出部110Aが強い方の第2無線信号の到達を検出する。
このとき、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bは、図11(e)に示すように、上記RSSIの値に対応して、第2受信系1Bに含まれる可変アンプ106のゲインを下げ、第2受信系1BにおけるゲインをRSSIに追従させる。
このため、図11()に示すように、後に到達した正規パケットについては、第2受信系1Bの可変アンプ106に対しては飽和しなくなるので、第2受信系1Bの出力波形に基づいて、プリアンブルを利用した正規パケットか否かの判定処理が行われる。
なお、その後は、第2受信系1Bの出力信号(I信号とQ信号)を用いて、受信用プロセッサ110の復調部110Dが、前記したデータ復調モード(図10)によって、正規パケットに対するデータ復調を行うことになる。
このように、第2実施形態の受信機1R及び受信用プロセッサ110においても、検出部110Aが、RSSIの更なる上昇により、既に到達した先の受信信号と連続する、発信源の異なる後の受信信号の到達を検出可能であり、判定部110Cが、後の受信信号の到達が検出された場合に、後の受信信号を判定対象とするようになっている。
このため、後の受信信号が正規パケットである場合にこれを取り逃がすことがなく、ノイズや正規信号よりなる弱い無線信号の到達後に、より強い後の正規信号が連続して到達した場合でも、当該後の正規信号の正規パケットをデータ復調することができる。
また、第2実施形態では、ゲイン制御部110Bが、各受信系1A,1Bに含まれる可変アンプ106に対して独立して増幅率(ゲイン)を設定でき、第1無線信号の到達が検出された場合には第1受信系1Aの増幅率のみを変化させ、第2受信信号の到達が検出された場合には第2受信系1Bの増幅率のみを変化させるので、第1無線信号の次に第2無線信号が連続して到達しても、第2無線信号の飽和を防止することができる。
このため、強い方の次の無線信号が正規パケットである場合に、それがノイズと判定されることがなく、次の無線信号を正規パケットとして確実に受信することができる。
〔第2実施形態の効果(2)〕
図12は、第2実施形態に係る受信機1Rが、フェージングによってレベルが漸増する正規パケットを受信した場合のタイムチャートであり、第2実施形態の受信機1Rの他の効果を示すものである。
図12(a)は、上記の場合における可変アンプの入力波形を、図12(b)はRSSIの時間的変化を、それぞれ示している。
また、図12(c)は第1受信系1Aの可変アンプ106のゲインの時間的変化を、図12(d)は第1受信系1Aの可変アンプ106の出力波形を、それぞれ示している。
更に、図12(e)は第2受信系1Bの可変アンプ106のゲインの時間的変化を、図12(f)は第2受信系1Bの可変アンプ106の出力波形を、それぞれ示している。
図12(a)に示すように、正規パケットのレベルがフェージングにより漸増し、これにより、RSSIは、第1及び第2閾値Th1,Th2を段階的に超えている(図12(b)参照)。
このさい、RSSIの値が第1の閾値Th1を超えると、受信用プロセッサ110のゲイン制御部110Bは、第1受信系1Aに含まれる可変アンプ106のゲインを下げ、第1受信系1AにおけるゲインをRSSIに追従させる(図12(c)参照)。
また、RSSIの値が第2の閾値Th2を超えると、ゲイン制御部110Bは、第2受信系1Bに含まれる可変アンプ106のゲインを下げ、第2受信系1BにおけるゲインをRSSIに追従させる(図12(e)参照)。
図12に示す例では、フェージングによるレベル上昇があっても、第1受信系1Aの可変アンプ106の増幅率の方が適切である場合を想定している。このため、図12(d)に示すように、第1受信系1Aの出力波形により、正規パケットに対する判定処理とデータ復調を行うことができる。
これに対して、図12(f)に示すように、第2受信系1Bでの出力波形では、パワーが不十分になり、正規パケットに対する判定処理とデータ復調を行えない可能性がある。
従って、この場合には、受信用プロセッサ110の判定部110Cは、第1受信系1Aでの出力波形を正規パケットであると判定する。
このため、復調部110Dにより、正規と判定された第1受信系1Aからのパケット(I信号とQ信号)に対してデータ復調が行われ、その正規パケットに含まれるヘッダ及びデータ情報が抽出されることになる。
ところで、第1実施形態の受信機1Rの場合には、受信系が1系統であることから、より強い次の無線信号の到達が検出されると、弱い前の無線信号に対する判定処理やデータ復調を諦めるロジックになっている。
このため、第1実施形態の受信機1Rでは、図12に示すような、最初の第1無線信号とこれに連続する次の第2無線信号が、実はフェージングでレベルが上昇した一連の正規パケットである場合には、当該正規パケットをデータ復調することができない。
これに対して、第2実施形態の受信機1Rでは、2系統の受信系1A,1Bを備えており、それらの受信系1A,1Bで受信した受信信号のうちのいずれが正規パケットであるかの判定を行うので、弱い前の無線信号が正規パケットである場合には、この無線信号も判定対象として選択され得る。
このため、第2実施形態の受信機1Rでは、図12に示すような、フェージングでレベルが上昇した一連の正規パケットである場合であっても、当該正規パケットを有効にデータ復調することができる。
また、第2実施形態の受信機1Rによれば、正規パケットに対する同期信号を捉えて、データ復調すべき信号を決定した後は、ダイバーシティ受信に切り替えて最大比合成法等によるデータ復調を行うので(図10参照)、データ復調を精度良く行えるという利点もある。
もっとも、第1実施形態の受信機1Rの場合には、受信系が1つで足りるので、複数受信系である第2実施形態に比べて、製作コストを低減できるという利点がある。
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、第1実施形態において、検出部110Aが、RSSIの上昇を3段階又はそれ以上で検出することにより、第2番目の無線信号に連続する第3番目以降の無線信号を検出可能としてもよい。この場合、判定部110Cは、最後の無線信号が検出された場合に、当該最後の無線信号に判定対象を切り替えるようにすればよい。
また、第2実施形態において、受信系を3系統以上設けて、検出部110Aにおいて、RSSIの上昇を3段階以上で検出して、3種類以上のレベルの無線信号の到達を検出可能としてもよい。
この場合、判定部110Cは、3つ以上の受信系が出力する各出力信号に対して、いずれが正規パケットであるか否かを判定することになる。
1 路側通信装置
1R 受信機
3 車載通信装置
3S 送信機
101 アンテナ
102 バンドパスフィルタ
103 ローノイズアンプ
104 アッテネータ
105 ローノイズアンプ
106 AGC回路(可変アンプ:増幅回路)
107 直交復調器
108 A/D変換器
109 検波回路
110 受信用プロセッサ
110A 検出部
110B ゲイン制御部
110C 判定部
110D 復調部

Claims (7)

  1. 受信レベルの上昇によって受信信号の到達を検出可能な検出部と、到達が検出された前記受信信号が正規のプロトコルデータユニット(Protocol Data Unit:以下、「PDU」という。)であるか否かを当該PDUのプリアンブルを用いて判定する判定処理を実行する判定部と、正規と判定された前記PDUのデータ復調を行う復調部と、を備えた無線信号の受信機であって、
    前記検出部は、前記判定処理中における前記受信レベルの更なる上昇により、既に到達した先の受信信号と連続する、発信源の異なる後の受信信号の到達を検出可能であり、
    前記判定部は、前記後の受信信号の到達が検出された場合に、当該後の受信信号を判定対象とすることを特徴とする無線信号の受信機。
  2. 入力信号に対する増幅率を可変に設定可能な増幅回路と、前記受信レベルに対応して前記増幅回路の増幅率を制御するゲイン制御部とを更に備え、
    前記ゲイン制御部は、前記後の受信信号の到達が検出された場合に、前記先の受信信号の到達を検出した時よりも前記増幅回路の増幅率を低下させる請求項1に記載の無線信号の受信機。
  3. 前記判定部は、前記後の受信信号の到達が検出された場合に、前記先の受信信号の到達時刻をリセットし、前記後の受信信号の到達時刻を基準として判定を開始する請求項1又は2に記載の無線信号の受信機。
  4. 前記ゲイン制御部は、前記先の及び後の受信信号の到達が検出された時には前記増幅回路の増幅率を高速に変化させるが、それ以外の期間は当該増幅回路の増幅率をほぼ一定に維持する請求項2又は3に記載の無線信号の受信機。
  5. 受信レベルの上昇によって受信信号の到達を検出し、到達が検出された前記受信信号が正規のPDUであるかを当該PDUのプリアンブルを用いて判定する判定処理を実行し、正規と判定された前記PDUのデータ復調を行う無線信号の受信方法であって、
    前記判定処理中における前記受信レベルの更なる上昇により、既に到達した先の受信信号と連続する後の受信信号の到達を検出するステップと、
    前記後の受信信号の到達が検出された場合に、当該後の受信信号を判定対象とするステップと、を含むことを特徴とする無線信号の受信方法。
  6. 受信レベルの上昇によって受信信号の到達を検出可能な検出部と、到達が検出された前記受信信号が正規のPDUであるか否かを当該PDUのプリアンブルを用いて判定する判定処理を実行する判定部と、正規と判定された前記PDUのデータ復調を行う復調部と、を備えた無線信号の受信用プロセッサであって、
    前記検出部は、前記判定処理中における前記受信レベルの更なる上昇により、既に到達した先の受信信号と連続する次の受信信号の到達を検出可能であり、
    前記判定部は、前記後の受信信号の到達が検出された場合に、当該後の受信信号を判定対象とすることを特徴とする無線信号の受信用プロセッサ。
  7. 受信レベルの上昇によって受信信号の到達を検出可能な検出部と、到達が検出された前記受信信号が正規のPDUであるか否かを当該PDUのプリアンブルを用いて判定する判定処理を実行する判定部と、正規と判定された前記PDUのデータ復調を行う復調部と、を備えた無線信号の受信機としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
    前記判定処理中における前記受信レベルの更なる上昇により、既に到達した先の受信信号と連続する、発信源の異なる後の受信信号の到達を検出するステップと、
    前記後の受信信号の到達が検出された場合に、当該後の受信信号を判定対象とするステップと、を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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