JP5320640B2 - ラップ剤砥粒の回収装置及び回収方法 - Google Patents

ラップ剤砥粒の回収装置及び回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、ラップ剤溶媒、研磨屑(ラップ屑)、及び種々の砥粒を含んだラッピング加工後のラップ剤から再利用可能な砥粒を回収する装置及び回収方法に関するものであり、詳しくは、研磨屑や砥粒の材質や寸法によって異なる共振周波数を超音波振動で適宜付与することで再利用可能な砥粒の回収装置及び回収方法に関する。
ラッピング加工とは、ラップと称する工具と工作物との間にラップ剤を介在させ、ラップと工作物との相対運動によって工作物の表面を鏡面加工するものであり、工作物表面の面粗度の向上、平坦度・平滑度の向上を目的とするものである。ラップ剤としては、通常、遊離砥粒を液体中に分散させた懸濁液を用いる。
本願発明の発明者らは、特許文献1及び特許文献2に示すように、在来の工作機械を利用して簡単な構成の工具により高精度かつ高加工能率の自動加工を可能とするラッピング工具1およびラッピング装置2を既に提案している(図3参照)。
この加工方法及び加工装置によると、工作物4は、加工槽6のラップ剤7中に浸漬される(ドブ漬けにされる)。そして、ラッピング装置2の往復駆動部3や各軸の送り機構により、ラッピング工具1の一端に設けられたラップ端子5が、工作物4の加工形状に沿って往復運動及びX,Y,Z軸方向の相対移動を行うことで、ラッピング加工が実現される。
微視的には、ラップ端子5が工作物4表面に押しつけられたり工作物4表面から離れたりする。これによりラップ端子5と工作物4との間にラップ剤7の供給、排除が繰り返されて、自動的に新鮮なラップ剤7に更新されるとともに、ラップ剤7中の砥粒の運動によりラッピング加工が行われる。
特に特許文献2に記載の技術によれば、ラップ端子5として直径6mmのナイロン球体を使用し、ラップ剤7として、水、水飴、及びダイヤモンド砥粒の混合液を使用し、工作物4として超硬合金V10(JIS表記)の平面形状のラッピング加工(二次元の平面ラップ加工)を行ったところ、表面粗さ(最大高さRz)0.07μmの平滑な鏡面が得ることが可能となっている。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のラッピング装置2によるラッピング加工では、工作物4を加工槽6のラップ剤7に浸漬させた状態(ドブづけ状態)で加工することを前提とするために多量のラップ剤7が必要となる。当然、ラップ剤7中に投入される砥粒(ダイヤモンド砥粒やアルミナ砥粒)も多量に消費することとなり、これは加工コストを押し上げる原因となっていた。
加えて、大型の工作物のラッピング加工を行う場合には、大型の加工槽6と大量のラップ剤7(必然的にラップ剤中の砥粒も)がさらに必要になり、一方、高速・高精度のラッピング加工を行う場合、ラップ剤媒体に対して混合させる砥粒の量を増加させたり、種々の寸法(級)の砥粒を併用(ラップ剤7に投入)させたりする必要がある。
従って、ラッピング加工が終了し、ラップ剤溶媒(水や水あめ)と研磨屑とラッピング砥粒とを含んだ使用済みラップ剤7から、ラッピング砥粒を再利用可能な状態で効率的に回収することができれば、コストや環境調和の面から非常に望ましい。
従来技術として、まず遠心分離法が挙げられ、本発明者も遠心分離法を使用済みラップ剤7に適用してみたが、最終的にラップ屑と砥粒とを分離することは困難であった。
一方、研磨剤を回収する装置や方法に関連する別の従来技術として、研磨後に排出される廃液に磁界を印加することでスラリ粒子を選別・回収することを開示した特許文献3が挙げられる。さらに、廃スラリに内在する微粒成分を寸法の大きな成分と小さな成分とに分離するために、廃スラリをポンプで圧送して分離装置本体内を通過させ、分離装置本体内に設けられたフィルタ部で濾過する手法を開示した特許文献4がある。ここで、寸法の大きな微粒成分がフィルタ部に付着しないように、超音波振動子によってフィルタ部を振動させている。
しかしながら、これらの従来技術を組み合わせて適用としたとしても、上記ラッピング装置のラップ剤に用いられた複数寸法(級)の砥粒とラップ屑とを効率的に分離することは到底困難であった。
特許第4081551号公報 特開2008−194796号公報 特開2004−268193号公報 特開平9−239661号公報
そこで、本発明は、以上のようなラッピング加工における問題点や欠点を改善し、使用済みラップ剤からラッピング砥粒を再利用可能な状態で効率的に回収するための装置及び方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の末、(1)使用済み(ラッピング加工後)のラップ剤に混在する研磨屑と砥粒とは材質が異なること、(2)投入された砥粒は基本的に数種類の寸法(級)のものだけが使用されていること、(3)これらの材質や寸法の違いによってそれぞれ共振周波数も異なること、に着目し、個々の物質の分別・回収に必要な共振周波数を特定し、超音波振動装置を用いて特定された周波数の振動を使用済みラップ剤に付与すること、すなわち、個々の物質に対して物理的な活性状態(共振状態)を作り出すこと、により砥粒やラップ屑の分別・回収が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明では次の1〜10の構成をとるものである。
1.ラップ屑と少なくとも一種類の砥粒を含んだラップ剤を回収するためのラップ剤分離装置であって、
基台と、前記基台に一端が枢支された傾斜板と、前記基台の背面に取り付けられた超音波振動子を有した超音波振動装置と、を備え、
前記基台の表面には弾性体シートが貼付され、
前記ラップ剤の固体成分である前記ラップ屑と前記砥粒との混合物を前記弾性体シート上に載置し、前記超音波振動装置を用いて前記傾斜板と前記混合物とを加振させ、
前記加振時の周波数は、前記混合物を構成する一の物質の物性値及び寸法から算出された共振周波数であることを特徴とするラップ剤分離装置。
2.前記傾斜板の板厚、形状、又は材質が、前記傾斜板が前記共振周波数で共振するように調整されていることを特徴とする前記1に記載のラップ剤分離装置。
3.前記砥粒が二種類以上の砥粒を含み、前記共振周波数が複数特定され、かつ、前記超音波振動装置によって夫々の共振周波数で前記傾斜板及び前記混合物が加振されることを特徴とする前記1又は2に記載のラップ剤分離装置。
4.前記共振周波数が有限要素法のモード解析により予測されることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のラップ剤分離装置。
5.ラップ屑と少なくとも一種類の砥粒を含んだラップ剤を回収するためのラップ剤回収装置であって、
前記ラップ剤を液体成分と固体成分とに分離する分離器と、
基台と、前記基台に一端が枢支された傾斜板と、前記基台の背面に取り付けられた超音波振動子を有した超音波振動装置と、を有したラップ剤分離装置と、
を備え、かつ
前記基台の表面には弾性体シートが貼付され、
前記ラップ剤の固体成分である前記ラップ屑と前記砥粒との混合物を前記弾性体シート上に載置し、前記超音波振動装置を用いて前記傾斜板と前記混合物とを加振させ、
前記加振時の周波数は、前記混合物を構成する一の物質の物性値及び寸法から算出された共振周波数であることを特徴とするラップ剤回収装置。
6.前記傾斜板の板厚、形状、又は材質が、前記傾斜板が前記共振周波数で共振するように調整されていることを特徴とする前記5に記載のラップ剤回収装置。
7.前記砥粒が二種類以上の砥粒を含み、前記共振周波数が複数特定され、かつ、前記超音波振動装置によって夫々の共振周波数で前記傾斜板及び前記混合物が加振されることを特徴とする前記5又は6に記載のラップ剤回収装置。
8.前記ラップ剤回収装置は、有限要素法解析ソフトウェアが組み込まれた共振周波数特定装置をさらに備え、前記共振周波数は、前記有限要素法解析ソフトウェアのモード解析により予測されることを特徴とする前記5〜7のいずれか1項に記載のラップ剤回収装置。
9.前記5〜8のいずれか1項に記載のラップ剤回収装置を用いてラップ剤を回収するラップ剤回収方法であって、
前記ラップ剤を液体成分と固体成分とに分離するステップと、
前記固体成分を乾燥させるステップと、
前記固体成分を構成する一の物質の物性値及び寸法から共振周波数を特定するステップと、
前記固体成分であるラップ屑と砥粒との混合物を弾性体シート上に載置するステップと、
超音波振動装置を用いて傾斜板と混合物とを前記共振周波数で加振させるステップと、
を含んだラップ剤回収方法。
10.前記固体成分を構成する物質がn種類存在した場合、前記加振ステップを(n−1)回繰り返すことを特徴とする前記9に記載のラップ剤回収方法。
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
本発明により、ラッピング加工済みのラップ剤残留物(固体成分)をラップ剤分離装置の傾斜板に載置し、所定の共振周波数で超音波加振することで、ラップ剤固体成分を構成する一物質のみが共振活性状態になって傾斜板上の固体成分の塊から振るい落とされるため、ラップ剤残留物から高価なラッピング砥粒を効率的にかつ精度良く回収することができる。従って、ラップ剤固体成分からラップ屑とラッピング砥粒とを分別することが可能となる。
また、本発明により、複数の共振周波数を特定して夫々の共振周波数で傾斜板を共振させることができるので、ラップ剤固体成分に複数の種類(寸法)のラッピング砥粒が含まれていても、極めて容易に分別・回収することができる。例えば、寸法や材質が違うn種類(nは整数)の含有成分(ダイヤモンド砥粒及びラップ屑)がラップ剤中に含まれていても、各含有成分の共振周波数を適宜用いて傾斜板を(n−1)回分超音波加振することで全ての含有成分を分別・回収することが可能になる。
また、実際の加工においてラップ屑や砥粒の材質や砥粒の寸法が変更されても、この変更に対応して本発明の超音波加振時に付与する共振周波数を数値解析シミュレーションにより適宜特定することができるので、分別・回収できるラップ剤の適用範囲が広いといえる。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施態様に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
まず、本発明において分別及び回収の対象となる使用済みラップ剤7中の砥粒8及びラップ屑9について説明する。
本発明で使用可能な砥粒8の材質には、ダイヤモンド、アルミナ、立方晶窒化ホウ素cBN(Cubic Boron Nitride)、炭化ケイ素SiC(Silicon Carbide)、ガーネット、セリウム、ジルコニウム等が挙げられる。
また、砥粒寸法(砥粒級)には、190μm(μm=m×10−6、メッシュサイズ#100)、50〜35μm(メッシュサイズ#400〜#500)、15μm(メッシュサイズ#1200)、6μm(メッシュサイズ#2500)、又は4.5μm(メッシュサイズ#5000)が挙げられる。
なお、ラップ剤7に投入される砥粒8は、上記複数の砥粒級を組み合わせて投入することも可能であり、本願発明の発明者らの研究成果によれば、砥粒級の組み合わせにより、加工精度及び能率が向上することが判明している。
次に、ラッピング加工によりラップ剤7中に残留した工作物4のラップ屑9について説明する。ラップ屑9の材質は、当然工作物4の材質であり、ラッピング加工が適用可能な工作物に依存するが、例えば、超硬合金V10、V20、及びV30(いずれもJIS規格)、高合金工具鋼のSKD11及びSKD61、又はステンレス鋼SUS304等が挙げられる。
ラップ屑9の寸法は、ラッピング加工の際に使用されかつ工作物4に接触する砥粒8の寸法と同様の寸法となる。例えば、#400の砥粒8であれば、この砥粒8で加工されたラップ屑9も#400程度となる。
次に、本発明のラップ剤7について説明する。
ラップ剤7の媒体(液体成分、図示せず)として、本発明者が先に開示した特許文献1又は特許文献2に記載されているように、水と水飴との混合液が一例として挙げられる。ここで、水飴を混合させている理由は、ラップ剤媒体と砥粒8の比重差を小さくさせ、砥粒8をラップ剤7中になるべく長い期間、均一に浮遊させておきたいからである。
ラップ剤媒体のその他の例として、水に水溶性ポリマーを混ぜた液体が挙げられる。水溶性ポリマーを採用した理由は、ポリマーを水溶させることで、網状になった高分子によりラップ剤7の粘弾性力が増加し、微小砥粒の落下を防ぐことが見込めたからである。
本発明の水溶性ポリマーとして、砥粒の均一浮遊化の観点から、Polyethylene oxide (PEO-8)やPolyacrylamide (PAA)が好ましいが、必ずしもこれに限定されず、高分子の網状化によりラップ剤7の粘弾性力を増加させる材料であればよい。例えば、親水性の高い、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム等のアクリル酸金属塩が挙げられる。
なお、PEO-8、PAAは、ともに人体には無害であり環境負荷も無いことから排水処理施設や化粧品などの分野にわたって使用されているポリマーである。従って、これらのポリマーをラップ剤7として使用した後も、本発明の回収方法によりこれらのポリマーと砥粒及びラップ屑とを適切に分離すれば生活用水と同様に排水処理ができるという更なる利点(リサイクル及び環境調和の面での利点)もある。
さらに、水と水溶性ポリマーの混合液にエタノール等の低級アルコールを添加してもよい。添加された低級アルコールは、気化熱冷却効果を発揮し易く、ラッピング加工時のラップ剤7及び工作物4の発熱による加工精度低下を抑制することが可能となる。
以上説明したような、砥粒8とラップ屑9とラップ剤媒体とを含んだ使用済みラップ剤7から、砥粒8とラップ屑9をそれぞれ回収する回収装置や回収方法を以下に説明する。
まず、本発明のラップ剤回収装置について説明する。本発明のラップ剤回収装置は、ラップ剤の液体成分と固体成分とを分離するため分離器(図示せず)と、分離後に取り出された固体成分を乾燥させる乾燥庫(図示せず)と、乾燥された固体成分を傾斜板に載置し別途特定の周波数を付与して、この固体成分から砥粒8とラップ屑9とを分離するラップ剤分離装置10と、を備える。なお、乾燥庫は、ラップ剤7の乾燥時間の短縮に有効であるが、これによらず自然乾燥させてもよい。
ラップ剤分離装置10は、図1に一例を示すように、基台11と、略平板の傾斜板12と、を備える。基台11の一端には蝶番(ヒンジ)14がさらに設けられており、これにより傾斜板12の一端は基台11の一端に角度可変に枢支されている。
また、傾斜板12の表面には、薄厚の弾性体シート13、例えばゴム製シートが貼付されている。この弾性体シート13上に、乾燥された固体成分(すなわちラップ屑9と砥粒8の混合物)が載置される。弾性体シート13は、傾斜板12上に載置された固体成分16を滑り止めておくために使用される。従って、弾性体シート13は、上述の滑り止め効果を発揮する(具体的には、摩擦係数μが約0.3以上の値)ものであればゴム製シートに限定されない。なお、摩擦係数μが上記所定値未満であると、傾斜板12及びこの傾斜板12上のラップ剤7固体成分を後述の超音波加振させたときに、分離すべきでない固体成分を十分把持することが出来なくなり(つまり分離対象の物質に混じって傾斜板12から振るい落とされ)、分離回収能力が低下してしまう。
また、本発明のラップ剤分離装置10は、超音波振動子15aとこの超音波振動子15aに接続されたアンプ15bとを有した超音波振動装置15を備える。超音波振動子15aは傾斜板12の背面に取り付けられ、アンプ15bによって増幅された特定の周波数を傾斜板12に付与して傾斜板12(ひいては傾斜板12に載置されたラップ剤固体成分)を振動させる。ここで、超音波振動装置15から発生する特定の周波数とは、後述するようにラップ剤7の固体成分16(ラップ屑9と砥粒8との混合物)を構成する一の物質の共振周波数(固有振動数)である。
さらに、傾斜板12は、図1(b)に示すように傾斜板12の共振周波数が上記共振周波数に適合して共振することが好ましく、傾斜板12も共振するように傾斜板12の板厚、形状、又は材質が適宜調整されていることが好ましい。上記調整の具体例として、傾斜板12の材質をアクリル製とし、寸法(縦×横×厚さ)を200mm×200mm×1mmに設定した。
さらに、本発明のラップ剤回収装置は、傾斜板12上のラップ屑9や砥粒8に付与すべき周波数を特定する共振周波数特定装置(図示せず)を備えていてもよい。共振周波数特定装置は、例えば、パーソナルコンピュータに組み込まれた有限要素法解析(FEM)ソフトウェアによって実現されてもよい。詳しくは、分離・回収したい傾斜板12上の物質(ラップ屑9又は砥粒8)の材質や形状(具体的には、ヤング率、密度、寸法等)を、FEMソフトウェアへ初期条件として入力してモード解析が実行されれば、この初期条件に対応した共振周波数が得られる。
以下の表1は、FEMソフトウェアによって出力されたラップ屑及び砥粒の共振周波数の一例を示す。表1中の各行に示された複数の共振周波数のうち、最も左側の振動数(例えば、第1行目の2.85×10Hz)は最も振動数が小さい基本振動数(fundamental frequency)であり、その他の値(例えば、第1行目の3.83×10Hzや3.92×10Hz)は高次モードの共振周波数である。
Figure 0005320640
以上のような共振周波数を用いて、図1(b)に示すように本発明のラップ剤分離装置10の傾斜板12を加振させれば、傾斜板12上に載置された混合物16のうちの一物質(例えば、ラップ屑9)を共振させることができる。加えて、傾斜板12を上述のように設計しておけば、傾斜板12も当該加振周波数で共振させることができるため、分離すべき物質及び傾斜板12の双方の共振活性状態が相俟って、分離・回収速度を上げることが可能になる。
次に、図2を参照しながら、本発明のラップ剤回収方法を以下に説明する。
まず、本発明者が既に提案したラッピング装置2によりラッピング加工が終了したラップ剤7をラップ剤媒体である液体成分と、ダイヤモンド砥粒8とラップ屑9からなる固体成分16とに分離する(ステップS1)。このステップS1を実行するために、例えば、ラップ剤7を遠心分離器に投入し、ラップ剤7に遠心力を付与して分離することが作業性や取扱い等の面から好ましいが、必ずしもこれに限定されず、フィルタ等で濾過することも可能である。
ステップS1の実行後、遠心分離器からラップ剤7の固体成分16を取り出し、乾燥庫等で乾燥させる(ステップS2)。乾燥した固体成分(混合物)16は、本発明のラップ剤分離装置10の傾斜板12上に載置される(ステップS3)。
次に、傾斜板12を超音波振動装置15で超音波加振する周波数を特定する(ステップS4)。このステップS4では、まず、第一に分離・回収したい固体成分16の物質に対応した共振周波数を第一に付与すべき周波数(第一周波数)に設定する。そして、二番目に分離・回収したい固体成分16の物質に対応した共振周波数を第二に付与すべき周波数(第二周波数)に設定する。同様な方法で、第三・第四周波数を決定する。例えば、傾斜板12上に載置された混合物16が、一種類のラップ屑9と、三種類の砥粒8と、から構成されていた場合(結局四種類の物質から構成されることとなる)、後述の超音波加振により少なくとも三種類の物質を傾斜板12から振り落とせばよいため、第一〜第三周波数までを特定・利用すればよい。
なお、上記加振周波数特定ステップS4に際しては、分離回収したい各物質の材質・寸法を用いて有限要素法によって各周波数を予測することによって特定してもよい。例えば、上述の共振周波数特定装置(FEM解析ソフトウェア)を用いれば、極めて容易にモード解析を実行して各周波数を特定できる。
次に、超音波振動装置15よりラップ剤分離装置10の傾斜板12を第一周波数で超音波加振する(ステップS5)。これにより、固体成分16から所望の物質(例えばラップ屑9)だけを活性化(共振)させて、傾斜板12から振り落とすこと(分離・回収すること)ができる。
次に、上記ステップ5による分離回収後も傾斜板12上に分離回収すべき物質が残存しているかどうかを確認する(ステップS6)。なお分離回収すべき物質が残っている場合には、ステップS4においてこの分離回収すべき物質に対応した周波数(例えば、第二周波数)を再設定し超音波加振ステップS5が実行される。すなわち、傾斜板12上に分離回収すべき物質が無くなるまで(最後の一種類の物質のみが残るまで)、上記ステップS4及びS5が繰り返されることになる。
上記ステップS4及びS5が繰り返され、分離回収すべき固体成分16が存在しなくなれば、ステップS4〜S6のループは終了し、本発明の回収方法は終了する。
なお、超音波加振の際の分離速度や分級速度を上げるために、傾斜板12の共振周波数を超音波加振周波数に適合するように傾斜板12のジオメトリ(板厚、形状、材質など)を調整しておくことが好ましい。傾斜板12をこのように設計しておけば、傾斜板12も当該加振周波数で共振させることができるため、分離すべき物質及び傾斜板12の双方の共振活性状態が相俟って、分離・回収速度を上げることが可能になる。
なお、傾斜板12のジオメトリを上述の第一周波数に設定した後、別の構成物質を分離するために第二・第三周波数を傾斜板12に付与する際には、傾斜板12の共振周波数と当該第二・第三周波数と相違することになろうが、例えば、傾斜板12がラップ剤分離装置10から着脱可能に取り付けられる構成にして、第二・第三周波数に適合したジオメトリを有した傾斜板12を取り付けるようにしてもよい。その他の態様として、第一周波数に適合したジオメトリを有した傾斜板12にスペーサやその他の追加部材を取り付ける構成にし、これらの部材が傾斜板12に取り付けられて第二・第三周波数に適合するようにしてもよい。
次に、上述した本発明のラップ剤回収装置及びラップ剤回収方法を適用した実施例を示す。ラップ剤媒体には、水と水溶性ポリマーとエタノールとの混合液を用い、ラップ剤7中の砥粒8には、三種類(三つの級)のダイヤモンド砥粒(#400、#1200、及び#2500)を用い、ラップ屑9には、超硬合金V10の研磨屑(#400程度の寸法)を用いた。
まず、上述の使用済みラップ剤7を遠心分離器に投入し、このラップ剤7に遠心力を付与して、ラップ剤媒体(液体成分)と固体成分16とに分離した(ステップS1)。次に、得られた固体成分16を乾燥庫に入れて乾燥させた(ステップS2)。
その後、超音波加振すべき周波数(共振周波数)を有限要素法の固有値モード解析により表1のように予測した。本実施例では、超音波加振すべき第一・第二・第三周波数をそれぞれ、2.85×10Hz、6.2×10Hz、18.9×10Hz(表1の共振周波数の各欄の最も左側の振動数(基本振動数))に特定された。ここで、各周波数に各物質の基本振動数を用いた理由は、周波数が低くなればなる程その振幅が大きくなって分離・回収能力が向上するためである。
次に、ステップS4に移行して、超音波振動装置15を用いて第一周波数(2.85×10Hz)でラップ剤分離装置10の傾斜板12を加振する。これにより、傾斜板12上の混合物16の塊からラップ屑9のみを振り落とし(分離し)、混合物16の塊にはダイヤモンド砥粒8(複数級の砥粒混合物)を残すことが可能になる。
次に、ステップS4において、超音波加振周波数を第二周波数(6.2×10Hz)に設定して傾斜板12を加振する。これにより、傾斜板12上の#400、#1200、及び#2500のダイヤモンド砥粒混合物16から#400のダイヤモンド砥粒8のみを分離(分級)することが可能となる。
さらに、ステップS4において、超音波加振周波数を第三周波数(18.9×10Hz)に設定して傾斜板12を加振する。これにより、傾斜板12上の#1200及び#2500のダイヤモンド砥粒残留物16から#1200のダイヤモンド砥粒8のみを分離(分級)することが可能となる。
以上により、傾斜板12上には#2500のダイヤモンド砥粒8だけ残存することとなり、ステップ4のループが終了し、本発明のラップ剤回収方法が終了することになる。
本発明の実施例により分離されたラップ屑9及びダイヤモンド砥粒8を分析したところ、どの物質ともほぼ100%の純度で回収できたことを確認した。
以上のように、本発明のラップ剤を回収するためのラップ剤分離装置、これを含んだラップ剤回収装置及びラップ剤回収方法によれば、下記の作用効果を発揮させることができる。
本発明により、ラッピング加工済みのラップ剤残留物(固体成分)をラップ剤分離装置の傾斜板に載置し、所定の共振周波数で超音波加振することで、ラップ剤固体成分を構成する一物質のみが共振活性状態になって傾斜板上の固体成分の塊から振るい落とされるため、ラップ剤残留物から高価なラッピング砥粒を効率的にかつ精度良く回収することができる。従って、ラップ剤固体成分からラップ屑とラッピング砥粒とを分別することが可能となる。
また、本発明により、複数の共振周波数を特定して夫々の共振周波数で傾斜板を共振させることができるので、ラップ剤固体成分に複数の種類(寸法)のラッピング砥粒が含まれていても、極めて容易に分別・回収することができる。例えば、寸法や材質が違うn種類(nは整数)の含有成分(ダイヤモンド砥粒及びラップ屑)がラップ剤中に含まれていても、各含有成分の共振周波数を適宜用いて傾斜板を(n−1)回分超音波加振することで全ての含有成分を分別・回収することが可能になる。
また、実際の加工においてラップ屑や砥粒の材質や砥粒の寸法が変更されても、この変更に対応して本発明の超音波加振時に付与する共振周波数を数値解析シミュレーションにより適宜特定することができるので、分別・回収できるラップ剤の適用範囲が広いといえる。
本発明は前記実施例に限定されることなく、特許請求の記載した発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
本発明のラップ剤分離装置の構成を示した図であり、図1(a)は超音波加振前の状態を示し、図1(b)は超音波加振時の状態を示す。 本発明のラップ剤回収方法を示したフローチャートである。 従来のラッピング装置の構成を示した図である。
符号の説明
1 ラッピング工具
2 ラッピング装置
3 往復駆動部
4 工作物
5 ラップ端子
6 加工槽
7 ラップ剤
8 砥粒(ダイヤモンド砥粒)
9 ラップ屑
10 ラップ剤分離装置
11 基台
12 傾斜板
13 弾性体シート
14 蝶番
15a 超音波振動子
15b アンプ
15 超音波振動装置
16 ラップ剤の固体成分(混合物)

Claims (10)

  1. ラップ屑と少なくとも一種類の砥粒を含んだラップ剤を回収するためのラップ剤分離装置であって、
    基台と、前記基台に一端が枢支された傾斜板と、前記基台の背面に取り付けられた超音波振動子を有した超音波振動装置と、を備え、
    前記基台の表面には弾性体シートが貼付され、
    前記ラップ剤の固体成分である前記ラップ屑と前記砥粒との混合物を前記弾性体シート上に載置し、前記超音波振動装置を用いて前記傾斜板と前記混合物とを加振させ、
    前記加振時の周波数は、前記混合物を構成する一の物質の物性値及び寸法から算出された共振周波数であることを特徴とするラップ剤分離装置。
  2. 前記傾斜板の板厚、形状、又は材質が、前記傾斜板が前記共振周波数で共振するように調整されていることを特徴とする請求項1に記載のラップ剤分離装置。
  3. 前記砥粒が二種類以上の砥粒を含み、前記共振周波数が複数特定され、かつ、前記超音波振動装置によって夫々の共振周波数で前記傾斜板及び前記混合物が加振されることを特徴とする請求項1又は2に記載のラップ剤分離装置。
  4. 前記共振周波数が有限要素法のモード解析により予測されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のラップ剤分離装置。
  5. ラップ屑と少なくとも一種類の砥粒を含んだラップ剤を回収するためのラップ剤回収装置であって、
    前記ラップ剤を液体成分と固体成分とに分離する分離器と、
    基台と、前記基台に一端が枢支された傾斜板と、前記基台の背面に取り付けられた超音波振動子を有した超音波振動装置と、を有したラップ剤分離装置と、
    を備え、かつ
    前記基台の表面には弾性体シートが貼付され、
    前記ラップ剤の固体成分である前記ラップ屑と前記砥粒との混合物を前記弾性体シート上に載置し、前記超音波振動装置を用いて前記傾斜板と前記混合物とを加振させ、
    前記加振時の周波数は、前記混合物を構成する一の物質の物性値及び寸法から算出された共振周波数であることを特徴とするラップ剤回収装置。
  6. 前記傾斜板の板厚、形状、又は材質が、前記傾斜板が前記共振周波数で共振するように調整されていることを特徴とする請求項5に記載のラップ剤回収装置。
  7. 前記砥粒が二種類以上の砥粒を含み、前記共振周波数が複数特定され、かつ、前記超音波振動装置によって夫々の共振周波数で前記傾斜板及び前記混合物が加振されることを特徴とする請求項5又は6に記載のラップ剤回収装置。
  8. 前記ラップ剤回収装置は、有限要素法解析ソフトウェアが組み込まれた共振周波数特定装置をさらに備え、前記共振周波数は、前記有限要素法解析ソフトウェアのモード解析により予測されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のラップ剤回収装置。
  9. 請求項5〜8のいずれか1項に記載のラップ剤回収装置を用いてラップ剤を回収するラップ剤回収方法であって、
    前記ラップ剤を液体成分と固体成分とに分離するステップと、
    前記固体成分を乾燥させるステップと、
    前記固体成分を構成する一の物質の物性値及び寸法から共振周波数を特定するステップと、
    前記固体成分であるラップ屑と砥粒との混合物を弾性体シート上に載置するステップと、
    超音波振動装置を用いて傾斜板と混合物とを前記共振周波数で加振させるステップと、
    を含んだラップ剤回収方法。
  10. 前記固体成分を構成する物質がn種類存在した場合、前記加振ステップを(n−1)回繰り返すことを特徴とする請求項9に記載のラップ剤回収方法。
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