本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態に従う無線通信システム1の概略構成図である。本実施の形態に従う無線通信システム1は、典型的には、TDMA(Time Division Multiple Access)方式やCDMA(Code Division Multiple Access)方式などの携帯電話システム、PHS(Personal Handy-phone System)システム、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式などの高速データ通信システムなどに向けられる。すなわち、無線通信システム1は、端末装置による通話および/または通信を提供する。
図1を参照して、無線通信システム1は、複数のドメイン100A,100Bを含む(以下、「ドメイン100」とも総称する。)。ドメイン100は、共通の同期信号に従って、送受信タイミングを制御する無線基地局の集合である。より具体的には、ドメイン100の各々は、複数の無線基地局2と、複数の無線基地局2の制御装置である同期信号生成部4とを含む。
なお、図1に示す無線基地局の各々については、属するドメインと当該ドメイン内での識別情報とを組合せた、“2A_1”,“2A_2”,・・・といった参照符号を付している。
図1には図示していないが、それぞれの無線基地局2は交換機に接続されており、受信した端末装置からの音声/データを交換機へ転送し、あるいは、交換機から受信した音声/データを指定された端末装置へ転送する。
このとき、無線基地局2は、複数の同期信号生成部4のうち1つと接続され、当該接続先の同期信号生成部4に含まれる同期信号生成部4からの同期信号に従って、端末装置との間の無線信号の送信および受信タイミングを制御する。これにより、少なくとも、同一のドメイン100に属する無線基地局2が提供するセル内では、無線信号の送信および受信タイミングのずれによる干渉(混信)を低減できる。なお、「セル」とは、実質的には、対応する無線基地局2からの送信電力の到達可能範囲に相当する。
同期信号生成部4は、時刻情報を含む衛星からの信号に基づいて同期信号を生成する。典型的には、同期信号生成部4は、時刻情報を含む衛星からの信号としてGPS信号を利用する。より具体的には、同期信号生成部4は、GPSモジュール(図10に示すGPSモジュール43)を含み、アンテナ4aを介して受信したGPS衛星12からのGPS信号を受信する。そして、同期信号生成部4は、受信したGPS信号の内容(時刻情報)に基づいて、タイミング信号である同期信号を生成する。各ドメイン100において、それぞれの無線基地局2は、信号ライン8を介して、同期信号生成部4の同期信号生成部4と通信可能に接続されている。同期信号生成部4は、この信号ライン8を介して、それぞれの無線基地局2へ同期信号を提供する。信号ライン8は、それぞれの無線基地局2における同期信号の伝搬に有意な遅延時間を生じなければ、どのような形式のものを採用してもよい。たとえば、ドメイン100がビル内などの比較的狭い通信エリア(いわゆる、マイクロセルやピコセル)を提供するものであれば、メタルケーブルを採用してもよい。あるいは、ドメイン100が比較的広い通信エリアを提供するものであれば、光ケーブルなどを採用してもよい。なお、同期信号の様式や同期の手順としては、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)1588に規定された同期のための標準プロトコルを採用してもよい。
さらに、同期信号生成部4は、対応するドメイン内の無線基地局2に対して、干渉を抑制するための送信電力を統括して制御する。すなわち、同期信号生成部4は、生成される同期信号の精度が所定レベルを下回っているか否かを監視する。そして、同期信号生成部4は、同期信号の精度が所定レベルを下回っていると判断されると、無線基地局2の各々から、当該無線基地局2と端末装置との間の通信状態を示す情報を取得し、取得した各無線基地局2についての通信状態を示す情報に基づいて干渉の度合いを評価することで、各無線基地局2の送信電力を調整するための指令を生成する。
より具体的には、同期信号生成部4は、信号ライン8を介して、対応するドメインに属する複数の無線基地局2の各々から、各無線基地局2がそのセル内に存在する端末装置での通信状態を示す情報として、そのセル内の端末装置における搬送波レベル対干渉・雑音比(Carrier to Interference and Noise Ratio;以下、「CINR値」とも称す。)、および、受信信号強度(Received Signal Strength Indicator;以下、「RSSI値」とも称す。)を取得する。
CINR値は、ある端末装置において受信される電波のうち、本来の受信すべき音声/データを搬送するための搬送波(キャリア波)の強度(レベル)の、それ以外の雑音および/または干渉となる成分の強度(レベル)に対する比を表す。すなわち、CINR値が大きいほど、端末装置で受信される電波のうち搬送波の占める割合が大きいことを示す。したがって、CINR値が大きいほど他の無線基地局および/または他の端末装置からの干渉量が小さく、CINR値が小さいほど他の無線基地局および/または他の端末装置からの干渉量が大きいことを意味する。
また、RSSI値は、ある端末装置において受信される電波に応じて決定される、当該端末装置が発信する無線信号の強度を示す。すなわち、一般的な多元接続無線通信システムでは、端末装置と対応する無線基地局との間の距離に応じて、当該端末装置における送信電力が調整される。言い換えれば、対応する無線基地局2から遠い(セル範囲のより外側に位置する)端末装置は、自身の送信する無線信号を無線基地局2へ到達させる必要があるので、より大きな送信電力で無線信号を送出する。したがって、このRSSI値が大きいほど、対応する無線基地局2からより遠く離れている(よりセル範囲の外側に位置している)と、判断することができる。
上述のように、同期信号生成部4は、対応する同期信号生成部4において生成される同期信号の精度が所定レベルを下回ると、これらの情報に基づいて、自ドメインに属する無線基地局2のセル範囲(送信電力)を調整する。これにより、他ドメインに属する無線基地局との間での干渉を抑制する。なお、同期信号の生成精度とは、典型的には、本来の同期タイミングからのずれ量、すなわちタイミング差の度合いを意味する。
<干渉およびその抑制方法>
次に、図2〜図7を参照して、同期信号生成部4(図1)がGPS信号を正常に受信できない場合に生じる干渉およびその抑制方法について説明する。
図2は、送受信タイミングのずれによる干渉の発生を説明するための図である。
まず、図2(a)を参照して、2つのドメインの境界付近にあるセルについて考える。すなわち、ある同期信号生成部4からの同期信号に従って動作する無線基地局2(「ドメイン100A」と表す)が提供するセル範囲と、別の同期信号生成部4からの同期信号に従って動作する無線基地局2(「ドメイン100B」と表す)が提供するセル範囲とが隣接しているとする。
ドメイン100Aに属する同期信号生成部4とドメイン100Bに属する同期信号生成部4とが同一のGPS信号を受信している場合には、ドメイン100Aおよび100Bの間で実質的に同一の同期信号が生成されるので、ドメイン100Aおよび100Bに属するすべての無線基地局2の間で送受信タイミングが同期化される。そのため、たとえば、ドメイン100Aのセル内に位置する端末装置30_1と、ドメイン100Bのセル内に位置する端末装置30_2とは、同じタイミング(図2(a)に示す時刻T1)で無線信号を送信または受信することになる。そのため、端末装置30_1と端末装置30_2との間の干渉(混信)を低減できる。
これに対して、たとえば、ドメイン100Aに属する同期信号生成部4がGPS信号を受信できなくなると、ドメイン100Aで利用される同期信号とドメイン100Bで利用される同期信号との間にずれが生じ得る。そのため、ドメイン100Aのセル内に位置する端末装置30_1と、ドメイン100Bのセル内に位置する端末装置30_2とが異なるタイミングで無線信号を送信または受信することになる。この結果、端末装置30_1と端末装置30_2との間で干渉(混信)が生じ得る。より具体的には、たとえば、端末装置30_1の受信期間に端末装置30_2が送信した無線信号を受信してしまい、この端末装置30_2からの無線信号が妨害電波となる。
そこで、本実施の形態に従う無線通信システム1においては、このように送受信タイミングの同期がとれない場合には、同期信号生成部4が、それぞれの無線基地局2に対して干渉の発生を抑制するようにセル範囲を調整する。
図3は、本発明の実施の形態に従う無線通信システム1のセル配置の一例を示す図である。図4は、図3に示す無線通信システム1において同期信号の精度が所定レベルを下回った直後のセル配置の一例を示す図である。図5は、図3に示す無線通信システム1において同期信号の精度が所定レベルを下回ってから所定期間経過後のセル配置の一例を示す図である。
たとえば、図3に示す無線通信システム1を一例として説明する。図3に示す無線通信システム1では、ドメイン100Aに12個の無線基地局2A_1〜2A_12が属しており、ドメイン100Bに1個の無線基地局2Bが属しているとする。ここで、ドメイン100Aの同期信号生成部4がGPS信号を正常に受信できなくなったとする。
このとき、共通のドメイン100Aに属する無線基地局のみに隣接する無線基地局については、ドメイン100Bの送受信タイミングの影響を受けない。たとえば、無線基地局2A_2についてみれば、4つの無線基地局2A_1,2A_3,2A_4,2A_5と隣接しており、これらの隣接する無線基地局はいずれもドメイン100Aに属する。そのため、たとえ、ドメイン100Aで利用される同期信号がドメイン100Bで利用される同期信号に対してずれたとしても、これらの無線基地局2A_1〜2A_5の間で干渉を生じることはない。
これに対して、無線基地局2A_1についてみれば、ドメイン100Aに属する2つの無線基地局2A_2および2A_4に加えて、ドメイン100Bに属する無線基地局2Bと隣接している。そのため、ドメイン100Aで利用される同期信号がドメイン100Bで利用される同期信号に対してずれた場合には、無線基地局2A_1と無線基地局2Bとの間で干渉を生じ得る。
本実施の形態に従う無線通信システム1においては、このような状況になると、同期信号生成部4がそのドメインに属するすべての無線基地局2に対して、送信電力を低減もしくはカットするための指令を一斉に与えることで、対象の無線基地局2のセル範囲をより狭くする。続いて、同期信号生成部4は、各無線基地局2における端末装置との間の通信状態を示す情報に基づいて、干渉を生じない無線基地局2については、そのセル範囲を元の大きさに戻すように制御する。
すなわち、同期信号生成部4は、同期信号の精度が所定レベルを下回ると、複数の無線基地局2に対して送信電力の低減を一斉に指示し、発生している干渉の度合いが許容できる無線基地局2について、送信電力の増加を個別に指示する。
より具体的には、図3に示すような無線通信システム1のセル配置において、ドメイン100Aの同期信号生成部4における同期信号の精度が所定レベルを下回ると、図4に示すように、ドメイン100Aに属するすべての無線基地局2の送信電力(セル範囲)を小さくする。
なお、各無線基地局2の送信電力の到達可能範囲が他のドメインに属する無線基地局2の送信電力の到達可能範囲とは重複しないように、送信電力の低減量を決定することが好ましい。典型的には、各無線基地局2のセル範囲の半径を1/2倍に低減するように、送信電力を元の送信電力の1/4倍に低減することが好ましい。セル範囲の半径を1/2倍にすることで、対象の無線基地局2のセル範囲を、他の無線基地局2のセル範囲と重複しない程度まで確実に小さくできる。
あるいは、当該隣接する無線基地局2との間で全く干渉が生じないように、送信電力をゼロ(出力停止)にしてもよい。またあるいは、無線基地局2の配置位置に基づいて、予め低減後の送信電力を決定しておいてもよい。
各無線基地局2の送信電力の低減後、同期信号生成部4は、対応するドメインに属する各無線基地局2から通信状態を示す情報(CINR値およびRSSI値)を取得する。そして、同期信号生成部4は、これらの情報に基づいて、各無線基地局2についてそのセル範囲を拡大する(元に戻す)ことができるか否かを判断する。すなわち、同期信号生成部4は、取得した各無線基地局2についての通信状態を示す情報に基づいて干渉の度合いを評価する。そして、同期信号生成部4は、セル範囲を拡大することができると判断された無線基地局2に対して、その送信電力を元に戻すための指令を与える。
この指令によって、たとえば、図4に示すようなドメイン100Aのセル範囲が、図5に示すようなセル範囲に変更される。すなわち、同一のドメイン100Aに属する無線基地局のみに隣接する無線基地局2A_2,2A_3,2A_5,2A_6,2A_8〜2A_12については、そのセル範囲が元の大きさに回復している。また、無線基地局2A_4については、隣接するドメイン100Bに属する無線基地局2Bのセル範囲と重複しない程度まで、そのセル範囲が回復している。これに対して、無線基地局2A_1,2A_7については、そのセル範囲は縮小されたまま維持されている。
さらに、後述するように、セル範囲を縮小したにもかかわらず、未だ干渉が生じていると判断された場合には、セル範囲をより小さくするようにしてもよい。
このように各無線基地局2のセル範囲を調整することで、異なるドメイン間に位置する端末装置への干渉を低減させることができる。このような処理によって、GPS信号を正常に受信できない場合であっても、すなわち、同期信号生成部4によって生成される同期信号の精度が保証されない場合であっても、通話や通信のサービスが停止されるエリアを可能な限り小さくできる。
以下、各無線基地局2における通信状態を示す情報(CINR値およびRSSI値)に基づく、干渉の度合いを評価する処理について説明する。
図6および図7は、本発明の実施の形態に従う無線通信システム1における送信電力の調整処理を説明するための図である。
一例として、異なるドメインに属する無線基地局2のセル範囲の境界付近に存在する端末装置について考える。たとえば、図6(a)に示すように、ドメイン100Aに属する無線基地局2のセル範囲302に端末装置30_1が存在し、ドメイン100Bに属する無線基地局2のセル範囲304に端末装置30_2が存在しているとする。なお、ドメイン100Aおよびドメイン100Bで利用される同期信号は、タイミングのずれが生じているものとする。
端末装置30_1は、セル範囲304に位置する端末装置30_2が干渉要因(ノイズ源)となる。すなわち、同期信号のタイミングずれによって、端末装置30_1の受信期間と端末装置30_2の送信期間とが重なるため、端末装置30_2が発する無線信号は、端末装置30_1の干渉信号(ノイズ信号)として受信される。そのため、端末装置30_1のCINR値はより低い値を示す。
また、端末装置30_1は、セル範囲302のセルエッジに近い位置に存在しているので、対応する無線基地局2から受信する無線信号は微弱となる。そのため、端末装置30_1のRSSI値は、より高い値を示す。
そこで、同期信号生成部4は、各無線基地局2のセル範囲内に属する各端末装置から取得されるCINR値およびRSSI値について、CINR値が所定のしきい値THCINRより小さく、かつ、RSSI値が所定のしきい値THRSSIより大きいものがあれば、当該無線基地局2のセル範囲内に存在する端末装置において許容できない干渉が生じていると判断する。
そのため、図6(b)に示すように、同期信号生成部4は、そのセル内で干渉を生じている無線基地局2については、そのセル範囲302の大きさをドメイン100Bに属するセル範囲との間で干渉が生じない程度に維持する。
上述したように、本実施の形態に従う無線通信システム1においては、いずれかの同期信号生成部4における同期信号の精度が所定レベルを下回ると、対応するドメインに属する無線基地局2のセル範囲を一旦縮小する。その上で、他のドメインに属する無線基地局との間で干渉を生じない無線基地局2に限って、そのセル範囲を拡大する(元に戻す)。
すなわち、図7に示すように、生成される同期信号の精度が所定レベルを下回ると、元のセル範囲302_1がセル範囲302_3まで縮小される。その後、そのセル範囲内に存在する端末装置の状況に応じて、セル範囲302_3がセル範囲302_1またはセル範囲302_2まで拡大される。
たとえば、ドメイン100Aに属する無線基地局2のセル範囲302_1内の端末装置30_1と、ドメイン100Bに属する無線基地局2のセル範囲304内の端末装置30_2との間で、許容できない干渉が生じる場合には、ドメイン100Aに属する無線基地局2の送信電力をセル範囲302_1に相当する大きさまで増加させることはできない。すなわち、端末装置30_1のCINR値がしきい値THCINRより小さく、かつ、端末装置30_1のRSSI値が所定のしきい値THRSSIより大きい場合には、セル範囲の拡大は中止される。
これに対して、ドメイン100Aに属する無線基地局2のセル範囲302_2内の端末装置30_3と、ドメイン100Bに属する無線基地局2のセル範囲304内の端末装置30_2との間で生じる干渉が許容できる程度であれば、ドメイン100Aに属する無線基地局2の送信電力をセル範囲302_2に相当する大きさまで増加させる。すなわち、端末装置30_1のCINR値がしきい値THCINRより大きく、かつ、端末装置30_1のRSSI値が所定のしきい値THRSSIより小さい場合には、セル範囲がなるべく元の大きさとなるように拡大される。
<無線基地局の構成>
次に、図8および図9を参照して、本実施の形態に従う無線基地局2の構成について説明する。
図8は、本発明の実施の形態に従う無線基地局2のハードウェア構成の一例を示す図である。図9は、図8に示す制御部20の処理構造の一例を示す図である。
図8を参照して、本実施の形態に従う無線基地局2は、制御部20と、符号/復号回路24と、アップコンバータ25と、送信アンテナ26と、ダウンコンバータ27と、受信アンテナ28と、通信インターフェイス(以下、「通信信号I/F」と称する。)29と、交換機インターフェイス(以下、「交換機I/F」と称する。)31とを含む。
無線基地局2は、同期信号生成部4(図1)から受信した同期信号に従って、端末装置との間の送信および受信タイミングを制御する。また、無線基地局2は、図示しない交換機との間で、音声/データを遣り取りしたり、セル内の端末装置についての位置情報の登録処理などを行なったりする。
制御部20は、上述したような無線基地局2における主な処理を実行する処理主体であり、CPU(Central Processing Unit)21と、RAM(Random Access Memory)22と、PROM(Programmable Read Only Memory)23とを含む。演算装置であるCPU21は、PROM23などに予め格納されたプログラムコードをRAM22に展開した上で、当該プログラムコードに従って各種の処理を実行する。RAM22は、CPU21で実行されるプログラムコードに加えて、プログラムコードの実行に必要な各種ワークデータを記憶する。PROM23には、予めCPU21で実行されるプログラムコードや各種定数が記憶されている。
制御部20は、符号/復号回路24に接続されており、符号/復号回路24に対して送受信タイミングや送信電力を指示する。
符号/復号回路24は、いわゆるOSI(Open Systems Interconnection)モデルにおける物理層の機能を担当する。より具体的には、符号/復号回路24は、制御部20から送信すべきデータ列を受信すると、所定の符号化処理および変調処理を実行し、その生成信号をアップコンバータ25へ出力する。アップコンバータ25は、符号/復号回路24から受信した信号を端末装置へ送信する無線信号に周波数変換(アップコンバート)し、接続されている送信アンテナ26へ与える。
一方、端末装置から受信した無線信号は、受信アンテナ28を介してダウンコンバータ27へ入力される。ダウンコンバータ27は、受信した無線信号を周波数変換(ダウンコンバート)し、その生成信号を符号/復号回路24へ与える。符号/復号回路24は、ダウンコンバータ27からの信号に対して復号化処理を実行し、その復号データを制御部20へ出力する。
符号/復号回路24は、制御部20から指示された送受信タイミングに従って、無線信号の送信(アップコンバータ25への信号出力)および無線信号の受信(ダウンコンバータ27からの信号取込)を調整する。さらに、符号/復号回路24は、制御部20から指示された送信電力に従って、送信アンテナ26から伝搬する無線信号の電力(アップコンバータ25へ与える信号の強度)を調整する。
また、符号/復号回路24は、受信した無線信号の強度および復調に用いた搬送波の強度などに基づいて、CINR値およびRSSI値を含む、端末装置との間の通信状態を示す情報を算出する。
通信信号I/F29は、制御部20と接続され、同期信号生成部4から送信される同期信号を受信し、その受信した内容を制御部20へ与える。また、通信信号I/F29は、同期信号生成部4から受信する、CINR値およびRSSI値などの情報を同期信号生成部4へ送信する。
交換機I/F31は、制御部20と接続され、図示しない交換機との音声/データなどの遣り取りを仲介する。
なお、無線基地局2の実装形態としては、図8に示すハードウェアに限定されることはない。むしろ、無線基地局2の規模(セル範囲や同時接続最大数など)に応じて、適切なハードウェア構成が選択される。
図9を参照して、制御部20は、その処理構造として、同期信号モジュール202と、データ通信モジュール204と、制御モジュール206と、ネットワークモジュール208と、データリンクモジュール210とを含む。
同期信号モジュール202は、通信信号I/F29を介して受信される同期信号生成部4からの同期信号に基づいて、制御モジュール206に内部指令を与える。
データ通信モジュール204は、制御モジュール206からの内部指令に応答して、通信信号I/F29を介して、CINR値およびRSSI値などの情報を同期信号生成部4へ送信する。
制御モジュール206は、同期信号モジュール202からの内部指令に基づいて、送受信タイミングを符号/復号回路24(図8)へ与える。すなわち、同期信号モジュール202および制御モジュール206は、端末装置との間の送受信タイミングを同期信号に従って調整する。
また、制御モジュール206は、後述する同期信号生成部4からの指令に従って、送信電力を調整する。すなわち、接続先の同期信号生成部4において生成される同期信号の精度が所定レベルを下回っている場合には、同期信号生成部4から指令が送信され、制御モジュール206は、自局のセル範囲を狭くするように、送信電力の低減もしくはカット(送信強度の変更)を通知する。
また、制御モジュール206は、符号/復号回路24(図8)で算出されるCINR値およびRSSI値を含む、端末装置との間の通信状態を示す情報をデータ通信モジュール204へ出力する。
ネットワークモジュール208は、いわゆるOSIモデルにおけるネットワーク層の機能を担当する。すなわち、ネットワークモジュール208は、交換機と端末装置との間で遣り取りされる音声/データのルーティングなどを行なう。
データリンクモジュール210は、いわゆるOSIモデルにおけるデータリンク層の機能を担当する。すなわち、データリンクモジュール210は、無線基地局2(図1)と端末装置との間の信号の受け渡しを制御する。
<同期信号生成部の構成>
次に、図10および図11を参照して、本実施の形態に従うサーバ装置6の構成について説明する。
図10は、本発明の実施の形態に従う同期信号生成部4のハードウェア構成の一例を示す図である。図11は、図10に示すCPU40によって提供される処理構造の一例を示す図である。
図11を参照して、本実施の形態に従う同期信号生成部4は、CPU40と、RAM41と、PROM(Programmable Read Only Memory)42と、GPSモジュール43と、通信インターフェイス(以下、「通信I/F」と称す。)44とを含む。これらの各部は、内部バス45を介して、互いにデータ通信可能に構成されている。
演算装置であるCPU40は、PROM42などに予め格納されたプログラムコードをRAM41に展開した上で、当該プログラムコードに従って各種の処理を実行する。RAM41は、CPU40で実行されるプログラムコードに加えて、プログラムコードの実行に必要な各種ワークデータを記憶する。
通信I/F44は、それぞれの無線基地局2からのアクセスを仲介する。
GPSモジュール43は、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいて同期信号を生成する。なお、本実施の形態に従うGPSモジュール43は、GPS信号の受信が途切れた場合であっても、所定期間の間は、GPS信号に基づく同期信号と同程度の精度をもつ同期信号の生成が可能であるとする。このような機能は、ホールドオーバ機能と称される。たとえば、同期信号生成部4は、24時間程度の間であれば、GPS信号を受信できなくとも、同期信号を継続して生成できる。
このようなホールドオーバ機能を有するGPSモジュールは、比較的高価であるが、本実施の形態に従う無線通信システム1のように、複数の無線基地局2で1つの同期信号生成部4を共有(シェア)する形態であれば、システム全体のコストを抑制しつつ、このようなホールドオーバ機能を有する精度および信頼性の高いGPSモジュールを採用することができる。なお、本実施の形態に従うGPSモジュール43は、同期信号の生成精度を示す情報(GPS正常受信中、ホールドオーバ内、ホールドオーバ外)を同期信号に含めて出力する。
しかしながら、このホールドオーバ機能を有していたとしても、所定期間を超えてGPS信号を受信できなければ、同期信号生成部4は、他のドメインの同期信号生成部4と同じタイミングを有する同期信号を生成することができなくなる。
なお、GPSモジュール43としては、このようなホールドオーバ機能を有さないものを採用してもよい。
図11を参照して、CPU40は、制御構造として、同期信号出力モジュール402と、端末情報収集モジュール404と、精度評価モジュール406と、指令生成モジュール408とを提供する。
同期信号出力モジュール402は、GPSモジュール43(図10)から出力される同期信号を通信I/F44(図10)を介して、接続されているそれぞれの無線基地局2へ送信する。同期信号出力モジュール402は、後述する指令生成モジュール408から受信する、この同期信号に各無線基地局2の送信電力を調整するための指令を付加する。
なお、信号ライン8に流れる情報がブロードキャストメッセージであれば、すなわち、特定の無線基地局2だけにデータを送信する通信方式ではない場合には、同期信号出力モジュール402は、後述する指令生成モジュール408からの指令に送信すべき無線基地局の識別情報などを付加して送信する。そして、それぞれの無線基地局2は、自局の識別番号が付加された指令のみを選択的に受信するようにしてもよい。
また、同期信号出力モジュール402は、GPSモジュール43から受信した同期信号を精度評価モジュール406へ出力する。
端末情報収集モジュール404は、指令生成モジュール408からの内部指令に応答して、接続されている各無線基地局2から、当該無線基地局2との間で無線通信を行なっている端末装置についての通信状態を示す情報(CINR値およびRSSI値)を取得する。これらの情報は、各無線基地局2から信号ライン8を介して送信される。なお、これらの通信状態を示す情報を伝送するための専用のラインを別に設けてもよい。すなわち、端末情報収集モジュール404は、同期信号の精度が所定レベルを下回っている場合に、複数の無線基地局2の各々から、当該無線基地局2と端末装置との間の通信状態を示す情報を取得する手段に相当する。
精度評価モジュール406は、接続先の無線基地局2へ与えられる同期信号の精度が所定レベルを維持しているか否かを判断する。典型的には、精度評価モジュール406は、GPSモジュール43におけるGPS信号の受信状態(GPS正常受信中、ホールドオーバ内、ホールドオーバ外)に基づいて、同期信号の精度を判断する。精度評価モジュール406は、同期信号の精度が所定レベルを下回っていると判断すると、その評価結果を指令生成モジュール408へ与える。すなわち、精度評価モジュール406は、GPSモジュール43において生成される同期信号の精度が所定レベルを下回っているか否かを判断する手段に相当する。
また、精度評価モジュール406は、GPSモジュール43において生成される同期信号の精度が、所定レベルを下回った後、所定レベルに回復したか否かも判断する。精度評価モジュール406は、同期信号の精度が所定レベルに回復したと判断すると、その評価結果についても指令生成モジュール408へ与える。すなわち、精度評価モジュール406は、GPSモジュール43がホールドオーバ外の状態において、GPS信号の受信が再開されたか否かを判断する。
なお、GPS信号を正常に受信できている場合であっても、何らかの原因で同期信号の生成精度が低下するおそれもある。そのため、GPSモジュール43において生成される同期信号におけるジッタ量のばらつき(分散)などに基づいて、同期信号の生成精度を評価してもよい。
指令生成モジュール408は、接続されている各無線基地局2に対して、送信電力を調整するための指令を生成する。より具体的には、指令生成モジュール408は、GPSモジュール43において生成される同期信号の精度が所定レベルを下回ると、各無線基地局2における送信電力を低減するための指令を生成して一斉に送信する。続いて、指令生成モジュール408は、端末情報収集モジュール404からの端末装置についての通信状態を示す情報(CINR値およびRSSI値)に基づいて、各無線基地局2に対して、干渉を発生しない限度で可能な限り大きなセル範囲を提供できるように、送信電力についての指令を生成する。すなわち、同期信号出力モジュール402は、取得した各無線基地局2についての通信状態を示す情報に基づいて干渉の度合いを評価することで、各無線基地局2の送信電力を調整するための指令を生成する手段に相当する。
また、指令生成モジュール408は、GPSモジュール43において生成される同期信号の精度が所定レベルを下回った後、精度が元のレベルに戻ると、各無線基地局2における送信電力を元のレベルに回復させるための指令を生成して一斉に送信する。すなわち、指令生成モジュール408は、同期信号の精度が所定レベルに回復した場合に、当該同期信号の精度が所定レベルに回復した同期信号生成部4に接続されている無線基地局のうち、送信電力の低減を指示していた無線基地局2についての送信電力を回復するための指令を生成する手段に相当する。
<処理手順>
次に、図12および図13を参照して、本実施の形態に従う処理手順について説明する。
図12は、本発明の実施の形態に従う無線通信システム1における各部の処理を示すシーケンス図である。図13は、本発明の実施の形態に従う同期信号生成部4における動作を示すフローチャートである。
(1.全体シーケンス)
図12を参照して、何らかの原因によって、同期信号生成部4のGPSモジュール43における同期信号の生成精度が低下したとする(シーケンスSQ2)。そして、同期信号生成部4のCPU40は、この同期信号の生成精度の低下を検出する(シーケンスSQ4)。すると、CPU40は、接続されている無線基地局に対して、隣接する無線基地局との干渉の発生を抑制するために、送信電力の低減を指示する指令を一斉に送信する(シーケンスSQ6)。続いて、CPU40は、各無線基地局についての送信電力を調整するための処理を繰り返し実行する。
より具体的には、CPU40は、接続されている無線基地局のうち1つの無線基地局に対して、そのセル範囲に存在する端末装置との間の通信状態を示す情報(CINR値およびRSSI値を含む)を問い合せる(シーケンスSQ8)。問い合せ先の無線基地局から応答があると(シーケンスSQ10)、CPU40は、当該無線基地局のセル範囲を拡大できるか否かを判断する(シーケンスSQ12)。すなわち、CPU40は、取得した各無線基地局2についての通信状態を示す情報に基づいて干渉の度合いを評価する。より具体的には、CPU40は、受信したCINR値が所定のしきい値THCINRより大きく、かつ、RSSI値が所定のしきい値THRSSIより小さければ、対象の無線基地局のセル範囲を拡大できると判断する。逆に、CPU40は、受信したCINR値が所定のしきい値THCINRより小さく、かつ、RSSI値が所定のしきい値THRSSIより大きければ、対象の無線基地局のセル範囲をさらに縮小しなければならないと判断する。
CPU40は、これらの判断結果に基づいて、対象の無線基地局に対する送信電力の大きさを指示するための指令を送信する(シーケンスSQ14)。
なお、いずれの条件にも合致しない場合には、CPU40は、さらなる指令を送信しない。これによって、対象の無線基地局についてのセル範囲の大きさが維持される。
このシーケンスSQ8〜SQ14の処理が各無線基地局に対して繰返し実行される(図12の*1の処理)。
その後、GPSモジュール43における同期信号の生成精度が回復したとする(シーケンスSQ20)。CPU40は、この同期信号の生成精度の回復を検出する(シーケンスSQ22)と、送信電力の回復を指示する指令を一斉に送信する(シーケンスSQ24)。これにより、無線通信システム1は、通常の通信エリアを提供できる。
(2.動作フロー)
次に、同期信号生成部4における動作フローについて説明する。
図13を参照して、同期信号生成部4のCPU40(図10)は、GPSモジュール43(図10)が同期信号を生成したか否かを判断する(ステップS100)。同期信号が生成されていなければ(ステップS100においてNO)、ステップS100の処理が繰返される。
一方、同期信号が生成されていれば(ステップS100においてYES)、CPU40は、生成された同期信号に含まれる同期信号の生成精度を示す情報を取得する(ステップS102)。そして、CPU40は、GPSモジュール43がGPS正常受信中であるかを判断する(ステップS104)。すなわち、CPU40は、GPSモジュール43において生成される同期信号の精度が所定レベルを下回っているか否かを判断する。
GPSモジュール43がGPS正常受信中であれば(ステップS104においてYES)、CPU40は、前回の演算周期において、GPSモジュール43がホールドオーバ外であったか否かを判断する(ステップS106)。すなわち、CPU40は、GPSモジュール43において生成される同期信号の精度が、所定レベルを下回った後、所定レベルに回復したか否かを判断する。言い換えれば、CPU40は、GPSモジュール43がホールドオーバ外の状態において、GPS信号の受信が再開されたか否かを判断する。
前回の演算周期において、GPSモジュール43がホールドオーバ外であった場合(ステップS106においてYES)には、処理はステップS130へ進む。一方、前回の演算周期において、GPSモジュール43がホールドオーバ外でなかった場合(ステップS106においてNO)には、以後の処理はスキップされ、ステップS100以下の処理が繰返される。
これに対して、GPSモジュール43がGPS正常受信中でなければ(ステップS104においてNO)、CPU40は、GPSモジュール43がホールドオーバ内であるかを判断する(ステップS108)。GPSモジュール43がホールドオーバ内であれば(ステップS108においてYES)、以後の処理はスキップされ、ステップS100以下の処理が繰返される。
また、GPSモジュール43がホールドオーバ内でなければ(ステップS108においてNO)、すなわち、GPSモジュール43がホールドオーバ外であれば、CPU40は、以下に示す送信電力の調整処理を実行する。
まず、CPU40は、同期信号生成部4に接続されているすべての無線基地局2に対して、送信電力を低減もしくはカットするための指令を一斉に与える(ステップS110)。これにより、ホールドオーバ状態になったGPSモジュール43に接続されているすべての無線基地局2のセル範囲が一旦縮小される。
CPU40は、接続されている複数の無線基地局のうち、1番目の無線基地局を対象に設定する(ステップS112)。続いて、CPU40は、対象の無線基地局に対して、そのセル範囲に存在する端末装置との間の通信状態を示す情報(CINR値およびRSSI値を含む)を問い合せる(ステップS114)。すなわち、CPU40は、同期信号の精度が所定レベルを下回っている場合に、複数の無線基地局2の各々から、当該無線基地局2と端末装置との間の通信状態を示す情報を取得する。
続いて、CPU40は、ステップS116〜S122に示すような、取得した各無線基地局2についての通信状態を示す情報に基づいて干渉の度合いを評価することで、各無線基地局2の送信電力を調整するための指令を生成する処理を実行する。
まず、CPU40は、対象の無線基地局のセル範囲を拡大できるか否かを判断する(ステップS116)。より具体的には、CPU40は、対象の無線基地局2から受信したCINR値が所定のしきい値THCINRより大きく、かつ、RSSI値が所定のしきい値THRSSIより小さいか否かを判断する。この処理では、対象の無線基地局2において発生している干渉の度合いが許容できるが判断される。
対象の無線基地局のセル範囲を拡大できると判断した場合(ステップS116においてYESの場合)には、CPU40は、対象の無線基地局についての現在の送信電力を増加させるための指令を生成し、生成した指令を対象の無線基地局へ送信する(ステップS118)。そして、処理はステップS124へ進む。
これに対して、対象の無線基地局のセル範囲を拡大できないと判断した場合(ステップS116においてNOの場合)には、CPU40は、対象の無線基地局のセル範囲を縮小しなければならないか否かを判断する(ステップS120)。より具体的には、CPU40は、対象の無線基地局から受信したCINR値が所定のしきい値THCINRより小さく、かつ、RSSI値が所定のしきい値THRSSIより大きいか否かを判断する。この処理では、対象の無線基地局2において発生している干渉の度合いが許容できないかが判断される。
対象の無線基地局のセル範囲を縮小しなければならないと判断した場合(ステップS120においてYESの場合)には、CPU40は、対象の無線基地局についての現在の送信電力を減少させるための指令を生成し、生成した指令を対象の無線基地局へ送信する(ステップS122)。そして、処理はステップS124へ進む。
対象の無線基地局のセル範囲を縮小する必要はないと判断した場合(ステップS120においてNOの場合)には、何らの指令も生成せずに、処理はステップS124へ進む。
ステップS124において、CPU40は、GPSモジュール43がホールドオーバ外を維持しているか否かを判断する(ステップS124)。GPSモジュール43がホールドオーバ外の状態を継続している場合(ステップS124においてYESの場合)には、CPU40は、接続されている複数の無線基地局のうち、別の無線基地局を対象に設定する(ステップS126)。そして、ステップS114以下の処理が繰返される。
GPSモジュール43がホールドオーバ外の状態を継続していない場合(ステップS124においてNOの場合)には、処理はステップS104へ戻る。
また、ステップS130において、CPU40は、同期信号生成部4に接続されているすべての無線基地局2に対して、送信電力を元のレベルに回復させるための指令を一斉に与える(ステップS130)。これにより、GPSモジュール43における同期信号の精度の回復に伴って、すべての無線基地局2のセル範囲が元の状態に回復する。
<作用効果>
本実施の形態に従う無線通信システムでは、複数の無線基地局が同期信号を生成する同期信号生成部を共有するため、システム全体のコストを抑制しつつ、より精度および信頼性の高いGPSモジュールを採用することができる。
さらに、本実施の形態に従う無線通信システムでは、何らかの理由で同期信号生成部が時刻情報を含む衛星からの信号(GPS信号)を受信できなくなり、その生成する同期信号の精度が維持できなくなった場合であっても、送信電力を調整して、他の同期信号生成部に接続されている無線基地局に対する干渉を抑制することができる。その結果、同期信号の精度が保証されない場合であっても、通話や通信のサービスを可能な限り継続させることができる。
また、本実施の形態に従う無線通信システムでは、他のドメインに属する無線基地局のジオメトリ(位置関係)や送信強度の状態などを考慮することなく、セル範囲を動的に調整できるので、干渉の発生を抑制しつつ、効率的にサービス範囲を維持することができる。
[その他の実施の形態]
上述の実施の形態においては、同期信号を生成する機能と、各無線基地局2の送信電力を制御する機能とを含む同期信号生成部を例示したが、これらの機能を分離してもよい。この場合には、同期信号を生成する機能を有する主体が、複数のドメインにそれぞれ属する無線基地局2の送信電力を統括して調整するようにしてもよい。
また、上述の実施の形態においては、あるドメインに属する無線基地局のセル範囲を一斉に縮小した後に、干渉の発生状況に応じて徐々に各無線基地局2のセル範囲を調整する構成について例示したが、すべての無線基地局のセル範囲を一斉に縮小することなく、対象のドメインに属する無線基地局の送信電力を並列的に調整するようにしてもよい。
また、上述の実施の形態においては、搬送波レベル対干渉・雑音比(CINR値)および受信信号強度(RSSI値)に基づいて、各無線基地局における干渉の度合いを評価する構成について例示したが、これらの情報のうちいずれか一方のみを用いて干渉の度合いを評価してもよいし、あるいは、これらの情報に加えて、あるいは、これらの情報に代えて、各無線基地局2における端末装置との間の通信状態を示す別の情報を採用してもよい。このような別の情報の一例としては、エラー発生回数、再送回数、通信レート、衝突発生回数などが挙げられる。
また、上述のフローで説明したような制御を実行させるプログラムを任意の方法で提供することもできる。このようなプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させた記録媒体として販売/流通させることもできる。あるいは、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
このようなプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態に従うプログラムに含まれ得る。
また、本実施の形態に従うプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態に従うプログラムに含まれ得る。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。