JP5317679B2 - ポリアセタール樹脂成型体の接着方法、表面改質ポリアセタール樹脂成型体および複合成型体 - Google Patents

ポリアセタール樹脂成型体の接着方法、表面改質ポリアセタール樹脂成型体および複合成型体 Download PDF

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本発明は、ポリアセタール樹脂成型体を接着剤により接着対象物に優れた接着性で接着するための接着方法に関するものである。さらに、本発明は、そのような接着方法において接着対象物に接着される表面改質ポリアセタール樹脂成型体、並びにポリアセタール樹脂成型体が接着対象物に接着剤により接着された複合成型体に関するものである。
ポリアセタール樹脂は、成形性に優れており、かつバランスのとれた機械的性質、電気的性質、耐熱性、耐薬品性、耐磨耗性等を有したポリアセタール樹脂成型体の製造に適しており、さらにプラスチック材料としては卓越した耐疲労性を有するが故に、代表的なエンジニアリング樹脂として広汎な分野において利用されている。しかしながら、他方では、ポリオキシメチレンとエポキシ樹脂とを接合させることが本質的に困難であるように、ポリアセタール樹脂は他の接着対象物との接着剤による接着性が極めて低いことから、その利用が制限されることもしばしばであった。
従来から、ポリアセタール樹脂成型体の接着剤による接着対象物との接着性の向上のために、ポリアセタール樹脂と親和性を有する樹脂をポリアセタール樹脂に少量で混合したり、または他の成分との共重合を行うことが試みられてきた(特許文献1参照)。しかしながら、これらの手法では、成型樹脂材料そのものが変化するために、ポリアセタール樹脂本来の物性が充分に得られないことがあった。
一般に、樹脂成型体の接着対象物との接着性を向上させるための他の方法として、樹脂成型体の接着面に対して表面処理を行うことが知られている。その表面処理としては、表面活性化処理、プライマー処理、粗面化等があり、表面活性化処理として紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理等がある。尚、上記のような他の樹脂と混合したポリアセタール系樹脂成型体の表面を、酸処理、アルカリ処理、低温プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理または電子線照射処理により処理することを合わせて行うことも提案されている(特許文献1参照)。また、コロナ処理、プラズマ処理および火炎処理のような方法の助けによりポリアセタール等を含むポリマー材料を酸化処理工程にゆだねて、ポリマー表面上にヒドロキシル基等を生成する第1段階と、得られたポリマー表面と3又は4個の環原子を有する複素環式化合物なる有機化合物とを液体接触させる第2段階を含む、ポリアセタール等を含むポリマー材料の表面エネルギーおよび親水性を高める方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、ポリアセタール樹脂以外の樹脂では効果が高いとされる種々の表面処理も、ポリアセタール樹脂だけでは充分な効果が見られなかった。これはポリアセタール分子がオキシメチレン基を有しており、表面処理により分子鎖が切断された場合に、そこを起点として解重合が起こり易くなり、ホルムアルデヒドとして分解するためであると考えられる。
また、他の樹脂の接着の際におけるプライマー処理に用いられるシランカップリング剤も、ポリアセタール樹脂には充分な効果が見られない。この場合には、シランカップリング剤が反応すべき表面官能基がポリアセタール樹脂表面には存在しないためであると考えられる。尚、ポリアセタール樹脂等からなる被着体を接着対象に対して接着する方法において、被着体の接着面に紫外線照射、コロナ放電、プラズマ処理等の物理的表面改質処理と、被着体にイソシアネート化合物を含むプライマーの塗布を組み合せることも提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、これらの先行技術によっては、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持されたままで、充分な接着性を発現させるためのポリアセタール樹脂成型体の接着方法を得ることが困難であった。たとえば、シランカップリング剤等の処理では被着体表面においてアルコキシシランが加水分解して生成したシラノール基が被着体表面および接着剤の官能基と相互作用することにより接着性を発現するが、ポリアセタールの場合は以下に述べる構造的な理由により表面官能基が極めて少ないため接着性向上の効果がないと考えられる。またプラズマ処理やUV処理等では通常のC‐C結合が主体の高分子の場合、表面処理により分子が酸化されて水酸基やカルボキシル基のような極性官能基が生成し、これが接着剤と相互作用することにより接着性が向上すると考えられる。これに対してポリアセタールはO‐C‐Oのアセタール結合が主体の分子であり末端水酸基は非常に不安定で容易にホルムアルデヒドとして分解するため末端水酸基はメチル基等で保護されている。プラズマ処理等により分子が切断して水酸基が生成しても不安定でホルムアルデヒドとして分解してしまい、このため表面処理の効果が得られないと考えられる。
また、発明者らの一部が、これらの問題点を解決するために、ポリアセタールの接着方法に関して、有機シラン化合物を含むプロセスガスによるプラズマ処理によりポリアセタールの表面処理を行うと、プラズマ処理によりポリアセタール表面に生成した水酸基と有機シラン化合物が反応し、かつ有機シラン化合物と接着剤が相互作用することにより接着性を発現させることを含む、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法を提案している(特許文献4)。尚、本発明は、更なる別の解決策を提案しようとするものである。
一方、最近になって、P.B.Messersmithらにより開発された、種々な材質の表面にイガイのように吸着するための、カテコール(DOPA)とアミン(リジン)両方の官能基を有するドーパミンを利用した汎用表面修飾法が紹介されている(非特許文献1)。その手法によれば、ドーパミン水溶液(2mg/mL、pH8.5)に修飾対象物を浸漬するとドーパミンの高分子薄膜の自発的な堆積が起こり、貴金属(Au,Ag,Pt,Pd)、金属の自然酸化膜(Cu,ステンレス、NiTi形状記憶合金)、酸化物(TiO2,S,Al23,Nb25)、半導体(GaAs,Si34)、セラミック、合成ポリマー(PS,PE,PC,PET,PTFEなど)の全ての材質の表面にポリドーパミンをコーティングすることが可能であることが紹介されている。但し、ポリアセタール樹脂の記載がなく、またコーティングされた被着体の接着性に関してはなんら検討されていない。
特開2003−220667号公報 特開平3−503655号公報 特開2006−028474号公報 特願2007−310910号明細書 渡辺栄治、Dojin news,No.125,P.12(2007)
本発明は、表面修飾剤としてのドーパミンが、例えば、ポリアセタールの官能基である水酸基と接着剤の官能基であるエポキシ基の両者と親和性が高い可能性に着目し、上記の問題点を解決しようとするものである。
本発明は、例えば、ポリアセタールの1種であるポリオキシメチレン(POM、‐(CH2O)n‐)の表面にポリドーパミン薄膜を形成した後必要に応じてアミノシランカップリング剤を塗布することによりエポキシ樹脂との接着強度を向上させる、即ち、POM基板表面にポリドーパミン薄膜をコーティングすることによりエポキシ樹脂との接合強度を高める等により、接着性が極めて低いとされるポリアセタール樹脂成型体を接着剤により接着対象物に接着させる、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法、その接着方法において接着対象物に接着されるポリアセタール樹脂成型体、並びにポリアセタール樹脂成型体が接着対象物に接着剤により接着された複合成型体を提供しようとするものである。
本願の請求項1に記載の発明(以下「本願の第一発明」という)は、ポリアセタール樹脂成型体を接着剤により接着対象物に接着するポリアセタール樹脂成型体の接着方法であって、ポリアセタール樹脂成型体表面にドーパミン溶液を接触させることにより、ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜を形成させる前処理工程、およびその前処理工程で形成したポリアセタール樹脂成型体表面における官能基と、接着剤の官能基との相互作用により接着性を発現させる接着工程を含む、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法を提供するものである。ポリアセタール樹脂成型体がドーパミン溶液中に浸漬されると、その浸漬されたポリアセタール樹脂成型体の表面においてドーパミンの高分子、即ちポリドーパミンの薄膜の自発的な堆積が起こり、ポリドーパミン薄膜が形成される。図1において、かかる本願の第一発明でのポリアセタール樹脂成型体の接着方法が模式的に示される。
かかる本願の第一発明では、ポリアセタール樹脂成型体の表面を前処理工程により処理して、そのポリアセタール樹脂成型体の表面にポリドーパミン薄膜を形成させることによって、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持されたままで、その形成されたポリドーパミン薄膜の官能基と接着剤の官能基との間の相互作用によって優れた接着性を発現させることが可能である。
本願の請求項8に記載の発明(以下「本願の第二発明」という)は、ポリアセタール樹脂成型体が接着剤により接着対象物に接着されてなる複合成型体であって、ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることによりポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成され、次いでポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜の官能基と接着剤の官能基との相互作用により接着性が発現されることによって接着されてなる、複合成型体を提供するものである。
かかる本願の第二発明では、第一発明と同様に、そのポリアセタール樹脂成型体の表面にポリドーパミン薄膜が形成されることによって、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持されたままで、その形成されたポリドーパミン薄膜の官能基と接着剤の官能基との間の相互作用によって優れた接着性が発現された、ポリアセタール樹脂成型体が接着対象物に接着剤により接着された複合成型体を得ることが可能である。
本願の請求項9に記載の発明(以下「本願の第三発明」という)は、ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることによりポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成されてなる、表面改質ポリアセタール樹脂成型体を提供するものである。
かかる本願の第三発明における表面改質ポリアセタール樹脂成型体は、上記の本発明の第一発明におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法において、ポリアセタール樹脂成型体表面にドーパミン溶液を接触させることにより、ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜を形成させる前処理工程によって得られるものに相当する。
かかる本願の第三発明では、接着剤により接着対象物に接着されるポリアセタール樹脂成型体として有用な、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持され、優れた接着性を発現させることが可能な表面改質ポリアセタール樹脂成型体が提供される。
本願の請求項11に記載の発明(以下「本願の第四発明」という)は、ポリアセタール樹脂成型体が接着剤により接着対象物に接着されてなる複合成型体であって、ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることによりポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成され、更にポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤が反応され、次いでポリアセタール樹脂成型体表面に形成された官能基と接着剤の官能基との相互作用により接着性が発現されることによって接着されてなる、複合成型体を提供するものである。
かかる本願の第四発明では、ポリアセタール樹脂成型体の表面にポリドーパミン薄膜が形成され、更にそのポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤が反応されることによって、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持されたままで、ポリアセタール樹脂成型体の表面に形成された官能基と接着剤の官能基との間の相互作用によって、ばらつきがより少ない優れた接着性が発現された、ポリアセタール樹脂成型体が接着対象物に接着剤により接着された複合成型体を得ることが可能である。
本願の請求項12に記載の発明(以下「本願の第五発明」という)は、ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることによりポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成され、更にポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜がシランカップリング剤と反応されてなる、表面改質ポリアセタール樹脂成型体を提供するものである。
かかる本願の第五発明における表面改質ポリアセタール樹脂成型体は、後述する本発明の第一発明の好ましい態様におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法において、ポリアセタール樹脂成型体表面にドーパミン溶液を接触させることにより、ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜を形成させ、さらにポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜をシランカップリング剤と反応させる前処理工程によって得られるものに相当する。
かかる本願の第五発明では、接着剤により接着対象物に接着されるポリアセタール樹脂成型体として有用な、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持され、ばらつきがより少ない優れた接着性を発現させることが可能な表面改質ポリアセタール樹脂成型体が提供される。
これらの本願発明を利用することによって、耐磨耗性や耐薬品性に優れたPOM等のポリアセタール樹脂成型体上への電子デバイス等の樹脂モールドが可能となる。
本発明における「ポリアセタール樹脂」とは、オキシメチレン基(‐CH2O‐)を主たる構成単位とする高分子化合物であって、ポリオキシメチレンホモポリマー、並びにオキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するコポリマー、ターポリマーおよびブロックポリマーの群から選択される高分子化合物、またこれらの混合物であってもよく、さらに分子が線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであってもよい。尚、その重合度に関しては、特に制限はなく、成形加工性を有するものであればよいが、具体的には流動性を示すメルトフローインデックス(ASTM D1238−57Tの条件で測定)が、0.5〜100g/10分の範囲が一般的であり、好ましくは2〜80g/10分、より好ましくは5〜60g/分の範囲で、用途に応じて適宜選択される。
本発明における「ドーパミン溶液」とは、ドーパミン(2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアミン、(HO)263CH2CH2NH2)を溶媒に溶解したものであって、その好ましい溶媒としては通常水が用いられる。尚、かかる溶媒としては、水に換えて、又は水と共にメタノール、エタノール等の有機溶媒を必要に応じて使用することも出来る。また、ドーパミン溶液には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、シランカップリング剤等の成分を含有させることも出来る。
ポリアセタール樹脂成型体表面にドーパミン溶液を接触させる方法としては、ポリドーパミン薄膜の自発的な堆積が起こる方法であればいかなる方法でもよく、具体的には浸漬、塗布、噴霧等が挙げられ、中でも浸漬が好ましい。尚、ドーパミン溶液を接触させるときの温度としては、0〜100℃、好ましくは20〜40℃であり、時間としては1分〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
また、本発明における「ポリドーパミン薄膜」とはポリドーパミンの薄膜を意味し、更に具体的には、薄膜の厚さが1〜100nm、好ましくは1〜10nmである。
本願の第一発明におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法の好ましい一つの態様として、その前処理工程後のポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.05〜0.25である、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法が挙げられる。即ち、前処理工程後のポリアセタール樹脂成型体表面にはポリドーパミンの薄膜が形成されており、そのポリドーパミンの薄膜の表面におけるX線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.05〜0.25である。
更に好ましい一つの態様として、その前処理工程後のポリアセタール樹脂成型体表面、即ち、ポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜の表面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.15〜0.25である、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法が挙げられる。
かかるポリアセタール樹脂成型体の接着面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比を0.05〜0.25、好ましくは0.15〜0.25、特に好ましくは0.20〜0.25の範囲に調整することによって、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持されたままで、優れた接着性を発現させるためのポリアセタール樹脂成型体をより確実に得ることが可能になる。接着面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.25を超える場合には、ポリドーパミン薄膜表面にN原子が偏析する構造となり薄膜が不安定化することにより、優れた接着性が得られにくくなり、また、N1s/C1s組成比が0.05より低い場合には、生成したポリドーパミン薄膜とエポキシ接着剤との相互作用が低下し、得られるはずの効果が得られにくくなり、好ましくない。
ここで、X線光電子分光法による分析条件は、
・ 光電子脱出角度:45度
・ X線源:AlKα(1486.7eV)、14kV、200W、
・ 試料チャンバー内真空度:1×10‐8Torr
・ 温度:室温
・ 各元素のスキャン範囲
1s:275〜300eV
1s:390〜410eV
・ ステップ:0.1eV
・ 積算時間:100ミリ秒
・ 積算回数:10回
である。このとき測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせる。次いで、C1sピーク面積[C1s]を282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、N1sピーク面積[N1s]を395〜405eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。次いで、N1s/C1s組成比を、上記C1sピーク面積[C1s]、N1sピーク面積[N1s]、および装置固有の感度補正値(C1s[0.314]、N1s[0.499])から次式により求める。
1s/C1s組成比=([N1s]/0.499)/([C1s]/0.314)
尚、使用されるX線光電子分光分析装置は、アルバック・ファイ製APEXなどの標準的なものである。
本願の第一発明におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法の好ましいもう一つの態様として、前処理工程に、ポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤を反応させることを更に含む、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法が挙げられる。図2においてかかる態様でのポリアセタール樹脂成型体の接着方法が模式的に示される。かかる態様では、ポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤を反応させることによって、ばらつきがより少ない優れた接着性を発現させるためのポリアセタール樹脂成型体をより確実に得ることが可能になる。
そこで用いられるシランカップリング剤としては、ポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜と反応し得るものであればいかなるシランカップリング剤であっても良い。かかるシランカップリング剤として、(3‐(2‐アミノエチル)アミノプロピルメトキシシラン)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
そこでの更に好ましい一つの態様として、シランカップリング剤がアミノ基を含むものである、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法が挙げられる。かかるアミノ基含有シランカップリング剤としては、3‐(2‐アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトシキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトシキシシラン、3−〔ビス(2−ヒドロキシエチル)〕−アミノプロピルトリエトキシシラン、等が挙げられ、中でも3‐(2‐アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
ポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤を反応させる場合の条件としては、通常のシランカップリング剤による処理と同様であってもよく、具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の溶媒にシランカップリング剤を0.1〜5.0重量%で溶解させたシランカップリング剤溶液中に、ポリドーパミン薄膜を形成したポリアセタール樹脂成型体を、室温で、1〜60秒間浸漬した後、室温〜100℃の温度で15〜60分乾燥することが好ましい。
本願の第一発明におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法の好ましいもう一つの態様として、前処理工程後のポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析による窒素元素組成が0.15〜0.25である、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法が挙げられる。即ち、前処理工程後のポリアセタール樹脂成型体表面には、ポリアセタール樹脂成型体表面にドーパミン溶液を接触させることによりポリドーパミンの薄膜が形成され、さらにポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜がシランカップリング剤と反応されており、そのポリドーパミン薄膜とシランカップリング剤が反応した表面におけるX線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.15〜0.25である。
かかるポリアセタール樹脂成型体の接着面における、X線光電子分光分析による窒素元素組成を0.15〜0.25、好ましくは0.20〜0.25、特に好ましくは0.25の範囲に調整することによって、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持されたままで、ばらつきがより少ない優れた接着性を発現させるためのポリアセタール樹脂成型体をより確実に得ることが可能になる。接着面における、X線光電子分光分析による窒素元素組成が0.25を超える場合にはポリドーパミン薄膜表面にN原子が偏析する構造となり薄膜が不安定化することにより、優れた接着性が得られにくくなり、また、窒素元素組成が0.15より低い場合には、生成したポリドーパミン薄膜とエポキシ接着剤との相互作用が低下し、得られるはずの効果が得られにくくなり、好ましくない。
ここで、X線光電子分光法による分析条件は、
・ 光電子脱出角度:45度
・ X線源:AlKα(1486.7eV)、14kV、200W、
・ 試料チャンバー内真空度:1×10‐8Torr
・ 温度:室温
・ 各元素のスキャン範囲
1s:275−300eV
1s:522−542eV
Si2p:95−115eV
・ ステップ:0.1eV
・ 積算時間:100ミリ秒
・ 積算回数:10回
である。このとき測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせる。次いで、C1sピーク面積[C1s]を、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積[O1s]を、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、Si2pピーク面積[Si2p]を、98〜110eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。表面ケイ素組成は、上記O1sピーク面積[O1s]、C1sピーク面積[C1s]、Si2pピーク面積[Si2p]、および装置固有の感度補正値(C1s[0.314]、O1s[0.733]、Si2p[0.368])から、次式により求められる。
[Si](%)=100×[Si2p]/(([C1s]/0.314+[O1s]/0.733+[Si2p]/0.368)×0.368)
尚、使用されるX線光電子分光分析装置は、アルバック・ファイ製APEXなどの標準的なものである。
本願の第一発明におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法の好ましいもう一つの態様として、接着剤がエポキシ基を含むものである、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法が挙げられる。かかる態様では、接着剤がエポキシ基を含むものであることによって、ポリアセタールの官能基である水酸基と接着剤の官能基であるエポキシ基の両者と親和性が高いドーパミンを用いた利点が有効に生かされて、優れた接着性を発現させるためのポリアセタール樹脂成型体をより確実に得ることが可能になる。
そこでのエポキシ基を含む接着剤の具体例としては、アミノ基含有硬化剤を含むエポキシ樹脂系接着剤、エポキシ樹脂を主成分とした公知の熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤が用いられ、そのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型‐エポキシ樹脂、ノボラック型‐エポキシ樹脂、ビスフェノールA型‐ジグリジルエーテル系エポキシ樹脂又は縮合ビスフェノールA型‐ジグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、あるいはフェノールノボラック型‐ポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型‐ジグリシジルエーテル又はグリシジルアミン系の樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビスフェノールヘキサフロロアセトンジグリシジルエーテル等が挙げられ、その中でもアミノ基含有硬化剤を含むエポキシ樹脂系接着剤等が好ましい。
本発明では、エポキシ基以外の官能基を有する接着剤を使用することが可能であって、かかる接着剤の官能基として、ビニル、スチリル、ヒドロキシ、カルボキシル、メタクリロキシ、アクリロキシ、アミノ、イミノ、シアノ、アミド、ウレイド、イソシアネート、シラノール、シロキサンの群から選択されるものが挙げられる。かかるビニル、スチリル、ヒドロキシ、カルボキシル、メタクリロキシ、アクリロキシ、アミノ、イミノ、シアノ、アミド、ウレイド、イソシアネート、シラノール、シロキサンの群から選択される官能基を有する接着剤としては、アクリル樹脂系接着剤(アクリロキシ、カルボキシルまたはビニル含有)、ウレタン樹脂系接着剤(イソシアネートまたはヒドロキシ含有) 、シアノアクリレート系接着剤(アクリロキシ、シアノまたはビニル含有)、シリコーン系接着剤(シラノールまたはシロキサン含有)、スチレン-ブタジエンゴム系接着剤(スチリルまたはビニル含有)、ニトリルゴム系接着剤(ビニルまたはシアノ含有)、ポリアミド樹脂系接着剤(アミド、アミノまたはカルボキシル含有)、ポリイミド系接着剤(イミノ、アミドまたはカルボキシル含有)、ポリメタクリレート樹脂系接着剤(メタクリロキシまたはビニル含有)、ユリア樹脂系接着剤(ウレイド含有)等が挙げられる。
本願の第二発明におけるポリアセタール樹脂成型体が接着剤により接着対象物に接着されてなる複合成型体の好ましい態様としては、上記の第一発明のポリアセタール樹脂成型体の接着方法における好ましい態様により得られる複合成型体が挙げられる。
本願の第三発明における、ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることによりポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成されてなる、表面改質ポリアセタール樹脂成型体の好ましい態様としては、ポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.05〜0.25であるポリアセタール樹脂成型体が挙げられる。X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.25を超える場合には、ポリドーパミン薄膜表面にN原子が偏析する構造となり薄膜が不安定化することにより、優れた接着性が得られにくくなり、また、N1s/C1s組成比が0.05より低い場合には、生成したポリドーパミン薄膜とエポキシ接着剤との相互作用が低下し、得られるはずの効果が得られにくくなり、好ましくない。
本願の第四発明におけるポリアセタール樹脂成型体が接着剤により接着対象物に接着されてなる複合成型体の好ましい態様としては、上記の第一発明のポリアセタール樹脂成型体の接着方法において、ポリアセタール樹脂成型体の表面にポリドーパミン薄膜が形成され、更にそのポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤が反応される、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法の好ましい態様により得られる複合成型体が挙げられる。
また、本願の第五発明における、ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることによりポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成され、更にポリアセタール樹脂成型体表面に形成されたポリドーパミン薄膜がシランカップリング剤と反応されてなる、表面改質ポリアセタール樹脂成型体の好ましい態様としては、ポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析による窒素元素組成が0.20〜0.25であるポリアセタール樹脂成型体が挙げられる。X線光電子分光分析による窒素元素組成が0.25を超える場合にはポリドーパミン薄膜表面にN原子が偏析する構造となり薄膜が不安定化することにより、優れた接着性が得られにくくなり、また、窒素元素組成が0.20より低い場合には、生成したポリドーパミン薄膜とエポキシ接着剤との相互作用が低下し、得られるはずの効果が得られにくくなり、好ましくない。
本願のこれらの発明における接着対象物については、特に限定されるものではないが、より具体的には、ポリアセタール樹脂成型体のほか、使用される接着剤に応じて、樹脂成型体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド等)、金属(Al、Cu等)、メッキ(Ni、Sn等)、およびセラミックス等が適宜に選択され得る。
以下に本願発明についての実施例を挙げて更に具体的に本願発明を説明するが、それらの実施例によって本願発明が何ら限定されるものではない。
実施例1
POM基板表面にポリドーパミン薄膜をコーティングする方法、エポキシ樹脂を形成する方法、接合強度を測定する方法の実施例を以下に述べる。
(1)pH8.5の10mM Tris‐HClの水溶液1mL当たり2mgのドーパミン塩酸塩を添加することにより、ドーパミン溶液を作製した。実験では、10mM Tris‐HClの水溶液225mLに少量の苛性ソーダ溶液を添加することによりpH8.5に調整した後、450mgのドーパミン塩酸塩を溶解させた。
(2)市販のポリアセタール樹脂POM(ポリプラスチックス株式会社製)の基板(長さ20mm、幅20mm、厚さ3mm)を、上記pH8.5の0.2%ドーパミン水溶液に室温(25℃)で浸漬することにより、ポリドーパミン薄膜をコーティングした。20時間浸漬した時のポリドーパミン薄膜の膜厚は約40nmであった。
(3)ポリドーパミン薄膜をコーティングする前後のPOM基板表面をX線光電子分光法(XPS)により分析した。測定条件は上記のX線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比の分析条件に準じて行った。図3は、ポリドーパミン薄膜形成前のPOM基板のXPS分析の結果である。図4はポリドーパミン薄膜形成後のPOM基板表面のXPS分析の結果である。図3と図4に示されるように、ポリドーパミン薄膜形成前のPOM基板表面では酸素、炭素のピークのみが観測されたのに対して、ポリドーパミン薄膜形成後ではポリドーパミンの成分である酸素、炭素、窒素のピークが観測された。従って、POM基板表面がポリドーパミンで被覆されていることが分かる。
(4)ポリドーパミン薄膜が形成されたPOM基板を、直径2mmの穴を空けたテフロン(登録商標)テープでマスクして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と変性脂肪族ポリアミン硬化剤を3:2の重量比で混合したエポキシ樹脂系接着剤を、その直径2mmの穴を介してPOM基板上に室温(25℃)で塗布することにより、図5に断面図で示すようにPOM基板1上のポリドーパミン薄膜2の上に直径2mmのエポキシボール3を形成した。その後、90℃3時間のキュアを行った。
(5)万能型ボンドテスター(デイジ社製)を用いて、ボールシェアテストによりエポキシ樹脂系接着剤の付着強度を評価した。図6はボールシェアテスト法の説明図であり、そこでは、15で示されるシェア方向に移動するシェアツール14によって、POM基板11上のポリドーパミン薄膜12上のエポキシボール13が剥がされることによって、エポキシボール13の付着強度が測定される。付着強度の側定例を図7に示す。ポリドーパミン薄膜形成後のPOM基板の場合には、付着力のばらつきが比較的大きく、付着力が低い場所も不規則に存在したが、ポリアセタール樹脂本来の物性が維持されたままで、ポリドーパミン薄膜形成前のPOM基板の場合に比して約1.5〜7倍の付着強度の改善が見られた。
図8に、各材料の結合の状態の概念図を示す。POM基板とポリドーパミン薄膜との付着力は、ドーパミンを分泌する貝類の1種であるイガイが海中の物質に強く付着するという現象を利用したものに相当している(非特許文献1参照)。ポリドーパミン薄膜とエポキシ樹脂系接着剤との付着力は、エポキシ樹脂と混合した硬化剤(変性脂肪族ポリアミン)中のアミノ基がポリドーパミン中のアミノ基と強く結合するためと考えられる。
また、POMは酸またはアルカリ水溶液で加水分解されやすいことから、アルカリ性のドーパミン水溶液によりPOMの表面分子の一部が加水分解し、生成した水酸基とドーパミンが相互作用して接着性が向上することが考えられる。この際にXPS分析により表面のN1s/C1s組成比を求めたところ、図7に示されるように、接着強度向上に対してN1s/C1s組成比は0.05から0.25が望ましく、さらに望ましくは0.15から0.25である。
実施例2
実施例1において、ポリドーパミン薄膜形成後のPOM基板とエポキシ樹脂系接着剤の付着強度が、ポリドーパミン薄膜形成前のPOM基板の場合に比して最大で約7倍に高められた。しかしながら、ポリドーパミン薄膜形成後のPOM基板の場所によっては、エポキシ樹脂系接着剤の付着力向上がわずかしか見られない部分もあった。この原因として、ポリドーパミン薄膜形成の不均一性が考えられる。このことを確かめる為に、XPS法により窒素ピーク(N1s)のポリドーパミン薄膜の位置による変化を調べた。その結果、窒素のピークの強度にばらつきが観測された。窒素ピークの強度の評価として、炭素ピークに対するピーク比N1s/C1sを使用した。接着強度が最大の点、接着強度の平均値付近、接着強度が最小の点でのピーク比N1s/C1sは、それぞれ0.25、0.15、0.05であった。付着強度が最小の場所でのXPS測定の例を図9に示す。
そのような実施例1における付着力のばらつきを更に改善するために、ポリドーパミン薄膜とエポキシ樹脂系接着剤の境界にアミノシランカップリング剤を挟んだ所、付着力のばらつきが大幅に減ることがわかった。
以下に、実施例2の手順を説明する。
(1)実施例1と同様にして、pH8.5の0.2%ドーパミン水溶液にPOM基板を室温(25℃)で17時間浸漬した。17時間浸漬した時のポリドーパミン薄膜の膜厚は約35nmであった。
(2)ポリドーパミン薄膜が形成されたPOM基板をアミノシランカップリング剤(3‐(2‐アミノエチル)アミノプロピルリメトキシシラン)の0.5%水溶液に室温(25℃)で10秒間浸漬した後、恒温槽中で85℃30分間乾燥させた。
付着強度が平均的な場所をXPS測定した結果を図10に示す。酸素(O1s)、窒素(N1s)、炭素(C1s)の他に、シリコン(Si2p,Si2s)が観測される。また、ピーク比N1s/C1sの分布を調べた所、0.15〜0.25に分布し、図9で示すような低いピークは観測されなかった。これは、アミノシランカップリング剤に含まれるアミノ基(‐NH2)がポリドーパミン薄膜中のアミノ基の不足部分を補ったものと考えられる。
(3)上記基板上に、実施例1と同じ方法により直径2mmのエポキシボールを形成し、90℃で3時間のキュアを行った。
(4)実施例1と同様にボールシェアテストによりエポキシ樹脂の付着強度を評価した。図11に、POM基板の場合、POM基板をアミノシランカップリングで処理した場合、POM基板にポリドーパミン薄膜を形成した場合、およびPOM基板にポリドーパミン薄膜を形成した後アミノシランカップリングで処理した場合の4つの場合について、エポキシ樹脂系接着剤の付着強度の測定例を示す。POM基板にポリドーパミン薄膜を形成した後更にアミノシランカップリングで処理した場合には、付着力のばらつきが減り、ポリドーパミン薄膜のないPOM生基板の場合の約4〜8倍の付着強度が得られた。ボールシェアテストでエポキシ樹脂系接着剤が剥離された部分を分析した所、POM基板にポリドーパミン薄膜を形成した後アミノシランカップリングで処理した場合に、エポキシ成分が残っていることから、界面破壊ではなく凝集破壊であることがわかった。エポキシボール剥離後の表面の光学写真を示す図12においても、凝集破壊により残ったエポキシ樹脂系接着剤が見られる。
シランカップリング剤として、本実施例のアミノ系シランカップリング剤の他に、エポキシ系、メルカプト系またはスルフィド系のシランカップリング剤を使用してみたが、実施例1のシランカップリング剤を使用しない場合に比して付着強度のばらつきを減少させる効果は小さかった。即ち、アミノ基(‐NH2)を含むアミノ系シランカップリング剤の場合に特にばらつき減少の効果が大きいことがわかった。
図13に、本実施例における各材料の結合の状態の概念図を示す。POM基板とポリドーパミン薄膜との付着力は、ドーパミンを分泌する貝類の1種であるイガイが海中の物質に強く付着するという現象を利用している(文献1参照)。また、実施例2におけるポリドーパミン薄膜とエポキシ樹脂系接着剤との強い付着力が得られた理由として、(1)ポリドーパミン中のO、アミノシランカップリング剤中のSi、エポキシ樹脂中のR(アルキル基)によるO‐Si‐Rという共有結合に、(2)ポリドーパミン、アミノシランカップリング剤、エポキシ樹脂系接着剤中の硬化剤(変性脂肪族ポリアミン)がすべてアミノ基(‐NH2)を含むことによるアミノ基結合が加わったためと考えられる。
ドーパミン薄膜形成処理におけるばらつきを抑制するためにシランカップリング剤でさらに処理して付着強度を評価したところ、ばらつきが減少し付着強度が向上することを明らかにした。このときXPS分析による表面のN元素組成は0.20から0.25が望ましい。
本願発明におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法のフローチャートを示す説明図である。 本願発明におけるポリアセタール樹脂成型体の接着方法の一つの態様のフローチャートを示す説明図である。 ポリドーパミン薄膜形成前のポリアセタール樹脂基板のX線光電子分光分析の結果を示す説明図である。 本願発明における表面改質ポリアセタール樹脂成型体のX線光電子分光分析の結果を示す説明図である。 エポキシボールを形成したポリアセタール樹脂基板の断面図である。 ボールシェアテスト法の説明図である。 付着強度の側定例を示す説明図である。 本願発明における各材料の結合の状態を示す概念図である。 本願発明における表面改質ポリアセタール樹脂成型体のX線光電子分光分析の結果を示す説明図である。 本願発明における表面改質ポリアセタール樹脂成型体のX線光電子分光分析の結果を示す説明図である。 付着強度の側定例を示す説明図である。 本願発明における表面改質ポリアセタール樹脂成型体のエポキシボール剥離後の表面の光学写真である。 本願発明における各材料の結合の状態を示す概念図である。

Claims (13)

  1. ポリアセタール樹脂成型体を接着剤により接着対象物に接着するポリアセタール樹脂成型体の接着方法であって、
    該ポリアセタール樹脂成型体表面にドーパミン溶液を接触させることにより、該ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜を形成させる前処理工程、および
    該前処理工程で形成した該ポリアセタール樹脂成型体表面における官能基と、該接着剤の官能基との相互作用により接着性を発現させる接着工程
    を含む、ポリアセタール樹脂成型体の接着方法。
  2. 前記前処理工程後の前記ポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.05〜0.25である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂成型体の接着方法。
  3. 前記前処理工程後の前記ポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.15〜0.25である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂成型体の接着方法。
  4. 前記前処理工程に、前記ポリアセタール樹脂成型体表面に形成された前記ポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤を反応させることを更に含む、請求項1に記載のポリアセタール樹脂成型体の接着方法。
  5. 前記シランカップリング剤がアミノ基を含むものである、請求項4に記載のポリアセタール樹脂成型体の接着方法。
  6. 前記前処理工程後の前記ポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析による窒素元素組成が0.20〜0.25である、請求項4または5に記載のポリアセタール樹脂成型体の接着方法。
  7. 前記接着剤がエポキシ基を含むものである、請求項1に記載のポリアセタール樹脂成型体の接着方法。
  8. ポリアセタール樹脂成型体が接着剤により接着対象物に接着されてなる複合成型体であって、該ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることにより該ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成され、次いで該ポリアセタール樹脂成型体表面に形成された該ポリドーパミン薄膜の官能基と該接着剤の官能基との相互作用により接着性が発現されることによって接着されてなる、複合成型体。
  9. ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることにより該ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成されてなる、表面改質ポリアセタール樹脂成型体。
  10. 前記ポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析によるN1s/C1s組成比が0.05〜0.25である、請求項9に記載の表面改質ポリアセタール樹脂成型体。
  11. ポリアセタール樹脂成型体が接着剤により接着対象物に接着されてなる複合成型体であって、該ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることにより該ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成され、更に該ポリアセタール樹脂成型体表面に形成された該ポリドーパミン薄膜にシランカップリング剤が反応され、次いで該ポリアセタール樹脂成型体表面に形成された官能基と該接着剤の官能基との相互作用により接着性が発現されることによって接着されてなる、複合成型体。
  12. ポリアセタール樹脂成型体表面がドーパミン溶液に接触されることにより該ポリアセタール樹脂成型体表面にポリドーパミン薄膜が形成され、更に該ポリアセタール樹脂成型体表面に形成された該ポリドーパミン薄膜がシランカップリング剤と反応されてなる、表面改質ポリアセタール樹脂成型体。
  13. 前記ポリアセタール樹脂成型体表面における、X線光電子分光分析による窒素元素組成が0.20〜0.25である、請求項12に記載の表面改質ポリアセタール樹脂成型体。
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