以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における集合住宅用のインターフォンシステム全体の概略構成を表したブロック図である。
上述したように、集合住宅用のインターフォンシステムとしては、個々の住戸内部とその住戸玄関外部との間の通話を行うための個別住戸用インターフォン機能の他に、個々の住戸内部と共同玄関との間の通話を行うための共同玄関用インターフォン機能がある。本発明では、個別住戸用インターフォン機能については特にその構成および機能を限定するものではなく、その詳細な説明は省略し、共同玄関用インターフォン機能についてのみ説明する。
本実施の形態におけるインターフォンシステムは、放送配信システム10、共同玄関インターフォン装置40、および各住戸60内の放送受信システム20および住戸内インターフォン装置80により構成される。
このような構成により、集合住宅の共同玄関における来訪者のモニタ映像を各住戸60に配信し、訪問先以外の住戸での受信制限を行うインターフォン用映像配信システムが実現される。
現在、一般に共同玄関のドアにはいわゆるオートロックシステムが採用され、来訪者の訪問先の居住者が共同玄関に居る来訪者を住戸内部から確認した後に、ドアのロックを解除(解錠)するようになっている。そのために、訪問先の住戸60内で来訪者の声だけでなく映像も確認できるように共同玄関に撮影装置としてのモニタカメラ47が設置される。
集合住宅内の管理室等の所定の場所に設置される放送配信システム10は、配信先である各住戸60に設置される放送受信システム20と、例えば同軸ケーブル等の高周波伝送インタフェースを介して接続される。
より具体的には、放送配信システム10は、特定のチャンネルでモニタカメラの映像を格納した放送コンテンツを送出する送出装置14、この送出装置14を制御する制御装置16、放送コンテンツ源11、この放送コンテンツ源11からのRF信号と送出装置14からのRF信号とを混合して各放送受信システム20へ送信する混合器12を備えて構成される。送出装置14は、少なくとも、モニタカメラ47から得られるモニタ映像を用いて放送コンテンツを生成する。このモニタ映像は共同玄関外部に位置する来訪者の映像を含みうる。放送コンテンツ源11は、ここでは、地上デジタル放送受信アンテナ11aおよび衛星放送受信アンテナ11b等により構成されている。
本明細書における「放送コンテンツ」とは、典型的には、放送波を利用して視聴者へ送出されるモニタ映像(および音声)を含む情報であるが、放送波ではなく通信を介して送出されるものも含む。また、本明細書における「限定受信」とは、暗号化された、モニタ映像の放送コンテンツの受信者を限定する(すなわち特定の受信者にのみ視聴を許可する)ことを意味する。本実施の形態では、各住戸60において、デジタルテレビ受信機21による放送コンテンツの視聴に必要なICカードとは別に本発明のカードアダプタを利用することを、モニタカメラ47のモニタ映像の視聴の条件とする。(なお、モニタカメラ47で撮影されテレビ受信機に表示されるモニタ映像に音声が付随する必要はないが、便宜上「視聴」という。)
また、基本的には、モニタ映像の放送コンテンツの視聴制限解除のために、本実施の形態では、各住戸60に固有の住戸識別情報(住戸ID)としてその部屋番号を用いる。部屋番号データは各住戸60のカードアダプタ24内に予め記憶させておく。その記憶の態様としては、カードアダプタに内蔵する不揮発性記憶媒体への記憶の他、着脱可能な不揮発性記憶媒体(たとえばカード状の記憶媒体)の利用であってもよい。
送出装置14には、地上デジタル放送のSI情報送出機能、映像・音声の圧縮機能、映像・音声のスクランブル機能、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調機能、RFアップコンバータ機能を実装している。より具体的には、送出装置14は、地上デジタルテレビジョン放送に準拠したモニタ映像の放送コンテンツを当該暗号方式によるスクランブル鍵で暗号化し、このスクランブル鍵を独自ECM(Entitlement Control Message)に含めて、暗号化された放送コンテンツを送出する。独自ECMとは、送出装置14(ひいてはモニタ映像放送コンテンツ)に独自なECMであり、具体的にはECMの暗号化に、既存のデジタル放送とは異なる独自の暗号方式を採用したものをいう。本実施の形態では特に必要ないが、放送コンテンツはデータ放送コンテンツ(BMLデータ)を含みうる。BS放送および地上デジタル放送の信号はアンテナ11a,11bで受信され、モニタ映像の放送チャンネルの信号と混合器12で一緒に集合住宅内の住戸に送出される。送出装置14の詳細な内部構成については後述する。
制御装置16は、送出装置14を制御するための装置であり、本例ではパーソナルコンピュータ(PC)により構成される。
各住戸60内の放送受信システム20は、テレビ操作用のリモコン(リモートコントローラ)であるTVリモコン22付のデジタルテレビ受信機21と、カードアダプタ24と、ICカード26とを備えて構成される。
ICカード26は、B−CASカードと呼ばれるような既存のデジタル放送視聴用ICカードであり、デジタル放送の受信機(デジタルテレビ受信機)に装着され、暗号化された(スクランブルされた)放送コンテンツを視聴可能にする。B−CASカードは、そのID番号およびマスター鍵が格納された接触型ICカードである。
カードアダプタ24は、そのようなデジタル放送視聴用ICカードとデジタルテレビ受信機(テレビ本体)21との間に配置(装着)される、本発明により提供されるアダプタ装置である。より具体的には、カードアダプタ24は、デジタルテレビ受信機21から受信したECMが独自ECMであるかどうかを識別する機能を有し、独自ECMを受信したとき、その独自ECMから当該スクランブル鍵を抽出し、基本的には、有効な部屋番号データを記憶したカードアダプタの利用を条件として、所定のスクランブル鍵をデジタルテレビ受信機21へ送出する。独自ECM以外のECM(非独自ECM)を受信したときはICカード26からデジタルテレビ受信機21に対して送出されるスクランブル鍵をそのまま導通させるよう機能する。カードアダプタ24の具体的な構成例については後述する。
放送配信システム10から伝送されたRF信号は各住戸60にあるテレビ受信機21で受信される。ユーザは、TVリモコン22を使って、通常のテレビ放送チャンネルとモニタ映像の放送チャンネルを選局することができる。本実施の形態では、デジタルテレビ受信機の既存の放送配信システムを利用して、モニタ映像の視聴制限を行っているので、モニタ映像の放送チャンネルを選択するためのリモコンとしては、テレビ受信機21のTVリモコン22をそのまま使うことができ、使い勝手が良好となる。
通常のデジタル放送チャンネルの放送コンテンツは、MULTI2と呼ばれる暗号方式で暗号化(スクランブル)されており、その放送コンテンツを復号するための暗号鍵(スクランブル鍵)はICカード26から取り込むことができるようになっている。本実施の形態において、モニタ映像の放送チャンネルの放送コンテンツを暗号化するスクランブル鍵は、後述するスクランブル鍵生成部から生成されたスクランブル鍵が、部屋番号データに基づいて所定のデータに変換されたものである。このようなスクランブル鍵のデータ変換の方法として、本実施の形態では、ビット毎の排他的論理和(XOR)を用いた簡易的なものを利用することができる。(但し、これに限るものではない。)すなわち、スクランブル鍵データに対して部屋番号データをビット毎に排他的論理和で作用させると、部屋番号データの特定のビット(例えば値"1"のビット)についてのみスクランブル鍵データが反転される。部屋番号データの長さ(ビット数)はスクランブル鍵のビット数(ここでは64ビット)と同じものを想定しているが、それより長くても短くてもよい。短い場合には、スクランブル鍵の一部分のみが変換の対象となるが、その場合にも本発明は機能しうる。部屋番号データがスクランブル鍵のビット数より短い場合、その部屋番号データを反復して利用するようにしてもよい。例えば、32ビットの部屋番号データを2個連結して64ビットのデータとして利用してもよい。
後に詳述するように、このような暗号化されたスクランブル鍵の部屋番号データに基づく変換処理は送出装置14において実行する。変換前のスクランブル鍵はECMパケットに含まれ、テレビ受信機21を経由して、カードアダプタ24に到達する。カードアダプタ24は、モニタ映像の放送チャンネルが選択されたときには、ECMから、暗号化されたスクランブル鍵を取り込み、このスクランブル鍵を復号して、さらに有効な部屋番号データにより、変換後のスクランブル鍵を生成(すなわち復元)する。この生成された変換後のスクランブル鍵がテレビ受信機21に返送され、このスクランブル鍵によりモニタ映像放送コンテンツの復号(デスクランブル)が行われる。部屋番号データによるスクランブル鍵の変換により、当該部屋番号の住戸のカードアダプタのみが当該スクランブル鍵を正しく復元することが可能となる。
各住戸60には、放送受信システム20に加えて、共同玄関インターフォン装置40と接続される住戸内インターフォン装置80が設置される。住戸内インターフォン装置80は、インターフォン処理部81、マイク82、スピーカ83、リモコンインタフェース(リモコンIF)84、およびインターフォン操作用のリモコンであるインターフォンリモコン85を含む。インターフォン処理部81は、住戸内インターフォン装置の各部の制御は必要な処理を行う部位であり、図示しないプロセッサやメモリで構成することができる。マイク82およびスピーカ83は、来訪者との通話のための音声入出力装置である。マイク82は離れた位置にいるユーザの発声も集音できる集音マイクを用いることが好ましい。スピーカ83は、来訪者の音声の発生の他、来訪者を知らせる報知音の発生にも使用されうる。リモコンIF84は、例えば赤外線インタフェースを利用することにより、インターフォンリモコン85からの指示を受信してインターフォン処理部81へ伝達する。インターフォンリモコン85のインタフェースは赤外線に限るものではなく、任意の無線インタフェースを利用することが可能である。
図2(a)(b)に、インターフォンリモコン85の例としてリモコン85a,85bの構成を示す。
インターフォンリモコン85aは、少なくとも、通話/終話ボタン851と、解錠ボタン852を有する。通話/終話ボタン851は、来訪者の報知音が発生したときに、当該住戸60の居住者であるユーザが操作することにより、来訪者との通話を開始および終了するためのボタンである。解錠ボタン852は、ユーザが共同玄関のドアのロックを解除する指示を行うためのボタンである。
また、図2(b)に示すリモコン85bは、インターフォンの操作機能に加えて、TVリモコンの機能の少なくとも一部を兼備させたものである。例えば、図2(b)の例では、テレビ受信機の電源をON/OFFする電源ボタン853およびモニタ映像の放送チャンネルの選択を指示するためのチャンネル選択ボタン(モニタボタン)854を用意してもいる。これにより、報知音の発生時にインターフォンリモコン85bのみを用いて、テレビ受信機のモニタ画像の放送チャンネルの選択、通話を開始する指示、およびオートロックの解除指示を行うことができる。
また、インターフォンリモコン85に代えて、または加えて、マイク82およびスピーカ83を搭載したハンドセット(図示せず)を備えてもよい。この場合、ハンドセットのオンフック/オフフックを検出するスイッチが通話/終話ボタンとして機能する。これらの住戸内インターフォン装置80の構成自体は基本的には従来のものである。インターフォン・オートロック制御部42についても、部屋番号データを放送配信システム10へ送出する以外、従来の構成を利用することができる。
図1に示したインターフォンシステムにおいて、来訪者が共同玄関インターフォン装置40で部屋番号を指定して、訪問先へ来訪を通知すると、その通知を訪問先の住戸内インターフォン装置80が受領して報知音を発生し、部屋の居住者に知らせる。居住者は、住戸内において、報知音に応答して、音声通話により来訪者を確認することと並行して、TVリモコン22(またはリモコン85b)を用いて、モニタ映像の放送チャンネルを選択するように、デジタルテレビ受信機21に指示し、来訪者のモニタ映像をテレビ画面上で確認する。当然ながら、デジタルテレビ受信機21がOFF状態にある場合には、放送チャンネルの選択の前に、デジタルテレビ受信機21をON状態に起動する。このように来訪者を音声だけでなく映像で確認した後、共同玄関のドアを解錠する(すなわちオートロックを解除する)よう指示することができる。
図3に、本実施の形態におけるカードアダプタ24の外観構成の一例を示す。この例におけるカードアダプタ24は、ICカード26を収納するスロット24g、および必要な回路を構成する電子部品を搭載した回路基板(図示せず)を内蔵したアダプタ本体部24aと、デジタルテレビ受信機21の同様なスロット21aに装着されるカード状接続部材24dとにより構成される。ICカード26を収納するICカード用スロット24gはカードアダプタ24のユーザが着脱する必要はないので、アダプタ本体部24aの内部に閉鎖的に収納されてもよい。この代わりに、ユーザが着脱できるように、その一部が露出した状態で収納されてもよい。この例では、回路基板上に、部屋番号データを格納した部屋番号記憶部(メモリ)31として不揮発性記憶媒体(例えばEEPROMやフラッシュメモリ)が搭載されている。
本来であれば、デジタルテレビ受信機21のスロット21aにはICカード26が直接実装されるが、本発明ではICカード26はカードアダプタ24を介してデジタルテレビ受信機21に実装される。アダプタ本体部24aには、電源コンセントに接続可能なプラグ付き電源ケーブル24fを介して電源が供給される。カード状接続部材24dとアダプタ本体部24aとはケーブル24bで相互に接続される。この例では、ケーブル24bにはコネクタ24cが付属し、このコネクタ24cを介してカード状接続部材24dに接続されるようになっている。但し、コネクタ24cは必須ではなく、ケーブル24bはカード状接続部材24dに直付けされてもよい。カード状接続部材24dには、ICカード26と同じ箇所に同じ電気接点24eが形成されている。アダプタ本体部24aにカード状接続部材24dを直結することによりケーブル24bをなくした構成であってもよい。
図4は、送出装置14の内部構成を表したブロック図である。この送出装置14は、主として、映像(音声)ストリームの独自暗号化および送出という機能を有している。
送出装置14は、地上デジタル放送SI情報生成部140、映像・音声エンコーダ142、独自ECMパケット生成部143、スクランブル鍵生成部144、タイミング制御部145、マルチプレクサ146、スクランブラ147、OFDM変調器148、およびRFアップコンバータ149、独自EMMパケット生成部150、部屋番号データ保存部151、および排他的論理和部(XOR)152を備える。
地上デジタル放送SI情報生成部140は、地上デジタル放送に必要なPAT,PMT,SDT,BIT,TOT,NITなどのSI情報(付帯情報)を生成する回路である。このようなSI情報は制御装置16から設定することができる。SI情報は、地上デジタル放送SI情報生成部140からARIB(非特許文献1参照)に準拠したタイミングでTSパケットとして送出される。一般に、TS(Transport Stream)は放送や通信で使用することを目的として標準化された188バイト単位の固定長パケットデータであり、通常、映像、音声、データを含む。
モニタ映像の放送コンテンツの映像は映像・音声エンコーダ142で圧縮され、TSストリームに変換される。モニタ映像はモニタカメラ47から得られるものである。暗号化(スクランブル)された映像ストリームを復号(デスクランブル)するには、ECMパケットが必要となる。
ここで、放送コンテンツの受信を限定する一般の限定受信システム(CAS)について簡単に説明する。CASでは、暗号化された放送コンテンツを視聴する際に、マスター鍵(Km)と、ワーク鍵(Kw)と、スクランブル鍵(Ks)の3つの鍵が用いられる。マスター鍵はユーザ毎に配布される鍵であり、ICカードなどの情報媒体を用いてユーザに配布される。放送波にはEMM(Entitlement Management Message)と呼ばれる情報が定期的に出力される。EMMには、契約者としてのユーザ毎の契約情報(契約登録コード)、ワーク鍵等が含まれている。EMM内のユーザ毎の個別情報は暗号化され、マスター鍵で復号される。放送コンテンツは、ECM(Entitlement Control Message)と呼ばれる共通情報とともに送信される。ECMには、番組に関する情報やスクランブル鍵等が含まれている。ECMも所定の暗号方式で暗号化されており、ワーク鍵で復号することができる。ICカード26側では、ECMをワーク鍵で復号し、EMMに含まれる契約情報とECM内の情報とを照合し、視聴可能であればECM内のスクランブル鍵を用いて、テレビ受信機21にてコンテンツが復号(デスクランブル)される。
図5に、ARIBに規定されたECMセクションの構造を示す。ECMセクションは、1つのTSパケットに1つ含まれ、ECMセクションヘッダと、ECM本体と、セクションCRCからなる。ECM本体は、固定部と可変部と、改ざん検出部からなる。この「改ざん検出部」が本実施の形態における後述する「改ざん検出用CRC32」に該当する。固定部には、プロトコル番号、事業者識別情報、ワーク鍵識別情報、スクランブル鍵(ODD)、スクランブル鍵(EVEN)、判定タイプ、日時、録画制御情報が含まれる。プロトコル番号は、共通情報を処理するプロトコル番号である。事業者識別情報は、限定受信方式運用上の事業体を識別するコードであり、ワーク鍵識別情報と併せて、参照する個別情報を指定する情報である。ワーク鍵識別情報は、共通情報を復号化するためのワーク鍵を指定する情報である。スクランブル鍵(ODD)、スクランブル鍵(EVEN)は、ペアで送出される現在と次の2つのスクランブル鍵である。判定タイプは、無料、ディア、PPVなどの視聴判定のタイプを示す。日時は、視聴判定に使用する現在の年月日時分を示す。録画制御情報は、この番組の録画条件(録画可、不可、購入者のみ録画可)を示す情報である。ECMの可変部には、その共通情報の送信目的に応じた必要な機能情報が含まれる。本実施の形態の独自ECMでは、「プロトコル番号」は非独自ECMパケットのプロトコル番号と同じに設定するが事業体識別情報は任意でよい。ワーク鍵識別情報は、カードアダプタ内に複数のワーク鍵を保存してある場合にそのいずれを使用するかを指定するために用いられ、暗号化の対象とならない。なお、本発明においてワーク鍵はカードアダプタ内に予め保存しておいても、あるいは、独自EMMパケット生成部から生成されるEMMに含めておき、カードアダプタ24においてEMMからワーク鍵を抽出するようにしてもよい。
図6に、ARIBに規定されたEMMセクションの構造を示す。EMMセクションは、EMMセクションヘッダと、複数のEMM本体と、セクションCRCからなる。EMM本体は、固定部と可変部と改ざん検出部からなる。「カードID」はICカードを一意に識別するためのカード識別情報(例えばB−CAS番号)である。「関連情報バイト長」は、プロトコル番号から改ざん検出部までのバイト長を表す。「プロトコル番号」は、ICカード内処理機能および暗号アルゴリズム等を識別するコードである。「事業体識別」は限定受信方式運用上の事業体を識別するコードである。「更新番号」は、個別情報が更新する時に増加する番号である。「有効期限」は個別情報の有効期限を表す。可変部には各種の機能情報が配置可能となっている。EMMは、その配信先(ICカード)のマスター鍵Kmと同じ鍵で暗号化される。
ECMおよびEMMは所定の暗号方式(第1の暗号方式)で暗号化されているが、本発明では自主放送に利用するECM(独自ECM)の暗号化に前記所定の暗号方式と異なる暗号方式(第2の暗号方式)で暗号化を行う。第2の暗号方式はブロック暗号方式であるが、その具体的な暗号方式は特に限定するものではない。
独自EMMパケット生成部150は、暗号化した独自EMMパケットを生成し、所定時点でマルチプレクサ146へ出力される。本実施の形態における独自EMMの固定部の「カードID」にはカードアダプタを一意に識別するカード識別情報が設定される。各宛先毎の独自EMM本体の可変部には、本実施の形態において支障にならない所定のデフォルト値が設定される。
独自ECMパケット生成部143は、暗号化した独自ECMパケットを生成し、TSストリームとして、一定時間間隔(例えば100msec間隔)で出力する機能を有する。この独自ECMパケットは図5に示したECMセクションの全体に相当する。スクランブル鍵ひいてはECMパケットは、より長い一定時間間隔(ここでは2秒)毎に更新される。そのために、図7に示すように、本実施の形態では予め所定時間分(本例では1日分)の時系列のECMパケットの列を生成してメモリにデータテーブル50として記憶しておく。そのようなメモリとして、本実施の形態ではフラッシュメモリ(例えばSDメモリ)等の不揮発性の記憶媒体を利用する。この記憶媒体には、スクランブル鍵生成部144として、各ECMパケットに対応するスクランブル鍵(ODD/EVENキー)も併せて(スクランブル鍵と独自ECMとの対を時系列で)データテーブルとして記憶する。ECMパケットが188バイト、ODD/EVENキーが16バイトなので、1時点のデータ量は204バイトとなり、2秒毎の場合の1分のデータ量は6120バイト、1日のデータ量は8.8MBとなる。記憶媒体に記憶するデータ量は、1日分としたが、必ずしも1日分に限るものではない。記憶する時間長は長いほど、セキュリティ上有効と考えられるが、本発明は1日より短い時間を排除するものではない。
このようなECMパケット列はランダム自動生成により行うことも可能である。但し、その場合、送出装置におけるECMパケット列の生成アルゴリズムから、その復号のアルゴリズムが解明される危険性がある(例えば送出装置が盗難にあったような場合)。暗号化したECMパケットをメモリに記憶して用いる場合には、暗号化の結果データのみの利用なのでそのような危険性が解消される。
図4に戻り、タイミング制御部145は、ECMパケット、スクランブル鍵、および、部屋番号データ(ROOM_DATA)の送出のタイミングを制御する。具体的には、2秒毎の時刻に対応して定義されたテーブルの中からある時間のEVEN/ODDキーを取り出し、それをスクランブラ147に設定するようにスクランブル鍵生成部144を制御する。同時に、EVEN/ODDキーと対の形で定義されたECMパケットを取り出し、TSストリームとして出力するよう独自ECMパケット生成部143を制御する。前述のようにECMパケットは100mSごとに繰り返し出力する。
部屋番号データ保存部151には制御装置16からデータが設定される。来訪者のない通常状態では、その集合住宅に存在しない部屋番号データ(たとえば0データ)が設定される。来訪者が訪問先の部屋番号を入力したとき、その部屋番号データ(ROOM_DATA)が部屋番号データ保存部151に一時的に設定される。独自ECMパケット生成部143は、また、後述する本発明の変形例において、部屋番号データ保存部151から部屋番号データを受信し、生成するECMパケットの可変部に当該部屋番号データを格納する。但し、このECMパケットの可変部に当該部屋番号データを格納することは本発明において必須ではない。所定の時点での部屋番号データはまた元の通常状態での部屋番号データ(たとえば0データ)に戻される。
スクランブル鍵生成部144から出力されるスクランブル鍵Ksと部屋番号データ保存部151から出力される部屋番号データROOM_DATAとは、排他的論理和部152で処理され、スクランブラ147へ、変換された(いわば暗号化された)スクランブル鍵Ks'が供給される。スクランブラ147では、この変換後のスクランブル鍵Ks'で放送コンテンツの暗号化が行われる。一方、ECMパケットでテレビ受信機21へ送出されるスクランブル鍵Ksは変換前のものなので、カードアダプタ側では、受信したスクランブル鍵Ksを部屋番号データで同様に変換してスクランブル鍵Ks'を生成することが必要となる。その具体例については後述する。
各部で生成されたTSストリームはマルチプレクサ146で多重化される。多重化されたストリームのうち、映像(音声・データも含みうる)のストリームは、排他的論理和部152から与えられた、部屋番号データ(ROOM_DATA)で変換されたスクランブル鍵Ks'によりスクランブラ147で暗号化される。SI情報やECMはスクランブラ147による暗号化(スクランブル)の対象とはならない。スクランブラ147は、MULT2と呼ばれる暗号方式でスクランブルを行う。MULTI2は、日本のデジタル放送用限定受信方式(B−CAS)の標準暗号として採用された暗号方式である。暗号化されたストリームを含むTSストリームはOFDM変調器148で地上デジタル放送信号として変調され、RFアップコンバータ149によりRF信号(UHF信号)に変換され、RF出力される。このRF出力するチャンネルとしては、地上デジタル放送の空きチャンネルを選択する。
図8は、図1の放送受信システム20内に示した、本実施の形態におけるデジタルテレビ受信機21とカードアダプタ24の内部構成の一例を示す図である。このカードアダプタ24は、例えば、図3で説明したような、部屋番号データを不揮発的に記憶するメモリに対応する部屋番号記憶部31を内蔵している。
デジタルテレビ受信機21は、チューナ部211、デスクランブラ212、デマルチプレクサ213、映像・音声デコーダ214、入出力(I/O)部215、制御部216、CAS処理部217、表示処理部218、赤外線(Ir)受信部219、表示制御部220、表示部221、音声処理部222、およびスピーカ223を備えて構成される。
チューナ部211は、デジタルテレビ受信機21が受信したRF信号の中から選択したチャンネルの放送コンテンツを抽出する部位である。デスクランブラ212は、MULTI2暗号方式による暗号化(スクランブル)された放送コンテンツを復号(デスクランブル)する部位である。この復号のための鍵は、ICカード26またはカードアダプタ24から、後述するCAS処理部217経由で与えられる。
デマルチプレクサ213は、多重化されたストリームを分離し、復号された放送コンテンツの中の映像・音声と、データ放送コンテンツ(存在すれば)とを抽出する部位である。映像・音声デコーダ214は、分離された映像および音声をデコードして復元するMPEG2デコーダ等のデコーダである。デマルチプレクサ213で抽出されたSI情報は制御部216に送出される。次に、SI情報のうち、EMMとECMパケットなどがCAS処理部217に送出される。ECMパケットはSI情報の1パケットである。制御部216からCAS処理部217へは、図5に示したECMパケットの本体部のみが送出される。
CAS処理部217は、カードアダプタ24およびICカード26との間でコマンドおよびレスポンスの処理を入出力(I/O)部215を介して行うとともに、デスクランブラ212に与えるスクランブル鍵の抽出処理を行う部位である。
制御部216は、デマルチプレクサ213から抽出したセクション情報とBMLデータの取り込み、ならびに デジタルテレビ受信機21の各部の制御および必要な処理を実行する部位であり、周辺回路を内蔵したCPUおよびメモリ等により構成される。
表示処理部218は、制御部216の制御下で、デマルチプレクサ213で分離されたBMLデータストリームに基づくデータ放送表示画面および映像・音声デコーダ214から得られた映像信号を合成して表示する処理を行う部位である。表示処理部218は、より具体的にはBMLデータの表示、EPG表示、チャンネル、音量などを含むメニュー表示を行う。
表示制御部220は、映像・音声デコーダ214からの映像信号に基づく映像および表示処理部218からの表示信号に基づく画像の表示を行うよう表示部221を制御する部位である。表示部221は液晶、プラズマ、有機EL等の表示デバイスである。
赤外線受信部219は、TVリモコン22等からの赤外線コマンドを受信して制御部216へ送る部位である。
音声処理部222は、映像・音声デコーダ214から得られた音声信号に基づいてスピーカ223を駆動する部位である。
なお、このようなデジタルテレビ受信機21の構成としては既知のものを利用することができる。
カードアダプタ24は、アナログスイッチ241、アナログスイッチ242、アダプタ制御部(アダプタ制御手段)243、および部屋番号記憶部31を備えて構成される。
アナログスイッチ241は、デジタルテレビ受信機21のI/O部215とICカード26との間の通信経路を選択的に導通/遮断するよう接続/切断される第1のスイッチである。アナログスイッチ242は、アナログスイッチ241と相補的に導通/遮断の動作を行うよう接続/切断される第2のスイッチである。アダプタ制御部243は、ICカード26とデジタルテレビ受信機21のI/O部215との間の通信経路、より具体的にはアナログスイッチ241とICカード26の間の通信経路に接続される。通常のデジタル放送を受信しているときには、アナログスイッチ241が接続状態でアナログスイッチ242は切断状態にあり、テレビ受信機21とICカード26との間は導通している。
通常のデジタル放送で使われるECMパケットは、B−CAS標準規格における所定の暗号方式で暗号化されているので、アダプタ制御部243のプロセッサ244は理解できないため、何も反応しない。理解できないとは、ECMパケットの暗号をカードアダプタ24の独自の暗号で解こうとするが、改ざん検出用CRC32(図5のECM本体の「改ざん検出」)の判定値が非改ざんを示す所定値(例えば0)と一致しないため、自身が処理するECMパケットではないと判断するということである。もし、独自暗号で暗号化されたECMを含むデータがICカード26への通信経路に送出されると、同様に暗号を解いて、改ざん検出用CRC32判定値をチェックする。この場合はCRC32判定値が上記所定値に合致するので、独自暗号であると判断する。
図9により、カードアダプタ24におけるECMおよびEMMを用いたスクランブル鍵の生成の処理例について説明する。この図は各部の機能をブロックで表したものである。図9に示した各部の機能の実現はハードウェア、ソフトウェアを問わない。この処理例では、基本的に、訪問先以外の住戸でのモニタ映像放送コンテンツの視聴制限を行うものとする。すなわち、所定の部屋番号を割り当てられたカードアダプタ24が装備されたデジタルテレビ受信機についてのみ、送出装置14から出力されたモニタ映像放送コンテンツの視聴が許可される。
カードアダプタ24のアダプタ制御部243は、独自ECM判定処理部244bにより、独自ECMを受信したと判断したとき、復号処理部244eにより、上記マスター鍵Kmに基づいて、独自EMMから得られたワーク鍵(Kw)により復号する。代わりに、ワーク鍵Kwはカードアダプタ24の内部に予め保持しておいたものを利用してもよい。その場合、復号処理部244eはなくてもよい。ついで、復号処理部244aにより、独自ECMをワーク鍵(Kw)により復号して当該スクランブル鍵(Ks)を抽出する。このスクランブル鍵(Ks)は、排他的論理和部244cの一方の入力端に入力される。
排他的論理和部244cは、部屋番号記憶部31からの部屋番号データ(ROOM_DATA)と、復号処理部244aからのスクランブル鍵(Ks)との排他的論理和出力を生成する。ECMから抽出されたスクランブル鍵Ksは、送出装置14(図4)の独自ECMパケット生成部143から出力された変換前のスクランブル鍵Ksである。このスクランブル鍵Ksは、有効な部屋番号データに基づいて、送出装置14のスクランブラ147で用いられたスクランブル鍵Ks'と同じものに変換される。この変換されたスクランブル鍵Ks'は、スイッチ242を介してデジタルテレビ受信機21へ送出され、デスクランブラ212に入力される。このとき、第1のスイッチであるアナログスイッチ241は切断され、遮断状態となる。
カードアダプタ24のアダプタ制御部243は、独自ECM以外のECMを受信したと判断したときは、第1のスイッチであるアナログスイッチ241を介してICカード26からデジタルテレビ受信機21に対して送出されるスクランブル鍵(Ks)を導通させる。このとき第2のスイッチであるアナログスイッチ242は遮断状態のままとする。
ICカード26側では、従来のとおり、復号処理部262によりEMMをマスター鍵(Km)で復号してワーク鍵(Kw)と契約情報とを出力する。また、復号処理部261によりECMをワーク鍵(Kw)で復号してスクランブル鍵(Ks)と番組属性情報を出力する。条件判定処理部263により、EMMに含まれていた契約情報とECM内の番組属性情報とを照合し、照合の結果、視聴可能と判定されればスイッチ264を閉じて、ECMから得られたスクランブル鍵(Ks)をデスクランブラ212へ出力する。なお、ICカード26が、本発明における独自ECMを復号したときは、その改ざん検出により正規のECMではないと判断され、有効なスクランブル鍵は抽出されない。(有効なEMMも存在しないので、有効なワーク鍵も抽出されない。)
このように、本発明ではモニタ映像放送コンテンツのストリームに対して独自のスクランブル鍵で暗号を掛ける。その際、既存のICカード26と共存するような構成のカードアダプタ24を追加することにより、モニタ映像放送コンテンツの暗号化を可能とするとともに、低コストで且つ信頼性の高いインターフォンシステムを提供することができる。また、住戸識別情報(部屋番号)の利用によりモニタ映像放送コンテンツの受信制限の解除を特定の住戸に限ることが可能となる。
なお、図9で説明したようなEMMとECMに基づき、部屋番号データに応じて有効または無効なスクランブル鍵(Ks')が得られるならば、上記処理例を実現するための構成は図9に示した構成に限定されるものではない。
図10に、図9のカードアダプタ24の変形例としてのカードアダプタ240の機能を示す。図10において、図9に示したと同様の要素には同じ参照番号を付して、重複した説明を省略する。このカードアダプタ240は、上述したように、EMMパケットの可変部に、来訪者が指定した部屋の部屋番号データが格納されていることを前提としている。ECMに含まれる部屋番号データは復号処理部244aで抽出され、比較器244dにおいて、部屋番号記憶部31からの部屋番号データROOM_DATAと比較される。この比較器244dの出力に応じて、スイッチ244g(ここではSPDTスイッチ)が切替制御される。スイッチ244gは、比較器244dの出力に応じて、排他的論理和部244cから出力されたスクランブル鍵(Ks')または記憶部244fに予め格納されたゼロデータ(予め設定した固定データ)を、選択的にスイッチ242(ひいてはデスクランブラ212)へ導通させる。図9のカードアダプタ24の構成では、受信したECMが独自ECMであると判定されたとき、無条件で、排他的論理和部244cから出力されたスクランブル鍵(Ks')をデスクランブラ212へ供給した。これに対して、図10のカードアダプタ240では、受信したECMが独自ECMであると判定されたときであっても、その独自ECMが自カードアダプタ宛てのものであるかどうかを判定し、自カードアダプタ宛てでなければ、ゼロデータをデスクランブラ212へ供給するようにした。これにより、独自ECMが自カードアダプタ宛てのものでない場合に、非正規のスクランブル鍵(Ks')がデスクランブラ212に供給されることによるデスクランブラ212の予期しない誤動作を未然に防止することができる。
なお、部屋番号記憶部31は、上述したようにそのカードアダプタが利用される住戸の部屋番号データを不揮発性記憶媒体に予め記憶させておいたものでよいが、ICカード26とともにデジタルテレビ受信機21に対して接続されたときに制御装置16から初期設定するものであってもよい。その場合、送出装置14から、例えばEMMの可変部にICカード26のカードIDとともに部屋番号データを格納して送信し、受信した各カードアダプタは自身の接続されたICカード26のカードIDとEMMから抽出されたカードIDとを比較し、両者が一致したときそのカードIDに付随した部屋番号データを部屋番号記憶部31に記憶させる。各住戸の部屋番号とカードIDとの対応関係は予め既知の情報として、例えばデータテーブルとして制御装置16に保存しておく。
次に、図11に、ある住戸60におけるデジタルテレビ受信機21とカードアダプタ24とICカード26の間の通信シーケンスを示す。この図11に示したシーケンスは、通常の放送のチャンネルが選択されている場合のシーケンスである。
テレビ受信機21は、ICカード26の装着を検出すると(S11)、ICカード26に電源を供給する(S12)。同時に、所定の周波数(例えば4MHz)のクロックを供給し(S13)、ICカード26の回路が安定化するための時間(安定時間)の経過後に、ICカード26の初期的なリセット状態を解除する(S14)。
ICカード26は、リセット解除後、ATR(Answer To Reset)として、ボーレート、クロック周波数、タイムアウトなどの基本通信情報をテレビ受信機21に返答する(S31)。テレビ受信機21は、ATRの応答を受信し(S15)、それに基づいたフォーマットでシリアルデータのやり取りを開始する。B−CASの場合は、最初にバッファーサイズの設定変更をする。
その後、テレビ受信機21は、初期設定コマンドを発行する(S16)。これに対して、ICカード26は、自身のカードID、および、MULTI2暗号に使うシステムキーやイニシャルデータを返信する(S32)。
テレビ受信機21は、インターフォンのモニタ映像の放送チャンネルが選択された場合、そのチャンネルに同調した後、EMMパケットを受信し、カードアダプタ24に対して、その可変部のEMM_DATAを含むEMMコマンドを送信する(S17)。ICカード26はEMMコマンドを受信して、これを正しく復号する(S33)。
テレビ受信機21は、さらに、ECMパケットを受信すると、一定時間間隔で、ICカード26に対して、暗号化されたECMパケットを含むECMコマンドを発行する(S17)。このECMコマンドは、当該ECMの復号により抽出されたスクランブル鍵の返送を要求するコマンドである。ICカード26は、ECMコマンドを受領してECMを復号する(S34)。番組再生がイネーブルされている場合(すなわち上述した条件判定処理部263の判定条件が満足された場合)には、MULTI2暗号に必要なスクランブル鍵として、ODD/EVENキーを返送する(S35)。番組再生が禁止されているとODD/EVENキーを全て0(ゼロ)にして返送する。このようなスクランブル鍵はアナログスイッチ241を経由してテレビ受信機21へ伝達される。
この際、カードアダプタ24は、ECMパケットを傍受してその復号を行う(S21)が、上述したCRC32判定値が上記所定値に合致しないので、アナログスイッチ241,242の切替は行わない。
以後、ECMコマンドが発行される毎に(S19,…)、同様の処理が繰り返し実行される(S22,S36,S37,…)。
図12は、図11と同様、本実施の形態におけるデジタルテレビ受信機21と、カードアダプタ24とICカード26の間の通信シーケンスを示す。この図12のシーケンスは、インターフォンのモニタ映像の放送チャンネルが選択されている場合、すなわち、送出装置から独自ECMとともにモニタ映像放送コンテンツが送出された際に、カードアダプタ24がスクランブル鍵(Ks')をテレビ受信機21へ返送することができる場合のシーケンスである。図11に示したステップと同様のステップには同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。すなわち、ステップS11〜S19、S21〜S22、S31〜S37は図11の場合と同様である。
ステップS21では、ECMパケットの復号がOK、すなわち、上述したCRC32判定値が上記所定値に合致する。そこで、アナログスイッチ242を接続し、アナログスイッチ241を遮断するよう、両アナログスイッチの切替を行う(S211)。これにより、ICカード26からの返答は遮断され、代わりに、カードアダプタ24が独自のスクランブル鍵(Ks')を返送する(S212)。すなわち、この復号により得られたスクランブル鍵(ODD/EVENキー)がテレビ受信機21へ返送される。この際、来訪者が指定した住戸の部屋番号に合致した住戸のカードアダプタ24のみが当該テレビ受信機21へ有効なスクランブル鍵を返送する。他の住戸のカードアダプタ24が当該テレビ受信機21へ返送するスクランブル鍵は無効データである。上述した図10のカードアダプタ240を用いる場合には、独自ECMのECMコマンド内に、来訪者の指定した住戸の部屋番号データが格納されている。カードアダプタ240は、自身宛でない独自ECMを受信したときには、スクランブル鍵Ks'の無効データとしてゼロデータをデジタルテレビ受信機21へ返送する。その後、アナログスイッチ241を接続し、アナログスイッチ242を遮断するよう、両アナログスイッチを元の状態に戻す切替が行われる(S213)。以後のステップS22の後のS221〜S223等についても同様である。
インターフォンのモニタ映像の放送チャンネルが選択されている場合、テレビ受信機21から発行されたECMコマンドは独自の暗号方式により暗号化されているため、ICカード26は自身の暗号方式で復号しても(S34、S36)、有効なスクランブル鍵は得られない。すなわち、ICカード26におけるステップS35,S37では、直前のステップでのECMパケットの復号がNGなのでスクランブル鍵としてゼロデータを出力する。(いずれにせよ、このゼロデータは、この時点でスイッチ241が遮断されているのでテレビ受信機21には到達しない。)
図13は、カードアダプタ24の処理フローを表したフローチャートである。この処理は、カードアダプタ24のプロセッサ244が実行する。
電源とクロックが供給されて、リセット解除になると、すぐに、ICカード26のシリアルI/Oの監視を開始し、シリアルメッセージを取得、すなわちシリアルデータを受信する(S41)。メッセージの長さが正しいものを受信すると(S42,Yes)、そのメッセージを解析する(S43)。そのメッセージがECMコマンドの場合には(S44,Yes)、受領したデータの暗号を解読し(S45)、改ざん検出用CRC32ビットをチェックする(S46)。
その暗号が独自暗号の場合にはCRC32判定値が0すなわち「改ざんなし」となり(S47,Yes)、カードアダプタ宛のECMコマンドであると判断する。そうでない場合は、ICカード26に対するECMコマンドなので、以降のステップを実行することなく最初のステップS41へ戻る。
独自暗号で暗号化されたECMコマンドの場合には、アナログスイッチ241を遮断するとともにアナログスイッチ242を接続して、当該ECMから抽出した独自のスクランブル鍵のシリアルTx出力を可能とする。次に、所定時間待機する(S49)。この例では、ICカード26からの返答を2キャラクタ分待つ。所定時間待機する理由は、返答するキャラクタのタイミングを間違ったり、アナログスイッチ241,242の遮断・接続タイミングによる無意味なデータの返答をしないためである。
ついで、独自のスクランブル鍵(Ks')としてのODD/EVENキーをシリアル出力する(S50)。共同玄関で入力された部屋番号と一致した部屋番号データを保存したカードアダプタ24が装備されたテレビ受信機21では、当該放送コンテンツの正常な復号がなされ、暗号化されたモニタ映像の放送コンテンツに対する復号が正しく行われることにより視聴制限が解除される。それ以外のテレビ受信機21では当該放送コンテンツの正常な復号がなされないので、視聴制限は解除されない。独自のスクランブル鍵の出力を終了すると、アナログスイッチ241,242の状態を元に戻して(S51)、テレビ受信機21とICカード26のシリアルI/O経路を接続する。その後、最初のステップS41へ戻る。
前記メッセージがECMコマンドでない場合には(S44,No)、最初のステップS41へ戻る。
第1の実施の形態によれば、集合住宅における既存の放送配信システムと既存の音声専用のインターフォンシステムに若干の変更を加えることにより、モニタ映像付きのインターフォンシステムを安価に構築することができる。
次に、図14に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図1に示した要素と同様の要素には同じ参照番号を付して、重複した説明は省略する。第1の実施の形態では、共同玄関インターフォン装置40と住戸内インターフォン装置との間の伝送線と、放送配信システム10と放送受信システム20との間の伝送線とを別個独立のものとした。これに対して、第2の実施の形態では、放送配信システム10と放送受信システム20aとの間の伝送線を、インターフォンの制御および音声の通信に共用するものである。
そのために、住戸内インターフォン装置80a内にワンセグチューナ86およびRF出力部89を設けるとともに、インターフォン処理部81内には音声デコーダ87(ここではAAC(Advanced Audio Coding)デコーダ)を設けている。音声デコーダ87は、共同玄関インターフォン装置40のマイク43で取得され、送出装置14でワンセグ放送コンテンツの一部として送信されてきた音声信号を復号化する機能を有する。RF出力部89は、インターフォン処理部81から共同玄関インターフォン装置40への音声信号および制御信号を伝送線に載せるために、所定の変調および周波数アップコンバートを行って、それらの信号をRF信号に変換する。
「ワンセグ」とはワンセグメントの略称であり、「ワンセグ放送」とは、地上デジタル放送の1チャンネルの周波数帯域の全13セグメントのうちの1セグメントを利用した、移動体向けの放送である。
住戸から共同玄関へ向かう経路(アップリンク)において、住戸内インターフォン装置80a内で発生した、インターフォン処理部81から共同玄関インターフォン装置40への音声信号および制御信号は、RF出力部89でRF信号に変換し、双方向RFアンプ61を介して、放送配信システム10へ送信する。ここでの「音声信号」は訪問先の住戸60内の音声(居住者の音声)であり、マイク82から入力された信号である。ここでの「制御信号」は例えば、共同玄関のドア駆動装置41の解錠指示であり、インターフォンリモコン85から入力されたユーザの指示である。このRF信号は、放送配信システム10内に設けた双方向RFアンプ17で受信され、共同玄関インターフォン装置40内に設けた復調器48で復調されて、インターフォン・オートロック制御部42へ入力される。
なお、本実施の形態では、共同玄関から住戸へ向かう経路(ダウンリンク)の音声信号(共同玄関に設置されたマイク43で取得された来訪者の音声信号)および制御信号は、送出装置14から、モニタ映像の放送チャンネルと同チャンネルのワンセグ放送チャンネルのトランスポートストリームの未使用領域に格納されて、二つの双方向RFアンプ17,61を介して、住戸内インターフォン装置80aに伝送される。この音声信号は、ワンセグチューナ86で抽出され、インターフォン処理部81で処理されてスピーカ83から出力される。
デジタルテレビ受信機21の地上デジタル放送受信機能はいわゆるフルセグ(フルセグメント)放送を対象としたものを想定しており、モニタ映像は非ワンセグの放送コンテンツとして送出される。本発明は、ダウンリンクの音声信号をワンセグ放送コンテンツとして送出することに限定されるものではないが、この構成により、住戸内インターフォン装置80a内に設けるワンセグチューナ86がフルセグチューナに比べて簡易かつ安価に用意できる。
ダウンリンクの「制御信号」は、本例では、特定のチャンネルのワンセグストリームのプライベートTS信号に、来訪者が入力した部屋番号データを含む報知音生成コマンドを重畳したものである。この部屋番号データを含む報知音生成コマンドは、当該特定のチャンネルについて常時動作状態のワンセグチューナ86が受信したとき、インターフォン処理部81aが、その部屋番号データを自住戸の部屋番号データと比較して、両者が一致したときに、所定の報知音をスピーカ83から発生する。自住戸の部屋番号はカードアダプタ24内の部屋番号記憶部31に記憶されたものを利用する。住戸インターフォン装置が自住戸の部屋番号を確認するために、住戸内インターフォン装置80aのユニット内にカードアダプタ24を収容し、カードアダプタ24の部屋番号記憶部31から読み出された部屋番号データを利用する構成とした。これに代えて、初期的に住戸インターフォン装置内の不揮発性記憶媒体(図示せず)に部屋番号を記憶させておいてもよい。この場合、カードアダプタ24を住戸インターフォン装置に接続する必要はない。
この第2の実施の形態によれば、従来の共同玄関インターフォン装置40と住戸内インターフォン装置との間の独立したインターフォン専用の伝送線を削除することができる。
図15に、住戸内インターフォン装置80aのインターフォン処理部81の処理例を表したフローチャートを示す。
まず、ワンセグチューナ86の出力から部屋番号データが抽出されたか否かを監視する(S60)。この抽出された部屋番号を自アダプタの部屋番号と比較する(S61)。両部屋番号が一致しなければ、ステップS61へ戻る。両部屋番号が不一致であれば(S62,No)、ステップS61へ戻る。両部屋番号が一致すれば(S62,Yes)、報知音をスピーカ83から発生させる(S63)。通話/終話ボタン851(図2)が押されたかどうかを監視する(S64)。
通話/終話ボタンが押されたことが検出されたとき(S64,Yes)、報知音を停止するとともに、音声デコーダ87を動作させることにより、来訪者と居住者との間の通話をイネーブル(能動化)する(S65)。その後、解錠ボタン852(図2)が押されたか否かを監視する(S66)。
解錠ボタンが押される前に通話/終話ボタンが押されたことが検出されたとき(S67,Yes)、音声デコーダ87の動作を停止させることにより通話をディスエーブル(不能化)する(S68)。
解錠ボタンが押されたことを検出されたとき(S66,Yes)、解錠信号を出力する(S69)。ついで、通話をディスエーブルする(S70)。その後、解錠信号の出力時点から所定時間の経過を待って(S71)、RF出力部89を介して放送配信システム10および共同玄関インターフォン装置40へ施錠信号を出力する(S72)。なお、一旦、解錠された後、所定時間の経過後に自動的に施錠されるような機能が共同玄関インターフォン装置(インターフォン・オートロック処理部)に備わっている場合には、ステップS71,S72はなくてもよい。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも、種々の変形、変更を行うことが可能である。
例えば、本発明のインターフォンシステムが導入される施設として集合住宅を挙げたが、共同玄関と複数の居室との間の関係が同じであれば、集合住宅以外の任意の施設に適用することができる。共同玄関の音声は、マイク43から取得される音声に代えて、または、これに加えて、モニタカメラ47で映像とともにカメラ付属のマイクで音声を取得するようにしてもよい。
住戸内インターフォン装置におけるユーザの指示はインターフォンリモコン85で行う例のみを示したが、本発明は、通話/終話ボタンおよび解錠ボタンが住戸内インターフォン装置に固定的に配置されている構成を排除するものではない。
TVリモコン22等による、来訪者のモニタ映像チャンネルの選択指示の際、単にチャンネルの切り替え指示を行うと、その時点でユーザがテレビ受信機において何らかの放送チャンネルを視聴中であった場合に、その視聴中の番組が一時的に見られなくなる。この問題を解決するために、例えば、テレビ受信機の画面を複数のエリアに分割して、分割エリアに別々の放送チャンネルを割り当てるいわゆる画面分割表示の機能を用いることも可能である。このような場合、上述したリモコン85bにおいて、モニタボタン854の機能として、画面分割の指示を出力した後、第2の分割エリアに来訪者のモニタ映像チャンネルを割り当てる指示を行うものとしてもよい。また、居住者によりインターフォンリモコン85からオートロック解除指示があったとき、画面分割表示を止めるリモコン指示を出力する。これにより、テレビ受信機は、元の視聴チャンネルの映像が画面全体に表示される状態に戻る。