JP5316960B2 - 靴底 - Google Patents

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本発明は、靴底に関する。特に、本発明は、通常の歩行状態から、瞬間的に走行状態に切り替える際、爪先部による蹴上げ動作による力が効率良く地面に伝達し、且つ、蹴上げ及び着地時の足裏に対する負荷を最小限にした靴底に関する。
本発明の靴底は、足全体を覆う胛皮を備えた、いわゆる「靴」、及び足全体を覆う胛皮を備えていない、いわゆる「サンダル」にも適用される。
短距離競技を専門にする人でなくても、年齢、性別、職業に関わりなく、例えば、散歩等通常の歩行(ウオーキング)状態、或いは軽いジョギング中に、最大限の瞬発力で走行(ランニング)状態に切り替えることが必要な場合があり、また、敢えてそのようなインターバル練習をすることがある。インターバル練習の場合は、歩行・走行と、予めプログラムを想定するので、筋肉、骨格等に予測不可能な負荷が瞬間的にかかることは余りない。然しながら、散歩等通常の歩行(ウオーキング)状態から突発的に最大限の瞬発力で走行(ランニング)状態に切り替えた場合には、筋肉、骨格等に予測し得ない負荷が瞬間的にかかることがあり、思わぬ事故につながることがある。
従来、専門家が使用するランニングシューズ、或いはウオーキングシューズ、もしくはジョギングシューズ等分野別の靴の開発は盛んになされてきた。然しながら、ウオーキングもしくはジョギング中に、前述したように瞬間的に全速でランニングに切り替えることを想定した靴の開発はなされていない。
特許文献1は、ランニングシューズ、例えば、100m競争や走り幅跳びの助走のように瞬発的スピードを要求される種目に用いるランニングシューズの靴底を記載している。特許文献1が記載する靴底はランニングシューズ用であるので、当然、靴底にスパイク(3)及び突起体(11)を設けることを必須の構成成分としており、踏みつけ部領域(B)に嵌挿して固定される補強部材(4)は、外側リブ部材(5)と内側リブ部材(6)を一体として具備する構造である。
特許文献1の[0017]には、概略「〜〜〜補強部材と連続し土踏まず部領域に設けた外側リブ部材と内側リブ部材が地面に接して靴底の踵部領域の下降を制御すると共に体重の負荷を受け止め靴底の変形を予防し靴底のスムーズな転動を促しブレーキ局面における疾走力の低下を防止する。〜〜〜外側リブ部材と内側リブ部材が足の外側部から内側部を経て前方部に至る転動を効率良く助長して疾走力の低下を防止する効果を有する。」と記載されている。この記載からも明らかなように、特許文献1に記載されたランニングシューズは、疾走力の低下の防止を目的とするものである。従って、特許文献1が記載する靴底は、年齢、性別、職業に関わりなく、例えば、散歩等通常の歩行(ウオーキング)、或いは軽いジョギング等日常使用する靴には不適当である。
特許文献2は、アウトソール(1)とアウトソール(1)の上部に結合されたミッドソール(1’)とで構成され、あるいはアウトソール(1)のみで構成され、靴(3)のつま先部に対応する先端部が先端上方向に向けて所定の傾斜角度(α)で形成さている靴底において、アウトソール(1)及びミッドソール(1’)先端部が先端上方向に向けて5度乃至20度の傾斜角度を維持できるように、先端部が先端上方向に向けて5度乃至20度の傾斜角度を有する弾性板(2)が、アウトソール(1)又はミッドソール(1’)の先端部内部に埋め込まれている靴底を開示している。特許文献2の図1を参照すると、弾性板(2)は、つま先から足裏のほぼ2/3程度の全面に亘って配設されており、且つ弾性板(2)自体が、その先端部が先端上方向に向けて5度乃至20度の傾斜角度を有しているので、歩行している間、強制的に足が、5度乃至20度先端上方向に向けて傾斜する構造になっている。従って、その構造上、ウオーキングもしくはジョギング中に、前述したように瞬間的に全速でランニングに切り替えることを想定した靴底ではない。事実、特許文献2は[0037]に、その主要な用途として、登山靴、工場労働者、医師、看護婦等長時間労働に携わる労働者に適していると記載している。
特許文献3は、靴底のフマズ面の外方に3本の突条を平行に設け該3本の突条の高さを内方より外方に漸増して最外方の突条の高さを踵面の突起及び爪先面の突起とほぼ一様な高さとなしたる運動靴の構造を記載している。この運動靴は、撓みや角を生じないために肉刺の虞れなく、又甲被に対する張力は平均するために破損少なく、長時間及び長期間の運動競技に適するものとしている(特許文献3右欄第16〜19行)。従って、その構造上、ウオーキングもしくはジョギング中に、前述したように瞬間的に全速でランニングに切り替えることを想定した靴底ではない。
特許第2871537号特許公報 特開平11−32806号公報 実用新案出願公告昭30−2642号公報
発明が解決しようとする第1の課題は、通常の歩行状態から、瞬間的に走行状態に切り替える際、爪先部による蹴上げ動作による力が効率良く地面に伝達し、且つ、蹴上げ及び着地時の足裏に対する負荷を最小限にした靴底及びそのような靴底を有する靴を提供することである。
発明が解決しようとする第2の課題は、短距離競技を専門にする人でなくても、年齢、性別、職業に係わりなく、例えば、散歩等通常の歩行(ウオーキング)状態、或いは軽いジョギング中に、最大限の瞬発力で走行(ランニング)状態に切り替える際、筋肉、骨格等に余計な負荷をかかることなく、爪先部による蹴上げ動作による力を効率良く地面に伝達させ、且つ、蹴上げ及び着地時の足裏に対する負荷を最小限にした靴底及びそのような靴底を有する靴を提供することである。
発明が解決しようとするその他の課題は、以下逐次明らかにされる。
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
1.通常の歩行或いはジョギング中に、足部骨格、筋腱、靭帯、アーチ等に余計な負荷をかけることなく、運動生理学上効率よく、最大限の瞬発力で走行状態に切り替えることを可能にする靴底であって、靴底が爪先の先端に向けて立ち上がる点と爪先の先端を結んだ線と地面が形成する角度(θ)を5〜30度の範囲に設定し、靴底の内部において、第1中足骨頭の種子骨に対応する箇所に、デュロメータ硬度計で80〜90度(JAタイプ)の弾性プレートを挿入したことを特徴とする靴底。
2.上記1項において、弾性プレートの地面側の表面に、デュロメータ硬度計で50〜70度(JAタイプ)で底部に突起を有するクッション部材を積層一体化する。
3.上記1項において、弾性プレートを、本体部と、本体部と連続していて本体部の両端部に地面方向へ垂下して突設された垂下部とから構成し、前記弾性プレートの本体部及び前記垂下部とが形成する凹陥部内に、前記底部に突起を有し、前記凹陥部と同一形状のクッション部材を収納し、接着・一体化する。
4.上記1〜3のいずれか1項において、弾性プレートが硬質ポリプロピレン、硬質ナイロン、熱可塑性ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択された材料で製造する。
請求項1に記載した発明によれば、靴底が爪先の先端に向けて立ち上がる点と爪先の先端を結んだ線と地面が形成する角度(θ)を5〜30度の範囲に設定し、靴底の内部において、第1中足骨頭の種子骨に対応する箇所に、デュロメータ硬度計で80〜90度(JAタイプ)の弾性プレートを挿入したことにより、通常の歩行或いはジョギング中に、足部骨格、筋腱、靱帯、アーチ等に余計な負荷をかけることなく、運動生理学上効率よく、最大限の瞬発力で走行状態に切り替えることを可能にする。
請求項1に記載した発明によれば、前記弾性プレートの地面側の表面に、弾性プレートより硬度が低く、デュロメータ硬度計で50〜70度(JAタイプ)の底部に凹凸を有するクッション部材を積層一体化したことにより、通常の歩行或いはジョギング中に最大限の瞬発力で走行状態に切り替える際に、地面に掛ける負荷、或いは、地面から受ける応力が弱化・分散され、足部骨格、筋腱、靱帯、アーチ等に掛かる負荷が軽減され、且つ、クッション部材の底部に形成された凹凸により防滑効果と共に、地面を蹴上げ効果が向上する。
請求項1に記載した発明によれば、弾性プレートを、本体部と、本体部と連続していて本体部の両端部に地面方向へ垂下して突設された垂下部とから構成し、弾性プレートの本体部及び前記垂下部が形成する凹陥部に、底部に突起を有するクッション部材を収納し、接着・一体化したので、クッション部材が、弾性プレートの本体部及び前記垂下部が形成する凹陥部内で安定し、連続した激しい運動下でも、クッション部材が弾性プレートから剥離することがない。
請求項2に記載した発明によれば、弾性プレートが硬質ポリプロピレン、硬質ナイロン、熱可塑性ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択された材料で製造するので、材料の入手が容易であり、各種物性データも確立しているので、形状・構造、必要な物性等諸元を安定して得ることが可能である。
本発明の弾性プレートを組み込んだ靴の実施例を示す左側面図。 本発明の弾性プレートを組み込んだ靴の実施例を示す底面図。 本発明の弾性プレートを組み込んだ靴の要部断面図。 本発明の弾性プレート及びクッション部材を組み込んだ靴の要部断面図。 本発明のクッション部材の要部断面図。 本発明の弾性プレート及びクッション部材を組み込んだ別の実施例を示す要部断面図。
歩行は、通常、右足踵の接地−左足爪先部の蹴上げ−右足裏全面の接地−左足踵の接地−右足爪先部の蹴上げ−左足裏全面の接地から成る6ステップの一連の連続した動作として行われる。
このような通常歩行時には、踵骨、距骨、船状骨、立方骨、第一楔状骨、第二楔状骨、第三楔状骨、中足骨、基節骨、中節骨、及び末節骨から構成されている足部骨格と、筋腱、靱帯、アーチ等が相乗或いは補完的に作用して、特定の部位に過度の荷重が負荷されないようになっている。
然しながら、散歩等通常の歩行(ウオーキング)、或いは軽いジョギング中に、最大限の瞬発力で走行(ランニング)状態に切り替えたり、方向転換したり、若しくは急に停止する動作(以下、このような動作を「ダッシュ」と総称する)を取らなければならない場合が発生する。この場合、中足骨、中でも中足骨頭に最も負荷がかかる。中足骨頭には、趾骨に対応する球状の関節面を備え、細い頸部に連なっていて、第1中足骨頭の下面に一対の種子骨を備えている。種子骨は、腱あるいは腱とゆう着している関節包にある骨片であるが、骨化の程度は一定ではなく、大部分が繊維軟骨性のものもある。種子骨は摩擦に抵抗するた機能を有するもので、その腱が接している骨部と関節している。
従って、ダッシュする場合、第1中足骨頭、及び第1中足骨頭の下面にある一対の種子骨に対応する箇所に応力が集中し、その箇所が過度に沈下し、ダッシュしたいとする意思と行動とが一致せず、各種の骨、筋腱、靱帯、アーチ等から構成される足関節の構造に障害を発生させ、最悪の場合、足関節捻挫等を惹起させることがある。
従って、ダッシュするときに、第1中足骨頭、及び第1中足骨頭の下面にある一対の種子骨に対応する箇所に応力が集中し、その箇所が過度に沈下するのを防止するには、その箇所に所定の構造と機能を有するプレートを配設することにより、ダッシュの際に、第1中足骨頭及び第1中足骨頭の下面にある一対の種子骨に対応する箇所から靴底を介して地面に付与される力(この力を「ダッシュ力」と略称する。ただし、「ダッシュ力」は運動生理学上の正式の学術用語ではない)、いわゆるダッシュ力が、分散・放出されずに、100%地面に伝達され、速やかなダッシュが可能となる。
以下、本発明を、添付した図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の弾性プレートを組み込んだ靴の実施例を示す図で、図1はその左側面図を、図2はその底面図である。図1及び図2において、1は、靴底、いわゆるアウトソールである。本発明が適用されるのはアウトソールである。従って、アウトソールの上にさらに、ミッドソールが積層される態様あるいは、さらに着脱可能なカップインソール等が使用される態様も本発明の靴底の範囲に包含される。
靴底1は、爪先の先端3が上方に向かって所定の角度で反り返っている。靴底1が爪先の先端3に向けて立ち上がる点と爪先の先端3を結んだ線と地面が形成する角度(θ)を、トースプリング角度と呼称する。尚、トースプリング角度は、正式の学術用語でも、当業界で慣用されている用語でもない。本発明の場合、トースプリング角度(θ)は、5〜30度の範囲で設定することが好ましい。トースプリング角度(θ)は、固定的に一律に決定されるべきではなく、靴の用途、使用者の年齢、性別、歩行時の癖、健康状態等諸条件に応じて設計されるべきである。
図2において4は弾性プレートである。弾性プレートは、靴底1の内部において、第1中足骨頭の種子骨に対応する箇所に挿入される。弾性プレート4は、ポロプロピレン、ナイロン、熱可塑性ウレタン、アクリル樹脂等で成形される。その形状は、足底の第1中足骨頭の種子骨に対応する箇所の形状に対応させて、変形した卵形、或いは楕円形が好ましく、長径は50〜90mm、短径は25〜40mm、厚さは2〜3.5mm、質量は3〜15g、硬度は80〜90JAタイプの範囲に設定する。但し、これらの数値は、固定的に一律に決定されるべきではなく、靴の用途、使用者の年齢、性別、歩行時の癖、健康状態等諸条件に応じて設計されるべきである。
図3は、本発明の実施例1を示す要部断面図である。1はアウトソールの一部で、4は弾性プレートである。実施例1は、本発明の最も簡単な態様で、アウトソールの足底の第1中足骨頭の種子骨に対応する箇所に、[0018]に記載した諸元の変形した卵形、或いは楕円形の凹陥部5を設け、凹陥部5の中に所定の形状・構造の弾性プレート4を嵌挿、接着し、一体化したものである。実施例1に示す態様は、材料コストを含む製造コストを低く抑える効果がある。また、デュロメータ硬度計で80〜90度(JAタイプ)の弾性プレートを挿入したことにより、通常の歩行或いはジョギング中に、足部骨格、筋腱、靱帯、アーチ等に余計な負荷をかけることなく、運動生理学上効率よく、最大限の瞬発力で走行状態に切り替えることを可能にする。
図4は、本発明の実施例2を示す要部断面図である。実施例2は、弾性プレート4の地面側の面に、凹陥部10と同一形状のクッション部材6を積層し、接着して一体化したものである。図4では、弾性プレート4と、クッション部材6は分離された状態であるが、これは両者を接着する前の状態を示したものである。
図5は、本発明のクッション部材6の一例を示す断面図である。クッション部材6は、厚さ(T1)が0.2〜2mmの布に、ポリウレタンを含浸させて、厚さ(T2)が2〜15mm、硬度(JAタイプ)が50〜70の突起8を複数個形成したものである。突起同士の間隔(L)は、2mm以上が好ましい。図6では、突起8の形状は単純な矩形であるが、実際には、底面から観察して、円形、多角形、各種の形状の組合わせ、独立した模様、或いは連続模様等、意匠効果、防滑効果、地面を蹴上げる効果、地面からの応力を分散・弱化する効果等を勘案して形成することが好ましい。
図6は、本発明の実施例3を示す要部断面図である。実施例3は、弾性プレート4を、本体部4と、本体部4と連続していて本体部4の両端部に地面方向へ垂下して突設された垂下部9、9’とから構成し、前記弾性プレート4の本体部4及び前記垂下部9、9’とが形成する凹陥部10内に、前記底部に突起8を有するクッション部材6を収納し、弾性プレート4と接着・一体化したものである。図6では、弾性プレート4と、クッション部材6は分離された状態であるが、これは両者を接着する前の状態を示したものである。弾性プレート4及びクッション部材6の形状・構造、諸元、物性等は、実施例1〜2で述べたので、それらの説明は割愛する。
図6に示した実施例3では、弾性プレート4を、本体部と、本体部と連続していて本体部の両端部に地面方向へ垂下して突設された垂下部9,9’とから構成し、弾性プレート4の本体部及び前記垂下部9,9’が形成する凹陥部10に、底部に突起8を有するクッション部材6を収納し、接着・一体化したので、クッション部材6が、弾性プレート4の本体部及び前記垂下部9,9’が形成する凹陥部10内で安定し、連続した激しい運動下でも、クッション部材6が弾性プレート4から剥離することがない。
1 靴底(アウトソール)
2 甲皮
3 爪先の先端
4 弾性プレート
5 凹陥部
6 クッション部材
7 クッション部材のベース
8 クッション部材の突起
9、9’ 垂下部
10 凹陥部
θ トースプリング角度
T1 クッション部材のベースの厚さ
T2 クッション部材の突起の厚さ
L 突起同士の間隔

Claims (2)

  1. 通常の歩行或いはジョギング中に、足部骨格、筋腱、靱帯、アーチ等に余計な負荷をかけることなく、運動生理学上効率よく、最大限の瞬発力で走行状態に切り替えることを可能にする靴底(1)であって、靴底(1)が爪先の先端(3)に向けて立ち上がる点と爪先の先端(3)を結んだ線と地面が形成する角度(θ)を5〜30度の範囲に設定し、靴底(1)の内部において、第1中足骨頭の種子骨に対応する箇所に、デュロメータ硬度計で80〜90度(JAタイプ)の弾性プレート(4)を挿入したこと、
    前記弾性プレート(4)の地面側の表面に、デュロメータ硬度計で50〜70度(JAタイプ)で底部に突起(8)を有するクッション部材(6)を積層一体化したこと、
    前記弾性プレート(4)を、本体部(4)と、本体部(4)と連続していて本体部(4)の両端部に地面方向へ垂下して突設された垂下部(9)(9’)とから構成し、前記弾性プレート(4)の本体部(4)及び前記垂下部(9)(9’)とが形成する凹陥部(10)内に、前記底部に突起(8)を有するクッション部材(6)を収納し、接着・一体化したこと、及び
    前記クッション部材(6)が前記凹陥部(10)と同一形状としたことを特徴とする靴底。
  2. 前記弾性プレート(4)が硬質ポリプロピレン、硬質ナイロン、熱可塑性ウレタン樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択された材料で製造されたことを特徴とする請求項1に記載した靴底。
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