JP5315474B1 - 直流パルスを利用した敷設検査器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 新規敷設工事、増設工事等に伴う誤配線等に対して、ELCBやGFCI等の保護装置を遮断動作させることなく、確実、簡単かつ安価に敷設検査が行える直流パルスを利用した敷設検査器を提供する。
【解決手段】 電力ラインの活性線L、中性線N及び接地線Eがコンセント100の電圧極102、中性極103及び接地極101に正しく接続されているか否かを検査する配線試験器1は、直流パルス放電回路17によってコンセント100の電圧極102に直流パルスを所定のタイミングで印加し、その際に中性極103と接地極Eとの間の電圧を直流パルス検出回路18で検出し、その検出結果に基づいてマイコン10によってコンセント100に対する配線が正敷設であるか誤敷設であるかを判定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、直流パルスを利用した敷設配線検査器に関し、さらに詳しくは、接地端子付きの単相交流ラインの中性(N)極と接地(E)極の正敷設と誤敷設の判別を正確且つ簡単に行うことが可能な直流パルスを利用した敷設検査器に関するものである。
AC100Vの商用配線においては、配線間や対接地間に漏電が発生し又は配電線に接続された電気機器等に漏電が生じると、人体などに対する安全性の確保が困難になるだけでなく火災等の発生原因にも繋がる。そこで、配電盤に保護装置(Earth Leakage Circuit Breaker:ELCB)を設けて漏電の検出を行い、供給電力を遮断している。また、積極的に漏電検出器(Ground Fault Circuit Interrupter:GFCI)を設置し、遮断機と連動させて電力供給を遮断することも行われている。
工事業者等は、商用電源配線としてキュービクルから建築物内へあるいは建築物内の敷設や増設、そして工事終了後には、通常、それら工事の結果の良否を把握するために完成検査を実施する。例えば、商用のAC100Vの「電圧(L)極」と「接地(E)極」と「中性(N)極」からなる3種類の配線を受配電盤や分電盤や電源コンセントまでの敷設配線が対象になる。このような工事において、N極線とE線の入れ違い、N極線とE極線を一緒に結線する等の電源配線の敷設ミスをすることがある。このような接続ミスを見過ごしたまま使用に入ると、受配電盤や分電盤に設けられているELCBやGFCIによる遮断が発生する。この遮断によって分配配線への給電が即座に無くなり、これによる停電は需要家に大きな影響(例えば操業の停止等)を及ぼすことになる。そのため、商用電源配線において敷設確認や完成検査を行うとき、ELCBやGFCIの遮断を招かないことが極めて重要な要素である。
上記検査に供する装置として例えば特許文献1に示される配線接続判定装置がある。この装置は、電源配線の基端側で接地線Gに短絡された中性線に発信器からの単発正負のパルス性電圧信号をトランス接続部を介して注入し、末端側の三端子コンセントの中性端子nと接地端子gとの間の信号を判定器で検出し、検出した信号の極性が注入した信号と同一なら端子n,gに配線N,Gが正しく接続され、逆の場合には各々の接続が逆として判別するものである。
また、特許文献2に示される配線チェッカーは、活電線極Lに接続されるべき電圧側栓刃、中性極Nに接続されるべき中性極栓刃及び接地線極Eに接続されるべき接地線栓刃の3つの栓刃を備え、電圧側栓刃と中性極栓刃との間に、高抵抗素子RHと低抵抗素子RLとを直列に含む抵抗回路を接続するとともに低抵抗素子RLの両端間に電圧計を接続し、接地線栓刃をスイッチSW1を介して低抵抗素子RLの低電位側に接続する構成とし、スイッチSW1をオンにしたときの電圧計の測定電圧Vonとオフにしたときの電圧計の測定電圧Voffとにより(即ち、接地抵抗の差分の電圧が発生するか否かにより)誤配線の有無を判定するものである。
さらに、特許文献3に示される配線チェッカーは、特許文献2の配線チェッカーと同様に3つの栓刃を備え、中性極栓刃と接地線栓刃との間に電圧計、電圧側栓刃と接地線栓刃との間に可変抵抗素子からなる抵抗回路をそれぞれ接続し、可変抵抗素子の抵抗値を変化させたとき、電圧計の値が変化する場合には正常配線と判定し、電圧計の値が変化しない場合には誤配線と判別するものである。
特開平6−6916号公報 特開2012−173023号公報 特開2012−173024号公報
しかしながら、上述した特許文献1に示される配線接続判定装置は、N極線にパルス性電圧信号を印加するに際し、系統の配線を探し出してN極線にトランス接続部を介在させる必要があり、検査の開始前後にトランス接続部の着脱を行わねばならず、手間を要するという不都合がある。また、ノイズが少なからず混入する電源に対して、CTを介して単発正負のパルス性電圧信号を正確に送出し、且つ検出することは、回路的にも複雑さを要し経済的ではない。
さらに、特許文献2に示される配線チェッカーは、電圧側と接地線との間に抵抗が介在するため、漏れ電流を小さくしたとしても抵抗を介して漏れ電流が生じ、測定回路のスイッチオンのときに漏電ブレーカが作動する可能性がある。
また、特許文献3に示される配線チェッカーは、正常配線の場合、誤配線の状態を3つのLEDの点灯の組み合わせによる7種類の判定結果から作業者が1つを判断しなければならない表示方式であり、対応表を参照するなどを要し、判定結果を得るまでに時間を要するとともに作業が煩わしいという不都合がある。
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、新規敷設工事、増設工事等に伴う誤配線等に対して、ELCBやGFCIを遮断させることなく敷設検査が行える確実、簡単、安価な直流パルスを利用した敷設検査器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、電力ラインの活性線、中性線及び接地線がコンセントの電圧極、中性極及び接地極に正しく接続されているか否かを検査する敷設検査器において、電圧極に直流パルスを印加する直流パルス発生手段と、直流パルスに対応した電圧が中性極と接地極との間に出力されたか否かに基づいてコンセントに対する配線が正敷設であるか誤敷設であるかを判定する判定手段とを備え、電圧極に直流パルスを印加することを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、直流パルス発生手段は、コンデンサと、電圧極への供給電圧に基づいてコンデンサを充電する充電回路と、コンデンサの充電電荷を直流パルスにして電圧極に印加する直流パルス放電回路とを備え、判定手段は、直流パルスに対応した電圧を中性極を通して取り込む直流パルス検出回路と、正敷設及びまたは誤敷設を表示及びまたは音響で警告する報知手段と、直流パルス放電回路を制御するとともに直流パルス検出回路が直流パルスに対応した電圧を検出したとき、その発生状況に応じて報知手段を駆動する判定回路とを具備することを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、直流パルス放電回路は、直流パルスを50〜200μSのパルス幅による複数個を偏磁現象が生じない間隔によって商用電源の負サイクル側で発生させることを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、直流パルス放電回路は、電圧極に印加する直流パルスを二つとし、その一つ目の直流パルスの幅をT、二つの直流パルスの休止時間幅をT、二つ目の直流パルスの幅をTとするとき、T、T、Tを以下の数1に示される式の条件を満たすように設定することを特徴とする。
Figure 0005315474
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、直流パルス検出回路は、電圧極と接地極とを切り替えて出力する切替回路を入力側に備え、判定手段は切替回路の切り替え動作に基づいて正敷設か誤敷設かを判定することを特徴とする。
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項2に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、報知手段は、活性線の電圧値をデジタル表示する液晶表示器と、正敷設及び誤敷設を表示するLEDとを備えることを特徴とする。
本発明に係る直流パルスを利用した敷設検査器によれば、新規敷設工事、増設工事等に伴う誤配線等に対して、ELCBやGFCI等の保護装置を遮断動作させることなく、確実、簡単かつ安価に敷設検査が行えるという効果がある。
本発明に係る直流パルスを利用した敷設検査器の好ましい一実施形態を示すブロック図である。 図1に示す充電回路の詳細を示す回路図である。 本発明に係る直流パルスを利用した敷設検査器の外観を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。 電源配線とコンセントとの接続を示し、(a)は正常接続時の配線図、(b)は誤接続時の配線図である。 本発明に係る直流パルスを利用した敷設検査器の動作を示すフローチャートである。 本発明による実施例として直流パルスが2発の波形図を示す(a)は直流パルスの送出タイミングを示す波形図、(b)は直流パルスPdのパルス幅の詳細を示す拡大波形図である。
[直流パルスを利用した敷設検査器の構成]
以下、本発明に係る直流パルスを利用した敷設検査器(以下、「敷設検査器」という)について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る敷設検査器の一実施形態を示すブロック図、図2は図1に示す充電回路及び直流パルス検出回路の詳細を示す回路図である。図示された敷設検査器1は、概略として、各種の制御及び処理を実行する判定回路としてのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)10と、液晶表示器(図3参照)に系統の電圧を表示させるための液晶表示回路11と、運転/正常/異常を各色で点灯する三つのLEDを駆動するためのLED表示回路12と、壁等に取り付けられたコンセント100に差し込んで接続されるプラグ(図示せず)の電源コード30が接続される接続端子13と、この接続端子13に接続されて試験時にマイコン10によって制御される切替回路14と、コンセント100のL極102に印加する直流パルスの電力源となるコンデンサ15と、コンデンサ15に充電を行う充電回路16と、コンデンサ15の充電エネルギーを所定のタイミング及びパルス幅で放出させる直流パルス放電回路17と、直流パルス放電回路17によってL極102に印加された直流パルスPdを切替回路14を介して検出する直流パルス検出回路18と、電池及び所定の直流電圧を出力する電源回路を備えて各回路へ直流電源を供給する電源部19と、マイコン10に接続されてON操作により敷設配線検査を開始させる押しボタンスイッチ20とを備えて構成されている。図1に示す回路は、例えば1枚のプリント基板に実装されている。
ここで、上記したコンデンサ15、充電回路16及び直流パルス放電回路17はパルス放電手段を形成し、また、液晶表示回路11、LED表示回路12及び図3に示す液晶表示器22、LED23,24,25によって報知手段を形成している。さらに、直流パルス検出回路18及びマイコン10は判定手段を形成している。
コンセント100は図1に示すように接地(E)極101、電圧(L)極102、中性(N)極103からなる3極であり、コンセント100の接地極101と系統の接地Nとの間には、通常10〜100Ω程度の接地抵抗Rが存在している。また、図2に示すように、L極102とE極101との間及びN極103とE極101との間のそれぞれにはインピーダンスZが介在している。
マイコン10は1チップマイクロコンピュータであり、例えば、各社から市販されている1チップマイクロコンピュータを使用することができる。具体的には、ルネサステクノロジ社製H8シリーズ、マイクロチップ・テクノロジー社製PICシリーズ、ATMEL社製AVRシリーズなどが知られている。
切替回路14は機械式スイッチに例えれば2回路2接点(=2極双投形)の機能を有する電子スイッチで構成され、回路図を示せば図2のようになる。そのSW(スイッチ)1,2のa接点は直流パルス検出回路18の入力部に接続され、SW1,2のc接点はN極103とE極103に接続される。また、SW1のa接点とSW2のb接点とが接続され、SW2のa接点とSW1のb接点とが接続されている。充電回路16はコンセント100のL極102の電圧AC100Vをダイオード161で整流し、予備充電抵抗162を介してコンデンサ15を充電している。このコンデンサ15の充電電圧Vcはマイコン10及びスイッチとして機能するトランジスタ171のエミッタに印加され、トランジスタ171の短時間のオン動作によってコンデンサ15の充電電圧Vcがパルス波形としてL極102に印加される。なお、トランジスタ171に代えて同様の機能を有する他の半導体素子やスイッチ素子、例えば、IC、半導体スイッチング素子、リレー等を用いることもできる。
直流パルス検出回路18は、マイコン100に対して光デバイスを介して接続されることによりコネクタ100側との電気的な絶縁が図られている。そして、図2に示すようにコンパレータ180を備え、(+)入力端子に切替回路14のSW1のa接点の出力電圧Voが印加され、(−)入力端子には比較用の基準電圧Vrefが印加され、基準電圧Vrefに対して出力電圧Voが大きければ、出力電圧がコンパレータ180からVdが出力されるようになっている。
図3は本発明に係る敷設検査器の外観を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。なお、図3においては電源コード30の図示を省略している。敷設検査器1は、その筐体21が図3(a)に示すような手で持てるサイズ及び形状を成し、上面の中央部には液晶表示回路11によって駆動され、ライン電圧や電池マーク等を表示する液晶表示器22が配設されている。さらに、上面には押しボタンスイッチ20が配設され、液晶表示器22の上面にはLED表示回路12によって駆動されるLED23,24,25が配設されている。本実施形態においては、LED23は電源オン時に緑色に点灯し、LED24は正常接続検出時に青色に点灯し、LED25は誤敷設検出時に赤色に点灯する。なお、LED23,24,25を設けず、これに代えて液晶表示器22に文字やイラスト等による表示を行ってもよい。
図3(b)に示すように、右側面にはロッカー型の電源スイッチ26及び押しボタン型の照明スイッチ27が設けられている。電源スイッチ26のオン側を押すことによってLED23が点灯し、照明スイッチ27を押すことによって筐体21の上側面に設けられているLEDライト28が点灯する。このLEDライト28はコンセント100の設置場所が暗い場合でもコネクタ100を照明して検査作業を行い易くするためである。さらに、異常時にLED25の発光とともに(又は発光を伴わずに)警告音を発する構成も可能であり、その為にはスピーカ及びこれを駆動する増幅回路及び異判定信号に基づいて発信音やメロディー音等の警報信号を生成する回路を設ければよい。同様な構成により、正常時においても警告音を発するようにすることができる。
[敷設検査器1の使用方法]
次に、敷設検査器1の使用方法について説明する。図4は電源配線とコンセントとの接続を示し、(a)は正常接続時の配線図、(b)は誤接続時の配線図である。また、図5は敷設検査器1の動作を示すフローチャートであり、そのプログラムはマイコン10の図示しないROMに書き込まれている。まず、電源配線とコンセントが正常接続(正敷設)になっている場合、図4(a)に示すように系統の変圧器T(AC6,600VからAC100V×2に降圧する単相3線の変圧器)の二次捲線u,v(活性線)の一方にコンセント100のL極102が接続され、変圧器Tの二次捲線oは変圧器Tの近傍の地下に接地され、さらに二次捲線oのラインにはN極103が接続され、また、E極101はコンセント100の近傍で接地された状態になっている。一方、N極103とE極101との接続が誤っている場合には、図4(b)に示すようにL極102の接続は図4(a)と同じであるが、コンセント100のE極101が変圧器Tの二次捲線o(中性線)に接続され、さらにN極103が接地された状態になっている。
以上の状態において、作業者は、まず、敷設検査器1の電源コード30のプラグをコンセント100に挿入する。次に、図3(b)に示す電源スイッチ26をONにする(ステップS201:Yes)。電源スイッチ26のオンにより、敷設検査器1の充電回路16によってコンデンサ15の充電が開始され、その充電状態がマイコン10によって監視される(ステップS202)。そして、極数を選択する必要がある場合、作業者は液晶表示器22を見ながらボタンスイッチ20を指で短押し(例えば2秒以下)て2P(2極)または3P(3極)を選択する(ステップS203)。次に、作業者はボタンスイッチ20を指で長押し(例えば2秒以上)する(ステップS204:Yes)。この操作に対し、マイコン10はコンデンサ15が所望の電圧値以上に充電されていることを確認すると(ステップS202)、直流パルス放電回路17を起動して図2に示す直流パルス放電回路17のトランジスタ171を導通させ、そのコレクタに接続されている直流パルス放電制限抵抗172を介してコンデンサ15の充電電荷を直流パルスPdとして後述する図6に示すt1のタイミングでコンセント100のL極102へ送出する(ステップS205)。これによって矢印Aに示す向きに電流が流れる。
図6(a)は直流パルス放電回路17による直流パルスPdの送出タイミングを示す波形図、(b)は直流パルスPdのパルス幅の詳細を示す拡大波形図である。尚、図6は50Hzの場合であるが60Hzでも同様である。ただし、60Hzの場合、半サイクルの時間が50Hzの10mSに対して8.3mSになる。直流パルスの送出タイミングは、図6(a)に示すようにAC100Vの負電位区間の中間になる。そして、検出動作を確実にするため、送出する直流パルスPdは、図6(a),(b)に示すように同一サイクル内で正方向に二つ(2発)を休止時間Tを設けて続けて送出するが、直流パルスPdの送出は活性線の商用電源の負サイクル側で行う。その理由は、直流パルスPdが活性線に上乗せになるため、正サイクル側で送出すると電圧ピーク値が過大になるためである。しかし、図6(a),(b)に示すように商用電源の負サイクル側で送出すれば、電圧ピーク値が減少する程度で過電圧発生などの問題を引き起こすことが無い。
一方、直流パルスPdの幅は、広い方が検出に際しては容易であるが、商用電源に与える影響として偏磁現象などを生じる可能性がある。そこで、直流パルスPdの幅は50〜200μS程度にする。例えば、直流パルスPdの幅を1μS以下の如くに狭くした場合、部品形状を小さくできるメリットはあるものの応答速度などから検出が困難となり、実用的ではない。このため、直流パルスPdの幅は商用電源に悪影響を及ぼさない値にする。具体的には、図6(b)に示すように、一つ目の直流パルスPdの幅をT、二つの直流パルスの休止時間幅をT、二つ目の直流パルスPdの幅をTとするとき、T、T、Tを数1に示す式を満たすように設定する。
Figure 0005315474
そして、回路構成は安価を図るためにコンデンサインプット構成を採用し、直流パルスPdの電圧は凡そ120V程度にとどめる。また、その送出電流は直流パルス放電制限抵抗172によって決定される。D種接地(機器接地)の場合、接地抵抗が規格により100Ω以下と決められているため、50V程度のパルス電圧及び50〜200μSのパルス幅にするのが好ましい条件となる。尚、直流パルスPdの電圧は供給を受ける電圧のピーク値程度以下が好ましく、直流パルスPdの電流も電源インピーダンスを乗じた電圧が供給を受ける電圧のピーク値を越えないことが好ましい。ピーク値以上の電圧になると、電源に接続されている装置、部品、回路等に耐電圧の面で影響を及ぼす可能性がある。
直流パルスPdは、2つとも検出できた場合を条件の1つにしながら正常敷設と判定する。すなわち送出した2つの直流パルスPdが共に検出されなかった場合、これを例えば「N−E逆」であるとして報知する。しかし仮に、直流パルスPdを2発送出しても1発しか検出されなかった場合には、再検査を促す表示を液晶表示器22により、作業者に報知することもできる。さらに、三つ以上の直流パルスPdを送出した場合には、多数決回路でパルスの結果を判定するものとする。直流パルスPdの発生数は多いほど判定の正確性が向上するが、回路構成が複雑になりコスト高となるため、2〜3のパルス数が好ましい。
上記ステップS205で二つの直流パルスPdを送出したとき、図2に示すように、切替回路14のSW1,2はc接点とa接点とが接続された状態にあり、これが初期状態である。このとき、SW1のa接点から出力される電圧Vo1(N極103〜E極101との間の電圧)が直流パルス検出回路18に取り込まれ、図2に示すコンパレータ180から出力信号Vdが発生する(ステップS206)。
次に、マイコン10は直流パルスPdの発生から所定時間が経過すると切替回路14を制御し、初期状態にあったSW1,2をc接点とb接点とが接続されるように切り換える。そして、c〜a接点の接続時と同様に、マイコン10は二つの直流パルスPdを図6に示すようにt2のタイミングで送出する。このとき、b接点から出力される電圧Vo2が直流パルス検出回路18に取り込まれる(ステップS206)。しかし、正常接続時にはb接点から電圧が検出されない。その結果、マイコン10は正常接続(=正敷設)を判定し(ステップS207:正敷設)、LED表示回路12を制御してLED24を点灯(正常)させる(ステップS208)。
次に、図4(b)に示すようにN極103とE極101との接続が入れ代わった誤接続の場合について説明する。尚、ステップS201〜S206の処理は正敷設の場合と同じであるので説明を省略する。ステップS205において直流パルスPdが図6に示した様にしてコンセント100へT1のタイミングで送出されると、図4(b)の矢印Bに示すようにL極102からN極103へ電流が流れ、また、切替回路14のSW1,2は初期状態として何れもa接点が選択されており、E極101には電流が流れない。その結果、N極103とE極101との間には電圧が発生せず、直流パルス検出回路18には検出信号が印加されない。次に、直流パルスPdの発生から所定時間が経過すると、マイコン10はSW1,2の接点をa接点からb接点に自動的に切り替えられ、ついで直流パルスPdをt2のタイミングで送出すると、b接点から電圧が発生する。そこでマイコン10は誤敷設(=誤接続)を判定し(ステップS207:誤敷設)、LED表示回路12を制御してLED25を点灯(異常)させる(ステップS209)。
以上の結果をまとめると表1に示すようになる。表1から明らかなように、SW1,2の操作順とコンパレータ180の出力電圧のH,Lの発生順とによってマイコン10は正敷設か誤敷設かを判定する。このほか、マイコン10はPdが2発検出できたことも上記判定の条件とする。そして、LED25による「異常」の点灯を見た作業者は誤接続(=誤敷設)を認識し、図4(a)の配線に改める工事を実施する。
Figure 0005315474
[実施形態の効果]
本実施形態に係る直流パルスを利用した敷設検査器によれば、所定のタイミングで直流パルスPdをコンセント100のL極102とE極101との間に送出し、これに伴う電圧がN極103とE極101との間に発生したか否かをもってELCBやGFCI等の保護装置による遮断を伴わず、簡単な構成により即座に正敷設(=正常接続)か誤敷設(=誤接続)かを判定することができるという効果がある。
また、直流パルスPdの生成は、コンデンサの充電電荷を電力源に用いることにより直流パルスPd用の直流電源を容易に確保できることで回路構成が簡単になるという効果がある。
さらに、直流パルスPdの幅を50〜200μSにすることによって、商用電源に及ぼす偏磁現象等を回避することができるという効果がある。そして、直流パルスPdを2発以上にすることでノイズ等の影響を受けることなく確実に検査が行えるようになるという効果がある。
また、直流パルス放電回路17が送出する直流パルスを二つとし、その一つ目の直流パルスの幅をT、二つの直流パルスの休止時間幅をT、二つ目の直流パルスの幅をTとするとき、T、T、Tを数1に示す式を満たすように設定することにより、商用電源に影響を及ぼすことがないという効果がある。
Figure 0005315474
また、切替回路14を設けることで、a接点からb接点に切り替えたときの直流パルスPdに対応する電圧の発生の有無から正常接続(正敷設)にあるか誤敷設(=誤接続)にあるかを容易かつ確実に識別することができるという効果がある。
また、液晶表示器22を設けたことにより、系統の電圧を回路試験器(テスターとも言う)等を用意せずに計ることができるため、コネクタ100に系統の電源が来ているか否かを知ることができると共に現場に持ち込む測定機器の数を減らすことができるという効果がある。さらに、LEDにより正常、異常を直ちに把握することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
1 直流パルスを利用した敷設検査器(敷設検査器)
10 マイコン(判定回路)
11 液晶表示回路
12 LED表示回路
13 接続端子
14 切替回路
15 コンデンサ
16 充電回路
17 直流パルス放電回路
18 直流パルス検出回路
19 電源部
20 押しボタンスイッチ
21 筐体
22 液晶表示器
23,24,25 LED
26 電源スイッチ
27 照明スイッチ
28 LEDライト
30 電源コード
100 コンセント
101 接地(E)極
102 電圧(L)極
103 中性(N)極
161 ダイオード
162 予備充電抵抗
171 トランジスタ
172 直流パルス放電制限抵抗
180 コンパレータ

Claims (6)

  1. 電力ラインの活性線、中性線及び接地線がコンセントの電圧極、中性極及び接地極に正しく接続されているか否かを検査する敷設検査器において、
    前記電圧極に直流パルスを印加する直流パルス発生手段と、
    前記直流パルスに対応した電圧が前記中性極と前記接地極との間に出力されたか否かに基づいて前記コンセントに対する配線が正敷設であるか誤敷設であるかを判定する判定手段と、
    を備えていることを特徴とする直流パルスを利用した敷設検査器。
  2. 請求項1に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、
    前記直流パルス発生手段は、コンデンサと、前記電圧極への供給電圧に基づいて前記コンデンサを充電する充電回路と、前記コンデンサの充電電荷を直流パルスにして前記電圧極に印加する直流パルス放電回路とを備え、
    前記判定手段は、前記直流パルスに対応した電圧を前記中性極を通して取り込む直流パルス検出回路と、正敷設及びまたは誤敷設を表示及びまたは音響で警告する報知手段と、前記直流パルス放電回路を制御するとともに前記直流パルス検出回路が前記直流パルスに対応した電圧を検出したとき、その発生状況に応じて前記報知手段を駆動する判定回路とを具備することを特徴とする直流パルスを利用した敷設検査器。
  3. 請求項2に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、
    前記直流パルス放電回路は、前記直流パルスを50〜200μSのパルス幅による複数個を偏磁現象が生じない間隔によって商用電源の負サイクル側で発生させることを特徴とする直流パルスを利用した敷設検査器。
  4. 請求項3に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、
    前記直流パルス放電回路は、前記電圧極に印加する直流パルスを二つとし、その一つ目の直流パルスの幅をT、二つの直流パルスの休止時間幅をT、二つ目の直流パルスの幅をTとするとき、T、T、Tを以下の数1に示される式の条件を満たすように設定することを特徴とする直流パルスを利用した敷設検査器。
    Figure 0005315474
  5. 請求項2から4のいずれか1項に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、
    前記直流パルス検出回路は、前記電圧極と前記接地極とを切り替えて出力する切替回路を入力側に備え、前記判定手段は前記切替回路の切り替え動作に基づいて正敷設か誤敷設かを判定することを特徴とする直流パルスを利用した敷設検査器。
  6. 請求項2に記載の直流パルスを利用した敷設検査器において、
    前記報知手段は、前記活性線の電圧値をデジタル表示する液晶表示器と、前記正敷設及び誤敷設を表示するLEDとを備えることを特徴とする直流パルスを利用した敷設検査器。
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