JP5315362B2 - 規制情報解析システム - Google Patents

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Description

本発明は、プローブカーの走行軌跡を表すプローブ情報に基づいて、道路の通行規制の有無を解析する技術に関する。
地図データの整備に、プローブカーの走行軌跡を表すプローブ情報の活用が図られている。プローブカーとは、自車の位置をGPS(Global Positioning System)などで時々刻々と検出し、ネットワークを介してその履歴を送信する車両である。プローブカーの情報を活用して通行規制の有無を判定した技術として特許文献1が挙げられる。この技術は、判定対象となる対象道路を通行するプローブ情報を抽出し、各プローブ情報を時系列的にさかのぼることによって、どの道路から対象道路に流入しているかの統計を取る。そして、特定の道路から対象道路への流入が存在しない場合には、その特定の道路から対象道路に向かう進行方法を規制する通行規制が有ると判定する。
特許第4116582号公報
プローブ情報を活用して通行規制の有無を判定する方法は、統計的な手法であるため、特定の通行方法に相当するプローブ情報が得られなかったからといって、必ずしも通行規制が存在するとは限らない。単にそれぞれのプローブカーの目的地によって、その通行方法に対応する経路が選択されなかったに過ぎないこともある。こうした原因による誤判定を回避し、通行規制の判定精度を向上させるためには、判定に用いるプローブ情報の総数を十分に確保する必要がある。しかし、判定対象とすべき交差点、道路および通行規制の組合せは非常に多数であり、それぞれについて十分な精度で判定可能なプローブ情報を確保することは困難である。
本発明は、かかる課題に鑑み、判定に必要となるプローブ情報の総数を抑制しつつ、通行規制の判定精度向上を図ることを目的とする。
車両の走行軌跡を表すプローブ情報に基づいて、解析対象である対象道路または対象交差点の通行規制の内容を解析する規制情報解析システムとしての本発明の構成を示す。本明細書では、通行規制という用語は、右左折禁止などの交差点における通行方法の規制(以下、これを「進行方向規制」ということもある)と、道路の通行方法を規制する一方通行との総称として用いる。
本発明の規制情報解析システムは、プローブ情報記憶部、道路ネットワークデータ記憶部、通行規制判定部、および忌避要因判定部を備える。
プローブ情報記憶部は、複数の車両についてプローブ情報を記憶する。車両のプローブ情報は、走行軌跡を必ずしも連続に記憶したものである必要はなく、分断されていても構わない。
道路ネットワークデータ記憶部は、交差点および道路を、それぞれノードおよびリンクで表した道路ネットワークデータを記憶する。さらに、交差点および道路の種別、広さなどの属性や、既に設定済みの通行規制情報などを併せて格納してもよい。
通行規制判定部は、プローブ情報記憶部から対象交差点または対象道路を通行する所定の基準数以上のプローブ情報を読み出す。そして、その中での解析対象となる通行規制に相当する対象通行方法で通行するプローブ情報の数または割合に基づいて通行規制の有無を判定する。例えば、対象通行方法で通行するプローブ情報の数または割合が所定値に満たない時に通行規制有りと判定することができる。この所定値は、通行規制に違反して通行するプローブカーは存在しないとの前提に立てば0としてもよい。また、逆に、対象通行方法で通行するプローブ情報の数または割合が、所定値を超える時には、その通行規制は無いと判定してもよい。
忌避要因判定部は、対象交差点または対象道路について、忌避要因の状態、即ち忌避要因の有無または忌避要因を表す数値である指標を判定する。忌避要因とは、対象交差点または対象道路を対象通行方法で通行することが避けられる原因を意味しており、例えば、対象通行方法で通行する場合、進入しようとする道路が現在の道路よりも幅が狭いことや、道路が交差点で鋭角状に接続されていることや、大回りになることがユーザに知られていることや、主要道路から外れた閉鎖的な地域に入ることなどが挙げられる。一般的に、対象通行方法で通行するユーザが少なくなるであろうと想定される種々の原因が忌避要因に当たる。忌避要因の状態を判定するための条件は、忌避要因の内容に応じて、予め対象交差点または対象道路のノードまたはリンクを用いて設定されている。この他のノードおよびリンクを含む形で設定しても構わない。忌避要因判定部は、道路ネットワークデータ記憶部から対象交差点または対象道路を含む所定範囲内の道路ネットワークデータを読み出し、予め設定されたこの条件に当てはめることで、忌避要因の状態を判定するのである。
そして、本発明の通行規制判定部は、忌避要因の判定結果に応じて、通行規制の有無の判定方法を変化させる。一旦、通行規制を判定した後、忌避要因を判定し、その結果を受けて、再度、通行規制を判定する順序で処理を進めても良いし、まず忌避要因を判断し、その結果を受けた判定方法で通行規制の有無を判定する順序で処理を進めても良い。
判定方法の変化とは、判定に用いるプローブ情報の基準数を変化させること、通行規制ありと判断するために対象通行方法に従ったプローブ情報の数または割合が満たすべき条件を変化させること、通行規制の有無についての判定結果を採用するか否かを変えることなどが含まれる。
忌避要因が有る対象通行方法については、そもそも、その通行方法を採ろうとするプローブカーが少ないことになるから、対象通行方法で通行するプローブ情報が存在しないからといって、通行規制が存在するとは言えない可能性が高くなる。従って、かかる通行方法については、忌避要因が無い対象通行方法に比べて、通行規制の有無の判定を慎重に行う必要が生じ、精度よく判定するために必要となるプローブ情報の数も増える。全ての対象交差点、対象道路、対象通行方法に対して、一律の判定方法で精度を向上させようとすれば、膨大な総数のプローブ情報が要求されることになる。
これに対し、本発明の規制情報解析システムは、忌避要因の状態を判定し、その結果に応じて通行規制の判定方法を変化させることができる。この結果、規制判定の精度を確保できる判定方法を忌避要因に応じて使い分けることができるため、判定に要するプローブ情報の総数を抑制しつつ、判定精度を向上させることができる。
忌避要因を考慮した判定方法は、種々の態様を採ることができる。
例えば、忌避要因の判定結果に基づいて、基準数の適否を判断することにより、通行規制の有無の判定結果の適否を判断してもよい。適否の判断は、例えば、通行規制の有無について所定の判定精度を確保するために必要なプローブ情報の基準数を予め忌避要因と関係づけて記憶しておき、通行規制の判定に用いられたプローブ情報の数がこれを満たすか否かによって行うことができる。
このように通行規制の判定結果の適否を判断することによって、不適つまり精度が確保できない判定結果を用いることを回避でき、判定結果全体の精度向上を図ることができる。
別の態様として、通行規制判定部は、忌避要因の判定結果に基づいて、基準数を変化させて通行規制の有無を判定するようにしてもよい。例えば、忌避要因が有る場合には、それに応じて基準数を増やす方法を採ることができる。
こうすることによって、忌避要因が高い対象通行方法に対しても、精度良く通行規制を判定することが可能となる。
通行規制の判定結果は、種々の態様で利用が可能である。例えば、現地調査の対象箇所として判定結果を出力してもよいし、判定結果に基づいて道路ネットワークデータに、通行規制情報を設定してもよい。
また、道路ネットワークデータに、既に、通行規制を表す通行規制情報が格納されている場合には、通行規制の判定結果に基づいて、格納されている通行規制情報を更新するようにしてもよい。こうすることにより、誤った通行規制情報を効率的に更正することが可能となる。
忌避要因の判定を行う第1の態様として、対象交差点または対象道路の属性、または対象通行方法の幾何学的形状に基づいて忌避要因の状態を判定するようにしてもよい。属性に基づく判定方法としては、例えば、対象道路の種別や幅に基づいて判定することができる。幾何学的形状としては、例えば、対象交差点や対象道路を通行するための右左折の角度が鋭角状か否かに基づいて判断することができる。
第1の態様は、対象交差点または対象道路自体、またはこれらに接続された道路等を用いて判断できるため、比較的簡易に判断できる利点がある。
第2の態様として、道路ネットワークデータを用いて指定された2点間の経路探索を用いてもよい。この態様では、対象交差点または対象道路を含む所定範囲を設定し、その所定範囲外に経路探索の始点、終点となる2点を設定し、この2点間で経路探索を行って、探索された経路を複数求める。判定に用いる所定範囲の広さは、任意に設定可能である。そして、この経路のうち、対象交差点または対象道路を通る経路の数または割合に基づいて忌避要因の状態を判定するのである。
このように複数の経路探索を行った結果、対象交差点または対象道路を通る経路の数または割合が低い時は、これらの対象交差点または対象道路を通ると遠回りになったり、閉鎖的な地域に入ってしまうなど、経路として選ばれにくい理由があるものと考えられ、これが忌避要因になると考えることができる。第2の態様によれば、第1の態様では判断できない広範囲の道路状態に基づいて得られる忌避要因を判断することができる。
忌避要因の判定を全ての場合に行うのではなく、一定条件下で限定的に行うようにしてもよい。例えば、対象通行方法で通行するプローブ情報の数または割合が、所定値以下のときに、その通行規制が有ると判定する場合には、一旦、通行規制が有ると判定された場合に忌避要因の状態を判定するようにしてもよい。忌避要因を考慮せずに通行規制を判定した時点で、プローブ情報の数または割合が上述の所定値を超えてしまい、通行規制はないものと判断された場合には、忌避要因を判定して、更に多くのプローブ情報を用いたところで、同様に通行規制が無いと判断されることが明らかである。
上述のように、通行規制が有ると判定された場合に絞って忌避要因の判定を行うことにより、無用な忌避要因の判定処理を抑制することができ、処理負荷を軽減することが可能となる。
本発明は、その他、コンピュータによって通行規制情報を判定するための規制情報解析方法として構成してもよいし、かかる解析をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
規制情報解析システムの構成を示す説明図である。 プローブ情報の前解析処理のフローチャートである。 通行規制解析の考え方を示す説明図である。 通行規制判定処理のフローチャートである。 変形例としての通行規制判定処理のフローチャートである。 忌避要因を例示する説明図である。 忌避要因判定処理のフローチャート(1)である。 忌避要因判定処理のフローチャート(2)である。 忌避要因判定方法を示す説明図である。 忌避指標を例示する説明図である。 第2実施例における通行規制判定処理のフローチャートである。 忌避指標設定処理のフローチャートである。
A.システム構成:
図1は、規制情報解析システムの構成を示す説明図である。規制情報解析システム
は、パーソナルコンピュータ(CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えている)によって構成される解析端末200と、データベースを蓄積するサーバ100(CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えている)から構成されている。両者は、ネットワークLANで接続されている。解析端末200とサーバ100とを一体で構成してもよいし、解析端末200の機能を更に多数のサーバ等によって分散処理する構成をとってもよい。
サーバ100には、プローブ情報データベース110、地図データベース120、道路ネットワークデータベース130が格納されている。
地図データベース120は、地図を描画するためのポリゴンデータを格納している。地図データベース120は、解析端末200において地図上で解析結果を表示するためや、プローブカー10に搭載されたナビゲーション装置における地図表示するために使用される。
道路ネットワークデータベース130は、道路および交差点からなる道路網を、それぞれリンク、ノードの形式で表した道路ネットワークデータを格納する。道路ネットワークデータは、経路探索にも利用可能である。道路ネットワークデータには、それぞれのリンク、ノードについて、国道・県道などの道路種別、車線数などの道路幅、右左折禁止などの進行方向規制や一方通行などの通行規制を表す情報が併せて記録されている。
プローブ情報データベース110は、プローブカー10の走行軌跡を時系列的に記録したデータベースである。
図中にプローブカー10の構成を模式的に示した。各プローブカー10には、GPS(Global Positioning System)11が搭載されており、位置座標を計測可能となっている。位置座標の計測は、GPS以外の方法によっても構わない。プローブカー10は、通信モジュール12を搭載しており、ネットワークNEを介して、所定のタイミングでGPS11によって計測された位置情報をサーバ100に送信(以下、アップロードということもある)する。サーバ100は、この位置情報をプローブカー10ごとにプローブ情報データベース110に蓄積する。プローブカー10からアップロードされる情報には、位置情報の他、プローブカー10の走行速度、アクセル、ブレーキ、ハンドルなどの運転操作を表す情報も含めることができる。
プローブカー10からサーバ100にプローブ情報をアップロードするタイミングは種々の設定が可能である。本実施例では、解析に実効性のある情報を収集するため、プローブカー10が所定の速度以上で走行している状態、かつ道路ネットワークデータベース130に格納されたいずれかのノード、リンク上にいる場合にアップロードするものとした。リンク、ノード上にいるか否かの判断は、道路ネットワークデータベース130と同等の道路ネットワークデータを利用するナビゲーション装置をプローブカー10に搭載しておくことにより、容易に実現可能である。
図中には、解析端末200が実現する機能をブロック図で示した。これらの機能は、解析端末200に、各機能を実現するためのコンピュータプログラムをインストールすることによって実現される。機能の一部または全部を、ハードウェア的に実現する構成としても構わない。
以下、解析端末200の機能について説明する。
プローブ情報読出部230は、サーバ100のプローブ情報データベース110から解析に必要となるプローブ情報を読み出し、プローブ情報記憶部240に格納する。プローブ情報データベース110では、各プローブカー10の位置情報は座標形式で格納されている。本実施例では、プローブ情報読出部230は、解析に利用しやすいよう、位置情報を、ノード、リンクで表す形式に変換する前解析処理を施した上でプローブ情報記憶部240に格納する。この前解析処理の内容は、後述する。以下の説明では、特に示さない限り、前解析処理を施した後の情報をプローブ情報と称する。
経路探索部220は、道路ネットワークデータを利用して、指定された2点間の経路探索を行う。経路探索は、周知のダイクストラ法などを用いることができる。本実施例では、経路探索の結果は、プローブ情報解析部210での種々の解析に利用される。
プローブ情報解析部210は、プローブ情報記憶部240に格納されたプローブ情報に基づく解析を実行する。本実施例の解析端末200では、通行規制の解析と、道路網の変化の判定が可能である。
通行規制判定部211は、プローブ情報に基づいて、道路および交差点に付された通行規制を判定する。先に説明した通り道路ネットワークデータには、通行規制情報も併せて格納されているが、道路および交差点によっては漏れがあったり、新たに規制が付されたり、従前に付されていた規制と異なる規制になったりしている可能性がある。通行規制判定部211は、プローブ情報に基づいて通行規制情報を判定することによって、道路ネットワークデータの通行規制情報の整備を支援する。
忌避要因判定部212は、道路および交差点について、運転者に通行を避けさせる要因の有無および程度を判定する。以下、この要因を忌避要因と呼ぶ。忌避要因としては、例えば、対象通行方法で通行する場合、進入しようとする道路が現在の道路よりも幅が狭いことや、道路が交差点で鋭角状に接続されていることや、大回りになることがユーザに知られていることや、主要道路から外れた閉鎖的な地域に入ることなどが挙げられる。忌避要因判定部212による判定結果は、通行規制判定部211による解析に利用される。
道路網変化判定部213は、プローブ情報から得られる各道路および交差点の通行量の日々の変化に基づいて、道路ネットワークデータに反映させる必要があるほどの道路網の変化を判定する。
通行量解析部214は、上述の解析に利用するため、プローブ情報に基づいて、各道路および交差点の日々の通行量を統計的に集計する。
B.前解析処理:
サーバ100に蓄積されているプローブ情報を読み出す際に、解析端末200は、位置情報を座標から、ノード、リンクの形式に変換する前解析処理を施す。
図2は、プローブ情報の前解析処理のフローチャートである。プローブ情報読出部230の処理内容に当たるものであり、ハードウェア的には解析端末200のCPUが実行する処理である。
まずCPUは、サーバ100からプローブ情報を読出す(ステップS10)。図中にプローブ情報の構成を例示した。時刻t1〜t3に対応して、位置座標が(LAT1、LON1)〜(LAT3、LON3)、のように緯度経度の座標形式で格納されている。その他、速度V1〜V3および運転操作などを読み出しても良い。
CPUは、この位置座標に対し、マップマッチング処理を施す(ステップS12)。図中に処理の考え方を示した。リンクL1〜L3およびノードN1で構成される交差点を例示する。これらのリンクL1〜L3に対して、車線数など道路幅を表す属性に基づき、幅W1〜W3の領域AL1〜AL3を設定する。幅W1〜W3は、GPSによる位置情報の計測誤差を考慮して道路幅よりも大きい値としてもよい。ノードN1には、これらの領域AL1〜AL3を重ね合わせて定義される領域AN1を設定する。図中では、各領域を判別しやすいよう、領域AN1にハッチングを付した。
CPUは、プローブ情報の位置座標が、領域AL1〜AL3、AN1のいずれにあるかを判定することで、位置座標をリンク、ノードに変換する。図中の点P1〜P3は、時刻t1〜t3の位置座標に対応する点を表している。点P1は領域AL1内にあるため、位置座標はリンクL1に変換される。点P2は領域AL1から外れているため、位置座標の変換はエラーとなる。点P3は領域AN1内にあるため、位置座標はノードN1に変換される。
CPUは、上述の解析による解析後のプローブ情報を、プローブ情報記憶部240に出力する(ステップS14)。図中に解析後のデータ構造を示した。解析前に対し、時刻t1に対する位置情報はリンクL1、時刻t3に対する位置情報はノードN1というように、位置情報をリンク、ノードに変換した形式となっている。時刻t2は、位置座標の変換はエラーであったため、エラー表示(Err)となっている。
C.通行規制解析の考え方:
図3は、通行規制解析の考え方を示す説明図である。
まず、図3(a)によって、一方通行規制の判定方法について説明する。図中に示すように、ノードNa1、Na2間のリンクLaに対して、矢印A2方向の一方通行規制Saが付されている場合を考える。プローブ情報に基づいて統計的に、一方通行規制Saの有無を判定することが、この解析の目的である。
本実施例では、次の判定条件1、2をともに満たすときに、A2方向の一方通行規制Saが付されていると判断する。
(条件1) A1=0(A1方向のプローブ情報が0台であること);
(条件2) A2≧N(A2方向のプローブ情報がN台以上であること)
Nは、任意に設定可能である。その意味については後述する。
条件1を0台としたのは、一方通行規制に違反して走行するプローブカーは存在しないであろうことを前提としている。規制に違反するプローブカーの存在も考慮する場合には、条件1として、「A1≦M」(Mは違反して走行すると想定される台数)を用いても良い。Mは台数で設定してもよいし、Nに対する割合(%)で設定してもよい。
図3(b)によって、進行方向規制の判定方法について説明する。図中に示すように、ノードNb1、Nb2およびリンクLb1〜Lb4からなる交差点を考える。この交差点には、リンクLb1からノードNb1への進入に対し、右折禁止規制Sbが付されているとする。プローブ情報に基づいて統計的に、この右折禁止規制Sbの有無を判定することが、この解析の目的である。
本実施例では、次の判定条件1〜3を全て満たすときに、右折禁止規制Sbが付されていると判断する。
(条件1) B1=0;
(条件2) B1+B4+B5>0;
(条件3) B1+B2+B3≧N;
条件1は、矢印B1のように、リンクLb1からノードNb1に進入し、右折するプローブ情報が0台であることを意味している。一方通行規制の場合と同様、進行方向規制に違反して走行するプローブカーの存在も考慮する場合には、条件1として「B1≦M」(Mは違反して走行すると想定される台数)を用いても良い。
条件2は、矢印B4、B5のように、リンクLb2、Lb3からリンクLb4に進入するプローブ情報が少なくとも1台存在することを意味している。リンクLb4にノードNb1からNb2に向かう方向の進入禁止規制(逆方向の一方通行規制が付されているということもできる)が付されているケースを排除するための条件である。
条件3は、矢印B1、B2、B3のように、リンクLb1からノードNb1に進入するプローブ情報の総数がN台以上であることを意味している。Nは任意に設定可能である。その意味は、後述する。
図3(b)では右折禁止を例にとって判定条件を説明したが、直進禁止、左折禁止の場合も同様に、B1を、B2またはB3に置き換え、B4、B5に対応する通行方法を設定することによって、それぞれの判定条件を設定可能である。具体的には次の通りとなる。
<<直進禁止の場合>>
(条件1) B2=0;
(条件2) B2+B4A+B5A>0;
(条件3) B1+B2+B3≧N;
条件2においてB4Aは、リンクLb2から左折してリンクLb3に入る通行方向、B5Aは、リンクLb4から右折してリンクLb3に入る通行方法を表す。
<<左折禁止の場合>>
(条件1) B3=0;
(条件2) B3+B4B+B5B>0;
(条件3) B1+B2+B3≧N;
条件2においてB4Bは、リンクLb3から右折してリンクLb2に入る通行方向、B5Bは、リンクLb4から直進してリンクLb2に入る通行方法を表す。
判定条件で用いるNの意味を説明する。図3(c)は網羅率および正解率と検出数との関係を示すグラフである。曲線C1、C2は一方通行規制に対する網羅率、正解率を示し、曲線C3、C4は進行方向規制に対する網羅率、正解率を示している。
正解率とは、プローブ情報の解析対象となった箇所のうち、正しい規制情報が判定された割合である。100カ所について解析を行った結果、1カ所のみで正しい判定結果が得られていれば、正解率は1%となる。検出数とは、解析に用いたプローブ情報の数である。実施例の解析手法は、プローブ情報の統計的解析であるから、曲線C2、C4に示すように、検出数が多いほど、正解率が向上する。進行方向規制(曲線C4)の正解率が、一方通行規制(曲線C2)の正解率よりも低い理由は、後述する。
正解率のグラフを利用すれば、正解率の目標値を決めた時、これに対応する検出数Nが求まる。例えば、正解率の目標を90%と設定すれば、これを達成するために必要な検出数は5〜10の間となる。図3(a)、(b)では、こうして設定された検出数を、Nとして用いることができる。規制情報の判断基準となるNの値を、以下、基準値とかN数と呼ぶ。
なお、図3(c)の曲線C4において、N数が5〜10の値となったのは一例に過ぎず、N数の値は、プローブ情報の取得条件や、規制検出対象となる領域などに応じて変化する。通行規制判定を行う場合には、プローブ情報の取得条件等に併せて予め図3(c)に相当するグラフを得ておき、目標となるN数を決めることが好ましい。
図の例によれば、進行方向規制(曲線C4)に対しては、目標となるべき90%の正解率を得るためには、N数を100よりも更に大きくする必要があることになる。
図3(c)において進行方向規制(曲線C4)の正解率が、一方通行規制(曲線C2)の正解率よりも低いのは、次の理由によるものと推測される。図3(a)、(b)で説明した通行規制の判断手法は、あくまでも統計的な手法に過ぎないため、矢印A1、B1のように通行するプローブ情報が存在しないからといって、必ずしも通行規制が付されているとは限らない。道が狭いなど、種々の忌避要因によって運転者が通行を避ける傾向にあれば、通行規制が付されていない場合であっても、プローブ情報が0台となることは十分に起きうるのである。
種々の交差点および道路を観察した結果、一般的に一方通行規制における忌避要因よりも進行方向規制における忌避要因の方が多いことが見いだされた。進行方向規制の場合、例えば、右折するための角が鋭角であることや、右折する先のリンクLb4が狭い道路であるなど、一方通行規制に比較して多種多様な用件が忌避要因となりやすいのである。このことは、逆に忌避要因がない交差点であれば、曲線C2に示したのと同程度の正解率が得られることを意味する。
次に網羅率について説明する。
網羅率とは、一方通行規制について言えば、当該規制が付されている全ての道路のうち、プローブ情報の解析によって正しい判定結果が得られた割合である。例えば、一方通行規制が100カ所に付されている場合に、プローブ情報の解析によって、そのうち1カ所についてだけ正しい判定結果が得られた場合には、網羅率は1%となる。検出数を大きくすることは、特定の交差点または道路の通行規制を判定するために要求されるプローブ情報の数が増えることを意味するから、要求される検出数に満たずに通行規制が判定不能となる交差点等が増えることになる。従って、検出数が増えるに連れて、網羅率(曲線C1、C3)は低減する。網羅率の傾向は、一方通行規制(曲線C1)と進行方向規制(曲線C3)で大きな差はない。
D1.通行規制判定処理:
通行規制判定処理について説明する。この処理は、解析端末100の通行規制判定部211、忌避要因判定部212が実行する処理であり、ハードウェア的には解析端末100のCPUが実行する処理である。
図4は、通行規制判定処理のフローチャートである。判定対象となる対象道路を選択し、この道路に付された通行規制、一方通行規制および進行方向規制を判定する処理である。進行方向規制については、判定対象となる交差点に進入する道路を、対象道路として処理する。
CPUは、まず対象道路を通るプローブ情報をプローブ情報記憶部240から抽出し(ステップS100)、これに基づいて一方通行判定(ステップS102)、進行方向規制判定(ステップS104)を行う。それぞれ、図3(a)、(b)に示した判断条件を満たすか否かを判定し、条件を満たす場合には、当該規制が付されていると判定することになる。進行方向規制判定(ステップS104)では、右折禁止、直進禁止、左折禁止など、交差点の全通行方法に対する規制の有無を判定する。
一方通行、進行方向規制のいずれもないと判断された場合には(ステップS106)、CPUは、既存の通行規制を更新して(ステップS160)、この処理を終了する。既に道路ネットワークデータにおいて、何らかの規制が属性情報として格納されていた対象道路に対しては、それらの規制情報は誤りであると判断し、削除することになる。通行規制の更新に代えて、オペレータに対して、通行規制の判定結果が、道路ネットワークデータに付された規制情報と異なる旨を報知する処理としてもよい。
一方通行規制または進行方向規制が付されていると判断された場合には(ステップS106)、忌避要因判定処理を実行する(ステップS110)。忌避要因が存在する場合には、図3(c)の曲線C4に示すように正解率が低下する可能性があるため、先に行った通行規制の判定結果(ステップS102、S104)が必ずしも正しいとは言えなくなる。従って、忌避要因判定処理によって忌避要因の有無を判定し、通行規制判定(ステップS102、S104)の適否を判断するのである。忌避要因判定処理の内容については後述する。
忌避要因判定処理の結果、再判定の必要無し、つまり忌避要因が存在せず、ステップS102、S104の判定結果が適切であると判断される場合には(ステップS150)、CPUは既存の通行規制を更新して(ステップS160)、この処理を終了する。通行規制の更新に代えて、判定結果をオペレータに提示したり、道路ネットワークデータに付されている通行規制との不整合を報知する処理を行っても良い。
忌避要因判定処理の結果、忌避要因が存在し、通行規制を再判定する必要があると判断された場合(ステップS150)、CPUは、忌避要因に応じてN数を再設定する(ステップS152)。
再設定に用いるN数は例えば、次の方法で決めることができる。図3(c)に示したように、忌避要因が存在しない場合の正解率(曲線C2)に比較して、忌避要因が存在する場合には正解率が低いながらも検出数と正解率との関係を示す曲線が得られる。この曲線に基づいて、目標の正解率(例えば、90%)を達成するN数を求めておけばよい。もっとも、ステップS152の時点で、検出数と正解率の関係からN数を算出する必要はなく、上述の手順で予め再設定用のN数を決めておけば足りる。
なお、再設定時の正解率の目標値は、必ずしも忌避要因が存在しない場合の目標値と同じに設定する必要はない。
CPUは、こうしてN数を再設定すると、ステップS100で抽出したプローブ情報の数がN数よりも大きいか否かを判断する(ステップS154)。N数よりも大きい場合には、ステップS102、S104での判定結果は、忌避要因が存在するとしても十分な正解率を有していると判断されるため、その判定結果で既存の通行規制を更新して(ステップS160)、処理を終了する。
N数以下である場合には、ステップS102、S104での判定結果は十分な正解率を有していないことになるため、判定結果を無効として(ステップS162)、この処理を終了する。図4の処理では、ステップS100で、プローブ情報記憶部240から全てのプローブ情報を読み出しており、判定に利用可能な余剰のプローブ情報が存在しないため、再設定されたN数を満たすことができないからである。この場合は、プローブ情報が更に蓄積されるまで期間を待ってから、通行規制判定処理を再度、実行することになる。
D2.通行規制判定処理(変形例):
通行規制判定処理は、種々の態様で実現可能である。図4では、プローブ情報記憶部240に記憶されているプローブ情報を最初に全て読み込む(図4のS100)場合の処理例を示したが、N数が膨大な場合には処理に時間を要することがある。かかる場合には、予め判定に必要な数だけのプローブ情報を読み込むようにしてもよい。以下、かかる場合の処理例について変形例として説明する。
図5は、変形例としての通行規制判定処理のフローチャートである。CPUは、まずN 数の初期設定を行う(ステップS100A)。忌避要因が存在しないものとして設定すればよい。N数は、図3(c)の曲線C2に示したように、目標正解率に応じて定めることができる。一方通行規制の判定用と、進行方向規制の判定用で、N数を共通としてもよいし、異なる値としてもよい。
CPUは、対象道路を通るプローブ情報を、設定されたN数分だけ抽出する(ステップS100B)。図4の処理と異なり、判定に必要とされる分だけのプローブ情報を読み込むのである。
そして、このプローブ情報に基づいて、一方通行および進行方向の通行規制判定を行う(ステップS102、S104)。
この判定によって、通行規制無し、と判定された場合には(ステップS106)、既存の通行規制を更新して、この処理を終了する。通行規制無し、と判定された場合には、更に多くのプローブ情報を用いても、同じ結果となることが明らかだからである。
通行規制有りと判定された場合であっても(ステップS106)、N数の再設定後である場合には(ステップS107)、同様に、既存の通行規制を更新して(ステップS160)、この処理を終了する。後述の通り、変形例の通行規制判定処理では、忌避要因の有無に応じて、N数の設定を変えて通行規制判定(ステップS102、S104)の処理を繰り返し実行するが、N数再設定後であれば(ステップS107)、忌避要因に応じた再判定が完了していることを示しており、処理を終了しても差し支えないからである。
N数再設定がまだ済んでいない場合には(ステップS107)、忌避要因の判定処理を行う(ステップS110)。この結果、忌避要因が存在しないと判断された場合には(ステップS151)、N数を再設定する必要はなく、ステップS102、S104における判定結果を利用して差し支えないため、CPUは、この判定結果で既存の通行規制を更新して(ステップS160)、この処理を終了する。
忌避要因があると判断された場合には(ステップS151)、CPUは、忌避要因に応じてN数を再設定する(ステップS152)。N数の再設定の処理方法は、図4のステップS152と同じである。
そして、新たに設定されたN数に基づいてプローブ情報の抽出(ステップS100B)以降の処理を再度、実行する。忌避要因が存在する場合のN数は、忌避要因が存在しない場合のN数よりも大きくなるため、ステップS100Bでは、不足する分のプローブ情報を抽出することになる。全プローブ情報を抽出しても、再設定されたN数に満たない場合には、エラーで終了する。
再設定されたN数分のプローブ情報が得られた場合には、そのプローブ情報に基づいて一方通行規制、進行方向規制を実行する(ステップS102、S104)。N数の再設定が完了しているため、通行規制が無し、と判定されるか否かに関わらず(ステップS106、S107)、CPUは判定結果に基づいて既存の通行規制を更新し(ステップS160)、この処理を終了する。
E.忌避要因の判定:
次に、通行規制判定処理(図4、図5)のステップS110における忌避要因の判定処理について説明する。忌避要因とは、対象交差点または対象道路を対象通行方法で通行することが避けられる原因を意味する。以下では、まず、どのような状態が忌避要因となり得るかの例示をし、その後、これらの忌避要因の有無を判定するためのアルゴリズムについて説明する。
図6は、忌避要因を例示する説明図である。
図6(a)は、交差点の角度αが鋭角の状態である。かかる交差点は、図中の矢印のように通行しづらいため、この方向の通行に対して忌避要因となる。
図6(b)は、レベルが異なる道路が接続されている例である。道路R1は、国道、県道など広い主要な道路であり、道路R2は、いわゆる細街路などである。一般には、矢印のように、このような主要な道路から、細街路に進入するのは、細街路の先に目的地がある場合などに限られるため、道路R1をそのまま直進する運転者に比べて極端に少ないと言え、忌避要因の一つとなり得る。道路のレベルは、道路ネットワークデータに基づいて判断することができる。道路ネットワークデータが、経路探索に使用する主要な道路と、ノード・リンクが整備されてはいるが経路探索には使用しない道路とに分けて構成されている場合には、この区分に基づいて判断してもよい。また、道路の種別に基づいて判断するようにしてもよい。
図6(a)、図6(b)は、それぞれ、交差点の幾何学的形状や、交差点に接続するリンクに基づいて判断可能な忌避要因である。このように交差点部分のみで判断可能な忌避要因を、以下、局所的忌避要因と呼ぶ。
図6(c)は、遠回りになる経路を表している。図示するように、矢印C1に示す経路は、矢印C2の経路に対して遠回りの経路となっており、矢印C2の経路を選択可能な運転者にとっては、矢印C1の経路を選択する利点はない。従って、矢印C2の経路に対して矢印C1の経路を選択する運転者は極端に少なくなり、この意味で、矢印C1の経路は忌避要因があることになる。
図6(d)も、同様に遠回りになる経路を表している。図示するように、矢印D1の経路は、矢印D2の経路に対して遠回りの経路となっている。従って、矢印D2の経路に対して矢印d1の経路を選択する運転者は極端に少なくなり、この意味で、矢印D1の経路は忌避要因があることになる。
図6(e)は、利用する運転者が限られている例を示している。図中のハッチングを付した領域RAは、住宅街や商店街など、特定の目的を有し、領域RA内のいずれかを目的地とする限られた運転者が向かう領域である。道路R4、R3によって領域RAを通り抜ける経路を採ることも可能ではあるが、矢印E1、E2のように、領域RAに進入する運転者は限られているため、そうでない運転者に比べて極端に少ないと言える。従って、このような特定の目的に対応する領域RAに接続される道路R3、R4は、忌避要因を有していることになる。
図6(f)は、通行しづらい形状となっている例である。図中の矢印Fのように、道路R5から道路R7に向かうには、道路R6を渡りつつクランク状に進路をとる必要がある。このような進路は、特に道路R6が複数車線あるような広い道路の場合には安全に通行しづらいため、一般に避けられる傾向にある。この意味で、矢印Fの経路は忌避要因があることになる。
図6(c)〜図6(f)に示したそれぞれの忌避要因は、局所的忌避要因(図6(a)、図6(b))と異なり、対象交差点、対象道路を含む所定範囲内の道路の接続状態に基づいて判断可能な忌避要因である。以下では、このような忌避要因を、広域忌避要因と称する。
図7、図8は、忌避要因判定処理のフローチャートである。忌避要因判定部212が実行する処理である。
忌避要因の判定は、判定対象となる通行規制ごとに行う。従って、CPUは、まず判定対象となる通行規制を設定する(ステップS111)。そして、その通行規制に該当するリンク情報を取得する(ステップS112)。リンク情報とは、リンク間の角度、道路種別や経路探索の対象とされているか否かなど道路のレベルを表す情報など、局所的忌避要因の判定に用いる情報である。
図中にリンク情報の例を示した。左側に示すようにリンクL61からリンクL63に向かう一方通行規制がある場合は、これに違反する通行方法に対する通行方法(矢印A61〜A63)についてリンク情報を取得する。つまり、リンクL62、L63、L64のそれぞれからリンクL61に向かう方向にリンク情報を取得する。右側に示すように右折禁止規制の場合には、これに違反する矢印A64の経路、つまりリンクL65からリンクL66に向かう通行方法についてリンク情報を取得する。直進禁止、左折禁止などの進行方向規制の場合も同様に該当するリンク情報を取得する。
CPUは、取得したリンク情報に基づいて忌避要因を判定する(ステップS114)。ここでは、局所的忌避要因が判定対象となる。次に示す条件1〜3のいずれかに該当する場合には、局所的忌避要因が存在すると判断する。
(条件1) リンク間の角度α<45度;
この条件は、鋭角の通行方法となる交差点(図6(a)参照)について忌避要因があると判断するための条件である。45度と異なる値を判断基準として用いても良い。
(条件2) 退出リンクのレベルが進入リンクのレベルより低いこと;
この条件は、レベルの低い道路への進入(図6(b)参照)について忌避要因があると判断するための条件である。図中に示すように、例えば、進入リンクが探索リンク(経路探索に用いられるリンク)、退出リンクが非探索リンク(経路探索に用いられないリンク)である場合には、この条件を満たすことになる。この他、進入リンクが国道・県道などの種別であるのに対し、退出リンクが細街路である場合なども、この条件を満たすと判断するようにしてもよい。
(条件3) 一方通行については全経路について条件1、条件2を満たすこと;
一方通行の場合は、ステップS112で示した矢印A61〜A63のいずれの経路についても忌避要因が存在しないと、リンクL61に右から進入するプローブカーが存在しないとは言えないからである。
以上の処理によって忌避要因ありと判断された場合には(ステップS116)、CPUは、その判定結果を出力する(ステップS124)。
忌避要因なしと判定された場合には(ステップS116)、次に広域忌避要因の判定に移行する。まず、図9によって、広域忌避要因の判定手法について説明する。
図9は、忌避要因判定方法を示す説明図である。道路RRを通る通行規制について忌避要因を判定するものとする。この方法では、経路探索を利用して忌避要因を判定する。
まず判定対象となる道路RRを含む一辺Wの正方形の評価領域EAを設定する。評価領域EAの広さは、任意に設定可能である。評価領域EAを広くすれば広域忌避要因を比較的精度良く判定可能となるが、経路探索の範囲が広くなるため、処理負荷が大きくなる欠点がある。一方、評価領域EAを狭くすれば、図6(c)、図6(d)に示したような遠回り経路が評価領域EAから外れ、忌避要因の判定精度が低下する。評価領域EAの広さは、このように処理負荷と判定精度の双方を考慮して設定すればよい。判定領域EAの形状も正方形に限らず任意に設定可能である。また、評価領域EAの広さは、都会と田舎のように、交差点の多少に応じて変化させてもよい。
次に、設定された評価領域EAの周辺のノードを抽出する。図中には、S1〜S16まで、16カ所のノードが抽出された状態を示した。そして、これらのノードを始点、終点とする経路探索を行って、道路RRまたはその両端のノードS20、S21のいずれかを通る経路を抽出する。
図の例において、ノートS15を始点、ノードS7を終点とする経路探索を行うと、ノードS20を通過する経路RT1が探索される。これに対し、道路RRを通る経路RT2は探索されない。このことは、ノードS15からノードS7に向かう際には、道路RRを通る経路は遠回り経路となることを表している。
このように、種々の点間で経路探索を行うと、道路RRが利用される頻度を求めることができる。つまり、ノードS15、ノードS7間においては、経路RT2は選択されない。同様に、ノードS15を始点とし、ノードS8、S9、S10のいずれかを終点とする経路においても、経路RT1が選択されることは明らかである。
この例では、ノードS15を始点とし、ノードS11を終点とする経路であれば、経路RT3のように道路RRを通る経路が選択される。従って、ノードS15を始点とする経路のうちノードS20を通る経路の中では、道路RRを通る経路は全く利用されない訳ではなく、利用される頻度が低いことになる。もちろん、道路RR周辺の道路状態によっては全く利用されない場合も起きうる。例えば、経路RT2のようにノードS20を通る右折禁止の通行規制を判定する場合には、このように道路RRを通る経路が全く存在しないこと、またはその利用頻度が低いことは、広域忌避要因が存在することになる。
本実施例では、判定対象となる道路または交差点を含む評価領域EAにおいて、種々のノードの組合せで経路探索をし、対象道路または対象交差点を通過する経路の数またはこの経路が占める割合によって、広域忌避要因の有無を判定するものとした。実施例1では、経路が存在しない場合に忌避要因ありと判断する例を示している。実施例2では、経路割合に基づいて判断する例を示した。経路の割合は、対象道路RRの端点を通る全経路のうち、対象となる通行規制(例えば、右折禁止)に沿う方向で通行する経路の占める割合を用いることができる。経路探索で得られる全経路に対する割合を用いても良い。
図8に戻り広域忌避要因判定の処理について説明する。
CPUは、広域忌避要因を判定するため、まず対象道路を包含する評価領域(図9の領域EA)を設定する(ステップS118)。そして、評価領域外の2点間で経路探索を行う(ステップS120)。
こうして得られた経路探索結果において、判定対象の通行規制に沿って対象道路を通過する経路がない場合には(ステップS122)、広域忌避要因があるものと判定する(ステップS124)。ステップS122を「経路が所定数以下の場合」という条件に変えても良い。
一方、通行規制に沿って対象道路を通過する経路がある場合には(ステップS122)、CPUは忌避要因が無いものと判定する(ステップS126)。
CPUは、以上の処理を、全通行規制について終了するまで繰り返し実行する(ステップS130)。これによって、局所的忌避要因(ステップS112、S114)、広域忌避要因(ステップS118〜S122)の有無を判定することができる。この判定結果は、先に説明した通行規制判定処理(図4、図5)において活用される。
以上で説明した実施例1によれば、忌避要因の有無に応じて、N数の適否を判断して、通行規制の有無を判定することができる。さらに、忌避要因が存在する場合には、N数を増大させることによって、通行規制の判定結果の精度向上を図ることができる。このように、全ての対象交差点および対象道路について、一律のN数を用いて通行規制を判定するのではなく、忌避要因の有無に基づき必要に応じてN数を増大させて通行規制を判定することができるから、判定精度を向上させつつも、全体として要求されるプローブ情報の量を抑制することができる。図3(c)に示した通り、検出数を低く抑えれば網羅率を向上させることができるから、網羅率を高めることも可能となる。
次に、実施例2における規制情報解析システムについて説明する。システム構成や前解析処理は実施例1と同様である。実施例1では、忌避要因を有り/無しの2値的に判定していたのに対し、実施例2では、忌避要因を指標化して扱う点で相違する。
図10は、忌避指標を例示する説明図である。図10(a)は局所忌避要因のうち交差点の角度αについての指標を示した。交差点の角度αとは、右側に示すように、進入リンクLinと進出リンクLoutのなすリンク間角度である。
実施例2では、図示するように、リンク間角度に応じて1.0〜Cmaxの忌避指標を与えるグラフを予め設定し、これに基づいて忌避指標を求める。忌避指標は高いほど、運転者が忌避する可能性が高いことを意味している。Cmaxの値は、忌避要因が存在する場合に、目標の正解率を達成するためのN数に基づいて設定できる。例えば、忌避要因が存在しない場合の2倍にN数を設定する必要がある場合には、Cmaxは2.0となる。
通行しやすさは、道路幅によっても影響されるため、忌避指標は、道路幅をパラメータとして複数設定されている。道路幅が狭い場合には、わずかに鋭角になるだけで通行しがたくなるから、曲線CL1のように45度よりも大きいリンク間角度で忌避指標はCmaxとなる。これに対し、道路幅が広くなるにつれて多少鋭角であっても通行可能となるから、曲線CL2〜CL4のように忌避指標がCmaxとなるリンク間角度が小さくなる。これは一例に過ぎず、忌避指標は道路幅と無関係に設定しても構わない。
道路のレベルに応じた忌避指標も、同様に設定可能である。例えば、進入リンクと退出リンクの道路幅の差違を横軸にとって忌避指標を設定する方法をとることができる。
図10(b)には、広域忌避要因に対する忌避指標の例を示した。対象道路通過率に対して忌避指標を与えるグラフを予め設定しておき、これに基づいて忌避指標を求める。対象道路通過率とは、右上に示す通り、対象道路のいずれかの端点を通過する経路の数に対する、対象道路を通過する経路の数の割合である。図9で示した例においては、経路探索によって得られたノードS20を通過する全経路(経路RT1等)のうち、対象道路RRを通過する経路RT3の割合が対象道路通過率となる。
対象道路通過率が100%の場合には、対象道路は頻繁に経路として利用される主要な道路であることを意味しているから忌避要因があるとは言えず、忌避指標は1.0となる。これに対し、対象道路通過率が0%の場合には、対象道路は全く利用されないことを意味しているから忌避要因が存在することとなり、忌避指標はCmaxとなる。その中間については、例えば図示するような曲線で指標化することができる。この指標は一例であり、種々の解析結果に基づいて設定することが可能である。
図10(a)、図10(b)に示した忌避指標を与えるグラフは、実際にはテーブル化して解析端末200のメモリ内に記憶させておけばよい。
忌避要因を指標化することによって、通行規制判定処理および忌避指標設定処理(実施例における忌避要因判定処理に代わる処理)が実施例1とは異なってくる。以下、それぞれの処理について説明する。
図11は、実施例2における通行規制判定処理のフローチャートである。実施例1の通行規制判定処理(図4、図5)に代わる処理である。
CPUは、まず忌避指標設定処理を行う(ステップS200)。これは、図10で示した忌避指標のグラフを用いて、対象道路の忌避指標を設定する処理である。
図12に基づいて忌避指標設定処理の内容を説明する。
まずCPUは判定対象となる通行規制を設定する(ステップS210)。
CPUは、通行規制に該当するリンク情報を取得する(ステップS212)。この処理は、図7のステップS112と同じである。そして、リンク情報に基づいて忌避指標を設定する(ステップS214)。例えば、リンク間角度を求め、図10(a)に示したグラフに基づいて忌避指標を設定することが出来る。道路のレベルによる忌避指標についても同様の方法で設定可能である。
次に、CPUは広域忌避指標を設定する。このため、実施例1と同様、対象道路を包含する評価領域を設定し(ステップS216)、評価領域外の2点間で経路探索を行う(ステップS218)。そして、図10(b)で説明した通り、対象道路通過率を算出して、このグラフを読み取ることにより、忌避指標を設定する(ステップS220)。
以上の処理によってリンク間角度、リンクのレベル、対象道路通過率による3通りの忌避指標が設定されることになる。CPUは、これらの最大値を通行規制判定に用いる忌避指標として選択する(ステップS222)。
図示するように、リンク間角度、リンクのレベル、対象道路通過率について、それぞれ1.0、1.1、2.0という忌避指標が設定されている場合には、対象道路通過率の忌避指標2.0を選択するのである。このように最大値を用いるのは、こうすることにより、これらの3通りの忌避要因の全てにおいて十分な正解率を確保可能なN数を設定することが可能となるからである。
CPUは、以上の処理を、全通行規制について終了するまで繰り返す(ステップS24)。
図11に戻り、通行規制判定処理について説明する。
忌避指標の設定が完了すると、次に、CPUは忌避指標に基づいてN数を設定する(ステップS250)。N数は、「基準N数×忌避指標」によって設定できる。基準N数とは、忌避要因が存在しない場合のN数である。図10の例によれば、「1.0≦忌避指標≦Cmax」で設定されるため、「基準N数≦N数≦基準N数×Cmax」の範囲でN数は定まることになる。
N数が定まると、CPUは、対象道路を通るプローブ情報をN件抽出し(ステップS252)、これに基づいて一方通行および進行方向について通行規制判定を行う(ステップS254、S256)。そして、この結果に基づいて既存の通行規制を更新する(ステップS258)。
この処理では、予め忌避要因の状態を考慮してN数を設定したため、通行規制判定を行った後に、適否を判定する必要はない。この処理方法は、実施例1にも適用可能である。図11の忌避指標設定処理(ステップS200)に代えて、忌避要因判定処理(図7、8)を実行し、その結果に基づいてN数を設定すればよい。
以上で説明した実施例2によれば、忌避要因を指標化して扱うため、実施例1のように忌避要因の有無に基づいてN数を変化させる場合に比較して、忌避要因の状態に応じて必要な範囲でN数を増加させることができる。この結果、N数の増大を抑制することが可能となるから、正解率を向上させつつ、網羅率を高めることが可能となる。
以上、本発明の実施例について説明した。規制情報解析システムは、必ずしも上述した実施例の全ての機能を備えている必要はなく、一部のみを実現するようにしてもよい。また、上述した内容に追加の機能を設けてもよい。
本発明は上述の実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、実施例においてハードウェア的に構成されている部分は、ソフトウェア的に構成することもでき、その逆も可能である。
本発明は、地図データの整備、または整備支援に利用可能である。
10…プローブカー
11…GPS
12…通信モジュール
100…サーバ
110…プローブ情報データベース
120…地図データベース
130…道路ネットワークデータベース
200…解析端末
210…プローブ情報解析部
211…通行規制判定部
212…忌避要因判定部
213…道路網変化判定部
214…通行量解析部
220…経路探索部
230…プローブ情報読出部
240…プローブ情報記憶部

Claims (7)

  1. 車両の走行軌跡を表すプローブ情報に基づいて、解析対象である対象道路または対象交差点の通行規制の内容を解析する規制情報解析システムであって、
    複数の車両から送信された前記プローブ情報を記憶するプローブ情報記憶部と、
    交差点および道路を、それぞれノードおよびリンクで表した道路ネットワークデータを記憶する道路ネットワークデータ記憶部と、
    前記プローブ情報記憶部から、前記対象交差点または対象道路を通行する所定の基準数以上のプローブ情報を読み出し、その中での解析対象となる通行規制に相当する対象通行方法で通行するプローブ情報の数または割合に基づいて前記通行規制の有無を判定する通行規制判定部と、
    前記道路ネットワークデータ記憶部から前記対象交差点または対象道路を含む所定範囲内の前記道路ネットワークデータを読み出し、該対象交差点または対象道路を前記対象通行方法で通行することを運転者が避ける要因である忌避要因を表すよう前記対象交差点に対応するノードまたは前記対象道路に対応するリンクを用いて設定された所定の条件に当てはめることで、前記忌避要因の状態を判定する忌避要因判定部とを有し、
    前記通行規制判定部は、前記忌避要因の判定結果に応じて、前記通行規制の有無の判定方法を変化させる規制情報解析システム。
  2. 請求項1記載の規制情報解析システムであって、
    前記通行規制判定部は、前記忌避要因の判定結果に基づいて、前記基準数の適否を判断することにより、前記通行規制の有無の判定結果の適否を判断する規制情報解析システム。
  3. 請求項1または2記載の規制情報解析システムであって、
    前記通行規制判定部は、前記忌避要因の判定結果に基づいて、前記基準数を変化させて前記通行規制の有無を判定する規制情報解析システム。
  4. 請求項1〜3いずれか記載の規制情報解析システムであって、
    前記道路ネットワークデータには、前記通行規制を表す通行規制情報が格納されており、
    前記通行規制判定部は、前記通行規制の判定結果に基づいて、前記格納されている通行規制情報を更新する規制情報解析システム。
  5. 請求項1〜4いずれか記載の規制情報解析システムであって、
    前記忌避要因判定部は、前記対象交差点または対象道路の属性、または前記対象通行方法の幾何学的形状に基づいて前記忌避要因の状態を判定する規制情報解析システム。
  6. 請求項1〜5いずれか記載の規制情報解析システムであって、
    さらに、前記道路ネットワークデータを用いて指定された2点間の経路探索を行う経路探索部を備え、
    前記忌避要因判定部は、前記所定範囲外に設定した複数組の2点間で前記経路探索部によって探索され前記所定範囲を通過する複数の経路のうち、前記対象交差点または対象道路を通る経路の数または割合に基づいて前記忌避要因の状態を判定する規制情報解析システム。
  7. 請求項1〜6いずれか記載の規制情報解析システムであって、
    前記通行規制判定部は、前記通行方法で通行するプローブ情報の数または割合が、所定値以下のときに、該通行規制が有ると判定し、
    前記忌避要因判定部は、前記通行規制判定部によって、一旦、前記通行規制が有ると判定された場合に、前記忌避要因の状態を判定する規制情報解析システム。
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