以下、本発明に係るコークス炉押出機における一実施形態について、図1〜図12を参酌して説明する。
本実施形態に係るコークス炉押出機(以下、単に「押出機」ともいう)は、図1〜図4に示すように、コークス製造設備に設けられる。かかるコークス製造設備は、原料石炭(以下、単に「石炭」ともいう)を乾留させるための複数の炭化室10,…を有するコークス炉1と、炭化室10の上方から炭化室10内に石炭を投入する装入車2と、乾留されたコークスを炭化室10から受け入れるガイド車3と、乾留されたコークスを炭化室10の一端側から押し出す押出機4とを備える。
具体的には、コークス製造設備は、複数の長尺な炭化室10,…が幅方向に並設されて構成されるコークス炉1と、コークス炉1(炭化室10)の上方に配置される装入車2と、コークス炉1(炭化室10の長手方向)の他端側に配置されるガイド車3と、コークス炉1(炭化室10の長手方向)の一端側に配置される押出機4とを備える。
コークス炉1は、細長い直方体状に形成され且つ装入車2に石炭を投入されるための複数の装炭口11,…を上方に有する炭化室10,…と、炭化室10の一端側の開口(窯口)を密閉する炉蓋(以下、「押出機側炉蓋」ともいい、本発明に係る「炉蓋」に相当する)12と、炭化室10の他端側の開口を密閉する炉蓋(以下、「ガイド車側炉蓋」ともいい、図示していない)13とを備える。
押出機側炉蓋12は、炉蓋本体121と、炉蓋本体121の上部に開閉可能に取り付けられる小蓋122とを備える。具体的には、押出機側炉蓋12は、炉蓋本体121と、炭化室10内の石炭レベルを均すために、炉蓋本体121に枢着される小蓋122とを備える。
炉蓋本体121は、炭化室10の内部と外部とを連通させる小蓋口部121aと、小蓋口部121aの外周端部に配置され、小蓋122に当接されることによりシールされるべく、平面状に形成される小蓋口シール部121bとを備える。かかる小蓋口部121aは、矩形状の開口を有するため、上面及び下面並びに両側面の四つの内面を有する。
小蓋122は、内面に取り付けられた鋼板の外周部に、閉じられた状態にて小蓋口部121a周りにおけるガスの流通を許容するためのガス道を形成するガス道形成部122aと、鋼板の外周縁(ガス道形成部122aの外側)に立設され、先端部が小蓋口シール部121bと当接することによりシールするナイフエッジ122bとを備える。また、小蓋122は、閉じる状態を維持すべく、炉蓋本体121を掛止する掛止部122cを備える。
なお、小蓋122及びその周辺においては、小蓋口部121aの四つの各内面、小蓋口シール部121b、ガス道形成部122a、及びナイフエッジ122bにタールやカーボンが付着される。したがって、炉蓋本体121や小蓋122の当該部位が掃除対象部位(以下、単に「小蓋の掃除対象部位」又は「小蓋」ともいい、本発明に係る「小蓋及びその周辺の掃除対象部位」に相当する)となる。
装入車2は、炭化室10,…が並設される方向に移動可能に構成される。具体的には、装入車2は、炭化室10の幅方向に沿って敷設されたレール上を走行し、各炭化室10の上方に設けられる装炭口11,…から各炭化室10に石炭を投入する。
ガイド車3は、炭化室10,…が並設される方向に移動可能なガイド車本体31を備える。また、ガイド車3は、ガイド車側炉蓋13を着脱可能なガイド車炉蓋着脱装置(図示していない)32により、ガイド車側炉蓋13を取り外し、また、炭化室10の他端側に、コークスの案内通路となるガイドウェイ33(図示していない)を装着可能に構成される。
そして、ガイド車3は、押出機4により炭化室10の他端側に押し出されるコークスを、ガイドウェイ33にて案内して受け入れる。なお、ガイド車炉蓋着脱装置32及びガイドウェイ33は、ガイド車本体31と一体になって移動可能に構成され、さらに、ガイドウェイ32は、ガイド車本体31に対しても移動可能に構成される。
押出機4は、炭化室10,…が並設される方向に移動可能に構成される。なお、ガイド車3及び押出機4は、互いに対応する位置に配置するように追従して移動する。また、押出機4は、炭化室10,…が並設される方向に移動可能な押出機本体41と、乾留したコークスを炭化室10の他端側に向けて押し出す押出ラム42と、各炭化室10内の石炭レベルを均すレベラ43とを備える。
そして、押出機4は、押出機側炉蓋12を着脱する炉蓋着脱装置(以下、「押出機炉蓋着脱装置」ともいい、本発明に係る「炉蓋着脱装置」に相当する)44と、押出機側炉蓋12の掃除対象部位に向けて高圧水を噴射することにより炉蓋12の掃除対象部位を掃除する炉蓋掃除装置45とを備える。
さらに、押出機4は、炉蓋掃除装置45に高圧水を供給する高圧水供給装置46と、レベラ43を挿入するために押出機側炉蓋12の上部に設けられる小蓋122の掃除対象部位を掃除する小蓋掃除装置47とを備え、高圧水供給装置46は、小蓋掃除装置47にも高圧水を供給可能に構成される。
加えて、押出機4は、押出機側炉蓋12の炉蓋本体121に設けられるナイフエッジ121c(図3参照)が当接するフレーム(シート面)14(図3参照)を、掃除するフレーム掃除装置48と、フレーム14の下方に配置されるタールパン(図示していない)15を掃除するタールパン掃除装置(図示していない)49とを備える。
なお、押出ラム42、レベラ43、押出機炉蓋着脱装置44、炉蓋掃除装置45、高圧水供給装置46、小蓋掃除装置47、フレーム掃除装置48及びタールパン掃除装置49は、押出機本体41に設けられ、押出機本体41と一体になって炭化室10の幅方向に移動可能に構成される。
押出ラム42は、押出機本体41と一体になって炭化室10の幅方向に移動可能に構成されると共に、押出機本体41に対して炭化室10の長手方向に移動(進退)可能に構成される。そして、押出ラム42は、所定の炭化室10における両端の炉蓋12,13が取り外された状態において、炭化室10内を前進することにより、炭化室10内のコークスを炭化室10の他端側に押し出す。
レベラ43は、押出機本体41と一体になって炭化室10の幅方向に移動可能に構成されると共に、押出機本体41に対して炭化室10の長手方向に移動(進退)可能に構成される。そして、レベラ43は、所定の炭化室10の押出機側炉蓋12が装着され且つ小蓋122が開放されている状態において、小蓋口部121aを介して炭化室10内を進退することにより、炭化室10内の石炭レベルを均す。
なお、レベラ43は、押出ラム42がコークスを押し出す炭化室10に対して、(押出機4側からコークス炉1側を向いた場合における右側に)5室隣に配置される炭化室10内の石炭レベルを均すように配設されている。
押出機炉蓋着脱装置44は、乾留されたコークスを炭化室10の他端側に押し出す工程(コークス押出工程)において、押出機側炉蓋12を取り外すように構成される。そして、押出機炉蓋着脱装置44は、コークス押出工程において、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12の掃除を完了した後に、取り外した押出機側炉蓋12の装着を開始するように構成される。
炉蓋掃除装置45は、押出機炉蓋着脱装置44が押出機側炉蓋12を取り外した後に、高圧水を噴射して押出機側炉蓋12の掃除を開始するように構成される。具体的には、炉蓋掃除装置45は、炉蓋本体121に設けられるナイフエッジ121c(図3参照)及びその周辺の部位や、炉蓋本体121に取り付けられる四角柱状の断熱材123(図5〜図7参照)における上面及び下面並びに両側面の部位、即ち、炉蓋12の掃除対象部位(以下、単に「炉蓋」ともいう)を、高圧水により掃除したり、回転カッタ(刃)により掃除したりする。
高圧水供給装置46は、炉蓋掃除装置45に高圧水を供給する状態と小蓋掃除装置46に高圧水を供給する状態とを切り替え可能に構成される。具体的には、高圧水供給装置46は、水を貯めるタンク461と、タンクの水から高圧水を発生させるポンプ462と、高圧水の供給先を切り替える切替手段(バルブユニット)463とを備える。
小蓋掃除装置47は、所定の炭化室10の押出機側炉蓋12に設けられる小蓋122の掃除対象部位を掃除するように構成される。具体的には、小蓋掃除装置47は、押出ラム42がコークスを押し出す炭化室10に対して、レベラ43が配置される側と反対側(押出機4側からコークス炉1側を向いた場合における左側)に、5室隣に配置される炭化室10に係る小蓋122の掃除対象部位を掃除するように配設されている。
そして、小蓋掃除装置47は、図5〜図10に示すように、掃除装置本体471を備え、掃除装置本体471は、押出機本体41と一体になって炭化室10の幅方向に移動可能に構成されると共に、押出機本体41に対して炭化室10の長手方向に移動(進退)可能、即ち、押出機側炉蓋12と接離可能に構成される。
また、小蓋掃除装置47は、小蓋122を開閉する小蓋開閉手段472と、小蓋122の掃除対象部位に向けてノズル部473aから高圧水を噴射することにより掃除対象部位を掃除する水掃除手段473と、小蓋122の掃除対象部位に刃部474aを接触することにより掃除対象部位を掃除する刃掃除手段474とを備える。なお、ノズル部473aと刃部474aとは、連結されて構成されている。
さらに、小蓋掃除装置47は、装置全体を制御する制御手段(制御盤)475と、ノズル部473a及び刃部474aを移動させる移動手段476とを備え、制御手段475は、記憶されている移動データに基づきノズル部473a及び刃部474aを移動させるように移動手段476を制御すると共に、水掃除手段473にて掃除する状態と刃掃除手段474にて掃除する状態との切り替え制御を行う。
なお、小蓋開閉手段472、水掃除手段473、刃掃除手段474、制御手段(制御盤)475及び移動手段476は、掃除装置本体471に取り付けられ、掃除装置本体471と一体になって移動するように構成される。
小蓋開閉手段472は、掃除装置本体471に固定される架台472aと、架台472aの上に配置され、架台472aに対してスライド可能に構成される開閉手段本体部472bと、開閉手段本体部472bを押出機側小蓋12に接離させるためのシリンダ472cと、開閉手段本体部472bの先端に設けられ、押出機側小蓋12を開閉させるための一対の操作部472d,472eとを備える。
そして、小蓋開閉手段472は、シリンダ472cが開閉手段本体部472bの位置決めを行い、一対の操作部472d,472eが小蓋122の掛止部122cや枢着される部位を操作したり小蓋122を押し付けたりすることにより、小蓋122を開閉可能に構成されている。
水掃除手段473は、先端に設けられるノズル部473aが移動手段476を介して小蓋122の掃除対象部位と近傍で対向するように移動し、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12の掃除を開始する前と完了した後に、高圧水を噴射するように構成される。
ノズル部473aは、噴射する高圧水が互いに平行となるように、複数箇所から高圧水を噴射するように構成される(図9(a)における点線A参照)。具体的には、ノズル部473aは、平面状に形成される小蓋口シール部121b及び板状に形成される小蓋122に対して、直交する方向から高圧水を噴射する。
より具体的には、ノズル部473aは、小蓋口シール部121b、ガス道形成部122a、及びナイフエッジ122bに向けて高圧水を噴射する。なお、図9(b)における点線Bは、ノズル部473aが噴射する高圧水の軌跡を示している。
また、ノズル部473aは、高圧水を噴射する方向を中心に回転することにより、ノズル部473aの移動軌跡を中心として、一定幅の領域に高圧水を噴射可能に構成される。なお、ノズル部473aは、高圧水を噴射するために先端に設けられる高圧水ノズルチップが取り付け角度を調整可能に構成されることにより、噴射する角度を調整可能に構成されている場合でもよい。
刃掃除手段474は、先端に設けられる刃部473aが移動手段476を介して小蓋122の掃除対象部位の近傍に配置するように移動され、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12を掃除する際に、小蓋122を掃除するように構成される。そして、刃掃除手段474は、モータ474bを介して刃部474aを回転させて掃除するように構成される。
具体的には、刃部474aは、螺旋状の刃を有するスクリュ状のカッタであり、小蓋口部121aの四つの内面(上面、下面、及び両側面)の近傍で回転することにより、小蓋口部121aの各内面に付着するタールやカーボンを除去する。なお、図10(b)における点線Cは、刃部474aの軌跡を示している。
制御手段475は、各部材を収容するためのキュービクル475aと、小蓋122を撮像する撮像部475bと、撮像部475bにより取得した画像データから掃除作業開始の原点を検出する原点検出部475cと、押出機側炉蓋12と掃除装置本体471と間の距離を一定にすべく、当該距離を検出する距離検出部475dとを備える。
そして、制御手段475は、ノズル部473a及び刃部474aが原点検出部475cにて検出された掃除作業開始の原点及び記憶している移動データに基づいて移動するように、移動手段476を制御する。このとき、制御手段475は、原点検出部475cからの原点データを、移動手段476が認識可能なデータに変換している。また、制御手段475は、押出機側炉蓋12と掃除装置本体471と間の距離を一定にすべく、距離検出部475dで検出した距離に基づいて掃除装置本体471を移動するように制御する。
キュービクル475aは、内部に粉塵が侵入するのを防止すべく、圧縮空気により内部を陽圧化している。そして、キュービクル475aは、内部に収容される撮像部475bが小蓋122を撮像可能とするために、小蓋122と対向する部位に透光可能な部位を備え、当該部位の外側に粉塵が付着するのを防止すべく、当該部位の外側に向けてエアパージしている。
撮像部475bは、CCDカメラ(CCDエリアセンサ)とし、キュービクル475aの内部であって、小蓋122と同じレベル(高さ)に配置されている。また、撮像部475bは、炭化室10からの赤外線により損傷するのを防止すべく、赤外線防止フィルタを備える。そして、撮像部475bは、小蓋122及びその周辺を含めた領域を撮像領域として設定している。
原点検出部475cは、一つ目の機能として、撮像部475bにより取得した画像データから、小蓋の画像データを検出(抽出)する機能を備える。ここで、当該機能の詳細について、図11も参酌して、以下に説明する。
まず、原点検出部475cは、処理時間の短縮を図るべく、小蓋122を検出するためのパターン画像データEとして、データを軽量化した小蓋の画像データを記憶している。具体的には、原点検出部475aは、小蓋の全画像データDの他に、小蓋の全画像データDのうち、主要の部位(特に、エッジ)のみからなる画像データを、パターン画像データEとして記憶している(図11(a)参照)。
そして、原点検出部475cは、撮像部475bにより取得した画像データFの領域内において、軽量化したパターン画像データEを所定間隔で移動させ(図11(b)参照)、パターン画像データEと相関値の高い領域Gを検出する。このとき、原点検出部475cは、パターン画像データEを回動させてもよい。
さらに、原点検出部475cは、パターン画像データEと相関値の高い領域G内において、全画像データDを適当な間隔(例えば、ピクセル単位)で移動させる(図11(c)参照)。そして、原点検出部475cは、全画像データDと相関値が最大となる画像データを検出することにより、小蓋の画像データを検出する。このとき、原点検出部475cは、検出の過程において、パターン画像データEから徐々にデータを増加させ、最終的に全画像データDとなるようにしてもよい。
また、原点検出部475cは、二つ目の機能として、検出した小蓋122の画像データから、画像データにおける小蓋122の位置データを検出(演算)する機能を備える。具体的には、原点検出部475cは、取得した画像データFに対する小蓋の画像データの位置データ(X座標及びY座標)をピクセル単位で検出する。より具体的には、原点検出部475cは、小蓋の基準位置(例えば、中央部のナットの中心)における位置データをピクセル単位で検出する。
そして、原点検出部475cは、三つ目の機能として、検出した画像データにおける小蓋の位置データから、撮像部475bに対する小蓋122の位置を検出(演算)する機能を備える。具体的には、原点検出部475cは、距離検出部475dにより押出機側炉蓋12と掃除装置本体471と間の距離が一定であるため、検出した画像データにおける小蓋の位置データから、掃除装置本体471(移動機476)に対する小蓋122の位置を検出する。
さらに、原点検出部475cは、四つ目の機能として、検出した撮像部475に対する小蓋122の位置から、掃除作業開始の原点を検出(演算)する機能を備える。具体的には、原点検出部475cは、小蓋122における基準位置から定まる掃除作業開始の原点、即ち、基準位置に対する所定位置を検出する。
距離検出部475dは、キュービクル475aの内部であって、小蓋122と略同じレベル(高さ)に配置されている。具体的には、距離検出部475dは、レーザによる距離測定方法を採用している。
移動手段476は、ノズル部473a及び刃部474aを移動させる産業用ロボット476aと、産業用ロボット476aの先端部に配置され、ノズル部473a及び刃部474aを連結させる連結部476bとを備える。
産業用ロボット476aは、自由度4を有する。具体的には、産業ロボット476aは、ノズル部473a及び刃部474aを三次元で移動させるための自由度3と、水掃除手段473にて掃除する状態と刃掃除手段474にて掃除する状態とを切り替えるための自由度1とを有する。また、産業用ロボット476aは、防塵、防水及び防熱を図るべく、密閉されて且つ内部を陽圧化されるケーシング476cの内部に収納されている。
連結部476bは、基端部が産業ロボット476aに固定され、先端部にノズル部473a及び刃部474aが固定されて、基端部を中心に回動可能に構成される。具体的には、連結部476bは、平面視L字状の板状に形成され、ノズル部473aが高圧水を噴射する方向と長尺な刃部474aが延設されている方向とが直交するように、ノズル部473aと刃部474aとを連結させている。
そして、連結部476bは、水掃除手段473にて掃除する状態と刃掃除手段474にて掃除する状態とを切り替える際に、産業ロボット476aにより、基端部を中心に水平方向に沿って90度回動される。また、連結部476bは、水平方向に沿って板状に形成される上方側にノズル部473aを固定し、下方側に刃部474aを固定している。
本実施形態に係るコークス炉押出機4及び小蓋掃除装置47の構成は以上の通りであり、次に、本実施形態に係るコークス炉押出機4のコークス押出工程について、図12に示すフローも参酌して説明する。
コークス炉押出機4のコークス押出工程は、複数設けられる炭化室10,…に対して繰り返し行われる。そして、直前のコークス押出工程の際に、小蓋掃除装置47により掃除された小蓋122を有する炭化室10は、今回のコークス押出工程の際には、乾留したコークスを押出ラム42により他端側に押し出される。また、直前のコークス押出工程の際に、乾留したコークスを押出ラム42により他端側に押し出された炭化室10は、装入車2により石炭を投入されているため、今回のコークス押出工程の際には、レベラ43により石炭レベルを均される。
したがって、所定の炭化室10のコークス押出工程が完了すると、ガイド車3は、ガイド車本体31により、炭化室10の幅方向に5室分移動すると共に、押出機4も、同様に、押出機本体41により、炭化室10の幅方向に5室分移動する。そして、ガイド車3及び押出機4が所定の位置に配置すると、所定の炭化室10(図12において「炭化室M」としている)においては、ガイド車炉蓋着脱装置32がガイド車側炉蓋13の取り外しを開始すると共に、押出機炉蓋着脱装置44が押出機側炉蓋12の取り外しを開始する。
このとき、押出機4側から見て炭化室Mから5つ左隣の炭化室10(図12において「炭化室L」としている)においては、小蓋掃除装置47が掃除を開始し、また、炭化室Mから5つ右隣の炭化室10(図12において「炭化室R」としている)においては、レベラ43が石炭レベルの均しを開始する。そして、炭化室Lにおいては、水掃除手段473が高圧水供給装置46から高圧水を供給可能であるため、水掃除手段473が高圧水を噴射して小蓋122を掃除している。
その後、炭化室Mにおいて、炉蓋着脱装置32,44が炉蓋13,12を取り外すと、ガイド車3のガイドウェイ33が取り付けられた後に、押出機4の押出ラム42が乾留したコークスを炭化室10の他端側に向けて押し出す一方、炉蓋掃除装置45が高圧水供給装置46から供給された高圧水を噴射して押出機側炉蓋12の掃除を開始する。
このとき、炭化室Lにおいては、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12を掃除する際には、水掃除手段473が高圧水の供給を停止されるため、小蓋掃除装置47は、高圧水を必要としない刃掃除手段474が小蓋122を掃除するように切り替える。なお、炭化室Rにおいては、レベラ43が炭化室10内の石炭レベルの均しを完了させている。
そして、その後、炭化室Mにおいて、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12の掃除を完了すると、フレーム掃除装置48がフレーム14を掃除し、それが完了すると、タールパン掃除装置49がタールパン15を掃除する。さらに、それが完了すると、押出機炉蓋着脱装置44が押出機側炉蓋12を取り付ける。
このとき、炭化室Lにおいては、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12の掃除を完了することにより、水掃除手段473が高圧水供給装置46から高圧水を供給可能であるため、小蓋掃除装置47は、水掃除手段473が小蓋122を掃除するように切り替える。そして、押出機炉蓋着脱装置44が押出機側炉蓋12の取り付けを完了するまで、水掃除手段473が小蓋122を掃除し続ける。
そして、押出機炉蓋着脱装置44が押出機側炉蓋12の取り付けを完了する際に、水掃除手段473が小蓋122の掃除を完了するため、コークス押出工程の1工程(図12においては1工程が349秒)が完了し、次のコークス押出工程を開始する。即ち、ガイド車3は、ガイド車本体31により、炭化室10の幅方向に5室分移動すると共に、押出機4も、同様に、押出機本体41により、炭化室10の幅方向に5室分移動する。
以上より、本実施形態に係るコークス炉押出機4は、撮像部475bが小蓋122を撮像し、原点検出部475cが撮像部475bにより取得した画像データから掃除作業開始の原点を検出する。そして、小蓋開閉手段472が小蓋122を開けて、水掃除手段473が小蓋122の掃除対象部位に向けてノズル部473aから高圧水を噴射することにより掃除対象部位を掃除できる。
このとき、ノズル部473aが原点検出部475cにて検出された原点から記憶されている移動データに基づいて移動するため、掃除作業開始の原点を正確に検出した上で、小蓋掃除装置47が小蓋122を掃除でき、その結果、小蓋122及びその周辺の掃除対象部位の掃除を正確に行うことができる。
また、本実施形態に係るコークス炉押出機4は、水掃除手段473にて掃除する状態と刃掃除手段474にて掃除する状態とが切り替えることができるため、刃掃除手段474が小蓋122の掃除対象部位に刃部474aを接触することにより掃除対象部位を掃除できる。
このとき、ノズル部473aと連結される刃部474aがノズル部473aと同様に原点検出部475cにて検出された原点に基づいて移動するため、掃除作業開始の原点を正確に検出した上で、水掃除手段473だけでなく、刃掃除手段474によっても小蓋122を掃除することができる。しかも、水掃除手段473の掃除作業開始の原点を、刃掃除手段474の掃除作業開始の原点としても用いるので、小蓋122を効率的に掃除することもできる。
さらに、例えば、従来の直接接触式検知により作業開始の原点を検出する小蓋掃除装置においては、掃除作業開始の原点検出が正確に行えないため、刃部が小蓋口部121aの内面に接触し、その結果、刃部の損傷が多く、産業用ロボットに取り付けることが困難であった。
それに対して、本実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、掃除作業開始の原点が正確に検出できる、即ち、原点検出の精度を向上することができることにより、刃部474aを小蓋口部121aの各内面から一定間隔で移動させることができ、刃部474aを産業用ロボット476aに取り付けることができる。
また、本実施形態に係るコークス炉押出機4は、原点検出部475cが撮像部475bにより取得した画像データFから小蓋の画像データを検出し、検出した小蓋の画像データから画像データFにおける小蓋の位置データを検出する。そして、原点検出部475cが検出した画像データにおける小蓋の位置データから撮像部475bに対する小蓋122の位置を検出し、検出した小蓋122の位置から掃除作業開始の原点を検出する。したがって、掃除作業開始の原点を正確に検出することができる。
また、本実施形態に係るコークス炉押出機4は、少なくとも自由度4を有する産業用ロボット476aが、自由度3により、ノズル部473a及び刃部474aを移動することができると共に、自由度1により、水掃除手段473にて掃除する状態と刃掃除手段474にて掃除する状態とを切り替えることができる。
したがって、例えば、ノズル部473a及び刃部474aを精度よく滑らかに移動したり、ノズル部473a及び刃部474aの移動をフレキシブルに対応したりすることができる。さらに、例えば、移動手段476の設置スペースの縮小化を図ることもできる。
また、本実施形態に係るコークス炉押出機4は、ノズル部473aが互いに平行となるように高圧水を複数箇所から噴射すると共に、ノズル部473aが高圧水を噴射する方向を中心に回転するため、所望の掃除対象部位に対して効率的に高圧水を噴射することができる。
例えば、従来の小蓋掃除装置は、掃除作業開始の原点が若干誤検出された場合にも対応すべく、ノズル部が先拡がり状となるように高圧水を複数箇所から噴射する(特許文献1の図3参照)ため、高圧水が小蓋口部121a(炭化室10)内に浸入して小蓋口部121a(炭化室10)が急冷して損傷するのを防止すべく、小蓋122を取り外した位置に高圧水浸入防止蓋(特許文献1の符号25参照)を配置させる必要があった。
それに対して、本実施形態に係る小蓋掃除装置47は、掃除作業開始の原点が正確に検出された上で、ノズル部473aが所望の掃除対象部位に高圧水を噴射できるため、高圧水が小蓋口部121a(炭化室10)内に浸入するのを確実に防止でき、その結果、高圧水浸入防止蓋を省略することも可能である。
また、本実施形態に係るコークス炉押出機4は、コークスの押出工程において、押出機炉蓋着脱装置44が押出機側炉蓋12を取り外した後に、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12の掃除対象部位に向けて高圧水を噴射することにより押出機側炉蓋12の掃除を開始する。そして、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12の掃除を完了した後に、押出機炉蓋着脱装置44が取り外した押出機側炉蓋12の装着を開始する。
その一方、高圧水供給装置46が炉蓋掃除装置45に高圧水を供給する状態と小蓋掃除装置47に高圧水を供給する状態とを切り替えることができるため、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12の掃除を開始する前と完了した後に、小蓋掃除装置47の水掃除手段473が高圧水を噴射して小蓋122を掃除できる。
しかも、小蓋掃除装置47が水掃除手段473にて掃除する状態と刃掃除手段474にて掃除する状態とを切り替えられるため、炉蓋掃除装置45が押出機側炉蓋12を掃除する際に、小蓋122及びその周辺の掃除対象部位に刃部474aを接触することにより掃除対象部位を掃除することもできる。
ここで、本実施形態に係るコークス押出工程においては、(1)押出機本体41による移動作業、(2)炉蓋着脱装置44による炉蓋取り外し作業、(3)押出ラム42によるコークス押し出し作業、(4)炉蓋掃除装置45による炉蓋掃除作業、(5)フレーム掃除装置48によるフレーム掃除作業、(6)タールパン掃除装置49によるタールパン掃除作業、(7)炉蓋着脱装置44による炉蓋取り付け作業の、7つが必須の作業である。
そして、当該必須の7作業に費やす時間(本実施形態においては、349秒間)を延長することもなく、小蓋掃除装置47の高圧水による掃除時間も十分に確保することができ、さらに、水掃除手段473が小蓋122を掃除できない時間帯に、刃掃除手段474が小蓋122を掃除するため、生産効率の低下を防止しつつ、小蓋122を効率的に掃除することができる。
また、高圧水供給装置46が炉蓋掃除装置45と小蓋掃除装置47とに同時に高圧水を供給する必要もないため、高圧水供給装置46の能力を炉蓋掃除装置45又は小蓋掃除装置47のうち大きい方の能力を満足する程度に小型化することができ、例えば、コストダウンや設置スペースの縮小化を図ることができる。
なお、本発明に係るコークス炉押出機は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、本発明に係るコークス炉押出機は、水掃除手段473が小蓋口部121a(炭化室10内)に高圧水を噴射することにより、小蓋口部121a(炭化室10)が急冷して損傷するのを確実に防止すべく、小蓋122を取り外した位置に高圧水浸入防止蓋を配置可能な構成を採用してもよい。
また、小蓋掃除装置47は、刃掃除手段474の刃部474aの損傷を防止すべく、刃部474aに必要(設定)以上の外力が加えられた場合に、かかる外力を検知し、刃部474aによる掃除作業を停止させる刃損傷防止手段を備えてもよい。
例えば、刃損傷防止手段は、回転している刃部474aに設定以上のトルクが生じた場合に、刃部474aの回転を停止させる構成でもよく、また、刃部474aを掃除対象部位(上記実施形態においては小蓋口部121aの各内面)から離反させる、即ち、刃部474aの移動経路(移動データ)を修正させる構成でもよい。
また、上記実施形態に係るコークス炉押出機4は、押出ラム42がコークスを押し出す炭化室10に対して、レベラ43が右側に5室隣の炭化室10内の石炭のレベルを均し、小蓋掃除装置47が左側に5室隣の炭化室10の小蓋122を掃除する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、お互いに1〜4室隣であったり、6室以上離れたりする場合でもよい。
要するに、直前のコークス押出工程において、小蓋掃除装置47により掃除された小蓋122を有する炭化室10は、今回のコークス押出工程の際には、乾留したコークスを押出ラム42により他端側に押し出される。換言すれば、小蓋掃除装置47は、次回のコークス押出工程の際に、乾留したコークスを押出ラム42により他端側に押し出させる炭化室10に係る小蓋122を掃除する。
また、上記実施形態に係るコークス炉押出機4においては、レベラ43が石炭のレベル均しを行う炭化室10と、小蓋掃除装置47が小蓋122を掃除する炭化室10とが、押出ラム42がコークスを押し出す炭化室10に対して幅方向に対称となる位置である場合を説明したが、かかる場合に限られない。
例えば、小蓋掃除装置が小蓋122を掃除する炭化室10と、レベラが石炭のレベルを均す炭化室10とが同一である場合でもよい。かかる構成によれば、小蓋掃除装置における小蓋開閉手段と、レベラにおける小蓋開閉手段とを共用することができる。
また、上記実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、180度回動可能な小蓋122を掃除する場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、小蓋掃除装置47は、180度以下又は180度以上回動可能な小蓋を掃除する場合でもよい。
ここで、小蓋掃除装置47は、例えば、180度未満の角度で回動可能な小蓋を掃除する際、具体的には、平板状の小蓋と平面状の小蓋口部とが交差して配置されている際には、まず、自由度3により、ノズル部473a及び刃部474aを3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向にて移動可能である。
そして、小蓋掃除装置47は、残りの自由度1により、水掃除手段473にて掃除する状態と刃掃除手段474にて掃除する状態とを切り替えると共に、平板状の小蓋と平板状の小蓋口部に対して、ノズル部473aから噴射する水の方向(長尺な刃部474aの延設方向)が小蓋及び小蓋口部とそれぞれ直交するように切り替え(回動)可能に構成される。
また、上記実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、水掃除手段473により、小蓋口シール部121b及びガス道形成部122a並びにナイフエッジ122bを掃除すると共に、刃掃除手段474により、小蓋口部121aの各内面を掃除する場合を説明したが、かかる場合に限られず、小蓋掃除装置にて掃除する掃除対象部位は、各コークス炉(炉蓋や小蓋)の構成により決定される。
また、上記実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、水掃除手段473のノズル部473aと刃掃除手段474の刃部474aとが連結される場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、水掃除手段のノズル部と刃掃除手段の刃部とは、個別に移動可能に構成される場合でもよい。
また、上記実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、刃掃除手段474の刃部474aが回転する場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、刃掃除手段は、刃部がスクレーパから構成されてなる場合でもよい。即ち、刃掃除手段は、刃部により、付着したタールやカーボンを掻き取る構成を採用する場合でもよい。
また、上記実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、刃掃除手段474を備える場合を説明したが、かかる場合に限られない。即ち、刃掃除手段474は、必須の構成ではない。
また、上記実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、距離検出部475dがレーザによる測定方法である場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、距離検出部は、撮像部475bにて取得した画像データから検出する場合でもよい。
具体的には、距離検出部は、取得した画像における小蓋122の領域(小蓋122の大きさ)から、撮像部475bと小蓋122との離間距離を測定する場合でもよい。かかる構成を採用する場合には、例えば、原点検出部475cは、パターン画像データEと相関値の高い領域を検出する際(図11(b)参照)や、全画像データDから小蓋の画像データを検出する際(図11(c)参照)に、パターン画像データEや全画像データDを伸縮(大小)させてもよい。
また、上記実施形態に係る小蓋掃除装置47においては、移動手段476が4つの自由度を有する産業用ロボット476aを備える場合を説明したが、かかる場合に限られない。例えば、移動手段は、5つ以上の自由度を有する産業ロボットを備える場合でもよい。
さらに、移動手段は、シリンダ、ギア、モータ等の設備から構成される場合でもよい。具体的には、移動手段は、上下方向及び左右方向並びに前後方向の移動のための3自由度を、三つのシリンダ機構にて構成されると共に、水掃除手段473と刃掃除手段474との切り替えのための1自由度を、モータの駆動を受ける回転(モータ軸)機構で構成される場合でもよい。
1…コークス炉、2…装入車、3…ガイド車、4…コークス炉押出機、10…炭化室、12…(押出機側)炉蓋、13…(ガイド車側)炉蓋、122…小蓋、44…(押出機)炉蓋着脱装置、45…炉蓋掃除装置、46…高圧水供給装置、47…小蓋掃除装置、472…小蓋開閉手段、473…水掃除手段、473a…ノズル部、474…刃掃除手段、474a…刃部、475…制御手段(制御盤)、475b…撮像部、475c…原点検出部、476…移動手段、476a…産業ロボット