JP5314507B2 - 発動機用摺動材に用いる銅合金の製造方法 - Google Patents

発動機用摺動材に用いる銅合金の製造方法 Download PDF

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本発明は、エンジンやモーターなどの発動機における、すべり軸受け、ブッシュ等の摺動材に最適な発動機用摺動材に用いる銅合金の製造方法に係るものである。
エンジンやモーター等の発動機には、すべり軸受けやブッシュ等の摺動材が、オイル潤滑下やドライ条件下等、様々な環境下で使用される。そして、これらの摺動材は、熱引き性能を重視して銅合金を用いるのが一般的である。このような摺動材のうち、代表的な摺動材の1つとして、エンジン用コンロッドベアリングが挙げられる。このエンジン用コンロッドベアリングは、ピストンの往復運動をクランクの回転運動に変換するコンロッドに組み付ける摺動材である。そして、このような摺動材は、回転環境下でのせん断力やピストンの爆発荷重を支える摺動耐久性を必要とするものであり、摺動性に関しては耐焼き付き性及び耐摩耗性、熱伝導性に関しては摺動温度の低減、強度に関しては疲労破壊の抑止が要求されるものである。
そして、このような摺動材には従来よりBeCu合金が多く用いられていたが、従来のBeCu合金では高熱伝導率と高強度とを両立する事は難しく、さらに、摺動性(耐摩耗性、耐焼き付き性)に課題も多かった。一方、発動機の高性能化、高信頼性要求の高まりに伴って、発動機用摺動材に対しては熱伝導率と強度との高いバランスが求められるようになった。そのため、このような熱伝導率と強度との高いバランスの達成を目標として、一部のエンジンではCu−Ni−Si系合金が使用されるようになった。
特許第3563311号公報
しかしながら、従来のCu−Ni−Si系合金では、比較的高い熱伝導率と強度を有するものの、上記の如き発動機用摺動材に対する高い要求に対応出来るほどの熱伝導率及び強度を達成することは困難であった。そこで、特許文献1に示す如く、高い導電性(熱伝導率)を有するCu−Ni−Si系合金が抵抗溶接用電極材料として開発されているが、特許文献1に示す如きCu−Ni−Si系合金は、熱伝導率が高く摺動性に優れているものの、発動機用摺動材として使用するには強度が十分とは言えず信頼性に問題が生じるものであった。
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、発動機用摺動材として最適な引張強さ、0.2%耐力、伸び、硬さ、導電率、熱伝導率、両振り疲れ強度、耐焼付き性及び軸受け性能に優れたCu−Ni−Si系合金を、容易且つ廉価に製造可能にしようとするものである。
本発明は上述の点に鑑み検討された結果なされたものであり、Ni:1.5〜3.0wt%、Si:0.4〜0.8wt%、Cr:0.5〜1.5wt%、Sn:0.1〜0.3wt%を含有し、残部がCu及び不可避的な不純物からなる銅合金を、熱間押出加工後、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施し、冷間塑性加工率が元の断面積に対し10〜40%の第1回目の冷間引抜加工を施した後、時効処理温度400〜500℃で時効処理を施し、さらに冷間塑性加工率2〜10%の第2回目の冷間引抜加工を施した後に時効処理温度400〜500℃の時効処理を施すものである。このような加工を施すことにより、従来からの課題であった発動機用摺動材用銅合金の延性や摺動性を損なうことなく、強度や熱伝導率を改善可能とすることを大きな特徴とするものである。
また、第1回目の冷間引抜加工は、冷間塑性加工率を元の断面積に対し20〜40%とするとともに、第2回目の冷間引抜加工は、冷間塑性加工率を3〜5%としたものであっても良い。
本発明は上述の如く、発動機用摺動材として最適な引張強さ、0.2%耐力、伸び、硬さ、熱伝導率、両振り疲れ強度、耐焼付き性及び軸受け性能に優れたCu−Ni−Si系合金を、容易な製造方法で廉価に製造可能とするものである。そのため、本発明の製造方法により製造した摺動材は、発動機の高性能化、高信頼性要求の高まりに伴って要求される、高強度と高熱伝導率との両立を達成可能とし、優れた摺動特性と耐久性を有する発動機用摺動材に用いる銅合金を得ることができるものである。
焼付き荷重を求めるために行った往復摺動試験の概略図。 軸受温度を求めるために行った試験の概略図。
先ず、Cu以外の各含有元素の添加理由及び組成の限定理由について説明する。本発明では、各添加元素を、Ni:1.5〜3.0wt%、Si:0.4〜0.8wt%、Cr:0.5〜1.5wt%、Sn:0.1〜0.3wt%を含有し、残部がCu及び不可避的な不純物から成るものとしている。そして、Niについて説明すると、Niは、Cuに固溶し、機械的性質の向上に寄与する元素である。尚、本明細書における機械的性質とは、引張強さ、0.2%耐力、硬さ、伸びを意味するものである。そして、Ni含有量を1.5〜3.0wt%に限定したのは、Niが1.5wt%未満では、SiやCr等の添加元素とのバランスが悪く、目標の機械的性質を満足することができないからであり、Niを3.0wt%よりも多く添加すると、熱伝導率が低下するからである。従って、Niは1.5〜3.0wt%の範囲で添加する必要がある。
次にSiについて説明すると、Siは、Niと化合物を形成しNiSiとなるとともに、Crとも化合物を形成することによりCrSiやCrSiとなる。従って、微細な化合物が形成されて、この化合物が時効処理により析出するため、熱伝導率を低下させずに機械的性質、耐熱性及び耐高温酸化性を向上させることができる。そして、このSi含有量を0.4〜0.8wt%に限定したのは、Siが0.4wt%未満では、ケイ化物の形成が不十分で目標の機械的性質と熱伝導率を得ることができず、Siを0.8wt%よりも多く添加すると、ケイ化物の形成が過剰となるため、銅合金の延性が減少するとともに機械的性質の向上も望めないし、熱伝導率も低下するからである。従って、Siは0.4〜0.8wt%の範囲で添加する必要がある。
また、Crについて説明すると、CrはCuへの固溶度が小さい元素であり、析出強化に寄与するものである。そして前述の如く、Crの一部はSiと化合物を形成し、熱伝導率を低下させずに機械的性質及び耐熱性の向上に役立つ元素である。このCr含有量を0.5〜1.5wt%に限定したのは、Crが0.5wt%未満では、十分な析出強化が得られず、Ni及びSiの添加量に対するバランスを欠いて熱伝導率が低下するものとなり、Crを1.5wt%よりも多く添加すると、過剰なケイ化物を形成して機械的性質及び熱伝導率を低下させるとともに、Crの添加歩留まりも悪くなり不経済となるからである。従って、Crは0.5〜1.5wt%の範囲で添加する必要がある。
また、Snについて説明すると、Snは後述する溶体化処理後の、冷間塑性加工の性能を促進させる効果を持つ元素である。また、同時に添加したSiと比較して熱伝導率を低下させにくいことから、冷間塑性加工の促進効果と相乗して、本発明の重要な目標である熱伝導率を低下させることなく、機械的性質を向上させることが可能となる。このSn含有量を0.1〜0.3wt%に限定したのは、Snが0.1wt%未満では、溶体化処理後における冷間塑性加工の性能の向上を十分に発揮できないため、下記の目標を満足する機械的性質は得られず、Snを0.3wt%よりも多く添加すると、熱伝導率が低下するとともに熱間塑性加工性に悪影響を及ぼすからである。従って、Snは0.1〜0.3wt%の範囲で添加する必要がある。
次に、本発明における、発動機摺動材に用いる銅合金の製造方法について以下に説明する。まず、上記組成の押出棒を形成し、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施す。溶体化温度を850℃〜950℃に限定したのは、溶体化処理温度が850℃未満では溶体化が不完全となって機械的性質が低下し、溶体化処理温度が950℃よりも高いと結晶粒が粗大化して伸びが低下し、機械的性質を満足しないためである。
次に、上記の如く溶体化処理を行ったものについて、第1回目の冷間引抜加工を施す。このように冷間引抜加工を施すのは、加工硬化による高強度化を図るとともに、後述する時効処理によって微細で均一な化合物相を析出させるためである。そして、本発明ではこの冷間引抜加工について、冷間塑性加工率が元の断面積に対し10〜40%で加工を施す。尚、本発明における冷間塑性加工率とは、冷間引抜加工前の材料の断面積と加工後の材料の断面積との差を、加工前の材料の断面積で割った百分率で表したものである。上記の如く、冷間塑性加工率を10〜40%に限定したのは、この冷間塑性加工率が10%よりも低いと、機械的性質は目標を満足せず、発動機用摺動材に用いる銅合金として適さないものとなり、冷間塑性加工率が40%を超えると、機械的性質の伸び率が低くなるため、発動機用摺動材として用いる銅合金として好ましくないからである。
また、前記冷間引抜加工については、冷間塑性加工率が20〜40%で加工を施すものであっても良い。このように冷間塑性加工率を20%以上とすることにより、機械的性質及び熱伝導率が高い値でバランスし、発動機用摺動材用銅合金として更に望ましいものとなる。尚、上記の如く、冷間塑性加工率が40%を超えると、機械的性質の伸び率が低くなるため、発動機用摺動材に用いる銅合金として好ましくない。
そして、上記第1回目の冷間引抜加工の後、時効処理温度400〜500℃で第1回目の時効処理を施す。時効処理温度を400℃〜500℃としたのは、時効処理温度が400℃未満では十分な析出ができず、機械的性質および熱伝導率は低いものとなり、時効処理温度が500℃を超えると過時効となりやすく、高い機械的性質が得にくいからである。
そして、前記第1回目の時効処理を行った後に、第2回目の冷間引抜加工を施す。このように、第1回目の時効処理の後に第2回目の冷間引抜加工を施すのは、更に高強度及び高熱伝導率を指向した素材を得るためであり、第2回目の冷間引抜加工を施すことにより、加工硬化及び析出サイト導入が促進され、微細で均一な析出が生じて機械的性質の向上に寄与するからである。
そして、前記第2回目の冷間引抜加工については、冷間塑性加工率が2〜10%で加工を施すものである。このように冷間塑性加工率を2〜10%に限定したのは、冷間塑性加工率が2%よりも低いと機械的性質における目標を満足できず、発動機用摺動材に用いる銅合金として適さないものとなり、冷間塑性加工率が10%を超えると、機械的性質における伸び率が著しく低くなって、最終的に製品の機械的性質を満足しないからである。
また、前記第2回目の冷間引抜加工について、冷間塑性加工率が3〜5%で加工を施すものであっても良い。このように、冷間塑性加工率が3%〜5%の範囲では、機械的性質及び熱伝導率が高い値でバランスし、発動機用摺動材に用いる銅合金として更に望ましいものとなる。
また、上記第2回目の冷間引抜加工を行った後、更に時効処理温度400〜500℃で第2回目の時効処理を行うものである。このように第2回目の時効処理を時効処理温度400〜500℃で施すのは、最終的な機械的性質及び熱伝導率の目標を満たすためであるが、時効処理温度が400℃未満では、十分な析出ができず、機械的性質及び熱伝導率の向上が得られないとともに、時効処理温度が500℃を超えると、熱伝導率は高くなるものの機械的性質が低下するからである。
尚、発動機用摺動材としての優れた摺動特性と耐久性を得るために、本発明の機械的性質及び導電率、熱伝導率について、以下の値を目標値とした。
引張強さ > 800N/mm2
0.2%耐力 > 750N/mm2
伸び > 9%
導電率 > 45%
熱伝導率 > 187W/m・K
本発明における実施例及び比較例の銅合金について、各銅合金の化学成分及び製造条件を下記表1に示す。
Figure 0005314507
次に、表1に示す条件下における各実施例及び比較例の製造方法について以下に説明する。まず、インゴットの成分が表1の各実施例及び比較例の組成となるように、原材料として電気銅、Ni、10wt%Si−Cu母合金、10wt%Cr−Cu母合金、及びSnを各々用意し、各実施例及び比較例ごとに黒鉛ルツボに挿入した後、高周波溶解炉により溶解し、脱ガス等の溶湯処理を行い、その後金型へ鋳造した。尚、上記インゴットの寸法は外径240mm、長さ600mmである。
また、上記各比較例1〜15の成分について説明すると、比較例1〜13については、Ni2.48wt%、Si0.63wt%、Cr0.80wt%、Sn0.12wt%、残部がCu及び不可避的不純物であって、実施例3と同一の成分としたものである。また、比較例14、15はBeCuであって、比較例14の成分は、Ni2.0wt%、Be0.3wt%、残部がCu及び不可避的不純物であり、比較例15の成分は、Be1.82wt%、残部がCu及び不可避的不純物である。
そして、上記の如く鋳造した各実施例及び比較例のインゴットの外周を機械加工により面削した後、温度850℃の熱間鍛造により外径200mmの丸棒形状へ加工した。そして、前記鍛造丸棒から長さ320mmの素材を切り出し、温度850℃の熱間押出により外径55mm、長さ4000mmの丸棒形状に加工した。そして、上記の如く形成した丸棒に溶体化処理を施した。この溶体化処理において、各実施例、及び比較例1、2、15を除く各比較例の溶体化処理温度を、本発明における溶体化処理温度の範囲内である900℃とした。また、比較例1及び比較例15の溶体化処理温度を、本発明の溶体化処理温度範囲よりも低い温度である750℃及び780℃とするとともに、比較例2については本発明の溶体化処理温度範囲よりも高い980℃とした。そして、上記の如く各実施例及び比較例について溶体化処理を行った後、丸棒の外周を研削し、黒皮を除去した。
次に、各実施例及び比較例について第1回目の冷間引抜加工を行った。この冷間引抜加工は、表1に示す冷間塑性加工率にて行ったものである。尚、全実施例及び比較例11、12を除く各比較例の冷間塑性加工率を、本発明の冷間塑性加工率の範囲内である36%又は14%とした。また、比較例11については、本発明の冷間塑性加工率よりも低い4%とするとともに、比較例12については、本発明の冷間塑性加工率よりも高い50%とした。
そして、上記の如く第1回目の冷間引抜加工を行った後、各実施例及び比較例について、電気炉にて第1回目の時効処理を行った。尚、この時効処理の時効温度を、全実施例及び比較例5、6、9、15を除く各比較例については、本発明の第1回目の時効処理温度範囲内である490℃、比較例14については450℃とした。また、比較例5、6については、本発明における第1回目の時効温度よりも高い550℃とするとともに、比較例9、比較例15については、本発明における第1回目の時効温度よりも低い300℃、320℃とした。
そして、上記の如く第1回目の時効処理を行った各実施例及び比較例3、4、14、15を除く各比較例について、表1に示す冷間塑性加工率にて第2回目の冷間引抜加工を施した。尚、比較例3、4、14、15については第2回目の冷間引抜加工を施さなかった。そして、第2回目の冷間引抜加工における冷間塑性加工率を、全実施例及び比較例13を除く各比較例については、本発明の第2回目の冷間塑性加工率の範囲内である4%又は9%とするとともに、比較例13については、本発明の第2回目の冷間塑性加工率よりも高い21%とした。
そして、上記第2回目の冷間引抜加工を行った後、各実施例及び比較例3、4、14、15を除く各比較例について、電気炉により第2回目の時効処理を行った。そして、この第2回目の時効処理の時効温度を、各実施例及び比較例7、8、10、13を除く各比較例については、本発明における第2回目の時効温度範囲内の480℃とした。また、比較例7、8については、本発明の第2回目の時効温度範囲よりも高い550℃とするとともに、比較例10、13については、本発明の第2回目の時効温度範囲よりも低い300℃とした。
上述の如く製造した各実施例及び比較例の銅合金について、引張強さ、0.2%耐力、伸び、硬さ、導電率、熱伝導率、両振り疲れ強度、焼付き荷重、軸受温度についての試験を行った。これらの結果について、表2に示す。尚、比較例1、2、12、13については焼付き荷重及び軸受温度の試験を行っていない。
Figure 0005314507
ここで、上記表2に示す各評価項目の試験方法について以下に説明する。まず、引張強さ、0.2%耐力及び伸びについてはJIS−Z2241に基づいて試験を行うとともに、硬さについてはJIS−Z2245に基づいて試験を行った。また、導電率については上記の如く形成した各実施例及び比較例の丸棒の横断面に対して、シグマテスターを用いて試験を行うとともに、得られた導電率から熱交換率を換算した。また、両振り疲れ強度はJIS−Z2273に基づいて試験を行った。
また、焼きつき荷重については、往復摺動試験機を用いて試験を行った。この焼付き荷重の試験方法について説明すると、まず各実施例及び比較例の銅合金を用いて、それぞれ平板状のプレート(1)を形成し、このプレート(1)を往復摺動試験機(図示せず)にセットする。そして、図1に示す如く、上記プレート(1)の表面に鉄製のピン(2)を鉛直方向に載置した状態で、往復摺動試験機を作動させることにより、上記プレート(1)を1分間に600回の早さで図1の線矢印にて示す方向に往復運動させる。そして、このようにプレート(1)を往復運動させた状態で、オイル潤滑下において図1の白抜き矢印に示す如く、上記ピン(2)に、このピン(2)の鉛直上方からプレート(1)側に垂直荷重をかけて、この垂直荷重を段階的に増加する。そして、最終的にプレート(1)の焼き付きを検知した時点の荷重を、表2における焼付き荷重とした。
また、軸受温度の測定方法について説明すると、まず、各実施例及び比較例の銅合金を用いて、それぞれすべり軸受け(3)を作成する。そして、図2に示す如く、このすべり軸受け(3)に鉄製のシャフト(4)を挿通するとともに、このシャフト(4)を、オイルを給油した状態で、7000rpmで図2の黒矢印で示す一方向に回転させる。そして、このシャフト(4)の回転状態で、図2の白抜き矢印で示す上下方向にすべり軸受け(3)を1000Nの力で加振させる。そして、この時のすべり軸受け(3)の外周面の表面温度を熱電対(5)にて計測し、この計測により得られた値を軸受温度とした。
上記の方法により各項目について試験を行った結果について以下に説明する。まず、実施例1〜6の結果について説明すると、実施例1〜6は、本発明に基づくものであって、溶体化処理が850℃〜950℃の範囲内であって、第1回目の冷間塑性加工率が元の断面積に対し10〜40%の範囲内で冷間引抜加工を行い、第1回目の時効処理温度400℃〜500℃の範囲内で時効処理を施し、さらに第2回目の冷間塑性加工率2〜10%の範囲内で冷間引抜加工を施した後に、第2回目の時効処理温度400℃〜500℃の範囲内で時効処理を施したものである。
その結果、引張強さは800N/mmをこえるとともに、0.2%耐力は750N/mmを超えるものであって、且つ、伸びは9%を超える高い強度と45IACS%を超える導電率、耐久性の指標となる250N/mmを超える両振り疲れ強度を有するものとなった。また、焼付き荷重は200Nを超える十分高いものであって、軸受温度も150℃未満と低いものであった。よって、上記実施例1〜6は、上記本発明の目標値を達成し得るものであって、発動機の高負荷運転に対応できる耐久性に優れた摺動材として十分に使用することができるものである。
これに対し、比較例1〜15の結果について以下に説明すると、まず、比較例1は溶体化処理温度が750℃と、本発明の溶体化処理温度範囲の下限値である850℃より低いため、添加元素であるNi、Si及びCrのマトリックスへの固溶量が十分ではない。そのため、時効処理による強化量が不足し、その後の工程を本発明の範囲内にて行ったが、最終的な引張強さ及び0.2%耐力はそれぞれ607N/mm及び552N/mmと、ともに上記目標値には及ばない低い値となった。そのため、比較例1は、高負荷環境での摺動材として適さず、且つ、耐久性も低いものである。
また、比較例2は溶体化処理温度が980℃であり、本発明の溶体化処理温度範囲の上限値である950℃よりも高いものであった。そのため、結晶粒は粗大に成長し、その後の工程を本発明の範囲内にて行ったが、伸びは3%程度で靭性が低いものであった。そのため、比較例2は上記目標値を満足し得ず、摺動材として適さないものである。
また、比較例3、4は表1に示す如く、第2回目の冷間塑性加工及び第2回目の時効処理を施していない。そのため、強度が不十分となり、特に両振り疲れ強度は250N/mm未満であって、比較例3、4は、上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材としての耐久性が低いものである。
また、比較例5、6は、第1回目の時効処理のみ時効処理温度が550℃であり、本発明における第1回目の時効処理温度の上限値(500℃)より高い条件で第1回目の時効処理を施したものである。この場合、素材は過時効となり、その他の製造条件を本発明の範囲内としたにもかかわらず、最終的に0.2%耐力が750N/mm未満、両振り疲れ強度が250N/mm未満であった。そのため、比較例5、6は、上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材としての耐久性が不十分なものである。
また、比較例7、8は、第2回目の冷間塑性加工の工程までは本発明と同じ条件下で行ったが、第2回目の時効処理については時効処理温度を550℃としたものであって、本発明の第2回目の時効処理温度の上限値(500℃)より高い条件で第2回目の時効処理を施したものである。この場合、素材は過時効となり、その他の製造条件を本発明の範囲内としたが、最終的に0.2%耐力は750N/mm未満、両振り疲れ強度が250N/mm未満となった。そのため、比較例7、8は、上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材としての耐久性が不十分なものである。
また、比較例9は、第1回目の時効処理のみ時効処理温度が300℃であって、本発明の第1回目の時効処理温度の下限値(400℃)より低い条件で第1回目の時効処理を施したものである。この場合、素材は未時効状態となり、その他の製造条件については本発明の範囲内で行ったにもかかわらず、最終的に0.2%耐力は750N/mm未満、両振り疲れ強度は250N/mm未満であった。また、導電率は45IACS%未満で、熱伝導率は185W/m・Kを下回るものであった。そのため、比較例9は、上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材としての耐久性が不十分なものである。
また、比較例10は、第2回目の冷間塑性加工の工程までは、製造条件を本発明の範囲内で行ったが、第2回目の時効処理において時効処理温度を300℃としたものであって、本発明における第2回目の時効処理温度の下限値(400℃)よりも低い条件で第2回目の時効処理を施したものである。この場合、素材は未時効状態となり、最終的に0.2%耐力は750N/mm未満、両振り疲れ強度は250N/mm未満となった。そのため、比較例10は、上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材としての耐久性が不十分なものである。
また、比較例11は第1回目の冷間塑性加工率が4%であり、本発明の第1回目の冷間塑性加工率の下限値(10%)よりも低い条件で第1回目の冷間引抜加工を施したものである。この場合、加工歪が不十分で、その他の製造条件については本発明の範囲内で行ったにもかかわらず、最終的に0.2%耐力が750N/mm未満、両振り疲れ強度が250N/mm未満であった。そのため、比較例11は、上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材としての耐久性が不十分なものである。
また、比較例12は第1回目の冷間塑性加工率が50%であり、本発明の第1回目の冷間塑性加工率の上限値(40%)よりも高い条件で、第1回目の冷間引抜加工を施したものである。この場合、加工歪が過剰なため0.2%耐力は800N/mmを超えるものの、その他の製造条件については本発明の範囲内で行ったにもかかわらず、伸びは5%で靭性が低く、両振り疲れ強度は250N/mm未満となった。そのため、比較例12は上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材としての耐久性が不十分なものである。
また、比較例13は第2回目の冷間塑性加工率が21%であり、本発明の第2回目の冷間塑性加工率の上限値(10%)よりも高い条件で冷間引抜加工を施したものである。この場合も上記比較例12と同様に、加工歪が過剰なため0.2%耐力は800N/mmを超えるが、その他の製造条件については本発明の範囲内で行ったにもかかわらず、伸びは6%で、両振り疲れ強度も250N/mm未満であった。また、導電率は45IACS%未満で、熱伝導率は185W/m・Kを下回るものであった。そのため、比較例13は上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材として適さないものである。
比較例14はBeCu50合金であって、高い熱伝導率と両振り疲れ強度を有するが、0.2%耐力が750N/mm未満であるとともに焼付き荷重が低い結果となった。また、比較例15はBeCu25合金であって、高い強度を有するが、熱伝導率及び焼付き荷重が低く、軸受温度が高い結果となった。そのため、第14及び第15比較例は、ともに上記本発明の目標値を満足し得ず、摺動材として適さないものである。

Claims (2)

  1. Ni:1.5〜3.0wt%、Si:0.4〜0.8wt%、Cr:0.5〜1.5wt%、Sn:0.1〜0.3wt%を含有し、残部がCu及び不可避的な不純物からなる銅合金を、熱間押出加工後、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施し、冷間塑性加工率が元の断面積に対し10〜40%の第1回目の冷間引抜加工を施した後、時効処理温度400〜500℃で時効処理を施し、さらに冷間塑性加工率2〜10%の第2回目の冷間引抜加工を施した後に時効処理温度400〜500℃の時効処理を施すことを特徴とする発動機用摺動材に用いる銅合金の製造方法。
  2. 第1回目の冷間引抜加工は、冷間塑性加工率を元の断面積に対し20〜40%とするとともに、第2回目の冷間引抜加工は、冷間塑性加工率を3〜5%としたことを特徴とする請求項1の発動機用摺動材に用いる銅合金の製造方法。
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