JP3563311B2 - 抵抗溶接用銅合金電極材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、抵抗溶接用銅合金電極材料及びその関連治具、その他に使用する銅合金で、JIS Z 3234 第3種規格に該当する電極材料及びその製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、抵抗溶接用銅合金電極材料の規格である、JIS Z 3234 第3種規格に適合する電極材料として、BeCu50合金又はBeCu10合金が使用されてきた。これらの合金は、抵抗溶接用銅合金電極材料(以後電極材料と言う)としての機械的性質及び物理的性質を満足させているとともに、高温硬さ、焼鈍硬さと言った耐熱性、その他の材質的な性質も良好で、現在も使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の合金に含まれるBeは、人体や環境に対して有害の懸念があるため、このBeを含まない電極材料が要求されている。また、周知の如くBeは高価な原料であるため、コストダウンのためにもBeを添加しない電極材料の製造が求められている。
【0004】
そこで、本発明者は、有害の懸念のあるBeを含まない、無公害な材料で、JIS Z 3234 第3種規格を満足させる電極材料を、低コストに製造しようと試みた。そして、これに該当するものとして、コルソン合金に着目した。このコルソン合金は、NiとSiをCuにバランス良く添加する事により、Ni2SiをCuマトリックスに形成させるものである。そして、このNi2Siを多く添加する事により、電極材料として使用した場合、機械的性質と耐熱性が向上するが、導電率が低くなるため、NiとSiの添加だけでは電極材料として好ましくなかった。
【0005】
本発明者は、上述の如き課題を解決するため、前記コルソン合金にBe以外の無公害の添加元素を加え、導電率を低下させる事なく、引張強さや伸び率、硬さ等の機械的性質を向上させ、しかも優れた耐熱性を有し、電極材料としての使用に適した材料を得ようとするものである。
【0006】
そして、本発明では、JIS Z 3234 第3種規格に基づいて、目標とする機械的性質や導電率の規格は、以下の通りとした。
引張強さ >690 N/mm 2
伸び率 >10%
硬さ(ロックウエル硬さ) >92HRB
導電率 >45IACS%
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の如き課題を解決するため、第1の発明は、Ni1.5〜3.0wt%、Si0.4〜0.8wt%、Cr0.5〜1.5wt%、Sn0.1〜0.3wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなるものである。
【0008】
また、第2の発明は、Ni1.8〜2.5wt%、Si0.4〜0.65wt%、Cr0.5〜1.3wt%、Sn0.13〜0.25wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなるものである。
【0009】
また、第3の発明は、Ni1.86〜2.43wt%、Si0.49〜0.6wt%、Cr0.53〜1.2wt%、Sn0.14〜0.2wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなるものである。
【0010】
また、本発明の抵抗溶接用銅合金電極材料は、上記各配合割合の材料を、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施した後、冷間塑性加工率が元の断面積に対し、35%〜90%で冷間塑性加工を施し、次に時効処理温度450〜550℃で時効処理を施して製造するものである。
【0011】
【作用】
本発明は上述の如く構成したもので、コルソン合金に、CrとSnとを添加する事により、前記JIS Z 3234 第3種規格を満足させるとともに、無公害で経済的な抵抗溶接用銅合金電極材料を得る事ができる。即ち、前述の如く、コルソン合金は、Ni2Siの添加量を多くしただけでは、機械的性質と耐熱性は向上するが、導電率に劣るものである。そこで、本発明者は、Crを添加する事により、析出強化を行い易くするよう試みた。このようにCrを添加して適当な熱処理と加工を施す事により、ある程度の機械的性質と導電率のバランスが取れる事が判明した。しかし、溶解方法、熱処理方法、塑性加工方法をいろいろ試みて実験を行った結果、Crを添加しただけでは、機械的性質や導電率が今ひとつ安定せず、経済性にも十分に満足するものではなかった。
【0012】
これらの問題を解決するため、少量の添加量で導電率を落とさずに、機械的性質を安定させ、目標規格を十分満足させるような添加元素がないかと試みた。すると、添加元素としてSnを添加し、熱処理条件をコントロールしながら冷間塑性加工を一定以上に加える事により、前記目標規格を満たすとともに経済的な電極材料を得る事ができた。
【0013】
次に、Cu以外の各元素の添加量及び効用について説明する。各添加元素は、Ni1.5〜3.0wt%、Si0.4〜0.8wt%、Cr0.5〜1.5wt%、Sn0.1〜0.3wt%の配合割合でCuに添加する。即ち、Niは、Cuと溶け合って、機械的性質を向上させるのに役立つ、基本的な添加元素である。そして、この添加量が、1.5wt%よりも少ないと、Siその他の添加元素との関係で、Ni2Siの形成も少なくなるし、Crとのバランスがとれなくなるため、目標規格の機械的性質を満足する事ができない。反対に、Niを3.0wt%よりも多く添加すると、導電率が悪くなる。従って、Niは1.5〜3.0wt%で添加する必要がある。
【0014】
また、Siは、Niと化合する事によりNi2Siとなるとともに、Crとも化合する事によりクロムケイ化物を形成する。そのため、導電率を落とさず機械的性質、耐熱性、耐高温酸化性を向上させる事ができる。このSiの添加量が0.4wt%よりも少ないと、NiやCrとの化合が良好に行われず、機械的性質を向上させる事ができない。また、それに見合った導電率も達成できない。また、Siの添加量が0.8wt%よりも多いと、ケイ化物が過剰に形成されるので、銅合金が脆くなり、伸びが減少するとともに機械的強度の向上も望めない。従って、Siは0.4〜0.8wt%で添加する必要がある。
【0015】
また、Crは、Cuと溶け合い熱処理を施す事により、析出強化を促進するものである。また、前述の如く、Crの一部はSiと化合する事により、クロムケイ化物を形成し、導電率を落とさずに機械的性質、耐熱性の向上に寄与する。また、CrとCuが析出強化する事により、機械的性質を向上させるとともに、導電率も優れたものとなる。また、このCrの添加量は、NiとSiの各添加量とのバランスを考慮する必要がある。即ち、Crの添加量が0.5wt%よりも少ないと、十分な析出強化が生じないし、Ni及びSiの添加量に対するバランスが悪くなるので、導電率が低下するものとなる。
【0016】
また、材料の溶解を経済的な大気溶解で行う場合、適宜のフラックスを添加して、溶解作用の改善を行っている、しかしながら、Crの添加量が1.5wt%よりも多いと、SiとCrの化合したクロムケイ化物が過剰となる。そのため、ノロが多く発生するとともに、Crの添加歩留まりも悪くなり、不経済である。また、これらが原因で、結果的に材料の機械的性質も悪くなり、切削性が低下して機械加工を良好に行えなかったり、品質管理に重要な化学分析も行いにくいものとなる。従って、Crは0.5〜1.5wt%で添加するとともに、Ni及びSiの添加量との配合バランスを考慮して添加量を決定するのが好ましい。
【0017】
また、Snは、後述する熱処理による焼き入れ後の、冷間塑性加工の性能を促進させる効果を持つものである。しかも、同時に添加したSiに比べ、導電率を低下させにくいため、冷間塑性加工の促進効果と相乗して、本発明の銅合金の重要な目標である、導電率を低下させる事なく、機械的性質を向上させる事が可能となる。即ち、前述の添加元素である、Ni、Si、Crだけでは、前記目標規格の機械的性質及び導電率が安定して得られないので、それを補う役目を果たす必須な元素である。
【0018】
また、本銅合金は、NiとSiを添加しているので、耐高温酸化性は元々良好であるが、Snを添加する事により、電極材料としての耐高温酸化性を更に向上させる事ができる。また、Cu−Sn合金は、周知の如く耐食性が良好である。また、前述の如くNi2Siも優れた耐熱性を持つものである。これらの相乗効果により、本銅合金は、耐高温酸化性が更に向上するものとなる。
【0019】
そして、Snの添加量は、0.1〜0.3wt%とする。この添加量が0.1wt%よりも少ないと、この耐高温酸化性を十分に向上させる事ができないし、焼き入れ後の冷間塑性加工の性能の向上も十分に発揮できない。また、Snを0.3wt%よりも多く添加すると、他の添加元素との関係で、導電率を悪くするとともに熱間塑性加工性も低下する。
【0020】
尚、前記添加元素は、好ましくはNi1.8〜2.5wt%、Si0.4〜0.65wt%、Cr0.5〜1.3wt%、Sn0.13〜0.25wt%の配合割合で、Cuに添加する。また、更に好ましくは、Ni1.86〜2.43wt%、Si0.49〜0.6wt%、Cr0.53〜1.2wt%、Sn0.14〜0.2wt%の配合割合で、Cuに添加する。
【0021】
以上のような組成で、抵抗溶接用銅合金電極材料を製造する方法は、まず前記配合割合の組成物を、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施す。この温度が850℃よりも低いと、銅合金としての焼き入れ効果が十分でなく、950℃よりも高いと、オーバーヒートにより結晶が粗大化し易くなる。
【0022】
次に、冷間塑性加工率が元の断面積に対し、35%〜90%で冷間塑性加工を施す。この冷間塑性加工率が35%よりも低いと、銅合金の機械的性質を満足させず、電極材料として好ましくない。また、冷間塑性加工率が90%よりも高いと、機械的性質の伸び率が低くなるため、やはり電極材料として好ましくない。その後、時効処理温度450〜550℃で時効処理を施す事により、電極材料製造用の銅合金を形成する事ができる。この時効処理温度に関しても、450℃よりも低いと、十分な析出ができず、機械的性質及び導電率も低いものとなり、550℃よりも高いと、オーバー時効となる。
【0023】
上述の如く形成する事により、当初の目標規格を満足する、機械的性質及び導電率に優れた電極材料を得る事ができる。また、有害の懸念があり高価なBeを含有していないので、無公害で廉価な製品を得る事ができる。そして、その製造も、容易な製造方法で廉価に形成する事ができる。
【0024】
【実施例】
本発明の実施例及び比較例の銅合金に付いて、各材料及び配合割合を下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上記表1に示す材料を各々用意し、各実施例及び比較例ごとに黒鉛ルツボに充填した。そして、材料を充填した上面を木炭でカバーし、黒鉛ルツボを高周波電気炉にセットして溶解処理を行った。前記材料のうち、Siに関しては、Si(10%)−Cu母合金を、Zrに関しては、Zr(50%)−Cu母合金を各々用意して使用した。また、添加元素ごとに、各々有効なフラックスを用いながら、1200℃以上の温度で溶解処理を行った。
【0027】
次に、前記溶解物を内径φ80mmの金型枠に注入し、400kg/cm2の圧力を掛けながら、鋳塊を製作した。そして、出来上がった鋳塊の外周に、機械加工にて面削を行った後、温度850℃の熱間鍛造にて丸棒形状に加工した。尚、この丸棒の寸法は、後工程の冷間塑性加工率(後記の表2を参照)に応じて、各々外径寸法が異なる丸棒とし、冷間塑性加工後に同寸法となるようにした。
【0028】
そして、上記丸棒に、900℃の温度で溶体化処理を施す。この溶体化処理後に、丸棒の外周を目で確認しながら、研削機(ベビーサンダー)にてキズがある部分を研削した。
【0029】
次に、丸棒に冷間塑性加工を施すが、第8乃至第13比較例、及び第15比較例に関しては、この加工を施さなかった。そして、他の比較例及び全実施例に関しては、元の断面積に対する冷間塑性加工率が表2で示す値にて、それぞれ冷間塑性加工を施した。尚、冷間塑性加工率が27%のものは、冷間鍛造にて冷間塑性加工を行い、冷間加工率が35%以上のものは、引抜加工にて行った。そして、冷間塑性加工の有無に関わらず、全て最終寸法がφ25mm又はφ30mmの丸棒となるようにした。
【0030】
その後、前記丸棒を電熱熱風炉に挿入し、520℃の温度で時効処理を行った。
【0031】
上述の如く製作した、丸棒形状の銅合金から、JIS4号試験片を製作し、その機械的性質と導電率を測定した。その試験結果を、下記表2に示す。尚、この表2には、各実施例及び比較例に対する冷間塑性加工率及び、目標とする規格も記した。この目標規格とは、前述の如く、JIS Z 3234 第3種規格をベースに、電極材料としての使用を考慮した数値である。
【0032】
【表2】
【0033】
また、前記表1の銅合金より抜粋したものから、φ25mm、L20mmの試験片を採取して、高温硬さ試験及び焼鈍硬さ試験を行った。これらの試験は、第1乃至第5実施例と、第1乃至第6比較例、第8比較例、第12乃至第13比較例及び第15比較例の銅合金に付いて行った。この高温硬さ試験の結果を表3に、焼鈍硬さ試験の結果を表4に示す。また、各々の測定値は、ブリネル硬さHB(10/500)で示した。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
上記各試験結果から、本発明の実施例の効果について述べる。まず、表1の成分配合例は、各々の材料を配合して鋳造された鋳塊より、分析試料を採取して分析を行った結果の数値である。そのため、鋳造時のフラックスの混合やノロの発生等により、目標とする配合割合の値と僅かに誤差を生じている。そして、Cr、Zr、Mgに付いては、誤差が多少大きかったが、全体的には問題はなく、特にNiとSnに関しては、目標値との誤差は殆どなかった。
【0037】
次に、表2の機械的性質、導電率の試験結果に付いて、表1の配合割合とともに以下に説明する。まず、第1乃至第3比較例は、NiとSiの添加量を同量とし、Crの添加量を変えて試験を行ったものである。これらは全て、実施例よりもCrの添加量が少ないが、組成物中でNi2Siの形成が良好に行われているため、機械的性質は、目標規格を満足している。しかしながら、導電率は目標規格に達しなかった。この原因として、冷間塑性加工率が35%以下である事の影響もあると思われる。また、Crの添加量の減少に比例して、引張強さが低下しているのが分かる。
【0038】
また、第4乃至第6比較例は、第1乃至第3比較例と同様に、Crの添加量を少なくした例であるが、更にNiとSiの添加量も少なくして、導電率を向上しようと試みたものである。その結果、導電率は全て目標規格を満足したが、機械的性質は、目標規格に達しなかった。
【0039】
また、第7比較例は、Mgを添加する事により、析出強化の促進と、溶解時の他の添加元素の脱酸効果の促進を実現しようと試みた例である。しかしながら、導電率の向上は望めなかった。また、第8、第9比較例は、Siの添加量を、実施例よりも少なくした例である。この場合は、冷間塑性加工も行わなかった事と相俟って、機械的性質と導電率ともに目標規格を満足できなかった。
【0040】
また、第10比較例は、Crの代わりにZrとAgを添加した例である。Zrを添加する事により、Siの添加歩留まりが悪く、鋳造後のSiの配合割合が少なくなった。このSiの添加量が少ない事と、冷間塑性加工を行わなかった事と相俟って、機械的性質及び導電率のどちらも目標規格を満足できなかった。
【0041】
また、第11、第12比較例では、CrとZrを同時に添加させる事により、冷間塑性加工を行わなくても、機械的性質及び導電率の良好な銅合金ができないかと試みたものであるが、結果は目標規格とかけ離れたものであった。また、第13比較例は、Crの添加量が各実施例よりも少ないし、冷間塑性加工も行っていないため、やはり機械的性質と導電率ともに目標規格を満足できなかった。
【0042】
また、第14比較例に付いても、Crの添加量を各実施例より少なくしているが、この場合は高い冷間塑性加工率で冷間塑性加工を実施している。しかしながら、導電率の目標規格を満足させるため、NiとSiの添加量を抑えているとともに、Crの添加量も少ないため、相乗効果により引張強さが目標規格を下回った。また、第15比較例は、Crの添加量が各実施例より少なく、冷間塑性加工も行っていないため、やはり引張強さが目標規格を満足していなかった。
【0043】
更に、上記第1乃至第15比較例では、Snを添加していないため、各元素の添加量が互いにアンバランスであり、各元素の添加量の違いによる、機械的性質と導電率の測定結果の関連性が不明瞭であった。そのため、今ひとつ機械的性質と導電率が安定したものを得る事ができなかった。
【0044】
そこで、第16比較例では、Snを添加して冷間塑性加工を行った。しかし、それにもかかわらず、NiとCrの添加量に対し、Siの添加量が少なくてバランスが悪いため、引張強さが目標規格に達しなかった。
【0045】
上述の如き第1乃至第16比較例に対して、本発明の第1乃至第7実施例の銅合金は、表2に示す如く、機械的性質及び導電率とも目標規格を十分に満足するものであった。この測定結果より、少なくともNi1.86〜2.45wt%、Si0.47〜0.62wt%、Cr0.53〜1.24wt%、Sn0.14〜0.23wt%の配合割合で各添加元素をCuに添加する事により、機械的性質と導電率に優れた銅合金を得られる事が分かった。
【0046】
また、このような銅合金を得るためには、前述の如く、NiとCrの添加量に対するSiの添加量のバランスも重要である。即ち、NiとCrの合計添加量を1とした場合、第16比較例では、Siの添加比率は0.12であった。これに対して、第1乃至第7実施例では、それぞれ0.15、0.2、0.19、0.19、0.19、0.15、0.19であった。従って、NiとCrの合計添加量を1とした場合のSiの添加比率は、少なくとも0.15〜0.2の範囲とするのが好ましい。また、鋳造時の誤差等を考慮して、0.15〜0.25の範囲で添加しても良い。
【0047】
また、表3の高温硬さの測定試験及び表4の焼鈍硬さの測定試験は、電極材料としての耐熱性を調べるためのものである。そして、この常温硬さと高温硬さに寄与する添加元素として、NiとSiがその役目を殆ど果たしているため、表3に示す如く、各比較例と実施例では、第12比較例を除き、常温硬さと高温硬さの値に殆ど差がなかった。
【0048】
但し、NiとSiの添加量が少ない第4乃至第6比較例は、常温硬さは低いが、基本的な耐熱性は維持しており、温度に対する高温硬さの下降カーブは、他の試料と同様の下降カーブを描いている。また、前述の例外である第12比較例は、Zrを添加しており、大気溶解に於いてCrとSiとZrの合金化が良好に行われなかったため、組成物中にはNi2Siがうまく形成できず、機械的性質に劣るものとなった。従って、CrとSiとZrとを組み合わせた添加元素は、本発明の目的からすれば不適切であると言える。また、このようにNi2Siの形成がうまくできていない故に、表3に示す如く高温硬さにも劣るものとなっている。
【0049】
また、表3の結果と表4との結果を比較した場合、次のような関連性がある。即ち、通常の電極材料は、分散強化銅を除き、高温硬さと焼鈍硬さは関連性があって、高温硬さに優れているものは、焼鈍硬さも優れていると言える。そして、本発明でも、同様の測定結果が得られた。そして、この測定結果より、少なくともNi1.99〜2.43wt%、Si0.49〜0.6wt%、Cr0.53〜1.2wt%、Sn0.14〜0.2wt%の配合割合で各添加元素をCuに添加する事により、機械的性質と導電率だけでなく、耐熱性にも優れたものとなり、電極材料としての使用に適した銅合金を得られる事が分かった。
【0050】
尚、各添加元素の配合割合は、上記が最も好ましいが、Ni1.8〜2.5wt%、Si0.4〜0.65wt%、Cr0.5〜1.3wt%、Sn0.13〜0.25wt%で添加しても、優れた電極材料を得る事ができる。更に範囲を広くして、Ni1.5〜3.0wt%、Si0.4〜0.8wt%、Cr0.5〜1.5wt%、Sn0.1〜0.3wt%とする事も可能である。
【0051】
【発明の効果】
本発明に於いては上述の如く、CuにNi、Si、Cr及びSnを添加する事により、JIS Z 3234 第3種規格の機械的性質及び導電率を満足させるとともに、電極材料として重要な耐熱性にも優れた銅合金を得る事ができる。また、電極材料としての最適の条件を備えた銅合金を、有害の懸念があるとともに高価なBeを添加しないで形成する事ができる。しかも、このような廉価で安全な電極材料を、容易な製造方法で得る事ができる。
Claims (6)
- Ni1.5〜3.0wt%、Si0.4〜0.8wt%、Cr0.5〜1.5wt%、Sn0.1〜0.3wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる事を特徴とする抵抗溶接用銅合金電極材料。
- Ni1.8〜2.5wt%、Si0.4〜0.65wt%、Cr0.5〜1.3wt%、Sn0.13〜0.25wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる事を特徴とする抵抗溶接用銅合金電極材料。
- Ni1.86〜2.43wt%、Si0.49〜0.6wt%、Cr0.53〜1.2wt%、Sn0.14〜0.2wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる事を特徴とする抵抗溶接用銅合金電極材料。
- Ni1.5〜3.0wt%、Si0.4〜0.8wt%、Cr0.5〜1.5wt%、Sn0.1〜0.3wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる銅合金を、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施した後、冷間塑性加工率が元の断面積に対し、35%〜90%で冷間塑性加工を施し、次に時効処理温度450〜550℃で時効処理を施して製造した事を特徴とする抵抗溶接用銅合金電極材料の製造方法。
- Ni1.8〜2.5wt%、Si0.4〜0.65wt%、Cr0.5〜1.3wt%、Sn0.13〜0.25wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる銅合金を、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施した後、冷間塑性加工率が元の断面積に対し、35%〜90%で冷間塑性加工を施し、次に時効処理温度450〜550℃で時効処理を施して製造した事を特徴とする抵抗溶接用銅合金電極材料の製造方法。
- Ni1.86〜2.43wt%、Si0.49〜0.6wt%、Cr0.53〜1.2wt%、Sn0.14〜0.2wt%を含有し、残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる銅合金を、溶体化処理温度850〜950℃で溶体化処理を施した後、冷間塑性加工率が元の断面積に対し、35%〜90%で冷間塑性加工を施し、次に時効処理温度450〜550℃で時効処理を施して製造した事を特徴とする抵抗溶接用銅合金電極材料の製造方法。
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