JP5313302B2 - 転写加飾品の製造方法、転写加飾装置及び転写加飾品 - Google Patents

転写加飾品の製造方法、転写加飾装置及び転写加飾品 Download PDF

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Description

この発明は、複合品の一方の面に転写による加飾が施された転写加飾品の製造方法、転写加飾装置及び転写加飾品に関するものである。
金属や樹脂等の成形品の表面に加飾が施された製品は、自動車、家庭用電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等あらゆる分野で使用されている。成形品の表面への加飾は、例えば、転写層を有する転写シートを成形品の表面に接触させて転写層の模様を転写することで行う。しかしながら、転写される成形品の表面形状が立体形状である場合には、転写シートを成形品の表面に沿って接触させるため、例えば、特許文献1に示す圧空成形装置を用いることもある。
特許第3017175号公報
アルミニウム板等の金属体に転写加飾する場合、金属体に対して転写シートを押し付ける圧力がある程度大きくないと、転写層が金属体の表面に密着しない。また、金属体の表面が絞りの深い形状等の立体形状の場合には、圧空成形装置を用いたとしても、金属体の表面に転写シートが均等に密着するように、均一で十分な圧力を付与することは困難であり、必要な圧力を付与するためには設備自体も大掛かりなものとなる。又、金属部と成形樹脂部とが連続する表面を有する複合品を加飾する技術がある(特願2009−272836、図7参照)。この技術で製造される製品は、開口を有する金属部と、その開口を充填するように金属部の裏面側に一体化された成形樹脂部と、金属部の表面と開口部分の成形樹脂部の表面に連続して形成された転写層とから構成されている。この製造方法では、射出成形金型内に転写シートと金属部とを所定の位置に配置し、キャビティに溶融樹脂を射出することにより、成形樹脂部の射出成形と転写層による表面加飾が同時に行われる。製品形状や成形条件によって、この製造方法では、溶融樹脂の流れと熱により、開口部分の転写シートは溶融樹脂の流れ方向に伸ばされ、金属部の転写シートは動きが抑制されているため、溶融樹脂の流れの先にある成形樹脂部と金属部との境界付近で転写シートにシワが発生することがある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、加飾時の転写シートのシワを防止して、複合品の表面を簡易かつ確実に転写層により加飾する、転写加飾品の製造方法及び転写加飾装置並びに転写加飾品を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、第1の発明は、表面の一部を構成する金属部と表面の他部を構成する成形樹脂部とが一体化された複合品の表面が加飾された転写加飾品の製造方法であって、第1型に前記複合品を配置する工程と、転写層を有する転写シートを、金属部の表面と成形樹脂部の表面との境界を跨ぐように対向する位置に配置する工程と、第1型と第2型とを型締めして、第2型と前記転写シートとの間にキャビティを形成する工程と、キャビティに媒体を射出して、その媒体の圧力で転写シートを複合品に押し付けるとともに、その媒体で転写シートを加熱して複合品の表面に転写層を固着させる工程とを備えている。
このように構成すると、転写シートを複合品の表面に対向する位置に配置した後、第2型と転写シートとの間に形成されたキャビティに媒体を注入し、媒体により転写シートを複合品に押し付けるので、複合品の表面が絞りの深い形状等の立体形状であったとしても、転写シートと複合品との間にエア溜まりが発生し難く、転写シートと複合品との密着性
が向上し、複合品に確実に転写層が転写される。金属部と成形樹脂部との境界にも確実に転写される。とまた、転写シートを複合品に向けて押し付ける媒体として、例えば溶融樹脂を用いることで、転写シートに対し圧力と共に熱が付与される。その結果、転写シートを媒体の熱により軟化させつつ複合品に押し付けることができ、複合品に対して転写層を転写し易くすることができる。さらに、大掛かりな製造装置を用いることなく、簡易な射出金型により転写加飾品の製造が可能となった。
第2の発明は、第1の発明の構成において、媒体が熱可塑性樹脂である。
第2型と転写シートとの間に形成されたキャビティに注入される媒体は、転写シートを複合品の表面に押し付けるために用いられるだけであり、最終的に製造される転写加飾品には何ら含まれない。したがって、使用済みの媒体はそのまま廃棄されてしまう可能性が高くなり、媒体が例えば溶融樹脂である場合には環境に対して悪影響を及ぼすことにもなる。しかし、媒体が熱可塑性樹脂であると、転写シートを複合品の表面に押し付ける際には、高温の状態で射出され、その後低温となって固化したとしても再び熱を加えることで軟化する。よって、転写シートを複合品の表面に押し付けるために用いられた熱可塑性樹脂は、廃棄することなく再度利用することができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明の構成において、型締め前において、転写シートと複合品とが接触するように減圧吸引する工程を更に備えている。
このように構成すると、転写シートを複合品の表面に押し付ける媒体の注入前に、転写シートが複合品に接触した状態となるので、媒体が転写シートを複合品の表面に押し付ける際に、複合品の表面に対する転写シートの接触ムラが起き難い。したがって、転写シートと複合品との密着性が向上し、複合品に確実に転写層が転写される。
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明の構成において、転写シートを第1型と第2型との型締め方向に沿って挟持する工程を備えている。
このように構成すると、転写シートが第1型と第2型との型締め方向に沿って挟持されるので、転写シートが複合品の表面からずれることが抑制されるとともに、複合品の表面に対し転写シートを確実に挟持して接触離隔することができる。
第5の発明は、表面の一部を構成する金属部と表面の他部を構成する成形樹脂部とが一体化された複合品の表面が加飾された転写加飾品を製造する転写加飾装置であって、転写層を有する転写シートが表面に配置された複合品が、複合品の裏面が接触するように載置される載置部が形成された第1型と、第1型との型締めにより、転写シートの表面との間にキャビティが形成される第2型と、転写シートを複合品に押圧する媒体をキャビティに注入する媒体注入機構とを備えている。
このように構成すると、複合品を転写シートと接触させた状態で載置部に載置し、第2型と転写シートとの間に形成されたキャビティに、媒体注入機構から媒体を注入して媒体により転写シートを複合品に押し付けることができ、結果として、確実に転写層が転写された転写加飾品を製造できる。
第6の発明は、第5の発明の構成において、転写シートを挟持し、複合品に対して近接・離隔させる挟持クランプを更に備えている。
このように構成すると、転写シートが挟持クランプで挟持された状態で複合品に対して接触・離隔するので、複合品の表面に転写シートが接触する状態と、複合品の表面から転写シートが離隔する状態が確実に保持される。その結果、複合品の表面に転写シートが接触する状態では、複合品に対し転写シートの位置がずれることが抑制され、複合品の表面から転写シートが離隔する状態では、複合品の第1型の載置部への載置及び、転写加飾品の第1型からの取出しが容易となる。
第7の発明は、第5又は第6の発明の構成において、載置部に複合品を載置した状態で、複合品の周縁部の端面が第1型の型面から離隔するように載置部の高さが設定されている。
このように構成すると、載置部に複合品を載置した状態で、複合品の周縁部が第1型の内面から離隔するよう載置部の高さを設定することで、複合品の周縁部の内方にまで転写シートを回り込ませることができ、複合品の表面の転写領域を拡げることができる。
第8の発明は、第5から第7のいずれかの発明の構成において、第1型の型面に、転写層が付着することを防止する付着防止コーティングが形成されている。
このように構成すると、金型の型面への転写層の付着を防止することができる
第9の発明は、第5から第8のいずれかの発明の構成において、キャビティに媒体を注入した状態で、媒体の圧力を高める加圧機構を更に備えている。
このように構成すると、キャビティに注入された媒体が圧縮されて転写シートの被加飾体の表面への押付力がさらに全体的に増すこととなり、転写層の複合品の表面への転写をより確実に行うことができる。
第10の発明は、転写加飾品であって、表面の一部を構成する金属部と表面の他部を構成する成形樹脂部とが一体化され、その表面に凹部又は凸部が形成された複合品と、第1から第4のいずれかの発明の製造方法を用いて、凹部又は凸部に転写された転写層とを備えている。
このように構成すると、複合品の表面に形成された凹部又は凸部が微細であっても、媒体の熱と圧力を受けた転写層は凹部または凸部に沿って密接する。その結果、転写加飾品において、複合品の表面に形成された凹部または凸部は転写層によって確実に転写されて加飾されることとなる。また、転写加飾品において、被加飾体の表面加工(シボやローレット等)と絵柄の位置とを合わせることも可能となる。
この発明では、媒体の圧力と熱を利用して転写シートを複合品の表面に密着させるため、加飾時の転写シートのシワを防止して、複合品の表面を簡易かつ確実に転写層により加飾することができる。
第1実施形態の転写加飾装置の構成を示す図である。 加飾シートを第1型に引き寄せた状態を示す図である。 型締めが完了した状態を示す図である。 樹脂注入の状態を示す図である。 型開き後の状態を示す図である。 転写加飾品を取り出した状態を示す図である。 第2実施形態の転写加飾装置の要部であり、(a)は樹脂注入の状態を示し、(b)は樹脂圧縮状態を示す。 別実施形態の転写加飾装置の要部を示す図である。 その(1)が複合品の概略構成を示した平面図であり、その(2)がその(1)で示したI−Iラインの断面図であり、その(3)がその(2)に対応した転写加飾品の断面図である
次に、発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
〔第1実施形態〕
図1から図6は、いずれも転写加飾品の製造工程を示す図である。転写加飾品は、複合品20に対し、加飾シートとして転写シート12を用いて加飾が施されて製造される。尚、図1から図8に示した複合品20は、金属部80と成形樹脂部81とからなる、図9に示した複合品20を簡略化して記載したものである。
転写加飾品の製造に用いられる転写加飾装置は、第1型1、第2型2、転写シート保持機構、及び媒体注入機構を備える。転写加飾品は、凸状部20aを有する複合品20と、複合品20の表面に形成された転写層12aと、を備えており、以下の製造工程を経て製造される。
[転写シート]
転写シート12は、基体シート12bと基体シート12b上に形成された転写層12aとを備えている。基体シート12bは、転写層12aを支持するシート体である。基体シート12bは、公知の転写シートの基体シートを使用することができる。基体シート12bの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。基体シート12bは、上記の合成樹脂から形成された単層シート、単層シートを2以上積層した積層シート、上記の合成樹脂を用いた共重合シート等が挙げられる。特に、この発明の各実施形態による転写加飾品の製造方法では、寸法安定性のよい、印刷乾燥により変形しにくいポリエチレンテレフタレート樹脂等の基体シートを容易に選択することができる。尚、真空吸引により転写シート12を複合品20に密着させた後、ゴム体で加圧する従来の転写では、所定の範囲で熱圧変形し易い基体シート12bを選択する必要がある。
転写層12aは、例えば、文字や絵柄を表現する図柄層、複合品と転写層との接着性を向上させる接着層を備えている。複合品20の表面の強度を確保し耐擦傷性を向上させるハードコート層や層間密着性を向上させるアンカー層を備えたり、複数の図柄層等同種の層を複数備えたりしてもよい。基体シート12bと転写層12aとの間に基体シート12bからの転写層12aの剥離性を向上させる離型層を備えてもよい。図柄層等は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法等のコート法により基体シート12b上に形成される。
[複合品]
図9の(1)及び(2)を参照して、複合品20は、中央が大きく開口した平面視矩形形状の金属部80と、その開口83を充填するようにして金属部80の裏面全体に一体化された成形樹脂部81とから構成されている。複合品20は、周縁が少し下方に立ち上がる形状をしている。金属部80が複合品20の表面の一部を構成し、成形樹脂部81の表面が複合品20の他部を構成し、金属部80の表面と成形樹脂部81の表面とはなめらかに接続している。転写加飾品の例として、開口83を液晶表示部とした携帯電話やスマートフォンの正面側筐体が挙げられる。この場合、成形樹脂部に透明な樹脂が使用される。図示していないが、転写加飾品では、成形樹脂部81を利用して、転写加飾品の裏面に背面側筐体との嵌合用のボスやリブを形成することができる。この場合、別工程でリブ等を取り付ける必要がなくなり、更に、リブ等が一体成形されているため、筐体全体の厚みを薄くすることもできる。図9の(3)を参照して、転写加飾品は、金属部80の表面と成形樹脂部81の表面とを覆うように形成された転写層12aを備えている。転写層12aは、例えば、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる、表面強度を向上させる透明なハードコート層が挙げられる。転写層12aは、単層であっても、複数の層が積層されたものであってもよく、複合品の形状に合わせて、部分的に図柄を形成してもよい。
金属部80は、例えば、凸状部20aを有するアルミニウム等の金属プレス板がある。金属部80は、金属板と同様に表面加飾することができるものであれば、樹脂成形体、ガラス等でもよい。金属部80の表面には、何ら前処理はなされないか、アルマイト処理(金属部80がアルミニウムの場合)、フレーム処理、プラズマ処理等の表面処理がなされているか、転写層12aが形成され易いように予め接着剤の塗付等の表面処理がなされているか、転写層12aが接着し易いシートが予め貼り付けられる。金属部80の表面処理や表面の被覆材は、金属部80と表面に形成される転写層12aの各組合せに応じて適合する材質を選択する必要がある。成形樹脂部81も、転写層12aが固着しやすくなるように、表面処理や接着シートや接着層等による表面被覆がなされてもよい。
成形樹脂部81の構成材料としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。又、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。更に、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用することができる。
[第1型]
第1型1には、複合品20が配置される載置部1Aが内面から突出して形成されている。載置部1Aは、複合品20の裏面の形状に対応する形状である。したがって、載置部1Aは、平面状や、凹状に形成されていてもよい。また、第1型1は、型締めの際に、複合品20に沿って加飾シートとして転写シート12が配置されるよう構成されている。第1型1の載置部1Aへの複合品20の配置が終了した段階で、複合品20と第2型2との間に転写シート12が配置される。転写シート12は転写層12aと基体シート12bとで構成されており、転写層12aが複合品の表面を加飾する。当該転写シート12は、例えば、ロール状の長尺フィルムを当該位置に展開配置したものである。
[第2型]
第2型2には、複合品20の表面に沿った形状を有するキャビティ面2Aが形成されており、第1型1との型締めによって、複合品20とキャビティ面2Aとの間に樹脂が注入可能なキャビティ空間Vを形成する。
[転写シート保持機構]
転写シート保持機構として、第1型1には、型面1aに向けて弾性付勢された第1クランプ4と第2クランプ5とが設けられている。詳細には、図1に示すように、第1クランプ4は第2クランプ5よりも型面1aに近い位置に設けられ、第1型1の内部を貫通する作動ロッド6が第1型1の内部に設けられた空間部1Bの可動プレート7に取付けられている。また、第2クランプ5は、第1型1の内部を貫通する作動ロッド8が第1型1の内部に設けられた空間部1Bの可動プレート9に取付けられている。
可動プレート9は第1クランプ4の作動ロッド6が取り付けられる可動プレート7よりも型面1aから離隔した位置に設けられており、作動ロッド8は可動プレート7を貫通して可動プレート9に取り付けられている。空間部1Bにおいて、可動プレート7は、可動プレート7と空間部1Bの型面1a側の壁面との間に配置された弾性部材7aによって型面1aから離隔する方向に付勢されている。可動プレート9は可動プレート7に弾性部材9aを介して連結されており、弾性部材9aは可動プレート9を型面1aから離隔する方向に付勢する。その結果、第1クランプ4、5が型面1aに向けて弾性付勢される。また、空間部1Bには可動プレート7及び9より型面1aに近い位置に固定プレート10が備えられている。
可動プレート9がエジェクトロッド、エアシリンダ等による押圧力を受け、弾性部材9aに抗して第1型1の型面1aに近づく方向に移動すると、弾性部材9aを介して可動プレート7も同方向に移動して、作動ロッド6,8が第1クランプ4及び第2クランプ5を型面1aから離隔させる。このとき、転写シート12は第1クランプ4及び第2クランプ5によって挟持された状態にある。可動プレート9がさらに型面1aに近づく方向に移動すると、可動プレート7は固定プレート10に接触して停止する。しかし、可動プレート9は可動プレート7の停止後も弾性部材9aに抗して型面1aに移動する。その結果、第2クランプ5が第1クランプ4から離隔して転写シート12の移動を許容する位置となる。
一方、可動プレート9がエジェクトロッド、エアシリンダ等の押圧力を受けない場合は、可動プレート9は弾性部材9aの弾性付勢力を受けて第1型1の型面1aから遠ざかる方向に移動し、可動プレート7も弾性部材7aの弾性付勢力を受けて第1型1の型面1aから遠ざかる方向に移動する。すなわち、第1クランプ4及び第2クランプ5は型面1aに近接し、第2クランプ5が第1クランプ4と接触して転写シート12を挟持して保持する位置となる。
[媒体注入機構]
第2型2には、媒体注入機構として溶融樹脂(媒体)30を射出して注入するゲート11が備えられている。ゲート11は、載置部1Aに配置された複合品20の表面に対向するようにキャビティ面2Aに形成されている。そして、第1型1と第2型2との型締めした状態において、キャビティ面2Aと複合品20の表面に配置された転写シート12との間に形成されるキャビティVにゲート11から媒体が注入される。
[媒体]
注入される媒体30は、粘度を有する液体や流動性を有する溶融樹脂等である。溶融樹脂については、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでであっても構わない。ただ、キャビティ面2Aと転写シート12との間に形成されたキャビティVに注入される媒体30は、転写シート12を複合品20の表面に押し付けるためだけに用いられる。よって、本発明では、使用済みの媒体30はそのまま廃棄するのではなく、再利用する。そのためには、溶融樹脂としては例えば熱可塑性樹脂を用いる。媒体30が熱可塑性樹脂であると、転写シート12を複合品20の表面に押し付ける際に高温の状態で注入され、その後低温となって固化したとしても再び熱を加えることで軟化するため、再利用が容易である。熱可塑性樹脂としては、例えば、PC/ABS、PE、ABS、PS、SAN、EVA、PVC、PMMA、PA、POM、PBT等が挙げられる。
[樹脂成形の処理手順]
図1に示すように、図外のマニピュレータ等を用いて複合品20を第1型1の載置部1Aに配置し、第2型2と第1型1に配置された複合品20との間に転写シート12を金属部80の表面と成形樹脂部81の表面との境界82を跨ぐように対向する位置に配置する。このとき、第1型1の載置部1Aに配置された複合品20は、第1型1に設けられた吸引部13により吸引されて保持される。尚、上記の複合品20を配置する工程の前に、複合品20を準備する工程がある。例えば、特願2009−272836の図7で示した製造方法から加飾シートSを取り除いた形態により製造される。詳しくは、金型内に金属部80を配置する工程と、型締めしてキャビティに溶融樹脂を射出する工程と、保圧・冷却して金属部80と成形樹脂部81とを一体化させる工程と、型開きして複合品20を取り出す工程とを備えている。金属部80は、金型内に配置する前に予め所定の立体形状に形成されていても、射出成形時に所定の立体形状に変形するように構成されてもよい。
次に、第1クランプ4及び第2クランプ5により転写シート12を挟持し、必要に応じてヒータで転写シート12を加熱した後、図2に示すように、第1クランプ4及び第2クランプ5を第1型の型面1aの方向に移動して、転写シート12を複合品20の表面に沿わせる。このとき、転写シート12は、第1型1に設けられた吸引部13により吸引されて保持される。
図3に示すように、第1型1と第2型2との型締めが完了すると、第2型2のキャビティ面2Aと複合品20の表面に配置された転写シート12との間にキャビティVが形成される。
次に、図4に示すように、形成されたキャビティVに第2型2に備えられゲート11から溶融樹脂30を注入する。このとき、キャビティVに注入された溶融樹脂30によって転写シート12が複合品20の表面に向けて押圧され、その結果、複合品20の表面に転写シート12が確実に接着されることとなる。ここで、キャビティVに注入される溶融樹脂30が高温である場合には、溶融樹脂30が転写シート12を加熱し、複合品20の表面をさらに加熱することとなり、複合品20の表面への転写シート12の転写層12aの転写がより確実に行われる。ここで、射出される溶融樹脂の温度は、例えば280℃以上になるよう設定されており、第1型1及び第2型は例えば80℃以上になるよう設定されている。
図5に示すように、溶融樹脂30が硬化した後、第2型を第1型から離隔して型締めを開放し、転写フィルム12を第1クランプ4及び第2クランプ5で挟持した状態のまま被加飾体20の表面から離隔する。その後、図6に示すように、第1型1に設けられた押し出し棒(図示せず)により転写加飾品Pを押し出して取り出すとともに、第2型2に設けられた押し出し棒(図示せず)により硬化した溶融樹脂30を押し出し、転写シート12の送りを再開する。
得られた転写加飾品Pは、複合品20の表面が転写層12aにより確実に加飾される。こうして、本発明に係る製造方法及び転写加飾装置により、複合品20の表面の加飾を行うことができる。また、溶融樹脂30として熱可塑性樹脂を用いた場合には、硬化した樹脂に熱を加えて溶融樹脂に戻す等の別処理を行い、キャビティVに注入する媒体として再利用する。
〔第2実施形態〕
この実施形態では、第1実施形態の構成と異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明を省略する。本実施形態では、キャビティVに媒体30を注入した状態で、媒体30の圧力を高める加圧機構が設けられている。図7(a)は溶融樹脂が注入された直後の状態を示し、図7(b)は注入された溶融樹脂が圧縮された状態を示す。
図7(a)、図7(b)に示すように、キャビティV内の媒体30の圧力を高める加圧機構として、第2型2のキャビティ面の内部にスライド型3が備えられている。スライド型3は、第2型2に対して型締め方向に相対移動可能であり、スライド型3と第2型2との間には、スライド型3を第1型1から離隔する方向に付勢する弾性部材3aが設けられている。型締め後において溶融樹脂30が射出される際には、スライド型3は第2型2のキャビティ面から後退した位置に保持され(図7(a))、溶融樹脂30の射出が完了した後に、スライド型3を弾性部材3aに抗して第1型1に向けて前進させる(図7(b))。その結果、キャビティVの領域は小さくなり、注入された溶融樹脂30が圧縮され、転写シート12の複合品20の表面全体への押圧力が増すこととなり、複合品20への転写層による転写がより確実に行われる。
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、複合品20は、その周縁部が第1型の型面1aに接触した状態で第1型1の載置部1Aに載置された例を示したが、図8に示すように、第1型1に形成された載置部1Aが、載置部1Aに複合品20が載置された状態で、複合品20の周縁部20bが第1型1の型面1aから離隔するよう高さ設定されていてもよい。こうして、複合品の周縁部20bが第1型1の型面1aから離隔していると、転写シート12は複合品20の周縁部20bからその内方に回り込むことが可能となり、複合品20の転写領域が拡がることとなる。なお、転写シート12及び溶融樹脂30が複合品20の周縁部20bからその内方に回り込んでいると、型開きの際に、複合品20の表面から溶融樹脂30及び転写シート12がスムーズに離隔しない場合が発生する。このような場合には、溶融樹脂30をゴム、ウレタン系の柔らかい樹脂で構成し、転写シート12は枚葉にする。あるいは、アンダーカットをはずす機構を金型に組み込む。
(2)図8に示すように、第1型1の型面1aに、転写シート12から転写層が転写されるのを防止する付着防止コーティング14が施されていてもよい。このように、型面1aに付着防止コーティング14が施されていると、型面1aへの転写層12aの転写を確実に防止することができる。付着防止コーティング14としては、型面1aにシリコンやフッ素加工を施したり、表面凹凸処理(ブラスト・エッチング)をしたり、これら両者を併用して行う。
(3)第1クランプ4及び第2クランプ5の転写シート12を保持する面にテフロン(登録商標)やコーティング済みリング等の摩擦を低減する部材を配置してもよい。こうすると、型締め前に複合品20の凸状部20aに転写シート12を押し付ける際に、転写シート12の移動が許容され、転写シート12を無理に引き伸ばすことなく、複合品20の凸状部20aに沿わせることが可能となる。
(4)上記の実施形態では、複合品20の表面に凹凸は形成されていないが、図8に示すように、複合品20は例えば貫通部20c等を備えて表面に凹凸が形成されていてもよい。この場合であっても、溶融樹脂(媒体)30が転写シート12を貫通部20cに密着するように押し付けて複合品20に転写層12aを確実に転写することとなる。
(5)上記の実施形態では、複合品20の表面に転写層12aによる加飾のみを施したが、第1型1にも樹脂を射出するゲートを設け、複合品20の表面に転写層12aによる加飾と同時に複合品20の裏面に樹脂部を成形するようにしてもよい。また、第1型1に金型の温度を調整する温度調整機構を設けて、複合品20の温度を調整するようにしてもよい。こうすると、複合品20が例えば金属体である場合には、温度調整機構によって加熱された複合品20の表面に対し、転写シートの転写層は転写し易くなる。
(6)上記の実施形態では、転写加飾装置を垂直方向(縦向き)に配置したが、水平方向(横向き)に配置してもよい。
(7)上記の実施形態では、転写層12aを有する転写シート12を用いる例を示したが、これに代えて、複合品20の表面に対し、無地の基体シートまたは基体シート上に模様等が付されたインサートシートをそのまま一体にして加飾する構成にしてもよい。また、上記の実施形態では、転写シート12をロール状の長尺フィルムにして複合品20の表面に対向する位置に展開配置する例を示したが、複合品20の外形に合わせてカッティングしたものを配置してもよいし、複合品20より大きい任意の形状(例えば、長方形の枝葉シート)でもよい。
本発明の各実施形態による転写加飾品の製造方法では、複合品20の表面に転写シート12を密着させ、転写層12aを転写させるにあたって、溶融樹脂30による加圧及び加熱を用いている。加圧は転写シート12への直接的な加圧であり、加熱は、転写シート12への直接的な加熱及び複合品20への加熱である。溶融樹脂30といった流体により転写シート12を複合品20の表面に密着させているため、複合品20の表面がなめらかな場合はもとより、エンボスやシボといった微細な凹凸形状の場合であっても、その凹凸形状に溶融樹脂30が流れ込み、転写シート12が凹凸形状に精度よく密着し、凹凸形状に精度よく転写層12aを転写させることができる。あるいは、大きな凹凸形状であっても、その凹凸形状の隅部にまで精度よく転写層12aを転写させることができる。また、溶融樹脂30の流入地点から徐々に拡大する、溶融樹脂30の流れによる連続的な加圧であるため、転写シート12を密着させる過程での、転写シート12と複合品20との間に空気溜まりを作ってしまう、いわゆるエアかみの発生も効果的に防止することができる。
また、本発明の各実施形態による転写加飾品の製造方法では、基体シート12bに寸法安定性のよい、印刷乾燥により変形しにくい材料を選択することができるため、図柄の位置や大きさの印刷精度の高い転写シート12を用いて、転写を行うことができる。そのため、結果として、図柄の位置や大きさと複合品20の凹凸形状との位置精度の高い転写加飾品Pを製造することができる。
この発明の転写シートは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の筐体、自動車部品の加飾に利用することができる。
1 第1型
2 第2型
3 スライド型
4 第1クランプ
5 第2クランプ
11 ゲート
12 転写シート(加飾シート)
13 吸引部
14 付着防止コーティング
20 複合品
20a 凸状部
30 媒体(溶融樹脂)
80 金属部
81 成形樹脂部
82 境界
V キャビティ
P 転写加飾品

Claims (9)

  1. 表面の一部を構成する金属部と表面の他部を構成する成形樹脂部とが一体化された複合品の表面が加飾された転写加飾品の製造方法であって、
    第1型に前記複合品を配置する工程と、
    転写層を有する転写シートを、前記金属部の表面と前記成形樹脂部の表面との境界を跨ぐように対向する位置に配置する工程と、
    前記第1型と第2型とを型締めして、前記第2型と前記転写シートとの間にキャビティを形成する工程と、
    前記キャビティに熱可塑性樹脂を射出して、その熱可塑性樹脂の圧力で前記転写シートを前記複合品に押し付けるとともに、当該熱可塑性樹脂で前記転写シートを加熱して前記複合品の表面に前記転写層を固着させる工程とを備えた、転写加飾品の製造方法。
  2. 型締め前において、前記転写シートと前記複合品とが接触するように減圧吸引する工程を更に備えた、請求項1記載の転写加飾品の製造方法。
  3. 前記転写シートを前記第1型と前記第2型との型締め方向に沿って挟持する工程を備えた、請求項1又は2記載の転写加飾品の製造方法。
  4. 表面の一部を構成する金属部と表面の他部を構成する成形樹脂部とが一体化された複合品の表面が加飾された転写加飾品を製造する転写加飾装置であって、
    前記転写層を有する転写シートが表面に配置された前記複合品が、前記複合品の裏面が接触するように載置される載置部が形成された第1型と、
    前記第1型との型締めにより、前記転写シートの表面との間にキャビティが形成される第2型と
    溶融状態で前記転写シートを加熱しながら前記複合品に押圧し、前記転写シートを前記複合品の表面に接着させ、硬化後に前記複合品から分離される熱可塑性樹脂を前記キャビティに注入する媒体注入機構とを備えた、転写加飾装置。
  5. 前記転写シートを挟持し、前記複合品に対して近接・離隔させる挟持クランプを更に備えた、請求項4記載の転写加飾装置。
  6. 前記載置部に前記複合品を載置した状態で、前記複合品の周縁部の端面が前記第1型の型面から離隔するように前記載置部の高さが設定された、請求項4又は5記載の転写加飾装置。
  7. 前記第1型の型面に、前記転写層が付着することを防止する付着防止コーティングが形成された、請求項4から6のいずれかに記載の転写加飾装置。
  8. 前記キャビティに前記熱可塑性樹脂を注入した状態で、前記熱可塑性樹脂の圧力を高める加圧機構を更に備えた、請求項4から7のいずれかに記載の転写加飾装置。
  9. 表面の一部を構成する金属部と表面の他部を構成する成形樹脂部とが一体化され、その表面に凹部又は凸部が形成された複合品と、
    請求項1から3のいずれかに記載の製造方法を用いて、前記凹部又は前記凸部に転写された転写層とを備えた、転写加飾品。
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