JP5313207B2 - Bf4−及びf−の同時計測方法及びシステム - Google Patents

Bf4−及びf−の同時計測方法及びシステム Download PDF

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Description

本発明はBF 及びFの同時計測方法及びシステムに関する。さらに詳述すると、本発明は、脱硫排水等の被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測するのに好適な方法及びシステムに関する。
石炭火力発電所から排出される脱硫排水中のホウ素は、主にホウ酸(HBO)やテトラフルオロホウ酸イオン(BF )の形態で存在している。ここで、BF はホウ素原子とフッ素原子により構成されるイオンであることから、排水中のホウ素濃度のみならず、フッ素濃度を上昇させる要因にもなる。
フッ素の排水基準は、海域の公共用水域に放流される排水については15mg/Lに設定され、海域以外の公共用水域(陸水域)に放流される排水については8mg/Lに設定されている。そこで、これらの排水基準を遵守すべく、排水中に含まれるBF は専用の分解槽でホウ酸とフッ化物イオン(F)に分解し、Fをフッ化物塩として排水から分離・除去し、排水中のフッ素濃度を低減する手法が提案されている(非特許文献1)。BF の分解を効率よく行い、Fをフッ化物塩として排水から効率よく分離・除去するためには、BF の分解条件やFをフッ化物塩とするために最適な薬剤の量を、排水中のBF とFを計測して決定することが重要となる。
恵藤良弘,中原敏次,現場で役立つ無機排水処理技術,工業調査会(2005).
しかしながら、排水中のBF を簡易迅速に再現性良く計測することは難しかった。即ち、排水中のBF の測定法としては、メチレンブルー吸光光度法、イオンクロマトグラフ法、液体膜型BF 電極を用いた電位差分析法が知られている。このうち、メチレンブルー吸光光度法とイオンクロマトグラフ法は、煩雑な前処理を必要とするため、簡易迅速に測定を行うことができない。しかも据置型装置を必要とすることから、現場での計測が困難である。電位差分析法についても、信頼性の高いデータを得るためには電極の保管・管理に熟練を要し、電極の保管・管理に未熟な者が再現性のある信頼性の高いデータを得ることは困難であった。このことから、電位差分析法は、汎用性の高い計測方法とは言えなかった。
また、排水のBF の濃度は、BF の分解によって経時的に減少し、その際にFが生成する。逆に、排水中にFが多く存在し、ホウ酸が含まれていると、排水のBF の濃度は、BF の生成によって経時的に増加し、その際にFが減少する。このことから、排水中のBF を管理するためには、BF の濃度だけでなく、BF の生成、分解に関与するFの濃度も把握する必要がある。しかしながら、Fの計測をBF の計測と同時に行う方法は確立されていないことから、BF とFを計測する場合には、Fの計測とBF の計測とを別々に行っているのが現状である。したがって、計測に手間と時間がかかるだけでなく、Fの計測とBF の計測に時間差が生じた結果として、BF とFに由来する正確な全フッ素濃度の計測ができないという問題があった。
そこで、本発明は、排水等の被検溶液に含まれるBF 及びFを簡易迅速に再現性良く同時計測することのできる方法及びシステムを提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者は鋭意研究した結果、連続分析や測定試料の少量化、計測の迅速化を図る目的で使用されるフローセルにBF を含む被検溶液を流通させ、これに液体膜型BF 電極に接触させてBF の計測を実施したところ、BF を迅速に再現性良く計測できることを知見した。
本願発明者は、この知見に基づき、フロー方式によりBF を計測した際の再現性の良さや計測の迅速性を最大限に生かしながら、BF 及びFを簡易迅速に再現性良く同時計測することを可能とする構成について検討を行った。その結果、被検溶液を流通路に送液し、流通路に被検溶液を流通させ、流通路内を流通する被検溶液に液体膜型BF 電極を接触させる一方で、固体膜型F電極を接触させることで、フロー方式によりBF を計測した際の再現性の良さや計測の迅速性を最大限に生かしながらも、BF 及びFを簡易迅速に再現性良く同時計測することのできる極めて合理的且つコンパクトな構成とできることを知見するに至り、本願発明を完成するに至った。
即ち、本発明のBF 及びFの同時計測方法は、被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測する方法であって、被検溶液を流通路に送液し、流通路内を流通する被検溶液に液体膜型BF 電極を接触させてBF の計測を行うと共に、固体膜型F電極を接触させてFの計測を行うようにしている。
具体的には、流通路を2つとし、2つの流通路に被検溶液を同時に送液し、2つの流通路のうちの一方の流通路に液体膜型BF 電極を接触させ、他方の流通路に固体膜型F電極を接触させるようにしている。または、流通路の上流側に液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極のいずれか一方を配置し、下流側に液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極の他方を配置するようにしている。
ここで、本発明のBF 及びFの同時計測方法において、液体膜型BF 電極に酸及びFが添加されたBF 標準液を接触させて校正を行うことが好ましい。また、このBF 標準液のF−濃度は0.1mol/L以上とし、pHは4以下とすることが好ましい。
次に、本発明のBF 及びFの同時計測システムは、被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測するシステムであって、被検溶液を貯留する容器と、第一のフローセルと、第二のフローセルと、第一のフローセルに備えられる液体膜型BF 電極と、第二のフローセルに備えられる固体膜型F電極と、液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極と接続されてBF 及びFを計測する計測装置とを備え、容器から第一のフローセル及び第二のフローセルのそれぞれに被検溶液を同時に送液する送液手段を備えて、第一のフローセル内を流通する被検溶液に液体膜型BF 電極を接触させると共に、第二のフローセル内を流通する被検溶液に固体膜型F電極を接触させるものとしている。
また、本発明のBF 及びFの同時計測システムは、被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測するシステムであって、被検溶液を貯留する容器と、第一のフローセルと、第二のフローセルと、液体膜型BF 電極と、固体膜型F電極と、液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極と接続されてBF 及びFを計測する計測装置とを備え、液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極のいずれか一方が第一のフローセルに備えられ、液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極の他方が第二のフローセルに備えられ、第一のフローセルの液体流出部と第二のフローセルの液体流入部とが接続され、容器から第一のフローセルに被検溶液を送液する送液手段を備えて、被検溶液が第一のフローセルを流通して液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極のいずれか一方と接触した後に、被検溶液が第二のフローセルを流通して液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極の他方と接触するものとしている。
本発明のBF 及びFの同時計測方法及び同時計測システムによれば、被検溶液に含まれるBF 及びFを簡易迅速に再現性良く同時計測することが可能となる。ここで、被検溶液のBF の濃度は、BF の分解によって経時的に減少し、その際にFが生成する。逆に、被検溶液にFが多く存在し、ホウ酸が含まれていると、排水のBF の濃度は、BF の生成によって経時的に増加し、その際にFが減少する。このことから、被検溶液のBF を管理するためには、BF の濃度だけでなく、BF の生成、分解に関与するFの濃度も把握する必要がある。本発明よれば、被検溶液に含まれるBF 及びFを簡易迅速に再現性良く同時計測することができるので、BF 及びFに由来する被検溶液中の全フッ素濃度を常に正確に求めることができる。したがって、排水等のフッ素濃度の管理を容易なものとできる。しかも、メチレンブルー吸光光度法やイオンクロマトグラフ法のように、据置型装置を必要とせず、コンパクトな構成とすることができるので、現場分析にも適用することが可能となる。
また、酸及びFが添加されたBF 標準液は、BF 標準液のBF の分解が抑制されており、特にBF 標準液のF−濃度を0.1mol/L以上とし、pHを4以下とすることで、極めて優れたBF 分解抑制効果が得られる。したがって、BF 電極の校正を行う毎にBF 標準液の調製を行うことなく、予め調製しておいたBF 標準液を使用してBF 電極の校正を正確に実施することができる。したがって、BF 電極の校正を行う毎にBF 標準液の調製する手間を省くことができるとともに、校正を正確なものとして、計測の信頼性を高めることが可能となる。
本発明のBF 及びFの同時計測システムの構成を示す図である。 本発明の同時計測システムにより100mg/LのBF 標準液を計測した際のBF 電極側における測定プロファイルを示す図である。 本発明の同時計測システムにより100mg/LのBF 標準液を計測した際のF電極側における測定プロファイルを示す図である。 本発明の同時計測システムにより100mg/LのF標準液を計測した際のBF 電極側における測定プロファイルを示す図である。 本発明の同時計測システムにより100mg/LのF標準液を計測した際のF電極側における測定プロファイルを示す図である。 BF 標準液のF濃度の経時変化を示す図である。 BF 標準液のBF の分解率の経時変化を示す図である。 1mg/L、10mg/L、100mg/LのBF 標準液を同時計測した結果を示す図である。 1mg/L、10mg/L、100mg/LのF標準液を同時計測した結果を示す図である。 本実施例で使用したBF 及びFの同時計測システムの構成を示す図である。 濃度に対する固体膜型F電極の電極電位の変化を温度について測定した結果を示す図である。 濃度に対する固体膜型F電極の電極電位の変化をpHについて測定した結果を示す図である。 BF 濃度に対する液体膜型BF 電極の電極電位の変化を温度について測定した結果を示す図である。 BF 濃度に対する液体膜型BF 電極の電極電位の変化をpHについて測定した結果を示す図である。 本発明のBF 及びFの同時計測システムの構成の他の例を示す図である。 各種条件におけるBF の平衡組成の計算結果を示す図である。 フッ化物イオン添加の有無によるpHとBF のモル分率の関係を示す図である。 BF 標準液のBF 濃度の経時変化を示す図である。 図16とは別の条件でのBF の平衡組成の計算結果を示す図である。 BF 標準液のBF 濃度の経時変化を示す図である。 フッ化物イオン添加の有無によるpHとBF のモル分率の関係を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明のBF 及びFの同時計測方法は、被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測する方法であって、被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測する方法であって、被検溶液を流通路に送液し、流通路内を流通する被検溶液に液体膜型BF 電極を接触させてBF の計測を行うと共に、固体膜型F電極を接触させてFの計測を行うようにしている。具体的には、流通路を2つとし、2つの流通路に被検溶液を同時に送液し、2つの流通路のうちの一方の流通路に液体膜型BF 電極を接触させ、他方の流通路に固体膜型F電極を接触させるようにしている。
本発明のBF 及びFの同時計測方法を実施するための計測システムの一例を図1に示す。図1に示すBF 及びFの同時計測システム1は、溶液を貯留する容器2と、第一のフローセル3aと、第二のフローセル3bと、第一のフローセルに備えられる液体膜型BF 電極6と、第二のフローセルに備えられる固体膜型F電極7と、液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7と接続されてBF 及びFを計測する計測装置8とを備え、容器2から第一のフローセル3a及び第二のフローセル3bのそれぞれに被検溶液を同時に送液する送液手段4を備えて、第一のフローセル3a内を流通する被検溶液に液体膜型BF 電極6を接触させると共に、第二のフローセル3b内を流通する被検溶液に固体膜型F電極7を接触させるものとしている。尚、図1に示す計測システム1では、送液手段4を二つ備え、第一の送液手段4aによって容器2から第一のフローセル3aに被検溶液が送液され、第二の送液手段4bによって容器2から第二のフローセル3bに被検溶液を送液するようにしているが、送液手段を2つ備える場合には限定されず、1つの送液手段で第一のフローセル3aと第二のフローセル3bのそれぞれに被検溶液を同時に送液するようにしてもよい。
本発明において計測の対象となる被検溶液には、BF 及びFを含むあらゆるものが包含される。例えば、石炭火力発電所から排出される脱硫排水や、半導体製造工場から排出される排水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、BF 標準液の劣化度合いを確認するためにも用いることができる。即ち、BF は経時的に分解するので、BF 標準液のBF 濃度が減少し、同時にFが生成する。したがって、BF 標準液を計測の対象とすることで、BF 標準液のBF 濃度とF濃度を同時に計測してその劣化度合いを確認することができる。尚、BF の分解反応式は以下の化学反応式1により表される。
BF + 3HO → HBO+ 4F+ 3H ・・・(化学反応式1)
ここで、BF が分解して劣化したBF 標準液に酸とFを添加すると、化学反応式1を左辺側に進行させることができる。つまり、化学反応式1を逆反応させて、BF を再生することができる。したがって、BF 標準液の計測結果に基づき、酸とFを添加して、BF 標準液の再生を行うことができる。または、BF 標準液に酸とFを予め添加しておけば、BF の分解を抑制することができる。したがって、酸とFが予め添加されたBF 標準液に液体膜型BF 電極6を接触させて校正を行うことによって、校正を正確に行って、計測の信頼性を高めることができる。
ここで、BF 標準液は、既知濃度のBF を含むBF 標準液であって、0.1mol/L以上のフッ化物イオン(F)を含み、酸が添加されてpHが4以下に調整されているものとすることが好ましい。以下、このBF 標準液について詳細に説明する。
BF 標準液は、例えばBF 濃度が既知のBF 水溶液を主体として構成される。BF 濃度は、BF を含む物質、例えばテトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF)等の水溶性のBF 含有化合物等の添加量によって調整される。あるいは、溶媒(例えば水)中で化学反応を起こさせてBF を生成させることによって、BF 濃度を調整することもできる。例えば、ホウ酸(HBO)とフッ素化合物を水に添加してホウ酸とフッ化物イオン(F)を水中で化学反応させてBF を生成し、BF 濃度を調整することもできる。
ここで、BF 標準液は、BF 濃度が低い程、BF が分解し易い傾向にある。しかしながら、このBF 標準液においては、0.1mol/L以上のフッ化物イオン(F)が含まれ、尚かつ酸が添加されてpHが4以下に調整されていることによって、BF の濃度に拠らず、BF の分解が長期に亘り抑制される。したがって、BF 標準液のBF 濃度の正確性が長期に亘り担保される。
フッ化物イオン(F)は、フッ素を含む物質、例えばフッ化ナトリウム(NaF)やフッ化水素(HF)等の水溶性フッ素化合物等をBF 標準液に添加することによって含ませることができる。
フッ素を含む物質は、BF 標準液のフッ化物イオン濃度が0.1mol/L以上となるように添加される。フッ化物イオン濃度を0.1mol/L未満とすると、BF の分解を十分に抑制できなくなる。尚、フッ化物イオン濃度を0.1mol/Lよりも高めたとしてもBF の分解の抑制が阻害されることはない。したがって、フッ化物イオン濃度は0.1mol/L以上となる範囲で高低させても構わない。但し、液体膜型BF 電極を用いた計測において、イオン強度を高めすぎると計測精度が低下する場合もあるので、フッ化物イオン濃度は計測精度に影響を与え得る範囲よりも低いものとすることが好ましい。
BF 標準液には、酸が添加されてpHが4以下に調整されている。酸は、BF 標準液のpHを制御するための役割を担うものであり、BF 標準液のpHを4以下に調整し得る酸であればいずれの酸でも用いることができる。例えば硫酸、塩酸及び硝酸等の各種無機酸または各種有機酸を用いることができる。
酸は、BF 標準液のpHが4以下となるように添加すればよいが、pHが3以下となるように添加することがより好適である。この場合、BF の分解の抑制効果がさらに高まる。pHを4を超える値とすると、BF の分解を十分に抑制できなくなる。尚、pHを3よりも低下させたとしてもBF の分解の抑制が阻害されることはない。したがって、pH4以下の範囲で、好適にはpH3以下の範囲で、pHを高低させても構わない。但し、液体膜型BF 電極を用いた計測においては、pHを低下させすぎると計測精度が低下する場合があるので、pHは計測精度に影響を与え得る範囲よりも高いものとすることが好ましい。
尚、フッ化物イオンを含む物質は、その種類によってはBF 標準液のpHを低下させる能力を有する場合がある。例えば、フッ化水素(HF)はpHを低下させる能力が高い。このような物質をフッ化物イオンを含む物質としてBF 標準液に添加した場合には、フッ化物イオンを含む物質によるpHの低下も加味した上で酸の添加量を調整する。
このBF 標準液は、BF の分解が長期に亘り抑制されることから、BF 標準液に要求されるBF 濃度の正確性が長期に亘り担保される。したがって、BF 電極の校正を行う毎にその直前にBF 標準液を調製することなく、例えば、予めある程度の量のBF 標準液を調製しておいて、BF 標準液が必要となったときに、予め調製しておいたBF 標準液を適宜取り出して使用することができる。したがって、BF 標準液を調製の手間を省略して、BF 電極の校正作業にかかる手間を大幅に軽減することができる。
ここで、BF 電極を利用したBF 濃度の計測においては、計測精度の向上の観点から、BF 電極の校正に用いるBF 標準液のpHとイオン強度を、被検溶液のpHとイオン強度に近づけることが好ましい。
被検溶液のpHがBF 標準液のpHよりも低い場合には、例えば、BF 標準液にさらに酸を添加してpHを低下させればよい。上記の通り、BF 標準液は、pHを3よりも低くしても、BF の分解の抑制は阻害されることはないので、何ら問題はない。但し、上記の通り、pHを低下させすぎると計測精度が低下する場合があるので、pHは計測精度に影響を与え得る範囲よりも高いものとすることが好ましい。また、被検溶液のイオン強度がBF 標準液のイオン強度よりも高い場合には、例えば、BF 標準液にさらにフッ化物イオンを含む物質を添加してイオン強度を高めればよい。上記の通り、BF 標準液は、フッ化物イオン濃度を0.1mol/Lより高くしても、BF の分解の抑制は阻害されることはないので、何ら問題はない。あるいは、BF 電極によるBF 濃度の計測結果に影響を及ぼすことのない物質を各種添加してBF 標準液のイオン強度を高めるようにしてもよい。但し、上記の通り、イオン強度を高めすぎると計測精度が低下する場合があるので、フッ化物イオン濃度は計測精度に影響を与え得る範囲よりも低いものとすることが好ましい。
被検溶液のpHがBF 標準液のpHよりも高い場合には、例えば、BF 標準液にpH調整剤を添加したり、BF 標準液を希釈したりすることによって、BF 標準液のpHを被検溶液のpHに近づけるようにすればよい。被検溶液のイオン強度がBF 標準液のイオン強度よりも低い場合には、例えば、BF 標準液を希釈することによって、BF 標準液のイオン強度を被検溶液のイオン強度に近づけるようにすればよい。尚、BF 標準液を希釈することで、BF 標準液のpHとイオン強度の双方を同時に被検溶液のpHとイオン強度に近づけることができる場合もあるが、いずれか一方のみにしか近づけることができない場合がある。例えば、BF 標準液を希釈することで、BF 標準液のpHを被検溶液のpHに近づけようとすると、BF 標準液のイオン強度を被検溶液のイオン強度に近づけられない場合がある。このような場合には、BF 標準液のpH及びイオン強度のいずれか一方を被検溶液に近づけるようにBF 標準液を希釈し、他方を試薬類で調整して被検溶液に近づけるようにすればよい。尚、pHやイオン強度を調整する試薬としては、これに公知または新規のpH調整剤やイオン強度調整剤、またはpHとイオン強度の調整を同時に行うことのできる試薬、例えば東亜ディーケーケー製のpH7−AB(リン酸水素一カリウム(KPO)とリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)の1:1水溶液)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
ここで、BF 標準液のpHとイオン強度の調整は、BF 標準液を水で希釈してpHを中性域に調整するとともにイオン強度を十分に低下させた後、被検溶液のpHとイオン強度に近づけるように必要に応じて調整することが好適である。BF 標準液は少なくとも水で100倍程度に希釈すれば、pHを中性域に調整できるとともに、イオン強度を十分に低下させることができる。BF 標準液をこの状態に調整した状態から、被検溶液のpHとイオン強度に近づける調整を行うことで、pH調整剤の添加量やイオン強度調整剤の添加量を決定しやすくなり、pHとイオン強度の調整を容易なものとできる。また、元々pHが中性域にありイオン強度の低い被検溶液も存在し得ることから、このような場合には、水で希釈するだけでBF 標準液のpHとイオン強度を被検溶液のそれらに近づける調整を容易に行うことができる。さらには、イオン強度とpHがBF 濃度の計測結果に影響を及ぼすことを排除するために、予めpHとイオン強度が調整された被検溶液を用いる場合にも、BF 標準液を水で希釈してからイオン強度調整剤やpH調整剤を添加することによって、被検溶液のpHとイオン強度に近づける調整を容易に行うことができる。尚、BF 標準液自体を希釈すると、同時にBF 濃度も低下するので、そのことを考慮に入れてBF 標準液のBF 濃度を高濃度に調整しておくことが望ましい。例えば、BF 標準液を100倍希釈して用いることを前提とする場合には、校正に使用するBF 濃度の100倍のBF 濃度に調整しておけばよい。
尚、このように、pHを中性域に調整するとともにイオン強度を十分に低下させる調整を行うことを考慮すると、BF 標準液のpHを低くし過ぎたり、フッ化物イオン濃度を高め過ぎるのは、望ましいこととは言えない。また、上記の通り、BF 電極へのpHやイオン強度の影響を排除する観点からも、pHを低下させすぎたり、イオン強度を高めすぎたりするのは、好ましいこととは言えない。したがって、pH1〜4とすることが好適であり、pH1.5〜4とすることがより好適であり、pH1.5〜3とすることがさらに好適である。また、フッ化物イオン濃度は、0.1mol/L〜1.0mol/Lとすることが好適であり、0.1mol/L〜0.5mol/Lとすることがより好適であり、0.1mol/L〜0.3mol/Lとすることがさらに好適である。
尚、pHを高めてイオン強度を低下させる上記調整によって、フッ化物イオン濃度が0.1mol/L未満となり、pHが4を超える場合には、BF 標準液のBF の分解が緩やかに進行するので、調整後、BF 標準液をできるだけ速やかにBF 電極の校正に供するのが望ましい。
上記のBF 標準液によれば、pHとイオン強度を被検溶液のpHとイオン強度に近づけたBF 標準液をBF 電極の校正を行う毎にその直前に調製することなく、予め調製しておいたBF 標準液を使用して、このBF 標準液のpHとイオン強度を被検溶液のpHとイオン強度に近づけるように調整するだけで、BF 電極の校正に使用するためのBF 標準液を得ることができる。したがって、従来よりもBF 電極の校正にかかる手間を軽減することが可能となり、ひいては、BF 電極を利用したBF 濃度の計測にかかる手間を軽減することが可能となる。尚、BF 標準液には、標準液としての機能を阻害しない範囲で、意図しない不純物や、保存料、安定剤等が含まれていてもよい。
本発明において使用する容器2は、被検溶液により腐食等が生じない材質のものを適宜用いることができる。
第一のフローセル3aは、液体流入部と液体流出部を備えるセルであり、セル内部に一定方向の液体の流れが形成されるものである。例えば、東亜ディーケーケー製のFLC−12型フローセルを用いることができるが、これに限定されるものではない。
第二のフローセル3bもまた、液体流入部と液体流出部を備えるセルであり、セル内部に一定方向の液体の流れが形成されるものである。例えば、東亜ディーケーケー製のフローセル(東亜ディーケーケー フッ化物イオン電極(F−2021)用フローセル)を用いることができるが、これに限定されるものではない。
容器2から第一のフローセル3aに被検溶液を送液する第一の送液手段4a、容器2から第二のフローセル3bに被検溶液を送液する第二の送液手段4bは、容器2から被検溶液を吸引し、フローセル3a、3bにそれぞれ送液できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ペリスタポンプが好適である。ペリスタポンプは被検溶液の送液速度を制御することができるので、フローセル3a、3b内の被検溶液の流通速度を制御することができ、計測の制御を行いやすい。尚、第一の送液手段4aは容器2及び第一のフローセル3aの液体流入部と配管あるいはチューブ等で接続し、容器2内の被検溶液を第一のフローセル3aに送液可能とすればよい。同様に、第二の送液手段4bについても、容器2及び第二のフローセル3bの液体流入部と配管あるいはチューブ等で接続し、容器2内の被検溶液を第二のフローセル3bに送液可能とすればよい。
液体膜型BF 電極6は、第一のフローセル3aに備えられて第一のフローセル3a内を流通する被検溶液と接触するものであり、例えば、東亜ディーケーケー製の7461Lが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、東亜ディーケーケー製の7461Lを用いた場合には、比較電極として、東亜ディーケーケー製の4401Lが必要となることから、図1では、比較電極6’を備えるようにしているが、液体膜型BF 電極6の種類によっては、比較電極6’が必要の無い場合もあるので、比較電極6は必須の構成要素ではない。
固体膜型F電極7は、第二のフローセル3bに備えられて第二のフローセル3b内を流通する被検溶液と接触するものであり、例えば、東亜ディーケーケー製のF−2021が挙げられるが、これに限定されるものではない。
計測装置8は、液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7と接続されてBF 及びFの濃度を計測できるものであれば特に限定されない。例えば、電極6、7と接触する被検溶液の電気伝導度を交流2電極法にて測定し、被検溶液のBF 濃度、F濃度を計測することができる東亜ディーケーケー製のマルチ水質計MM−60Rを用いることができるが、これに限定されるものではない。
以上の構成によって、2つの流路に被検溶液が同時に送液され、2つの流路のうちの一方の流路に液体膜型BF 電極を配置して一方の流路内を流通する被検溶液と接触させてBF を計測すると共に、2つの流路のうちの他方の流路に固体膜型F電極を配置して他方の流路内を流通する被検溶液と接触させてFを計測することが可能となる。したがって、被検溶液に含まれるBF 及びFを簡易迅速に再現性良く同時計測することが可能となる。尚、図1に示す計測システム1のように、第一のフローセル3aへの被検溶液の流路と、第二のフローセル3bへの被検溶液の流路とを並列に配置することによって、よりコンパクトなシステムとできる。
また、上記の通り、排水のBF の濃度は、BF の分解によって経時的に減少し、その際にFが生成する。逆に、排水中にFが多く存在し、ホウ酸が含まれていると、排水のBF の濃度は、BF の生成によって経時的に増加し、その際にFが減少する。このことから、排水中のBF を管理するためには、BF の濃度だけでなく、BF の生成、分解に関与するFの濃度も把握する必要がある。本発明では、被検溶液に含まれるBF 及びFを簡易迅速に再現性良く同時計測することができるので、BF 及びFに由来する被検溶液中の全フッ素濃度を常に正確に求めることができる。したがって、排水等のフッ素濃度の管理を容易なものとできる。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、本発明の計測方法における前処理として、酸とFが予め添加されたBF 標準液に、好ましくは0.1mol/L以上のフッ化物イオン(F)を含み、酸が添加されてpHが4以下に調整されているBF 標準液に、液体膜型BF 電極6を接触させて校正を行うようにしていたが、このBF 標準液は、本発明の計測方法に限定することなく、他の方法によってBF の計測を行う際にも利用することができる。例えば、検量線の作成や分析機器の校正を必要とする各種BF 計測方法に利用することができる。また、BF が分解して劣化したBF 標準液に酸とFを添加してBF を再生してから、本発明の計測方法に限定することなく、他の方法によってBF の計測を行う際に利用することもできる。
また、上述の実施形態では、第一のフローセル3aと第二のフローセル3bを並列に配置するようにしていたが、直列に配置するようにしてもよい。即ち、図15に示す計測システム1’のように、被検溶液を貯留する容器2と、第一のフローセル3aと、第二のフローセル3bと、液体膜型BF 電極6と、固体膜型F電極7と、液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7と接続されてBF 及びFを計測する計測装置8とを備え、液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7のいずれか一方が第一のフローセル3aに備えられ、液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7の他方が第二のフローセル3bに備えられ、第一のフローセル3aの液体流出部と第二のフローセル3bの液体流入部とが接続され、容器2から第一のフローセル3aに被検溶液を送液する送液手段4を備えて、被検溶液が第一のフローセル3aを流通して液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7のいずれか一方と接触した後に、被検溶液が第二のフローセル3bを流通して液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7の他方と接触するものとしてもよい。この場合には、流通路の上流側に液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極のいずれか一方が配置され、下流側に液体膜型BF 電極及び固体膜型F電極の他方が配置され、液体膜型BF 電極と固体膜型F電極とに被検溶液が順次接触して、BF とFの同時計測が可能となる。このように、フローセルを直列に接続する場合にも、システムをコンパクトなものとでき、しかも、送液手段は1つだけ備えればよいので、システムのさらなるコンパクト化や計測コストの低減を図ることができる。尚、図15に示す計測システム1’では、液体膜型BF 電極6を上流側に配置し、固体膜型F電極7を下流側に配置するようにしているが、この形態に限定されるものではなく、液体膜型BF 電極6を下流側に配置し、固体膜型F電極7を上流側に配置するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、BF 及びFを計測する計測装置8を、液体膜型BF 電極6及び固体膜型F電極7の双方に接続するようにしているが、BF を計測する計測装置とFを計測する計測装置を別個に備え、BF を計測する計測装置を液体膜型BF 電極6に接続し、Fを計測する計測装置を固体膜型F電極7に接続するようにして、BF とFを別個に計測し、それぞれの計測データをコンピュータに送るようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、BF とFの同時計測するようにしているが、いずれか一方のみの計測が要請される場合には、その一方のみの成分を計測することも可能であるし、いずれか一方の成分の計測を行うように特化させた構成、例えばBF のみの計測に特化させた構成とする場合には、Fを計測するための送液手段、フローセル、電極、計測装置を省略した計測システムとすることも可能である。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
(実施例A)
(1)実験装置及び試料調整
図1に示す計測システムをベースとした計測システムを構築して実験を行った。本実施例において使用した計測システムを図10に示す。BF の測定には、液体膜型BF イオン電極6(東亜ディーケーケー 7461L、以下BF 電極と呼ぶ)と比較電極6’(東亜ディーケーケー 4401L)を用い、これらをフローセル3a(東亜ディーケーケー FLC−12型)に装着し、フローセル3a内を流通する試料に電極6、6’が接触するようにした。一方、Fの測定には、固体膜型Fイオン電極7(東亜ディーケーケー F−2021、以下F電極と呼ぶ)を用い、これを専用のフローセル3b(東亜ディーケーケー フッ化物イオン電極(F−2021)用フローセル)に装着し、フローセル3b内を流通する試料に電極7が接触するようにした。
BF 電極6の測定範囲は0.1〜1080mg/L(Bとして)であり、F電極7の測定範囲は0.02〜20000mg/L(Fとして)であった。いずれの電極においても、プロセス排水において高濃度に含まれている塩化物イオン(Cl)、硝酸イオン(NO )及び硫酸イオン(SO 2−)による妨害は小さい。
計測装置8として、東亜ディーケーケーのマルチ水質計MM−60Rを用い、計測データの表示と収録を行い、収録したデータを専用ソフトでコンピュータ10へ転送した。
試料の送液にはペリスタポンプ4a、4b(アズワン(株) チュービングポンプTP−10SA)を用い、ペリスタポンプ4aに付属しているチューブを容器2及びフローセル3aの液体流入部と接続し、ペリスタポンプ4bに付属しているチューブを容器2及びフローセル3bの液体流入部と接続した。送液速度を5mL/分とした。
尚、フローセル3a、3bの液体排出部から排出される試料は、廃液として回収した。
測定試料のpH及びイオン強度の調整剤として、TISAB−11(東亜ディーケーケー)及びシュウ酸塩pH標準試料(和光純薬工業)およびpH7-AB(東亜ディーケーケー)を用い、これを測定試料に対して体積比で10%量を添加した。このため、TISAB−11を用いた場合の測定試料のpHは5.5〜6程度、シュウ酸塩を添加した試料のpHは2.5〜3程度、pH7-ABを用いた場合の測定試料のpHは5.5〜7程度であった。尚、別の実験から、固体膜型F電極と液体膜型BF 電極の安定度(経時変化)は、試料にイオン強度調整剤を5〜35重量%添加することによって著しく向上することが明らかとなった。イオン強度調整剤としては、例えば上記のTISAB−11、シュウ酸、pH7-ABを用いることができるがこれに限定されるものではない。
尚、一部の試料のFの定量には日本ダイオネクス(株)のイオンクロマトグラフDX−500(カラム:IonPac 12A 4×200mm、 溶離液:2.7mM NaCO/0.3mM NaHCO)を用いた。
(2)標準試料による検討
図10に示す計測システムを用い、100mg/LのBF 標準試料を同時計測した。その際のBF 電極側の測定プロファイルを図2に示し、F電極側の測定プロファイルを図3に示す。図2及び図3において、○は1回目の測定結果であり、△は2回目の測定結果である。いずれの電極濃度も試料の吸引開始から2分程度でほぼ一定の値を示し、BF 濃度は102mg/L、F濃度は13mg/Lとなった。計測を2回実施したところ、いずれの電極においても測定データが再現された。
次に、100mg/LのF標準試料を同時計測した。その際のBF 電極側の測定プロファイルを図4に示し、F電極側の測定プロファイルを図5に示す。図4及び図5において、○は1回目の測定結果であり、△は2回目の測定結果である。BF 標準試料を計測した場合と同様、いずれの電極濃度も試料の吸引開始から2分程度でほぼ一定の値を示し、BF 濃度は0.05mg/L、F濃度は100mg/Lとなった。計測を2回実施したところ、いずれの電極においても測定データが再現された。
従来、BF 電極を用いて不連続にバッチ計測する場合にはデータの再現性は必ずしも高いとはいえなかった。このため、BF 電極の測定(通常はビーカー等を用いた断続的かつスタティックなバッチ計測)には電極のコンディショニングや保管・管理にある程度の習熟が必要であり、これが信頼性の高いデータを得る上での障害となっていた。上記実験の結果から、試料をフローで測定することでデータの再現性が向上することが確認されたことから、簡便迅速に信頼性の高い計測データを得る手段としてフローセルが有効であることがわかった。
ここで、上記の通り、BF 標準試料をF電極で計測することでFが検出されたが、BF 標準試料中のFの存在はイオンクロマトグラフでも確認された。Fは調製直後のBF 標準試料においても検出され、その濃度は時間とともに増加する傾向を示した。また、調製後の経過時間が同じであれば、標準試料中のBF 濃度が高いほどF濃度が高くなる傾向を示したため、標準試料中で以下のBF 分解反応(化学反応式1)が進行してFが生成することが示唆された。
BF + 3HO → HBO+ 4F+ 3H ・・・(化学反応式1)
そこで、このことを確認するため、BF 標準試料中のFをイオンクロマトグラフで計測し、その経時変化を追跡した。F濃度の経時変化を図6に示し、(1)式に基づいてF濃度から算出したBF の分解率の変化を図7に示す。
10mg/L(pH4.8)及び100mg/L(pH3.9)のBF 標準試料には、調製直後にそれぞれ1.2mg/L、9.8mg/LのFが検出された。その後、F濃度は時間とともに単調増加し、5日後に3.7mg/L、56.4mg/Lに、19日後には5.4mg/L、76.0mg/Lにまで達した。(1)式より、1mg/LのBF が分解すれば7mg/LのFが生成するため、調製後19日が経過した標準試料のBF 分解率は8〜11%と見積もられた。
ここで、pH10.5のアルカリ領域では、BF 標準試料の分解率は20日で25%に達することが報告されている(J. Katagiri, T. Yoshioka, T. Mizoguchi, Anal. Chim. Acta, 570, 65 (2006). )。本検討における分解率との差異は、試料のpHや濃度に起因すると考えられる。標準試料中のBF の分解は調製直後から緩やかに進行するため、BF 電極を校正するときは、校正毎に標準試料を新規に調製するのが望ましいことがわかった。また、長期間保存した標準試料を使用する場合には調製日に留意する必要があることがわかった。
次に、図10に示す計測システムを用い、1mg/L、10mg/L、100mg/LのBF 標準液を同時計測した。結果を図8に示す。BF 電極については傾き1.03、相関係数R=1.00の検量線が得られた。調製直後のBF 標準試料を計測したにもかかわらず、F電極もBF 標準試料に対して傾き0.131、相関係数R=0.996の応答を示し、BF の分解によってFが生成していることを示した。標準試料のBF 分解率はF濃度から2%弱と見積もられた。
また、図10に示す計測システムを用い、1mg/L、10mg/L、100mg/LのF標準液を同時計測した。結果を図9に示す。F電極については、傾き0.998、相関係数R=1.00の検量線が得られた。また、BF 電極はF標準試料に対してほとんど電位応答を示さず、Fに対して不活性であった。
以上より、0〜100mg/LのBF とFを10分以内に再現性よく同時計測できることがわかった。
(3)脱硫排水試料による検討
本計測システムの実排水への適用性を検証するため、石炭火力発電所の脱硫排水を入手し、脱硫排水をそのまま試料としたもの(試料A)、脱硫排水にBF を50mg/L標準添加したもの(試料B)、脱硫排水にFを50mg/L標準添加したもの(試料C)、脱硫排水にBF とFの両方を50mg/L標準添加したもの(試料D)を準備した。表1に入手した脱硫排水の性状を示す。この脱硫排水は、Ca、Cl、SO 2−濃度が高く、硫酸カルシウムと塩化物が多く溶解していることがわかった。
試料A〜Dを用いて、図10に示す計測システムによりBF 濃度とF濃度を測定した。また、比較のために、従来法としてICP−AES法による全ホウ素分析と、イオンクロマトグラフ法によるBF 濃度とF濃度の測定を実施した。結果を表2に示す。
試料A中の全ホウ素濃度は89mg/L(ICP−AES法)であったが、イオンクロマトグラフ法ではBF は検出されなかった。これにより、入手した脱硫排水中のホウ素は、BF 以外の形態で存在することがわかった。一方、イオンクロマトグラフ法により、F濃度が5.4mg/Lであることが確認された。これらに対し、本計測システムで測定したBF 濃度は0.2mg/Lであり、F濃度は6.0mg/Lであったことから、イオンクロマトグラフ法による計測値とほぼ一致することが明らかとなった。
次に、試料Bを本計測システムで測定した結果、BF 濃度は47mg/Lであり、F濃度は9mg/Lであった。添加したBF の一部は分解してFを生成することから、試料Aと試料BにおけるF濃度の差分(3.2mg/L)は、BF の分解に起因するものと考えられた。
試料Cを本計測システムで測定した結果、BF 濃度は試料Aと同じ0.2mg/Lであったのに対し、F濃度は添加濃度(50mg/L)よりも著しく低い28mg/Lに過ぎなかった。これは、Fが排水中のCa2+(1540mg/L)と反応してCaFを生成したためと考えられた。実際、Fを排水に標準添加した際にはCaF沈殿の生成が示唆される白色沈殿が観察された。
試料Dを本計測システムで測定した結果、BF 濃度は50mg/Lであり、F濃度は25mg/Lであった。F濃度は添加濃度(50mg/L)よりも著しくなったのは、上記と同様の理由によるものと考えられた。
試料の測定はそれぞれ2回実施したが、相対標準偏差は1試料を除いて2%未満であり、再現性の高いデータが得られた。
試料B〜Dについて、イオンクロマトグラフ法による測定結果と、本計測システムによる測定結果とを比較したところ、試料DのF濃度(イオンクロマトグラフ法の36mg/Lに対して、本計測システムでは25mg/L)を除いて、両者は高い相関を示した。また、測定した4種の排水試料の間で整合性のある計測結果が得られたことから、本計測システムはBF 管理のためのコンパクト計測システムとして実排水に対して適用できることがわかった。本計測システムの利用法として以下のような使い方も想定される。通常、排水の全フッ素分析では、フッ化物錯体のF配位子も計測するため、煩雑で時間を要する蒸留操作を必要とする。排水中のフッ素化合物が主にBF とFとして存在し、他の形態のフッ素化合物を無視できる場合には、本システムで全フッ素濃度を簡便に見積もることができる。
(4)固体膜型F電極と液体膜型BF 電極の電極電位の温度及びpHの影響について
計測環境による測定値の変動について検討するため、被検溶液の温度及びpHによる固体膜型F電極と液体膜型BF 電極の電極電位への影響について調査した。結果を図11〜図14に示す。図11は、F濃度に対する固体膜型F電極の電極電位の変化を温度について測定した結果を示す図である。図12は、F濃度に対する固体膜型F電極の電極電位の変化をpHについて測定した結果を示す図である。図13は、BF 濃度に対する液体膜型BF 電極の電極電位の変化を温度について測定した結果を示す図である。図14は、BF 濃度に対する液体膜型BF 電極の電極電位の変化をpHについて測定した結果を示す図である。
図12に示されるように、固体膜型F電極の電極電位についてはpHによる変動が見られたが、その他は殆ど変動が見られなかった。また、固体膜型F電極の電極電位のpHによる変動についても、pH3〜11の範囲であれば殆ど変動が見られなかった。この結果から、計測精度の向上の観点から言えば、計測の際に被検溶液のpHと温度を一定値とするのが好適ではあるが、25℃〜50℃の範囲で、pH3〜11の範囲であれば、大きな計測誤差を生じることなく計測が可能であることが明らかとなった。したがって、本発明は、計測の際に被検溶液のpHや温度をある値に制御するような処理を必要とすることなく、現場分析に対する適用性が極めて高いものであることが明らかとなった。
(実施例B)
実施例Aと同様の計測システム(図10)を利用したフロー計測によるBF 計測精度と、バッチ計測によるBF 計測精度の比較検討試験を実施した。
フロー計測は、実施例Aと同様の方法で実施した。
バッチ計測は、100mL容量のビーカー内に80mLの被検溶液を入れ、被検溶液にフロー計測に用いた液体膜型BF 電極と同様の電極を接触させて計測を行った。
被検溶液は、10mg/Lと100mg/LのBF 標準試料とした。また、BF を含有する実排水の分析も行った。フロー計測結果を表3に示し、バッチ計測結果を表4に示す。尚、表3および表4において、相対誤差とは真の値に対する誤差の割合であり、誤差の絶対値を測定値で除して得られるものであり、相対標準偏差とは標準偏差を測定平均値で除して得られるものであり、変動係数とも呼ばれる値である。
標準試料については、バッチ計測の相対誤差と相対標準偏差が3〜7%だったのに対し、フロー計測の相対誤差と相対標準偏差はいずれも1%未満であった。この結果から、フロー計測がバッチ計測と比較して分析精度と再現性に極めて優れていることが明らかとなった。
実排水については、イオンクロマトグラフィーで計測した排水AのBF 濃度が3mg/Lであり、これに5mg−B/LのBF 標準試料を添加した排水試料は8mg/Lとなる。バッチ計測の相対誤差と相対標準偏差が22%〜77%であったのに対し、フロー計測の相対誤差と相対標準偏差はいずれも数%未満であった。この結果からも、フロー計測がバッチ計測と比較して分析精度と再現性に極めて優れていることが明らかとなった。
(実施例C)
実施例A(2)の実験結果から、標準試料中のBF の分解は調製直後から緩やかに進行するため、BF 電極を校正するときは、校正毎に標準試料を新規に調製するのが望ましいと考えられた。しかしながら、BF 標準液の校正毎の調製は手間がかかる。また、近年、排水等のBF 濃度を現場にてオンサイト計測することが要請されているが、現場にて校正を行う毎にBF 標準液を調製することは極めて煩雑であるし、困難な場合も多いものと考えられる。そこで、BF 標準液の分解を抑えることのできる条件について、以下の実施例1〜3にて詳細に検討を行った。
(実施例1)
BF の生成・分解の化学平衡を支配するパラメータについて、化学平衡計算を実施することにより検討した。
H3BO3は、以下に示す化学反応式によりFと逐次的に反応して、ホウフッ化物イオン(BFn(OH)4-n -、n=1〜4)を生成する。
H3BO3 + F- → BF(OH)3 - ・・・・(1)
BF(OH)3 - + F- → BF2(OH)2 - + OH- ・・・・(2)
H3BO3 + 2F- → BF2(OH)2 - + OH- ・・・・(2’)
BF2(OH)2 - + F- → BF3(OH)- + OH- ・・・・(3)
H3BO3 + 3F- → BF3(OH)- + 2OH- ・・・・(3’)
BF3(OH) - + F- → BF4 - + OH- ・・・・(4)
H3BO3 + 4F- → BF4 - + 3OH- ・・・・(4’)
上記化学反応式は、以下の化学反応式により総括される。
H3BO3 + 4F- → BF4 - + 3OH- ・・・・(5)
上記(1)〜(4)の平衡定数Kは以下の通り定義され、文献データ(S.L. Grassino, D.N. Hume, J. Inorg. Nucl. Chem., 33, 421 (1971). )により、以下の値となる。ここで、平衡定数Kの式中の[A]は、化学種Aの平衡状態のモル濃度を表している。
上記化学反応式において、対象となるホウ素化学種は、H3BO3、BF(OH)3 -、BF2(OH)2 -、BF3(OH)-、BF4 -の5種であるから、全ホウ素原子濃度[B]totalは次式より得られる。
したがって、H3BO3、BF(OH)3 -、BF2(OH)2 -、BF3(OH)-、BF4 -のモル分率αはそれぞれ次式より得られる。
このように、ホウ素化学種のモル分率は、[H]と[F]の関数として与えられる。
次に、[F]を得るためには、F-が関与する以下の化学反応式を考慮する必要がある。
HF → H+ + F- ・・・・(11)
2HF → H2F2 ・・・・(12)
HF2 - → HF + F- ・・・・(13)
上記(11)〜(13)の平衡定数Kは以下の通り定義され、文献データ(J. Katagiri, T. Yoshioka, T. Mizoguchi, Anal. Chim. Acta, 570, 65 (2006). )により、以下の値となる。
(14)式より、
であるから、これを(15)式と(16)式に代入すると
がそれぞれ得られる。
上記式において、対象とする系に存在するフッ素化学種はF-、HF、H2F2、HF2 -、BF(OH)3 -、BF2(OH)2 -、BF3(OH)-、BF4 -の8種であるから、全フッ素原子濃度[F]totalは次式より得られる。
したがって、[B]totalと[F]totalを制約条件として、任意の[H]に対して、(10)式と(20)式を解いて[F]を求めれば、H3BO3、BF(OH)3 -、BF2(OH)2 -、BF3(OH)-、BF4 -のそれぞれのモル分率が得られ、BF4 -の生成・分解の化学平衡を計算することができる。そこで、pHを0〜10に設定し、化学平衡計算を実施した。計算には、Microsoft Excelを用いた。
図16の(a)〜(e)に、初期にBF のみが存在する条件、即ち、ホウ素とフッ素が1:4のモル比で存在するときのホウ素化合物(H3BO3、BF(OH)3 -、BF2(OH)2 -、BF3(OH)-、BF4 -の5種)の平衡組成(モル分率)を示す。初期に存在するBF 濃度(ホウ素基準(mg−B/L)で標記)は、以下のように設定した。
・条件(a):10800mg/L(1mol/L)
・条件(b):1080mg/L(0.1mol/L)
・条件(c):108mg/L(0.01mol/L)
・条件(d):10.8mg/L(0.001mol/L)
・条件(e):1.08mg/L(0.0001mol/L)
BF 初期濃度が10.8mg/L以下の場合(条件(d)及び(e))には、pH0〜10における優勢な化学種はHBOであった。
BF 初期濃度が10.8mg/Lの場合(条件(d))には、pH0〜4において、BF がわずかに存在するに過ぎず、そのモル分率は最大でも0.3に達しなかった。
BF 初期濃度が1.08mg/Lの場合(条件(e))には、BF は完全に分解され、HBOとして存在していた。
一方、BF 初期濃度が108mg/L及び1080mg/Lの場合(条件(b)及び(c))には、pH0〜4においてはBF が優勢な化学種であり、pH7以上ではHBOが優勢な化学種であった。即ち、低pHではBF が安定であり、高pHではHBOが安定であった。
BF 初期濃度が10800 mg/Lの場合(条件(a))には、pH0〜4においては初期濃度108mg/Lや1080mg/Lの場合と同様にBF が支配的であったが、pH7以上では、BF(OH) とBF(OH) が優勢となり、HBOの割合が小さいことが特徴的であることが明らかとなった。
このように、BF の初期濃度によって、平衡組成が著しく変化することが明らかとなった。そして、BF 初期濃度が高いほど、またpHが低いほど、BF が支配的となり安定に存在することが明らかとなった。その一方で、BF 初期濃度が低いほど、またpHが高いほど、BF の分解が進んでHBOが支配的となり安定に存在するようになることも明らかとなった。
次に、BF を安定に存在させる条件、即ち、BF の分解を抑制する条件について検討した。以下に示すBF の分解反応式から、過剰のF−を系に共存させてpHを制御することで、化学平衡がBF の生成方向(右辺から左辺へ向かう方向)に傾くことが期待される。
BF4 - + 3H2O → H3BO3 + 4F- + 3H+ ・・・・(21)
そこで、図16の(a)〜(e)で検討した各初期条件に、0.1mol/L相当のFを添加した場合の化学平衡を計算した。計算結果を図16の(a’)〜(e’)に示す。
0.1mol/L相当のFを添加することで、BF 初期濃度が低い場合(108mg/L以下)に平衡組成が変化したものの、pH5以下でBF が優勢な化学種となることが確認された。
の添加にともなうBF のモル分率の変化をまとめた結果を図17に示す。この結果から、少なくとも0.1mol/Lとなる量のFをBF 標準液に添加するとともに、pHを4以下に調整することで、BF の分解を十分に抑制することができ、pH3以下に調整することで、BF の分解率を1%未満に抑えられることが明らかとなった。
(実施例2)
実施例1で得られた計算結果について、実証試験を行った。
<計測システム>
実施例Aにて使用した計測システム(図10)を用い、同様の条件にて実験を行った。
BF 電極の校正用標準試料として、所定濃度のテトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF、和光純薬株式会社製、純度98%以上)水溶液を用いた。
<BF 標準液(フッ化物イオン添加及びpH調整無し)の経時変化の確認>
フッ化物イオンの添加と酸によるpHの調整を行っていないBF 標準液のBF 濃度の経時変化について検討した。BF 標準液として、BF 濃度が50mg/L、500mg/L、5000mg/Lのテトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF、和光純薬株式会社製、純度98%以上)水溶液を用いた。
結果を図18に示す。BF の分解率と分解速度は、BF 濃度に依存していた。即ち、BF 濃度が50mg/L、500mg/L、5000mg/LのBF 標準液の分解率はそれぞれ、55%、20%、5%であり、高濃度標準液よりも低濃度標準液で分解率が高い傾向が見られた。また、平衡状態に達するまでに20日〜60日を要し、低濃度標準液では平衡に達するのが遅いのに対し、高濃度標準液では比較的速く平衡に達した。また、BF 濃度が50mg/L、500mg/L、5000mg/LのBF 標準液の平衡状態におけるpHはそれぞれ3.5、3.4、3.2であった。
次に、実施例1と同様の方法でBF 標準液の平衡組成を計算した。図19の(a)〜(c)に、初期にBF のみが存在する条件、即ち、ホウ素とフッ素が1:4のモル比で存在するときのホウ素化合物(H3BO3、BF(OH)3 -、BF2(OH)2 -、BF3(OH)-、BF4 -の5種)の平衡組成(モル分率)を示す。初期に存在するBF 濃度(ホウ素基準(mg−B/L)で標記)は、以下のように設定した。
・条件(a):5040mg/L(0.5mol/L)
・条件(b):504mg/L(0.05mol/L)
・条件(c):50.4mg/L(0.005mol/L)
図19(a)〜(c)に示される計算結果から、BF 標準液の平衡状態におけるpHでのモル分率により推算されるBF の分解率は、それぞれ45%(BF 濃度が50.4mg/L)、13%(BF 濃度が504mg/L)、4%(BF 濃度が5040mg/L)であり、上記実測値とこの計算値の結果が比較的一致していることが確認できた。
<BF 標準液(フッ化物イオン添加及びpH調整有り)の経時変化の確認>
フッ化物イオンの添加と酸によるpHの調整を行ったBF 標準液のBF 濃度の経時変化について検討した。BF 標準液として、BF 濃度が500mg/L、5000mg/Lのテトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF、和光純薬株式会社製、純度98%以上)水溶液を用いた。フッ化物イオンとして、フッ化ナトリウム(NaF、和光純薬特級)を0.1mol/Lとなるように添加した。また、硫酸(HSO、和光純薬特級)を0.24mol/Lとなるように添加してpHを1.7〜1.8に調整した。
結果を図20に示す。尚、図20には、比較のために、フッ化ナトリウムと硫酸を添加していないBF 標準液の経時変化(図中の○)も掲載した。フッ化ナトリウム(NaF)を0.1mol/Lとなるように添加し、pHを1.7〜1.8に調整することで、BF 濃度は経時低下を示すことなく、150日間に亘って設定濃度を示すことが確認できた。
次に、図19の(a)〜(c)で検討した各初期条件に、0.1mol/L相当のFを添加した場合の化学平衡を計算した。結果を図19の(a’)〜(c’)に示す。
図19の(a)〜(c)及び(a’)〜(c’)に示される計算結果から、0.1mol/L相当のFを添加することで、平衡組成が大きく変化した。そして、その傾向は、低濃度標準液(50.4mg/L、504mg/L)において顕著であった。
の添加に伴うBF のモル分率の変化を纏めた結果を図21に示す。この結果から、0.1mol/LのFを添加し、pHを4以下に制御することで、BF の分解を十分に抑制することができ、特にpHを3以下に制御することで、BF の分解率を1%未満に抑制できることが明らかとなった。
(実施例3)
BF 電極を利用したBF 濃度の計測に及ぼされるフッ化物イオンと酸の影響について検討した。
計測システムは実施例2と同様とした。BF 電極の校正は、所定濃度のテトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF、和光純薬株式会社製、純度98%以上)水溶液に、イオン強度調整剤(PH7−AB:リン酸水素一カリウムKHPOとリン酸水素二ナトリウムNaHPOの1:1水溶液、東亜ディーケーケー製)を体積比で10%量を添加したBF 標準液により行った。
BF 濃度、フッ化物イオン濃度及び酸濃度を各種異ならせて、BF 濃度の計測を行った。結果を表5に示す。尚、フッ化物イオン源として、NaF(和光純薬製の特級品)を使用した。また、酸として硫酸(和光純薬特級)を用いた。表5に示すpHは、イオン強度調整剤添加後のpHであり、計測値は計測開始6分後からの1分間の平均値である。また、表5におけるBF 単独試料との相対誤差とは、10mg/LのBF もしくは100mg/LのBF (つまり、NaFとHSOを添加していない試料)計測値との相対誤差を意味している。
0.1mol/LのNaFと0.24mol/LのHSOが共存するBF 標準液の計測値は、BF 単独の標準液よりも20%高くなった。一方で、この相対誤差は、共存するNaFとHSOの濃度を1/100にすることによって、1%以下に縮小できることが明らかとなった。したがって、例えば目的とする濃度の100倍のBF 標準液を調製しておき、これにフッ化物イオンと酸を添加して、校正を行う際にこれを100倍希釈することで、BF 標準液に添加したフッ化物イオンと酸のBF 計測への影響を排除して、高精度にBF 濃度を計測できることが明らかとなった。
1 BF 及びFの同時計測システム
2 容器
3a 第一のフローセル
3b 第二のフローセル
4a 第一の送液手段
4b 第二の送液手段
6 液体膜型BF 電極
7 固体膜型F電極
8 計測装置

Claims (7)

  1. 被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測する方法であって、
    前記被検溶液を流通路に送液し、前記流通路内を流通する前記被検溶液に液体膜型BF 電極を接触させてBF の計測を行うと共に、固体膜型F電極を接触させてFの計測を行うことを特徴とするBF 及びFの同時計測方法。
  2. 前記流通路を2つとし、2つの流通路に前記被検溶液を同時に送液し、前記2つの流通路のうちの一方の流通路に前記液体膜型BF 電極を接触させ、他方の流通路に前記固体膜型F電極を接触させる請求項1に記載のBF 及びFの同時計測方法。
  3. 前記流通路の上流側に前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極のいずれか一方を配置し、下流側に前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極の他方を配置する請求項1に記載のBF 及びFの同時計測方法。
  4. 前記液体膜型BF 電極に酸及びFが添加されたBF 標準液を接触させて校正を行う請求項1〜3のいずれか1つに記載のBF 及びFの同時計測方法。
  5. 前記BF 標準液は、0.1mol/L以上のFを含み、pHが4以下に調整されているものである請求項4に記載のBF 及びFの同時計測方法。
  6. 被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測するシステムであって、
    前記被検溶液を貯留する容器と、
    第一のフローセルと、第二のフローセルと、
    前記第一のフローセルに備えられる液体膜型BF 電極と、
    前記第二のフローセルに備えられる固体膜型F電極と、
    前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極と接続されてBF 及びFを計測する計測装置とを備え、
    前記容器から前記第一のフローセル及び前記第二のフローセルのそれぞれに前記被検溶液を同時に送液する送液手段を備えて、前記第一のフローセル内を流通する前記被検溶液に液体膜型BF 電極を接触させると共に、前記第二のフローセル内を流通する前記被検溶液に前記固体膜型F電極を接触させることを特徴とするBF 及びFの同時計測システム。
  7. 被検溶液に含まれるBF 及びFを同時計測するシステムであって、
    前記被検溶液を貯留する容器と、
    第一のフローセルと、第二のフローセルと、
    液体膜型BF 電極と、固体膜型F電極と、
    前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極と接続されてBF 及びFを計測する計測装置とを備え、
    前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極のいずれか一方が前記第一のフローセルに備えられ、前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極の他方が前記第二のフローセルに備えられ、
    前記第一のフローセルの液体流出部と前記第二のフローセルの液体流入部とが接続され、
    前記容器から前記第一のフローセルに前記被検溶液を送液する送液手段を備えて、前記被検溶液が前記第一のフローセルを流通して前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極のいずれか一方と接触した後に、前記被検溶液が前記第二のフローセルを流通して前記液体膜型BF 電極及び前記固体膜型F電極の他方と接触することを特徴とするBF 及びFの同時計測システム。
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