以下に、本発明の電子機器およびコンピュータプログラムの各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施の形態では、電子機器として携帯電話を例に説明するが、電子機器は携帯電話に限定されず、他の種類の機器、例えば、携帯用薄型PC、音楽再生用携帯機器などでも良い。
1.第一の実施の形態
1.1 多方向操作キーの構造
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電話の正面図である。
図1に示すように、この実施の形態に係る電子機器の一例である携帯電話1は、多方向に操作可能な多方向操作キー2と、表示部3とを備える。多方向操作キー2は、上下左右の4方向(以後、「基準方向」と称する)と、2つの隣り合う基準方向の間にある方向(以後、「中間方向」と称する)とを含む合計8方向にそれぞれ押圧操作可能である。多方向操作キー2は、略円形のキーであり、そのキーの中心から8方向に押圧入力できるのみならず、中央部分を押圧入力できるものである。ただし、多方向操作キー2は、その中心が押圧入力できず、中心から8方向にのみ押圧入力可能なキーであっても良い。また、多方向操作キー2を、8方向に限定されず、4つの基準方向のみ、あるいは当該4つの基準方向に1以上の任意の数の中間方向を加えた複数方向に押圧入力可能なものとしても良い。
図2は、図1に示す多方向操作キーの表側の部分を外し、当該表側の部分を表側から透過的に見た状態を示す図である。図3は、図2に示す多方向操作キーの表側の部分のA−A線断面図である。
多方向操作キー2は、裏側の印刷回路基板(Printed Circuit Board: PCB)の上に配置される操作板10を備える。操作板10は、略円板形状の薄型の樹脂シート11と、その樹脂シート11上に固定される円環形状で樹脂製の第一操作板12と、樹脂シート11上であってその第一操作板12の略中央の穴部分に固定される円形で樹脂製の第二操作板13とを備える。第一操作板12と第二操作板13との間には隙間が設けられ、第一操作板12と第二操作板13とを独立して操作しやすいようにしている。
図2に示すように、樹脂シート11の裏面には、第一操作板12の周方向に沿うように、第一操作板12の中心から45度間隔に1個ずつ合計8個の接点用弾性体14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h(以後、総称する場合には、「接点用弾性体14」と称する)が固定されている。図3に示すように、接点用弾性体14は、略半球形状を有しており、その球面側先端がPCB側を向くように、樹脂シート11に固定される。また、樹脂シート11の裏面であって第二操作板13の裏側に対応する領域には、1個の略円柱形状の押圧子15が固定されている。さらに、樹脂シート11の裏面であって第一操作板12の裏側に対応する接点用弾性体14a,14c,14e,14gの外側にも、それぞれ、1個の略円柱形状の押圧子16a,16c,16e,16g(以後、総称する場合には、「押圧子16」と称する)が固定されている。押圧子15,16は、例えば、樹脂から構成される。押圧子15,16は、接点用弾性体14よりも多方向操作キー2の表裏方向の高さが低くなるように構成されている。操作板10と対向配置されるPCB上において、接点用弾性体14が接する電極群(後述する)よりも、押圧子15,16が接するメタルドーム(後述する)の方が操作板10の方向に突出しているからである。
接点用弾性体14は、PCB上に接触後に弾性変形できるように、柔軟性に富む材料で構成されている。また、接点用弾性体14には、導電性を付与するために、導電性材料が分散されている。導電性材料としては、カーボン、金属等を例示できるが、粒子径が小さいもの(ナノレベルの粒子)を容易に製造でき、かつその取り扱いが容易なカーボンブラックがより好ましい。また、接点用弾性体14を構成する母材としては、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、天然ゴムを用いることができ、それらの中でも、シリコーンゴムが好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシリコーンゴムの弾性を維持する観点から、シリコーンゴムの材料と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。
図4は、図1に示す多方向操作キーの操作板の裏側に配置されるPCBの平面図である。図5は、図4に示すPCBのB−B線断面図である。なお、図5では、見易さを考慮して、PCB上に形成される配線等を実際のそれよりも厚く図示している。
図4に示すPCB20は、操作板10の裏側に対向配置され、操作板10上の所定方向における裏側への押圧を受けて、押圧操作されたことを検知するためのものである。PCB20における各接点用弾性体14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14hの裏側にそれぞれ対応する位置には、接点電極群の一例である櫛歯電極群21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h(総称する場合には、「櫛歯電極群21」と称する)が配置されている。櫛歯電極群21は、多数の歯を有する櫛形状の複数の電極を互いに接触しないように配置したものであり、4つの基準方向(ここでは、北、東、南、西の4つの方向とする)に配置される基準方向用接点電極群21a,21c,21e,21gと、当該基準方向の内の互いに隣り合う基準方向の間に位置する中間方向(ここでは、北東、南東、南西、北西の4つの方向とする)に配置される中間方向用接点電極群21b,21d,21f,21hとに分けられる。各櫛歯電極群21の上から各接点用弾性体14を押圧させて接触させると、その押圧に応じて各櫛歯電極群21と各接点用弾性体14との接触面積が大きくなり、その結果、各櫛歯電極群21を構成している電極間の電気抵抗が小さくなる。すなわち、各接点用弾性体14は、櫛歯電極群21を構成している電極間の電気抵抗を変えることができる可変抵抗機能を発揮する。
図4に示すように、櫛歯電極群21aの外側と櫛歯電極群21bの外側、櫛歯電極群21bの外側と櫛歯電極群21cの外側、櫛歯電極群21cの外側と櫛歯電極群21dの外側、櫛歯電極群21dの外側と櫛歯電極群21eの外側、櫛歯電極群21eの外側と櫛歯電極群21fの外側、櫛歯電極群21fの外側と櫛歯電極群21gの外側、櫛歯電極群21gの外側と櫛歯電極群21hの外側および櫛歯電極群21hの外側と櫛歯電極群21aの外側は、それぞれ、配線22、配線23、配線24、配線25、配線26、配線27、配線28および配線29で接続されている。また、櫛歯電極群21bの内側と櫛歯電極群21cの内側、櫛歯電極群21cの内側と櫛歯電極群21dの内側、櫛歯電極群21dの内側と櫛歯電極群21eの内側、櫛歯電極群21eの内側と櫛歯電極群21fの内側、櫛歯電極群21fの内側と櫛歯電極群21gの内側、櫛歯電極群21gの内側と櫛歯電極群21hの内側および櫛歯電極群21hの内側と櫛歯電極群21aの内側は、それぞれ、配線33、配線34、配線35、配線36、配線37、配線38および配線39で接続されている。
各櫛歯電極群21にて囲まれる領域の中央であって、押圧子15の下方に相当する位置には、1個のメタルドーム50が配置されている。図5に示すように、メタルドーム50の上面位置は、櫛歯電極群21のそれよりも高い。メタルドーム50の外周端面は、PCB20上に形成された円環状のアース用の電極61と電気的に接続されている。また、アース用の電極61の内方には、円形の電極62が、アース用の電極61およびメタルドーム50のいずれにも接触しないように配置される。第二操作板13の上から押圧すると、押圧子15が下方に押され、メタルドーム50をへこませることができ、その結果、メタルドーム50の中央部分が電極62に接触し、アース用の電極61と電極62とが電気的に接続される。櫛歯電極群21aの内側は、アース用の電極61と、配線40にて接続されている。
また、PCB20上における櫛歯電極群21a,21c,21e,21gより外側であって、押圧子16a,16c,16e,16gの下方に相当する各位置には、それぞれ、1個のメタルドーム51,52,53,54が配置されている。メタルドーム51,52,53,54の上面位置は、先の述べたメタルドーム50と同様、櫛歯電極群21のそれよりも高い。メタルドーム51,52,53,54の各外周端面は、PCB20上に形成された円環状の電極(後述する)と電気的に接続され、その円環状の電極の内方には、円形のアース用の電極(後述する)が、円環状の電極および各メタルドーム51,52,53,54のいずれにも接触しないように配置される。押圧子16a,16c,16e,16g上方の第一操作板12から押圧すると、押圧子16a,16c,16e,16gが下方に押され、メタルドーム51,52,53,54をへこませることができ、その結果、メタルドーム51,52,53,54の各中央部分がその直下にある各アース用の電極に接触し、アース用の電極と円環状の電極とが電気的に接続される。各円環状の電極は、櫛歯電極群21a,21c,21e,21gの各外側の電極と、それぞれ、配線41,42,43,44にて接続されている。なお、上述のメタルドーム50,51,52,53,54に代えて、樹脂製のエンボススイッチ(例えば、PET製ドーム)、タクトスイッチ等の他種のメカニカルスイッチを用いても良い。加えて、メタルドーム50,51,52,53,54のようなメカニカルスイッチを、樹脂シート11側に設けることもできる。
図6は、PCB上に形成される接点電極群および配線の形態を示す平面図である。
図6に示す各櫛歯電極群21の構成につき主に説明する。基準方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21aは、8個の櫛歯電極群21に囲まれる中心(電極62のある点)から見て外側(以後、単に「外側」と称する)にある櫛歯電極71と、電極62から見て内側(以後、単に「内側」と称する)にあるアース電極としての櫛歯電極91とから構成される。櫛歯電極71と櫛歯電極91は、歯を互い違いにかみ合うような配置で形成されている。中間方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21bは、その外側であって櫛歯電極群21aに近い側に配置される半櫛歯電極72と、同じく外側であって櫛歯電極群21cに近い側に配置される半櫛歯電極74と、半櫛歯電極72,74より内側に配置されるアース電極としての櫛歯電極92とから構成される。基準方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21cは、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、外側にある櫛歯電極75と、内側にあるアース電極としての櫛歯電極93とから構成される。中間方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21dは、櫛歯電極群21bと同じ形態であり、その外側であって櫛歯電極群21cに近い側に配置される半櫛歯電極76と、同じく外側であって櫛歯電極群21eに近い側に配置される半櫛歯電極77と、半櫛歯電極76,77より内側に配置されるアース電極としての櫛歯電極94とから構成される。
基準方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21eは、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、外側にある櫛歯電極78と、内側にあるアース電極としての櫛歯電極95とから構成される。中間方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21fは、櫛歯電極群21bと同じ形態であり、その外側であって櫛歯電極群21eに近い側に配置される半櫛歯電極79と、同じく外側であって櫛歯電極群21gに近い側に配置される半櫛歯電極80と、半櫛歯電極79,80より内側に配置されるアース電極としての櫛歯電極96とから構成される。基準方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21gは、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、外側にある櫛歯電極81と、内側にあるアース電極としての櫛歯電極97とから構成される。中間方向用接点電極群の一つである櫛歯電極群21hは、櫛歯電極群21bと同じ形態であり、その外側であって櫛歯電極群21gに近い側に配置される半櫛歯電極82と、同じく外側であって櫛歯電極群21aに近い側に配置される半櫛歯電極73と、半櫛歯電極82,73より内側に配置されるアース電極としての櫛歯電極98とから構成される。
このように、基準方向用接点電極群である4つの櫛歯電極群21a,21c,21e,21gは、外側にある櫛歯電極と内側にある櫛歯電極とをかみ合わせた構成を有する一方、中間方向用接点電極群である4つの櫛歯電極群21b,21d,21f,21hは、外側にある2つの半櫛歯電極と、内側にある櫛歯電極とをかみ合わせた構成を有する。半櫛歯電極72,74,76,77,79,80,82,73の大きさは、櫛歯電極71,75,78,81,91,92,93,94,95,96,97,98を略半割にした大きさである。先に述べた配線22、配線23、配線24、配線25、配線26、配線27、配線28および配線29は、櫛歯電極71と半櫛歯電極72を、半櫛歯電極74と櫛歯電極75を、櫛歯電極75と半櫛歯電極76を、半櫛歯電極77と櫛歯電極78を、櫛歯電極78と半櫛歯電極79を、半櫛歯電極80と櫛歯電極81を、櫛歯電極81と半櫛歯電極82を、および半櫛歯電極73と櫛歯電極71を、それぞれ接続している。また、先に述べた配線33、配線34、配線35、配線36、配線37、配線38および配線39は、櫛歯電極92と櫛歯電極93を、櫛歯電極93と櫛歯電極94を、櫛歯電極94と櫛歯電極95を、櫛歯電極95と櫛歯電極96を、櫛歯電極96と櫛歯電極97を、櫛歯電極97と櫛歯電極98を、および櫛歯電極98と櫛歯電極91を、それぞれ接続している。
また、櫛歯電極群21aの外側には、円環状の電極63と、その電極63に囲まれた領域内にある円形の電極64が配置されている。円環状の電極63は、配線41によって櫛歯電極71と電気的に接続されている。同様に、櫛歯電極群21c,21e,21gの各外側には、円環状の電極65,67,69と、各電極65,67,69に囲まれた領域内にある円形の電極66,68,70とがそれぞれ配置されている。円環状の電極65,67,69は、それぞれ、配線42,43,44によって櫛歯電極75,78,81と電気的に接続されている。
半櫛歯電極73、櫛歯電極71、半櫛歯電極72および円環状の電極63は、北(N)方向の入力を検知するための電極である。半櫛歯電極74、櫛歯電極75、半櫛歯電極76および円環状の電極65は、東(E)方向の入力を検知するための電極である。半櫛歯電極77、櫛歯電極78、半櫛歯電極79および円環状の電極67は、南(S)方向の入力を検知するための電極である。半櫛歯電極80、櫛歯電極81、半櫛歯電極82および円環状の電極69は、西(W)方向の入力を検知するための電極である。すなわち、PCB20上の接点電極群21の内、中間方向用接点電極は、当該中間方向(北東、南東、南西、北西)の各方向の入力を検知するための電極ではなく、当該中間方向の両隣の基準方向の入力を検知するための電極から構成されている。円環状の電極63,65,67,69は、それぞれ、北、東、南、西の各方向の入力を検知するための電極であるが、これらと導通可能な各円形の電極64,66,68,70がアース用の電極61と接続されていない。したがって、メタルドーム51,52,53,54が押し込まれて、円環状の電極63,65,67,69が円形の電極64,66,68,70と電気的に接続されると、各接点電極群21を押圧した際の機能と別の機能を発揮することができる。
1.2 操作方向の特定方法
図7〜図9は、操作板上の所定方向を押圧操作した際の各接点電極群への接触領域と、その際の操作方向の特定方法を説明するための図である。なお、図7〜図9では、図の煩雑さを避けるため、円環状の電極63,65,67,69、円形の電極64,66,68,70および配線41,42,43,44は、示されていない。
図7に示すように、第一操作板12上の北方向(図7の上方向)をPCB20に向かって押圧操作した場合、接点用弾性体14a,14b,14hが、それぞれN、NEおよびNWという3つの接触領域にてPCB20上の接点電極群に接触する。ここで、当該3つの接触領域の各面積は、ほぼ等しいものとする。接触領域Nは、櫛歯電極71と櫛歯電極91とを接続するように接触する領域である。接触領域NEは、半櫛歯電極72,74と櫛歯電極92とを接続するように接触する領域である。また、接触領域NWは、半櫛歯電極73,82と櫛歯電極98とを接続するように接触する領域である。北方向を押圧操作しているため、北方向、北東方向および北西方向以外の5つの方向では、接点用弾性体14と接点電極群21は接触していない。櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は、接触領域の面積に反比例して小さくなる。このため、一定の電流が流れるようにすると、その櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電圧値は、接触領域の面積に反比例して小さくなる。電圧値が小さいほどポイント(電圧値という計測値に連動する数値に相当)を高くすると、接触領域N,NE,NWに基づく北方向の電圧値に対して20ポイントを付与した場合、接触領域NEに基づく東方向の電圧値および接触領域NWに基づく西方向の電圧値に対して、例えばそれぞれ5ポイントが付与されるものとする。なお、南方向では櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は無限大であり、ポイントは付与されない。この結果、表101に示すように、北方向に20ポイント、東方向に5ポイント、西方向に5ポイントが付与され、互いに反対方向のポイントを差し引くと、北方向の20ポイントのみが残る。この結果、北方向の合成ベクトル102が生成され、押圧操作方向は北方向と決定される。
また、図8に示すように、第一操作板12上の北東方向(図8の右上方向)をPCB20に向かって押圧操作した場合、接点用弾性体14b,14c,14aが、それぞれNE、EおよびNという3つの接触領域にてPCB20上の接点電極群に接触する。ここで、当該3つの接触領域の各面積は、ほぼ等しいものとする。接触領域NEは、半櫛歯電極72,74と櫛歯電極92とを接続するように接触する領域である。接触領域Eは、櫛歯電極75と櫛歯電極93とを接続するように接触する領域である。また、接触領域Nは、櫛歯電極71と櫛歯電極91とを接続するように接触する領域である。北方向および東方向の各トータルの接触面積は等しいため、各電圧値も等しくなる。さらに、北東方向を押圧操作しているため、北東方向、北方向および東方向以外の5つの方向では、接点用弾性体14と接点電極群21は接触していない。西方向および南方向では櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は無限大であり、ポイントは付与されない。この結果、表105に示すように、例えば、北方向に15ポイント、東方向に15ポイントがそれぞれ付与される。北方向に付与されたポイントと東方向に付与されたポイントは同一であり、その差が無い。この結果、北東方向の合成ベクトル108が生成され、押圧操作方向は北東方向と決定される。
同様に、図9に示すように、第一操作板12上の東方向のやや北東寄りの方向をPCB20に向かって押圧操作した場合、接点用弾性体14b,14c,14d,14aが、それぞれNE、E、SEおよびNという4つの接触領域にてPCB20上の接点電極群に接触する。ここで、接触領域NE、E、SEおよびNの各接触面積の比は、10:10:8:2であるものとする。押圧操作の方向は、東方向のやや北東寄りの方向であるため、その方向から大きく外れた位置の接触領域Nは、他の接触領域NE、EおよびSEに比べて小さい。この例において、櫛歯電極75と櫛歯電極93との間の電圧値に対して付与されるポイントを10ポイントとすると、半櫛歯電極72,74と櫛歯電極92との間の電圧値に対して付与されるポイントも10ポイントである。半櫛歯電極76,77と櫛歯電極94との間の電圧値に対して付与されるポイントは8ポイントであり、櫛歯電極71と櫛歯電極91との間の電圧値に対して付与されるポイントは、2ポイントである。西方向では、櫛歯電極間(若しくは半櫛歯電極と櫛歯電極間)の電気抵抗値は無限大であり、ポイントは付与されない。この結果、表109に示すように、北方向に7ポイント、東方向に19ポイント、南方向に4ポイントがそれぞれ付与される。
ここで、北と南は互いに反対方向である。このため、北方向に付与されたポイントと南方向のポイントの差し引きが行われる。一方、西方向のポイントはゼロであるが、実際の演算において、東方向のポイント(19ポイント)から西方向のポイント(ゼロポイント)を差し引くことになる。次に、北方向と南方向の各ポイントの差に相当する大きさの北方向のベクトルと、東方向のベクトルとを合成し、合成ベクトル112が生成される。この結果、押圧操作方向は、合成ベクトル112の方向、すなわち、東方向のやや北東寄りの方向と決定される。
合成ベクトル112は、基準方向(北、東、南、西)および中間方向(北東、南東、南西、北西)のいずれの方向とも完全に一致しない方向である。上述のようなベクトルの演算処理を行うことにより、多方向操作キー2において予め設定された8方向と一致しない任意の方向およびその強さを特定することができる。この利点の一つは、第一操作板12をその周方向に沿ってなぞる、いわゆる回転操作を行った際に、時々刻々と変化するベクトルの変化を細かく検知できることにある。例えば、第一操作板12を真北の位置からその周方向に沿って東に向かってなぞる操作を行うと、櫛歯電極群21aの位置から櫛歯電極群21bの位置まで操作しなくても、その間の位置でベクトルの方向の変化を検知できる。例えば、操作開始から10度、あるいは15度といった低角段階で回転操作の検知が可能となる。
一方、合成ベクトル112のように、8方向のいずれにも合致しない方向を持つベクトルが常に操作方向であると認識してしまうと、8方向のいずれかの方向のキーの機能を発揮しようとした場合に、不都合が生じる。このため、上述のような回転操作以外の場合には、合成ベクトル112が8方向のいずれの方向の範囲内にあるかを判別するようにするのが好ましい。例えば、第一操作板12を、中心角45度毎の8領域に分け、それぞれを、北、北東、東、南東、南、南西、西、北西の8方向に割り当てる。合成ベクトル112は、東方向の領域内に存在することになるので、東方向を操作方向と決定する。このように、複数の方向キーを押圧した場合に生成される合成ベクトルがどの領域に存在するかによって操作方向を8方向のいずれかに決定すると、回転操作以外の操作を行う際に支障がなくなる。
1.3 表示情報のスクロールおよび拡大・縮小の状況
図10は、図1に示す電子機器に設けられる多方向操作キーを矢印Rの方向になぞる操作を行い、表示部に表示される表示情報をスクロールする状況を示す図であり、(10A)は多方向操作キーを矢印Rの方向になぞる操作を行う様子を、(10B)は表示部に表示される表示情報がスクロールされる状況を、それぞれ示す。
表示情報の一例である画像を選択する画面において、多方向操作キー2の第一操作板12を、矢印Rの方向(右回り)になぞるように操作すると、前述の合成ベクトルの方向が時々刻々と変化し、北方向から北東方向、東方向、南東方向のように順に変化する。この変化によって、回転操作が行われていると判断される。表示部3には、画像を1つずつ表示可能なウィンドウ120が表示されており、そのウィンドウ120に表示される画像が、画像131、画像132、画像133という順番でスクロールされる。
図11は、図10に示す操作に続いて、なぞる操作を停止し、その後再び右回りになぞる操作、左回りになぞる操作を順に行った際に、表示部に表示される表示情報が変化する状況を示す図であり、(11A)は多方向操作キーの操作を停止してから矢印Rの方向になぞる操作を行い、次に矢印Lの方向になぞる操作を行う様子を、(11B)は上記一連の操作の段階で表示部に表示される表示情報が変化する状況を、それぞれ示す。
図10(10A)の矢印Rの方向になぞる操作を行っていた多方向操作キー2を停止すると、ウィンドウ120に表示される画像のスクロールも停止し、例えば、図11(11B)の上方に示すように、画像133がウィンドウ120に表示された状態になると共に、画像のスクロールのモードから画像の拡大・縮小のモードへと切り替わる。次に、再び、第一操作板12を図11(11A)の矢印Rの方向になぞるように操作すると、画像133が点線で示す大きさから実線で示す大きさへと拡大される。また、第一操作板12を逆方向(矢印Lの方向)になぞるように操作すると、画像133が点線で示す大きさから実線で示す大きさへと縮小される。かかる処理の流れについては、より詳細に後述する。
図12は、図10に示す画像のスクロール状況と異なる例を示す図であって、(12A)は操作板を矢印Rの方向になぞる操作を行う様子を、(12B)は表示部に表示される複数の表示情報の内の一つを選択するための選択枠をスクロールする状況を、それぞれ示す。
図12(12B)に示すように、複数の画像131,132,133が表示されていて、第一操作板12を矢印Rの方向になぞる操作を行うと、画像131,132,133等を選択するための選択表示としての選択枠140が下方に移動するようにしても良い。この際、第一操作板12の上記操作を継続すると、選択枠140により選択可能な複数の画像が変化するようにできる。また、別の例として、表示部3に全ての画像を表示しておき、第一操作板12の上記操作の継続によって、選択枠140のスクロールのみを行うようにしても良い。
1.4 制御部の概略構成
図13は、図1に示す電子機器(携帯電話)の本体に備えられる制御部の例示的なハードウェアの構成図である。
制御部150は、中央処理装置(Central Processing Unit: CPU)151と、読み出し専用のメモリ(Read Only Memory: ROM)152と、読み書き可能なメモリ(Random Access Memory: RAM)153と、ビデオRAM(Video Random Access Memory: VRAM)154と、電気若しくは電圧の操作でデータの消去若しくは書き換えを可能としたメモリ(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory: EEPROM)155と、インターフェイス(Interface: I/F)156とを備える。制御部150は、多方向操作キー2のPCB20上あるいはPCB20以外に設けることができる。
ROM152は、CPU151の制御用プログラム等の読み出し専用の情報を格納したメモリである。RAM153は、オペレーションシステム(Operation System: OS)、各種アプリケーションソフト、この実施の形態における押圧操作方向の決定の他、表示部3において表示情報を選択操作する画面表示中、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する処理、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報をスクロールする処理、回転操作の終了を検知すると、特定の表示情報の拡大若しくは縮小の処理のモードへと切り替える処理、モードの切り替え後、再び、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する処理、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報の拡大若しくは縮小を行う処理の少なくともいずれか一つの処理を行うために必要なコンピュータプログラム等を格納した、読み書き可能なメモリである。当該コンピュータプログラムは、さらに、表示情報を選択操作する画面表示中、周回りが右回り若しくは左回りのいずれかを判別する処理、その判別の結果、周回りが右回り若しくは左回りのいずれか一方向である場合、表示情報を先に送る方向にスクロールする一方、周回りが上記いずれか一方向と逆方向である場合、表示情報を戻す方向にスクロールする処理、表示情報のスクロールの停止から、再び、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りにオンになると、周回りが右回り若しくは左回りのいずれかを判別する処理、その判別の結果、周回りが右回り若しくは左回りのいずれか一方向である場合、表示情報を拡大表示する一方、周回りが上記いずれか一方向と逆方向である場合、表示情報を縮小表示する処理を行うためのプログラムを含むことができる。ここで、「オンになる」ことは、アナログ的に電気抵抗値、電圧値あるいは電流値が変化する場合において所定の閾値を超えたか否かを基準とするスイッチのオン・オフの他、デジタル的なスイッチのオン・オフを含むように広義に解釈される。
また、上記の各処理の1または2以上を行うコンピュータプログラムを別々にRAM153内に格納しておき、CPU151がそれらのコンピュータプログラムを読み出すことにより、多方向操作キー2の内の任意の方向キーがオンになった時点から、表示情報の正方向または逆方向のスクロール、当該スクロールの停止、表示情報の拡大若しくは縮小の各処理を実行するようにしても良い。また、コンピュータプログラムは、外部のネットワークを経由して携帯電話1にインストールし、あるいは情報記録媒体を携帯電話1内のスロット(図示せず)に装填し、その情報記録媒体に格納されたコンピュータプログラムを、制御部150内のRAM153若しくはEEPROM155に格納するようにしても良い。
VRAM154は、種々のデータを表示部3に表示する際に、そのデータを一時的にストックしておくメモリである。EEPROM155も、一時的にデータを書き込んでおくメモリである。インターフェイス156は、制御部150の外部からの信号を受信あるいはその外部に信号を送信する部分である。ここで、「制御部150の外部」には、「携帯電話1の外部」も含まれる。
CPU151は、表示部3において表示情報を選択操作する画面表示中、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する第一回転操作判別手段と、その判別の結果、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報をスクロールするスクロール手段と、回転操作の終了を検知すると、特定の表示情報の拡大若しくは縮小の処理のモードへと切り替える切替手段と、切替手段による切り替え後、再び、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する第二回転操作判別手段と、その判別の結果、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報の拡大若しくは縮小を行う拡大・縮小表示手段とを兼ねる。
CPU151は、さらに、切替手段として、特定のキーの押圧によって、回転操作が終了したと判断し、それによって特定の表示情報の拡大若しくは縮小の処理のモードへと切り替えるようにしても良い。また、CPU151は、切替手段として、所定時間、各方向キーがその周回りに押圧されていない場合に、回転操作が終了したと判断し、それによって特定の表示情報の拡大若しくは縮小の処理のモードへと切り替えるようにしても良い。さらに、CPU151は、表示情報を選択操作する画面表示中、周回りが右回り若しくは左回りのいずれかを判別する第一回転方向判別手段を兼ねることができ、第一回転方向判別手段として判別した結果、周回りが右回り若しくは左回りのいずれか一方向である場合、スクロール手段として、表示情報を先に送る方向にスクロールする一方、周回りが上記いずれか一方向と逆方向である場合、表示情報を戻す方向にスクロールするようにしても良い。また、CPU151は、スクロールの停止から、再び、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りにオンになると、周回りが右回り若しくは左回りのいずれかを判別する第二回転方向判別手段を兼ねることができ、第二回転方向判別手段として判別した結果、周回りが右回り若しくは左回りのいずれか一方向である場合、拡大・縮小表示手段として、表示情報を拡大表示する一方、周回りが上記いずれか一方向と逆方向である場合、表示情報を縮小表示するようにしても良い。RAM153等のメモリ内に格納される上述のコンピュータプログラムは、制御部150内のCPU151を、第一回転操作判別手段、スクロール手段、切替手段、第二回転操作判別手段、拡大・縮小表示手段、第一回転方向判別手段、第二回転方向判別手段として機能させることのできるプログラムである。
メモリであるROM152、RAM153およびEEPROM155の内の少なくとも1つには、各接点用弾性体14が各櫛歯電極群21と接触した際の櫛歯電極71等と櫛歯電極91等との間(若しくは半櫛歯電極72等と櫛歯電極92等との間)の電圧値に応じたポイントの値を記述したテーブル若しくは数式を格納することができる。ここで、「ポイント」は、電圧値と対応する数値の他、電気抵抗値あるいは電流値と対応する数値などを含むように広義に解釈される。また、ポイントは、図7〜図9の表101,105,109に例示した数値以外に、どのような数値でも採用できる。
1.5 例示的な移動処理の流れ
図14から図16は、多方向操作キーの回転、停止、回転の順に操作した際の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
操作者が、多方向操作キー2上の任意の方向キーを押圧すると、CPU151は、1または2以上の方向キーがオンになったかどうかを判別する(ステップST1)。その結果、オンになっていないと判断された場合には、ステップST1が継続的に行われる。一方、オンになった場合には、CPU151は、オンを検出した基準方向若しくは中間方向の属する基準方向別に、押圧に基づくポイントの多寡に応じた大きさのベクトルを生成する(ステップST2)。続いて、CPU151は、上記の生成したベクトルを合成して合成ベクトルを生成する(ステップST3)。CPU151は、その合成ベクトルによって、操作方向を特定する(ステップST4)。CPU151は、操作方向を特定した回数が所定時間(例えば、0.1秒間)当たり所定のカウント数(N回、例えば2回)になったかどうかを判別する(ステップST5)。所定のカウント数に至っていない場合には、ステップST1以降の各ステップを継続する。一方、所定のカウント数になった場合には、CPU151は、当該所定のカウント数分の操作方向の変化が回転時のベクトルの変化であるかどうかを判別する(ステップST6)。この判別は、好適には、合成ベクトルの方向がある周方向に沿って変化しているか否かという基準で行う。その結果、回転時のベクトルの変化ではないと判別された場合には、CPU151は、回転操作時以外の他の機能を実行する(ステップST7)。一方、回転時のベクトルの変化であると判別された場合には、CPU151は、回転操作がされたものと決定する(ステップST8)。
次に、CPU151は、その回転操作の方向が右回りであるか否かを判別する(ステップST9)。右回りの場合には、CPU151は、表示部3に表示される表示情報を、正方向(ここでは、「正方向」を、表示情報を先に送る方向とする)にスクロールする(ステップST10)。一方、その回転操作の方向が左回りの場合には、CPU151は、表示部3に表示される表示情報を、逆方向(ここでは、「逆方向」を、表示情報を戻す方向とする)にスクロールする(ステップST11)。続いて、CPU151は、合成ベクトルの方向の変化が所定時間内(例えば、0.1秒間)にあるかどうかを判別する(ステップST12)。所定時間内に合成ベクトルの変化がある場合には、ステップST9に戻る。一方、所定時間内に合成ベクトルの変化がないと判別された場合には、CPU151は、スクロール機能から拡大・縮小機能への切り替えを行う(ステップST13)。
ステップST13の切り替えを行った後、CPU151は、再び、1または2以上の方向キーがオンになったかどうかを判別する(ステップST14)。その結果、オンになっていないと判断された場合には、ステップST14が継続的に行われる。一方、オンになった場合には、CPU151は、オンを検出した基準方向若しくは中間方向の属する基準方向別に、押圧に基づくポイントの多寡に応じた大きさのベクトルを生成する(ステップST15)。続いて、CPU151は、上記の生成したベクトルを合成して合成ベクトルを生成する(ステップST16)。CPU151は、その合成ベクトルによって、操作方向を特定する(ステップST17)。CPU151は、操作方向を特定した回数が所定時間(例えば、0.1秒間)当たり所定のカウント数になったかどうかを判別する(ステップST18)。所定のカウント数に至っていない場合には、ステップST14以降の各ステップを継続する。一方、所定のカウント数になった場合には、CPU151は、当該所定のカウント数分の操作方向の変化が回転時のベクトルの変化であるかどうかを判別する(ステップST19)。この判別は、ステップST6と同様、好適には、合成ベクトルの方向がある周方向に沿って変化しているか否かという基準で行う。その結果、回転時のベクトルの変化ではないと判別された場合には、CPU151は、回転操作時以外の他の機能を実行する(ステップST20)。一方、回転時のベクトルの変化であると判別された場合には、CPU151は、回転操作がされたものと決定する(ステップST21)。
次に、CPU151は、その回転操作の方向が右回りであるか否かを判別する(ステップST22)。右回りの場合には、CPU151は、表示部3に表示されているその時点で選択されている表示情報を拡大する(ステップST23)。一方、左回りの場合には、CPU151は、選択されている表示情報を縮小する(ステップST24)。ステップST23における拡大する速度またはステップST24における縮小する速度は、回転操作の速度に依存させるのが好ましい。続いて、CPU151は、合成ベクトルの方向の変化が所定時間内(例えば、0.1秒間)にあるかどうかを判別する(ステップST25)。所定時間内に合成ベクトルの変化がある場合には、ステップST22に戻る。一方、所定時間内に合成ベクトルの変化がないと判別された場合には、CPU151は、拡大または縮小を停止する(ステップST26)。
2.第二の実施の形態
2.1 多方向操作キーの構造
電子機器の第二の実施の形態は、北東南西の4方向のみに押圧可能な多方向操作キー2を備え、かつ4方向のそれぞれにおいてオンとオフのみを検知可能な例であり、8方向の接触面積に応じて4つの基準方向別にベクトルを生成する前述の第一の実施の形態と異なり、押圧方向の数と検知方法の両面でシンプルな機構を持つ。
図17は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器(携帯電話)に備えられる多方向操作キーの裏側のPCB上の接点電極群および配線の形態を示す図である。
PCB20には、櫛歯電極群21a,21c,21e,21gという4つの基準方向用接点電極21が、それぞれ北、東、南、西に形成されており、これら基準方向用接点電極21に囲まれた領域の略中央に、円環状のアース用の電極61が形成されている。電極61の内方には、これと非接触となるように円形の電極62が形成されている。櫛歯電極群21aは、電極62のある中心から見て外側(以後、単に「外側」と称する)にある櫛歯電極71と、電極62から見て内側(以後、単に「内側」と称する)にあるアース電極としての櫛歯電極91とから構成される。櫛歯電極71と櫛歯電極91は、歯を互い違いにかみ合うような配置で形成されている。櫛歯電極群21cは、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、外側にある櫛歯電極75と、内側にあるアース電極としての櫛歯電極93とから構成される。櫛歯電極群21eおよび櫛歯電極群21gも、櫛歯電極群21aと同じ形態であり、それぞれ、外側にある櫛歯電極78と内側にあるアース電極としての櫛歯電極95、および外側にある櫛歯電極81と内側にあるアース電極としての櫛歯電極97とから構成される。櫛歯電極91,93,95,97は、配線40によって電極61に接続されている。
図18は、図17に示す接点電極群および配線の上方に備えられる操作板を北方向から右回りになぞる操作を行った際のオン・オフ状況を示す図である。
第二の実施の形態に係る携帯電話1の多方向操作キー2の表側を構成する操作板10は、第一の実施の形態にて説明した操作板10と同様、略円板形状の薄型の樹脂シート11と、その樹脂シート11上に固定される円環形状で樹脂製の第一操作板12と、樹脂シート11上であってその第一操作板12の略中央の穴部分に固定される円形で樹脂製の第二操作板13とを備える。樹脂シート11の裏面には、第一操作板12の周方向に沿うように、第一操作板12の中心から90度間隔に1個ずつ合計4個の接点用弾性体14a,14c,14e,14g,(総称して、「接点用弾性体14」と称する)が固定されている。接点用弾性体14は、略半球形状を有しており、その球面側先端がPCB側を向くように、樹脂シート11に固定される。各接点用弾性体14は、図17に示す各接点電極群21を構成する2つの櫛歯電極を導通させることのできる接点である。また、樹脂シート11の裏面であって第二操作板13の裏側に対応する領域には、1個の略円柱形状の押圧子15が固定されている。押圧子15は、PCB20上に形成される電極61および電極62の上方を覆うメタルドーム(不図示)をへこませ、電極61と電極62とを導通させるためのものである。
多方向操作キー2の北方向を押圧すると(押圧している部分を斜線で示す。以後、同様である。)、その北方向の押圧部分の直下にある櫛歯電極群21aのみがオンになり、その他の押されていない方向の櫛歯電極群21c,21e,21gはオフのままとなる。また、多方向操作キー2の北東方向を押圧すると、北方向および東方向にある櫛歯電極群21a,21cのみがオンになり、その他の櫛歯電極群21e,21gはオフのままとなる。さらに、多方向操作キー2の東方向を押圧すると、その東方向の押圧部分の直下にある櫛歯電極群21cのみがオンになり、その他の押されていない方向の櫛歯電極群21a,21e,21gはオフのままとなる。したがって、多方向操作キー2の第一操作板12を北方向から右回りになぞると、北方向のみがオン、北方向と東方向がオン、東方向がオンというように、1つのオンと2つのオンが交互に繰り返されることになる。第二の実施の形態に係る携帯電話1の制御部は、このような交互のオンが検出されたときに、回転操作が行われているものと決定することができる。したがって、第一の実施の形態に係る携帯電話1のようにベクトルの生成、生成したベクトルの合成、その合成ベクトルから操作方向の特定、操作方向の変化に基づき回転操作か否かの判断という処理を行わなくても、回転操作の決定が可能である。
2.2 制御部の概略構成
第二の実施の形態に係る携帯電話1の制御部の構成を、図13に示す構成を参照しながら説明する。制御部150は、CPU151と、ROM152と、RAM153と、VRAM154と、EEPROM155と、I/F156とを備える。制御部150は、多方向操作キー2のPCB20上あるいはPCB20以外のいずれに設けても良い。このような構成の面で、第二の実施の形態と第一の実施の形態とは共通する。
ROM152は、CPU151の制御用プログラム等の読み出し専用の情報を格納したメモリである。RAM153は、OS、各種アプリケーションソフト、この実施の形態における押圧操作方向の決定の他、表示部3において表示情報を選択操作する画面表示中、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する処理、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報をスクロールする処理、回転操作の終了を検知すると、特定の表示情報の拡大若しくは縮小の処理モードへと切り替える処理、モードの切り替え後、再び、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する処理、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報の拡大若しくは縮小を行う処理の少なくともいずれか一つの処理を行うために必要なコンピュータプログラム等を格納した、読み書き可能なメモリである。
また、上記の各処理の1または2以上を行うコンピュータプログラムを別々にRAM153内に格納しておき、CPU151がそれらのコンピュータプログラムを読み出すことにより、多方向操作キー2の内の任意の方向キーがオンになった時点から、表示情報のスクロール、当該スクロールの停止、表示情報の拡大若しくは縮小という各処理を実行するようにしても良い。また、コンピュータプログラムは、外部のネットワークを経由して携帯電話1にインストールし、あるいは情報記録媒体を携帯電話1内のスロット(図示せず)に装填し、その情報記録媒体に格納されたコンピュータプログラムを、制御部150内のRAM153若しくはEEPROM155に格納するようにしても良い。
VRAM154は、種々のデータを表示部3に表示する際に、そのデータを一時的にストックしておくメモリである。EEPROM155も、一時的にデータを書き込んでおくメモリである。インターフェイス156は、制御部150の外部からの信号を受信あるいはその外部に信号を送信する部分である。ここで、「制御部150の外部」には、「携帯電話1の外部」も含まれる。
CPU151は、表示部3において表示情報を選択操作する画面表示中、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する第一回転操作判別手段と、その判別の結果、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報をスクロールするスクロール手段と、回転操作の終了を検知すると、特定の表示情報の拡大若しくは縮小の処理モードへと切り替える切替手段と、切替手段による切り替え後、再び、多方向操作キー2の各方向キーがその周回りに押圧され、回転操作されているか否かを判別する第二回転操作判別手段と、その判別の結果、回転操作されていると判断された場合に、その間、表示部3に表示される表示情報の拡大若しくは縮小を行う拡大・縮小表示手段とを兼ねる。第二の実施の形態において、拡大・縮小表示手段は、拡大のみを行うようにしているが、縮小のみを行う手段あるいは拡大と縮小の両方を行う手段であっても良い。また、同様に、切替手段も、拡大の処理モードに切り替える手段としているが、縮小の処理モードに切り替える手段あるいは拡大と縮小の両方の処理モードに切り替える手段であっても良い。
CPU151は、さらに、切替手段として、特定のキーの押圧によって、回転操作が終了したと判断し、それによって特定の表示情報の拡大(若しくは縮小)の処理モードへと切り替えるようにしても良い。また、CPU151は、切替手段として、第一の実施の形態と同様に、所定時間、各方向キーがその周回りに押圧されていない場合に、回転操作が終了したと判断し、それによって特定の表示情報の拡大(若しくは縮小)の処理モードへと切り替えるようにしても良い。RAM153等のメモリ内に格納される上述のコンピュータプログラムは、制御部150内のCPU151を、第一回転操作判別手段、スクロール手段、切替手段、第二回転操作判別手段、拡大・縮小表示手段として機能させることのできるプログラムである。
2.3 例示的な移動処理の流れ
図19および図20は、本発明の第二の実施の形態に係る電子機器(携帯電話)に備えられる多方向操作キーの回転、停止、回転の順に操作した際の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
操作者が、多方向操作キー2上の任意の方向キーを押圧すると、CPU151は、1または2以上の方向キーがオンになったかどうかを判別する(ステップST31)。その結果、オンになっていないと判断された場合には、ステップST31が継続的に行われる。一方、オンになったと判断された場合には、CPU151は、その検出回数が所定時間(例えば、0.1秒間)当たり所定のカウント数(N回、例えば2回)になったかどうかを判別する(ステップST32)。所定のカウント数に至っていない場合には、ステップST31およびステップST32を継続する。一方、所定のカウント数になった場合には、CPU151は、当該所定のカウント数分のオン検出の変化が回転時の変化であるかどうかを判別する(ステップST33)。この判別は、好適には、先に述べたように、ある方向の櫛歯電極群21(例えば、櫛歯電極群21a)のみがオンになり、次に、最初にオンとなった櫛歯電極群21(櫛歯電極群21a)とその周方向隣の櫛歯電極群21(櫛歯電極群21c)の両方がオンになり、その次に、直前にオンになった櫛歯電極群21(櫛歯電極群21c)のみがオンになるという状況が生じているか否かという基準で行う。その結果、オンの検出が回転時の変化ではないと判別された場合には、CPU151は、回転操作時以外の他の機能を実行する(ステップST34)。一方、回転時の変化であると判別された場合には、CPU151は、回転操作がされたものと決定する(ステップST35)。
次に、CPU151は、表示部3に表示される表示情報をスクロールする(ステップST36)。スクロールの方向は一種類とすることができ、例えば、表示情報を先に送る方向にのみスクロールすることができる。この場合、回転操作の方向も問わないので、第一操作板12をなぞる方向が右回りであってもあるいは左回りであっても、CPU151は、表示情報を先に送る方向にのみスクロールする。続いて、CPU151は、回転操作が停止したか否かを判別する(ステップST37)。この判別は、好適には、第一の実施の形態と同様、所定時間内(例えば、0.1秒間)に、回転時のオン検出の変化があるかどうかという基準で行う。また、第二操作板13が押されてメタルドームがへこむことによって、電極61と電極62とが導通したかどうかという基準でステップST37の判別を行うことも可能である。ステップST37の判別の結果、回転が停止したと判断された場合には、CPU151は、スクロール機能のモードを、表示情報の拡大機能のモードへと切り替える(ステップST38)。
ステップST38の切り替えを行った後、CPU151は、再び、1または2以上の方向キーがオンになったかどうかを判別する(ステップST39)。その結果、オンになっていないと判断された場合には、ステップST39が継続的に行われる。一方、オンになったと判断された場合には、CPU151は、その検出回数が所定時間(例えば、0.1秒間)当たり所定のカウント数になったかどうかを判別する(ステップST40)。所定のカウント数に至っていない場合には、ステップST39およびステップST40を継続する。一方、所定のカウント数になった場合には、CPU151は、当該所定のカウント数分のオン検出の変化が回転時の変化であるかどうかを判別する(ステップST41)。この判別は、ステップST33と同様、ある方向の櫛歯電極群21(例えば、櫛歯電極群21a)のみがオンになり、次に、最初にオンとなった櫛歯電極群21(櫛歯電極群21a)とその周方向隣の櫛歯電極群21(櫛歯電極群21c)の両方がオンになり、その次に、直前にオンになった櫛歯電極群21(櫛歯電極群21c)のみがオンになるという状況が生じているか否かという基準で行うのが好ましい。その結果、オンの検出が回転時の変化ではないと判別された場合には、CPU151は、回転操作時以外の他の機能を実行する(ステップST42)。一方、回転時の変化であると判別された場合には、CPU151は、回転操作がされたものと決定する(ステップST43)。
次に、CPU151は、回転停止時に選択されている表示情報を拡大する(ステップST44)。このステップにおける拡大処理は、縮小処理であっても良い。ステップST44の処理は、回転操作の方向を問わずに行われ、第一操作板12をなぞる方向が右回りであってもあるいは左回りであっても、CPU151は、表示情報を拡大(若しくは縮小)する。続いて、CPU151は、回転操作が停止したか否かを判別する(ステップST45)。この判別は、好適には、第一の実施の形態と同様、所定時間内(例えば、0.1秒間)に、回転時のオン検出の変化があるかどうかという基準で行い、あるいは第二操作板13が押されてメタルドームがへこむことによって、電極61と電極62とが導通したかどうかという基準で行うのが好ましい。ステップST45の判別の結果、回転が停止していないと判断された場合には、ステップST44に戻る。一方、回転が停止したと判断された場合には、CPU151は、拡大処理を停止する(ステップST46)。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
例えば、図14に示すステップST9〜ステップST11の各処理、ステップST22〜ステップST24の各処理のいずれか一方の各処理を除いても良い。すなわち、スクロールを一方向のみとし、あるいは表示情報の拡大・縮小を拡大若しくは縮小のいずれか1つのみとしても良い。また、図14に示すステップST10,ST11あるいは図19に示すステップST36においてスクロールする対象は、図12に示す選択枠140であっても良い。