以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1〜図4を参照して、本発明による超電導モータを説明する。
図1および図2を参照して、本発明による超電導モータ100は、回転子であるロータと、ロータの周囲に配置された固定子であるステータとを備える。ロータは、図1の紙面に垂直な長軸方向に延びる回転軸118と、当該回転軸118と接続され、この回転軸118の周囲に配置されたロータ軸116と、ロータ軸116の外表面に等間隔で配置された4つの永久磁石120とを含む。ロータ軸116の外表面は、その断面形状が円弧状になっている。ロータ軸116の外表面の周方向において等間隔に配置された永久磁石120は、その断面形状が四角形状となっている。永久磁石120は、図1の紙面に垂直な方向に、回転軸118の延在方向に沿って伸びるように配置されている。永久磁石120としては、たとえばネオジウム系磁石、サマリウム系磁石、フェライト系磁石などを用いることができる。
ロータの周囲には、図1に示すように超電導モータ100の固定子としてのステータが配置されている。ステータは、ステータヨーク121と、このステータヨーク121の内周側からロータに向けて突出するように形成されたステータコア123と、このステータコア123の外周を囲むように配置された超電導コイル体10と、この超電導コイル体を内部に保持する冷却容器107とを含む。
ステータヨーク121は、ロータ軸116の外周を取囲むように配置されている。ステータヨーク121の内側表面はその断面形状(回転軸118の延在方向に対して垂直な平面における断面形状)が円弧状になっている。超電導コイル体10はステータヨーク121の円弧状の内表面に沿うように配置されている。冷却容器107は、ステータコア123の一部が挿入された状態とできるように、超電導コイル体10の中心部に位置する領域に開口部を有している。すなわち、超電導コイル体10は、ステータコア123の外周を囲むように配置されている。
冷却容器107は、冷媒117と超電導コイル体10とを内部に保持する冷却容器内槽105と、この冷却容器内槽105の外周を囲むように配置された冷却容器外槽106とを含む。冷却容器外槽106と冷却容器内槽105との間には間隙が設けられ、当該間隙の内部は実質的に真空状態になっている。つまり冷却容器107は断熱容器となっている。
超電導コイル体10は、図1〜図3に示すように、ステータコア123の外周を囲む内周コイル体12a、12bと、この内周コイル体12a、12bの外周側を囲むように配置された外周コイル体11a、11bと、内周コイル体12aの上部端面と、外周コイル体11aの上部端面との間を繋ぐように配置された第1磁性体13と、内周コイル体12bの下方端面と外周コイル体11bの下方端面との間を繋ぐように配置された第2磁性体14とを含む。内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bは、図3に示した中心軸16の周囲を環状に囲むように形成されている。内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bの表面は、上記中心軸16に対して所定角度(たとえば20°)傾斜した状態となるように、超電導コイル体10は形成されている。また異なる観点から言えば、図2に示す断面における超電導コイル体10の長手方向軸131は、ステータコアの中心軸130に対して所定角度(たとえば20°)傾斜した状態となるように配置されている。内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bはそれぞれテープ状の超電導線材15を巻回することにより構成されている。内周コイル体12a、12bは、互いに超電導線材15の端面(主表面と連なる端面)が対向するように積層配置されている。また、外周コイル体11a、11bも、互いに超電導線材15の端面(主表面と連なる端面)が対向するように積層配置されている。なお、ここでは内周コイル体12a、12bという2つのコイルが積層された構造を示しているが、内周コイル体を1つだけ配置する、あるいは3つ以上の内周コイル体を積層配置するようにしてもよい。また、外周コイル体11a、11bについても、1つだけ内周コイル体を配置する、あるいは3つ以上の外周コイル体を積層配置するようにしてもよい。
第1磁性体13および第2磁性体14は、図2や図3に示すように、その断面形状が扇型のように屈曲した形状となっている。また、超電導コイル体10を平面視した場合(中心軸16に沿った方向から超電導コイル体10を見た場合)には、第1磁性体13および第2磁性体14はステータコア123の周囲を囲む形状(環状の形状)となっている。また、図4に示すように、外周コイル体11bと第2磁性体14とは接着剤などの接合剤29により接続固定されている。このような接合剤29は外周コイル体11aおよび内周コイル体12a、12bと、第2磁性体14および第1磁性体13との接続部にも配置されている。
図2および図3に示すように、本発明による超電導モータ100を構成する超電導コイル体10においては、内周コイル体12a、12b、外周コイル体11a、11b、第1磁性体13および第2磁性体14によって磁気回路が構成される。さらに、図4に示すように、第2磁性体14において、外周コイル体11bと対向する端面の端部は、外周コイル体11bにおいて第2磁性体14と対向する表面より外側に突出している。そして、このように突出した端部を含む凸部19は、図3に示すように第1磁性体13および第2磁性体14において内周コイル体12a、12b、外周コイル体11a、11bと対向する領域においてそれぞれ形成されている。このため、特に内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bと第1磁性体13および第2磁性体14との境界部において、周囲の磁束線を凸部19から第1磁性体13および第2磁性体14の内部に引き込むことができる。つまり、当該境界部において超電導線材15の主表面15a、15bを貫通するような磁束線の発生を抑制できる。このため、超電導線材15の主表面15a、15bを貫通するように磁束線が発生することに起因して超電導コイル体10での損失が大きくなり、結果的に超電導コイル体10の性能が劣化するといった問題の発生を抑制できる。
なお、図3および図4に示すように、第1磁性体13および第2磁性体14において、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bのいずれかと対向する端面と連なる側面14aの端部には、超電導線材15の主表面15a、15bの延びる方向に対して傾斜した表面部37が形成されている。当該表面部37は平坦面であってもよいし、図4などに示すように曲面状の形状を有していてもよい。
(実施の形態2)
図5を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態2を説明する。なお、図5は図3に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態2は、基本的には図1〜図4に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。具体的には、図5に示すように、本発明による超電導モータの実施の形態2においては、第1磁性体13が、2つの分離した磁性体23a、23bにより構成されている。磁性体23aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体23bは外周コイル体11aと接続されている。そして磁性体23aと磁性体23bとの間には間隙28が形成されている。また、もう一方の磁性体である第2磁性体14も、2つの磁性体24a、24bにより構成されている。磁性体24aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体24bは外周コイル体11bと接続されている。そして、磁性体24aと磁性体24bとの間には間隙28が形成されている。この間隙28の幅は十分狭く、たとえば0.1mm以上5mm以下であってもよい。
このような構成の第1磁性体13および第2磁性体14によっても、間隙28の幅が十分狭いので超電導コイル体10において磁気回路を構成することができる。そして、図5に示した超電導コイル体10によっても、図1〜図4に示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
なお、超電導モータ100の装置構成によっては、第1磁性体13および第2磁性体14のいずれか一方のみを配置する、あるいは図5に示した磁性体23a、23b、24a、24bのうちの少なくともいずれか1つを配置するといった構成としてもよい。
(実施の形態3)
図6を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態3を説明する。なお、図6は図3に対応する。
図6に示した超電導コイル体10を備える超電導モータは、基本的には図1〜図4に示した超電導モータ100と同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の形状が異なっている。すなわち、図6に示した超電導コイル体10においては、図1〜図4に示した超電導コイル体10と同様に、超電導コイル体10の中心軸16に対して、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bを構成する超電導線材15の主表面の向きが交差している。一方、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bにおいて第1磁性体13および第2磁性体14と対向する端面は、上記超電導コイル体10の中心軸16に対してほぼ垂直になっている。このような構成の超電導コイル体10によっても、上述した実施の形態1における超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
図7を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態4を説明する。なお、図7は図3に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態4は、図1〜図4に示す超電導モータ100と同様の構成を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。すなわち、本発明による超電導モータの実施の形態4においては、超電導コイル体10がコイル体21a、21bと、このコイル体21a、21bと接続された1つの磁性体23とにより構成されている。コイル体21a、21bは基本的には図3などに示した内周コイル体12a、12bまたは外周コイル体11a、11bと同様の構造を備える。また、磁性体23は、断面形状が図7に示すようにC型となっており、一方の端部がコイル体21aの上方端面に接続され、もう一方の端部がコイル体21bの下方端部に接続されている。磁性体23の上述した両端部においては、その外周側面がコイル体21a、21bの表面より外側に突出した凸部が形成されている。凸部の外周側面である表面部37は、図示したように曲面状であってもよいし、平面状であってもよい。このような断面形状を有する超電導コイル体10においては、コイル体21a、21bおよび磁性体23によって磁気回路が構成されている。
このような構成の超電導コイル体10によっても、図3などに示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態5)
図8〜図11を参照して、本発明による超電導モータを説明する。
図8および図9を参照して、本発明による超電導モータ100は、基本的には図1および図2に示した超電導モータ100と同様の構造を備える。すなわち、超電導モータ100は、回転子であるロータと、ロータの周囲に配置された固定子であるステータとを備える。ただし、ステータを構成する超電導コイル体10の構成が、図1および図2に示した超電導モータ100と異なっている。以下、図9〜図11を参照して、本実施の形態における超電導コイル体10を説明する。
超電導コイル体10は、図9〜図11に示すように、ステータコア123の外周を囲む内周コイル体12a、12bと、この内周コイル体12a、12bの外周側を囲むように配置された外周コイル体11a、11bと、内周コイル体12aの上部端面と、外周コイル体11aの上部端面との間を繋ぐように配置された第1磁性体13と、内周コイル体12bの下方端面と外周コイル体11bの下方端面との間を繋ぐように配置された第2磁性体14とを含む。図9〜図11に示した超電導コイル体10では、第1磁性体13および第2磁性体14の形状が図1〜図4に示した超電導コイル体10と異なっている。
すなわち、図11に示すように、第2磁性体14において、外周コイル体11bと対向する端面と連なる側面14aの端部には、超電導線材15の主表面15a、15bの延びる方向と実質的に平行に伸びる平面部17が形成されている。当該平面部17は、図10に示すように第1磁性体13および第2磁性体14において内周コイル体12a、12b、外周コイル体11a、11bと対向する領域の側面においてそれぞれ形成されている。このため、特に内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bと第1磁性体13および第2磁性体14との境界部において、超電導線材15の主表面15a、15b(図11参照)に対してほぼ平行に磁力線が伸びるようにすることができる。つまり、当該境界部において超電導線材15の主表面15a、15bを貫通するような磁束線の発生を抑制できる。このため、超電導線材15の主表面15a、15bを貫通するように磁束線が発生することに起因して超電導コイル体10での損失が大きくなり、結果的に超電導コイル体10の性能が劣化するといった問題の発生を抑制できる。
また、図11に示すように、第2磁性体14の幅は外周コイル体11bの幅よりも広くなっているため、外周コイル体11bを構成する超電導線材15の主表面15a、15bよりも外側に突出した凸部19が第2磁性体14において形成されている。このような凸部19が第2磁性体14において形成されることにより、図2〜図4に示した超電導コイル体10と同様に、外周コイル体11bの周囲に存在する磁束線を当該凸部19から第2磁性体14の内部に引き込むことができる。この結果、外周コイル体11bを構成する超電導線材15の主表面15a、15bを磁束線が貫通する可能性をより確実に低減できる。
なお、図12に示すように、第2磁性体14の幅を外周コイル体11bの幅とほぼ同じにしてもよい。また、第2磁性体14において、外周コイル体11bと対向する端面と連なる側面14aの端部には、超電導線材15の主表面15a、15bと実質的に同一平面上に位置する(実質的に主表面15a、15bと平行に伸びる)平面部17が形成されている。当該平面部17は、第1磁性体13および第2磁性体14において内周コイル体12a、12b、外周コイル体11a、11bと対向する領域の側面においてそれぞれ形成されている。このため、特に内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bと第1磁性体13および第2磁性体14との境界部において、図11に示した超電導コイル体10と同様に、超電導線材15の主表面15a、15b(図12参照)に対してほぼ平行に磁力線が伸びるようにすることができる。つまり、当該境界部において超電導線材15の主表面15a、15bを貫通するような磁束線の発生を抑制できる。
(実施の形態6)
図13を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態6を説明する。なお、図13は図10に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態6は、基本的には図8〜図11に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。具体的には、図13に示すように、本発明による超電導モータの実施の形態6においては、第1磁性体13が、2つの分離した磁性体23a、23bにより構成されている。磁性体23aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体23bは外周コイル体11aと接続されている。そして磁性体23aと磁性体23bとの間には間隙28が形成されている。また、もう一方の磁性体である第2磁性体14も、2つの磁性体24a、24bにより構成されている。磁性体24aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体24bは外周コイル体11bと接続されている。そして、磁性体24aと磁性体24bとの間には間隙28が形成されている。この間隙28の幅は十分狭く、たとえば0.1mm以上5mm以下であってもよい。
このような構成の第1磁性体13および第2磁性体14によっても、間隙28の幅が十分狭いので超電導コイル体10において磁気回路を構成することができる。そして、図13に示した超電導コイル体10によっても、図8〜図11に示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
なお、超電導モータ100の装置構成によっては、図5に示した超電導コイル体10と同様に、第1磁性体13および第2磁性体14のいずれか一方のみを配置する、あるいは図13に示した磁性体23a、23b、24a、24bのうちの少なくともいずれか1つを配置するといった構成としてもよい。
(実施の形態7)
図14を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態7を説明する。なお、図14は図10に対応する。
図14に示した超電導コイル体10を備える超電導モータは、基本的には図8〜図11に示した超電導モータ100と同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の形状が異なっている。すなわち、図14に示した超電導コイル体10においては、図8〜図11に示した超電導コイル体10と同様に、超電導コイル体10の中心軸16に対して、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bを構成する超電導線材15の主表面の向きが交差するように配置されている。一方、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bにおいて第1磁性体13および第2磁性体14と対向する端面は、上記超電導コイル体10の中心軸16に対してほぼ垂直になっている。このような構成の超電導コイル体10によっても、上述した実施の形態5における超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態8)
図15を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態8を説明する。なお、図15は図10に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態8は、図8〜図11に示す超電導モータ100と同様の構成を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。すなわち、本発明による超電導モータの実施の形態8においては、超電導コイル体10がコイル体21a、21bと、このコイル体21a、21bと接続された1つの磁性体23とにより構成されている。コイル体21a、21bは基本的には図10などに示した内周コイル体12a、12bまたは外周コイル体11a、11bと同様の構造を備える。また、磁性体23は、断面形状が図15に示すようにC型となっており、一方の端部がコイル体21aの上方端面に接続され、もう一方の端部がコイル体21bの下方端部に接続されている。磁性体23の上述した両端部においては、その外周側面が、コイル体21a、21bを構成する超電導線材15の主表面の延びる方向と実質的に同じ方向に延びる平面部17となっている。このような断面形状を有する超電導コイル体10においては、コイル体21a、21bおよび磁性体23によって磁気回路が構成されている。
このような構成の超電導コイル体10によっても、図10などに示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態9)
図16および図17を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態9を説明する。
図16および図17を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態9は、基本的には図1および図2に示した超電導モータ100と同様の構造を備え、同様の効果(内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bと第1磁性体13および第2磁性体14との境界部において、周囲の磁束線を第1磁性体13および第2磁性体14の凸部から第1磁性体13および第2磁性体14の内部に引き込むことができ、その結果、当該境界部において超電導線材15の主表面を貫通するような磁束線の発生を抑制できる)を得る事ができる。さらに、図16および図17に示した超電導モータでは、図1および図2に示した超電導モータと超電導コイル体10の構造が異なっている。
具体的には、本発明による超電導モータの実施の形態9においては、超電導コイル体10を構成する内周コイル体12aと内周コイル体12bとの間に中間磁気回路部材42が配置されている。中間磁気回路部材42の平面形状は、内周コイル体12a、12bと同様に円環状であって、その幅(図17の左右方向における幅)は、内周コイル体12a、12bのいずれの厚さよりも大きくなっている。中間磁気回路部材42を構成する材料は、磁性体であれば任意の材料を採用することができるが、第1磁性体13または第2磁性体14を構成する材料と同じ材料を用いることが好ましい。
内周コイル体12aと内周コイル体12bとは、当該コイルの中心軸から見た径方向における厚さ(図17の左右方向における幅)が異なっている。具体的には、内周コイル体12bの厚さは、内周コイル体12aの厚さより小さくなっている。このように、図16に示したステータコアの中心軸130により近い位置に配置される内周コイル体12bの厚さを、相対的に上記中心軸130から離れた位置に配置される内周コイル体12aの厚さより小さくすることにより、内周コイル体12bをステータコアの中心軸130から出来るだけ離れた位置に配置できる。このため、当該内周コイル体12bの主表面を漏れ磁場の磁束が貫通する可能性を低減できる。
また、内周コイル体12a、12bに流れる電流によって発生する磁界は、電流に対して渦状になる。そして、内周コイル体12a、12bを積層する場合、これらの内周コイル体12a、12bのターン数が同じ(厚さが同じ)であれば、各内周コイル体12a、12bの間において磁束密度ベクトルが互いにキャンセルされる。そのため、内周コイル体12aと内周コイル体12bとが対向する部分(接続部)においては、当該コイル体を構成する超電導線材15の主表面を貫通する磁束線の割合は小さい。この結果、当該接続部において大きな損失は発生しない。
一方、図16および図17に示すように、ターン数の異なる(厚さの異なる)内周コイル体12a、12bを積層配置する場合、当該内周コイル体12a、12bの接続部には段差部が形成される。このような段差部では、各内周コイル体12a、12bに流れる電流に起因する磁束密度ベクトルが完全にはキャンセルされないため、超電導線材15の主表面を通過する磁束線の割合が大きくなる。この結果、当該段差部において大きな損失が発生する。そこで、図16および図17に示した本発明による超電導コイル体10では、内周コイル体12a、12bの間に中間磁気回路部材42を配置することにより、内周コイル体12aと内周コイル体12bとのうちの一方に流れる電流に起因する磁束線の方向が、他方の内周コイル体に直接的な影響を与えないようにすることができる。このため、ターン数の異なる内周コイル体12a、12bを積層配置しても、当該内周コイル体12a、12bを構成する超電導線材15の主表面を通過する磁束線の割合が増加することを抑制できる。
また、図16および図17に示した超電導コイル体10では、超電導コイル体10を構成する外周コイル体11aと外周コイル体11bとの間にも、中間磁気回路部材41が配置されている。中間磁気回路部材41の平面形状は、外周コイル体11a、11bと同様に円環状であって、その幅(図17の左右方向における幅)は、外周コイル体11a、11bのいずれの厚さよりも大きくなっている。中間磁気回路部材41を構成する材料は、磁性体であれば任意の材料を採用することができるが、中間磁気回路部材42と同様に、第1磁性体13または第2磁性体14を構成する材料と同じ材料を用いることが好ましい。
外周コイル体11aと外周コイル体11bとは、当該コイルの中心軸から見た径方向における厚さ(図17の左右方向における幅、すなわち超電導線材15のターン数)が異なっている。具体的には、外周コイル体11bの厚さは、外周コイル体11aの厚さより小さくなっている。このように、図16に示したステータコアの中心軸130により近い位置に配置される外周コイル体11bの厚さ(ターン数)を、相対的に上記中心軸130から離れた位置に配置される外周コイル体11aの厚さ(ターン数)より小さくすることにより、当該外周コイル体11bの主表面を漏れ磁場の磁束が貫通する可能性を低減できる。また、このような厚さの異なる外周コイル体11a、11bを積層配置する場合に、当該外周コイル体11a、11bの間に中間磁気回路部材41を配置することにより、内周コイル体12a、12bの間に中間磁気回路部材42を配置した場合と同様に、外周コイル体11aと外周コイル体11bとのうちの一方に流れる電流に起因する磁束線の方向が他方の内周コイル体に与える直接的な影響を、効果的に低減することができる。このため、ターン数の異なる外周コイル体11a、11bを積層配置しても、当該外周コイル体11a、11bを構成する超電導線材15の主表面を通過する磁束線の割合が増加することを抑制できる。
(実施の形態10)
図18を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態10を説明する。なお、図18は図17に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態10は、基本的には図16および図17に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。具体的には、図18に示すように、本発明による超電導モータの実施の形態10においては、第1磁性体13が、図5に示した超電導コイル体10と同様に2つの分離した磁性体23a、23bにより構成されている。磁性体23aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体23bは外周コイル体11aと接続されている。そして磁性体23aと磁性体23bとの間には間隙28が形成されている。また、もう一方の磁性体である第2磁性体14も、2つの磁性体24a、24bにより構成されている。磁性体24aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体24bは外周コイル体11bと接続されている。そして、磁性体24aと磁性体24bとの間には間隙28が形成されている。この間隙28の幅は十分狭く、たとえば0.1mm以上5mm以下であってもよい。
このような構成の第1磁性体13および第2磁性体14によっても、間隙28の幅が十分狭いので超電導コイル体10において磁気回路を構成することができる。さらに、図18に示した超電導コイル体10では、図16および図17に示した超電導コイル体10と同様に、中間磁気回路部材41、42が配置されている。そのため、図18に示した超電導コイル体10によっても、図16および図17に示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
なお、超電導モータ100の装置構成によっては、第1磁性体13および第2磁性体14のいずれか一方のみを配置する、あるいは図18に示した磁性体23a、23b、24a、24bのうちの少なくともいずれか1つを配置するといった構成としてもよい。
(実施の形態11)
図19を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態3を説明する。なお、図19は図17に対応する。
図19に示した超電導コイル体10を備える超電導モータは、基本的には図16および図17に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の形状が異なっている。すなわち、図19に示した超電導コイル体10においては、図16および図17に示した超電導コイル体10と同様に、超電導コイル体10の中心軸16に対して、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bを構成する超電導線材15の主表面の向きが交差している。一方、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bにおいて第1磁性体13および第2磁性体14と対向する端面は、上記超電導コイル体10の中心軸16に対してほぼ垂直になっている。また、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bにおいて中間磁気回路部材42、41と対向する端面も、上記中心軸16に対してほぼ垂直になっている。このような構成の超電導コイル体10によっても、図16および図17に示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態12)
図20を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態12を説明する。なお、図20は図17に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態12は、図16および図17に示す超電導モータと同様の構成を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。すなわち、本発明による超電導モータの実施の形態12においては、超電導コイル体10がコイル体21a、21bと、積層されたコイル体21a、21bの間に配置された中間磁気回路部材42と、このコイル体21a、21bの上下の端面に接続された磁性体23とにより構成されている。コイル体21a、21bは基本的には図17などに示した内周コイル体12a、12bまたは外周コイル体11a、11bと同様の構造を備える。中間磁気回路部材42は、図17に示した中間磁気回路部材42と同様の構造を備える。また、磁性体23は、断面形状が図20に示すようにC型となっており、一方の端部がコイル体21aの上方端面に接続され、もう一方の端部がコイル体21bの下方端部に接続されている。磁性体23の上述した両端部においては、その外周側面がコイル体21a、21bの表面より外側に突出した凸部が形成されている。凸部の外周側面である表面部37は、図示したように曲面状であってもよいし、平面状であってもよい。このような断面形状を有する超電導コイル体10においては、コイル体21a、21b、中間磁気回路部材42および磁性体23によって磁気回路が構成されている。
このような構成の超電導コイル体10によっても、図17などに示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態13)
図21および図22を参照して、本発明による超電導モータを説明する。なお、図21および図22は、図16および図17に対応する。
図21および図22を参照して、本発明による超電導モータは、基本的には図16および図17に示した超電導モータと同様の構造を備え、同様の効果を得ることができる。すなわち、超電導モータは、図1に示した超電導モータ100と同様に、回転子であるロータと、ロータの周囲に配置された固定子であるステータとを備える。ただし、ステータを構成する超電導コイル体10の構成が、図16および図17に示した超電導モータ100と異なっている。以下、図21および図22を参照して、本実施の形態における超電導コイル体10を説明する。
超電導コイル体10は、図1に示した超電導モータと同様に、ステータコア123(図1参照)の外周を囲む内周コイル体12a、12b(図21参照)と、この内周コイル体12a、12bの外周側を囲むように配置された外周コイル体11a、11bと、積層された内周コイル体12a、12bの間に配置された中間磁気回路部材42と、積層された外周コイル体11a、11bの間に配置された中間磁気回路部材41と、内周コイル体12aの上部端面と、外周コイル体11aの上部端面との間を繋ぐように配置された第1磁性体13と、内周コイル体12bの下方端面と外周コイル体11bの下方端面との間を繋ぐように配置された第2磁性体14とを含む。図21および図22に示した超電導コイル体10では、図16および図17に示した超電導コイル体10と同様に、中間磁気回路部材41、42を配置することにより、積層された外周コイル体11a、11bおよび内周コイル体12a、12bにおいて、積層された一方のコイル体に流れる電流に起因する磁束線の方向が、他方のコイル体に直接的な影響を与えるといった問題の発生を抑制できる。そして、図21および図22に示した超電導コイル体10では、第1磁性体13および第2磁性体14の形状が図16および図17に示した超電導コイル体10と異なっている。
すなわち、図21および図22に示した超電導コイル体10では、図11に示した超電導コイル体10と同様に、第2磁性体14において、外周コイル体11bと対向する端面と連なる側面14a(図11参照)の端部には、超電導線材15の主表面15a、15b(図11参照)の延びる方向と実質的に平行に伸びる平面部17が形成されている。当該平面部17は、図22に示すように第1磁性体13および第2磁性体14において内周コイル体12a、12b、外周コイル体11a、11bと対向する領域の側面においてそれぞれ形成されている。このため、特に内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bと第1磁性体13および第2磁性体14との境界部において、超電導線材15の主表面15a、15b(図11参照)に対してほぼ平行に磁力線が伸びるようにすることができる。つまり、当該境界部において超電導線材15の主表面15a、15b(図11参照)を貫通するような磁束線の発生を抑制できる。このため、超電導線材15の主表面を貫通するように磁束線が発生することに起因して超電導コイル体10での損失が大きくなり、結果的に超電導コイル体10の性能が劣化するといった問題の発生を抑制できる。
また、図22に示すように、第2磁性体14の幅は外周コイル体11bの幅よりも広くなっているため、図11に示した超電導コイル体10と同様に、外周コイル体11bを構成する超電導線材15の主表面15a、15b(図11参照)よりも外側に突出した凸部19(図11参照)が第2磁性体14において形成されている。このような凸部19(図11参照)が第2磁性体14において形成されることにより、図2〜図4に示した超電導コイル体10と同様に、外周コイル体11bの周囲に存在する磁束線を当該凸部19から第2磁性体14の内部に引き込むことができる。この結果、外周コイル体11bを構成する超電導線材15の主表面15a、15bを磁束線が貫通する可能性をより確実に低減できる。
なお、図21および図22に示した超電導コイル体10においては、図12に示すように、第2磁性体14の幅を外周コイル体11bの幅とほぼ同じにしてもよい。また、この場合、第2磁性体14において、外周コイル体11bと対向する端面と連なる側面14a(図12参照)の端部には、超電導線材15の主表面15a、15b(図12参照)と実質的に同一平面上に位置する(実質的に主表面15a、15bと平行に伸びる)平面部17(図12参照)が形成されていてもよい。
当該平面部17(図12参照)は、第1磁性体13および第2磁性体14において内周コイル体12a、12b、外周コイル体11a、11bと対向する領域の側面においてそれぞれ形成されていてもよい。このようにすれば、特に内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bと第1磁性体13および第2磁性体14との境界部において、図12に示した超電導コイル体10と同様に、超電導線材15の主表面15a、15b(図12参照)に対してほぼ平行に磁力線が伸びるようにすることができる。つまり、当該境界部において超電導線材15の主表面15a、15bを貫通するような磁束線の発生を抑制できる。
(実施の形態14)
図23を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態14を説明する。なお、図23は図22に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態14は、基本的には図21および図22に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。具体的には、図23に示すように、本発明による超電導モータの実施の形態14においては、第1磁性体13が、2つの分離した磁性体23a、23bにより構成されている。磁性体23aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体23bは外周コイル体11aと接続されている。そして磁性体23aと磁性体23bとの間には間隙28が形成されている。また、もう一方の磁性体である第2磁性体14も、2つの磁性体24a、24bにより構成されている。磁性体24aは内周コイル体12aと接続されている。磁性体24bは外周コイル体11bと接続されている。そして、磁性体24aと磁性体24bとの間には間隙28が形成されている。この間隙28の幅は十分狭く、たとえば0.1mm以上5mm以下であってもよい。
このような構成の第1磁性体13および第2磁性体14によっても、間隙28の幅が十分狭いので超電導コイル体10において磁気回路を構成することができる。そして、図23に示した超電導コイル体10によっても、中間磁気回路部材41、42による効果や平面部17、凸部19(図11参照)などが形成されたことによる効果など、図21および図22に示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
なお、超電導モータ100の装置構成によっては、図5に示した超電導コイル体10と同様に、第1磁性体13および第2磁性体14のいずれか一方のみを配置する、あるいは図23に示した磁性体23a、23b、24a、24bのうちの少なくともいずれか1つを配置するといった構成としてもよい。また、図23に示すように内周コイル体12aと内周コイル体12bとのターン数が異なる場合(厚みが異なる場合)には、中間磁気回路部材42を配置することが特に好ましい。
(実施の形態15)
図24を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態15を説明する。なお、図24は図22に対応する。
図24に示した超電導コイル体10を備える超電導モータは、基本的には図21および図22に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、超電導コイル体10の形状が異なっている。すなわち、図24に示した超電導コイル体10においては、図21および図22に示した超電導コイル体10と同様に、超電導コイル体10の中心軸16に対して、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bを構成する超電導線材15の主表面の向きが交差するように配置されている。一方、内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bにおいて第1磁性体13および第2磁性体14と対向する端面、さらに中間磁気回路部材41、42の主表面(内周コイル体12a、12bまたは外周コイル体11a、11bと対向する面)は、上記超電導コイル体10の中心軸16に対してほぼ垂直になっている。このような構成の超電導コイル体10によっても、上述した実施の形態13における超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態16)
図25を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態16を説明する。なお、図25は図22に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態16は、図21および図22に示す超電導モータと同様の構成を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。すなわち、本発明による超電導モータの実施の形態16においては、超電導コイル体10が、コイル体21a、21bと、積層されたコイル体21a、21bの間に配置された中間磁気回路部材42と、このコイル体21a、21bの上端および下端と接続された1つの磁性体23とにより構成されている。コイル体21a、21bは基本的には図22などに示した内周コイル体12a、12bまたは外周コイル体11a、11bと同様の構造を備える。また、中間磁気回路部材42は、図22などに示した中間磁気回路部材42と同様の構造を備える。また、磁性体23は、中心軸16に沿った方向における断面形状が図25に示すようにC型状となっており、一方の端部がコイル体21aの上方端面に接続され、もう一方の端部がコイル体21bの下方端部に接続されている。磁性体23の上述した両端部においては、その外周側面が、コイル体21a、21bを構成する超電導線材15の主表面の延びる方向と実質的に同じ方向に延びる平面部17となっている。このような断面形状を有する超電導コイル体10においては、コイル体21a、21b、中間磁気回路部材42および磁性体23によって磁気回路が構成されている。
このような構成の超電導コイル体10によっても、図22などに示した超電導コイル体10と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態17)
図26を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態17を説明する。なお、図26は図22に対応する。
本発明による超電導モータの実施の形態17は、図21および図22に示す超電導モータと同様の構成を備えるが、超電導コイル体10の構造が異なっている。すなわち、本発明による超電導モータの実施の形態17においては、中間磁気回路部材41、42の上部表面(内周コイル体12aまたは外周コイル体11aと対向する面)と下部表面(内周コイル体12bまたは外周コイル体11bと対向する面)とが平行ではなく、たがいに交差する方向に延びるように形成されている。異なる観点から言えば、中間磁気回路部材41、42の上部表面は、下部表面に対して傾斜するように形成されている。
このようにすれば、図21および図22に示す超電導コイル体10を用いる場合と同様の効果が得られる。さらに、内周コイル体12aまたは外周コイル体11aを構成する超電導線材15の主表面に沿った方向軸140と、内周コイル体12bまたは外周コイル体11bを構成する超電導線材15の主表面に沿った方向軸141とが交差するように、超電導コイル体10を構成することができる。このようにすれば、中心軸16に対する内周コイル体12a、12bおよび外周コイル体11a、11bの相対的な位置を、中間磁気回路部材41、42の形状(たとえば中間磁気回路部材41、42の下部表面に対する上部表面の角度、および/または中間磁気回路部材41、42の厚み、など)を変更することにより調整することができる。また、図26に示した中間磁気回路部材41、42を、図16〜図25に示した超電導コイル体10に適用してもよい。
なお、上述した図16〜図26に示した超電導コイル体10において、内周コイル体12a、12bまたは外周コイル体11a、11bのいずれか一方のみについて、積層したコイル体のターン数を変更してもよい。たとえば、内周コイル体12aのターン数を内周コイル体12bのターン数より多くする一方、外周コイル体11aと外周コイル体11bとは同じターン数にしてもよい。さらに、この場合、ターン数の異なるコイル体が積層された部分(たとえば内周コイル体12aと内周コイル体12bとの間)に、中間磁気回路部材42を配置すればよく、ターン数が同じ外周コイル体11aと外周コイル体11bとの間には中間磁気回路部材を配置しない(外周コイル体11a、11bを直接積層配置する)ようにしてもよい。
ここで、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
この発明に従った超電導コイル体10は、超電導線材15を巻回したコイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)と、磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)とを備える。磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)において、超電導線材15の主表面と交差する端面側に位置する表面(第1磁性体13または磁性体23と対向する表面であって、例えば内周コイル体12aの上部表面)と対向するように配置され、磁性体からなる。磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)の表面と対向する対向面を含む。磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)において、対向面の端部は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)の上記表面(第1磁性体13または磁性体23と対向する表面)より外側に突出して凸部19を構成している。
このようにすれば、超電導コイル体10の周囲に発生する磁束線を、磁気回路部材の上記対向面の端部(コイル本体部より外側に突出した凸部19)に引き込むように誘導できるので、当該磁束線が超電導線材15の主表面15a、15bを貫通する可能性を低減できる。つまり、超電導線材15の主表面15a、15bと交差する端面側に、磁性体からなる磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)を配置することにより、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)を流れる電流の中心に対して磁束線がその周囲を回ることができるように超電導コイル体10を構成することになる。この結果、当該磁束線の向きを、超電導線材15の主表面に沿った方向に誘導することができる。したがって、超電導線材15の主表面15a、15bを貫通する磁束線の存在に起因する超電導コイル体10での損失の発生を抑制できる。
上記超電導コイル体10において、磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)は、対向面に連なり対向面と交差する方向に伸びる側面を含む。図1〜図7に示すように、当該側面は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)に近い側の端部に位置し、超電導線材15の主表面の伸びる方向に対して傾斜する傾斜部(表面部37)を有していてもよい。当該傾斜部における磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)の幅は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)に近づくにつれて大きくなっていてもよい。この場合、表面部37を含む凸部19に磁束線をより効果的に引き込むことができる。
上記超電導コイル体10において、磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)は、対向面に連なり対向面と交差する方向に伸びる側面を含む。図8〜図15に示すように、当該側面は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)に近い側の端部に位置し、超電導線材15の主表面の伸びる方向に沿って伸びる平面部17を有していてもよい。この場合、コイル本体部と磁気回路部材とが対向する領域では、第1磁性体13および磁性体23から内周コイル体12a、12bまたはコイル体21a、21b側へ伸びる磁束線の向きを、図11に示すような超電導線材15の主表面15a、15bに沿った方向へ効率的に規定することができる。
また、この発明に従った超電導コイル体10は、超電導線材15を巻回したコイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)と、磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)とを備える。磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)において、超電導線材15の主表面と交差する端面側に位置する表面(第1磁性体13または磁性体23と対向する表面であって、例えば内周コイル体12aの上部表面)と対向するように配置され、磁性体からなる。磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)の表面と対向する対向面と、対向面に連なり対向面と交差する方向に伸びる側面とを含む。側面は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)に近い側の端部に位置し、超電導線材15の主表面の伸びる方向に沿って伸びる平面部17を有する。
この場合、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)と磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)とが磁気回路の一部を構成し、また、第1磁性体13や磁性体23などの磁気回路部材の側面がコイル本体部寄りに平面部17を有しているので、コイル本体部と磁気回路部材とが対向する領域では、第1磁性体13および磁性体23から内周コイル体12a、12bまたはコイル体21a、21b側へ伸びる磁束線の向きを、図11に示すような超電導線材15の主表面15a、15bに沿った方向へ効率的に規定することができる。このため、コイル本体部において超電導線材15の主表面を貫通するように延びる磁束線の割合を効果的に低減できる。したがって、超電導線材15の主表面15a、15bを貫通する磁束線の存在に起因する超電導コイル体10での損失の発生を抑制できる。なお、平面部17の長さ(磁束線の伸びる方向における長さ)は、たとえば超電導線材15の幅の10%以上100%以下とすることができる。
上記超電導コイル体10では、図10、図11、図13〜図15などに示すように、磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)において、対向面の端部(内周コイル体12a、12b、またはコイル体21a、21bと対向する表面の端部)が、コイル本体部の表面より外側に突出した凸部19となっていてもよい。内周コイル体12a、12bの表面からの凸部19の突出高さは、たとえば0.1mm以上であってもよい。この場合、超電導コイル体10の周囲に発生する磁束線を、磁気回路部材の上記対向面の端部(コイル本体部より外側に突出した凸部19)に引き込むように誘導できるので、当該磁束線が超電導線材15の主表面15a、15bを貫通する可能性を低減できる。なお、凸部19の突出高さ(たとえば内周コイル体12aの表面に対して垂直な方向における凸部19の高さ)は、可能な限り大きくすることが好ましい。そのため、たとえば超電導コイル体10が収納される冷却容器の内壁に接触する高さまで、凸部19の高さを高くしてもよい。
上記超電導コイル体10において、磁気回路部材(第1磁性体13)は、図5や図13に示すように互いに間隙28を隔てて配置された複数の磁性体部材(磁性体23a、23b)からなっていてもよい。なお、上記間隙28が十分小さければ、当該間隙28から磁束線の漏れる程度は極めて小さいため、当該磁気回路部材(第1磁性体13)とコイル本体部(内周コイル体12a、12b)とにより磁気回路を構成することは可能である。また、間隙28は、超電導コイル体10から離れた位置に配置することで、超電導コイル体10近傍の磁束線の方向に影響を与えることなく、超電導コイル体10および第1磁性体13を通過する磁束密度の絶対値を小さくすることができる。つまり、損失を低減する効果がある。
上記超電導コイル体10において、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)は、表面(内周コイル体12aの上部表面、コイル体21aの上部表面)と反対側に位置する他方表面(内周コイル体12bの下部表面、コイル体21bの下部表面)を含んでいる。上記超電導コイル体10は、コイル本体部における他方表面と対向するように配置され、磁性体からなる他の磁気回路部材(第2磁性体14)を備えていてもよい。
この場合、上記コイル本体部を第1磁性体13および第2磁性体14によりはさむような構成とすることで、これらの部材により確実に磁気回路を構成することができる。
上記超電導コイル体10において、他の磁気回路部材(第2磁性体14)は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)の他方表面(内周コイル体12bの下部表面、コイル体21bの下部表面)と対向する他の対向面を含む。他の磁気回路部材(第2磁性体14)において、他の対向面の端部は、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)の他方表面(内周コイル体12bの下部表面、コイル体21bの下部表面)より外側に突出していてもよい。この場合、内周コイル体12bの下部表面またはコイル体21bの下部表面と第2磁性体14とが対向する領域において、磁束線を上記他の対向面の端部(コイル本体部より外側に突出した第2磁性体14の凸部19)に引き込むように誘導できる。このため、当該磁束線が超電導線材15の主表面15a、15bを貫通する可能性を低減できる。
上記超電導コイル体10において、他の磁気回路部材(第2磁性体14)は、他の対向面に連なり当該他の対向面と交差する方向に伸びる他の側面14aを含む。他の側面14aは、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)に近い側の端部に位置し、超電導線材15の主表面の伸びる方向に対して傾斜する傾斜部(表面部37)を有していてもよい。この場合、表面部37を含む凸部19に磁束線をより効果的に引き込むことができる。
上記超電導コイル体10において、他の磁気回路部材(第2磁性体14)は、他の対向面に連なり当該他の対向面と交差する方向に伸びる他の側面14aを含む。他の側面14aは、コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)に近い側の端部に位置し、超電導線材15の主表面の伸びる方向に沿って伸びる平面部17を有していてもよい。この場合、コイル本体部と第2磁性体14とが対向する領域では、第2磁性体14から内周コイル体12a、12bまたはコイル体21a、21b側へ伸びる磁束線の向きを、図11に示すような超電導線材15の主表面15a、15bに沿った方向へ効率的に規定することができる。
上記超電導コイル体10において、他の磁気回路部材(第2磁性体14)は、図5や図13に示すように、互いに間隙28を隔てて配置された複数の磁性体部材(磁性体24a、24b)からなっていてもよい。
上記超電導コイル体10では、図7や図15に示すように磁気回路部材と他の磁気回路部材とは接続されて一体となっていてもよい(磁気回路部材および他の磁気回路部材が磁性体23として構成されていてもよい)。この場合、コイル本体部(コイル体21a、21b)と、磁気回路部材および他の磁気回路部材が一体となった磁性体23とにより、磁気回路を確実に形成することができる。このため、コイル本体部(コイル体21a、21b)に対して、超電導線材15の主表面を貫通するような磁束線が発生する可能性を低減できる。
上記超電導コイル体10においては、図16〜図25に示すように、上記コイル本体部(内周コイル体12a、12b、コイル体21a、21b)は、超電導線材15を巻回した第1のコイル(内周コイル体12a、コイル体21a)と、第1のコイル(内周コイル体12a、コイル体21a)に積層され、超電導線材15を巻回した第2のコイル(内周コイル体12b、コイル体21b)とを含んでいてもよい。さらに、超電導コイル体10は、第1のコイル(内周コイル体12a、コイル体21a)と第2のコイル(内周コイル体12b、コイル体21b)との間に配置された中間磁気回路部材42をさらに備えていてもよい。この場合、第1のコイル(内周コイル体12a、コイル体21a)と第2のコイル(内周コイル体12b、コイル体21b)との間でターン数が異なる場合であっても、第1のコイルと第2のコイルとのうちの一方に流れる電流に起因する磁束線の方向が、他方のコイルに直接的な影響を与えることを防止できる。
上記超電導コイル体10は、図1〜図6、図8〜図11、図13および図15に示すように、コイル本体部の外周を囲むように配置され、超電導線材15を巻回した外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)をさらに備えていてもよい。外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)は、超電導線材15の主表面と交差する端面側に位置する表面(外周コイル体11aの上部表面)と、当該表面と反対側に位置する他方表面(外周コイル体11bの下部表面)とを含む。磁気回路部材(第1磁性体13)は、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)における上記表面(外周コイル体11aの上部表面)と対向する外周側対向面を含んでいてもよい。磁気回路部材(第1磁性体13)において、外周側対向面の端部は、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)の表面より(外周側対向面の伸びる方向において)外側に突出していてもよい。他の磁気回路部材(第2磁性体14)は、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)における他方表面と対向する他の外周側対向面を含んでいてもよい。他の磁気回路部材(第2磁性体14)において、他の外周側対向面の端部は、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)の他方表面(外周コイル体11bの下部表面)より外側に突出していてもよい。
また、上記超電導コイル体10は、図8〜図14に示すように、コイル本体部の外周を囲むように配置され、超電導線材を巻回した外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)をさらに備えていてもよい。外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)は、超電導線材15の主表面と交差する端面側に位置する表面(外周コイル体11aの上部表面)と、当該表面と反対側に位置する他方表面(外周コイル体11bの下部表面)とを含んでいてもよい。磁気回路部材(第1磁性体13)は、外周側コイル本体部における表面(外周コイル体11aの上部表面)と対向する外周側対向面と、外周側対向面に連なり外周側対向面と交差する方向に伸びる外周側側面(外周コイル体11aと対向する第1磁性体13の部分の側面)とを含んでいてもよい。磁気回路部材(第1磁性体13、磁性体23)において、外周側側面は、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)に近い側の端部に位置し、外周側コイル本体部を構成する超電導線材15の主表面15a、15bの伸びる方向に沿って伸びる平面部17を有していてもよい。他の磁気回路部材(第2磁性体14)は、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)における他方表面(外周コイル体11bの下部表面)と対向する他の外周側対向面と、他の外周側対向面に連なり他の外周側対向面と交差する方向に伸びる他の外周側側面とを含んでいてもよい。他の磁気回路部材(第2磁性体14)において、他の外周側側面は、図11に示すように、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)に近い側の端部に位置し、外周側コイル本体部を構成する超電導線材15の主表面15a、15bの伸びる方向に沿って伸びる平面部17を有していてもよい。
この場合、コイル本体部(内周コイル体12a、12b)と外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)とが中心軸16を中心とした同心に配置され、またこれらのコイル本体部と外周側コイル本体部とをつなぐように磁気回路部材(第1磁性体13)および他の磁気回路部材(第2磁性体14)が配置されるので、これらのコイル本体部(内周コイル体12a、12b)、磁気回路部材(第1磁性体13)、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)、他の磁気回路部材(第2磁性体14)により磁気回路を形成することができる。この結果、コイル本体部および外周側コイル本体部を構成する超電導線材15の主表面15a、15bを貫通するような磁束線の発生をより確実に抑制できるので、当該磁束線の存在に起因する損失の発生を抑制できる。
また、上記超電導コイル体10においては、図16〜図19、図21〜図24に示すように、外周側コイル本体部(外周コイル体11a、11b)は、超電導線材15を巻回した第1の外周側コイル(外周コイル体11a)と、当該第1の外周側コイル(外周コイル体11a)に積層され、超電導線材15を巻回した第2の外周側コイル(外周コイル体11b)とを含んでいてもよい。超電導コイル体10は、第1の外周側コイル(外周コイル体11a)と第2の外周側コイル(外周コイル体11b)との間に配置された外周側中間磁気回路部材(中間磁気回路部材41)をさらに備えていてもよい。この場合、第1の外周側コイル(外周コイル体11a)と第2の外周側コイル(外周コイル体11b)との間でターン数が異なる場合であっても、第1の外周側コイルと第2の外周側コイルとのうちの一方に流れる電流に起因する磁束線の方向が、他方のコイルに直接的な影響を与えることを防止できる。
この発明に従った超電導機器としての超電導モータ100は、上記超電導コイル体10を備える。この場合、超電導コイル体10における損失が抑制された、高効率な超電導モータ100を実現できる。
(実施例1)
本発明の効果を確認するため、以下のようなシミュレーションを行なった。具体的には、3種類の構成の超電導コイル体について、損失(いわゆるACロス)をシミュレーションにより算出し、最小のACロスの値を示す構成を実験的に求めた上で、当該ACロスの最小値を比較した。
(検討対象)
実施例の超電導コイル体:
図10に示した超電導コイル体10の構成を採用した。具体的には、内周コイル体12a、12b、外周コイル体11a、11bのターン数(巻数)をすべて14、これらのコイル体を構成する超電導線材15のサイズを幅:4.65mm、厚み:0.31mm、コイル全長あたりの電気抵抗を1×10-5Ωとした。
また、第1磁性体13および第2磁性体14のサイズとして、図10に示される外周コイル体11a、11b、内周コイル体12a、12bと対向する表面の幅を6.34mmとし、また、第1磁性体13および第2磁性体14の磁気的特性についてはシミュレーションに用いたソフトウェアに搭載されている電磁鋼板の物性ライブラリを用いた。
比較例1の超電導コイル体:
磁性体を用いず、超電導コイルを2段に分けて、さらに各段での超電導線材の主表面がコイルの中心軸に対してなす角度を変更し、磁束線の方向に極力沿うようにした。なお、上記実施例の超電導コイル体を構成する超電導線材と同様の条件の超電導線材を用い、また、各段での合計ターン数も上記実施例の超電導コイル体と同様とした。
比較例2の超電導コイル体:
上述した実施例の超電導コイル体と同様の条件の超電導線材を用いて、外周コイル体11a、11bと内周コイル体12a、12bとの断面形状が環状に配置された状態になるように、これらの外周コイル体11a、11bおよび内周コイル体12a、12bを配置した。これは、これらのコイル体により形成される磁束線が、図10に示した断面で見た場合に円形に近い配置となるようにするとともに、当該磁束線の伸びる方向とコイル体を構成する超電導線材の主表面とをできるだけ平行に配置するためである。そして、これらの外周コイル体11a、11bおよび内周コイル体12a、12bの周囲を4方向から囲むように板状の磁性体を配置した。これらの磁性体は、外部からの磁束線を引き寄せて上記コイル体へ外部からの磁束線が侵入しないようにするため設けられる。
(検討方法)
上述した実施例および比較例1、2の系について、磁性体の配置やサイズ、さらにコイル体の配置などを適宜変更しながら、ACロスの値をシミュレーションにより求めた。なお、このときのシミュレーションの共通の条件としては、線材1本あたりの電流値:172A(波高値)、モータ回転速度735rpmといったものを用いた。また、シミュレーションで用いたソフトウェアはJMAGである。
(結果)
上記のようなシミュレーションの結果、本発明の実施例の系においては最小のACロスの値が179Wとなった。一方、比較例1の系については最小のACロスの値が446W、比較例2の系については最小のACロスの値が238Wとなった。このように、本発明の実施例の系がACロスを最も低減できることが示された。
(実施例2)
本発明の効果を確認するため、以下のようなシミュレーションを行なった。具体的には、2種類の構成の超電導コイル体について、損失(いわゆるACロス)をシミュレーションにより算出し、最小のACロスの値を示す構成を実験的に求めた上で、当該ACロスの最小値を比較した。
(検討対象)
実施例1の超電導コイル体:
図22に示した超電導コイル体10の構成を採用した。具体的には、内周コイル体12aのターン数を13、内周コイル体12bおよび外周コイル体11a、11bのターン数をすべて9とした。これらのコイル体を構成する超電導線材15のサイズを幅:4.65mm、厚み:0.31mm、コイル全長あたりの電気抵抗を1×10-5Ωとした。
また、第1磁性体13および第2磁性体14のサイズとしては、実施例1における実施例の超電導コイル体と同様の構成とし、図22に示される外周コイル体11a、11b、内周コイル体12a、12bと対向する表面の幅を6.34mmとし、また、第1磁性体13および第2磁性体14の磁気的特性についてはシミュレーションに用いたソフトウェアに搭載されている電磁鋼板の物性ライブラリを用いた。
また、中間磁気回路部材41、42の上部表面および下部表面の幅は6.34mmとした。さらに、中間磁気回路部材41、42の厚みは1mmとした。中間磁気回路部材41、42の磁気的特性についてはシミュレーションに用いたソフトウェアに搭載されている電磁鋼板の物性ライブラリを用いた。
実施例2の超電導コイル体:
上述した実施例1の超電導コイル体から、中間磁気回路部材41、42を削除し、他の要素は実施例1と同様とする構成を採用した。なお、上記実施例1の超電導コイル体を構成する超電導線材と同様の条件の超電導線材を用い、また、各段での合計ターン数も上記実施例1の超電導コイル体と同様とした。
(検討方法)
上述した実施例1および実施例2の系について、磁性体の配置やサイズ、さらにコイル体の配置などを適宜変更しながら、ACロスの値をシミュレーションにより求めた。なお、このときのシミュレーションの共通の条件としては、線材1本あたりの電流値:159A(波高値)、モータ回転速度1470rpmといったものを用いた。また、シミュレーションで用いたソフトウェアはJMAGである。
(結果)
上記のようなシミュレーションの結果、本発明の実施例1の系においては最小のACロスの値が78Wとなった。一方、実施例2の系については最小のACロスの値が96Wとなった。このように、本発明の実施例1の系のように、中間磁気回路部材41、42を配置することによって、ターン数が異なるコイルを積層配置した超電導コイル体においてACロスを低減できることが示された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。