JP5305109B2 - 超電導ケーブルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は超電導ケーブルの製造方法に関するものである。特に、多心コアを断熱管に挿入する際、超電導シールド層の損傷を抑制できる超電導ケーブルの製造方法に関するものである。
超電導ケーブルとして、図6に記載の超電導ケーブルが提案されている。この超電導ケーブル100は、3条のケーブルコア10を撚り合わせた多心コアを断熱管20内に収納した構成である(例えば特許文献1)。
各ケーブルコア10は、中心から順にフォーマ11、超電導導体層12、絶縁層13、超電導シールド層14、保護層15を具えている。通常、フォーマ11は、撚り線やパイプ材で構成される。導体層12は、フォーマ11上に超電導線材を多層に螺旋状に巻回して構成される。代表的には、超電導線材には、酸化物超電導材料からなる複数本のフィラメントが銀シースなどの安定化金属中に配されたテープ状のものが用いられる。絶縁層13は絶縁紙を巻回して構成される。シールド層14は、絶縁層13上に導体層12と同様の超電導線材を螺旋状に巻回して構成する。そして、保護層15には絶縁紙などが用いられる。
また、断熱管20は、内管21と外管22とからなる二重管の間に断熱材(図示せず)が配置され、かつ二重管内が真空引きされた構成である。断熱管20の外側には、防食層23が形成されている。そして、フォーマ11(中空の場合)内や内管21とコア10の間に形成される空間に液体窒素などの冷媒を充填・循環し、絶縁層13に冷媒が含浸された状態で使用状態とされる。
このような超電導ケーブルを製造する際、3心のコアを撚り合せた多心コアを断熱管内に挿入する工程が行われる。この工程では、多心コアを送り出す必要があり、一般的には、その送り出しに無限軌道が用いられる。例えば、一対の無限軌道の間に多心コアを挟み込み、多心コアに押し込み力を与えながら搬送を行う。この無限軌道には、通常、硬質ゴムからなる平坦な帯状のベルトが用いられる。また、各コアの撚り合わせにたるみを持たせることで、超電導ケーブル運転時の冷却に伴う熱収縮分を多心コアの撚りのたるみが締まることで各コアに過大な張力が作用しないようにしている。
特開2001-202837号公報(図1)
しかし、上記の搬送方法では、特に超電導シールド層に座屈などの損傷が生じることがあり、それに伴って超電導ケーブルのIc(臨界電流)特性が低下するという問題があった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その主目的は、多心コアの搬送に伴う超電導線材の損傷を抑制できる超電導ケーブルの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、超電導線材の損傷の原因について種々の検討を行ったところ、次の知見を得て本発明を完成するに至った。
(1)この損傷は、主として無限軌道による多心コアの挟み込みにより生じている。
(2)多心コアを搬送する無限軌道のベルトと各コアの接触が点接触あるいは線接触になると、多心コアの搬送に必要な駆動力が、この接触箇所に集中して作用する。
(3)特に、各ケーブルコアの内周側に位置する超電導導体層よりも外周側に位置する超電導シールド層にはベルトからの応力が作用しやすく、このシールド層を構成する超電導線材に大きな歪が加わって座屈に至る。
本発明は以上の知見に基づき、多心コアと、その搬送手段との接触面積の増大を図ることで上述の課題を解消する。接触面積の増大を図るには、大別すると次の3つのタイプがある。
タイプA:無限軌道で多心コアを搬送する際、主として無限軌道側に多心コアとの接触面積を増大させる工夫を施す。
タイプB:無限軌道で多心コアを搬送する際、多心コア側に無限軌道との接触面積を増大させる工夫を施す。
タイプC:無限軌道以外の搬送手段により多心コアと搬送手段との接触面積を増大させる。
<タイプA>
タイプAに係る構成は、第一超電導層と、この第一超電導層の外側に形成される絶縁層と、絶縁層の外側に形成される第二超電導層とを有するケーブルコアを複数本撚り合せてなる多心コアを搬送する製造工程を含む超電導ケーブルの製造方法である。この多心コアを、ベルトを有する無限軌道で搬送する。その際、多心コアに無限軌道の駆動力を伝達する接触部を弾性材料で構成する。
無限軌道の駆動力を伝達する接触部を弾性材料で構成することにより、多心コアに接触した接触部を同コアの外径にある程度適合して弾性変形させ、この変形に伴って多心コアと無限軌道側との接触面積を増大することができる。それにより、各ケーブルコアの超電導線材が座屈するなどして損傷することを抑制できる。
接触部を弾性材料とするより具体的な構成としては、ベルト自体を接触部とすることが挙げられる。一般に、無限軌道は、無端状の履帯を起動輪や転輪などを囲むように設置し、起動輪の駆動により履帯を動かす機構である。この無限軌道の履帯、つまりベルトを弾性材料で構成すれば、多心コアに圧接されたベルトを変形させることができ、多心コアとベルトの接触面積を増大させることができる。
接触部を弾性材料とする他の具体的な構成としては、ベルトと多心コアとの間にクッション層を挟みこみ、このクッション層を接触部とすることが挙げられる。この場合も、多心コアに圧接されたクッション層が変形することで、多心コアとクッション層との接触面積を増大させることができる。クッション層は例えばベルトの表面に弾性材料を取り付けるなどして構成しても良いし、弾性材料からなる長尺のクッション層を用意し、無限軌道のベルトと多心コアとの間にこのクッション層を挟みこんで多心コアの搬送に利用しても良い。
ベルト自体を接触部とする場合とクッション層を接触部とする場合のいずれであっても、接触部の厚みは5mm以上20mm以下とすることが好ましい。接触部の厚みが5mm未満では、多心コアにおける超電導線材の損傷を抑制する効果が少ない。逆に、この厚みが20mmを超えると、不必要に接触部の厚みが大きくなるだけで、超電導線材の損傷抑制効果が実質的に飽和してしまう。
また、ベルト自体を接触部とする場合とクッション層を接触部とする場合のいずれであっても、接触部は多心コアと面接触可能な材料で構成することが好ましい。特に、ウレタン、軟質ゴム、ポリオレフィンよりなる群から選択される少なくとも一種より構成することが好ましい。これらは、いずれもケーブルコアの超電導線材が損傷することを抑制するのに好適な材料である。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(特に低密度)やポリプロピレンが挙げられる。さらに、硬質ゴムよりも柔らかく変形能に優れる材料が好ましい。接触部を硬質ゴムよりも柔らかい材料とすることで、より確実に超電導線材の座屈を抑制することができる。この接触部の硬度は、JIS K 6301 スプリング式A型でHs20〜Hs30程度が好ましい。この下限値を下回ると接触部の破れ等の損傷によりコアを断熱管内に押し込むことが難しく、逆に上限値を超えるとコアを損傷する虞がある。
<タイプB>
タイプBに係る構成は、第一超電導層と、この第一超電導層の外側に形成される絶縁層と、絶縁層の外側に形成される第二超電導層とを有するケーブルコアを複数本撚り合せてなる多心コアを搬送する製造工程を含む超電導ケーブルの製造方法である。そして、この多心コアの撚り溝に介在物をはめ込んで多心コアの断面を円形に成形し、この断面が円形の多心コアを、ベルトを有する無限軌道にて搬送する。
多心コアの撚り溝、つまり複数のケーブルコアが撚り合わされることで各ケーブルコアの間に形成される溝状の凹部に介在物をはめ込むことで、ケーブルコアの断面を円形に成形する。この円形に成形されたケーブルコアを無限軌道で搬送すれば、ケーブルコアのみならず介在物でも無限軌道からの駆動力を受けることができる。つまり、介在物がなくケーブルコアのみで無限軌道からの駆動力を受けていた場合に比べて、ケーブルコアに作用する応力を低減して超電導線材の損傷を抑制することができる。
介在物の材質としては、撚り溝にはめ込みやすく、ケーブルの熱収縮時における各コアの撚りの締まりを阻害しにくいものが好ましい。例えば、ポリプロピレン紐、紙紐、ジュート紐などが利用できる。また、介在物の形態も同様の特性を有する形態が好ましい。例えば細長い紐状体を複数本用い、これら紐状体を撚り溝にはめ込んで多心コアの断面を円形に形成することが挙げられる。
<その他の付加的事項>
上記タイプA、タイプBのいずれであっても、ベルトは多心コアと面接触可能な形状とすることが好ましい、代表的には、ベルトに多心コアがはめ込まれる溝を設けることが好ましい。ベルトを平坦な帯状のものではなく、多心コアがはめ込まれる溝を有する構成とすることで、より一層多心コアと無限軌道側との接触面積を増大させることができ、各ケーブルコアの超電導線材が座屈などして損傷することを抑制できる。
溝の断面形状は、円弧状やV型が挙げられる。溝の断面形状を円弧状とした場合、その円弧の半径は、多心コアの包絡円の半径と同等程度とすることが好ましい。また、溝の断面形状をV型とした場合、そのV溝の内角は、多心コアの包絡円を内接できる程度の内角とすることが好ましい。このような半径を有する円弧状の溝あるいは内角を有するV型の溝は、いずれも多心コアとベルト側との接触面積を確保しやすくできる。
<タイプC>
タイプCに係る構成(本発明)は、第一超電導層と、この第一超電導層の外側に形成される絶縁層と、絶縁層の外側に形成される第二超電導層とを有するケーブルコアを複数本撚り合せてなる多心コアを搬送する製造工程を含む超電導ケーブルの製造方法である。この多心コアをボールローラで挟んで搬送する。
ボールローラは、一般に、ゴムなどの弾性材料で構成された袋体をボール状に膨らませ、この膨らまされた袋体を回転させることでローラとして用いる搬送手段である。代表的には、一対の袋体の間に多心コアを挟みこんで、その搬送を行えばよい。多心コアをボールローラで挟み込むことにより、各袋体は多心コアの外形に相当程度追従して変形するため、袋体と多心コアとの接触面積を格段に増大させることができる。つまり、袋体と多心コアとの接触を面接触とすることで、多心コアの局所に搬送手段の押圧に伴う応力が集中することを緩和し、超電導層、特に超電導シールド層の座屈を抑制することができる。また、ボールローラは、一対の袋体の間隔を調整することの他、袋体の内圧を調整することで、容易に多心コアとの接触状態を調整することもできる。
<タイプA〜Cに共通する付加的事項>
本発明方法を含む上記タイプA〜Cの方法により多心コアを搬送する場合、その多心コアには押し込み力が印加される場合であってもよい。通常、多心コアを断熱管内に挿入する際、多心コアを引っ張って挿入するのではなく、押し込みにより挿入する。その際、超電導線材、特に超電導シールド層に歪が加わりやすいが、本発明方法を含む上記タイプA〜Cの方法によれば、この超電導線材に最も歪が加わりやすい条件下であっても超電導線材の座屈を抑制することができる。そして、この多心コアの押し込みにより、各コアの撚りにたるみを持たせて、超電導ケーブル冷却時の熱収縮を、ゆるんだ多心コアの撚りが締まることで吸収できる。
本発明超電導ケーブルの製造方法(上記タイプCの方法)によれば、次の効果を奏することができる。
多心コアをボールローラで挟んで搬送することで、ボールローラを多心コアの外径にある程度適合して弾性変形させ、この変形に伴って多心コアとボールローラとが面接触されて、それらの接触面積が増大される。それにより、各ケーブルコアの超電導線材が座屈するなどして損傷することを抑制し、Icの低下を抑制することができる。
上記タイプAの方法によれば、次の効果を奏することができる。無限軌道の駆動力を伝達する接触部を弾性材料で構成することにより、多心コアに接触した接触部を同コアの外径にある程度適合して弾性変形させ、この変形に伴って多心コアと無限軌道側とが面接触されて、これらの接触面積が増大される。それにより、各ケーブルコアの超電導線材が座屈するなどして損傷することを抑制し、Icの低下を抑制することができる。
上記タイプBの方法によれば、次の効果を奏することができる。多心コアの撚り溝に介在物をはめ込んで多心コアの断面を円形に成形し、この断面が円形の多心コアを、ベルトを有する無限軌道にて搬送することで、断面が円形の多心コアと無限軌道側との接触面積を介在物がない場合に比べて増大させる。それにより、多心コアに作用する無限軌道の駆動力を軽減し、各ケーブルコアの超電導線材が座屈するなどして損傷することを抑制して、Icの低下を抑制することができる。
形態1(タイプA)の説明図である。 形態2(タイプA)の説明図である。 形態3(タイプB)の説明図である。 実施の形態4の説明図である。 形態5(タイプA+溝)の説明図である。 超電導ケーブルの横断面図である。
以下、タイプA〜Cの実施の形態を説明する。
<形態1(タイプA:ベルトが接触部)>
まず、図1に基づいて、ベルト自体を接触部とした無限軌道で多心コアの搬送を行うタイプAの形態を説明する。なお、図1は無限軌道を横断面で示しており、この点は図2、図3、図5でも同様である。
多心コアの搬送方法を説明するのに先立って、搬送対象となる多心コアの構成を説明する。この多心コアの構成は、後述する他の形態においても同様である。本例で搬送する多心コアは、図6に示すように、3心のケーブルコア10を撚り合せた構成である。各コア10は中心から順に、フォーマ11、超電導導体層(第一超電導層)12、絶縁層13、超電導シールド層(第二超電導層)14、保護層15を具えている。フォーマは素線絶縁された銅素線を撚り合せて構成している。超電導導体層12および超電導シールド層14を構成する超電導線材には、Bi2223相の超電導材料からなる複数本のフィラメントが銀シース中に配されたテープ線材が用いられる。絶縁層13には、ポリプロピレンとクラフト紙を接合したPPLP(住友電気工業株式会社の登録商標)を用い、保護層15にはクラフト紙を用いた。
次に、このような多心コアを、無限軌道を用いて断熱管内に挿入する。断熱管20は、図6に示すように、内管21と外管22を有し、その間を真空に形成した真空二重管構造である。多心コアを断熱管20に挿入する際、断熱管20の入口側に一対の無限軌道を対向して配置し、この無限軌道で多心コアを挟み込んで断熱管内に押し込んでいく。
この無限軌道30は、図1に示すように、起動輪32、転輪、誘導輪を囲むように配された軟質ゴム(硬度20Hs:JIS K 6301 スプリング式A型)からなる平坦な帯状のベルト31を有し、起動輪32の駆動によりベルト31を回転走行することができる。本例では、このベルト31の厚さを10mmとした。また、対向した無限軌道30は、互いにベルト31を対面させており、エアの圧力を調整することで各無限軌道30の間隔を開閉し、この対面する両ベルト31の間隔を可変して多心コア10Aに対する圧接力を調整することができる。
このような無限軌道30の間に多心コア10Aを挟みこんで搬送すると、ベルト31が柔軟性に優れる材料で構成されているため、多心コア10Aとの圧接により変形してくぼみ、ベルト31と多心コア10Aは面接触されることになる。
硬質ゴムでベルトを構成した従来の無限軌道では、実質的にベルト31と多心コアとは点接触または短い線接触にしかならず、局所的に強い圧接力が多心コアに作用して、特に超電導シールド層に座屈が生じることになる。一方、この従来の無限軌道で、接触面積を大きくするためにベルトを多心コアとの圧接により変形させようとすれば、高い圧接力で多心コアを無限軌道の間に挟みこむ必要がある。その場合、多心コアが3心撚りであるためベルトとの接触箇所が不連続となりやすく、この圧接力を上げるとケーブルコアが変形を起こし、超電導線材がより損傷する可能性がある。
これに対し、このタイプAの方法では、ベルト31を軟質ゴムとすることにより、必要以上の圧接力を与えることなく、多心コア10Aとベルト31とを面接触とし、多心コア10Aに局所的な応力が作用することを防止して、超電導線材、特に超電導シールド層を構成する超電導線材の損傷を抑制することができる。
<形態2(タイプA:ベルトの表面にクッション層)>
次に、図2に基づいて、ベルトの表面にクッション層を形成して接触部とした無限軌道で多心コアの搬送を行うタイプAの別の形態を説明する。
本例では、無限軌道を構成するベルト31自体は従来の硬質ゴム製のものであるが、このベルト31の表面にクッション層33を設けている点が上記形態1とは異なる。それ以外の構成は、上記形態1と同様であるため、主としてクッション層33に関連する構成に関して説明する。
本例では、ベルト31の表面に軟質ゴムのクッション層33を接着剤を用いて貼りあわせ、この複合体を無限軌道30の履帯として用いている。クッション層33の厚みは5mmとした。
このような無限軌道30を用いて上記形態1と同様に多心コア10Aを搬送することで、多心コア10Aはクッション層33と面接触されるため、無限軌道30の挟み込みに伴う局所的な応力の作用を回避することができ、超電導線材の座屈を効果的に抑制できる。
<形態3(タイプB:多心コアの撚り溝に介在物)>
次に、図3に基づいて、多心コアの撚り溝に介在物をはめ込み、同コアの断面を円形にして搬送を行うタイプBの形態を説明する。
本例でも一対の無限軌道30の間に多心コア10Aを挟みこんで搬送し、断熱管内に多心コア10Aを押し込んでゆく。その際に用いる無限軌道30は、従来と同様に硬質ゴムからなる平坦な帯状のベルトを有している。
一方、多心コア10Aは、3心のケーブルコアが撚り合わされており、各ケーブルコア10の間には螺旋状の凹部が撚り溝として形成されている。本例では、この撚り溝にジュート紐を介在物16としてはめ込み、多心コア10Aの断面形状を円形に成形する。
この状態の多心コア10Aを上記の無限軌道30で挟み込んで搬送すると、ベルト31と断面円形の多心コア10Aとの接触は、ケーブルコア10のみならず介在物16にも生じる。そのため、搬送に伴う無限軌道30からの圧接力の一部が介在物16に作用して、ケーブルコア10に作用する圧接力が軽減されることになる。その結果、各ケーブルコア10に用いられる超電導線材の座屈を効果的に抑制することができる。
<実施の形態4(タイプC:ボールローラ)>
次に、図4に基づいて、ボールローラにより多心コアを搬送する本発明実施の形態を説明する。
上記形態1〜3では多心コアの搬送に無限軌道を用いたが、本例では無限軌道の代わりにボールローラ40を用いる。
ボールローラ40はゴムから形成される袋体41をボール状に膨らませてローラとして用いるものである。本例では、一対の回転可能な袋体41を用い、これら袋体41の回転軸42を平行に配置して、両袋体41の間に多心コア10Aを挟みこむことで多心コア10Aの搬送を行う。各袋体41の間隔は、図示しない間隔調整機構により可変でき、この間隔の調整により多心コア10Aに対する挟持力を調整することができる。
このようなボールローラ40で多心コア10Aを挟み込み、各袋体41を互いに反対方向に回転させることで搬送すると、各袋体41が大きく変形することで多心コア10Aと大きく面接触されることになる。そのため、多心コア10Aに局所的な応力が作用することを回避し、同コア10Aを構成する超電導線材が座屈することを抑制できる。本例の場合、ボールローラの袋体41は非常に変形能が高いため、無限軌道による搬送に比べて格段に広い多心コア10Aとの接触面積を確保することができる。
<形態5(タイプA:ベルトが接触部+溝)>
次に、図5に基づいて、ベルト自体が接触部で、かつこの接触部に多心コアがはめ込まれる溝を設けた無限軌道で多心コアの搬送を行うタイプAの別の形態を説明する。
本例では、上記形態1における軟質ゴム製のベルト31に円弧状の溝34を形成し、この溝付きベルトを用いた無限軌道30にて多心コア10Aの搬送を行う。本例では、溝の断面における円弧の半径を、多心コア10Aの包絡円の半径に実質的に等しい大きさとした。
このような溝付きベルトを有する無限軌道で多心コア10Aを挟み込んで搬送することにより、上記形態1に比べてより一層多心コア10Aとベルト31との接触面積を広げることができ、より効果的に多心コア10Aに用いられる超電導線材の座屈を抑制することができる。
<試験例>
上記形態1と2の各々について、ベルト(クッション層)の厚さを3mm、5mm、10mm、20mm、25mmとして多心コアの搬送を行い、搬送後の多心コアに超電導シールド層の座屈が認められるかどうかを調べた。その結果を表1に示す。表1における「あり」は超電導シールド層の超電導線材に座屈があったことを、「なし」は同超電導線材に座屈がなかったことを示す。
Figure 0005305109
この表から明らかなように、接触部の厚さが5mm以上あると超電導シールド層を構成する超電導線材に座屈が生じていないことがわかる。ただし、この厚さが20mmを超えるとベルト全体の剛性が高くなり、コアにすべりが発生するため不適当であった。
本発明超電導ケーブルの製造方法は、多心超電導ケーブルを製造することに利用することができる。
100 超電導ケーブル
10 コア 10A 多心コア
11 フォーマ 12 超電導導体層 13 絶縁層 14 超電導シールド層 15 保護層
16 介在物
20 断熱管 21 内管 22 外管 23 防食層
30 無限軌道 31 ベルト 32 起動輪 33 クッション層 34 溝
40 ボールローラ 41 袋体 42 回転軸

Claims (2)

  1. 第一超電導層と、この第一超電導層の外側に形成される絶縁層と、絶縁層の外側に形成される第二超電導層とを有するケーブルコアを複数本撚り合せてなる多心コアを搬送する超電導ケーブルの製造方法であって、
    前記第一超電導層及び前記第二超電導層には、酸化物超電導材料を含む超電導線材が用いられており、
    前記多心コアを、弾性材料で構成された袋体をボール状に膨らませたボールローラで挟んで搬送する超電導ケーブルの製造方法。
  2. 前記多心コアは、搬送により押し込み力が印加される請求項1に記載の超電導ケーブルの製造方法。
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