フッ素ガスは極めて反応性が高く、フッ素ガスを用いた表面処理ではフッ素ガス若しくはフッ素ガスを含んだ混合ガスの気流が偏って被理物に接触したとき、偏りに応じて処理効果に偏り(不均一性)が生じることが知られている。しかしながら、特許文献1に記載の装置においては、ハウジング内のフッ素ガスの流れに偏りが生じることがあり、被処理物であるフィルム表面における表面処理効果の均質性の精度を高くすることができない場合があった。
そこで、本発明の目的は、従来よりも、被処理物の表面処理の均質性の精度を向上させることが可能な表面処理装置を提供することである。
(1) 本発明の表面処理装置は、被処理物を表面処理するための表面処理室を有し、前記表面処理室内と連通している入口及び出口が設けられているハウジングと、前記表面処理室に接続されており、ガス源からフッ素ガスを含んだ混合ガスを供給する混合ガス供給管と、前記表面処理室内に設けられ、前記表面処理室内に供給された混合ガスを少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に噴出するように整流する流路を有した整流部材と、を備えているものである。
上記(1)の構成によれば、前記表面処理室内でフッ素ガスを含んだ混合ガスが均一に噴出するので、従来に比べて被処理物の表面を均一にフッ素処理することができる。特に、被処理物の移動方向に対して垂直な方向(被処理物の幅方向)について、均一且つ高効率で表面処理を行うことができる。また、例えば、被処理物がシート状のものであれば、両表面を一度に且つ均一に表面処理することができる。
(2) 上記(1)の表面処理装置においては、前記整流部材が、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の一方側との間に設けられ、前記表面処理室を仕切って第1の混合ガス分散室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に噴出するように整流する流路を有した第1部材と、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の他方側との間に設けられ、前記表面処理室を仕切って第2の混合ガス分散室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に噴出するように整流する流路を有した第2部材とを有しているものであり、前記混合ガス供給管が、前記第1の混合ガス分散室及び前記第2の混合ガス分散室に接続されていることが好ましい。
上記(2)の構成によれば、前記第1の混合ガス分散室及び前記第2の混合ガス分散室から第1部材及び第2部材を通過して、前記表面処理室内において均一的に噴出されたフッ素ガスによって、被処理物の表面をより均一に且つ高効率で処理することができる。
(3) 上記(1)又は(2)の表面処理装置においては、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の一方側との間に設けられ、前記表面処理室を仕切って第1の混合ガス収集室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に吸引するように整流する流路を有した第3部材と、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の他方側との間に設けられ、前記表面処理室を仕切って第2の混合ガス収集室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に吸引するように整流する流路を有した第4部材とを有しているものであり、前記第1の混合ガス収集室及び前記第2の混合ガス収集室に、混合ガスを排出する混合ガス収集管が接続されていることが好ましい。
上記(3)の構成によれば、前記第3部材及び前記第4部材を介してガス流れを偏流しないように均一に吸い込むことができるので、被処理物の表面での混合ガスの気流の偏りを防ぎ、より均一に処理できる。
(4) 上記(1)〜(3)の表面処理装置においては、前記ハウジング内において前記表面処理室における前記ハウジング軸方向の一端側及び他端側それぞれに設けられ、ガスを排出するガス排出管がそれぞれ接続されている2つのガス収集室を備えていることが好ましい。
上記(4)の構成によれば、フッ素ガスを含む混合ガスが前記表面処理室から漏れることがあったとしても、前記ガス収集室によって混合ガスを収集することができるので、外部にフッ素ガスが漏れることがない。したがって、安全に運転できる表面処理装置を提供できる。
(5) 上記(4)の表面処理装置においては、前記2つのガス収集室のうち少なくとも1つが、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の一方側との間に設けられ、前記ガス収集室を仕切って第1のガス収集小室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に排出するように整流する流路を有した第5部材と、前記ガス収集室において前記ハウジングの内壁と前記被処理物の他方側との間に設けられ、前記ガス収集室を仕切って第2のガス収集小室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に排出するように整流する流路を有した第6部材とを有しており、前記第1のガス収集小室及び前記第2のガス収集小室に、前記ガス排出管がそれぞれ接続されていることが好ましい。
上記(5)の構成によれば、前記第5部材及び前記第6部材によって形成された各ガス収集小室によって、表面処理室から混合ガスが漏れ出たとしても気流が偏らないようにしつつ吸い込むことが可能であり、ガス収集管を介して安全にガスを外部の除外施設などに排出できる。
(6) 上記(1)〜(5)の表面処理装置においては、前記ハウジング内において前記表面処理室と各前記ガス収集室との間に設けられ、ガス源から窒素ガスを供給する窒素ガス供給管がそれぞれ接続されている2つの窒素ガス室を備えていることが好ましい。なお、フッ素ガス表面処理は混合ガスの種類によって異なる表面特性を被処理物表面に付与することができる。混合ガスがフッ素ガスと酸素ガス、或いはフッ素ガスと酸素ガスと不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)とから構成される場合は、被処理物表面にカルボキシル基などの極性基を導入して親水性の効果を付与することが可能である。これに対して、混合ガスがフッ素ガス単体、或いはフッ素ガスと不活性ガスとから構成される場合は、被処理物表面をフッ素化し、撥水性や耐薬品性、バリアー性などの効果を付与することが可能であり、直接フッ素化処理と呼ばれる。特に、直接フッ素化処理では酸素ガスをできるだけ反応系から取り除き、フッ素ガスと酸素ガスとが被処理物表面で共存する環境を避けることが適正に処理を行う上で重要となる。
上記(6)の構成によれば、前記窒素ガス室を設けることにより、窒素ガス室の圧力を表面処理室の内圧及び大気圧よりも高く設定することで、混合ガスの大気への漏れ出しを防ぐことがより可能になり、さらに安全性が向上する。さらに、混合ガス中のフッ素ガスと大気中の酸素とが共存して被処理物表面に存在する状況を抑止することができる。その結果として、適正に直接フッ素化処理を行うことができる。
(7) 上記(5)又は(6)の表面処理装置においては、前記2つの窒素ガス室のうち少なくとも1つが、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の一方側との間に設けられ、前記窒素ガス室を仕切って第1の窒素ガス分散室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に噴出するように整流する流路を有した第7部材と、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の他方側との間に設けられ、前記窒素ガス室において前記窒素ガス室を仕切って第2の窒素ガス分散室を形成しているとともに、少なくとも前記被処理物の幅方向について均一に噴出するように整流する流路を有した第8部材とを有しており、前記第1の窒素ガス分散室及び前記第2の窒素ガス分散室に、前記窒素ガス供給管がそれぞれ接続されていることが好ましい。
上記(7)の構成によれば、前記第1の窒素ガス分散室及び前記第2の窒素ガス分散室から前記第7部材及び前記第8部材を通過して、前記窒素ガス室内において均一的に噴出された窒素ガスによって、フッ素ガスと酸素ガスとが被処理物表面で共存する状況を抑制することができる。その結果として、被処理物の表面において、フッ素ガスと酸素ガスとが共存することによって起こる反応をより抑制することができ、直接フッ素化処理を高精度で行うことができる。
(8) 上記(1)〜(7)の表面処理装置においては、前記ガス源が、すでに混合されてなる前記混合ガスを単に封入してなる容器である場合には、前記表面処理室内の圧力を一定に保つように、前記混合ガス供給管からの混合ガス供給量を調整する混合ガス供給量調整部が前記混合ガス供給管の途中に設けられていることが好ましい。また、前記ガス源が、前記混合ガスを構成する各ガスを供給する複数のガス供給管に接続されたものであり、該ガス源において混合ガスが作成されている場合には、前記表面処理室内の圧力を一定に保つように、ガスの供給量を調整するガス供給量調整部が前記混合ガス供給管の途中又は前記複数のガス供給管の途中に設けられていることが好ましい。
フッ素ガス表面処理では、混合ガス中のフッ素ガス濃度だけではなく、フッ素ガスの絶対量が処理の強弱に影響を及ぼす。これは混合ガス中のフッ素ガス濃度が一定でも処理する圧力が異なれば、被処理物と反応するフッ素ガスの量に異なりが生まれ、その結果として、処理効果に偏りが生まれることを意味する。そのため、処理圧力の均一性は処理効果の均一性にとって重要な要素となるが、上記(8)の構成によれば、表面処理室内の圧力を一定に保つように、ガスの供給量を調整することできるので、より均一且つ高効率な表面処理を行うことが可能な表面処理装置を提供できる。
(9) 上記(1)〜(8)の表面処理装置においては、前記表面処理室内の圧力を一定に保つように、前記混合ガス収集管の混合ガス排出量を調整する混合ガス排出量調整部が前記混合ガス収集管の途中に設けられていることが好ましい。
上記(9)の構成によれば、表面処理室内の圧力を一定に保つように、混合ガス排出量を調整することができるので、より均一且つ高効率な表面処理を行うことが可能な表面処理装置を提供できる。
(10) 上記(8)の表面処理装置においては、前記混合ガス供給量調整部が、前記混合ガスの流量、又は、前記混合ガスを構成する各ガスの流量を制御するマスフローコントローラを有しているものであることが好ましい。
上記(10)の構成によれば、混合ガスの質量流量を高精度で制御することができるので、さらに均一且つ高効率な表面処理を行うことが可能な表面処理装置を提供できる。
(11) 上記(9)の表面処理装置においては、前記混合ガス供給管からの混合ガス供給量を一定に保持している場合において、前記混合ガス収集管の途中に設けられた前記混合ガス排出量調整部が、前記混合ガス収集管の混合ガス排出速度を制御して前記ハウジングの内圧を一定にする弁であることが好ましい。
上記(11)の構成によれば、前記混合ガス収集管の混合ガス排出速度を制御して前記ハウジングの内圧を一定にすることができるので、さらに均一且つ高効率な表面処理を行うことが可能な表面処理装置を提供できる。
(12) 別の観点として、上記(9)の表面処理装置においては、前記混合ガス供給管からの混合ガス供給量を一定に保持している場合において、前記混合ガス収集管の途中に設けられた前記混合ガス排出量調整部が、回転数制御によって前記混合ガス収集管から排出する混合ガスの流量を調整しつつ吸い出して前記ハウジングの内圧を一定にするポンプであることが好ましい。
上記(12)の構成によれば、前記混合ガス収集管から排出する混合ガスの流量を調整しつつ吸い出して前記ハウジングの内圧を一定にすることができるので、さらに均一且つ高効率な表面処理を行うことが可能な表面処理装置を提供できる。
(13) 上記(1)〜(12)の表面処理装置においては、前記表面処理室の幅が、前記被処理物の幅より広いものであることが好ましい。
上記(13)の構成によれば、前記被処理物の幅方向端部の処理ムラを軽減することができる。
(14) 上記(1)〜(13)の表面処理装置においては、前記混合ガス供給管が、前記ハウジングの周囲に設けられた環状管と、前記環状管内部と前記ハウジング内部とを接続する複数の管とを有しているものであることが好ましい。
上記(14)の構成によれば、偏りを少なくしつつ混合ガスを前記ハウジング内部(前記表面処理室)に導入することができるので、より均一且つ高効率な表面処理を行うことが可能な表面処理装置を提供できる。
(15) 上記(1)〜(14)の表面処理装置においては、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の一方側との間、及び、前記ハウジングの内壁と前記被処理物の他方側との間に設けられ、前記表面処理室の内壁面から前記ハウジング軸方向と交差する方向に突出した複数の撹拌部材が設けられていることが好ましい。
上記(15)の構成によれば、幅方向において均一なまま混合ガスを撹拌させることができるので、より均一且つ高効率な表面処理を行うことが可能な表面処理装置を提供できる。
(16) 上記(2)の表面処理装置においては、前記第1の混合ガス分散室の幅方向の一端部と、前記第2の混合ガス分散室の幅方向の一端部とを接続している接続用配管を備え、前記混合ガス供給管が、前記第1の混合ガス分散室の幅方向の他端部に接続されている第1の供給管と、前記第2の混合ガス分散室の幅方向の他端部に接続されている第2の供給管とを有していることが好ましい。
上記(16)の構成によれば、接続用配管と混合ガス供給管とが離れているとともに、第1の混合ガス分散室と第2の混合ガス分散室とが接続用配管によって導通しているので、第1及び第2の混合ガス分散室の内部圧力をほぼ均一に調整することができる。その結果として、より混合ガスの流れを整流した状態で該混合ガスを被処理物に当てることができ、被処理物の表面処理をより均一に行うことができる。
<第1実施形態>
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る表面処理装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る表面処理装置の概略構成図である。図2は、図1の表面処理装置におけるハウジングの断面図である。なお、図2においては、ハウジングの軸方向中央部分を省略表示している。図3は、図2のハウジングのA−A矢視断面図である。
本実施形態に係る表面処理装置1000は、被処理物であるフィルム1を内部で表面処理するためのハウジング2と、フッ素ガスと酸素ガスとを含んだ混合ガスのガス源である混合ガス供給部3と、ハウジング2の所定箇所に接続されており、混合ガス供給部3から混合ガスを供給する混合ガス供給管4と、フィルム1が巻き付けられ、フィルム1をハウジング2内に送り出すことが可能な送り出しロール5と、ハウジング2内から出てきたフィルム1を巻き取ることが可能な巻き取りロール6と、混合ガス収集管7及びガス収集管8を介してハウジング2内から混合ガスを回収し、フッ素ガスを除去して除害化する除害部9と、を備えているものである。以下、必要に応じて、各部の詳細な説明をする。
ハウジング2は、混合ガス供給管4が接続され、フィルム1を表面処理するための表面処理室21と、ガス収集管8がそれぞれ接続され、表面処理室21から漏れた混合ガスを収集するガス収集室22a、22bと、表面処理室21内及びガス収集室22a、22b内と連通している入口23及び出口24とを有しているものである。表面処理室21の幅は、図3に示したように、フィルム1の幅よりも広くなるように構成されている。これにより、フィルム1の幅方向端部の処理ムラを軽減することができる。
表面処理室21内には、表面処理室21内に供給された混合ガスを均一に噴出するのに用いられる整流部材25、26(第1部材、第2部材)と、ハウジング2中央を中心として整流部材25、26と対称的に配置された整流部材27、28(第3部材、第4部材)とが設けられている。なお、本明細書中における整流部材は、金属メッシュ又は金属ワイヤーなどを用いて形成された網目状部材、細管を所定方向に沿って束ねた部材、焼結体からなる又は多数の貫通孔が形成されている多孔性部材であって、フィルム1の幅方向についてガスが均一に噴出するように整流する流路を有したものである。ここで、該整流部材は、フィルム1の幅方向だけでなく、フィルム1の長さ方向にもガスが均一に噴出するように整流する流路を有したものであってもよい。また、整流部材25、26は、表面処理室21を仕切って、混合ガス分散室29、30を形成しているものであり、整流部材27、28は、表面処理室21を仕切って、混合ガス収集室31、32を形成しているものである。また、混合ガス分散室29、30には、混合ガス供給管4が直接接続されており、混合ガス収集室31、32には、混合ガス収集管7が直接接続されている。混合ガス分散室29、30を用いれば、整流部材25、26を介してガス流れを偏流しないようにしつつ分散して幅方向に均一に表面処理室21内へ流し出すことが可能である。また、混合ガス収集室31、32を用いれば、整流部材27、28を介してガス流れを偏流させないように均一に吸い込むことが可能であり、混合ガス収集管7を介してガスを外部に排出できる。
ガス収集室22a内には、内部空間を仕切って、ガス収集小室34、35を形成している整流部材36、37(第5部材、第6部材)が設けられている。また、ガス収集室22b内には、内部空間を仕切って、ガス収集小室38、39を形成している整流部材40、41(第5部材、第6部材)が設けられている。ガス収集小室34、35、38、39を用いれば、整流部材36、37、40、41を介してガス流れを偏流させないように均一に吸い込んでいくことが可能であり、ガス収集管8を介してガスを外部に排出できる。
表面処理室21とガス収集室22a、22bそれぞれとは、連絡口33a、33bを介して連絡している。これにより、フィルム1が、入口23、ガス収集室22a、連絡口33a、表面処理室21、連絡口33b、ガス収集室22b、出口24の順に、ハウジング2内を通過できるようになっている。なお、入口23は連絡口33aより広くなるように、また、出口24は連絡口33bより広くなるように形成されている。
混合ガス供給部3は、図4(矢印はガスの流れる方向を示している)に示すように、フッ素ガスが貯留されているフッ素ガスタンク42と、フッ素ガスタンク42から供給されたフッ素ガスの質量流量を高精度で制御するフッ素ガス用マスフローコントローラ(以下、フッ素ガス用MFCと記載する)43と、酸素ガスが貯留されている酸素ガスタンク44と、酸素ガスタンク44から供給された酸素ガスの質量流量を高精度で制御する酸素ガス用マスフローコントローラ(以下、酸素ガス用MFCと記載する)45と、供給されるガスの流速を利用して真空を発生させ、配管中の不要なガスをパージするバキュームジェネレーター(以下、VGと記載する)46と、フッ素ガスと酸素ガスとを混合するミキサー47とを有している。このような構成の混合ガス供給部3から混合ガスがハウジング2に供給される。なお、MFCは、混合ガス供給量調整部の一部を構成するものである。
混合ガス供給管4は、図3に示すように、ハウジング2の周囲に設けられた環状管4aと、環状管4aから延設され、ハウジング2の表面処理室21内に接続された管4b、4c、4d、4e、4f、4gと、環状管4aに混合ガス供給部3から混合ガスを供給するための管4hとを有しているものである。このような混合ガス供給管4により、偏りを少なくしつつ混合ガスを表面処理室21内(各混合ガス分散室29、30内)に導入することができる。
混合ガス収集管7は、ハウジング2の周囲の部分において、図3に示した混合ガス供給管4と同構成のものであって(図示せず)、途中には排気ポンプ10(混合ガス排出量調整部)が設けられている。なお、排気ポンプ10は、混合ガス供給管4からの混合ガス供給量を一定に保持している場合において、回転数制御によって混合ガス収集管7から排出する混合ガスの流量を調整しつつ吸い出してハウジング2の内圧を一定にするものであり、例えば、真空ポンプ又はブロアーポンプが挙げられる。また、図示しないが、ガス収集管8もハウジング2の周囲部分のそれぞれの箇所において、図3に示した混合ガス供給管4と同構成のものである。なお、ガス収集管8においては、除害部9と接続されている部分の途中で2本に枝分かれしている部分を有しており、該2本の管それぞれの途中に排気ポンプ11、12が設けられている。これにより、仮に排気ポンプ11、12のうち一台が故障しても、他方の一台で排気を行うことができるので、安全性が高い。
次に、本実施形態に係る表面処理装置1000の動作について説明する。まず、排気ポンプ10、11、12を作動させておき、混合ガス収集管7、ガス収集管8を介して、混合ガス収集室31、32内、ガス収集小室34、35を含んだガス収集室22a内、ガス収集小室38、39を含んだガス収集室22b内の空気を排出し続けておく。特に、各部のガス排出量を調整し、ハウジング2の表面処理室21内のガス流れ(混合ガス分散室29、30から混合ガス収集室31、32へ向かうガス流れ)を形成しておく。次に、混合ガス供給部3を運転する。具体的には、図4に示したフッ素ガス用MFC43を用いてフッ素ガスタンク42から質量流量を高精度で制御しつつ、フッ素ガスをVG46に供給する。これと同時に、酸素ガス用MFC45を用いて酸素ガスタンク44から質量流量を高精度で制御しつつ、酸素ガスをVG46に供給する。続いて、VG46において、供給されたフッ素ガス及び酸素ガスの流速を利用して内部に真空を発生させ、配管中の不要なガスをパージした上で、ミキサー47にフッ素ガス及び酸素ガスを供給する。そして、ミキサー47においてフッ素ガスと酸素ガスとを十分に混合した後、混合ガス供給管4を介して、ハウジング2の表面処理室21内における混合ガス分散室29、30内に、フッ素ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する。混合ガス分散室29、30内に供給された混合ガスは、整流部材25、26の隙間を通って偏流することなく均一に噴出され、表面処理室21内を流れていくことができる。すなわち、表面処理室21内に供給された混合ガスは、混合ガス分散室29、30から混合ガス収集室31、32へ向かって均一に分散して流れる。このようにして表面処理室21内を混合ガスで十分満たした後、送り出しロール5及び巻き取りロール6を動作させ、フィルム1をハウジング2内に送り込み、フィルム1両面の表面処理を均一的に行う。
なお、このとき、表面処理室21内の圧力を計測する圧力計(図示せず)を設けておき、表面処理室21内の圧力が大気圧より低くなるように、混合ガス供給管4からの混合ガス供給量及び混合ガス収集管7の混合ガス排出量を調整しておいてもよい。また、整流部材27、28によってガスが偏流しないようにすることによって、混合ガスを広範的に捕えて混合ガス収集室31、32内に導き、混合ガス収集管7を介して混合ガスを除害部9に排出し、無害化する。また、混合ガスが表面処理室21の連絡口33a、33bからガス収集室22a、22bに漏れ出した場合を考慮して、ガス収集管8を介して、ガス収集小室34、35、38、39から漏れ出た混合ガスを除害部9に排出し、無害化できるようにしておく。これらにより、安全に運転できる表面処理装置1000を提供できる。
上記構成の表面処理装置1000によれば、表面処理室21内でフッ素ガスを含んだ混合ガスを均一に噴出し、分散させることができる上、表面処理室21内の圧力を一定に保っているので、従来に比べて被処理物であるフィルム1の表面を幅、長さ(移動方向)の全面において均一にフッ素処理することができる。また、混合ガス分散室29及び混合ガス分散室30から整流部材25及び整流部材26を通過して、表面処理室21内の中央部において均一的に分散されたフッ素ガスによって、フィルム1の両表面を均一に且つ高効率で処理することができる。
また、混合ガス収集室31、32によって、整流部材27、28を介してガス流れを偏流しないように均一に吸い込むことが可能であり、フィルム1の両表面をより均一に処理することができる。
さらに、フッ素ガスを含む混合ガスが表面処理室21の連絡口33a、33bから漏れることがあったとしても、ガス収集室22a、22bによって漏れ出た混合ガスを収集することができるので、外部にフッ素ガスが漏れることはない。したがって、安全に運転できる表面処理装置1000を提供できる。
整流部材36、37、40、41によって形成されたガス収集小室34、35、38、39によって、ガス流れを偏流しないようにしつつ吸い込むことが可能であり、ガス収集管8を介してガスを除害部9に排出でき、無害化できる。
また、表面処理室21の幅が、被処理物であるフィルム1の幅より広いものであるので、フィルム1の幅方向端部の処理ムラを軽減することができる。
ここで、本実施形態においては、混合ガスに酸素ガスを含むものを用いて被処理物の表面を処理する場合を示したが、一変形例として、酸素ガスの代わりに窒素ガスを含んだ混合ガスを用いてもよい。
<第2実施形態>
次に、図5〜図7を用いて、本発明の第2実施形態に係る表面処理装置について説明する。図7における矢印は、ガスの流れる方向を示している。なお、上記実施形態の符号1〜12、21〜43、46、47の部分と、符号51〜62、71〜91、111、112、115、116の部分とは、順に同様の部分であり、説明を省略する場合がある。
本実施形態に係る表面処理装置2000は、主に、(1)混合ガスにおいて、酸素ガスの代わりに窒素ガスを用いている点、(2)前記(1)のため、混合ガス供給部53において、酸素ガスタンク44の代わりに窒素ガスタンク113、酸素ガス用MFC45の代わりに窒素ガス用MFC114を用いている点(図7参照)、(3)表面処理室71とガス収集室72a、72bそれぞれとの間に、窒素ガス供給管64を介して窒素ガス供給部63から窒素ガスが供給される窒素ガス室92、97が設けられている点で、第1実施形態と異なっている。なお、窒素ガス供給部63は、例えば、窒素ガスが貯留されている窒素ガスタンクでもよいし、必要に応じて窒素を発生させる装置であってもよい。
図6に示すように、窒素ガス室92は、整流部材93、94(第7部材、第8部材)に仕切られることによって形成された窒素ガス分散室95、96を内部に有している。また、窒素ガス室97は、整流部材98、99(第7部材、第8部材)に仕切られることによって形成された窒素ガス分散室95、96を内部に有している。前述の窒素ガス分散室95、96、101、102のそれぞれには、窒素ガス供給管64が接続されており、窒素ガスをハウジング2内に導けるようになっている。このような構成の窒素ガス分散室95、96、101、102を用いれば、整流部材93、94、98、99を介して、ガス流れを偏流しないようにしつつ均一に噴出して窒素ガス室92、97の中心部へ流し出すことが可能である。
次に、本実施形態に係る表面処理装置2000の動作について説明する。まず、排気ポンプ60、61、62を作動させておき、混合ガス収集管57、ガス収集管58を介して、混合ガス収集室81、82内、ガス収集小室84、85を含んだガス収集室72a内、ガス収集小室88、89を含んだガス収集室72b内の空気を排出し続けておく。また、窒素ガス供給部63から窒素ガス供給管64を介して、窒素ガス分散室95、96を含む窒素ガス室92内、窒素ガス分散室101、102を含む窒素ガス室97内に窒素ガスを供給しておく。そして、各部のガス排出量を調整し、ハウジング52の表面処理室71内のガス流れ(混合ガス分散室79、80から混合ガス収集室81、82へ向かうガス流れ)を形成しておく。次に、混合ガス供給部53を運転する。具体的には、図7に示したフッ素ガス用MFC112を用いてフッ素ガスタンク111から質量流量を高精度で制御しつつ、フッ素ガスをVG115に供給する。これと同時に、窒素ガス用MFC114を用いて窒素ガスタンク113から質量流量を高精度で制御しつつ、窒素ガスをVG115に供給する。続いて、VG115において、供給されたフッ素ガス及び窒素ガスの流速を利用して内部に真空を発生させ、配管中の不要なガスをパージした上で、ミキサー116にフッ素ガス及び窒素ガスを供給する。そして、ミキサー116においてフッ素ガスと窒素ガスとを十分に混合した後、混合ガス供給管54を介して、ハウジング52の表面処理室71内における混合ガス分散室79、80内に、フッ素ガスと窒素ガスとの混合ガスを供給する。混合ガス分散室79、80内に供給された混合ガスは、整流部材75、76の隙間を通って偏流することなく均一に噴出され、分散して表面処理室71内を流れていくことができる。すなわち、表面処理室71内に供給された混合ガスは、混合ガス分散室79、80から混合ガス収集室81、82へ向かって均一に分散して流れる。このようにして表面処理室71内を混合ガスで十分満たした後、送り出しロール55及び巻き取りロール56を動作させ、フィルム51をハウジング52内に送り込み、フィルム51両面の表面処理を均一的に行う。
なお、このとき、表面処理室71内の圧力及び窒素ガス室92、97内の圧力を計測する圧力計(図示せず)を各室ごとに設けておき、混合ガス供給管54からの混合ガス供給量及び混合ガス収集管57の混合ガス排出量を調整して、窒素ガス室92、97内の圧力よりも表面処理室71内の圧力が低くなるように調整しておいてもよいし、さらに、表面処理室71内の圧力が大気圧より低くなるように調整しておいてもよい。加えて、窒素ガス室92、97内の圧力がガス収集室22a、22bの圧力より高くなるように調整し、空気が窒素ガス室に入ってこないようにしておいてもよい。また、整流部材77、78によってガスが偏流しないようにすることによって、混合ガスを広範的に捕えて混合ガス収集室81、82内に導き、混合ガス収集管57を介して混合ガスを除害部59に排出し、無害化する。また、混合ガスが表面処理室71の連絡口103、104及び窒素ガス室92、97を介して連絡口83a、83bからガス収集室72a、72bに漏れ出した場合を考慮して、ガス収集管58を介して、ガス収集小室84、85、88、89から漏れ出た混合ガスを除害部59に排出し、無害化できるようにしておく。これらにより、安全に運転できる表面処理装置2000を提供できる。
上記構成の表面処理装置2000によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、表面処理室71内の圧力が窒素ガス室92、97内の圧力より低くなるように、混合ガス供給管54からの混合ガス供給量が調整されているので、フッ素ガスが表面処理室71外へ漏れるのを抑止できる。その結果として、安全に運転できる表面処理装置2000を提供できる。
さらに、窒素ガス室92、97が、表面処理室71の連絡口103、104をそれぞれ挟むように設けられているので、酸素を含んだ大気の流入を抑止できる。その結果として、適正に直接フッ素化処理を行うことができる。特に、窒素ガス分散室95、96、101、102から整流部材93、94、98、99を通過して、窒素ガス室92、97内において均一的に分散された窒素ガスによって、精度よく外部からの酸素の流入を抑制することができる。その結果として、フィルム51の表面において、適正に直接フッ素化処理を行うことができる上、混合ガスが大気中に流出することをより抑止することができる。
<第3実施形態>
次に、図8を用いて、本発明の第3実施形態に係る表面処理装置について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の部分に関しては、説明を省略することがある。
本実施形態に係る表面処理装置は、表面処理室141内壁からハウジング122軸方向と交差する方向に突出するように設けられた板部材171、172(撹拌部材)の組み合わせ及び板部材173、174(撹拌部材)の組み合わせを、ハウジング122軸方向に周期的に複数設けている点で、第1実施形態と異なっている(図2及び図8参照)。その他の部位においては、第1実施形態と同様である。
板部材171は、フィルム121の移動方向(ハウジング122軸方向)に対して傾斜するように、ハウジング122の内壁同士の間(図8紙面の手前側内壁(図示せず)と奥側内壁との間)に架設されているものである。板部材172は、ハウジング122における混合ガス供給管124側の内壁からハウジング122中央部に向かって、フィルム121の移動方向(ハウジング122軸方向)と略垂直となるように、設けられているものである。板部材173、174のそれぞれは、ハウジング122の軸を中心として板部材171、172のそれぞれと対称的に設けられている。
次に、本実施形態に係る表面処理装置の動作について説明する。まず、第1実施形態と同様に、各排気ポンプを作動させておき、混合ガス収集管127、ガス収集管128を介して、表面処理室141内の空気を排出し続けておく。特に、各部のガス排出量を調整し、表面処理室141内のガス流れ(混合ガス分散室129、130から混合ガス収集室131、132へ向かうガス流れ)を形成しておく。次に、図4と同様の混合ガス供給部を第1実施形態と同様に運転し、混合ガス供給管124を介して、ハウジング122の表面処理室121内における混合ガス分散室129、130内に、フッ素ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する。混合ガス分散室129、130内に供給された混合ガスは、整流部材145、146の隙間を通って偏流することなく幅方向に均一に噴出され、分散して表面処理室141内に流入する。そして、板部材171、172、173、174によってフィルム121表面付近におけるガスの流れを撹拌させ、フィルム121表面での反応性を向上させつつ、表面処理室141内を流れていくことができる。すなわち、表面処理室141内に供給された混合ガスは、幅方向においては均一でありながら撹拌されつつ、混合ガス供給管124側から混合ガス収集管127側へ向かって流れる。このようにして表面処理室141内を混合ガスで十分満たした後、第1実施形態と同様の送り出しロール及び巻き取りロールを動作させ、フィルム121をハウジング122内に送り込み、フィルム121両面の表面処理を均一的に行う。
なお、このとき、表面処理室121内の圧力を計測する圧力計(図示せず)を設けておき、表面処理室121内の圧力が大気圧より低くなるように、混合ガス供給管124からの混合ガス供給量及び混合ガス収集管127の混合ガス排出量を調整しておいてもよい。また、混合ガスが表面処理室141の連絡口153a、153bからガス収集室142a、142bに漏れ出した場合を考慮して、ガス収集管128を介して、第1実施形態と同様のガス収集小室154、155、158、159から漏れ出た混合ガスを、第1実施形態と同様の除害部に排出し、無害化できるようにしておく。これらにより、安全に運転できる表面処理装置を提供できる。
本実施形態の表面処理装置によれば、上述した板部材171、172の組み合わせ及び板部材173、174の組み合わせを、ハウジング122内においてハウジング122軸方向に周期的に複数設けたことによって、表面処理室141内を流れる混合ガスが複数の板部材に衝突するので、幅方向において均一なまま混合ガスを撹拌させることができ、フィルム121表面での反応性を向上させることができる。したがって、従来に比べて被処理物であるフィルム1の両表面を均一に且つ高効率で処理することができる。
<第3実施形態の変形例>
次に、図9を用いて、本発明の第3実施形態の変形例に係る表面処理装置について説明する。なお、上記第1及び第3実施形態と同様の部分に関しては、説明を省略することがある。
本変形例に係る表面処理装置は、整流部材25、26、27、28によって表面処理室21内に形成された混合ガス分散室29、30及び混合ガス収集室31、32の代わりに、表面処理室141内壁からハウジング122軸方向と交差する方向に突出するように設けられた板部材231、232(撹拌部材)の組み合わせ及び板部材233、234(撹拌部材)の組み合わせを、ハウジング202軸方向に周期的に複数設けている点で、第1及び第3実施形態と異なっている(図2、図8及び図9参照)。その他の部位においては、第1実施形態と同様である。
板部材231は、フィルム201の移動方向(ハウジング202軸方向)に対して傾斜するように、ハウジング202の内壁同士の間(図9紙面の手前側内壁(図示せず)と奥側内壁との間)に架設されているものである。板部材232は、ハウジング202における混合ガス供給管204側の内壁から、板部材231と逆方向に傾斜するように設けられているものである。板部材233、234のそれぞれは、ハウジング202の軸を中心として板部材231、232のそれぞれと対称的に設けられている。
本変形例によれば、第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、表面処理室内で混合ガスを撹拌させることができるような流路を形成しているのであれば、該表面処理室内での板部材の配設位置・大きさ・傾斜の角度などは、上記第3実施形態又は本変形例に限られず、必要に応じて適宜選択してもよい。また、必ずしも板部材である必要はなく、棒状部材を用いたり、整流部材を用いたりしてもよい。さらに、これら板部材、棒状部材、整流部材が適宜組み合わされたものであってもよい。
<第4実施形態>
次に、図10及び図11を用いて、本発明の第4実施形態に係る表面処理装置について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の部分に関しては、説明を省略することがある。
本実施形態に係る表面処理装置4000においては、(1)表面処理室321内の略中央部において対向するように半円筒状の整流部材325、326が設けられ、混合ガス分散室329、330が形成されている点、(2)混合ガス分散室329、330に混合ガス供給管304を接続している点、(3)混合ガス分散室29、30(第1実施形態)を混合ガス収集室342、343として用いることとして、混合ガス収集室342、343に混合ガス収集管307を接続している点、第1実施形態と異なっている(図1、図2、図10、及び図11参照)。その他の部位においては、第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態に係る表面処理装置の動作について説明する。まず、第1実施形態と同様に、各排気ポンプを作動させておき、混合ガス収集管307、ガス収集管308を介して、表面処理室321内の空気を排出し続けておく。特に、各部のガス排出量を調整し、表面処理室321内のガス流れ(混合ガス分散室329、330から、混合ガス収集室331、332及び混合ガス収集室342、343の両方向へ向かうガス流れ)を形成しておく。次に、表面処理室321内における混合ガス分散室329、330内に、フッ素ガスと酸素ガスとの混合ガスを供給する。混合ガス分散室329、330内に供給された混合ガスは、整流部材325、326の隙間を通って偏流することなく均一に噴出され、分散して表面処理室321内を流れていくことができる。すなわち、表面処理室321内に供給された混合ガスは、混合ガス分散室329、330から、混合ガス収集室331、332及び混合ガス分散室329、330の両方向へ向かって、均一に分散して流れる。このようにして表面処理室321内を混合ガスで十分満たした後、第1実施形態と同様の送り出しロール305及び巻き取りロール306を動作させ、フィルム301をハウジング302内に送り込み、フィルム301両面の表面処理を均一的に行う。
なお、このとき、表面処理室321内の圧力を計測する圧力計(図示せず)を設けておき、表面処理室321内の圧力が大気圧より低くなるように、混合ガス供給管304からの混合ガス供給量及び混合ガス収集管307の混合ガス排出量を調整しておいてもよい。また、混合ガスが表面処理室321の連絡口333a、333bからガス収集室322a、322bに漏れ出した場合を考慮して、ガス収集管308を介して、第1実施形態と同様のガス収集小室334、335、338、339から漏れ出た混合ガスを、第1実施形態と同様の除害部309に排出し、無害化できるようにしておく。これらにより、安全に運転できる表面処理装置4000を提供できる。
本実施形態の表面処理装置4000によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<検証実験1>
次に、実施例を用いて、本発明を説明する。ここでは、本発明の第1実施形態に係る表面処理装置1000であって整流部材27、28が設けられていないものとほぼ同構成の装置(実施例1)、本発明の第1実施形態に係る表面処理装置1000とほぼ同構成の装置(実施例2)、本発明の第1実施形態に係る表面処理装置1000から整流部材25、26、27、28を取り外した構成の表面処理装置とほぼ同構成の装置(比較例)のそれぞれを用いて、被対象物であるフィルムの両面(処理面)にフッ素ガス表面処理改質を施し、得られたフィルム両面の純水接触角測定を行って、表面処理改質の均一性評価を行った。これによって、整流部材の効果を検証する。なお、上記純水接触角測定は、エルマ販売株式会社製の測定装置(G−1)を用いて、室温、室内雰囲気下、精製水9マイクロリットルの条件で行なった。また、本検証に用いた各装置の混合ガス供給管は、混合ガス分散室の幅方向の中央に上下一本ずつ設けたもの(例:図3に示した管4c、4fのみを設けたものと同様)となっている。また、各装置の混合ガス収集管は、各混合ガス収集室の幅方向の中央に上下一本ずつ設けたもの(例:図3に示した管4c、4fのみを設けたものと同様)となっている。ただし、実施例1の装置は混合ガス収集室が設けられていないものであるが、実施例2の装置と同様の位置に混合ガス収集管を配設した態様となっている。また、各装置のガス収集管は、各ガス収集室の幅方向の中央に上下一本ずつ設けたもの(例:図3に示した管4c、4fのみを設けたものと同様)となっている。
検証用のフィルムには、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)100H:厚み25μm、幅520mm、長さ550m)と、ポリエチレンフィルム(厚み100μm、幅500mm、長さ550m)とを用いた。なお、フィルムの表面処理改質の均一性評価は、フィルム走行速度を50m/min、酸素ガスとフッ素ガスとの混合ガス(フッ素ガス濃度0.5%)の流量を15L/min(表面処理室内を1分間で約1/2置換できる程度のもの)として得たフィルムについて行った。また、表面処理室内に上記混合ガスを導入して、10分間かけて表面処理室内を混合ガス雰囲気にした後に、フィルムを走行させて処理を行った。また、処理後の各フィルムにおける両処理面の分析は、走行開始時点から10m後を0(基準点)として長さ方向に150mごとに、且つ、フィルム幅方向は10cmおきに、各点で10回の純水接触角測定を行い、平均値を算出することによってなされた。また、フィルムの搬送方向を、第1実施形態に示した方向と反対方向にして検証実験を行った。ここで、上述した点以外の各例における装置の寸法、条件などは以下の通りである。
(実施例1の装置)
表面処理装置の主な部位の具体的な寸法は、以下の通りである。表面処理室21と同様の表面処理室においては、幅(長手方向長さ)が600mm、高さが100mm、フィルム搬送方向の長さが500mmである。また、ガス収集室22a、22bにおいては、幅(長手方向長さ)が600mm、フィルム搬送方向の長さが100mmである。
また、表面処理室内の整流部材には、流量に対する圧力抵抗値が設定流量に対して全面積で50kPa程度発生するような焼結金属フィルタを使用した。ガス収集室内の整流部材には、開口部での風速が1m/sの流量になるような排気流速になる焼結金属フィルタを使用した。また、各室には圧力計が設けられており、表面処理室の圧力制御に用いられている。なお、表面処理室の圧力は、混合ガス収集管に取り付けたコントロールバルブを制御することによって、大気圧の圧力になるよう調整した。
(比較例1の装置)
実施例1の装置から表面処理室内の整流部材を取り外した構成である以外、実施例1の装置と同構成である。
(実施例2の装置)
第1実施形態と同様の構成とした以外、実施例1の装置と同構成である。すなわち、実施例1の装置の混合ガス収集管の下部に整流部材を設け、混合ガス収集室を設けたものである。
上記実施例1、2及び比較例1の装置を用いて得たフィルムにおける表面処理改質の均一性評価のための接触角測定結果を以下に示す。
表1及び表2から、実施例1の装置によると、比較例1の装置を使用したのに比べて、フィルムの表面処理改質の均一性が高くなるように処理されていることが分かる。すなわち、実施例1の装置に係る表面処理室内において、混合ガス分散室の一部を構成する整流部材を用いることで、比較例1の装置を用いる場合に比べて、フィルム両面の処理の均一性を高いレベルで且つ確実に達成できていることがわかる。なお、比較例1の装置を用いて処理したフィルムについては、表1及び表2に示した結果から、混合ガス導入口付近(中央)において、混合ガスが垂直に衝突(混合ガス供給管の配設方向に衝突)し、反応が促進されていると思われる。また、表1及び表2から、混合ガスの偏流が発生していると考えられ、フィルム両面において、表面改質処理効果のバラツキが発生している(均一性が低い)ことがわかる。
また、表1及び表2から、実施例2の装置によると、実施例の装置を使用したのに比べて、フィルムの表面処理改質の均一性が高くなるように処理されていることが分かる。すなわち、実施例2の装置に係る表面処理室内において、さらに、混合ガス収集室の一部を構成する整流部材を用いることで、実施例1の装置を用いる場合に比べて、フィルム両面の処理の均一性を高いレベルで且つ確実に達成できていることがわかる。
<検証実験2>
次に、上記実施例2の装置と同構成の装置(参考例1)と、本発明の第2実施形態に係る表面処理装置2000とほぼ同構成の装置(実施例3)とを用いて、被対象物であるフィルムの両面(処理面)に、窒素ガスとフッ素ガスとの混合ガスによる直接フッ素化処理を施し、得られたフィルム両面の純水接触角測定を行って、表面処理改質の均一性評価を行った。これによって、窒素ガス室を設けることの効果を検証する。
検証用のフィルムには、ポリエチレンフィルム(厚み100μm、幅500mm、長さ550m)を用いた。なお、フィルムの表面処理改質の均一性評価は、フィルム走行速度を1m/min、窒素ガスとフッ素ガスとの混合ガス(フッ素ガス濃度5%)の流量を15L/min(表面処理室内を1分間で約1/2置換できる程度のもの)として得たフィルムについて行った。また、表面処理室内に上記混合ガスを導入して、20分間かけて表面処理室内を混合ガス雰囲気にした後に、フィルムを走行させて処理を行った。また、処理後の各フィルムにおける両処理面の分析は、走行開始時点から10m後を0(基準点)として長さ方向に150mごとに、且つ、フィルム幅方向は10cmおきに、各点で10回の純水接触角測定を行い、平均値を算出することによってなされた。また、フィルムの搬送方向を、第2実施形態において示した方向と反対方向にして検証実験を行った。ここで、上述した点以外の実施例3における装置の寸法、条件などは以下の通りである。
(参考例1の装置)
実施例2の装置と同構成の装置であるが、酸素ガスとフッ素ガスとの混合ガスの代わりに、窒素ガスとフッ素ガスとの混合ガスを用いた点以外、上記検証実験1の場合と同様の条件とした。
(実施例3の装置)
各室の大きさは実施例1と同様であるが、表面処理室とガス収集室との間に、幅(長手方向長さ)が600mm、フィルム搬送方向の長さが50mmの窒素ガス室(第2実施形態と同様の構成のもの)が設けられているものである。なお、窒素ガス室内の圧力を1.1気圧とした条件以外は、参考例1の装置と同様の条件とした。
上記実施例3及び参考例1の装置を用いて得たフィルムにおける表面処理改質の均一性評価のための接触角測定結果を以下に示す。
表3から、実施例3の装置のように窒素ガス室を設けることで、窒素ガス室がない参考例1の装置を用いて処理した場合に比べて、精度よく直接フッ素化が達成されており、撥水性を付与することが可能になる。なお、窒素ガス室が無いと、フッ素ガスと空気中の酸素ガスとが混じる領域が発生し、フィルム表面が撥水化せずに親水化してしまうことがある。したがって、フィルム表面を均一に撥水化したい場合には、実施例3のような窒素ガス室を有した装置において、窒素ガスとフッ素ガスとの混合ガスを用いた処理が必要である。なお、撥水化処理を確実に行うだけであれば、上記窒素ガス室に整流部材を取り付けなくてもよい。
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記各実施形態、実施例又は変形例に限定されるものではない。例えば、第2実施形態において、第3実施形態又は第3実施形態の変形例における複数の板部材を表面処理室内に設けて、混合ガスを撹拌させ、被処理物の表面処理を行う表面処理装置としてもよい。
また、上記各実施形態、実施例又は変形例における窒素ガス室又はガス収集室における整流部材の代わりに、板部材又は棒状部材などを用いて、流路中のガスを攪拌、拡散することとしてもよい。
また、上記各実施形態、実施例又は変形例における混合ガス供給管は、図3に示した混合ガス供給管4と同構成となっているが、必ずしもこのような構成でなくてもよく、表面処理室において被処理物を挟むような位置に1本以上ずつ配設されていればよい。上記各実施形態又は変形例における混合ガス収集管及びガス収集管においても、同様である。
また、上記各実施形態、実施例又は変形例におけるガス供給部のフッ素ガスタンク、酸素ガスタンク、窒素ガスタンクの代わりに、その場でフッ素ガス、酸素ガス、窒素ガスを発生させるフッ素ガス発生装置、酸素ガス発生装置、窒素ガス発生装置をそれぞれ用いてもよい。また、最初から、フッ素ガスと酸素ガスとを混合してなる混合ガスタンク、又は、フッ素ガスと窒素ガスとを混合してなる混合ガスタンクを用いてもよい。このとき、混合ガス供給量調整部は、該混合ガスタンクに直接接続されている混合ガス供給管の途中に設けられることになる。
また、上記各実施形態、実施例又は変形例において、フィルムの搬送方向を逆にしてもよい。これにより、反応効率をより向上することができる。
また、上記各実施形態、実施例又は変形例においては、フッ素ガスが触れる部位に、フッ素ガスの耐食性を有した材料(例えば、ニッケル、表面にニッケルめっき又はフッ素樹脂がコーティングされた材料)が用いられることが好ましい。
また、上記各実施形態、実施例又は変形例においては、ハウジングの軸方向を水平方向にしているが、これに限られず、傾斜させておいてもよいし、鉛直方向にしてもよい。
また、上記各実施形態、実施例又は変形例における排気ポンプ(混合ガス排出量調整部)の代わりに、混合ガス収集管の混合ガス排出速度を制御してハウジングの内圧を一定にすることができる機能を有した弁を用いてもよい。
また、第2実施形態において、窒素ガス室を2つ設けた構成としているが、どちらか一方を設けるのみであってもよい。
また、上記第4実施形態においては、上記第2実施形態と同様に窒素ガスが供給される窒素ガス室及び窒素ガス分散室を、混合ガス収集室とガス収集室との間のそれぞれに設ける構成としてもよい。
また、上記第4実施形態においては、半円筒状の整流部材325、326を用いたが、これに限られず、半筒状の整流部材であれば、断面形状が突形状(山形状、凸形状など)を始めとして、どのような形状であってもよい。
また、図3に示したように、第1実施形態においては、混合ガス供給管4をハウジング2の周囲に配置する構成としつつ内部の表面処理室21と接続させた構成としているが、この代わりに、図12に示したように、一端に混合ガス供給管404が接続され、他端部にループ状配管405(接続用配管)が接続されているような構成としてもよい。ここで、混合ガス供給管404は、混合ガス供給部と直接接続されている管404aと、管404aから二手に分かれ、第1実施形態の混合ガス分散室29、30と同様の上下2つの第1及び第2の混合ガス分散室(図示せず)にそれぞれ接続されている管404b、404c(第1の供給管、第2の供給管)とを有したものである。また、ループ状配管405は、一端が上側の混合ガス分散室、他端が下側の混合ガス分散室に接続されているものである。このような構成であれば、混合ガス供給管404とループ状配管405とが離れているとともに、上下の混合ガス分散室同士がループ状配管405によって導通しているので、上下の混合ガス分散室の内部圧力をほぼ均一に調整することができる。その結果として、より混合ガスの流れを整流した状態でフィルム401に当てることができ、フィルム401の表面改質をより均一に行うことができる。なお、上記構成の変更は、第2〜第4実施形態及び各変形例においても同様に可能である。また、図12に示した変形例においては、混合ガス供給管404とループ状配管405とが、ハウジング402両端の側部において上下の混合ガス分散室にそれぞれ接続されているが、これに限られず、ハウジング402両端付近において、図12に示した変形例と同様の効果を奏するように、上下の混合ガス分散室にそれぞれが接続されていればよい。