JP5301784B2 - スクリーン用フィルム - Google Patents

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Description

本発明はスクリーン用フィルムに関する。更に詳しくは、スクリーン用フィルムとして良好な散乱反射特性を有するとともに透過視認性を有し、黄色着色性の少ない色相に優れたスクリーン用フィルムに関する。
近年プロジェクションスクリーンが様々な場面で使用されるようになってきている。従来型のプロジェクションスクリーンは、プロジェクターからの投影光を強く散乱反射することで視野角依存性の少ない良好な投影画像を得るもので、高散乱タイプのプロジェクションスクリーンであるが、投影映像についての視認性とスクリーンの向こう側の映像の両方の視認性を備えるものではなく、主として投影映像の視認性を有するものが主流であった。
一方、コンビニエンスストアなどの商店の窓、デパートなどのショウウインドウ、イベントスペースなどに設置された透明パーティションなどに、その透過視認性を保持したまま、商品情報、広告などのさまざまなコンテンツを投影表示することは、きわめて有用なディスプレイ手法である。具体的な実施形態として、例えば、窓、ショウウインドウに透明なプロジェクションスクリーンを貼合し、プロジェクターからコンテンツ画像を投影することが、近年行われている。
また、自動車、バイク、飛行機、ヘリコプター、船舶などの乗り物には、運転者(操縦者)などに各種情報を知らせるための様々な機器が設けられている。例えば自動車には、走行速度、回転数、燃料残量、時間、走行距離などを知らせるための機器が設けられている。自動車には、この他、ナビゲーション情報を知らせるためのナビゲーション装置が設けられることもある。
自動車においては、これらの情報表示のための機器の多くは、フロントウィンドウ下方に配置されているため、運転中に運転者がフロントウィンドウ下方の機器を見て情報を読み取る時には、視点を比較的大きく移動させている。そこで、安全運転のために視点の移動距離を小さくすべく、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置と呼ばれる表示装置が提案されている。HUD装置としては、透明なプロジェクションスクリーンにプロジェクターからコンテンツ画像を投影して、情報を表示するものが提案されている。そのようなスクリーンをフロントウィンドウ下部のウィンドウガラス面や、ウィンドウ近くの運転席(操縦席)内部に配置することで、運転者は比較的小さな視点移動で情報を読み取ることができる。
上述のような使用形態の場合には、窓やショウウインドウ、透明パーティション、乗り物のフロントウインドウなどの透明基材が本来有している透過視認性を損なわずに、プロジェクションスクリーンとしての良好な散乱反射性を発現させる、という相反する特性が求められる。
投影光を強く散乱反射するタイプのフィルムとしては、例えば特許文献1において、少なくとも約0.05の複屈折率を有するポリマーの第1の相と該第1の相内に配置された第2の相とからなり、両相の屈折率差は第1の軸に沿って約0.05より大きく、第1の軸に直交した第2の軸に沿って約0.05より小さい屈折率特性を有するフィルムからなる偏光子が開示されている。しかしながら、引用文献1ではスクリーン用途、例えば窓やショウウインドウ、透明パーティション、乗り物のフロントウインドウなどに貼り合わせて用いられるプロジェクションスクリーンについて何も提案していない。
また特許文献2では、明るい環境光の下でも映像を鮮明に表示すると共に、光源光の映り込みを防止することができる投影スクリーンが提案されており、スクリーンを構成する一部材として特定の偏光成分の光を拡散反射し、一部の偏光成分の光は透過させる偏光選択反射層が開示されている。しかし特許文献2で用いられている分散相は液晶であり、アクリル系樹脂を含むことは開示されていない。またフィルムの反対側の映像の視認性については何も言及していない。
特許文献3には、直線偏光に対する散乱異方性を維持しつつ拡散反射光を抑制して液晶表示装置等の光拡散板や視認側の偏光板として用いることができる光学フィルムが開示されているが、スクリーン用途、例えば窓やショウウインドウ、透明パーティション、乗り物のフロントウインドウなどに貼り合わせて用いられるプロジェクションスクリーンについては何も検討されていない。
また特許文献4には、結晶性高分子化合物からなるマトリックス相と分散相とからなるフィルムで、マトリックス相と分散相との屈折率差が一方向(x方向)において0.05より大きく、x方向と直交するy方向および厚み方向(z方向)とを含むy−z面において、マトリックス相と分散相の屈折率がほぼ一致し、さらに散乱パラメーターが規定された散乱異方性高分子フィルムが提案されている。特許文献4によると、該フィルムを偏光バックライトとして用いた場合に、面内の色ずれが少ない散乱異方性フィルムが得られることが開示されている。一方、特許文献4では偏光バックライト用の散乱異方性フィルム以外の用途については具体的に提案されていない。
そこで良好な散乱反射特性を有するとともに透過視認性をも有するプロジェクションスクリーンなどのスクリーン用フィルムの開発が望まれているのが現状である。
特表2000−506990号公報 特開2005−107096号公報 特開2001−166112号公報 特開2003−43258号公報
本発明の目的は、スクリーン用フィルムとして良好な散乱反射特性を有するとともに透過視認性を有し、さらにスクリーンとして用いた場合に映像本来の色相を再現できる、黄色着色性の少ない色相に優れたスクリーン用フィルムを提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、光を投影するソースとしては、輝度や消費電力の少なさ等の観点で小型の液晶表示装置(LCD)を透過させた光を投影する、いわゆる液晶プロジェクター(LCP)が用いられており、LCPから出射する光は直線偏光であることから、散乱反射性はLCPから出射した直線偏光に対して有していればよいこと、一方で外光による視認性を高めるためには、該直線偏光と直交する直線偏光について透過性を高めることによってスクリーン用フィルム、例えばプロジェクションスクリーン用フィルムとして良好な散乱反射特性と透過視認性とを発現できることを見出した。そしてそのような特性を有するフィルムとして、マトリックス相及び分散相からなるフィルムであって一方向における両相の屈折率差が小さく、該方向と直交する方向における両相の屈折率差が大きいフィルムによって達成でき、またスクリーン用フィルムとしての透明性及び屈折率特性を調整しやすいことから、分散相を構成する樹脂としてマトリックス相に対して特定の屈折率関係にあり、しかも延伸による屈折率変化の小さいアクリル系樹脂を含めることを見出した。しかしながら、アクリル系樹脂に対して所定の屈折率を有するマトリックス相の熱可塑性樹脂は、概してアクリル樹脂よりも加工温度がかなり高い。このような耐熱温度の違いから、フィルム製膜工程においてペレットの乾燥、押出機内での溶融など様々な加熱工程でアクリル系樹脂が酸化劣化して得られたフィルムが着色してしまい、スクリーンにした時に映像本来の色相を再現できないことから、アクリル系樹脂の耐熱安定性を高める必要性を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、熱可塑性樹脂を含むマトリックス相及びアクリル系樹脂を含む分散相からなる高分子フィルムであって、マトリックス相の屈折率と分散相の屈折率とが下記式(1)(2)を満たし、
|(N+N)/2−(n+n)/2|≦0.05 ・・・(1)
|n−N|>0.05 ・・・(2)
(ここで、nはマトリックスの屈折率、Nは分散相の屈折率をそれぞれ表し、nはフィルム平面内でもっとも屈折率が高い方向のマトリックス屈折率、nはフィルム平面内でx方向と直交するy方向のマトリックス屈折率、nはフィルム厚み方向のマトリックス屈折率、Nはx方向の分散相屈折率、Nはフィルム平面内でx方向と直交するy方向の分散相屈折率、Nはフィルム厚み方向の分散相屈折率をそれぞれ表す)
高分子フィルム中にラジカル捕捉型安定剤還元剤型安定剤を含有し、マトリックス相に含まれる熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂またはシンジオタクチックポリスチレン樹脂であり、
該フィルムの反射法カラーb*値が、1.5未満であり、
y方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの全光線透過率が85%以上100%未満、平行光線透過率が60%以上100%未満であり、無偏光状態の光をフィルム面に垂直に入射した際の全光線反射率が0%を超えて30%未満である、
視認者側から投影される直線偏光に対して散乱反射性を有し、該直線偏光と直交する直線偏光について透過性を有する高透明スクリーン用フィルムによって達成される。
また本発明のスクリーン用フィルムは、好ましい態様として、y方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hyとx方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hxとの比R=Hy/Hxが0.0を超えて0.7未満であること、マトリックス相を構成する熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂であること、分散相がアクリル系樹脂を含む粒子の凝集体であること、かかる分散相がアクリル系樹脂を含むコアシェル型粒子の凝集体であること、または分散相がアクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であること、分散相を構成する物質の含有量がフィルムの重量を基準として0.01〜30重量%であること、ラジカル補足型安定剤、還元剤型安定剤からなる群が、フェノール系化合物、アミン系化合物、イオウ系化合物及びリン系化合物であること、ラジカル補足型安定剤、還元剤型安定剤からなる群から選ばれる安定剤の含有量がフィルムの重量を基準として0.00001〜5重量%であること、プロジェクションスクリーン用であること、の少なくともいずれか1つを具備するものも包含する。
本発明のスクリーン用フィルムは、視認者側から投影される投影偏光光を良好に散乱反射して視認性を高め、かつ視認者側とフィルムを介して反対側の映像も該フィルムを通じて視認できる透過視認性を有することから視認者側から両映像を良好に視認することができ、さらに黄色着色性の少ない色相に優れたフィルムであるため映像本来の色相を良好に再現できることから、プロジェクションスクリーンとして好適に使用することができる。具体的には建材用高透明プロジェクションスクリーン用またはヘッドアップディスプレイプロジェクションスクリーン用等のスクリーン用フィルムを提供することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のフィルムは、一方の光源、すなわち視認者側から投影される直線偏光に対して散乱反射性を有し、該直線偏光と直交する直線偏光について透過性を有することにより、視認者側から投影される映像、及びフィルムを介した視認者と反対側の映像の両映像について、視認者側から明瞭に視認することができるスクリーン用途に適したフィルムである。本発明のフィルムの具体的態様について、以下に詳述する。
(屈折率特性)
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含むマトリックス相及びアクリル系樹脂を含む分散相からなる構造を有し、かつマトリックス相の屈折率と分散相の屈折率とが下記式(1)、(2)
|(N+N)/2−(n+n)/2|≦0.05 ・・・(1)
|n−N|>0.05 ・・・(2)
(ここで、nはマトリックスの屈折率、Nは分散相の屈折率をそれぞれ表し、nはフィルム平面内でもっとも屈折率が高い方向のマトリックス屈折率、nはフィルム平面内でx方向と直交するy方向のマトリックス屈折率、nはフィルム厚み方向のマトリックス屈折率、Nはx方向の分散相屈折率、Nyはフィルム平面内でx方向と直交するy方向の分散相屈折率、Nzはフィルム厚み方向の分散相屈折率をそれぞれ表す)
を満たす必要がある。
本発明のフィルムは、x、y、z方向のマトリックス相および分散相の屈折率がそれぞれ式(1)、(2)を満たす場合に、x方向と平行な直線偏光を強く散乱し、一方y方向と平行な直線偏光は散乱せずに透過させるという光学特性を発現する。上式中、nはマトリックスの屈折率、Nは分散相の屈折率をそれぞれ表す。nはフィルム平面内でもっとも屈折率が高い方向のマトリックス屈折率を表し、本発明においては高延伸倍率方向と一致する。nはフィルム平面内でx方向と直交するy方向のマトリックス屈折率、nはフィルム厚み方向のマトリックス屈折率、Nはx方向の分散相屈折率、Nはフィルム平面内でx方向と直交するy方向の分散相屈折率、Nはフィルム厚み方向の分散相屈折率をそれぞれ表す。またx方向と平行な直線偏光は、x方向の振動面をもつ直線偏光と同義であり、y方向と平行な直線偏光はy方向の振動面をもつ直線偏光と同義である。また本発明のフィルムのx方向は、使用時には、一方の光源、すなわち視認者側から投影される直線偏光と平行に配置される。
上記式(1)において、|(N+N)/2−(ny+nz)/2|>0.05の場合は、yz平面内において、マトリックス相と分散相の屈折率差が大きいため、x方向以外での散乱が増加してしまい、y方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの全光線透過率が低くなるため、外光による映像をフィルムを通じて明瞭に視認できなくなる。なお|(N+N)/2−(ny+nz)/2|は、0.025以下であることが好ましい。
また上記式(2)において、|nx−Nx|≦0.05の場合は、x方向の散乱性能が不十分となり、視認者側から投影される直線偏光に対する散乱反射性に乏しくなるため、視認者側から投影される映像の視認性が低下する。|nx−Nx|は0.05を超える範囲で屈折率差が大きい方がよりx方向の散乱性能が高まり、好ましくは0.09以上である。一方、|nx−Nx|の上限は延伸倍率や機械特性などの点で0.35以下であることが好ましい。|nx−Nx|が大きすぎると後方散乱性が増加し、全光線透過率が低下することがある。
本発明のフィルムは、yz平面内でマトリックス相と分散相の屈折率の平均がほぼ一致し((1)式)、かつx方向においてマトリックス相と分散相の屈折率の差が大きく、差の絶対値が0.05を越えることにより、フィルム中を透過する光の中で多く存在するフィルム面内に対して斜め入射する偏光に対しても高い散乱異方性を示す。したがって、マトリックス相の屈折率は、yz平面内においては等方的に近いほど好ましく、下記式(3)を満足することがより好ましい。
0.95<ny/nz≦1.05 ・・・(3)
かかる屈折率特性は、本発明のマトリックス相および分散相を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融押出法により未延伸シートを作成し、該未延伸シートを後述する製膜条件で少なくとも一方向に延伸して一軸延伸に近い延伸を行うことにより得られる。さらに、マトリックス相として後述の熱可塑性樹脂を用い、また分散相としてアクリル系樹脂を含むことが好ましい。
(マトリックス相)
本発明のフィルムのマトリックス相を形成する熱可塑性樹脂は、フィルムを延伸したときの高分子鎖が配向しやすい結晶性あるいは半結晶性の透明高分子であることが好ましい。非晶性高分子の場合、フィルムを延伸する際の高分子鎖の配向が難しいため、後述する延伸方法に従って、例えば一方向に延伸を行った場合、未延伸方向(y方向、z方向)のマトリックス相と分散相との屈折率差が式(1)を満たしても、式(2)で表される延伸方向(x方向)におけるマトリックス相と分散相との屈折率差を満たすことが難しく、十分な散乱異方性を得ることが難しい。
結晶性あるいは半結晶性の透明高分子である熱可塑性樹脂として、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。かかる熱可塑性樹脂の中でも、製膜性および延伸による各方向の屈折率特性を制御しやすい点でポリエステルが好ましく、中でも耐熱性、透明性、強度に優れたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルが好ましい。
(分散相)
本発明のフィルムの分散相はアクリル系樹脂を含む分散相である。アクリル系樹脂は延伸による屈折率変化が小さいため、上述の種類のマトリックス相と組み合わせて少なくとも一方向に延伸して一軸延伸に近い延伸を行うことにより、式(1)及び式(2)を満たす屈折率特性を達成することができる。
本発明の分散相は、具体的にはアクリル系樹脂を含む粒子の凝集体またはアクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であることが好ましい。
アクリル系樹脂を含む粒子の凝集体としては、かかる粒子の1次粒子径が0.01〜10μmであることが好ましい。ここで1次粒子径とは粒子の最小単位の大きさを指す。1次粒子径が0.01以下の場合は散乱反射性能が生じない可能性が高く、10μmを越える場合は延伸時にボイドが生じやすくなる。かかる粒子の屈折率は、延伸後のマトリックス相のy方向、z方向の屈折率と同じであるか、あるいは延伸後のマトリックス相のy方向、z方向の屈折率との屈折率差が0.035以下であることがさらに好ましい。
アクリル系樹脂を含む粒子の具体例として、(メタ)アクリレートなどといったアクリル系樹脂粒子、(メタ)アクリレート−スチレン共重合体などのアクリレート系共重合体の粒子、アクリル−アクリルコアシェル型粒子、アクリル−スチレン−ブタジエンコアシェル型粒子などが挙げられる。特にコアシェル型粒子は、ゴム弾性を有するため延伸によるボイド生成をさらに抑制することができ、本発明の諸光学特性を得やすい。
例えばマトリックス相としてポリエチレンナフタレートを用いた場合、分散相に用いる粒子の種類としてはメタクリレート−スチレン共重合体を例示できる。またマトリックス相がポリエチレンテレフタレートの場合、分散相に用いる粒子の種類としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、アクリレート−スチレン共重合体粒子、メタクリレート−スチレン共重合体粒子、アクリル−スチレン−ブタジエンコアシェル型粒子が例示され、特にコア部がスチレン−ブタジエン共重合樹脂、シェル部が共重合アクリル系樹脂からなるコアシェル型粒子が好ましい。
分散相を構成する成分の他の態様として、アクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂が挙げられ、高透明でマトリックス相を形成する熱可塑性樹脂と非相溶であれば特に制限されないが、延伸後のマトリックス相のy方向、z方向の屈折率と同じであるか、あるいは延伸後のマトリックス相のy方向、z方向の屈折率との屈折率差が0.035以下であることがさらに好ましい。
例えばマトリックス相としてポリエチレンナフタレートを用いた場合、分散相に用いる熱可塑性樹脂としては、メタクリレート−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体を例示できる。またマトリックス相がポリエチレンテレフタレートの場合、分散相に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、アクリレート−スチレン共重合体、メタクリレート−スチレン共重合体を例示できる。
本発明のアクリル系樹脂を含む分散相は、分散相がフィルム延伸方向に変形することによりボイドが生じない点で、特に粒子の凝集体で構成されることが好ましい。特に1次粒径がサブミクロンオーダーの粒子の場合、表面エネルギーの影響で凝集体になりやすく、フィルムを延伸したときにその凝集体が変形することによりボイドが発生しにくくなるため、本発明の屈折率特性、光線透過率、ヘーズを得やすい。また粒子の凝集体は熱可塑性樹脂に較べて分散相のサイズコントロールがしやすいため、散乱強度をコントロールしやすく、また波長依存性をなくすことができ、散乱光の着色を防ぐことができる。
フィルムの分散相の含有量は、フィルムの重量を基準として0.01〜30重量%であることが好ましい。分散相の含有量はかかる範囲内において増加するに従い、散乱光を多重に散乱して散乱反射光が正面方向になりやすくなる。また分散相の含有量はかかる範囲内において減少するに従い、多重散乱を減らしシャープな反射パターンを得ることが可能となる。
ただし分散相の含有量が上限を超える場合は、過度に多重散乱するため偏光分離効果が低下する傾向にある。また分散相の含有量が下限に満たない場合は散乱が著しく少なく、この場合も偏光分離性能を確保することが難しくなる。分散相の含有量は、ウインドウ等のスクリーン用フィルムとしての透過視認性を確保する目的から、下限はさらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、上限は好ましくは28重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。
本発明のフィルムの分散相は、さらに下記式(4)を満たしていることがより好ましい。
10≦α≦200 ・・・(4)
(上式中、dは分散相の長径の平均値、λは可視光の波長である。ここでαはπ・d/λで表される散乱パラメータを表す。)
本発明のフィルムは、好ましくは少なくとも一方向に延伸して一軸延伸に近い延伸を行うことにより得られることから、本発明の分散相は、延伸方向に長軸を有する楕円球状(以下島状と称することがある)であることが好ましい。上式(4)中、dは高延伸倍率方向、すなわちx方向における分散相の粒径を指し、楕円球状の長径に相等する。
一般に散乱効率には波長依存性があるため、例えばサブミクロンオーダーの非常に小さい粒子の場合、短波長の光ほど散乱されやすい。したがって、光の入射角の違いによりフィルム中の光路長が異なる際に散乱光の波長分布が異なってくる可能性があり、甚だしい場合にはスクリーン上の投影範囲内で色味がずれる(色ずれ)結果となる。色ずれは、特にナビゲーション装置のような比較的複雑な画像を扱う場合には認識しずらくなることがある。そこで散乱パラメータαが上式(4)の範囲を満たすことが好ましい。
分散相の長径の平均値は1〜100μmであることが好ましい。長径の平均値は、より好ましくは1〜50μmである。長径の平均径が下限に満たない場合は、光学的な作用を生じないことがあり、また上限を超える場合は散乱の異方性が不十分となることがある。
(ラジカル捕捉型安定剤、還元剤型安定剤)
本発明のフィルムは、マトリックス相および分散相を含む熱可塑性樹脂組成物中に、ラジカル捕捉型安定剤、還元剤型安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の安定剤を含有する必要がある。
本発明の分散相はアクリル系樹脂を必須成分として含むため、マトリックス相との耐熱温度の違いからフィルム製膜工程においてペレットの乾燥、押出機内での溶融など様々な加熱工程でアクリル系樹脂が酸化劣化しやすい。そこでフィルムが着色するのを抑制するためにアクリル系樹脂の耐熱安定性を高める必要がある。アクリル系樹脂の耐熱安定性を高めてフィルムの着色を抑制するために、ラジカル捕捉型安定剤、還元剤型安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の安定剤を用いるものである。
ラジカル捕捉型安定剤は、具体的には、発生したラジカルを安定剤分子から1電子授受して反応性の低い不対電子のない化学種とし、自動酸化の連鎖反応を停止する機能を有する安定剤を指し、安定剤自らはラジカル捕捉後反応性の低い安定なラジカルとなる。
また、還元剤型安定剤は、自動酸化の過程で発生する空気中酸素に起因するハイドロパーオキサイド基を還元し、自動酸化の連鎖反応を停止する機能を有する安定剤を指す。多くの場合、ハイドロパーオキサイド基の酸素1原子の奪取により還元する。
ラジカル捕捉型安定剤及び還元剤型安定剤は、これらの機能を有しているものであれば特に限定されないが、一般に入手しやすく好ましいものとして、フェノール系化合物、アミン系化合物、イオウ系化合物、リン系化合物を例示することができる。特に、これらの中では、ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤、II価イオウ系化合物、III価リン系化合物が好ましく、ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤と、II価イオウ系化合物及び/又はIII価リン系化合物の併用が好ましい。
フェノール系化合物の例として、具体的にはペンタエリスリチル−テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが例示され、これらの中でもペンタエリスリチル−テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
またアミン系化合物として、ヒンダードアミン類が挙げられ、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケートを基本構造に有しHALSと称される化合物が例示される。
II価イオウ系化合物として、チオエーテル系化合物が例示され、具体的にはテトラエステル型高分子量のチオエーテル化合物などが挙げられる。
リン系化合物として、ホスホン酸、ホスフェート系化合物、ホスファイト系化合物などが挙げられるが、これらの中でもIII価リン系化合物を用いることができる。
本発明のフィルムにおける該安定剤の含有量は、フィルムの重量を基準として0.00001〜5重量%であることが好ましく、より好ましい下限は0.00005重量%以上、さらに好ましくは0.0001重量%以上である。また該安定剤の含有量の好ましい上限は1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。これらの安定剤の含有量が下限に満たない場合、安定剤効果が十分に発現しないため、フィルムの着色を抑制できず、映像本来の色相の再現性が十分にできないことがある。一方、これらの安定剤の含有量が上限を超える場合、安定剤の凝集が生じて光透過性能が低下することがある。
(その他成分)
本発明のフィルムには、本発明の趣旨を超えない範囲で紫外線吸収剤、加工助剤、難燃剤、帯電防止剤等を添加することができる。
(フィルム色相)
本発明のフィルムは、反射法により測定されるカラーb*値が、1.5未満であることが好ましい。さらに好ましいb*値は、1.2未満、さらには1.0未満である。b*値が上限を超える場合、スクリーンとして用いた際に、スクリーン自体が黄色味を帯びており、黄ばんだ印象を与えるのみならず、映像本来の色相の再現性が十分でないことがある。b*値はより小さいほど黄色未がなく優れているが、好ましい下限は0.0である。
これらのb*値は、上述のラジカル捕捉型安定剤、還元剤型安定剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の安定剤をフィルム中に含有せしめることにより達成される。
なお本発明におけるカラーb*値は、日本電色工業(株)製のSZ−II型の色差計を用いて標準白板の上にフィルムを重ねて反射法で測定し、得られたデータをL*a*b*値で表した場合のb*を指す。
(光線透過率及びヘーズ値)
本発明のフィルムは、屈折率特性が上式(1)(2)を満たすだけでなく、全光線透過率、平行光線透過率およびヘーズ値がそれぞれ後述の特性を有することが好ましい。
すなわち本発明のフィルムは、y方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの全光線透過率が45%以上100%未満であることが好ましい。ここで全光線透過率とは、JISK7105に準拠して、積分球式測定装置を用いて全光線透過量を測定することによって求められる。y方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの全光線透過率がかかる範囲を満たすことにより、透過視認性が高まり、フィルムを介して視認者側と反対側の映像について、フィルムを通じて明瞭に視認することができる。
また本発明のフィルムは、y方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hyとx方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hxとの比R=Hy/Hxが0.0を超えて0.7未満であることが好ましい。ここで、ヘーズ値とは、JISK7105に準拠して下記式により求められる。
H=(拡散透過率/全光線透過率)×100
なおy方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hy、x方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hxは、それぞれの方向の直線偏光について上式により求められる。
ヘーズ値の偏光成分ごとの比Rが0.7以上の場合は、x方向のマトリックス相と分散相との屈折率差が式(2)より小さくなるか、および/または、yz平面内においてマトリックス相と分散相の屈折率差が式(1)より大きくなるため、x方向と平行な直線偏光の散乱性能が不十分となったり、y方向と平行な直線偏光の透過性能が不十分となることがあり、十分な偏光分離性能が得られないことがある。かかるヘーズ値特性は、マトリックス相と分散相のx方向、y方向、z方向の屈折率がそれぞれ式(1)、式(2)を満たすこと、すなわちマトリックス相と分散相の屈折率特性に着目した両材料の組み合わせと、後述する製膜条件で少なくとも一方向に延伸して一軸延伸に近い延伸を行うことにより得られる。
また本発明のフィルムは、y方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの全光線透過率が85%以上100%未満であることがさらに好ましい。該全光線透過率が85%以上であることにより、透過視認性がさらに高まり、フィルムを介した視認者側と反対側の映像について、フィルムを通じて明瞭に視認することができ、高透明スクリーン用フィルムとして特に好適である。
本発明のフィルムは、y方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの全光線透過率の下限が85%である場合に、同時にy方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの平行光線透過率が60%以上100%未満であることが好ましい。ここで平行光線透過率とは、入射光線と同一正線上で測定される平行光線透過率であり、JISK7105に準拠して、全光線透過率から拡散透過率を差し引いて求められる。該平行光線透過率がかかる範囲にあることにより、さらに透過視認性の明瞭性が高まる。また散乱光がより少なくなるため、コントラストなどが高まり、より明瞭に映像を視認できるという効果も併せ持つ。
かかる光線透過率は、マトリックス相と分散相のy方向、z方向の屈折率特性が式(1)を満たすこと、および分散相の含有量がフィルムの重量を基準として0.01〜30重量%であることによって達成される。
(光線反射率)
本発明のフィルムは、スクリーン用途の中でもフィルムを介して視認者側と反対側の映像についての透過視認性をより求められる高透明スクリーン用途に用いる場合は、無偏光状態の光をフィルム面に垂直に入射した際の全光線反射率が0%を超えて30%未満であることが好ましい。ここで全光線反射率とは、JISK7105に準拠して求められ、入射光に対する鏡面反射率と拡散反射率とを合わせたものである。また無偏光状態とは、該測定において用いられる光源をそのまま用いることを意味する。
高透明タイプのスクリーン用途に用いる場合には、かかる全光線反射率は、30%未満の範囲内で小さければ小さい程、透過視認性を高めることができる。一方、該全光線反射率の下限は3%であることが好ましく、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上である。
また本発明のフィルムは、スクリーン用途の中でも視認者側から投影される映像の反射視認性がより求められる高散乱タイプのスクリーン用途に用いる場合は、無偏光状態の光をフィルム面に垂直に入射した際の全光線反射率が30%以上であることが好ましい。
高散乱タイプのスクリーン用途に用いる場合には、かかる全光線反射率の上限は50%であることが好ましい。全光線反射率が上限を超えるほど強くなると透過性能が失われ、透過視認性の機能が失われるためである。
なお、高散乱タイプのスクリーンは高透明タイプのスクリーンに較べると反射視認性をより高めるために、高透明タイプのスクリーンよりも多少透過視認性が低いことがある。
該全光線反射率の調整は分散相の含有量によって制御することができ、含有量が少ない程、該全光線反射率を小さくすることができ、一方含有量が多い程、該全光線反射率を大きくすることができる。
また、これらの光線透過率及び光線反射率特性は、フィルムの一方の面から見た場合に限られず、フィルム両面について同様の特性が得られる。
(熱寸法安定性)
本発明のフィルムは、120℃、30分間加熱処理後の熱収縮率が、x方向及びy方向のいずれも10%未満であることが好ましい。フィルムの熱収縮率はx方向及びy方向のいずれも5%未満であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは、マトリックス相および分散相を含む組成物を溶融押出し、固化成形したシートを一軸延伸に近い延伸を施したものであるが、一般的に、延伸されたフィルム中の配向した分子鎖のうち、非結晶性のものは、マトリックス相のガラス転移温度以上においては、その配向を解いてランダム状態になりやすいため収縮が起き易い。
本発明のフィルムは、透明基材と貼り合わせる加工や、反射防止層その他のフィルムを更に加工する工程で高温加工を行うことがあり、工程中の被熱により上記範囲を超える収縮が生じると散乱反射特性と透過視認特性とが変化してしまい、スクリーン用フィルムとして安定した光学機能が発現しなくなることがある。これらの熱寸法安定性は、得られたフィルムに熱固定処理を行うことにより達成される。
(機械特性)
本発明のフィルムは、フィルム平面内における延伸倍率の高い方向、すなわちx方向のフィルム破断強度が150MPa以上であり、該方向に直交した方向、すなわちy方向のフィルムの破断強度が15MPa以上であることが好ましい。
本発明のフィルムは、上記の光学特性を発現させるために一軸延伸に近い延伸を施すが、延伸倍率の高くない方向(y方向)は分子鎖の配向の割合が少ないため強度が低くなり、工程中のフィルム破断などによる生産性の低下が起きる可能性がある。
フィルム破断強度は、より好ましくは延伸倍率の高い方向(x方向)のフィルム破断強度が160MPa以上、該方向に直交した方向(y方向)のフィルム破断強度が18MPa以上である。
本発明のフィルムにおけるこれらの機械特性は、後述するフィルムの製造方法により達成される。
<フィルムの製膜方法>
(溶融押出キャスティング)
本発明のフィルムは、マトリックス相及び分散相の構成成分を含む樹脂組成物を溶融押出キャスティングにより製膜した後、少なくとも一方向に延伸して一軸延伸に近い延伸を行うことにより得られる。
溶融押出には、従来公知の手法を用いることができる。具体的には、乾燥した前述の樹脂組成物ペレットを押出機に供給し、Tダイなどのスリットダイより溶融樹脂を押出す方法や、樹脂ペレットを供給した押出機にベント装置をセットし、溶融押出時に水分や発生する各種気体成分を排出しながら、同じくTダイなどのスリットダイより溶融樹脂を押出す方法が挙げられる。
スリットダイより押出された溶融樹脂は、キャストされ冷却固化させる。冷却固化の方法は、従来公知のいずれの方法をとっても良いが、回転する冷却用ロール上に溶融樹脂をキャストし、シート化する方法が例示される。
冷却用ロールの表面温度は、マトリックス相を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)に対して、(Tg−100)℃〜(Tg+20)℃の範囲に設定するのが好ましい。また冷却用ロールの表面温度は、マトリックス相を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)に対して、(Tg−30)℃〜(Tg−5)℃の範囲に設定するのがさらに好ましい。冷却ロールの表面温度が上限を超える場合、溶融樹脂が固化する前に該ロールに粘着することがある。また冷却ロールの表面温度が下限に満たない場合、固化が速すぎて該ロール表面を滑ってしまい、得られるシートの平面性が損なわれることがある。
冷却ロールへのキャスティングの際に、溶融樹脂が冷却ロール上へ着地する位置近傍に金属ワイヤーを張り、電流を流すことで静電場を発生させ樹脂を帯電させて、冷却ロールの金属表面上への密着性を高めることも、フィルムの平面性を高める観点から有効である。その際、樹脂組成物中に、本発明の趣旨を超えない範囲で、電解質性物質を添加してもよい。
(延伸)
溶融押出キャスティングにより得られたシート状物は、少なくとも一方向に延伸して一軸延伸に近い延伸を行うことにより、散乱フィルムの光学特性などを、本発明の目的と合致させることができる。
かかる延伸の方法は、逐次延伸機または同時延伸機を用いて行うことができる。また高い生産性を得るためには、散乱フィルムは、上述のシート製造に引続く連続的工程にて製造されることが好ましい。以下、延伸方法を例示する。
例えば、縦方向(製膜方向、長手方向、MDと記載することがある。)に延伸する場合は、2個以上のロールの周速差を用いて延伸する方法や、オーブン中で延伸する方法が挙げられる。
ロールを用いる延伸方法において、シート状物(未延伸フィルム)の加熱方法は、熱媒を通したロールで誘導加熱する方法、赤外加熱ヒーターなどで外部から加熱する方法が例示され、一つないし複数の方法をとってよい。またオーブン中で延伸する方法において、シート状物(未延伸フィルム)の加熱方法は、フィルム両端をクリップなどにより把持するテンター式オーブンにてクリップ間隔を延伸倍率にしたがって広げる方法、オーブン中にロール系を設置しフィルムをパスさせて延伸する方法、オーブン内で幅方向をまったくフリーにして入側と出側の速度差のみで延伸する方法が例示され、一つないし複数の方法をとってよい。
また、幅方向(製膜方向と垂直な方向、横方向、TDと記載することがある。)に延伸する場合は、クリップなどにより端部を把持する方式のテンターオーブン中で入側と出側のクリップ搬送レール間隔に差をつけて延伸する方法が挙げられる。
(延伸温度)
本発明におけるフィルム延伸温度(Td)は、Tg〜(Tg+40℃)の温度とするのが好ましい。フィルムの延伸温度がTg(マトリックス相の熱可塑性樹脂のガラス転移点温度)に満たない場合は、延伸自体が困難であり、一方延伸温度が(Tg+40℃)を超える場合は、延伸に要する応力が極端に低くなってしまうため、分子鎖の配向が不足し、得られたフィルムの高延伸方向(x方向)におけるマトリックス相と分散相との屈折率バランスがとりにくくなったり、機械特性、特に破断強度が確保できなくなることがある。
延伸温度のより好ましい範囲は、Tg〜(Tg+20℃)である。
(延伸倍率)
延伸倍率のコントロールは、一軸延伸に近い延伸フィルムとし、本発明の屈折率特性を発現する上で最も重要である。
延伸倍率は、RMD>RTDまたはRTD>RMDであることが好ましい。RMDは縦延伸倍率、RTDは横延伸倍率を示す。これは、RMDとRTDとが等しくなく、どちらか一方の延伸倍率が他方の延伸倍率よりも大きいことを意味する。また、これは必ずしも二軸延伸のみを意味するものではなく、延伸直交方向がフリーの状態での一軸延伸により直交方向が実質的に収縮しRMD>RTDの場合のRTD、あるいはRTD>RMDの場合のRMDの値が1未満になる場合、さらには、テンター方式延伸装置などを用いてむしろ積極的に直交方向を収縮させる場合をも包含する。
延伸倍率は、さらに好ましくは、RMD>RTDの場合にはRMD/RTDが1.0を超え7.0以下、かつRTDが0.7以上2.0以下の範囲、またはRTD>RMDの場合にはRTD/RMDが1.0を超え7.0以下、かつRMDが0.7以上2.0以下の範囲である。
MD/RTDまたはRTD/RMDが1.0、すなわちRMD=RTDの場合は、得られたフィルムの高延伸方向(x方向)におけるマトリックス相と分散相との屈折率の関係は式(1)(2)の関係を満足することができない。
MD>RTDの場合のRMD/RTD、あるいはRTD>RMDの場合のRTD/RMDが、7.0を超える場合、本発明の屈折率特性が得られなくなり、また延伸倍率の低い方向の機械特性が低下して脆くなる可能性がある。
MD>RTDの場合のRTD、あるいはRTD>RMDの場合のRMDが0.7に満たない場合、すなわち延伸直交方向がフリーな場合に、延伸直交方向が極端に収縮すると、フィルムの平面性や均一性を損なうばかりか、この場合も延伸倍率の低い方向の機械特性が低下し脆くなる可能性がある。一方、RMD>RTDの場合のRTD、あるいはRTD>RMDの場合のRMDが2.0を超える場合はnzが小さくなりすぎ、マトリックス相の屈折率バランスのうち、特にny/nzの値が本発明に規定した範囲にならないことがある。
延伸倍率の相互関係は、より好ましくはRMD>RTDの場合にはRMD/RTDが、またはRTD>RMDの場合にはRTD/RMDが3.0以上5.5以下である。またそれぞれの延伸方向の好ましい範囲は、RMD>RTDの場合にはRMDが3.0以上6.0以下、かつRTDが0.95以上1.75以下の範囲、またはRTD>RMDの場合にはRTDが3.0以上6.0以下、かつRMDが0.95以上1.75以下の範囲である。
(延伸速度)
延伸速度は5〜500000%/分であることが好ましい。
(熱固定処理)
本発明のフィルムの製造工程においては、熱寸法安定性を付与させるために、熱固定処理を施すことが必要である。熱固定処理は、延伸したフィルムに一定の張力をかけて寸法を所定の条件にて固定した状態で、樹脂が十分結晶化しうる温度で熱処理を行うものである。
具体的な手法として多く用いられるものとして、テンター式オーブンにて延伸した後、クリップ把持にて寸法を所定の値に固定したまま、熱処理温度に設定したゾーンにフィルムを導く方法を例示することができる。寸法固定する条件として、延伸直後の幅を保つ方法、幅を縮めて弛緩させる方法、または逆に幅を広げて更なる緊張を与える方法、のいずれの方法を用いてもよく、所望する物性により適宜選択すればよい。また縦方向の寸法安定性を向上させるためには、上記熱処理ゾーン内で、フィルムを把持したクリップの間隔を所定の値に制御する方法、熱処理ゾーン中にてフィルムをクリップ把持から開放し、入/出側の速度比微調整により所望する物性を得る方法、などを例示することができる。
該熱処理温度は、マトリックス相の熱可塑性樹脂の結晶融解温度より20℃以上低い温度で行う必要があり、30℃以上低いことが好ましい。熱処理による結晶化は、被熱による樹脂中分子鎖運動の活性化とそれに引続く結晶化との共奏過程であり、処理温度が高すぎると、分子鎖運動が活発になりすぎて延伸により生成した配向も損なわれてしまうため、本発明に規定する屈折率特性が得られなくなるためである。
必要に応じ、この熱固定処理に加え、熱弛緩処理などの更なる熱寸法安定化処理を施してもよい。
(フィルムの後加工)
延伸したフィルムは、他基材との貼合時の接着性向上などの必要に応じて、表面活性化処理(コーティング、コロナ放電、プラズマ処理など)などの後加工を施しても良い。この後加工はフィルム延伸工程中に行っても良く、また別工程で行っても良い。
(スクリーン用途)
本発明のフィルムは良好な透過視認性と良好な散乱反射性とを有するため、各種のスクリーン用途に用いることができ、具体的には高透明スクリーン用途、高散乱スクリーン用途として用いることができる。また具体的なスクリーン用途としてプロジェクションスクリーン用途が挙げられ、視認者と表示装置の位置関係により、透過型プロジェクションスクリーン(リアプロジェクションスクリーンと称することがある)、反射型プロジェクションスクリーン(フロントプロジェクションスクリーンと称することがある)のいずれにも用いることができる。
なお本発明における高透明スクリーンは、前述の全光線反射率が0%を超えて30%未満である、より透過視認性の高いスクリーンであり、透過型プロジェクションスクリーン、反射型プロジェクションスクリーンのいずれにも使用することができる。また本発明における高散乱スクリーンは、前述の全光線反射率が30%以上である、より散乱反射性の高いスクリーンであり、透過型プロジェクションスクリーン、反射型プロジェクションスクリーンのいずれにも使用することができる。
(高透明スクリーン用途)
本発明のフィルムは、良好な透過視認性と良好な散乱反射性とを有するため、各種の高透明スクリーン用フィルムとして好適に使用することができる。具体的には本発明のフィルムの少なくとも片面に粘着剤または接着剤加工を施し、ガラス板、透明樹脂シートなどの透明基材に貼合して、窓、パーティションなどの透明建材として用いることができ、広告、案内・情報、芸術、装飾などの映像コンテンツを投影する透過型プロジェクションスクリーン、反射型プロジェクションスクリーンとして使うことができる。
また本発明のフィルムは、良好な透過視認性と良好な散乱反射性とをするため、HUDプロジェクションスクリーン機能を持った自動車などのフロントウィンドウ用の合せガラス用中間膜として好適に使用することができる。具体的には本発明のフィルムの両面にポリビニルブチラールやエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂のような公知の合せガラス中間膜用素材を配し、2枚のガラスの間に挿入して圧着貼合する方法および使用形態が例示される。
(高散乱スクリーン用途)
本発明のフィルムは、良好な散乱反射性にもかかわらず、散乱させたくない外光のうちのほぼ半分以上を透過軸偏光成分として透過させるため、各種の高散乱タイプの透過型プロジェクションスクリーン用フィルム、反射型プロジェクションスクリーン用フィルムとして好適に使用することができる。具体的には本発明のフィルムの片面に、黒色層などの光吸収層を積層させることにより、本発明のフィルムを透過した不必要な外光を吸収させることができ、コントラストのきわめて高い投影画像を得ることができる。屋外などの明所において、高コントラストが要求される場面では、きわめて有用なスクリーンを提供することができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量%および重量%を意味する。
(1)屈折率
得られたフィルムを用い、波長473nm、633nm、830nmの3種のレーザー光にて、屈折率計(Metricon社製、プリズムカプラ)を用いて測定された、3方向における屈折率nx、ny、nzを、下記のCauchyの屈折率波長分散フィッティング式
ni(λ)=a/λ+b/λ+c
(ここで、ni(λ):波長λ(nm)における各方向の屈折率(i=x、y、z)、a、b、c:定数、をそれぞれ示す。添字j(j=1,2)は、本測定時に観測される2種類の屈折率値に便宜的につけた番号である)
に代入し、得られた3つの式からa、b、cの定数を求め、しかる後に589.3nmにおける屈折率(nx(589.3)、ny(589.3)、nz(589.3))を算出した。
各方向それぞれにおいて、niおよびniのいずれかがマトリックス相の屈折率n、他方が分散相の屈折率Nであるが、これらは、下記の方法により各相単独の屈折率n’i、N’を測定し、これに近い値を選択することにより判別した。
(1−1)マトリックス相の屈折率
各実施例、比較例で使用したマトリックス相の熱可塑性樹脂のみを用いて、各実施例、比較例と同じ条件でフィルムを作成し、上記(1)と同じ方法にて3方向における屈折率n’i(i=x、y、z)を測定した。
(1−2)分散相の屈折率
(1−2a)分散相が粒子の凝集体からなる場合
浸液法にて、粒子の凝集体単独の屈折率N’を直接測定した。屈折率が既知の標準液を準備し、スライドガラスとカバーガラス間に少量のサンプル粉体とともに挟んで液膜とし、アナライザーをはずした偏光顕微鏡にセットする。光源としてNaD線を用い、光量を絞った状態で観察すると、サンプルと標準液の屈折率が異なる場合、サンプル粉体の周囲にBecke線が観測される。顕微鏡のサンプルステージを下から上にごくわずかに動かした際に、サンプルの屈折率の方が標準液のものより高い場合はBecke線がサンプル粉体から標準液の方に移動し、逆の場合は、Becke線は逆方向に移動する。各実施例、比較例で使用した分散相の種類に応じて順次標準液の屈折率を変えながら測定を繰り返し、Becke線が観測されなくなったときの標準液の屈折率を分散相単独の屈折率N’とした。
(1−2b)分散相が熱可塑性樹脂である場合
熱可塑性樹脂単独の板状サンプルを作成し、上記(1)と同じ方法にて3方向における屈折率N’i(i=x、y、z)を測定し、さらにこれらを平均して分散相単独の屈折率N’を算出した。
熱可塑性樹脂単独の板状サンプルは、熱可塑性樹脂ペレット少量を2枚のテフロン(登録商標)シート間に挟んで加熱ステージのついたプレス機にセットし、該熱可塑性樹脂の熱分解温度より10℃以上低く、かつガラス転移温度または融点より十分高い温度にて、0.5MPa、1分プレスした後、ガラス転移温度以下に急冷して作成した。
(2)フィルムの色相
表面平滑な標準白板(x=93.03、y=94.95、z=112.32)の上に、得られたフィルムを重ね、該フィルム面の色相を、色差計(日本電色工業(株)製、SZ−II型)を用いて反射法にて測定した。得られたデータをL*a*b*にて表現し、b*値を得た。
(3)フィルムの光線透過率(全光線透過率、平行光線透過率)、ヘーズ
市販の偏光フィルムを、その透過軸が得られたフィルムの最大屈折率方向およびその直交方向と平行になるように重ね合せて、それぞれの積層サンプルを作成した。
得られた積層サンプルを、ヘーズメーター(日本精密光学(株)製、POICヘーズメーター SEP−HS−D1)内に、偏光フィルムを光源側に、かつ偏光フィルムの透過軸方向が鉛直となるようにセットし、JISK7105に準拠して、全光線透過率(%)、平行光線透過率(%)、ヘーズ(%)を測定した。
(4)フィルムの全光線反射率
得られたフィルムを用い、JISK7105に準拠して、全光線反射率(%)を測定した。
(5)スクリーン視認性
厚さ3mm、寸法1100mm×900mmの2枚のフロートガラス板を対向させ、該ガラス板と同寸法の以下3枚の中間膜を重ね合せてガラス板間に挿入した。
第一中間膜:エチレンビニルアセテート共重合体(積水化学製 S−LEC EN Film フィルム厚み0.4mm)
第二中間膜:下記実施例および比較例で得られたフィルム(フィルム厚み0.1mm)
第三中間膜:エチレンビニルアセテート共重合体(積水化学製 S−LEC EN Film フィルム厚み0.4mm)
これらの3枚の中間膜を挿入したガラス板を700mmHg、120℃の条件下で熱圧着し、合せガラスとした。
明るい室内にて、得られた合せガラスを垂直に設置し、手前45°下方より、市販の液晶プロジェクターから画像(黒字に緑色の文字)を投影し、同時に、2m先の物体を観察した。
一方、参照サンプルとして下記の2種類のものを用い、本実施例及び比較例を用いて得られた合せガラスと同様、明るい室内にて参照サンプルを垂直に設置し、手前45°下方より、市販の液晶プロジェクターから画像(黒字に緑色の文字)を投影し、同時に、2m先の物体を観察した。
本実施例及び比較例を用いて得られた合せガラスとそれぞれの参照サンプルについて、下記の基準にて対比評価を行った。
参照サンプル(1): 第二中間膜を用いない以外は上記方法に従って作成した合せガラス
参照サンプル(2): 市販の白色スクリーン(シワ、たるみの無いよう垂直に設置する)
(参照サンプル(1)対比評価) ・・・透過視認性
◎: 参照サンプル(1)と較べて投影画像がより鮮鋭に認識でき、かつ2m先の物体も十分視認できる。
○: 参照サンプル(1)と較べて投影画像をより鮮鋭に認識できるものの、2m先の物体については視認可能だが鮮鋭さに欠ける。
×: 投影画像について参照サンプル(1)と同様に殆ど認識できない、および/または2m先の物体を視認できない。
(参照サンプル(2)対比評価) ・・・反射視認性
◎: 投影画像について参照サンプル(2)と同等以上に鮮明に見える。
○: 投影画像の認識は可能だが参照サンプル(2)よりは鮮鋭さに欠ける。
×: 投影画像が殆ど認識できない。
(6)スクリーンの色相再現性
スクリーンとして、下記実施例および比較例で得られたフィルムをシワ、タルミなく展張したものを垂直に設置し、手前45°下方より、市販の液晶プロジェクターから、画像として全面白表示をスクリーンに投影し、市販の輝度計(TOPCON社製BM−7)を用いてスクリーンのb*値を測定し、下記の基準で判断した。
○: b*値が1.0未満
×: b*値が1.0以上
[実施例1]
固有粘度(オルトクロロフェノール、25℃)0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)のペレット96.94重量%を170℃で3時間乾燥後、分散相を構成する成分としてコアシェル型のアクリル粒子(ロームアンドハース製、商品名「パラロイドBTA712」,コア部:ジビニルベンゼン架橋スチレン−ブタジエン共重合樹脂/シェル部:共重合アクリル系樹脂)3.0重量%、フェノール系安定剤としてチバスペシャリティーケミカルズ製の商品名「イルガノックス1076」(ジーt−ブチルフェノール系化合物)0.03重量%、及びイオウ系安定剤として旭電化製の商品名「アデカスタブAO412S」(チオエーテル系化合物)0.03重量%を混合し、次に一軸混練押出機に供給し、溶融温度285℃で溶融混練させてフィルターで濾過し、スリットダイから押出した。
この溶融物を表面温度をPETのTgより低くした回転冷却ドラム上に押出し、厚み400μmの未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムをテンターに供給し、縦方向には延伸することなく、85℃の温度条件で幅方向に500%/分の延伸速度で4.0倍に延伸し、引き続き、テンター内で定幅を保ったまま、150℃にて1分間の熱固定処理を施し、100μm厚みの延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムはアクリル粒子が凝集状態で分散しており、良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に透過視認性に優れていた。また得られたフィルムは黄色着色性が小さく、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができ、スクリーンとして適していた。
参考例1
樹脂組成物としてPETペレット84.7重量%、コアシェル型のアクリル粒子15.0重量%、フェノール系安定剤0.15重量%、及びイオウ系安定剤0.15重量%に混合比率を変えた以外は、実施例1と同様の操作を繰返し、延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムは良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に散乱反射性に優れていた。また得られたフィルムは黄色着色性が小さく、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができ、スクリーンとして適していた。
[実施例
固有粘度(オルトクロロフェノール、25℃)0.6dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレット69.4重量%を170℃で3時間乾燥後、分散相を構成する成分としてコアシェル型のアクリル粒子(ロームアンドハース製、商品名「パラロイドBTA712」,コア部:ジビニルベンゼン架橋スチレン−ブタジエン共重合樹脂/シェル部:共重合アクリル系樹脂)30.0重量%、フェノール系安定剤としてチバスペシャリティーケミカルズ製の商品名「イルガノックス1076」(ジーt−ブチルフェノール系化合物)0.3重量%、及びイオウ系安定剤として旭電化製の商品名「アデカスタブAO412S」(チオエーテル系化合物)0.3重量%を混合し、一軸混練押出機に供給して溶融温度285℃で溶融混練後、フィルターで濾過し、ストランドダイから押出した。この溶融物を水中で急冷しつつ細断し、アクリル粒子のマスターペレットを得た。
得られたマスターペレット10.0重量%と、実施例1で用いたPETペレット90.0重量%をドライブレンドし、実施例1と同様の乾燥、押出、延伸条件で100μm厚みの延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムは良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に透過視認性に優れていた。また得られたフィルムは熱履歴が実施例1よりも多いにも係らず黄色着色性は小さく、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができ、スクリーンとして適していた。
参考例2
樹脂組成物として実施例3で得られたマスターペレット50.0重量%と、実施例1で用いたPETペレット50.0重量%とをドライブレンドしたものを用いた以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムは良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に散乱反射性に優れていた。また得られたフィルムは熱履歴が実施例1よりも多いにも係らず黄色着色性は小さく、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができ、スクリーンとして適していた。
[比較例1]
樹脂組成物として、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤を用いない以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムは良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に透過視認性に優れていた。一方、得られたフィルムは黄色く着色しており、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができず、スクリーンとしての色相再現性に乏しかった。
[比較例2]
樹脂組成物として、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤を用いない以外は実施例2と同様にして延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムは良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に散乱反射性に優れていた。一方、得られたフィルムは黄色く着色しており、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができず、スクリーンとしての色相再現性に乏しかった。
[比較例3]
樹脂組成物として、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤を用いない以外は実施例3と同様にしてマスターペレットを得た。
得られたマスターペレット10.0重量%と、実施例1で用いたPETペレット90.0重量%をドライブレンドし、実施例1と同様の乾燥、押出、延伸条件で100μm厚みの延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムは良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に透過視認性に優れていた。一方、得られたフィルムは黄色く着色しており、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができず、スクリーンとしての色相再現性に乏しかった。
[比較例4]
樹脂組成物として比較例3で得られたマスターペレット50.0重量%と、実施例1で用いたPETペレット50.0重量%とをドライブレンドしたものを用いた以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。得られた延伸フィルムは良好な散乱反射特性及び透過視認性を有しており、特に散乱反射性に優れていた。一方、得られたフィルムは黄色く着色しており、投影映像と同じ色相を視認者が認識することができず、スクリーンとしての色相再現性に乏しかった。
Figure 0005301784
本発明のスクリーン用フィルムは、視認者側から投影される投影偏光光を良好に散乱反射して視認性を高め、かつ視認者側とフィルムを介して反対側の映像も該フィルムを通じて視認できる透過視認性を有することから視認者側から両映像を良好に視認することができると共に、黄色着色性の少ない色相に優れたフィルムであるため映像本来の色相を良好に再現でき、プロジェクションスクリーンとして好適に使用することができる。具体的には建材用高透明反射型プロジェクションスクリーン用またはヘッドアップディスプレイプロジェクションスクリーン用等のスクリーン用フィルムを提供することができる。

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂を含むマトリックス相及びアクリル系樹脂を含む分散相からなる高分子フィルムであって、マトリックス相の屈折率と分散相の屈折率とが下記式(1)(2)を満たし、
    |(N+N)/2−(n+n)/2|≦0.05 ・・・(1)
    |n−N|>0.05 ・・・(2)
    (ここで、nはマトリックスの屈折率、Nは分散相の屈折率をそれぞれ表し、nはフィルム平面内でもっとも屈折率が高い方向のマトリックス屈折率、nはフィルム平面内でx方向と直交するy方向のマトリックス屈折率、nはフィルム厚み方向のマトリックス屈折率、Nはx方向の分散相屈折率、Nはフィルム平面内でx方向と直交するy方向の分散相屈折率、Nはフィルム厚み方向の分散相屈折率をそれぞれ表す)
    高分子フィルム中にラジカル捕捉型安定剤還元剤型安定剤を含有し、マトリックス相に含まれる熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂またはシンジオタクチックポリスチレン樹脂であり、
    該フィルムの反射法カラーb*値が、1.5未満であり、
    y方向と平行な直線偏光をフィルム面に垂直に入射した際のフィルムの全光線透過率が85%以上100%未満、平行光線透過率が60%以上100%未満であり、無偏光状態の光をフィルム面に垂直に入射した際の全光線反射率が0%を超えて30%未満である、
    視認者側から投影される直線偏光に対して散乱反射性を有し、該直線偏光と直交する直線偏光について透過性を有することを特徴とする高透明スクリーン用フィルム。
  2. y方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hyとx方向と平行な直線偏光に対するヘーズ値Hxとの比R=Hy/Hxが0.0を超えて0.7未満である請求項1に記載の高透明スクリーン用フィルム。
  3. マトリックス相を構成する熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂である請求項1または2に記載の高透明スクリーン用フィルム。
  4. 分散相がアクリル系樹脂を含む粒子の凝集体である請求項1〜3のいずれかに記載の高透明スクリーン用フィルム。
  5. 分散相がアクリル系樹脂を含むコアシェル型粒子の凝集体である請求項4に記載の高透明スクリーン用フィルム。
  6. 分散相がアクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の高透明スクリーン用フィルム。
  7. 分散相の含有量がフィルムの重量を基準として0.01〜30重量%である請求項1〜6のいずれかに記載の高透明スクリーン用フィルム。
  8. ラジカル捕捉型安定剤、還元剤型安定剤からなる群が、フェノール系化合物、アミン系化合物、イオウ系化合物及びリン系化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の高透明スクリーン用フィルム。
  9. ラジカル捕捉型安定剤、還元剤型安定剤からなる群から選ばれる安定剤の含有量がフィルムの重量を基準として0.00001〜5重量%である請求項1〜8のいずれかに記載の高透明スクリーン用フィルム。
  10. プロジェクションスクリーン用である請求項1〜9のいずれかに記載の高透明スクリーン用フィルム。
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