JP5298858B2 - 上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー、及びそれを用いた組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法 - Google Patents

上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー、及びそれを用いた組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法 Download PDF

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Description

本発明は、上皮性卵巣癌(EOC)のスクリーニング・診断・検診・経過観察、及び分類の技術に関する。より詳しくは、本発明は、上皮性卵巣癌の組織型の分子タイピングに関する。すなわち本発明は、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー、及びそれを用いた組織型に基づく上皮性卵巣癌の識別法(Marker for Identification of Tissue-Type of Epithelial Ovarian Cancer and Method for Identification of Epithelial Ovarian Cancer Based on Tissue-Type Using the Same)に関する。
卵巣癌は、女性生殖器の悪性腫瘍で2番目に多い症例で、最も死亡率が高い。主に閉経前期や閉経後の女性が発症する。米国だけで年間2万6千人が新たに卵巣癌と診断され、卵巣癌患者1万6千人が死亡している(2004年)。ステージ分類による5年生存率は、それぞれI期 90%、II期 70%、III期 25%、IV期 10%とされており、III期以降の予後は非常に不良である。よって、長期生存率改善のためには早期診断がもっとも重要な課題であるといえる。しかし、初期の卵巣癌のほとんどは無症状であり、また、非侵襲的な確定診断法も確立されていない。これらのことから、早期に診断され根治に至るケースは稀である。このため、早期診断に利用できる腫瘍マーカーが嘱望されている。
腫瘍マーカーとは、腫瘍により特異的に産生されている生体分子(具体的にはタンパク質)であり、一般的に、体液中(主として血液中)から検出又は定量することによって腫瘍の存在の有無を診断するという概念において用いられる。
現在広く臨床現場で使われている卵巣癌マーカーとしてはCA125が第一に挙げられる。このマーカーは悪性腫瘍において陽性率が高く数十年にわたる実績がある。しかしながらその反面、早期卵巣癌においては陽性率が低いうえ、特異性が低すぎる。このため、早期診断には利用できないという欠点を持つ。このことは、MacDonald et al, 1999に記載されている。
その後、Zhangらが表面加工技術と質量分析を組み合わせたSELDI-TOF-MSという技術を利用、卵巣癌患者の血清から3種類の腫瘍マーカーを同定し、それらとCA125との組み合わせにより卵巣癌の早期診断方法を提案した(Zhang et al, 2004)(特許公表2006−512586号公報)。しかし、Nature, 2004に記載されているように、方法論に科学的根拠が欠けているとの意見がある。このため、この方法はいまだに実用には至っていない。
一方、Hee Jung An et al, 2006には、上皮性卵巣癌の組織型間の違いを考慮に入れた腫瘍マーカー開発が記載されている。
特許公表2006−512586号公報 MacDonald ND, Jacobs IJ. Is there a place for screening in ovarian cancer? European journal of obstetrics, gynecology, and reproductive biology 1999;82(2):155-7. Zhang Z, Bast RC, Jr., Yu Y, et al. Three biomarkers identified from serum proteomic analysis for the detection of early stage ovarian cancer. Cancer research 2004;64(16):5882-90. Check E. Proteomics and cancer: running before we can walk? Nature 2004;429(6991):496-7. An HJ, Kim DS, Park YK, et al. Comparative proteomics of ovarian epithelial tumors. Journal of proteome research 2006;5(5):1082-90.
発明の開示
発明の目的
一口に卵巣腫瘍といっても、組織病理学的には、その形態、発生部位などに応じて細かく分類区別され、その数は良性のものを含めると30種類以上に及ぶ。これまでの卵巣癌腫瘍マーカー探索においては、上皮性卵巣癌の組織型はあまり考慮に入れられていなかったのが実情である。しかしながら実際は組織型によって抗がん剤耐性やCA-125感度、転移性などが異なっている。従って、組織型は治療方法の選択を大きく左右するものである。
最近になってようやく、上記のHee Jung An et al, 2006のように、組織型間の違いを考慮に入れた腫瘍マーカー開発も発表されてきている。しかしながら当該腫瘍マーカー開発は、特定の分子の正常組織と癌組織との間における比較解析に基づいている。しかしながら、健常人からの生体試料と癌患者との生体試料とに含まれる成分の比較を基にしたバイオマーカー検索では、しばしば因果論の欠如や再現性の低さが問題点として挙げられている。
一方で、特定の分子の組織型間における網羅的な比較解析は現在のところ皆無である。従って、非侵襲的に組織型診断を可能にする分子の存在はいまだ明かされていないといえる。
現在のところ、卵巣腫瘍の組織型分類は、摘出手術後に組織病理学に基づいて行う以外に方法が確立されていない。また、常に適切な診断が出来る医師が限られている。これらのことが、本国における臨床検体を用いた研究を足止めしている大きな因子であると考えられる。このため、分子レベルでの組織型診断を可能にする腫瘍マーカーは各方面において大きな意味を持ち、特に臨床現場にて多大な需要が見込まれる。
本発明の目的は、従来の組織病理学とは異なる分子タイピングという観点で、組織型に基づいた上皮性卵巣癌の罹患の識別を行う方法を提供することにある。すなわち、本発明の目的は、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカーを提供することにある。
発明の概要
本発明者らは、組織型判断を起点としたバイオマーカー検索という新しい着眼点を見出した。本発明者らは、組織病理学的観点から正確な組織型診断がなされた上皮性卵巣癌臨床組織検体を用い、組織型間の発現変動を調べるという新しい観点に基づいて、上皮性卵巣癌のプロファイリングを行った。
ここで、本発明における上皮性卵巣癌のプロファイリングとは、上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的に高発現或いは低発現する生体分子群を明らかにすることである。具体的には、上皮性卵巣癌に罹患した生体試料中に発現している生体分子の発現量を組織型ごとに調べ、組織型間で相対的に発現が変動している生体分子群を網羅的に解析する。
本発明者らは、組織型の異なる上皮性卵巣癌臨床組織検体から、発現している全タンパク質を同定及び定量し、組織型間で相対的に発現が変動しているタンパク質群を網羅的に解析した。そして、特定の組織型において有意に発現亢進/抑制を示す一連のタンパク質の存在を明らかにした。明らかにされた一連のタンパク質は、どの組織型において特異的に発現亢進/抑制を示すかという性質の違いによって分類された。
特に注目すべきは、上皮性卵巣癌の明細胞癌、類内膜癌、漿液性腺癌、及び粘液性腺癌それぞれから、別種のタンパク質、すなわち特定の1種の組織型のみに有意に発現するという発現パターンを有するタンパク質が見出されたことである。このことから、上皮性卵巣癌は、各組織型で明確に別種の癌であるという概念が裏づけられた。そして、そのようなタンパク質は、単独で、特定の組織型の上皮性卵巣癌に関する早期診断用の腫瘍マーカーとなることがいえるため、そのようなタンパク質を用いて組織型の識別を行うことができることが見出された。
また、上皮性卵巣癌の明細胞癌、類内膜癌、漿液性腺癌、及び粘液性腺癌のうち2種の組織型において特異的に有意に発現するという発現パターンを有するタンパク質、及び、特定の1種の組織型のみにおいて発現が抑制されるという発現パターンを有するタンパク質も見出された。
そのため、上記の腫瘍マーカー単独で使用するだけでなく、2種の組織型において特異的に有意に発現するタンパク質や、特定の1種の組織型のみにおいて発現が抑制されるタンパク質も組織型識別用マーカーとして使用し、それらを任意に組み合わせてより正確な組織型の識別を行うことができることが見出された。
以上のように、本発明者によるプロファイリングにより明らかにされたデータの全体像により、上皮性卵巣癌の疾患概念のひとつとして、上皮性卵巣癌は、分子レベルで、各組織型で明確に別種の癌であるという概念が確立されるに至った。そしてこのことは、上皮性卵巣癌の組織型分類システムの開発に結びつき、その結果、本発明者らは、組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
下記(1)〜(15)は、組織型に基づいて上皮性卵巣癌の罹患を識別する方法である。本発明の方法では、上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的な発現傾向を示す生体分子を組織型識別マーカーとし、その発現量を調べることによって組織型を決定することを含む。
(1) 対象となる個人に由来する試料を、
上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子群から選ばれる少なくとも1つ、及び/又は
上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的に発現抑制を示す生体分子群から選ばれる少なくとも1つ
についての検出処理に供し、
前記タンパク質の有意な検出の有無を調べ、組織型を識別することを含む、組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
罹患とは、広く病的状態をいい、癌の罹患を識別するとは、癌の検出(スクリーニング)、診断、モニタリング、ステージング及び予後判定を行うことを含む意味で用いる。
特定の組織型とは、1又は複数の組織型を意味する。従って、特定の組織型において特異的に発現亢進/抑制を示す分子とは、少なくともハウスキーピング分子でないものという意味であるが、好ましくは、1又は2の組織型で特異的に発現亢進/抑制を示す分子である。本発明の方法では、上皮性卵巣癌において、明細胞型(Clear Cell)、類内膜型(Endometrioid)、漿液性腺型(Serous)、及び粘液性腺型(Mucinous)の各組織型の識別を行うことができる。この場合、特定の組織型とは、それら4タイプのうち特定の1又は2の組織型をいう。
下記(2)は、特定の組織型について特異的な発現傾向(すなわち発現亢進又は発現抑制)を示す生体分子、すなわち組織型識別マーカーを見出すためのプロファイリングについて記載する。
(2) 前記上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子群、及び前記上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的に発現抑制を示す生体分子群は、
組織型の確定診断がなされた上皮性卵巣癌患者に由来する試料を、複数の組織型について用意し、
前記試料中に発現している生体分子の定量を、前記複数の組織型それぞれについて行い、
前記試料中に発現している生体分子から、特定の組織型における定量値が、他の組織型における定量値に対して有意な変動量をもって増加している生体分子、及び有意な変動量をもって減少している生体分子を絞り込むこと、
を含むプロファイリングによって見出されたものである、(1)に記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
下記(3)においては、特定の組織型について特異的な発現傾向を示す複数の生体分子についてその発現量を調べ、発現量の測定結果を組み合わせることによって、組織型を識別する。すなわち、複数の識別マーカーの組み合わせによって、組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別を行う。
さらに、下記(3)及び(4)〜(15)においては、生体分子がタンパク質の場合に向けられる。本発明では、タンパク質は、比較的分子量の小さいペプチド(たとえば、下記(4)〜(15)に記載したタンパク質の一部を構成するペプチド)も含まれることとする。なお、タンパク質以外の場合としては、タンパク質の作用により生まれる物質(例えば、糖、脂質等の代謝物)などが挙げられる。下記(3)の複数の識別マーカーの組み合わせによる方法は、タンパク質以外の生体分子においても同様に実施することができる。
(3) 前記上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子群は、明細胞型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質C(+)、類内膜型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質E(+)、漿液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質S(+)、粘液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質M(+);明細胞型と漿液性型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CS(+)、明細胞型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CM(+)、類内膜型と漿液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質ES(+)、漿液性腺型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質SM(+)、明細胞型と類内膜型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CE(+)、及び、類内膜型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質EM(+)を含み、
前記上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的に発現抑制を示す生体分子群は、粘液性線型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質M(-)、漿液性腺型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質S(-)、類内膜型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質E(-)、及び、明細胞型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質C(-)を含み、
上記タンパク質C(+)、E(+)、S(+)、M(+)、CS(+)、CM(+)、ES(+)、SM(+)、CE(+)、EM(+)、M(-)、S(-)、E(-)、及びC(-)から任意に選ばれる複数のタンパク質についての検出結果を組み合わせる、(1)又は(2)に記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
下記(4)〜(15)においては、特定の組織型について特異的な発現傾向を示す生体分子として、本発明者らのプロファイリングによって見出されたタンパク質を用いる。
(4) 前記明細胞型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質C(+)は、
Acid ceramidase precursor、
Alpha crystallin B chain、
Annexin A1 (Annexin-1)、
Annexin A4 (Annexin-4)、
Carbonic anhydrase 1、
Catechol O-methyltransferase、
Cellular retinoic acid-binding protein 1、
Cystathionine gamma-lyase、
Endoplasmic reticulum protein ERp29 precursor、
Ferritin heavy chain、
Glutathione peroxidase 3 precursor、
Guanine deaminase、
Laminin subunit beta-1 precursor (Laminin B1 chain)、
Laminin subunit gamma-1 precursor (Laminin B2 chain)、
L-lactate dehydrogenase B chain、
Low molecular weight phosphotyrosine protein phosphatase、
Methylcrotonoyl-CoA carboxylase beta chain, mitochondrial precursor、
Nicotinamide N-methyltransferase、
Peroxiredoxin-2、
Peroxiredoxin-6 、
Phosphomannomutase 2、
Phosphoserine aminotransferase、
Protein SET、
Purine nucleoside phosphorylase、
Pyridoxal kinase、
Serum amyloid P-component precursor、
SPRY domain-containing protein 4、
Superoxide dismutase [Mn], mitochondrial precursor、
Synaptic vesicle membrane protein VAT-1 homolog、
Thioredoxin domain-containing protein 12 precursor、
Transaldolase、
Triosephosphate isomerase、
Tryptophanyl-tRNA synthetase, cytoplasmic、及び
Uncharacterized protein C7orf24
からなる群から選ばれる、(3)に記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
上記(4)において、少なくともAnnexin A4 (Annexin-4)は、前記検出処理においてタンパク質の翻訳後修飾の有無の区別がつくマーカー分子定量法を用いる場合に選ばれる。
(5) 前記類内膜型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質E(+)は、
ASRGL1 protein、及び
Parvalbumin alpha
からなる群から選ばれる、(3)又は(4)に記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(6) 前記漿液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質S(+)は、
Astrocytic phosphoprotein PEA-15、
c-Myc-responsive protein Rcl、
Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A、
F-actin capping protein subunit alpha-1、
Gamma-synuclein (Breast cancer-specific gene 1 protein)、
Glyoxalase domain-containing protein 4、
Ras-related protein Rab-2A、
Replication protein A 32 kDa subunit、
S100 calcium-binding protein A13、
Small ubiquitin-related modifier 2 precursor (SUMO-2)、及び
Ubiquinol-cytochrome c reductase complex 11 kDa protein, mitochondrial precursorからなる群から選ばれる、(3)〜(5)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(7) 前記粘液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質M(+)は、
Fatty acid-binding protein, liver、
Serpin B5 precursor (Maspin)、
Thioredoxin (ATL-derived factor)、及び
Transgelin-2
からなる群から選ばれる、(3)〜(6)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(8) 前記明細胞型と漿液性型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CS(+)は、
6-phosphogluconolactonase、及び
Ubiquinol-cytochrome-c reductase complex core protein I, mitochondrial precursor
からなる群から選ばれる、(3)〜(7)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(9) 前記明細胞型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CM(+)は、
Carbonic anhydrase 2、
Delta(3,5)-Delta(2,4)-dienoyl-CoA isomerase、
Thiosulfate sulfurtransferase、及び
Annexin A4 (Annexin-4)
からなる群から選ばれる、(3)〜(8)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
上記(9)において、Annexin A4 (Annexin-4)は、前記検出処理においてタンパク質の翻訳後修飾の有無の区別がつかないマーカー分子定量法を用いる場合に選ばれる。
(10) 前記類内膜型と漿液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質ES(+)は、
Rho GDP-dissociation inhibitor 2、及び
Transgelin
からなる群から選ばれる、(3)〜(9)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(11) 前記漿液性腺型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質SM(+)は、
Barrier-to-autointegration factor、
Cellular retinoic acid-binding protein 2、
S100 calcium-binding protein A11、
S100 calcium-binding protein A4、
S100 calcium-binding protein A6、
Selenium-binding protein 1、及び
Transgelin-2
からなる群から選ばれる、(3)〜(10)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(12) 前記明細胞型と類内膜型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CE(+)は、
Calcyphosin、及び
Fibrinogen beta chain precursor
からなる群から選ばれる、(3)〜(11)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(13) 前記粘液性線型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質M(-)は、
Haloacid dehalogenase-like hydrolase domain-containing protein 2である、(1)〜(12)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(14) 前記類内膜型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質E(-)は、
Bis(5'-nucleosyl)-tetraphosphatase [asymmetrical]、
Chloride intracellular channel protein 1、及び
Monoamine-sulfating phenol sulfotransferase
からなる群から選ばれる、(3)〜(13)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
(15) 前記明細胞型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質C(-)は、
Acyl-CoA-binding protein、
Coactosin-like protein、
SH3 domain-binding glutamic acid-rich-like protein、
Transgelin、及び
Uncharacterized protein C6orf115
からなる群から選ばれる、(3)〜(14)のいずれかに記載の組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別法。
下記(16)〜(24)は、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカーに関する。
このうち、(16)〜(19)のように、1つの組織型のみについて特異的なタンパク質は、その組織型の卵巣癌の早期診断マーカーとなりうる。(16)は、明細胞癌の腫瘍マーカー、(17)は、類内膜型癌の腫瘍マーカー、(18)は、漿液性腺癌の腫瘍マーカー、(19)は、粘液性腺癌の腫瘍マーカーである。
(16) 明細胞型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質C(+)として、
Acid ceramidase precursor、
Alpha crystallin B chain、
Annexin A1 (Annexin-1)、
Annexin A4 (Annexin-4)、
Carbonic anhydrase 1、
Catechol O-methyltransferase、
Cellular retinoic acid-binding protein 1、
Cystathionine gamma-lyase、
Endoplasmic reticulum protein ERp29 precursor、
Ferritin heavy chain、
Glutathione peroxidase 3 precursor、
Guanine deaminase、
Laminin subunit beta-1 precursor (Laminin B1 chain)、
Laminin subunit gamma-1 precursor (Laminin B2 chain)、
L-lactate dehydrogenase B chain、
Low molecular weight phosphotyrosine protein phosphatase、
Methylcrotonoyl-CoA carboxylase beta chain, mitochondrial precursor、
Nicotinamide N-methyltransferase、
Peroxiredoxin-2、
Peroxiredoxin-6 、
Phosphomannomutase 2、
Phosphoserine aminotransferase、
Protein SET、
Purine nucleoside phosphorylase、
Pyridoxal kinase、
Serum amyloid P-component precursor、
SPRY domain-containing protein 4、
Superoxide dismutase [Mn], mitochondrial precursor、
Synaptic vesicle membrane protein VAT-1 homolog、
Thioredoxin domain-containing protein 12 precursor、
Transaldolase、
Triosephosphate isomerase、
Tryptophanyl-tRNA synthetase, cytoplasmic、及び
Uncharacterized protein C7orf24
からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
上記(16)において、少なくともAnnexin A4 (Annexin-4)は、翻訳後修飾の有無の区別がつく方法を用いてマーカー分子定量を行う場合に用いられる。
(17) 類内膜型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質E(+)として、
ASRGL1 protein、及び
Parvalbumin alpha
からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
(18) 漿液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質S(+)として、
Astrocytic phosphoprotein PEA-15、
c-Myc-responsive protein Rcl、
Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A、
F-actin capping protein subunit alpha-1、
Gamma-synuclein (Breast cancer-specific gene 1 protein)、
Glyoxalase domain-containing protein 4、
Ras-related protein Rab-2A、
Replication protein A 32 kDa subunit、
S100 calcium-binding protein A13、
Small ubiquitin-related modifier 2 precursor (SUMO-2)、及び
Ubiquinol-cytochrome c reductase complex 11 kDa protein, mitochondrial precursor
からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
(19) 粘液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質M(+)として、
Fatty acid-binding protein, liver、
Serpin B5 precursor (Maspin)、
Thioredoxin (ATL-derived factor)、及び
Transgelin-2
からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
下記(20)は、2つの組織型において特異的に有意な発現を示すタンパク質に関する。(20)から選ばれる特定の1つのタンパク質がそれのみで用いられることは無く、他のタンパク質と組み合わせられて用いられる。他のタンパク質の例としては、(20)に記載のタンパク質であって、前記選ばれた特定の1つのタンパク質とは発現パターンが異なるタンパク質や、上記(16)〜(19)に記載のタンパク質や、後述の(21)〜(24)に記載のタンパク質が挙げられる。
(20) 明細胞型と漿液性型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CS(+)として、
6-phosphogluconolactonase、及び
Ubiquinol-cytochrome-c reductase complex core protein I, mitochondrial precursor
と;
明細胞型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CM(+)として、
Carbonic anhydrase 2、
Delta(3,5)-Delta(2,4)-dienoyl-CoA isomerase、
Thiosulfate sulfurtransferase、及び
Annexin A4 (Annexin-4)
と;
類内膜型と漿液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質ES(+)として、
Rho GDP-dissociation inhibitor 2、及び
Transgelin
と;
漿液性腺型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質SM(+)として、
Barrier-to-autointegration factor、
Cellular retinoic acid-binding protein 2、
S100 calcium-binding protein A11、
S100 calcium-binding protein A4、
S100 calcium-binding protein A6、
Selenium-binding protein 1、及び
Transgelin-2
と;
明細胞型と類内膜型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CE(+)として、
Calcyphosin、及び
Fibrinogen beta chain precursor
と;
からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
上記(20)において、マーカーAnnexin A4 (Annexin-4)は、翻訳後修飾の有無の区別がつかない方法を用いてマーカー分子定量を行う場合に用いられる。
(21) 粘液性線型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質M(-)として、
Haloacid dehalogenase-like hydrolase domain-containing protein 2を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
(22) 類内膜型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質E(-)として、
Bis(5'-nucleosyl)-tetraphosphatase [asymmetrical]、
Chloride intracellular channel protein 1、及び
Monoamine-sulfating phenol sulfotransferase
からなる群から選ばれる少なくとも1つのタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
(23) 明細胞型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質C(-)として、
Acyl-CoA-binding protein、
Coactosin-like protein、
SH3 domain-binding glutamic acid-rich-like protein、
Transgelin、及び
Uncharacterized protein C6orf115
からなる群から選ばれる少なくとも1つのタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカー。
(24) (16)〜(23)に記載のタンパク質から選ばれる少なくとも2つのタンパク質を含む、上皮性卵巣癌の組織型識別用キット。
本発明はまた、下記(25)及び(26)に記載の癌の処理のための薬剤組成物に向けられる。癌の処理とは、癌細胞を死滅させること、及び癌細胞の成長を抑制することを含む。
(25) 癌細胞に対して供給することによって、癌細胞の死滅及び/又は癌細胞成長の抑制を促進する反応を誘発するための薬剤組成物であって、(16)〜(19)に記載の識別マーカーに免疫特異的に結合する少なくとも1種の抗体を含む、薬剤組成物。
(26) 免疫刺激量で、癌細胞に対して供給することによって、免疫応答を促進するための薬剤組成物であって、(16)〜(19)に記載の識別マーカーを含む、薬剤組成物。
上記(25)及び(26)の薬剤組成物は、癌の処理に用いられる潜在的な治療剤として特定されうる。或いは、上記(25)及び(26)の薬剤組成物は、癌の処理に用いられる治療剤として用いられうる。
本発明によると、従来の組織病理学とは異なる分子タイピングという観点で、組織型に基づいて上皮性卵巣癌の罹患の識別を行うことができる。すなわち、本発明によると、上皮性卵巣癌の組織型識別マーカーを提供することができる。
本発明のマーカーは、タンパク質の同定によるプロファイリングにより見出されたものである。一般的には、免疫染色法によるプロファイリングが行われるが、本発明者らによって行われたプロファイリングは、アーティファクトがしばしば見られる免疫染色法によるものとは異なり、見出されたタンパク質のマーカーとしての信頼性が高い。
また、本発明のマーカーは、組織型間の発現の差を定量することに基づいて見出されたものであるため、臨床的に大きな説得力を持つ。さらに、複数のマーカーを組み合わせて用いることで、従来から用いられてきた特異性の低いブロードなマーカー(例えばCA-125やCA-19-9)を用いる場合よりも、より特異性の高い解析を行うことが可能になる。
図1は、明細胞型罹患患者由来の病理組織試料の電気泳動図である。 図2は、類内膜型罹患患者由来の病理組織試料の電気泳動図である。 図3は、漿液性腺型罹患患者由来の病理組織試料の電気泳動図である。 図4は、粘液性腺型罹患患者由来の病理組織試料の電気泳動図である。 図5は、プロファイリングシステムの概略図である。 図6は、プロファイリングにおけるスクリーニングで用いる、14通りのモデル発現パターンである。 図7は、本発明のマーカーで明細胞型に特異的な発現を示すAnnexin-A4の、組織型別の発現量を示した一次元散布図である。 図8は、本発明のマーカーで粘液性腺癌に特異的な発現を示すMaspin precursorの、組織型別の発現量を示した一次元散布図である。 図9は、本発明のマーカーで漿液性腺癌と粘液性腺癌に特異的な発現を示すCellular retinoic acid-binding protein 2(CRABP2)の、組織型別の発現量を示した一次元散布図である。 図10は、本発明のマーカーで明細胞型に特異的な発現を示すPhosphoserine aminotransferaseの、組織型別の発現量を示した一次元散布図である。 図11は、本発明のマーカーを利用して作成された、未知の卵巣癌組織を明細胞型と判定するための決定木である。 図12は、本発明のマーカーAnnexin-A4、Maspin precursor、Cellular retinoic acid-binding protein 2(CRABP2)及びPhosphoserine aminotransferaseの、明細胞型及び類内膜型の40検体それぞれにおける発現量を示すウェスタンブロッティングの結果である。 図13は、本発明のマーカーAnnexin-A4、Maspin precursor、Cellular retinoic acid-binding protein 2(CRABP2)及びPhosphoserine aminotransferaseの、漿液性腺型及び粘液性腺型の40検体それぞれにおける発現量を示すウェスタンブロッティングの結果である。 図14は、ウェスタンブロッティング法を用いて、本発明のマーカーである4つのタンパク質Annexin-A4(ANXA4)、Maspin precursor(MASPIN)、Cellular retinoic acid-binding protein 2(CRABP2)及びPhosphoserine aminotransferase(PSAT1)の、発現レベルに基づく組織型分類を行った結果である。
[1.組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別の対象となる試料]
本発明の方法において、上皮性卵巣癌の罹患を識別すべき対象となる個人に由来する試料としては、特に限定されない。例えば、細胞、組織、組織抽出物、体液などが挙げられる。細胞や組織には、組織生検材料(具体的には術摘した組織など)や、検死解剖材料などが含まれる。組織抽出物とは、当業者に公知の方法によってホモジネート又は可溶化された組織をいう。体液としては、血液、腹水、尿、及び体分泌物などが含まれる。血液としては、全血、血漿、血清などが含まれる。これら試料が保管されたものである場合、保管環境としては、原則−80℃以下、好ましくは液体窒素を用いた低温環境である。
[2.組織型を識別するためのマーカー]
本発明においては、上皮性卵巣癌を解析ターゲットとする。上記のような試料中において、組織型識別マーカーのレベルを定量し、当該マーカーが有意な量で検出されたか否かを調べる。その結果に基づいて、上皮性卵巣癌の組織型を判断する。本発明の組織型識別マーカーは、上皮性卵巣癌の特定の組織型において特異的な発現傾向(すなわち、発現亢進又は発現抑制の傾向)を示す生体分子である。
[2−1.組織型識別マーカーを検索するためのプロファイリング]
このような生体分子は、組織型の確定診断がなされた上皮性卵巣癌患者に由来する試料から、発現プロファイリングを行うことによって見出される。そもそも、組織型識別マーカーを用いて組織型を判断するという本発明の基本的概念は、本発明者らによる上皮性卵巣癌のプロファイリングの結果、特定の組織型において特異的な発現傾向を示す分子の存在が明らかになったという事実によってもたらされたものである。
従来の腫瘍マーカー検索のためのプロファイリングが、病態モデルと正常モデルとの間で変動解析が行われることに対し、本発明におけるプロファイリングは、組織型間での発現量の変動解析を行うことを必須とする。したがって、変動解析が組織間で行われることを除いては、従来のプロファイリング法に準じて行われて良い。
まず、組織型の確定診断がなされた上皮性卵巣癌患者に由来する試料を、複数の組織型について用意する。試料については、上記の上皮性卵巣癌の罹患を識別すべき対象となる個人に由来する試料と同様である。
そして、試料中に発現している生体分子群の分離精製工程や同定工程を適宜含め、当該生体分子群の発現量の定量を、当該複数の組織型について行う。分離精製及び/又は同定を行う場合、その具体的方法は特に限定されない。従って、当業者によって良く知られた方法によって行われて良い。定量の具体的方法としても、特に限定されない。従って、当業者によって良く知られた方法によって行われて良い。
定量された生体分子の発現レベルは、組織型間で変動解析される。すなわち、特定の組織型における定量値が、他の組織型における定量値に対して有意な変動量をもって増加及び減少している生体分子を、試料中に発現している生体分子群から絞り込み、確定する。変動解析の具体的方法は特に限定されない。病体モデルと正常モデルとの間での変動解析を行う従来のプロファイリング法に準じて、当業者によって適宜行われてよい。
たとえば、本発明者らによって行われたプロファイリングの方法は、以下のように行われた。
組織病理学的観点から、明細胞型、類内膜型、漿液性腺型、及び粘液性腺型の組織型診断が正確になされた卵巣癌臨床組織検体を用い、それぞれの検体について、発現しているタンパク質を二次元電気泳動法により単離し、染色による定量と、マスフィンガープリンティング分析による同定とを行った。そして、組織型間における変動解析においては、単離された各タンパク質スポットをサンプル間でマッチングさせ、その定量値を集計し、各組織型における平均発現レベルが他の組織型と比べて有意に差があるかどうかをT検定にて評価した。スクリーニングのカットオフ値を「P値<0.005」又は「P値<0.05で3倍以上の発現差」に設定し、基準を満たす変動タンパク質を絞り込み、各組織型を特徴づける発現プロファイルとした。
プロファイリングを行うには、膨大なデータを取り扱うことになる。従って、このようなデータを一元管理することができるインハウスデータサーバを用いることが好ましい(後述の図5参照)。インハウスデータサーバは、好ましくは、個々のクライアントPCからローカルネットワークを介してアクセス可能であり、特別なソフトウェアを必要とせず、研究員が、個々に実験データを記録することができる。また、インハウスデータサーバは、好ましくは、実験データそのもの、追加情報、保存データに対する変更の保存及び表示することができる。さらに好ましくは、インハウスデータサーバは、公共のデータベースにアクセスすることができる。
プロファイリングにおいて二次元電気泳動法が用いられる場合、インハウスサーバに取り込まれたタンパク質情報を統合した2Dマップを作成することが好ましい。この2Dマップを用いることによって、引き続くデータマイニングを容易にすることができる。このようなインハウスサーバとして、島津製作所から販売されているSOLPHIが好ましく用いられる。
データマイニングでは、二次元電気泳動で得られたスポットのマッチングを行い、スポット情報についてリストを作成することができる。スポット情報のリストには、スポットの強度(すなわち定量値)や同定結果が含まれる。このスポット情報のリストのフォーマットは、Microsoft Excelに代表される表計算ソフトウェアに対応した形式で、典型的なマイクロアレイの出力データに準ずるようにアレイスタイルで設計されることが好ましい。このことによって、アレイ分析のソフトウェアや、統計解析ソフトウェアにデータを取り込むことができる。
そのようなソフトウェアのフィルタリング機能を適用し、タンパク質スポットの絞込みを行う。発現パターンのモデルを作成し、統計解析により、モデルの発現パターンとの相関関係に基づいて近似した発現パターンを示すスポットを絞り込むと良い。
[2−2.組織型識別マーカーの発現パターン]
発現パターンのモデルは、発現プロファイルを構成すべきタンパク質として絞り込むべきタンパク質が有する特徴的な発現パターンを表したものである。すなわち、どの組織型において特異的な発現を示し、どの程度の発現の特異性を有している(すなわち、ある組織型の発現量が他の組織型の発現量に対してどの程度の増加又は減少を示す)ものを絞り込むかという基準を表す。好ましくは、分類された複数種の発現パターンを用意する。
上皮性卵巣癌の組織型として、明細胞型、類内膜型、漿液性腺型、粘液性腺型の識別を行うための分子マーカーを見出すためのプロファイリングの場合は、異なる発現パターンを、以下の14パターンのモデル発現パターンに分類することができる。この14パターンの分類は、本発明者らによって実際に行われたプロファイリングで行われたものである(図6参照)。
上皮性卵巣癌の特定の1つの組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子:
<1>明細胞型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質C(+)
<2>類内膜型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質E(+)
<3>漿液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質S(+)
<4>粘液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質M(+)
上皮性卵巣癌の特定の2つの組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子:
<5>明細胞型と漿液性型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CS(+)
<6>明細胞型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CM(+)
<7>類内膜型と漿液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質ES(+)
<8>漿液性腺型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質SM(+)
<9>明細胞型と類内膜型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CE(+)
<10>類内膜型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質EM(+)
上皮性卵巣癌の特定の1つの組織型において特異的に発現抑制を示す生体分子:
<11>粘液性線型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質M(-)
<12>漿液性腺型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質S(-)
<13>類内膜型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質E(-)
<14>明細胞型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質C(-)
統計解析の具体的方法としては特に限定されない。このため、相関及び近似解析が可能な方法を、当業者が適宜決定することができる。さらにその後、発現変動を示す組織型の間の系統的有意差を確認するための検定を行うことができる。このような検定法としては、t検定などが挙げられる。統計的有意差としては、通常はP<0.05であり、P<0.01であることがより好ましい。
[2−3.本発明者らによるプロファイルに含まれる組織型識別マーカー]
本発明者らによるプロファイリングによると、以下に例示の80のタンパク質マーカーを含むタンパク質プロファイルが作成された。
1.明細胞型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質C(+)
Acid ceramidase precursor
Alpha crystallin B chain(2種)
Annexin A1 (Annexin-1)
Annexin A4 (Annexin-4)(2種)
Carbonic anhydrase 1
Catechol O-methyltransferase
Cellular retinoic acid-binding protein 1
Cystathionine gamma-lyase
Endoplasmic reticulum protein ERp29 precursor
Ferritin heavy chain
Glutathione peroxidase 3 precursor
Guanine deaminase
Laminin subunit beta-1 precursor (Laminin B1 chain)
Laminin subunit gamma-1 precursor (Laminin B2 chain)
L-lactate dehydrogenase B chain
Low molecular weight phosphotyrosine protein phosphatase
Methylcrotonoyl-CoA carboxylase beta chain, mitochondrial precursor
Nicotinamide N-methyltransferase
Peroxiredoxin-2
Peroxiredoxin-6
Phosphomannomutase 2
Phosphoserine aminotransferase(2種)
Protein SET
Purine nucleoside phosphorylase(2種)
Pyridoxal kinase
Serum amyloid P-component precursor
SPRY domain-containing protein 4
Superoxide dismutase [Mn], mitochondrial precursor
Synaptic vesicle membrane protein VAT-1 homolog
Thioredoxin domain-containing protein 12 precursor
Transaldolase
Triosephosphate isomerase
Tryptophanyl-tRNA synthetase, cytoplasmic
Uncharacterized protein C7orf24
(ただし、上記のC(+)マーカーのうち、少なくともAnnexin A4 (Annexin-4)は、翻訳後修飾の有無の区別がつく方法を用いてマーカー分子定量を行う場合に用いられる。)
2.類内膜型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質E(+)
ASRGL1 protein
Parvalbumin alpha
3.漿液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質S(+)
Astrocytic phosphoprotein PEA-15
c-Myc-responsive protein Rcl
Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A
F-actin capping protein subunit alpha-1
Gamma-synuclein (Breast cancer-specific gene 1 protein)
Glyoxalase domain-containing protein 4
Ras-related protein Rab-2A
Replication protein A 32 kDa subunit
S100 calcium-binding protein A13
Small ubiquitin-related modifier 2 precursor (SUMO-2)
Ubiquinol-cytochrome c reductase complex 11 kDa protein, mitochondrial precursor
4.粘液性腺型のみにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質M(+)
Fatty acid-binding protein, liver
Serpin B5 precursor (Maspin)
Thioredoxin (ATL-derived factor)
Transgelin-2
5.明細胞型と漿液性型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CS(+)
6-phosphogluconolactonase
Ubiquinol-cytochrome-c reductase complex core protein I, mitochondrial precursor
6.明細胞型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CM(+)
Carbonic anhydrase 2
Delta(3,5)-Delta(2,4)-dienoyl-CoA isomerase
Thiosulfate sulfurtransferase
Annexin A4 (Annexin-4)
(ただし、上記のCM(+)マーカーのうち、Annexin A4 (Annexin-4)は、翻訳後修飾の有無の区別がつかない方法を用いてマーカー分子定量を行う場合に用いられる。)
7.類内膜型と漿液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質ES(+)
RhoGDP-dissociation inhibitor 2
Transgelin
8.漿液性腺型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質SM(+)
Barrier-to-autointegration factor
Cellular retinoic acid-binding protein 2
S100 calcium-binding protein A11
S100 calcium-binding protein A4
S100 calcium-binding protein A6
Selenium-binding protein 1
Transgelin-2
9.明細胞型と類内膜型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質CE(+)
Calcyphosin
Fibrinogen beta chain precursor
10.類内膜型と粘液性腺型とにおいて特異的に発現亢進を示すタンパク質EM(+)
11.粘液性線型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質M(-)
Haloacid dehalogenase-like hydrolase domain-containing protein 2
12.漿液性腺型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質S(-)
13.類内膜型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質E(-)
Bis(5'-nucleosyl)-tetraphosphatase [asymmetrical]
Chloride intracellular channel protein 1
Monoamine-sulfating phenol sulfotransferase
14.明細胞型のみにおいて発現抑制を示すタンパク質C(-)
Acyl-CoA-binding protein
Coactosin-like protein
SH3 domain-binding glutamic acid-rich-like protein
Transgelin
Uncharacterized protein C6orf115
上述のマーカーのうち、「(2種)」と記載されているタンパク質(すなわちAlpha crystallin B chain、Annexin A4 (Annexin-4)、Phosphoserine aminotransferase、及びPurine nucleoside phosphorylase)は、翻訳後修飾の区別をすることができる方法を用いて検出処理を行う場合に、全く別の分子(すなわち翻訳後修飾分子と非修飾分子)として検出されるものである。一方、翻訳後修飾の区別をすることができない方法を用いて検出処理を行う場合は、これらの分子は同じ分子として検出される。
このため、本発明においては、翻訳後修飾の区別をすることができる方法を用いて検出処理を行う場合と、翻訳後修飾の区別をすることができない方法を用いて検出処理を行う場合とで、発現パターンが異なるものがある。上述のタンパク質のうち、例えばAnnexin A4 (Annexin-4)は、翻訳後修飾の区別をすることができる方法を用いた場合はC(+)マーカーとして用いることができ、翻訳後修飾の区別をすることができない方法を用いた場合はCM(+)マーカーとして用いることができる。
[3.組織型識別マーカーの使用]
本発明の、組織型に基づく上皮性卵巣癌の組織型の罹患の識別は、上記のようなプロファイリングによって得られた組織型識別マーカーを用いて行う。上皮性卵巣癌の組織型として、明細胞型、類内膜型、漿液性腺型、粘液性腺型の識別を行うためには、組織型識別マーカーとして上述<1>〜<14>のような発現パターンを示す生体分子の少なくとも1つを、以下のように用いることができる。
[3−1.特定の1つの組織型において特異的な発現パターンを示す組織型識別マーカーの使用]
上記発現パターン<1>〜<4>のように、特定の1つの組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子の場合、例えば、C(+)が有意に検出された(すなわち発現亢進を示した)ことが分かれば、それのみをもって、明細胞癌に罹患していることの有力な指標となる。また、E(+)が有意に検出されたことが分かれば、それのみをもって、類内膜癌に罹患していることの有力な指標となる。S(+)及びM(+)についても、同様のことがいえる。なお、同じ発現パターンを示す異なる生体分子を組み合わせて用いても良い。
上記発現パターン<11>〜<14>のように、特定の1つの組織型において特異的に発現抑制を示す生体分子の場合、例えば、C(-)が有意に検出されなかった(すなわち発現抑制を示した)ことが分かれば、それのみをもって、明細胞癌に罹患していることの有力な指標となる。また、E(-)が有意に検出されなかったことが分かれば、それのみをもって、類内膜癌に罹患していることの有力な指標となる。S(-)及びM(-)についても、同様のことがいえる。なお、同じ発現パターンを示す異なる生体分子を組み合わせて用いても良い。
[3−2.特定の複数の組織型において特異的な発現パターンを示す組織型識別マーカーの使用]
上記発現パターン<5>〜<10>のように、特定の複数の組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子は、他の発現パターンを示す生体分子と組み合わせて用いられる。
例えば、CS(+)とCM(+)とについて発現量を調べ、その両方が有意に検出されたことが分かれば、その組み合わせをもって、明細胞癌に罹患していることの有力な指標となる。
例えば、CS(+)とCM(+)とについて発現量を調べ、その両方が有意に検出されなかったことが分かれば、その組み合わせをもって、類内膜癌に罹患していることの有力な指標となる。
例えば、CS(+)とC(+)とについて発現量を調べ、その両方が有意に検出されたことが分かれば、C(+)が有意に検出されたことのみをもって得られる、明細胞癌に罹患しているという判断を、さらに高い信頼性によって裏付けることができる。
例えば、CS(+)とC(-)とについて発現量を調べ、CS(+)が有意に検出されたことと、C(-)が有意に検出されなかったこととが分かれば、C(-)が有意に検出されなかったこととのみを持って得られる、明細胞癌に罹患しているという判断を、さらに高い信頼性によって裏付けることができる。
このように、特定の複数の組織型において特異的に発現亢進を示す生体分子を識別マーカーとして用いる場合は、他の発現パターンを示す任意の生体分子と組み合わせることによって、組織型の識別を行うことができる。組み合わせる生体分子の数も限定されないことは言うまでもない。具体的には、マーカーの検出及び定量手段にもよるが、5種以上、例えば5〜10種、又は5〜30種程度の組み合わせを行うと良い。組み合わせを行うことによって、信頼性の高い組織型識別を行うことが可能になる。
[4.組織型識別マーカーの検出処理]
対象となる個人に由来する試料は、組織型識別マーカーについての検出処理に供される。検出処理においては、マーカー分子の分離精製工程や同定工程を適宜含め、当該マーカー分子の有意な検出の有無の調査(すなわち量的解析)が行われる。
[4−1.組織型識別マーカーの分離精製]
マーカー分子の分離精製法としては、特に限定されない。従って、当業者によって選択されるあらゆる技術を用いることができる。そのような技術としては、例えば、電気泳動、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、アフィニティ、及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーなど)、遠心分離、免疫沈降、溶解度差を利用した分離精製等が挙げられる。
[4−2.組織型識別マーカーの同定]
マーカー分子の同定法としても、特に限定されない。従って、当業者によって選択されるあらゆる技術を用いることができる。そのような技術としては、ペプチドマスフィンガープリンティングなどの質量分析法を用いた方法が挙げられる。
[4−3.組織型識別マーカーの定量]
マーカー分子の定量法としても、特に限定されない。従って、当業者によって選択されるあらゆる技術を用いることができる。そのような技術としては、例えば、各種染色法(蛍光、化学発光、発色による染色法を含む)による解析法、生体特異的親和性に基づく解析法、その他の定量解析法から任意に選ばれる。
各種染色法は当業者によってよく知られた方法であり、特に限定されない。したがって、具体的な染色法プロトコルは、当業者であれば容易に選択することができる。各種染色法は、下記の生体特異的親和性に基づく解析法のプロトコルの一環としてもしばしば用いられる。
生体特異的親和性に基づく解析法は当業者に良く知られた方法であり、特に限定されないが、組織型識別マーカーに対する抗体を用いたイムノアッセイが好ましい。具体的には、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ、免疫沈降法、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散法、凝集測定、補体結合分析検定、免疫放射定量法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの、競合及び非競合アッセイ系を含むイムノアッセイが含まれる。イムノアッセイにおいては、個体の試料中の組織型識別マーカーに結合する抗体の存在を検出する。具体的には、アッセイ培地中において、測定すべき組織型識別マーカータンパク質及び当該タンパク質の抗体からなる免疫複合体を形成しうる条件のもと、試料を当該抗体に接触させることによって行われる。より具体的なイムノアッセイプロトコルは、当業者であれば容易に選択することができる。
その他の定量解析法としては、質量分析を用いた方法が挙げられる。例えばNBS(ニトロベンゼンスルフェニル)法やICAT法などの同位体標識法を用いた質量分析は、定量性に優れた方法である。質量分析を用いた方法のより具体的なプロトコルは、当業者であれば容易に選択することができる。
なお、本発明においては、検出処理の中で、翻訳後修飾の区別をすることができる定量法、及び翻訳後修飾の区別をすることができない定量法のいずれも選択可能である。翻訳後修飾の区別をすることができる定量法としては、2次元電気泳動法などが挙げられる。翻訳後修飾の区別をすることができない定量法としては、生体特異的親和性に基づく解析法が挙げられる。
[5.有意な検出の有無の調査]
有意な検出の有無は、サンプル中のマーカーの定量値と、当該マーカーの基準値とを比較することによって判断する。比較を行うための方法としては特に限定されない。相対比較を行う方法や、相関・近似解析が可能な方法を、当業者が適宜決定することができる。有意な検出の有無は量的解析によって調べられるため、上記のプロファイリングの変動解析において行われた方法に準じて行うことができる。
近似を数値化できる手法は、対象となるサンプルが組織型の混在したケースである場合にも対応しやすいという点で好ましい。
[5−1.プロファイルを利用する方法]
マーカーの基準値としては、当該マーカーの「各組織型に代表的な定量値」(具体的には各組織型における平均値)を採用することができる。
上記のプロファイリングにおいては、マーカー分子が、組織型間で相対的にどのような有意差をもって、絶対値としてどの程度のレベルで発現するかが、実際の定量により見出される。そして、そのように見出された、各組織型における発現量の絶対値が、「各組織型に代表的な定量値」としてプロファイルになる。
「各組織型に代表的な定量値」は、当業者によって、あらかじめ、検出方法別に求められる。例えば、対象となる個人の試料中から、二次元電気泳動を用いてマーカー検出を行う場合は、本発明者らによって実際に行われた(すなわち二次元電気泳動を用いて行われた)プロファイリングによって得られたデータを直接、「各組織型に代表的な定量値」として利用することができる。
対象となる個人に由来する試料におけるマーカーの定量値が、有意に検出されたものであるかということは、当該定量値が、「各組織型に代表的な定量値」のどれに一番近似しているかということによって評価することができる。これにより、組織型の診断/分類などを行うことができる。
具体的には、複数のマーカーについて定量を行い、「各組織型に代表的な定量値」との包括的な近似を求める統計処理によって、得られた定量値が有意な検出かどうかを評価することができる。定量を行うマーカーの数としては特に限定されないが、5種以上、例えば5〜10種、又は5〜30種とすることができる。
近似を求める統計処理の具体例としては、相関係数の計算や主成分解析などが挙げられる。これらの具体的な方法は、統計学的観点から当業者によって適宜決定されるものである。例えば、主成分解析(Principal component analysis)は、多数の成分の相関をまとめて二次元のベクトルに変換し、それによって示される空間上の位置により、分類を行うものである。この方法を用いる場合、例えば、対象となる個人に由来する試料中のマーカー定量値が、プロファイルをもってあらかじめ定義したエリアに収まれば、有意に検出されたと判定することができ、従って、任意に設定した精度で診断/分類ができたということになる。
[5−2.閾値を利用する方法]
上記の方法は、プロファイルを利用して包括的に近似を求める方法であり、ある程度の数の複数のマーカーを用いて行われる。これに対し、用いることができるマーカーが少数(例えば1種〜5種)で、定量及び評価をそれぞれのマーカーについて単独で行う場合は、以下のように、マーカーの基準値として、閾値を利用する方法を採用することができる。
この方法においては、組織型特異性がより高いマーカーを用いることが好ましい。対象となる個人に由来する試料におけるマーカーの定量値が、有意に検出されたものであるかということは、当該定量値が、当該マーカーに関する閾値より上(もしくは下)であるということによって評価することができる。これにより、罹患診断などの判定を行うことができる。この方法は、当該定量値を正常試料における定量値と比較する場合に有用である。
具体的には、用いることができるマーカーそれぞれについて、ROC曲線を利用してカットオフ値を設定する。P値の閾値は当業者によって任意に設定されるものである。設定したカットオフ値における感度を縦軸に、特異性を横軸にプロットし、通常、感度と特異性とがバランスよく高いカットオフ値が採用される。このため、当業者により、各マーカーに対して別途正常試料を多数用いて検討が行われる。マーカーの定量値が、このようにして採用されたカットオフ値より上か下かを調べることにより、各マーカーの定義に基づいて判定が可能になる。
[6.組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別方法のより具体的な形態]
以下に、組織型に基づく上皮性卵巣癌の罹患の識別方法のより具体的な形態を挙げる。
[6−1.二次元電気泳動を用いた組織型の分子タイピング]
この方法は、術摘した癌組織に対して好ましく行うことができる。基本的には、本発明者らによって行われたプロファイリングの方法に準ずる。従って、自動化されたスキームで行われることが好ましい。このような方法においては摘出した癌組織を、−80℃以下、好ましくは液体窒素環境下で粉砕し、二次元電気泳動に供し、展開後のゲルを染色剤により可視化する。具体的なプロトコルは、当業者であれば容易に選択することができる。可視化されたスポットのうち、発現プロファイルを構成する全てのタンパク質について、スポット強度を定量する。これによって得られた定量値と、発現プロファイルにおいてデータベース化された「各組織型に代表的な定量値」(具体的には各組織型における平均値)とを比較し、統計解析によって検定を行う。具体的には、近似又は相関解析によって検定を行うことが好ましい。具体的には、t検定等が挙げられる。これにより、一番近似した組織型を決定する。
[6−2. ELISA法を用いた組織型の分子タイピング(1)]
この方法は、術摘した癌組織に対して好ましく行うことができる。ELISA法の具体的なプロトコルは、当業者であれば容易に選択することができる。定量は、発現プロファイルを構成するタンパク質を抗原とし、その抗体を用いて簡便に行うことができる。発現プロファイルを構成するすべてのタンパク質について定量を行わなくとも良く、その中でも特異性の高いタンパク質、或いは挙動が安定しているタンパク質を適宜選択すればよい。選択する数としては、5〜10程度とすることができる。この場合も、上記の方法1と同様
、得られた定量値と、発現プロファイルにおいてデータベース化された「各組織型に代表的な定量値」(具体的には各組織型における平均値)とを比較し、統計解析によって検定を行う。
[6−3.免疫組織染色法を用いた組織型の分子タイピング]
この方法は、術摘した癌組織の組織切片に対して好ましく行うことができる。組織切片としては、凍結切片、及びパラフィンやその他の包埋剤による包埋切片など、あらゆる形態の切片が許容される。免疫組織染色法の具体的なプロトコルは、当業者であれば容易に選択することができる。定量は、発現プロファイルを構成するタンパク質を抗原とし、その抗体を用いて簡便に行うことができる。発現プロファイルを構成するすべてのタンパク質について定量を行わなくとも良く、その中でも特異性の高いタンパク質、或いは挙動が安定しているタンパク質を適宜選択すればよい。選択する数としては、5〜30程度とすることができる。染色の度合いから、病理部分およびその組織型診断を行うことができる。プロファイルにおいてデータベース化された「各組織型に代表的な定量値」に対応する「代表的な染色像」を元に、目視或いは画像解析ツールなどにより、染色度合いが最も近似した組織型を決定する。
[6−4.マスイメージングを用いた組織型の分子タイピング]
この方法は、上記の方法3に類するものである。方法3で挙げたような組織切片に対して好ましく行うことができる。MALDI-TOF質量分析器を用いて、組織切片上から直接的にマーカー分子を検出する。組織切片上のレーザーの照射位置と検出したマーカー分子の強度とを対応させ、マーカー分子の分布を画像として出力する。マーカー分子の強度から、病理部分およびその組織型診断を行うことができる。この場合も、上記の方法1と同様、得られたマーカー分子の定量値と、発現プロファイルにおいてデータベース化された「各組織型に代表的な定量値」(具体的には各組織型における平均値)とを比較し、統計解析によって検定を行う。
[6−5. ELISA法を用いた組織型の分子タイピング(2)]
この方法は、採取可能な体液に対して好ましく行われる。体液としては、血液、腹水などが代表的なものとして挙げられる。この方法においては、発現プロファイルを構成するタンパク質のうち、体液中からも検出が可能であること;検出した分子が癌組織由来であること;及び癌組織での発現量と体液からの検出量が相関するものであること、の3つの条件を満たすタンパク質をマーカーとし、それに対する抗体を用いて定量を行う。この場合も、上記の方法1と同様、得られたマーカー分子の定量値と、発現プロファイルにおいてデータベース化された「各組織型に代表的な定量値」(具体的には各組織型における平均値)とを比較し、統計解析によって検定を行う。
[6−6.免疫沈降−質量分析法を用いた組織型の分子タイピング]
この方法は、上記の方法5に類するものである。方法5で挙げたような体液に対して好ましく行われる。上記5において用いられるマーカー分子を抗原とした抗体を担体(好ましくはビーズ)に固定し、免疫沈降によりマーカー分子を濃縮する。濃縮された分子をビーズごとMALDI-TOF質量分析に供し、定量的に検出する。この場合も、上記の方法1と同様、得られたマーカー分子の定量値と、発現プロファイルにおいてデータベース化された「各組織型に代表的な定量値」(具体的には各組織型における平均値)とを比較し、統計解析によって検定を行う。
[7.その他]
本発明の方法は、本発明の腫瘍マーカーを単独で測定してもよいし、他のいかなる腫瘍マーカー(例えばCA-125やCA-19-9など)と組み合わせて測定しても良い。従って、本発明の方法は、本発明の腫瘍マーカーのレベルと同様に他の腫瘍マーカーのレベルを測定する工程を含んでいてよい。
本発明の腫瘍マーカーは、癌の検出(スクリーニング)、診断、モニタリング、ステージング及び予後判定を目的として用いられるとよい。例えば、腫瘍の位置及びその動態の把握に用いられるとよい。より具体的には、腫瘍に対して化学療法や放射線療法が行われる場合、その治療をどの部位に対して行うべきかを把握するために用いられると良い。また、腫瘍に対して化学療法や放射線療法がすでに行われている場合、その治療がどれくらいの効果を奏しているかを判断することに用いられるとよい。さらに、腫瘍マーカー値が高い腫瘍に対して切除手術が行われた場合、術後の経過観察のために用いられるとよい。
[8.薬剤組成物]
本発明の組織型識別用マーカーのうち、特定の1つの組織型の上皮性卵巣癌に罹患している癌患者体内で発現量が多いタンパク質を含む腫瘍マーカーを用いることによって、特定の組織型の癌を処理するための薬剤組成物が提供されうる。
薬剤組成物の一形態は、癌細胞に対して供給することによって、癌細胞の死滅及び/又は癌細胞成長の抑制を促進する反応を誘発するための薬剤組成物であって、本発明の腫瘍マーカーに免疫特異的に結合する少なくとも1種の抗体を含む、薬剤組成物である。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及び、分子生物学的技術により調製した抗体を含む。ここで抗体とは、広く免疫特異的に結合する物質であればよく、抗体フラグメントや抗体融合タンパク質も用いられてよい。いずれの場合も、抗体の調製は、当業者に良く知られた方法によって行われる。
薬剤組成物の他の一形態は、免疫刺激量で、癌細胞に対して供給することによって、免疫応答を促進するための薬剤組成物であって、本発明の腫瘍マーカーを含む、薬剤組成物である。ここで、免疫刺激量とは、癌の処理のために所望する免疫反応を惹起することが可能な抗原の量をいい、当業者によって良く知られた方法で決定されるものである。この形態によると、いわゆる癌ワクチン療法として知られている、当業者に良く知られた方法を用いて癌の処理が行われる。
上記薬剤組成物は、上記抗体或いは腫瘍マーカーを有効成分として含み、薬剤として許容される希釈剤、担体、賦形剤などをさらに含んでよい。上記薬剤組成物は、癌の処理に用いられる潜在的な治療剤として特定されうる。或いは、上記薬剤組成物は、癌の処理に用いられる治療剤として適用されうる。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、%で示される量は、特に断りの無い限り、重量/体積を基準にした量である。
<実施例1>
患者から切除され、組織病理学的観点から正確に組織型診断が下された上皮性卵巣癌の病理組織(4組織型41検体:明細胞癌13検体、類内膜癌11検体、漿液性腺癌11検体、粘液性腺癌6検体)を用いたプロファイリングを行った。
切除された病理組織(液体窒素中で保管しておいたもの)を、液体窒素存在下で適切なサイズの破片に破砕した。破砕された組織検体を、スクリューキャップつきのマイクロチューブに移し、約5倍重量のLysis buffer(50 mM HEPES-NaOH pH 7.5, 100 mM NaCl, 2% CHAPS, 1% Triton X-100)中に懸濁させた。縣濁液のままBradford法にて濃度を定量し、タンパク質300μg分の検体をトリクロロ酢酸沈殿にて脱塩処理し、二次元電気泳動用の試料とした。
洗浄された沈殿を、一次元目の等電点電気泳動用バッファ(6 M urea, 2 M thiourea, 3 % CHAPS, 1 % Triton X-100、0.5% IPGバッファ、及び1.2% DeStreak Reagent)を250μl添加して再可溶化し。また、その一次元目等電点電気泳動用バッファを用いて、Immobiline DryStrip, pH 3-10 NL, 13cm (GE Healthcare)を6時間かけて膨潤させた。膨潤されたストリップゲルに対して、50V - 4時間、150V - 1時間、及び5000V - 17.5時間の条件で等電点電気泳動を行った。
泳動後のストリップゲルを一旦-80℃で保存した後、平衡化バッファ(375 mM Tris-HCl pH 8.8, 6 M urea, 2 % SDS, 20 % glycerol)にて30分間平衡化し、二次元目のゲル(tris-HCl 10-18 % グラジエント, 13 cm x 13 cm, 1 mm 厚)上部にアプライして、ダイフロントがゲル端に到達するまで定電流で二次元目方向へ泳動を行った。
電気泳動後のゲルは、CBB-G250を含んだ染色剤により可視化した。
以上の工程を、4組織型41検体(明細胞癌13検体、類内膜癌11検体、漿液性腺癌11検体、粘液性腺癌6検体)に対して行った。そのうちの代表的な泳動像として、4組織型41検体から得られた2次元電気泳動図を図1〜4に示す。デンシトメータにてゲルの画像を600dpi, 16-bitグレースケールで取得した。ゲル画像中のスポットを二次元画像解析ソフトウェアにて検出、数値化した。発現しているタンパク質の情報を網羅的に得るため、1530のリファレンススポットを含む、全10219のスポットを11枚のゲルから切り取り、ペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)を行った。その結果、1139のタンパク質種(1つのスポットから混合物として同定されたものも含む)を同定した(P<0.05)。
図5に、プロファイリングのシステムの概略図を示す。
プロジェクトマネジメント、二次元電気泳動、PMFマネジメント、及びデータベースサーチの工程を経て、サンプル情報、二次元画像解析ソフトウェアにて数値化した10219のスポットに関する情報(ゲル画像、及びゲル上のスポット位置情報)、MSスペクトルデータ、及びデータベース検索結果)を、インハウスデータサーバ(SOLPHI、島津製作所から販売)にインポートした。その結果、11検体について、スポットに関する全ての必要な情報が視覚的にリンクされた統合2Dマップを得た。この統合2Dマップは後のデータマイニングに有用である。
11の各ゲルより検出された全てのスポットを、泳動位置と同定結果とをもとにマッチングし、マッチIDにて統一されたスポット強度のリストを作成した。スポット強度は、バックグラウンドの値を引いたうえで、全てのゲルに共通して見られるスポットの合計強度を基準に標準化して算出した。マッチングするスポットが認識できない場合は、解析の便宜上、当該スポットの発現量はその時点での平均値の1/3と定義した。このスポット強度のリストは、具体的には、リファレンススポットID、PMFの結果得られたアクセッションID及びタンパク質名、対応するUnigeneID、及びノーマライズ後の発現量(すなわちスポット強度)を一列に並べたアレイスタイルのフォーマットで作成された。
作成されたスポット強度のリストをMicrosoft Excelに展開し、各組織型における平均値と、その平均が他の組織型の平均と比べて有意に差があるかどうかを評価するためのT検定値とを計算した。検定は等分散を仮定した両側検定で行い、有意水準を0.005に設定した。また、組織型間の平均値の変動幅も同時に計算し、3倍以上の変動幅がある場合のみ、有意水準を0.05に引き上げた。以上の条件を満たすスポット群を、組織型によって有意に変動するタンパク質と定め、発現プロファイルとした。
具体的には、図6に示すように、異なる発現パターンを、14の大まかなモデル発現パターン(Pattern 1〜Pattern 14)に分類した。図6においては、Cは明細胞型、Eは類内膜型、Sは漿液性線型、Mは粘液性腺型を示す。縦軸は、ノーマライズされた発現量の平均値(Mean normalized expression)のモデル相対量を示す。各スポットがどの発現パターンに帰属するかについては、全ての発現パターンについて対立仮説を立て検定を行った場合に、棄却される確率が一番低い仮説に属するものとした。例えば、Pattern 1は「明細胞型で有意に発現が亢進している」という定義であり、検定の際は「明細胞型サンプルでの平均はその他全てのサンプルの平均より大きい」という対立仮説について検定値を求めた。もしこの検定値が他の13パターンより得られた検定値より低かった場合は、このスポットは明細胞型で特異的に発現が亢進していると見ることができる。
以上の計算を全てのスポットについて自動的に行うようなワークシートを作成することで、スポットの発現パターンの定義と、それが有意であるかどうかの判定が簡便に行えるシステムを構築した。また、上述の組織型間の平均値の変動幅は、それぞれのスポットの発現パターンに準じて算出した。
絞り込まれた80の候補タンパク質のプロファイルを表1〜3に示す。表1〜3においては、絞り込まれたタンパク質の発現パターン(Pattern);PMFにより同定したタンパク質のアクセッションID(Accession)及びタンパク質名(Protein Name);明細胞型(Clear Cell)、類内膜型(Endometrioid)、漿液性腺型(Serous)、及び粘液性腺型(Mucinous)それぞれのノーマライズ後の発現量(以下、単に発現量と記載する);発現変動幅(Fold-change)およびT検定(t-test)でのP値を示す。表1において複数回記載があるタンパク質は、リン酸化等の翻訳後修飾によりゲル上では全く別の位置に分離されたもので、ここでは別個の分子として扱う。
このうち、特に高い特異性を示したAnnexin A4、Maspin precursor、Cellular retinoic acid-binding protein 2(CRABP2)、及びPhosphoserine aminotransferaseについて、ノーマライズされた発現量(Protein level)を組織型別に表した一次元散布図を、それぞれ図7、8、9及び10に示す。図中、四角でプロットされた点は二次元電気泳動(2DE)のスポットにより定量された値を示し、三角でプロットされた点はウェスタンブロッティング(WB)により定量(後述)された値を示し、バーは平均値(mean)を示す。
上記プロファイルを用い、組織型が不明の組織について組織型分子タイピングを行うことができる。この方法は、当業者であれば上記プロファイリングの方法に準じて容易に決定することができる。すなわち、組織型不明の組織について、上記と同様に二次元電気泳動、ペプチドマスフィンガープリンティングを行い、表1のプロファイルを構成するタンパク質について量的解析を行う。量的解析では、基準となる量として、表1における量を用いることを除いては、上記プロファイリングと同様の手法を用いて定量及び相関近似解析を行うことができる。
<実施例2>
分子的な手法を用いて未知の卵巣癌組織の組織型を診断する場合において、上述した80のマーカー候補のうちどの分子が決定的な役割を果たすのかを絞りこむため、統計解析ソフトSPSS(SPSS Inc.)を利用し、決定木を用いた分類予測モデルを構築した。従属変数は4種の組織型を、独立変数はマーカー候補80スポット分の定量値を3段階(低発現、高発現、特に高発現)にスケール化して用いた。スケール化する際の基準値は、プロファイルにより求められた各マーカー候補の発現パターンと平均定量値をベースに、適宜決定された。
その一例として、プロファイルのもとになった41検体を用いて作成した、未知の検体が明細胞型かどうかを判別する決定木モデルを図11に示す。図11においては、分岐の変数として用いられたタンパク質を破線内に示し、その発現の高いサンプルグループを右方向のノードにまとめた。このモデルが有効であれば、明細胞型の検体はノード4またはノード9に集約され、他の組織型と容易に区別することが可能になる。
そこで、実施例1において用いられた41検体とは別の7検体を用いて、モデルの検証を行った。各検証検体は、他のもの同様に、あらかじめ組織型診断がなされたもので、同様に二次元電気泳動に供され、関連スポットの定量がなされた。これを先述の決定木モデルにあてはめて分類を行ったところ、7検体中のすべてを正しく判定することができた。検証検体の分類結果は、図11において、各ノードの括弧内に斜体で示されている。
さらに、この決定木において明細胞型と判定されなかったサンプル群について、再帰的に同様の決定木を適用することで、類内膜型、漿液性腺型、粘液性腺型へと段階的に判定を行うことが可能である。例えば10〜20のタンパク質の定量値を投入するだけで自動的に組織型の診断を行うようなシステムを構築することが容易である。
<実施例3>
実施例1で二次元電気泳動に供されたものと同じ組織抽出物(粘液性腺癌1検体除く)を用いて、ウェスタンブロッティングによる定量的検出を行った。抗体は、抗Annexin-A4 (D-2, Santa Cruz Biotechnology)、抗Maspin precursor (G167-70, BD Transduction Laboratories)、抗Cellular retinoic acid-binding protein 2 (Bethyl Laboratories)及び抗Phosphoserine aminotransferase (Proteintech Group Inc.)が用いられた。
40検体、4抗体によるウェスタンブロッティングの結果を図12(明細胞型及び類内膜型について)及び図13(漿液性腺型及び粘液性腺型について)に示す。これらの図が示すように、それぞれ目的の分子量の位置に特異的にバンドが検出され、二次元電気泳動によって得られた結果と同様に、組織型特異的と見られる発現パターンを示した。なお、各バンドは、同じサンプルから検出されたローディングコントロール(loading control)としてのβアクチン(Beta actin)のバンドを基準として定量された。組織型別の発現パターンを確認するため、実施例1で行ったのと同様にパターンごとに有意水準(P値)を試算したところ、
Annexin-A4 CM+(P<0.0001)
Maspin precursor M+(P<0.0001)
Cellular retinoic acid-binding protein 2 S+(P<0.0001)
Phosphoserine aminotransferase C+ (P<0.0001)
で、それぞれ14パターン中最も低いP値が得られた。さらに、ウェスタンブロッティングでの定量値を二次元電気泳動での定量値と同じスケールにのせ、図7−10(前述)において三角でプロットして示した。各タンパク質の、各サンプルにおける2つの定量値の相関係数は、それぞれr=0.5以上でありP<0.001水準で有意であった。これにより、実施例1におけるタンパク質の同定結果及び発現量比が裏付けられた。
なお、ウェスタンブロッティングの結果を用いた結果、Annexin-A4の発現パターンのみがCM+と決定され、実施例1にて決定した発現パターンC+と異なる結果が得られた。これは、二次元電気泳動では翻訳後修飾などにより複数にスポットに分離されて検出されていたものが、ウェスタンブロッティングでは区別されずに検出されていることに起因している。
すなわち、翻訳後修飾の有無を区別することができる二次元電気泳動法と異なる方法でマーカータンパク質を検出する場合は、翻訳後修飾の有無が区別されずに検出され得る。そのような場合は、検出の前に予備実験を行うことが特に好ましい。例えば二次元電気泳動法と異なる方法としてウェスタンブロッティング法を選択して用いる場合(以下、ウェスタンブロッティング法以外の方法を選択する場合も同様である)、当該予備実験においては、二次元電気泳動法及びウェスタンブロッティング法の両検出方法の間で検出結果が有意に相関しているかどうか、そして、マーカーとしての有意性を保てているかどうか(P<0.01)、という条件を確認する。ここで、両検出方法の間で検出結果が有意に相関しているとは、Spearmanの相関関数ρが正数且つ5%水準で優位(P<0.05)である状態を示す。
ウェスタンブロッティング法を用いた場合と、二次元電気泳動法を用いた場合とのどちらかでも上記の条件を満たしていない場合は、ウェスタンブロッティング法を選択することは妥当ではないと判断することができる。一方、ウェスタンブロッティング法を用いた場合に、二次元電気泳動法を用いた場合と異なる発現パターンがより有意であると判断できる場合は、当該選択されたウェスタンブロッティング法においてのみ本来の発現パターンとは異なる利用法をしてもよい。
例えば、Annexin-A4は、ウェスタンブロッティング法を用いた場合に、2次元電気泳動法を用いた場合と異なる発現パターンがより有意であると判断できる例の一つである。従って、Annexin-A4は、ウェスタンブロッティング法を用いる場合においてはCM+マーカーとして使用することができる。
他に、実施例1の結果より本発明で把握している範囲では、Alpha crystalline B chain、Phosphoserine Aminotransferase 及びPurine Nucleoside Phosphorylaseが、二次元電気泳動で2つ以上のスポットに観察された。このうち、Phosphoserine Aminotransferaseについては、ウェスタンブロッティングにおいても発現パターンが同じC+を示すことが確認された。また、Phosphoserine Aminotransferaseをマーカーとして用いる場合、実施例1の結果において翻訳後修飾の有無によらず組織間での発現傾向は一致するため、用いる定量方法として翻訳後修飾の有無の区別がつく定量方法、つかない定量方法によらず、C+のマーカーとしての使用が可能であることが予測される。Annexin-A4については、実施例3の結果より翻訳後修飾の有無の区別がつかない定量法を用いる場合、CM+のマーカーとして使用することができる。Alpha crystalline B chain 及びPurine Nucleoside Phosphorylaseについては、使用する検出法において別途予備実験を行い、上述した基準で有効性を確認することによって、当該検出法におけるマーカーとして使用することができる。
次に、このウェスタンブロッティングによる定量値をマーカーとして利用するため、発現パターンと同じか否かという基準でROC曲線をプロットし、感度が100%になる値をそのマーカーの閾値と定めた。たとえばAnnexin-A4の場合、発現パターンがCM+なので、明細胞型と粘液性腺型のサンプルの中で一番低い定量値が閾値になる。結果として、各サンプルは4つのタンパク質の定量値が閾値以上(+)か閾値未満(−)かの組み合わせとして評価することができる。
ウェスタンブロッティング法を用いて4つのタンパク質の発現レベルに基づく組織型分類を行った結果を図14に示す。図14においては、特定の組み合わせが発生する頻度をまとめた。この結果は、用いた40検体のうちの38検体(95%)が、この方法により正しく組織型の分類がなされていることを示す。例えば、本実施例で用いた検体のうち、明細胞型の13検体を一例に挙げると、その全てがANXA4(+),MASPIN(-), CRABP2(-), PSAT1(+)という発現レベルの組み合わせを示し、他の組織型の検体で同じ組み合わせを持つものは無かった。従って、組織型が未知の検体から、ウェスタンブロッティング法によってこの組み合わせが検出された場合には、その検体が明細胞型である可能性が高いと予測することができる。
上述より、少数のタンパク質に対する抗体を用いた生体特異的親和性に基づく検出法により、組織型の分子タイピングが有効に可能であることが確認された。
上記実施例においては、本発明の範囲における具体的な形態について示したが、本発明は、これらに限定されることなく他のいろいろな形態で実施することができる。このため、上記実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて本発明の範囲内である。

Claims (4)

  1. 対象となる個人の明細胞型上皮性卵巣癌の識別を補助する方法であって、
    対象となる個人に由来する卵巣がん組織サンプルをAnnexin A4 の検出に供し、
    明細胞型、類内膜型、漿液性腺型及び粘液性腺型の各卵巣がん組織型の基準値と比較してAnnexin A4 が発現亢進しているか否かを決定し、
    Annexin A4 が発現亢進している場合に、卵巣がん組織サンプルが明細胞型であると識別することを含む方法。
  2. 対象となる個人の粘液性腺型上皮性卵巣癌の識別を補助する方法であって、
    対象となる個人に由来する卵巣がん組織サンプルをMaspin precursor の検出に供し、
    明細胞型、類内膜型、漿液性腺型及び粘液性腺型の各卵巣がん組織型の基準値と比較してMaspin precursorが発現亢進しているか否かを決定し、
    Maspin precursorが発現亢進している場合に、卵巣がん組織サンプルが粘液性腺型であると識別することを含む方法。
  3. 対象となる個人の漿液性腺型又は粘液性腺型上皮性卵巣癌の識別を補助する方法であって、
    対象となる個人に由来する卵巣がん組織サンプルをCellular retinoic acid-binding protein 2の検出に供し、
    明細胞型、類内膜型、漿液性腺型及び粘液性腺型の各卵巣がん組織型の基準値と比較してCellular retinoic acid-binding protein 2が発現亢進しているか否かを決定し、
    Cellular retinoic acid-binding protein 2が発現亢進している場合に、卵巣がん組織サンプルが漿液性腺型又は粘液性腺型であると識別することを含む方法。
  4. 対象となる個人の明細胞型上皮性卵巣癌の識別を補助する方法であって、
    対象となる個人に由来する卵巣がん組織サンプルをPhosphoserine aminotransferase の検出に供し、
    明細胞型、類内膜型、漿液腺型及び粘液性型の各卵巣がん組織型の基準値と比較してPhosphoserine aminotransferaseが発現亢進しているか否かを決定し、
    Phosphoserine aminotransferaseが発現亢進している場合に、卵巣がん組織サンプルが明細胞型であると識別することを含む方法。
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