JP5296005B2 - 架橋スルホン化ポリイミド及びその用途 - Google Patents
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Description
しかし、これらのスルホン化ポリイミドは、電子吸引性のスルホン酸基のためにイミド結合が容易に加水分解するので耐水性が著しく劣るものであった。耐水性を持たせるために、加水分解し易いスルホン酸基含量成分を減らし非スルホン酸基含有成分を多量に含んだ共重合化ポリイミドが検討されたが、このような共重合ポリイミドフィルムは、スルホン酸基含有量の低下のためイオン交換容量やプロトン伝導性などの特性を著しく低下させるものであり好ましいものではなかった。このため、イオン交換容量やプロトン伝導度が優れ、且つ耐水性や吸水時の寸法変化などが改良されたスルホン化ポリイミドが求められていた。
耐水性が向上したスルホン化ポリイミドとして、特定のスルホン化ジアミンを用いたスルホン化ポリイミドが、特許文献5及び6に開示されている。しかし、耐水性や吸水時の寸法変化などには更に改良の余地があった。また、これらが直接メタノール型燃料電池用高分子電解質膜として用いられるためにメタノール透過性についても更に改良の余地があった。
また、特許文献15は、多価アミンを主成分としたポリアミド酸の三次元網目構造体の脱水・閉環反応により生成したポリイミド化体について言及しているが、スルホン化ポリイミドについては何ら言及していない。
本発明の架橋スルホン化ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸成分と、置換基としてスルホン酸基又はその誘導体基を有するスルホン化芳香族ジアミンを含む芳香族ジアミン成分と、3官能以上の芳香族アミン化合物とから合成される。
本発明において、スルホン酸基又はその誘導体基とは、アルコキシスルホン酸基、及びそのナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属との塩、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N −ジメチルアニリンなどの第3アミンとの塩、ピリジン、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどの環式アミンとの塩である。
前記水酸基を有する芳香族ジニトロ化合物は、少なくとも1つ以上の芳香環を有し、かつ芳香環に直接結合した2個のニトロ基と少なくとも1つ以上の水酸基を有するものであり、例えば、2,4−ジニトロフェノール、2,5−ジニトロフェノール、4,6−ジニトロクレゾール、3,5−ジニトロカテコール、4,4’−ジヒドキシ−(3,3’−ジニトロ)ビフェニル、などを好適に挙げることができる。
前記水酸基を有する芳香族ジニトロ化合物のアルカリ金属塩は、前記極性溶剤中で、水酸基を有する芳香族ジニトロ化合物と炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムなどとを、共沸溶剤としてトルエン、ベンゼン、キシレンなどを用いて、生成する水分を除去しながら、100〜160℃で0.5〜5時間反応することによって合成できる。
また、前記ハロゲン化アルキルスルホン酸アルカリ金属塩は、末端にスルホン酸アルカリ金属塩を有するハロゲン化アルキル化合物であり、例えば、2−ブロモエタンスルホン酸、3−ブロモプロパンスルホン酸、4−ブロモブタンスルホン酸、などのカリウム、ナトリウム、リチウム塩を好適に挙げることができる。
この合成法(F)で、アゾカップリング反応及びそれに続く転位反応は、日本化学会編、新実験化学講座15,酸化と還元、丸善、1975年などに記載されているような公知の方法を用いることができ、例えば、Zn/NaOH/メタノールー水中で加熱してアゾベンゼンとし、次いでZn/エタノール−アンモニア中で加熱してヒドラゾベンゼンにし、濃塩酸中で加熱してベンジジン転移して達成される。
尚、末端基が芳香族テトラカルボン酸成分残基からなる酸末端スルホン化ポリイミドの末端は、具体的には、ジカルボン酸基、エステル化されたジカルボン酸基、又はジカルボン酸無水物基である。
酸末端スルホン化ポリイミドが、スルホン化芳香族ジアミン成分と非スルホン化芳香族ジアミン成分とからなるブロック共重合体である場合は、前述の酸末端スルホン化ポリイミドの合成方法と同様にして、所定量のスルホン化芳香族ジアミン(又は非スルホン化芳香族ジアミン)とテトラカルボン酸成分を用いて酸末端スルホン化ポリイミド(又は非スルホン化酸末端ポリイミド)を合成した後に、その溶液に所定量の非スルホン化芳香族ジアミン(又はスルホン化芳香族ジアミン)とテトラカルボン酸成分を添加して再度前述の条件で反応させることにより得ることができる。
尚、これらの置換基は酸末端スルホン化ポリイミド、架橋スルホン化ポリイミドのいずれにおいても、また溶液でもフィルムなどの固体状態でも容易に相互に変換することができる。たとえば、置換基が誘導体である架橋スルホン化ポリイミドフィルムを、0.1規定〜3規定の塩酸、硫酸などの酸水溶液に10℃〜80℃で、0.5分〜72時間浸漬することにより、置換基をスルホン酸へ酸置換することができる。また、置換基がスルホン酸の架橋スルホン化ポリイミドフィルムを、0.1規定〜3規定のアルカリ金属の水酸化物やハロゲン化物水溶液、第3アミンや環式アミンを含む溶液に10℃〜80℃で、0.5分〜72時間浸漬することにより、対応する誘導体の置換基へと変換できる。これらの変換の後、必要ならばフィルムの構造を固定化するために、フィルムをステンレス枠などに固定し、最終温度が120℃〜350℃で熱処理しても良い。
本発明の高分子電解質は、置換基がスルホン酸(プロトン型)架橋スルホン化ポリイミドからなるものが、燃料電池への利用の点から好ましい。
本発明の架橋スルホン化ポリイミドは、具体的には、厚さが30μmに成形したフィルムを前記有機溶剤(特にm−クレゾール又はN−メチル−2−ピロリドン)中に25℃で24時間浸漬した後の乾燥重量をWbとし、浸漬前の乾燥重量をWaとしたとき、100×(Wb−Wa)/Waで求められる重量減少率が、30重量%以下、特に20重量%以下、更に10重量%以下になるように架橋したものが好適である。重量減少率が30重量%より大きいと、架橋が不充分であり、吸水時の寸法安定性や耐水性を改良したりメタノール透過性を抑制することが困難となる。
本発明の高分子電解質膜は、前記架橋スルホン化ポリイミド以外の樹脂成分を含んだ組成物であっても構わないが、前記架橋スルホン化ポリイミドが全樹脂成分中10重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に80重量%以上が好ましく、特に100重量%からなるものが好適である。樹脂成分中10重量%未満では、本発明の架橋スルホン化ポリイミドの良好な電解質としての特性を発現することが難しい。
また、他の樹脂成分との組成物を構成する場合、他の樹脂成分は特に限定されないが、例えば置換基としてスルホン酸基を有するか又は有さない芳香族ポリイミドを用いても構わない。
具体的には、本発明の架橋スルホン化ポリイミド電解質膜と膜に接触する触媒担持ガス拡散電極からなる膜/電極接合体(以下、MEAという)を、燃料ガス又は液体、並びに、酸化剤を送り込む流路が形成された一対のグラファイト製などのガスセパレーターなどの間に挿入することにより、燃料電池が得られ、単セルあるいは複数積層されたスタックとして用いることができる。
MEAは、パーフルオロスルホン酸系ポリマーやスルホン化ポリイミドの有機溶媒溶液などを塗布、乾燥させた市販の触媒担持ガス拡散電極(米国E−TEK社製、米国ElectroChem社製など)の触媒層側の面を膜と接触するように、本発明の架橋スルホン化ポリイミド電解質膜の両面に合わせ、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して、一般的には120〜250℃程度のプレス温度で接合することにより作成できるが、これに限定されるものではない。例えば、燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する、白金、ルテニウムなどの金属あるいはそれらの合金、導電材として、微粒子の炭素材料などの導電性物質など、結着剤として、撥水性を有する含フッ素樹脂など、必要に応じて、含浸・被覆材として、パーフルオロスルホン酸系ポリマーやスルホン化ポリイミドなどからなる触媒担持ガス拡散電極を、スクリーン印刷などで、架橋スルホン化ポリイミド電解質膜上に作成しても良く、また、カーボンクロスやカーボンペーパーなどの上に作成した後、前述の方法で、架橋スルホン化ポリイミド電解質膜と接合しても良い。
尚、以下の合成例に示したH−NMRのデータは、溶剤として重水素化ジメチルスルホキシドを用いて、日本電子JEOL EX−270により測定した。
また、本発明における評価方法及び評価結果は、以下のとおりである。
(耐水性)
スルホン化ポリイミド膜(プロトン型)からなる30mm×5mm、厚み30μmのフィルムを130℃、加圧下、熱水に48時間浸漬した後、ピンセットでフィルムを取り出し、120度折り曲げた時(折り曲げた後、フィルム間は60度の角度になる)の破断の有無で評価した。
30mm×20mm、厚み30μmのフィルムを乾燥し、乾燥重量W0 を測定した後、30℃の水に所定時間浸漬した。フィルムを水から取り出し、手早く表面に付着した水をろ紙で拭き取り、重量Wを測定し、次式、
S=〔(W−W0 )/W0 〕×100
で吸水率S(%)を求めた。
テフロン(登録商標)製のプロトン伝導度測定セルに膜シート(1.0×0.5cm2 )と2枚の白金黒電極板(電極間隔0.5cm)を取り付け、50℃の水中に置き、日置電気(株)製3552LCRハイテスタを用いて、複素インピーダンス測定法により、プロトン伝導度を測定した。
直径6cm、厚み30μmの電解質膜及び直径6cm、厚み170μmのナフィオン117(米国Dupont社製)のサンプルを用いて、アクリル製の液透過測定セル(この測定セルにおいて、容量350mlの供給側セルと100mlの透過側セルとの間にバイトンゴムのシール板を介してサンプルを挟みつける。供給側と透過液側はマグネチックスターラで撹拌する。有効膜透過面積:16cm2 )を温度50℃に制御したチャンバー内に置き、供給側にメタノールを10重量%添加して、透過側のメタノール組成をガスクロ分析してメタノール透過係数を求めた。
プロトン型高分子電解質膜を、飽和塩化ナトリウム水溶液に30℃で72時間浸漬した後、0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液で、フェノールフタレインを指示液として用いて滴定することにより求めた。尚、計算値は、用いた芳香族ジアミン成分量、テトラカルボン酸成分量、及び3官能以上の芳香族アミン成分量から計算したイオン交換容量である。
直径6cm、厚み30μmの電解質膜プロトン型高分子電解質膜を、水に30℃で24時間浸漬した後の寸法(直径:L、厚み:t)と、相対湿度70%の雰囲気に24時間放置した後の寸法(直径:L0 、厚み:t0 )から吸水寸法変化(平面方向:ΔL、厚み方向:Δt)を次式で計算した。
Δt=(t−t0 )/t0
ΔL=(L−L0 )/L0
1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼンの合成
4−フルオロニトロベンゼン49.6g(0.35モル)、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン12.6g(0.1モル)、K2CO3 20.7g(0.15モル)を、ジメチルスルホキシド200ml及びトルエン50mlに添加し、窒素気流下で加熱した。140℃で4時間、トルエンを還流させながら、生成した水を除去した。トルエンを除去しながら、175℃まで昇温し、16時間加熱した。冷却後、多量のメタノールに析出させ、得られた固体を3回水洗後、乾燥した。
得られた固体30g、塩化鉄(III)60mg、白金担持炭素2gを2−メトキシエタノール110mlに添加し、90℃に昇温後、ヒドラジン一水和物18.9gを2時間かけて滴下した。110℃で2時間加熱後、室温まで冷却し、ろ過した。ろ液に、濃塩酸20mlを添加し、固体を析出させた。得られた固体をろ別し、アセトンで洗浄、乾燥後、水に溶解した。アンモニア水を加え、固体を析出させた。固体をろ別し、乾燥して、黄色固体を得た。得られた黄色固体は、H−NMR測定で、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼンであることが確認された。
(1)3−(3’−ニトロフェノキシ)プロパンスルホン酸Naの合成
以下に示す手順で、下記の化学構造式を有する3−(3’−ニトロフェノキシ)プロパンスルホン酸のNa塩を合成した。
この生成物について、H−NMRを測定した。その結果、7.82ppm(d)、7.69ppm(s)、7.60−7.55(t)及び7.44−7.37(m)が観測され、フェニル環のHに基づくシグナルとして帰属された。また、4.22−4.18ppm(t)はエーテル結合に隣接するCH2 のプロトンに、2.62−2.56ppm(t)はスルホニル基に隣接するCH2 のプロトンに、2.09−1.99ppm(m)は中間のCH2 のプロトンにそれぞれ帰属され、前記の化学構造式を有する3−(3’−ニトロフェノキシ)プロパンスルホン酸Naが生成していることが確認された。
以下に示す手順で、下記の化学構造式を有する3,3’−ビス(3−スルホプロポキシ)アゾベンゼン二ナトリウムを合成した。
この生成物について、H−NMRを測定した。その結果、7.51ppm(m)、7.4ppm(s)、7.15ppm(sp lit)が観測され、フェニル環のHに基づくシグナルとして帰属された。プロポキシ基のプロトンのシグナルは、上記と同様に帰属された。以上の結果から、3,3’−ビス(3−スルホプロポキシ)アゾベンゼン二ナトリウムが生成していることが確認された。
以下に示す手順で、下記の化学構造式を有する3,3’−ビス(3−スルホプロポキシ)ヒドラゾベンゼン二ナトリウムを合成した。
この生成物について、H−NMRを測定した。その結果、7.25−7.15(t)ppm、6.77−6.62ppm(m)が観測され、フェニル環のHに基づくシグナルとして帰属された。プロポキシ基のプロトンのシグナルは、上記と同様に帰属された。以上の結果から、3,3’−ビス(3−スルホプロポキシ)ヒドラゾベンゼン二ナトリウムが生成していることが確認された。
以下に示す手順で、下記の化学構造式を有する2,2' −BSPBを合成した。
この生成物について、トリエチルアミンの存在下でH−NMRを測定した。その結果、6.77−6.71ppm(d)、6.2ppm(s)が観測され、フェニル環のHに基づくシグナルとして帰属された。4.91ppm(br)は2つのアミノ基のプロトンに帰属された。また、3.9−3.8ppm(t)はエーテル結合に隣接するCH2 のプロトンに、2.52−2.45ppm(t)はスルホニル基に隣接するCH2 のプロトンに、1.93−1.79ppm(m)は中間のCH2 のプロトンにそれぞれ帰属された。以上の結果から、2,2' −BSPSが生成していることが確認された。
以下に示す手順で、下記の化学式で示される構造単位からなるNTDA−2,2' −BSPB酸末端スルホン化ポリイミドのトリエチルアミン塩型の酸末端スルホン化ポリイミドを合成した。
フィルムを60℃で1時間メタノール中に浸漬し、次に、室温で0.5N塩酸に10時間浸漬してプロトン交換した後、水洗し、150℃で10時間真空乾燥させて、プロトン型の架橋NTDA−2,2' −BSPBポリイミド膜を得た。得られた膜の特性を表1に示す。また、この膜を130℃熱水中で48時間処理してもフィルム形状を保持していており、折り曲げても割れることなく優れた耐水性を有していた。
実施例1で合成した2,2' −BSPB4.605g(10ミリモル)と、m−クレゾール38.5gと、トリエチルアミン3.12gとを窒素気流中で撹拌しながら投入した。2,2' −BSPBが完全に溶解した後、NTDA(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)2.682g(10ミリモル)と、触媒としての安息香酸2.13gとをフラスコに加えた。混合液を80℃で2時間加熱した後、180℃で15時間加熱した。これを、実施例1と同様に、流延製膜した。得られた膜は、m−クレゾールに可溶であった。プロトン交換し、プロトン型のNTDA−2,2' −BSPBポリイミド膜を得た。得られた膜の特性を表1に示す。また、この膜を130℃熱水中で48時間処理したところ、フィルム形状が一部崩壊し、また、折り曲げると切断した。
2,2' −BSPB5.066g(11ミリモル)、NTDA(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)3.218g(12ミリモル)、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを0.267g(0.67ミリモル)用い、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液の全固形分濃度を12重量%とし、調製温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にして1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液を調製した。この溶液を用い、実施例1と同様にして、自己支持性の架橋スルホン化ポリイミド膜(トリエチルアミン塩型)を得た。得られた膜は、m−クレゾール及びNメチル−2−ピロリドンに不溶であった。実施例1と同様にして得られたプロトン型の膜の特性を表1に示す。この膜を130℃熱水中で48時間処理してもフィルム形状を保持していており、折り曲げても割れることなく優れた耐水性を有していた。
2,2' −BSPB1.382g(3ミリモル)、NTDA(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)1.073g(4ミリモル)、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを0.267g(0.67ミリモル)用い、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液の全固形分濃度を12重量%とし、調製温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液を調製した。この溶液を用い、実施例1と同様にして、自己支持性の架橋スルホン化ポリイミド膜(トリエチルアミン塩型)を得た。得られた膜は、m−クレゾール及びNメチル−2−ピロリドンに不溶であった。
1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液の調製温度を70℃から120℃とした以外は、実施例1と同様にして1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液の調製を試みた。しかし、ゲル化し、膜を成形することはできなかった。
2,2' −BSPB2.303g(5ミリモル)と、m−クレゾール17.5gと、トリエチルアミン1.5gとを窒素気流中で撹拌しながら投入した。2,2' −BSPBが完全に溶解した後、NTDA(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)1.609g(6ミリモル)と、触媒としての安息香酸1.02gとをフラスコに加えた。混合液を80℃で2時間加熱した後、180℃で10時間加熱した。
次に25℃まで冷却した後、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル0.735g(2ミリモル)、NTDAを0.535g(2ミリモル)、m−クレゾール6.2g、安息香酸0.34gとを添加し、混合液を80℃で2時間加熱した後、180℃で15時間加熱した。
25℃まで冷却後、全固形分濃度を12重量%とし、調製温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にして1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液を調製した。この溶液を用い、実施例1と同様にして、自己支持性の架橋スルホン化ポリイミド膜(トリエチルアミン塩型)を得た。得られた膜は、m−クレゾール及びNメチル−2−ピロリドンに不溶であった。実施例1と同様にして得られたプロトン型の膜の特性を表1に示す。また、この膜を130℃熱水中で48時間処理してもフィルム形状を保持していており、折り曲げても割れることなく優れた耐水性を有していた。
m−ニトロフェノールに代えてo−ニトロフェノールを用いた以外、実施例1と同様の方法によって、3,3’―ビス(3’―スルホプロポキシ)ベンジジン(3、3’−BSPB)を合成した。全体での収率は46%であった。
この生成物について、トリエチルアミンの存在下でH−NMRを測定した。6.98−6.93ppm(s)、6.93−6.82ppm(d)、6.70−6.60ppm(d)が観測され、フェニル環のプロトンに帰属された。4.9−4.5ppm(br)はアミノ基のプロトンに、4.17−4.02ppm(t)はエーテル結合に隣接するCH2 のプロトンに、2.8ppm附近(トリエチルアミンのシグナルと重なる)はスルホ基に隣接するCH2 のプロトンに、2.15−1.98ppm(m)は中間のCH2 のプロトンに、それぞれ帰属された。その帰属と積分強度比から、生成物は3、3’−BSPBであることが確認された。
3,3' −BSPB1.842g(4ミリモル)、NTDA(1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)1.342g(5ミリモル)、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを0.267g(0.67ミリモル)用い、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液の全固形分濃度を12重量%とし、調製温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン添加溶液を調製した。この溶液を、ガラス板上に流延し、80℃で2時間、130℃で12時間加熱、乾燥した。室温まで冷却後、はく離した後、メタノールに60℃で1時間浸漬した。次に、室温で0.5N塩酸に10時間浸漬してプロトン交換した後水洗し、その膜を、ステンレス枠に固定し、150℃で10時間真空乾燥させて、30μmの厚みのプロトン型の架橋NTDA−2,2' −BSPBポリイミド膜を得た。得られた膜は、m−クレゾール及びNメチル−2−ピロリドンに不溶であり、十分架橋していることが確認された。得られたプロトン型の膜の特性を表1に示す。この膜を130℃熱水中で48時間処理してもフィルム形状を保持していており、折り曲げても割れることなく優れた耐水性を有していた。
厚みを変えた以外は実施例5と同様にして作成したプロトン型の架橋スルホン化ポリイミド電解質膜(縦100mm×横100mm×厚み58μm)の両面に、5%ナフィオン溶液(米国Dupont社製)を塗布、乾燥した米国Fuel Cell Technologies社製触媒担持ガス拡散電極を130℃、10分間、100kg/cm2 の圧力でプレスすることにより接合した(有効面積20mm×20mm)。得られたMEAを、E-TEK 社製単セルに組み込み燃料電池を作成した。セル温度60℃、燃料ガス:H2(アノード)/O2(カソード)、ガス加湿温度55℃、背圧0.1Mpa 、ガス流量50ml/minの条件で発電を行ったときの発電特性を図1に示す。
ナフィオン117(米国Dupont社製、厚み170μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、イオン交換容量、イオン伝導度、吸水率、及びメタノール透過性を測定した。その結果を表1に示す。
Claims (9)
- 下記化学式(1)で示される繰り返し単位を有し両末端が芳香族テトラカルボン酸成分残基からなる酸末端スルホン化ポリイミドを、同じ芳香環に2つ以上のアミノ基を有しない3官能以上の芳香族アミン化合物で架橋した架橋スルホン化ポリイミド。
で示される2価の基であり、Ar5はスルホン酸基又はスルホン酸基の誘導体を置換基と
しない芳香環を有する2価の基であり、lは1以上の整数であり、mは0又は1以上の整数である。ただし、l+mは2以上の整数である。]
- 厚さ30μmに成形したフィルムをm−クレゾール又はN−メチル−2−ピロリドン中に25℃で24時間浸漬した後の重量減少率が、浸漬前の30重量%以下である請求項1に記載の架橋スルホン化ポリイミド。
- 厚さ30μmに成形したフィルムを130℃の熱水中で48時間処理した後、そのフィルムを120°折り曲げても破断しない請求項1又は2に記載の架橋スルホン化ポリイミド。
- 前記3官能以上の芳香族アミン化合物が、1,3,5−トリ(4−アミノフェノキシ)ベンゼンである請求項1〜4のいずれかに記載の架橋スルホン化ポリイミド。
- 前記化学式(1)のlとmとの割合が、l:m=60:40〜100:0である請求項1〜5のいずれかに記載の架橋スルホン化ポリイミド。
- 前記酸末端スルホン化ポリイミドが、ブロック共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載の架橋スルホン化ポリイミド。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の架橋スルホン化ポリイミドからなることを特徴とする高分子電解質膜。
- 請求項8に記載の高分子電解質膜を用いたことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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