JP5294861B2 - トリアルコキシシランの直接合成方法 - Google Patents

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Description

(関連出願)本特許出願は2005年9月13日に出願の米国仮特許出願第60/716728号の優先権を主張し、その全開示内容を本願明細書に援用する。
本発明はシリコンとアルコールによる、触媒反応によるトリアルコキシシランの直接合成方法に関する。特に、本発明の直接合成方法では、有機及び無機のリン化合物(例えばリン酸銅、トリアルキルリン酸及びジアルキル亜リン酸)を使用することにより、反応速度を上昇させ、トリアルコキシシランへの選択性を向上させ、テトラアルコキシシランの形成を制御し、更にバッチ式、半連続式及び連続式工程における反応安定性を向上させることが可能となる。
シランカップリング剤の調製にはトリアルコキシシラン(特にトリメトキシシラン、トリエトキシシラン及びトリ(イソプロポキシ)シラン)が用いられる。1つのトリアルコキシシランの合成方法として、銅又は銅化合物の存在下でシリコン及びアルコールからの直接合成方法が存在する。この方法は、従来技術において直接合成方法、直接反応、直接工程又はRochow反応として公知である。スラリーリアクターの使用が、トリアルコキシシランの合成にとり最も簡便である。
トリアルコキシシランの直接合成方法を行うスラリーリアクターにおいては、触媒活性を有するシリコン粒子を、熱安定な高沸点溶媒中に懸濁液として保持し、更に高温でアルコールと反応させる。反応ゾーンから排出される生成物流には、未反応のアルコール、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン及び縮合したシリケートの混合物が含まれる。通常トリアルコキシシランが所望の生成物であるが、テトラアルコキシシラン及びアルキルジアルコキシシランである場合もあるため、これらの共生成物の形成を増加させる方法及び工程が公知技術として存在する。トリアルコキシシラン生成物及び所望の共生成物を、通常蒸留により回収する。
トリアルコキシシランの直接合成法による速度は、原料(すなわちアルコール又はシリコン)の時間あたりの消費、又は生成物(トリアルコキシシラン、任意に副産物を含む)の時間あたりの形成で表される。通常の単位は、シリコン変換(重量%)/時間、又はシリコン1kgに対する生成物(kg)/時間である。
選択性とは、反応条件下におけるトリアルコキシシランの選択に関する選好性のことを指す。本願明細書ではトリアルコキシシラン/テトラアルコキシシランの重量比率として表される。あるいは、モル%(すなわち100×トリアルコキシシランのモル数/全シリコン含有生成物の総モル数)として選択性を表すこともできる。
安定性とは、全ての原料が消費されるか、又は予め設定された基準を越えて消費されるまで、望ましい速度及び選択性が維持されることを指す。直接合成工程の進行は、時間又はシリコン変換の関数として、生成物の組成及び/又は反応速度を測定することによってモニターできる。反応プロフィールでは通常、反応初期において反応速度が上昇し、反応混合物中のトリアルコキシシラン濃度が増加する期間(誘導期と呼ばれる)が見られ、更にその後、反応が安定化する期間が見られる。この状態では、反応混合物中の成分はほぼ一定に保たれる。上記定常状態の後で、反応速度の低下、及び生成物混合物中のトリアルコキシシラン含量の減少が見られる期間が見られる。
シリコンの直接合成法で実際に用いられる触媒としては、シリコンへの銅の拡散、又はシリコンと銅化合物との反応によって生じた銅−シリコン合金、金属間化合物又は固溶体が通常知られている。すなわち、アルコールを用い、シリコンを活性化して直接合成を行わせる際に効果的な銅含有原料は全て触媒前駆体であって、このように称されるであろう。かかる多種多様な前駆体は従来技術において開示されている。
特許文献1には、250〜300℃において、シリコーンオイル中に懸濁させた銅−シリコン塊をアルコールと直接反応させて得た、トリアルコキシシランのスラリー相調製物が開示されている。当該銅−シリコン塊は約10重量%で銅を含有し、水素ガス流を供給した炉において、1000℃超の温度で銅及びシリコンを加熱することにより調製される。
特許文献2には、スラリー相直接合成法における、シリコンとアルコールの塩化第一銅、及びHF若しくはHClの使用が開示されている。塩化アンモニウムが、低下した反応性の復元に用いられている。
特許文献3(1980)では、CuClによるシリコンの活性化が必ずしも望ましい反応速度及び選択性につながるものではないことを確認している。当該特許文献では、CuClを直接合成法に使用する前に、ニトリル、ナフタレン、ビフェニル及びアントラセンで処理する方法が教示されている。
特許文献4(1980)には、ジベンゾ−18−クラウン−6などの環状エーテルを使用して、反応速度及びトリアルコキシシランの収率を向上させる方法が開示されている。
特許文献5では、商業的な「乾式プロセス」CuClではなく独自の「湿式プロセス」CuCl、及び0.30〜0.37重量%でアルミニウムを含有するシリコンを用いて、高い反応速度及びシリコン変換効率を実現する方法を開示している。なお、「湿式プロセス」CuClとは、「結晶化及び分離及び乾燥工程により調製されるものとして定義されている(第2カラム、第51〜54行目)。また、「乾式プロセス」CuClとは、金属銅及び塩素ガスから調製されるものとして定義されている(第2カラム、第62〜65行目)。
特許文献6では、トリエトキシシランの直接合成方法に用いるスラリー相工程が開示されており、詳細には、CuClが銅の供給源であり、トリ−及びテトラトルエン及び/又はそれらのアルキル置換誘導体が溶媒であり、ジメチルシリコーン油が消泡剤として使用される工程である。CuClを調製することを特徴とする方法は開示されていない。
特許文献7(1991)では、トリアルコキシシランの直接合成工程用の触媒前駆体としての、銅アルコキシドの使用(塩化銅の有無は関係ない)が開示されている。
特許文献8(1994)では、トリアルコキシシランの直接合成工程において、選択性及び反応速度を向上させる方法が開示されており、詳細には、メルカプタン、ジスルフィド、チオ複素環(例えばチオフェン)又は/及びCu(II)チオ錯体(例えばビス(4−メチルチオフェノール)銅(II)などの有機硫黄化合物を反応スラリー中に存在させて銅アルコキシドによる触媒反応を行わせることを特徴とする。上記特許文献では、選択性が低下したときに、これらの化合物を適当量で反応液に添加できることが開示されている。あるいは、当該化合物を反応の初期に添加してもよく、又は連続的にアルコール供給と共に添加してもよい。
特許文献9及び10(1998)ではいずれも、トリアルコキシシランの製造方法における触媒前駆体としての、3000ppm未満の含水量及び0.1〜50μmの平均粒径を有する酸化第二銅の使用を開示している。
特許文献11及び非特許文献11(2002)は、MARLOTHERM(登録商標)S(熱−転写合成媒体)中における、銅(II)ネオノナノエートの存在下、バブルカラム中、190〜250℃の条件下での、HF処理されたシリコンとエタノールとの反応を含んでなる、ハロゲンフリーのトリエトキシシランの調製方法を開示している。
特許文献12では、1gあたり>10m2の表面積を有する、沈殿直後のCuOを銅の給源として用い、トリアルコキシシランの直接合成反応を触媒させる方法が開示されている。特許文献13では、フッ化銅の塩が同じ目的において効果的であることが開示されている。
特許文献14では、「補助触媒」(例えば触媒銅の供給源のほかに、金属ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩及び/又はリン酸塩)を用いることを特徴とする、トリアルコキシシラン製造用のスラリー相工程を開示されている。これらの「補助触媒」は、銅触媒1モルあたり0.0001〜0.2モル、好ましくは銅触媒1モルあたり0.001〜0.03モルで用いられる。NaH2PO4及びKH2PO4は先行技術文献で具体的に記載された唯一のリン酸塩である。NaH2PO4をCuClに対して1.8重量%で使用する態様が例示されている。
特許文献15及び16では、トリエトキシシランの直接合成法への、有機リン化合物の銅(II)塩及びテトラアルキルオルトシリケートの使用が開示されている。有機リン化合物の銅(II)塩(例えば銅(II)ビスリン酸ジエチル)は、テトラエチルオルトシリケート及びそのオリゴマーと同様に、エタノールに可溶性である。開示された方法は選択性が高く、1〜約3の物質を含む反応混合物が形成される。
特許文献17では、水酸化銅(II)の使用により、塩化第一銅の使用に関連する限界が克服され、トリアルコキシシランに対する高い選択性が得られることが開示されている。特許文献18から20では、トリエトキシシランの直接合成方法において、特許請求されている水酸化銅(II)の、比較例の有機リン化合物の銅(II)塩、及び銅(II)ネオノナノエートに対する優れた性能に関する議論が行われている。
特許文献21では、水酸化銅(II)をドデシルベンゼンなどのアルキル化ベンゼン溶媒と組み合わせて用いた場合、トリアルコキシシランの直接合成工程が、シリコンの約25〜35重量%が反応を起こした後で不安定になることを開示している。すなわちメタノールをアルコール反応物質として用いた場合、約220℃以上の温度で、反応生成物中のトリメトキシシラン含有率が、約90〜95重量%から、50〜60重量%に低下するが、約60%のシリコン変換の後に、80〜95重量%に回復することを示した。これと同時に選択性が損なわれ、メタン、水及びジメチルエーテルが更に形成される。メタン及びジメチルエーテルの形成は、メタノール反応物質の非効率的な使用を示すものである。
水は、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランと反応し、その結果、可溶性の、ゲル化した及び/又は樹脂状の有機シリケートが形成される。これらのシリケートの形成は、直接合成プロセスが非効率的であることを意味する。更にシリケートは、特許文献22及び23にて開示したように発泡をもたらし、反応溶媒の不十分な回収率につながりうる。
特許文献24には、NALKYLENE(登録商標)550BLなどのアルキル化ベンゼン溶媒中において、水素ガス、一酸化炭素、モノシラン又はポリ芳香族炭化水素によりを還元して水酸化銅(II)/シリコンスラリーを活性化し、望ましい活性、選択性及び安定性を有するトリアルコキシシランを直接合成する方法が開示されている。還元による活性化により、反応の定常期における約10〜70重量%のシリコン変換率、シリコン変換の増加及びトリメトキシシランに対する選択性の向上が可能となる。
公開された特許文献25及び26では、ナノサイズの銅触媒前駆体の使用により、シランの直接合成工程において優れた性能が得られることを開示する。上記ナノサイズの銅触媒前駆体は、公開された特許文献27及び28に記載のように、水酸化銅(II)及び他の銅の供給源から調製される。
触媒前駆体としての銅(II)水酸化物による効果については、多くの従来技術の間で意見が相違しているように思われる。更に、上記の従来技術で教示されている改良及び進歩にも関わらず、より高い安定性、選択性及び反応速度、原料効率の向上、副産物形成の制御及び少ない廃棄物の生成を可能にする、トリアルコキシシランの直接合成方法に対するニーズが存在する。特に、テトラメトキシシランの生成が10重量%未満、好ましくは6重量%未満であるトリメトキシシランの直接合成方法に対するニーズが存在する。CH3SiH(OCH32などの有用な副産物(共生成物とも称される)の形成を制御して増加させることの可能な直接合成方法に対するニーズも存在する。
米国特許第3641077号公報 米国特許第3775457号公報 特開昭55−28929号公報 特開昭55−2641号公報 米国特許第5362897号公報 米国特許第5527937号公報 特開平03−354055号公報 特開平06−306083号公報 特開平10−168084号公報 特開平10−338696号公報 米国特許第6727375号公報 米国特許第6380414号公報 米国特許第6410771号公報 特開平01−213287号公報 米国特許第6580000号公報 米国特許第6680399号公報 米国特許第4727173号公報 米国特許第6580000号公報 米国特許第6680399号公報 米国特許第6727375号公報 米国特許第5728858号公報 米国特許第5783720号公報 米国特許第6090965号公報 米国特許第5728858号公報 米国特許出願公開第2003/0032829号公報 米国特許出願公開第2003/0065204号公報 米国特許出願公開第2003/0051580号公報 米国特許出願公開第2004/0009117号公報 Standkeら、Silicon for the Chemical Industry VI,pp.225−231
従来技術の課題及び短所を踏まえ、本発明では、金属シリコン及びメタノール及び高級アルコールを原料とし、テトラアルコキシシランの共生成の少ない、トリアルコキシシランの直接合成方法の提供を目的とする。
本発明の他の目的は、かかる改良された直接合成方法であって、添加材として有機及び無機リン酸塩、ホスホン酸塩及び亜リン酸塩の使用を含んでなり、それにより、選択性を望ましい高いレベルに維持しつつ、反応速度を増加及び/又は望ましい値に維持し、非活性化を回避若しくは減少させ、シリコン変換を増加させる方法の提供である。
本発明の更に他の目的は、上記したリン含有添加材を、固体の状態においてナノサイズの材料として利用する方法の提供である。
上記の本発明の課題を解決するための手段として、本発明では、トリアルコキシシランの直接合成方法を提供する。当該方法は詳細には、任意に溶媒において、直接合成方法における触媒的に有効な量の触媒、及び直接合成方法における触媒の活性化に有効な量の触媒プロモータの存在下で、シリコンとアルコールを直接反応させることを特徴とし、また前記プロモータは、少なくとも1つのリン−酸素結合を有する有機若しくは無機の化合物であることを特徴とする。
本発明の方法を用いた結果、特に連続工程及び半連続工程において、テトラアルコキシシラン副産物のレベルを著しく減少させつつ、特に良好な反応速度の維持、シリコン変換の増加、活性低下の回避若しくは減少、高いレベルでの選択性の維持を可能にする、トリアルコキシシランの調製方法が提供される。
シリコンとアルコールが、トリアルコキシシランと共生成物に変換される工程においては、物理的及び化学的現象が同時に及び順次生じる。特定の時間(転換時間)にわたる十分な化学活性(反応速度)及び選択性は、一定の経済性及び工程実施上の要件を充足させるのに必要不可欠である。活性及び選択性が望ましいレベルに達した後に鋭く下落し、それによりトリアルコキシシランへの原料の変換が抑制される場合には、その方法は非効率的及び不安定であるといえる。安定性とは、全ての原料が消費されるか、又は予め設定された基準を越えて消費されるまで、望ましい反応速度及び選択性が維持されることを指す。すなわち、反応速度及び選択性がプラトーに達して比較的一定である定常期には、効率的な工程制御及び効果的な原料の利用が可能となる。
以下の反応式は、アルコールを用いたトリアルコキシシランの直接合成方法の際に生じる主要な化学反応を表す。
Si+3ROH → HSi(OR)3+H2 (1)
HSi(OR)3+ROH → Si(OR)4+H2 (2)
ROH+H2 → RH+H2O (3)
2ROH → ROR+H2O (4)
RCH2OH → R’CH=CH2+H2O (5)
2Si(OR)4+H2O → (RO)3SiOSi(OR)3+2ROH (6)
2HSi(OR)3+H2O → H(RO)2SiOSi(OR)2H+2ROH (7)
2HSi(OR)3+Si(OR)4+H2O → HSi(RO)2SiOSi(OR)2OSi(OR)2H+2ROH (8)
RCH2OH → RCHO+H2 (9)
RCHO+2RCH2OH → RCH(OCH2R)2+H2O (10)
RR”CHOH → RR”CO+H2 (11)
本発明の直接合成方法の望ましい生成物は、一般式HSi(OR)3のトリアルコキシシラン、及び一般式(RSiH(OR)2)のアルキルジアルコキシシランであり、式中、Rは1〜6の炭素原子数のアルキル基である。Rは好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である。合成副産物としては、Si(OR)4、RSi(OR)3、並びに直鎖状、分岐状及び環状のシリケート(例えば(RO)3SiOSi(OR)3、H(RO)2SiOSi(OR)2H、HSi(RO)2SiOSi(OR)3、(RO)3SiOSi(OR)2R、(RO)3SiOSi(RO)2OSi(RO)3、(RO)3SiOSi(OR)HOSi(OR)3、(RO)3SiOSi(OR)ROSi(OR)3、(RO)Si[OSi(OR)33、(RO)3SiOSi(OR)(OSi(RO)3)OSi(OR)3、[OSi(OR)2n)が挙げられ、式中、nは少なくとも4であり、Rは上記で定義したように、水素ガス、炭化水素(例えばメタン及びエタン)、エチレンなどのアルケン、エーテル(例えばジメチルエーテル及びジエチルエーテル)、アセトアルデヒドなどのアルデヒド、1,1−ジエトキシエタンなどのアセタール及びケトン(例えばアセトン)である。水素ガス、炭化水素、揮発性アルデヒド、ケトン及びエーテルは、通常は液体生成物と縮合せず、ガス流として装置から排出される。シリケートの一部はリアクターから揮発し、液体反応生成物中に溶解する。他の物質は、溶媒中に溶解するか、又は不溶性ゲルとして沈殿物として残留する。アセタール及び低揮発性アルデヒド及びケトンは液体反応混合液中で縮合する。
ガス状の生成物流は、水素ガス、炭化水素、エーテル、揮発性アルデヒド及びケトン及び不活性物質(例えば窒素又はアルゴン)を含有する。これらの排気ガスの成分は、ガスクロマトグラフィ、フーリエ変換赤外線分析(FTIR)又は質量分析に基づく分析法を用いて解析、定量化することができる。反応式(1)の反応により排気中の大部分の水素ガスが生成すると仮定した場合、直接合成方法において発生する水素を、反応速度及びシリコン変換の凡その基準として使用することが可能である。また反応式(3〜5)に表す炭化水素及びエーテルの形成、及び反応式(9〜11)に示すアルデヒド、アセタール及びケトンの形成を、アルコール転換の非効率性の基準として使用することが可能である。反応に供給されるアルコールの2重量%未満が、炭化水素、エーテル、アルデヒド、アセタール及びケトンに変換されるのが望ましく、最も好ましくは、そのような変換が全く生じないことである。
ガスクロマトグラフィ分析(GC)が、液体反応生成物の組成を定量化するための、信頼性が高く正確な技術であることが知られている。核磁気共鳴法(NMR)及び質量分析法(MS)のような他の方法を用いてもよい。これらは特に、反応生成物及び反応溶媒に含まれる、高分子量シリケートの同定、定量化に有用である。各コンポーネント中の反応生成物の組成及び重量、並びにシリコン含量に関するデータを用い、シリコン変換を算出する。
重量測定及び原子吸光分析は、反応溶媒中のシリコン含有を定量する適切な手段である。好適な解析方法としては、The Analytical Chemistry of Silicones,Chapter 8,A.L.Smith,Ed.,Wiley&Sons Inc.,NY,1991に記載されている方法が挙げられる。反応溶媒に保持される可溶性シリケートは、反応式6−8の副反応が生じる程度の指標となる。これらの全ての反応は水の存在に依存し、例えば反応式3〜5及び10の反応により形成される。反応溶媒に含まれるゲル及び可溶性シリケートは、米国特許第5166384号、第6090965号及び第6166237号(その全開示内容を本願明細書に援用する)に開示される方法に従って除去することができる。
反応はバッチ式、半連続式又は連続式に実施できる。バッチ式の操作においては、シリコン及び銅による触媒前駆体を単独で、反応の初期にリアクターに添加し、シリコンが完全に反応に用いられるか、又は所望の変換率となるまで連続的若しくは断続的にアルコールを添加する。連続操作では、シリコン及び銅の触媒を最初にリアクターに添加し、その後、スラリー中の固形含量を所望の限度内に維持する。バッチ式操作は米国特許第4727173号に例示され、また連続式操作は米国特許第5084590号に例示されている(いずれも本願明細書に援用する)。半連続式操作では、更なるシリコン及び銅触媒前駆体を、バッチ式反応の間、又は反応終了時にリアクターに添加する。それにより、1つの溶媒に対して複数回シリコン及び銅の触媒を添加することとなる(米国特許第4727173号の実施例6及び7を参照)。通常では、各チャージの定常期の終期付近で添加を行う。通常添加を行う一方で、アルコールのフローを中断する。このように複数回添加した後、粗生成物中のテトラアルコキシシラン含有は約6重量%超、好ましくは約12重量%程度のレベルにまで増加する。溶媒中に縮合したシリケートが蓄積するため、粘性及び発泡性の増加が見られるようになる。少なくとも3回のシリコン添加(好ましくは少なくとも6回の添加)の終了後、テトラアルコキシシラン含有が6重量%未満に維持されるのが望ましい。この目標は、以下に記載されている具体的な有機及び無機のリン化合物を用いることにより実現できる。
米国特許第4727173号及び第5728858号では、>16の生成物選択性、1時間あたり5〜10%のシリコン変換速度、及び>85%の全シリコン変換率を、220〜280℃で再現性を伴って実現することができる、トリメトキシシランの直接合成方法が開示されている。これらの方法では、触媒前駆体として水酸化銅を使用する。バッチ式反応の場合、定常期では反応混合物中における約10重量%のシリコン変換〜約70重量%のシリコン変換が行われ、その際、トリメトキシシランの含有はほぼ一定で、通常>85重量%であり、また選択性は>20である。しかしながら、全ての水酸化銅においてこのプロフィールが見られる訳ではない。中には弱い活性又は選択性を生じさせるものもあり、あるいは良好な反応速度であるが低い選択性を生じさせるものもある。標準レベル以下で水酸化銅を用いた場合に共通に観察される特徴としては、反応の初期における高い(7〜30重量%)テトラメトキシシラン形成(最高約30%のシリコン変換)が挙げられる。
本発明に従い直接合成方法を行う場合、トリアルコキシシランの液体反応生成物中の含量は、少なくとも約80重量%(好ましくは少なくとも85重量%)となる。またアルキルシリケート(Si(OR)4)の濃度は通常7重量%未満、好ましくは約6重量%未満となる。(RO)2SiH2、RSiH(OR)2及びRSi(OR)3化合物は、個々約3重量%未満、好ましくは約1重量%未満となる。縮合シリケートは、最大約5重量%、好ましくは約0.5重量%未満となる。上記の%範囲の他に、所望のトリアルコキシシランに対する選択性は、重量比率(HSi(OR)3/Si(OR)4)として表すこともできる。本発明の工程により、反応全体を通じて計算した場合のこの比率は約16超の値となる。この全体の値は本明細書において生成物選択性とも称され、反応工程中における個々のサンプルにおける選択性とは区別される。当該数値は好ましくは少なくとも18であり、反応の定常期においては30超の値にまで達する。
反応速度は通常、単位時間当たりのシリコン変換として表されるが、単位時間当たりのアルコール転換、又は空間時間当たりの収量(単位時間当たり、原料の単位重量当たりの生成物の産生量)として表してもよい。生成物形成及びリアクターからの熱除去(温度調節)との間の良好なバランスが実現できる反応速度が望ましい。1時間あたり約4重量%超のシリコン変換速度、好ましくは1時間あたり約5〜20%のシリコン変換速度が好ましく、それは本発明の方法により可能となる。当該誘導時間(すなわち反応の開始から、一定の反応速度及び一定の生成物組成が得られるまでのインターバル)は短いことが好ましく、例えば約4時間未満、より好ましくは約1時間未満である。その時間、消費されるシリコンの最大量は通常約15重量%であって、好適には約10重量%未満である。
反応安定性とは、望ましい反応速度及び選択性が、全てのシリコンが消費されるか、又はシリコンの予め定められた基準値が消費されるまで維持されることを指す。すなわち、シリコン変換の程度は、反応の安定性を定量的に示す指標となる。本発明の工程により、約70重量%超、好ましくは約85重量%超、より好ましくは約90重量%超のシリコン変換を確実に実施できる。本発明はまた、有機及び無機リン酸塩の使用により、コントロールと比較してより長い期間、Si(OR)4が最小値に維持される反応プロフィール(生成物混合物中のSi(OR)4の濃度、対、反応時間、アルコールのフィード又はシリコン変換のプロット)を得る方法の提供に関する。
A.直接合成触媒及びそのための前駆体
アルコールとの直接反応のためにシリコンを活性化する開始材料として有用な銅及び銅含有化合物は、それ自身では、実際の直接合成工程において触媒として機能しない。銅及び/又は銅含有化合物、シリコン及び熱安定性の反応溶媒を含んでなるスラリーを加熱したとき、銅/銅含有化合物及びシリコンが相互作用し、アルコールと反応する実際の触媒が形成される。実際の触媒が少なくとも1つの銅−シリコン合金、金属間化合物及び/又は固溶体であり、シリコンへの銅の拡散、又はシリコンと銅/銅含有化合物との反応により形成されることが公知である。すなわち、当該銅含有原料は銅触媒前駆体であり、本願明細書で以下に詳細に説明する。
銅、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、水酸化銅(II)、水酸化物・酸化物の混合物(例えば3CuO.Cu(OH)2)、塩基性の銅炭酸塩(CuCO3.Cu(OH)2)、銅カルボン酸塩、銅アルコキシド、銅シロキシド(例えば[CuOSiR’34、式中R’=メチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基、並びに他の直鎖状及び分岐状ヒドロカルビル基)、並びにそれらの混合物が銅の供給源であり、トリアルコキシシランの直接合成方法において、シリコンの活性化に使用できる。全ての水酸化銅(II)の多形体(特に立方及び斜方晶多形体)が、本発明の直接合成工程に使用される有用な触媒前駆体である。
一実施形態では、当該水酸化銅(II)は、約54〜62重量%の銅含有量、及び約170〜230kg/m3のバルク密度を有する。また、好ましい水酸化銅としては、米国特許第1800828号、第1867357号、第2525242号、第2666688号、米国再発行特許第24324号、米国特許第2924505号、第3194749号、第3428731号、第4490337号、第4808406号、及び米国特許出願公開第2002/0136685号に開示されるように調製されるものが挙げられる(これらの全開示内容を本願明細書に援用する)。銅の硫酸塩、アルカリ金属リン酸塩及びアルカリ金属水酸化物から調製される水酸化銅は、本願明細書に好適に使用できる。塩化銅から調製されるか、又はアンモニアを用いて調製される水酸化銅にリン酸塩プロモータを添加することにより、本発明の直接合成工程のパフォーマンスを一定の基準以上のレベルにすることが可能となる。
約1〜約10μmの粒径を有する銅触媒前駆体が、本発明の工程において効果的である。しかしながら、ナノサイズの前駆体は更に効果的である。ナノメートルサイズの粒子は、約1nm(10-9m)〜約100nm(10-7m)までの範囲の直径を有する。これらの材料は、従来技術においてナノ構造、ナノ結晶質、ナノサイズ、ナノスケール、ウルトラファイン又はスーパーファインなどと称される類のものである。それらの構造、及び高い表面積−体積比率は、特に触媒、電子機器、磁性体及びコーティング(色素)用途にとり好ましい。トリアルコキシシランの直接合成工程に用いられる従来の銅触媒と比較し、当該nmサイズの粒子は直径が10〜100倍のスケールで小さい。ナノサイズの銅供給源は、特に本願明細書の使用において有利である。当該ナノサイズの前駆体は、第1の実施形態では約0.1〜約600nmの粒径であり、第2の実施形態では約0.1〜約500nmの粒径であり、第3の実施形態では約0.1〜約100nmの粒径である。本発明に係るナノサイズの銅、塩化銅(I)、酸化銅(I)、酸化銅(II)及び他の触媒前駆体の調製は、米国特許出願公開第2003/0051580号及び第2004/0009117号に開示されており、その全開示内容を本願明細書に援用する。また、ナノサイズの銅及び銅化合物の調製のための他の様々な物理的及び化学的方法も公知である。
本発明に用いられる銅触媒前駆体は好適には無水物であるが、偶然に混入した水又は水和水を含んでなる材料も使用可能である。水和した銅触媒前駆体を用いる場合、脱水及び熱分解の間に形成される水と、トリアルコキシシラン反応生成物との接触が回避される態様で、装置を設計する必要がある。更に反応スラリーへの反応物質の導入は、脱水及び熱分解工程が完了するまで待つ必要がある。この工程は通常、常圧において、温度150℃超〜180℃で行われる。
粒径及び含水量に加えて、他の様々な基準を設けて、本発明のナノサイズの銅触媒前駆体の特徴づけを行ってもよい。当該前駆体のBET表面積は約0.1m2/g程度に低くてもよい。約10m2/g超のBET表面積が好ましく、約15m2/g超が特に好ましい。
調製方法及び条件に応じて、微量の不純物及び外来物質がナノサイズの銅触媒前駆体に存在してもよい。極微量のアルミニウム、バリウム、カルシウム、クロミウム、鉄、鉛、マグネシウム、マンガン、ニッケル、リン、ナトリウム、スズ及び亜鉛が、市販のCuCl、Cu(OH)2、CuCO3.Cu(OH)2及び3CuO.Cu(OH)2、並びにナノサイズの銅及び酸化銅に関する、上記の公開された特許出願、更には米国特許第4539041号及び第5759230号に記載の方法により調製されたナノサイズの銅及び酸化銅(上記引用文献中の記載を参照)中に存在してもよい。関連する金属の許容量は以下で定義する。安定化ポリマーの存在下におけるボロハイドライドの還元よって生じるナノ微粒子状の銅において、又は逆ミセル及びミクロエマルジョンにおいてポリマー、界面活性剤及びホウ素が混入していてもよい。
銅触媒前駆体中の亜鉛含有量は、好ましくは約2500ppm未満、より好ましくは約1500ppm未満、更に好ましくは約750ppm未満である。リアクターに添加するシリコンの最初の重量に対して、反応スラリー中の亜鉛含有量は通常約100ppm未満でなければならず、好ましくは約50ppm未満である。触媒前駆体に含有させることができる他の微量元素は鉛(Pb)である。スラリー中の濃度は通常約50ppm未満でなければならない。
本発明の直接合成工程で使用する銅触媒前駆体は、反応を生じさせるのに効果的なレベルで使用する。触媒前駆体の有効量は通常、金属シリコン100重量部に対して約0.01〜約5重量部の範囲である。本発明の使用に好ましいナノサイズの銅触媒前駆体は小さい粒径及び大きい表面積を有するため、シリコン表面上において、実際に触媒となる相が広範囲に存在する形で分散される。したがって、上記の数値範囲でも少ない方の量でナノサイズの銅触媒前駆体を使用しても、トリアルコキシシランの選択的な合成の開始、継続にとり非常に効果的である。すなわち、シリコン100重量部に対して約0.05〜約2重量部のナノサイズの銅触媒前駆体の使用が好ましく、シリコン100重量部に対して約0.08〜約1重量部の使用が特に好ましい。100重量部のシリコンに対する銅の重量部として表す場合、有効な範囲は約0.008〜4.5重量部の銅であり、好適な範囲は約0.03〜1.8重量部の銅であり、より好適な範囲は約0.05〜0.9重量部である。
B.直接合成触媒プロモータ
望ましい反応速度及び選択性において、トリアルコキシシラン及びアルキルジアルコキシシランへのシリコンの変換を延長する添加物を、本明細書において「プロモータ」と称する。プロモータを用いて直接合成工程を行うことにより、バッチ式、半連続式又は連続式工程において、テトラアルコキシシランの生成を約6重量%未満に抑えることができる。すなわち、当該プロモータの添加により、望ましい反応速度及び選択性の維持が可能となり、その一方で直接合成工程においてはそれ自身触媒として機能せず、ゆえに反応安定性が改善される。
リン−酸素(P−O)結合を有する有機及び無機リン化合物は、本発明の直接合成方法における有効なプロモータである。これらの化合物としては、リン酸塩、リン酸エステル、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、ホスホン酸塩及び亜リン酸塩が挙げられる。これらのクラスの定義及びリン化合物の命名法は、D.E.C.Corbridge,Studies in Inorganic Chemistry 10:Phosphorus(4th edition),Elsevier,Amsterdam,1990,第3章及び第4章に記載されている。リン酸塩、亜リン酸塩及びホスホン酸塩は本発明の実施において好ましい種類のプロモータである。
別々にPO4 3-イオンを含んでなる化合物はオルトリン酸と称する。ピロリン酸塩(二リン酸塩)はP27 2-陰イオンを含有する。P310 5-は三リン酸塩(またトリポリリン酸塩とも称する)中に含有され、またPn+13n+4 (n+3)-はポリリン酸塩(n≧4)中に含有される。メタリン酸塩は環状単位(Px3x x-、xが3以上である)を含有する。P39 3-、P618 6-及びP824 8-はこれらのメタリン酸塩陰イオンの代表的なものである。一実施形態では、銅オルトリン酸塩、銅ピロリン酸塩及び銅メタリン酸塩が本発明のプロモータとして用いられる。
無機リン酸塩は、トリアルコキシシランの直接合成工程における反応安定性の向上に有効なプロモータである。銅オルトリン酸塩、銅メタリン酸塩、銅ピロリン酸塩及び銅ポリリン酸塩が非常に効果的である。有用な銅リン酸塩の例としては、以下の表1に示すものが挙げられる。選択された1つ以上の銅リン酸塩プロモータを個々に添加してもよく、又は銅触媒前駆体との組合せでリアクターに添加してもよい。プロモータは、銅触媒前駆体とアルカリ金属リン酸塩との反応から、直接合成方法リアクター中でin situで形成されてもよい。
固体のリン酸塩プロモータは無水物でも水和物でもよいが、無水物が好適である。粒径は約10μm〜約0.1nmであってもよいが、一実施形態ではプロモータの粒子径は5μm未満であり、別の実施形態では約1〜約600nmの範囲である。この後者実施形態に係る粒径はナノサイズであると考えられる。ナノサイズの銅リン酸塩の代表的な合成法は、Bulletin of Materials Science,Vol.22,pp.335−339(1999)に記載されている(全開示内容を本願明細書に援用する)。
テーブル1:銅リン酸塩プロモータ
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リン酸塩エステルは、一般式(RO)n(OH)3-nPOの5価の有機リン化合物である。式中、RはC1−C20アルキル基、アリール基、脂環基又はアルカリル基であり、nは0から3の整数である。トリエステル(RO)3PO)は非常に有効なプロモータである。例としては、(CH3O)3PO、(C49O)3PO、(C817O)3PO、(CH3O)(C817O)2PO、(C25O)(C49O)2PO、(CH364O)3PO、(C65O)3PO及び(C65CH2O)3PO.(CH3O)3PO、(n−C49O)3PO及び(C817O)3POが挙げられ、特に本発明における使用にとり有利である。上記の式において、Rには、所望のトリアルコキシシラン直接合成工程を著しく妨げない官能基が含まれてもよい。すなわち、Rにはオキシアルキレン基及びエーテル(−COC−)結合が含まれてもよい。適切な例としては、(CH3OCH2CH2O)3PO及び(C49OCH2CH2O)3PO及び[CH3O(CH2CH2O)a(CH2CHOCH3bO]3POが挙げられる。式中、a=0以上30以下であり、b=0以上30以下である。
リン酸化オキシアルキレン基は、米国特許第5149765号に開示されており、商品名「SILPHOS(登録商標)」としてSILTECH社から市販されている物質のような、共重合体組成物を一部含有してもよい。適切な例としては、一般式MDxD*yM及びM*DuD*vM*で表されるものが挙げられる。式中、M=(CH33SiO1/2、D=(CH32SiO2/2、D*=CH3SiZO2/2及びM*=Z(CH32Si01/2であり、Zはリン酸化オキシアルキレン基であり、u、x及びyは個々0より大きく、vは0以上である。例としてはMD44D*4M(式中、Zは−(CH23(C24O)11.5CH2OP(OH)2Oである)、及びM*D6D*3M*(式中、Zは−(CH23(C24O)8.5CH2OP(OH)2Oである)が挙げられる。
(R’OSi)w(R’OP=O)zタイプのシリケート−リン酸塩共重合体(R及びR’が独立にC1−C20アルキル基、アリール基、脂環基又はアルカリル基であり、w及びzが正の数である)は、本発明における有効なリン酸塩プロモータである。適切な例はとしては、(CH3OSi)w(CH3OP=O)z及び(C25OSi)w(C25OP=O)zが挙げられ、式中、w及びzは通常各々0.5〜25であり、wは好ましくは5〜20であり、zは好ましくは1〜5である。
一般式(RO)3Si(CH2q(R’O)2P=Oで表され、アルコキシシラン及びアルキルリン酸部分を有する化合物もまた有効なプロモータである。なお、R及びR’は、シリケート−リン酸塩共重合体で定義したのと同じ意味を有する。整数qは1〜8の数値であり、好ましくは1以上4以下である。(C25O)3Si(CH23(C25O)2P=O及び(CH3O)3SiCH2(CH3O)2P=Oは、これらのプロモータの典型例である。
グリセロール、マンニトール、イノシトール、ガラクチトール、ソルビトール及び他のポリオール及び糖に由来する有機リン化合物もまた、本発明の範囲に包含されるプロモータである。適切な例としては、グリセリルリン酸塩(例えばHOCH2−CHOH−CH2OP(O)(OH))2、及び(HO)2P(O)OCH2−CHOH−CH2OP(O)(OH)2、及びフィチン酸、ミオイノシトールのヘキサリン酸エステルが挙げられる。
オルガノ亜リン酸塩もまた、本発明の直接合成工程におけるプロモータとして有用である。それらは一般式(RO)nP(OH)3-nで表される3価の化合物である式中、RはC1−C20脂肪族基、脂環基、アリール基、アルカリル基又はオキシアルキレン基である。(C25O)3P、(C817O)(C49O)2P及び(C1225O)3Pはトリオルガノ亜リン酸塩の適切な例である。ジオルガノ亜リン酸塩(RO)2POHは、主に互変異性ホスホン酸塩(RO)2HPOとして存在する。本発明の実施にとり効果的な例としては、(CH3O)2HPO、(C25O)2HPO、(C49O)2HPO、(C817O)2HPO、(C65O)2HPO及び(C65CH2O)2HPOが挙げられる。
一般式(RO)m23(OH)4-mの二リン酸塩のエステル類(式中、m≧2)もまた有効なプロモータである。Rは上記で定義したのと同じ意味を有する。特にメチル基、エチル基、ブチル基及びオクチル基が好適である。
液体及び固体のリン酸塩プロモータを、反応の初期又は途中で、断続的又連続的にリアクターに添加することができる。プロモータは、例えば物理的形態、沸点、コスト、処理性、安全性などの状況に応じて、別個に添加してもよく、又はアルコール流、溶媒又はシリコン及び銅供給源と混合して添加してもよい。プロモータの混合物を使用して、効果的に反応安定性を進行させることができる。例えば、トリメトキシシランの直接合成工程において、リン酸銅(単独又は銅触媒前駆体との組み合わせ)を、トリメチルリン酸塩(別個に注入するか、又は溶媒若しくはメタノールフィード中に含有させる)と共に添加することができる。なお、本発明では両方のプロモータの使用により、反応混合物中のSi(OR)4形成が約4重量%未満まで減少し、90重量%超でHSi(OR)3が形成されることを見出している。
本発明の直接合成工程で使用するプロモータは、Si(OR)4形成を約6重量%未満に維持し、同時にHSi(OR)3形成を約85重量%超に維持し、望ましい反応速度においてシリコン変換を約88重量%超のレベルにまで促進するのに効果的な量で存在させるのが好適である。通常、特定の方法に使用されるプロモータの最適量は、例えば合成しようとする具体的なトリアルコキシシラン、リン酸塩プロモータの物理的形状、プロモータの粒径(固体の場合)、有機リン化合物の沸点及び表面活性(液体の場合)、及び反応条件下における無機リン酸塩とアルコールからの有機リン化合物、有機ホスホン酸塩又は有機亜リン酸塩形成の簡便性などの要因に依存して変化する。トリメトキシシランの直接合成工程において、銅リン酸塩などの固体の無機リン酸塩の有効な使用量は、直接合成工程中に添加される銅触媒前駆体の重量に対して通常約3〜30重量%、好適には約4〜10重量%である。リアクターに添加するシリコンの重量に対する使用量としては、約200〜3000ppm、好適には約200〜1500ppmの範囲で調節できる。トリメチルリン酸塩などの液体状の有機リン化合物を用いる場合、有効な範囲は通常、約100〜1500ppmであり、好適には約100〜800ppmである(上記と同じベース換算)。
C.直接合成用のシリコン金属反応物質
本発明の工程に使用される金属シリコン反応物質は、いかなる等級の市販の粒状シリコンであってもよい。本発明の実施においては、それは例えばキャスティング、水粒状化、微粒化及び酸浸漬などのいずれの方法によって調製されるものであってもよい。これらの方法は、Silicon for the Chemical Industry,(H.Oyeら編),vol.I(pp39−52),vol.II(pp55−80),vol.III(pp33−56,87−94),Tapir Publishers,Norwegian Institute of Technology、米国特許第5258053号、第5015751号、第5094832号、第5128116号、第4539194号、第3809548号及び第4539194号及び独国特許第3403091号及び第3343406号に詳細に記載されている。一定の濃度で合金成分を含んでなる、特別なタイプの化学等級シリコンも適切であるが、但し銅が合金成分の1つではなく、また当該合金成分がトリアルコキシシラン直接合成工程の反応速度、選択性及び安定性に悪影響を及ぼさないことが条件である。この特別なタイプのシリコンは、米国特許第5059343号、第5714131号、第5334738号及び第5973177号、欧州特許出願公開第0494837号及び第0893448号に記載されている。本発明に有用な市販の金属シリコンの典型的な組成は、重量%表示でSi〜98.5%、Fe<1%、Al〜0.05〜0.7%、Ca〜0.001〜0.1%、Pb<0.001%、水<0.1%である。スラリー中への分散促進、速い反応及びリアクター中の腐食の最小化の意味で、粒径は通常小さいのが好適である。好ましくは約500μm超の大きな粒子を存在させず、それによりリアクターの浸食が最小化される。任意に粉砕されたシリコンを篩にかけ、粒径をコントロールする。少なくとも約90重量%が約1〜300μmの粒度分布であるのが好適である。少なくとも約90重量%が約20〜200μmの粒度分布であるのが特に好適である。
D.直接合成用のアルコール反応物質
本発明の方法に有用なアルコール反応物質は式ROHで表され、式中、Rは1〜6個の炭素原子を含んでなるアルキル基である。好ましくは、式中、Rは1〜3個の炭素原子を含んでなるアルキル基である。より好ましいアルコールはメタノール及びエタノールである。通常、直接合成工程には一種類のアルコールを使用するが、2つ以上のアルコールの混合物を用いることにより、異なるアルコキシ基を有するトリアルコキシシランを調製し、又は反応性の低いアルコールの反応を促進することが可能となる。例えば、最高約5重量%でメタノールをエタノールに添加して、トリエトキシシランの直接合成工程における反応速度及び安定性を改善してもよい。あるいは、一方のアルコールを用いて反応を開始させ、次にもう一方のものによって反応を継続させてもよく、又はそれらの混合物を用いて反応させてもよい。すなわち、本発明に従い、ナノサイズの銅触媒前駆体により調製される銅活性化シリコンは、最初にメタノールと反応し、次にエタノールと反応することができる。当該アルコールは無水物が好適である。しかしながら、選択性、反応性及び安定性が顕著に損なわれない限りにおいて、通常若干の含水(最高約0.1重量%)は許容できる。
直接合成工程は通常、スラリー中でバッチ式に実施され、アルコールをガス又は液体の状態でスラリー中に添加する。ガス状における添加が好適である。数分〜最高約5時間を誘導期としてもよい。最初のアルコールフィード速度を任意に低レベルで制御し、誘導期の後で増加させる。同様に、約70重量%のシリコン変換が行われた後、アルコールフィード速度を任意に減少させ、テトラアルコキシシランの形成を最小化してもよい。通常、反応が開始された後、アルコールフィード速度を適宜調整し、所望のアルコール転換レベルとしてもよい。当業者であれば、生成物の組成をモニターしながら、所定の反応におけるフィード速度を調整することができる。フィード速度が高すぎる場合、生成物流中に含まれる未反応アルコールの比率が増加する。
E.直接合成工程に用いる溶媒
トリアルコキシシランのスラリー相直接合成工程に使用する溶媒は、銅活性化シリコンを十分に分散された状態に維持し、触媒部位へのアルコールの供給、及び反応に関与する固体とリアクターとの間の熱伝達を促進する。本発明の方法で有用な溶媒は、活性化条件及び反応条件下で分解しない、熱安定性の化合物又は混合物である。かかる溶媒の構造は、直鎖状若しくは分岐状のパラフィン、ナフテン、アルキル化ベンゼン、芳香族エーテル、ポリ芳香族炭化水素などであってもよい。後者の場合、当該芳香環は縮合してナフタレン、フェナントレン、アントラセン及びフルオレン誘導体などを形成してもよい。それらは炭素−炭素の単結合で結合されてもよく(ビフェニル及びテルフェニル誘導体など)、又はジフェニルエタン及びテトラフェニルブタンのように架橋アルキル基を介して結合されてもよい。好ましい溶媒の1つの種類として、通常熱交換溶媒として使用される高温安定性の有機溶媒が挙げられる。例えばTHERMINOL(登録商標)59、THERMINOL(登録商標)60、THERMINOL(登録商標)66、DOWTHERM(登録商標)HT、MARLOTHERM(登録商標)S、MARLOTHERM(登録商標)L、ジフェニルエーテル、ジフェニル及びテルフェニル及びそれらのアルキル化誘導体が挙げられ、それらは通常250℃より高い沸点を有する。
THERMINOL(登録商標)は、モンサント社製の熱伝達液の商品名である。THERMINOL(登録商標)59は、アルキル置換された芳香族化合物の混合物であり、−45〜315℃における使用が推奨される。THERMINOL(登録商標)60は、250の平均分子量を有するポリ芳香族化合物の混合物である。その最適温度は−45〜315℃の範囲である。THERMINOL(登録商標)66及びDOWTHERM(登録商標)HTは、混合物であるは、240の平均分子量を有する水素化テルフェニルである。温度の上限値は370℃である。THERMINOL(登録商標)59、THERMINOL(登録商標)66及びDOWTHERM(登録商標)HTが本発明の溶媒として好適である。DOWTHERM(登録商標)液はDow Chemical Company社製である。
MARLOTHERM(登録商標)は、Huels AG社製の熱伝達液の商品名である。MARLOTHERM(登録商標)Sは、異性体ジベンジルベンゼンの混合物である。MARLOTHERM(登録商標)Lは、異性体ベンジルトルエンの混合物である。両方とも約350℃以下の温度で使用できる。両方とも本発明にとり好適な溶媒である。
本発明の直接合成工程の実施に好適なアルキル化ベンゼンは、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、並びに、例えばVista Chemical社製の商品名NALKYLENE(登録商標)、Condea Augusta s.p.a.社製の商品名ISORCHEM(登録商標)及びSIRENE(登録商標)などのそれらの混合物である。NALKYLENE(登録商標)550BL、NALKYLENE(登録商標)550L、NALKYLENE(登録商標)500、NALKYLENE(登録商標)501、NALKYLENE(登録商標)600L及びNALKYLENE(登録商標)V−7050は、ナノサイズのCuCl前駆体用に特に好ましい反応溶媒である。ナノサイズの銅及びナノサイズの酸化銅を用いる場合、180〜220℃の温度においてアルキル化ベンゼン溶媒を使用することにより、トリアルコキシシランに対する良好な反応安定性及び選択性が得られる。
ナフテンはシクロパラフィンの一種である。それらは流動パラフィン、石油蒸留液及び若干の燃料に含まれる成分である。流動パラフィン及び石油蒸留液はまた、直鎖状及び分岐状パラフィンを含有する(A.Debska−Chwajaら、Soap,Cosmetics and Chemical Specialties,(Nov.1994),pp48−52、ibid.,(Mar.1995)pp64−70を示す)。ナフテン及びパラフィンを含有し、本発明の反応溶媒として有用な商品としては、流動パラフィンはCARNATION 70、KAYDOL、LP−100及びLP−350、並びに石油蒸留液はPD−23、PD−25及びPD−28が挙げられ、いずれもWITCOの商品名としてCrompton社から市販されている。反応溶媒として有用なナフテンの他の例としては、ブチルシクロヘキサン、デカヒドロ−ナフタレン、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナトレン、パーヒドロフルオレン及びそれらのアルキル化誘導体、ビシクロヘキシル、パーヒドロターフェニル、パーヒドロビナフチル及びそれらのアルキル化誘導体が挙げられる。
ポリ芳香族炭化水素と、アルキル化ベンゼン、ナフテン及び直鎖状及び分岐状パラフィンの混合物もまた、本発明の反応溶媒として有用である。
使用される溶媒は、米国特許第5166384号にて開示されるようにホウ酸及びホウ酸塩で処理することができ、又は米国特許第6090965号にて開示されるようにギ酸で処理することができ、又は米国特許第6166237号にて開示されるように熱加水分解により処理することができ、更にトリアルコキシシラン直接合成工程に再利用することができる。これらの全開示内容は、本願明細書に参照により援用される。
金属シリコン、銅触媒前駆体、プロモータ及び溶媒は、いかなる順番でリアクターに添加してもよい。当該溶媒は、固体状及びガス状の反応物質を均一に分散させるのに十分な量で存在させる。通常、反応は溶媒と固体の重量比率を約1:2〜約4:1とした状態で開始され、好適には1:1〜2:1である。しかしながら、シリコンがバッチ式直接合成工程の間に消費されるにつれて、固体に対する溶媒の比率は増加する。連続反応の場合には、当該比率を好適な狭い範囲内で維持することができる。
F.銅−シリコン活性化条件
活性化とは、金属シリコン反応物質に触媒、及び必要に応じて他の補助剤を添加することにより、アルコールとの反応性を高める工程のことである。活性化は、直接合成工程に使用する同じリアクターにおいて行ってもよく、又は別々のリアクターにおいて行ってもよい。後者の場合、活性化されたシリコンは通常、及び望ましくは、無水の、非酸化的な雰囲気において合成リアクターに供給される。反応溶媒中に、スラリーとしての活性化されたシリコンを供給するのが特に好適である。
スラリーリアクターにおける銅触媒前駆体及びシリコンの活性化は通常、20〜400℃、好ましくは約150〜300℃の温度で、シリコンに対する銅の比率が約0.01〜50重量%である混合物を用いて実施する。リン含有プロモータを活性化の際に任意に添加してもよい。一実施形態では、スラリーを撹拌しながら、約0.01〜24時間、約200〜300℃に加熱しながら、不活性ガス(例えば窒素又はアルゴン)雰囲気下で処理し、次にアルコール反応物質を注入する。適切な反応時間及び温度を設定することにより、有効な銅−シリコン活性化、トリアルコキシシラン選択性の顕著な損失の回避、及び/又は直接合成工程中における炭化水素及び水の形成の回避を行う必要がある。全てのシリコンが活性化工程の間に存在する必要はない。例えば、使用される一部のシリコン及び銅触媒前駆体の全てを反応溶媒中で活性化し、その後で残りのシリコンを添加することもできる。
あるいは、加熱工程の間、銅触媒前駆体、プロモータ、シリコン及び反応溶媒を含むスラリーを撹拌しながら、アルコール(任意に不活性ガスと混合してもよい)を導入してもよい。当該反応は、常圧において、最低温度を若干上回る温度(通常は180℃超)において生じる。好ましくは、温度が180℃以上になった後に気体状のアルコールを撹拌中のスラリーに導入する。
添加する具体的な銅触媒前駆体に依存し、シリコン及び銅触媒前駆体を含んでなる混合物の活性化により、水、アルデヒド、一酸化炭素、HCl、四塩化ケイ素及び他の化合物が生じうる。これらの化合物は、好ましいことに揮発し、トリアルコキシシランの直接合成工程の開始前に除去される。それらが合成リアクター、又は生成物にリザーバー容器に存在する場合には、ゲル形成、低い反応選択性及びトリアルコキシシラン回収率の低下につながることもある。CuCl又は他のハロゲン含有銅前駆体を用いる場合、リアクター及びそれに付属する装置の腐食を防止しうる態様で当該フィードを実施する必要がある。
G.反応条件
3相リアクターに関するデザイン、説明及び操作上の注意点は、以下の書籍、論文及び特許に記載されている:A.Ramachandran及びR.V.Chaudhari,Three Phase Catalytic Reactors,Gordon and Breach Science Publishers, NY, 1983、N.Gartsmanら、International Chemical Engineering,vol.17(1977)pp697−702、H.Yingら、Industrial&Engineering Chemistry,Process Design&Development,vol.19(1980)pp635−638、N.Satterfieldら、Chemical Engineering Science,vol.35(1980)pp195−202、M.Boxallら、Journal of Metals,(August 1984)pp58−61、米国特許第4328175号公報。
リアクターはバッチ式、半連続式又は連続式に操作してもよい。バッチ式操作においては、最初にシリコン及び銅触媒を一度にリアクターに添加し、アルコールを連続的又は断続的に添加し、シリコンが完全に反応を起こすか、又は所望の程度の変換が行われるまで反応させる。連続式操作においては、シリコン及び銅の触媒を最初に添加し、更にその後においても、スラリーの固形分含量が所望の限度内で維持されるようにリアクターに添加する。バッチ式操作は、米国特許第4727173号及び米国特許第5084590号において連続式操作として例示されている。これらの両特許文献の全開示内容を、本願明細書に参照により援用する。
本発明の好ましい形態では、トリアルコキシシランの直接合成工程は、熱安定性の溶媒、シリコン、銅触媒前駆体、リン含有プロモータ及び消泡剤を、連続撹拌式のスラリーリアクター中において、アルコール蒸気と接触させることにより実施する。インペラの数及び型式を適宜選択し、効率的な固体の懸濁、良好なガスの分散及び銅活性化シリコンへのアルコールの良好な供給を最適化する。当該リアクターには、ガス状アルコール導入用のノズルを1つ又は複数装備してもよい。プロモータ、銅触媒前駆体−シリコン混合物又はシリコンを連続的若しくは断続的に添加する手段を装備してもよい。また、揮発性の反応生成物及び未反応アルコールの連続除去及び回収を行うための手段を装備するのも好適である。トリアルコキシシラン生成物の分離及び精製は、米国特許第4761492号又は第4999446号に開示される方法で実施するのが最適であり、その両方の開示内容を、本願明細書に参照によって援用する。
シリコン及び銅触媒前駆体の初回ロードを本発明の方法に従って活性化するとき、トリアルコキシシランの連続スラリー相直接合成工程を、シリコンのみの添加、又は最初に添加したものよりも銅触媒前駆体及びリン含有プロモータ含量の少ないシリコンの添加により実施するのが好適である。このようにして、スラリー中の銅濃度を制御し、アルコールの炭化水素及び水への変換(上記の反応式3及び5)が最小化される。水の存在により生じる不都合に関しては、先に記載した通りである。
当該反応は通常150℃以上において実施するのが好適であり、かかる温度以下では反応物質、プロモータ、溶媒又は所望の生成物が分解する傾向が高まる。好ましくは、当該反応温度を約200℃〜約280℃の範囲に維持する。本発明に係る、銅−活性化シリコンとメタノールとの反応は好ましくは約220〜270℃、最も好ましくは約230〜260℃で実施し、一方、エタノールの場合、当該反応は好ましくは約200〜240℃、最も好ましくは約205〜230℃で実施する。反応を実施する際の圧力は、常圧以下〜常圧以上で適宜調節してもよい。通常、銅活性化シリコンとメタノールの反応においては常圧が採用される。約1〜5気圧が、本願明細書に記載の直接合成工程における反応速度及びトリアルコキシシラン選択性にとり好適である。
反応混合物を十分撹拌し、溶媒中の銅活性化シリコン粒子、プロモータ及びガス状のアルコールを含有するスラリーの混合状態を維持するのが好適である。リアクターからガス状の反応混合物を排出する排気ラインを十分断熱し、トリアルコキシシランの還流を確実に防止するのが好適である。還流によりアルコールとトリアルコキシシランとの連続的な反応が行われてしまい、テトラアルコキシシランの形成が促進され、その結果、目的のトリアルコキシシラン生成物が損なわれてしまう。
リアクター中のガス状アルコール、水素ガス及び他のガスの存在により、発泡が生じることもある。かかる事態は、リアクターからの溶媒、プロモータ及び銅活性化シリコンの損失につながるため、望ましくない。米国特許第5783720号では、消泡剤、好ましくはシリコン含有消泡剤(例えばOSi Specialties SAG(登録商標)1000、SAG(登録商標)100、SAG(登録商標)47、Wacker−Chemie OEL AF 98/300及びDow Corning FS 1265など)を添加することにより、かかる問題が解決されることを開示している。SAG(登録商標)1000、SAG(登録商標)100及びSAG(登録商標)47は、ポリジメチル−シリコン及びシリカを含有する組成物である。FS1265及びOEL AF 98/300は、フッ化シリコン(例えばポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン))を含有する。当該消泡剤は、バッチ反応の最初に一度添加するのみで十分な泡形成の回避又は緩和が行われ、かつ全てのシリコンが消費されるまでその効果が持続するものでなければならない。
一定温度においては、反応速度は、シリコン及び銅触媒前駆体の表面積及び粒径、並びにアルコールのフィード速度に大きく依存する。より高い反応速度は、より高い表面積、より微細な粒径及びより高いアルコールフィード速度により得られる。これらのパラメータの選択は、人、財産及び環境を危険にさらすことなく、安全かつ経済的に持続的に生成物が生産される態様で行われる。トリエトキシシランの直接合成工程中のアルコールフローを減少させることにより、活性の低下を抑制又は予防でき、また安定性を維持することができる。このような制御により、脱水素及び他の副反応により生じる過剰なアルコールが減少するのみならず、リアクターの下流におけるストリッピングカラムにおける生成物の分離も容易になる。
銅触媒前駆体及びリン含有プロモータを本発明において用いることにより、トリアルコキシシランに対する高い選択性、高い反応速度及び安定した収量が実現される。これは、本発明の直接合成工程を用いてトリメトキシシランを調製する場合に特に顕著である。好ましくは、当該銅触媒前駆体は、1gあたり20m2超の表面積を有し、プロモータとして1.5〜4.5重量%でリン酸塩を含有する水酸化銅(II)である。本発明の教示により、トリアルコキシシラン/テトラアルコキシシランの重量比率は少なくとも15、好ましくは17超、最も好ましくは20超である。同時に、シリコン変換率は、反応速度及び/又はトリアルコキシシランに対する選択性が許容できないレベルに低下する前において、60%超、好ましくは70%超、最も好ましくは85%超である。本発明のこれらの特徴全てを、以下の実施例において例示する。
G.実施例
以下の実施例で本発明の好ましい実施態様を例示する。これらは本発明の範囲を限定するものではない。むしろ、単に当業者による本発明の実施を容易にするためにのみ示すものである。
(1)使用する略語及び単位
実施例に示すデータを表示する際に使用する略語は以下のとおりである。
Figure 0005294861
(2)使用する器材
本実施例では、8Lの三相ステンレス鋼製のスラリーリアクターを用いた。幅1.27cmの4つのバッフルを、90°の間隔で、リアクターの壁に設置した。軸方向シャフトに取り付けた2つのインペラを用いて撹拌を行った。底のインペラを、6枚ブレードのラシュトンタービン(直径9.5cm)とした。同じ直径の3枚ブレードのマリンプロペラを、上記のタービンの10cm上方に配置した。撹拌速度を可変させて動力を供給した。ヒーター/温度制御器により制御される電気加熱マントルを用いてリアクターを加熱した。リアクターの上部にステンレス鋼製シリンダを装備し、それらをバルブを介して連結し、それを用いて添加材(窒素圧下)をリアクター内に注入し、又はリアクター内の物質のサンプリングを行った。
調整されたFMIラボラトリー社製のポンプを用い、1Lの貯留容器から、メタノール又はエタノールをリアクターに供給した。コイル状のステンレス鋼管(内径0.32cm×長さ305cm)を、160℃に温度制御された4Lのシリコーンオイルバス中に設置し、アルコール気化器として用いた。アルコールインレットラインを、リアクターの上部を通して挿入した。それをヒートトレースして120℃に制御し、蒸気の凝結を防止した。アルコール蒸気を、リアクターの底部から2.5cm上方、6枚ブレードのタービンの下方の位置から、単一の下方ポインティング(0.63cmの内径)スーパージャーから注入した。アルコール蒸気インレットラインに圧力計を取り付け、スーパージャーが封鎖された時には高い表示を示した。追加用のアルコールを実験期間中に貯留容器に供給し、この試薬の連続的なフローを維持した。
反応生成物及び未反応アルコールを、パックされた76cm×内径3.8cmの管を通じてリアクターから排出させた。それはエントレインメントセパレータ及び部分的な蒸留カラムとして機能し、生成物流からの溶媒及び高沸点シリケートの除去に役立った。セラミックサドル及びステンレス鋼メッシュでパッキングした。5つの熱電対を管に沿って配置し、温度を記録し、発泡を表示させた。最も低い熱電対を、リアクターの上部と同一平面上に配置した。上記したように、FS 1265、AF 98/300及びSAG(登録商標)100を用いて発泡を制御した。フレキシブルチューブを用いて、エントレインメントセパレータ/部分蒸留カラムの排出口と4方向バルブ(サンプリング及び蒸留カラムへの粗生成物フローを制御する)を接続した。
2つの10枚プレートのOldershaw蒸留カラムを用いて、ガスからの液体反応生成物及び未反応アルコールの分離を行った。リアクターからの流出液を、加熱マントルに支持されている5Lの3首丸底フラスコに取り付けられた下部カラムの上部トレイに流入させた。熱電対を有する磁気制御還流凝縮器及び蒸留ヘッドで上部カラムを覆った。シリコーンオイルを循環させ、還流凝縮器及び他の下部凝縮器を−25℃冷却した。凝縮されなかったガスを、ベーパーロックバブラーを通してコンデンサからフードに供給した。より広い管をバブラーの下流に設け、ガラス製品(カラム、コンデンサ及び飲用噴水)の破損又はジョイント部における漏出の原因となりうる背圧の発生を回避した。ガスサンプリングポートを、バブラーの下流に、Tジョイントを介して設けた。排ガスフローを、実験室用フードへの放出前に窒素で希釈した。3首フラスコの第2の開口部を熱電対に接続し、更にもう1つの開口部をFMIラボラトリー社製ポンプによる吸入用に確保した。ポンプを用い、フラスコからテフロン(登録商標)コーティングされたポリエチレン貯蔵瓶へ液体製品を移した。トリメトキシシラン及びトリエトキシシランの貯留又はサンプリングに用いる全てのガラス容器は、使用法の前に希HClで洗浄し、メタノール(又はエタノール)で完全にリンスし、110℃でオーブン乾燥した。
反応生成物のガスクロマトグラフィ分析は、後述するように実施した。
(3)一般の銅のシリコン活性化及び反応方法
リアクターに対して溶媒、シリコン、銅触媒前駆体及び消泡剤を充填し、密閉した。溶媒:シリコン比率は通常2:1又は4:1とした。スラリーを670〜900回転/分で撹拌し、所望の反応温度に加熱しながら窒素を導入した。同時に、アルコール気化器及び供給インレットを150〜170℃まで加熱し、がそうであった還流凝縮器を循環させる冷却液を−25℃に冷却した。全ての設定温度が得られたとき、リアクターへのアルコールフローを開始した。反応の間、窒素フローを〜50ml/分に減少させた。
アルコールフローの開始後、安定な組成となるまで、水素のベントガス流のサンプリング及び分析を10〜30分毎に行った。それは誘導期の終わりを示すものであった。その後、ガスのサンプリングを30分毎に実施し水素及び他の非凝縮副産物のモニタリングを行った。反応の経過中に、全ベントガスフローを用い、反応式(1)の化学量論に従う反応速度の凡その基準とした。
30分毎にサンプルを、2〜5分の間、予め酸で洗浄し、アルコールでリンスし、オーブン乾燥した容器(4方向サンプリング口付き)に回収した。サンプリングの間、ドライアイスで容器を冷却した。ガスクロマトグラフィによってサンプルの質量分析を行った。液体生成物のバルクを3首フラスコ(再沸器として機能する)で凝縮し、貯留容器に移した。これらの全データを用い、時間ごとの生成物流の組成、トリアルコキシシランに対するその選択性、反応速度及び全体のシリコン変換率を算出した。通常、リアクターに添加したシリコンの>85%を反応させた後に反応を終了させた。場合によっては、実験の目的に応じて、それより高い若しくは低いシリコン変換率で反応を終了させた。反応系に含まれる残余固体を時々回収し、質量分析してシリコン変換の算出に用いた。
GS−Molesieve 30m×0.53mm内径(J&W Scientific社製、Folsom、CA)キャピラリーカラム、及び炎イオン化検出器を取り付けた、ヒューレット・パッカード5840 ガスクロマトグラフ装置を用い、気体サンプルを分析し、水素、窒素及び炭化水素(例えばメタン、エタン)の含有を測定した。アルゴンをキャリアーガスとした。ガスクロマトグラフィ−質量分光測定を行い、ジメチルエーテル量を解析した。アルコキシシランを含有する液体サンプルを、60/80メッシュChromosorb WHPカラム(Supelco社、Bellafonte、PA)+3.66m×3.18mm内径ステンレス鋼20% OV−101、及び熱導電率検出器を取り付けたヒューレット・パッカード5890ガスクロマトグラフを用いて分析した。ヘリウムをキャリアーガスとした。
(4)使用した材料
実施例において例示する実験で使用するテクニカルグレードのシリコンサンプルを、関連する分析データと共にテーブル2に示す。45〜300μmの粒子径の粒子が、シリコンの約70重量%を占めていた。THERMINOL(登録商標)59を唯一の溶媒として使用した。FS 1265(Dow Corning社製)そして、SAG(登録商標)47は消泡剤である。メタノールはACS等級(>99.9重量%)、含水量<0.1重量%を用いた。
テーブル2:実施例で用いたシリコンの組成
Figure 0005294861
様々な供給元の水酸化銅を試験した。下記の実施例において同定及び説明を記載する。使用する銅リン酸塩も同様に記載する。
(5)実施例1から21
実施例1から21は、全ての水酸化銅がトリメトキシシランの直接合成方法にとり同様に許容でき、効果的であるわけではないことを示す。
水酸化銅の供給源を表3に示す。トリメトキシシランの直接合成工程を、上記の活性化方法及び反応方法を使用して、8Lのリアクター中で250℃で実施した。各試験では3.5kgのTHERMINOL(登録商標)59、1.75kgのシリコン、13.2gの水酸化銅、5.0gのフルオロシリコーン消泡剤及び8.95g/分のメタノールフィードを用いた。(実施例20では11g/分のメタノール供給を行った)。
テーブル3:シングルバッチ式のHSi(OCH 3 3 の直接合成方法における、GRIFFIN、PHIBROTECH、SULCOSA、SALDECO、CUPROQUIM、SPIESS−URANIA AND JOHNSON MATTHEY社製のCu(OH) 2 の性能
Figure 0005294861
データは、試験した21の水酸化銅のサンプルのうちの11が、1バッチ式反応において、6重量%超のTMOSを含んでなる粗トリメトキシシラン生成物の産生につながることを示す。6重量%未満のTMOS産生を示す水酸化銅(実施例1、2、6、9、10、11、17、18、19、21)は、単一の供給元に限定されるものではなかった。
TMOSは、メタノールとTMSの第2の反応を経て形成される(上記の反応式[2]を参照)。許容できない水酸化銅(例3、4、5、7,8、12〜16、20)の試験では、その形成が全体的に10重量%を越え、1〜20%のシリコン変換率を示したが、その後で4〜9重量%に減少した。全生成混合物中におけるTMOS産生量が<6重量%に留まった水酸化銅(例1、2、6,9、10、11、17、18、19、21)の場合、TMOSは常に<9重量%で1〜20%のシリコン変換率を示し、その後2〜5重量%に減少した。すなわち、Cu(OH)2に1つ以上の許容できる成分が存在するか、又は前記Cu(OH)2を含まない1つ以上の成分が存在することが考えられ、そのことはTMOSにTMの変換率に影響することを示唆する。
(6)実施例22から31
実施例22から31は、単一バッチ試験において許容できる収率を示す水酸化銅が、必ずしも、半連続式又はマルチバッチ式操作において、多数回でシリコンをリアクターに添加した場合にこの性能が維持されるわけではないことを例示する。
各実施例は、単一の溶媒を用いた2つ以上のバッチ式反応によるものである。実施例1から21で開示した材料組成及び反応条件を用い、上記で概説した操作方法に従い、約60〜90%のシリコン変換率となるまで第1のバッチ反応(各実施例でAと示す)を実施した。その後、シリコン及び水酸化銅を残余の反応スラリーに再度添加し、第2の反応におけるシリコンの初期重量を1750gとした。水酸化銅:再添加したシリコンの重量比を0.00754に維持した。第3及びそれ以降のバッチ反応を同様に実施した。
テーブル4では、使用した水酸化銅を列挙し、それらと実施例1から21で使用したものとの間の相関関係(該当する場合には)を示す。メタノールのフロー速度を8.95g/分とし、但し実施例27は7g/分とした。
テーブル4:実施例1から21、及び実施例22から32で用いたCu(OH) 2
Figure 0005294861
テーブル5:Si(OCH 3 3 のマルチバッチ式直接合成方法における、様々な供給元に由来するCu(OH) 2
Figure 0005294861
全般的に、シリコン添加の回数が増加するに従い、TMOSが増加した。TMOS量は、実施例22、23、25及び26では2回目の添加時において、また実施例24、27、28及び29では3回目の添加時において6重量%を越えた。実施例30及び31の試験では、TMOSが6重量%を越えるまで、使用する水酸化銅と共に少なくとも3回のシリコン添加を行うことができた。実施例6、10、17及び19において使用する水酸化銅が1回のバッチ操作の許容できるパフォーマンスを示したのに対し、実施例24、25、28及び29では、2回以上のバッチ反応で同様の許容できる性能が示されなかった。その原因は、組成上、構造上、形態上の特性が原因であると考えられ、それらは許容できるパフォーマンスを示す水酸化銅と示さないそれらとを区別するものである。
(7)実施例32Aから32E
これらの実施例では、<6の重量%でTMOSを生じさせる1種類の水酸化銅を混合することにより、容認できない水酸化銅の性能を改善することができることを示す。
直接合成工程の試験を、SULCOSA社製の水酸化銅(単一バッチ反応において1〜20%のSi転換を示し、11〜14重量%でTMOSを産生する(実施例32A))と、GRIFFIN社製の水酸化銅(実施例32E)(同様のシリコン変換、<5重量%のTMOS産生)とを混合して実施した。試験で使用した水酸化銅の重量を表6に示す。実施例1から20で記載したように試験を実施した。5つの試験の結果を以下に示す。
テーブル6:実施例32Aから32EにおけるTMOSのデータ
Figure 0005294861
なお、実施例32Bでは、GRIFFIN社製の水酸化銅がわずか10%であっても、約20%のシリコン変換の後、生成混合物中のTMOSの産生量が6重量%であった。実施例32Cではより顕著な改良が示された。対照的に、Sulcosa社製のCu(OH)2の10重量%の添加は、GRIFFIN社製の材料のパフォーマンスに負の影響を及ぼさなかった(実施例32D)。すなわち、実際に使用したGRIFFIN社製のCu(OH)2は望ましい成分を含有し、それはSulcosa社製のCu(OH)2には含まれず、またTMSの直接合成工程の初期におけるTMOS形成の低下にあたり、比較的低いレベルでも効果的であることを示した。
(8)実施例33から42
これらの実施例では、リン酸塩の含有が、トリメトキシシランの直接合成工程において許容できる性能を示す水酸化銅と、示さない水酸化銅とを分ける要因となることを示す。上記で定義したように、許容できる性能とは、単一バッチ及びマルチバッチ操作における、>50%のシリコン変換の後におけるTMS>88重量%、TMOS<6重量%を意味する。
実施例1から31で使用する水酸化銅を、銅の含有、含水量、微量金属、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、表面積及び粒径に関して分析した。全て表面積>10m2/g及び平均粒径<5ミクロンであった。実施例14以外は、塩化物含量が10ppm未満であった。銅含量は56〜62重量%であったが、この程度の変動幅では性能を左右しないと判断した。(250℃まで加熱し重量減少させた)含水量及びAl、Fe、Sn、Pb及びZnなどの微量金属含量は全て、上記で定義した許容範囲内であることを確認した。リン酸塩濃度だけが触媒の性能にとり有意な決定要因及び予測手段であることを確認した。水酸化銅中のリン酸塩の存在をFTIRで解析した。スペクトル解析の結果、900〜1150cm-1の領域のバンドを示した。リン酸塩濃度は、誘導カップリングプラズマ分光測定によるリンとして、又は可視分光光度測定によるリン酸モリブデン酸塩として測定した。表7に分析データを要約するが、それらはトリメトキシシランの直接合成工程において許容できる性能を示す水酸化銅と、リン酸塩濃度との相関を裏付けるものである。
実施例33及び34のデータは、実施例1、30及び31の試験で使用するGRIFFIN社製の水酸化銅が、3.5〜4.5重量%でリン酸塩(7〜9重量%の銅オルトリン酸当量)を含有することを示す。このリン酸塩の濃度により、単一バッチ及びマルチバッチ操作において、トリメトキシシランの直接合成工程における良好な触媒性能が示された。実施例35から37では、実施例10、25、26及び27の試験で使用するSULCOSA社製の水酸化銅中のリン酸塩濃度が全て0.05重量%未満であったことを示す。この範囲において、単一バッチ反応ではTMOSが6重量%未満となりうるが、2回以上のバッチ反応を連続して行った場合には、この基準を越えた。実施例38から42では、実施例17から19、21、22、28及び29の試験で使用したJOHNSON MATTHEY社製の水酸化銅中のリン酸塩濃度が1.2〜3.5重量%(2.4〜7重量%の銅オルトリン酸当量)の範囲であることを示した。実施例33及び34のデータを考慮すると、約1.2〜約4.5重量%のリン酸塩濃度により、単一バッチ式及びマルチバッチ式反応において、TMOSが<6重量%となることが解った。
テーブル7:様々なCu(OH) 2 サンプルにおけるP、PO 4 3- 及びCu 3 (PO 4 2 含量
Figure 0005294861
(9)実施例43Aから43G
これらの実施例では、塩基性リン酸銅を添加することにより、トリメトキシシランの直接合成工程における反応性能及びテトラメトキシシラン(TMOS)形成の制御が改善される有益な効果を示す。
本実施例では7つの別々のバッチ試験の結果を示す。塩基性リン酸銅(Cu3(PO42.Cu(OH)2、Aldrich社製)を反応スラリーに添加し、あるいはSULCOSA社製の水酸化銅と混合した状態でリアクターへ添加した。SULCOSA社製の水酸化銅は、0.025重量%でリン酸塩(0.050重量%の銅オルトリン酸当量)を含有していた。塩基性リン酸銅を、添加した水酸化銅の重量に対して1〜16重量%で添加した。他の全ての反応条件は、実施例1から21で開示した条件と同じである。
データ(表8)によると、使用した水酸化銅に対して塩基性リン酸銅を2〜16重量%で反応系に添加したときにTMOS形成の減少がみられた。リン酸銅が水酸化銅に対して2〜11重量%であるとき、TMOS形成は約5重量%未満であった。
テーブル8:塩基性リン酸銅を用いたTMOS形成の減少
Figure 0005294861
(10)実施例44A−44C
本実施例では、ピロリン酸銅の添加により性能が改良されることを例示する。ピロリン酸銅は、70℃で、137gの硫酸銅5水和物(0.49モルのCuSO4.5H2O)と100gのメタリン酸ナトリウム(0.327モルのNa339、Aldrich社製)を反応させることにより合成した。両方の固体を、1Lの脱イオン蒸留水中に別々に溶解させた。硫酸銅溶液を緩やかに撹拌、加熱しながら、そこにリン酸塩を添加した。固体を濾過して回収し、脱イオン蒸留水で十分洗浄し、50℃で真空乾燥した。分析した結果、Cu=34.89±0.10重量%、P=15.64重量%であった。FTIRを行った結果、1144cm-1で強いバンドが、927cm-1で中程度のバンドが見られた。Cu/P原子比率は1.1であり、ピロリン酸銅における期待値の1.0とほぼ一致した。X線回折パターンを解析した結果、ピロリン酸塩の標品のパターンと非常に良く一致した。
SULCOSA社製の水酸化銅を用いた比較実験としてのTMS直接合成工程を、実施例44Aとして示す。実施例44Bでは、SULCOSA社製の水酸化銅を13.2g、及びメタリン酸銅を0.52g用いた。反応において60.65%のSi変換が行われた。実施例44Cは実施例44Bの続きであり、1050gのSi、7.92gのSULCOSA社製の水酸化銅、及び0.31gのメタリン酸銅をリアクターに再度添加したものである。実施例44B及び44Cの両方において、使用した水酸化銅に対して約4重量%のメタリン酸銅を添加した。3つの試験データを表9に示す。
実施例44Bのデータは、メタリン酸銅の使用により、TMOSの減少及び選択性の向上が見られたことを示す。反応を実施例44Cで継続させた場合にも、かかる向上効果が持続された。
テーブル9:メタリン酸銅の使用によるTMOS形成の減少
Figure 0005294861
(11)実施例45−46
これらの実施例では、塩基性リン酸銅の使用により、マルチバッチ式の試験においてTMOS形成が<6重量%に減少することを示す。
反応条件及び原料組成は実施例22から32に開示した内容と同じである。実施例45では、SULCOSA社製の水酸化銅(PO4 3-=0.006重量%)を用いたトリメトキシシランの直接合成試験をしめす。そこにおいて、3回のシリコン添加(実施例45Aから45C)を行った。実施例46では、同じ水酸化銅を、8.33重量%の塩基性リン酸銅(1.1gあたり13.2gのCu(OH)2)と共に用いた。5回のシリコン添加(実施例46Aから46E)が可能であった。各バッチの終了時点でシリコンの添加を行い、次のバッチ反応の最初の時点で1.75kgのSiが利用できるようにした。シリコンに対する添加された水酸化銅、及び水酸化銅に対する銅のリン酸塩の比率を一定に保持した。結果を表10及び11に示す。
硫酸銅水溶液(500gの水中、125gのCuSO4.5H2O)と、オルトリン酸ナトリウム(200gの水中、134.3gのNa3PO4.12H2O)とを反応させ、塩基性リン酸銅を調製した。最初に両方の溶液を85℃に加熱した。硫酸塩溶液を撹拌し、リン酸塩溶液を急速に添加した。未処理の固体をフィルターに通し、水で3回洗浄し、49℃で真空乾燥した。分析の結果、Cu=50.11重量%及びP=12.16重量%を示し、Cu3(PO42.Cu(OH)2の推定Cu/P原子比率である2.01と非常に良く一致した。814cm-1、959cm-1及び1058cm-1のFTIRスペクトルの強い振動が見られ、オルトリン酸及び塩基性リン酸塩に関する公知のスペクトルと一致した(R.A.Nyquist and R.O.Nagel,Infrared Spectra of Inorganic Compounds,vol.4,page 173,Academic Press,Boston,1997)。X線粉回折パターンを解析した結果、Aldrich社製の市販の塩基性リン酸銅のサンプル(Cu/P=1.95)と非常に良く一致した。
テーブル10:実施例45Aから45Cにおけるマルチバッチ試験のデータ
Figure 0005294861
実施例45の3回目の反応においてTMOSが>6重量%に増加したが、実施例46の5回の反応後においては<6重量%のレベルが保持されていた。実施例46の良好な性能は、その実施例の試験で、塩基性リン酸銅を有効量で使用したことに起因する。これらの有効量の添加はまた、TMSに対する選択性の向上にもつながるものであった。
テーブル11:TMSのマルチバッチ式直接合成工程におけるリン酸銅の使用により、TMOS量が6重量%未満に制御される
Figure 0005294861
(12)実施例47Aから47C及び48Aから48E
これらの実施例は、TMOS<6重量%、及びTMS>87重量%を維持するためには、マルチバッチ試験(及び連続工程の延長)の期間、リン酸銅を有効なレベルに維持する必要があることを示す。
実施例47Aから47Cを、実施例26Aから26Cと同様に行った。実施例48Aから48Eは、実施例47Aから47Cで私用したのと同じSULCOSA社製Cu(OH)2(PO4 3-=0.032重量%)を用いて実施したが、最初の2回のシリコン添加の間に、オルトリン酸銅の添加を行い増強した。オルトリン酸銅(Rose Chemicals社製)は、1.6のCu/P原子比率(Cu=48.59重量%、P=14.83重量%)を有した。これらの反応において水酸化銅を4.02重量%で用いた。3、4及び5回目のシリコン添加において、リン酸塩の添加は行わなかった。
テーブル12:実施例47Aから47Cのデータのまとめ
Figure 0005294861
テーブル13:実施例48Aから48Eのデータのまとめ
Figure 0005294861
先にすでに開示されるデータと同様、TMOSは実施例47Aから47Cと比較して実施例48A及び48Bでは減少していた。しかしながら、実施例48Cから48Eでは、リン酸銅の懸濁液への添加に続いてTMOSの増加が生じた。すなわち、リン酸銅のレベルがマルチバッチ合成の間に有効量に維持され、望ましくはTMOSが6重量%以下に抑制されることが重要である。
(13)実施例49Aから49C
これらの実施例では、上記の実施例16において使用したSPIESS URANIA社製の水酸化銅にオルトリン酸銅を添加することにより、性能が改善されることを例示する。添加の際、水酸化銅は100ppm未満のリン酸塩を含有していた。実施例49B及び49Cは、リン酸塩の添加によりCH3SiH(OCH32の形成が誘導された増加することを示す。
3つのトリメトキシシランの直接合成工程に関する試験結果を本実施例にまとめる。実施例49A(実施例16と同じ)を比較実施例とした。0.6gのCu3(PO42(Rose Chemicals社製)を13.2gのCu(OH)2と共にリアクターに添加したことを除き、実施例49Bも同一の反応条件とした。実施例49Bにおいて、約75%のシリコン変換がなされ、更にシリコン、水酸化銅及びリン酸銅を再度添加し、実施例49Cとして反応を継続させた。水酸化銅に対するリン酸銅の比率、及びシリコンに対する水酸化銅の比率を、実施例49Cで添加した原料組成に維持した。
テーブル14:リン酸銅の添加による、SPIESS−URANIA社製のCu(OH) 2 の性能向上
Figure 0005294861
テーブル14は、実施例49B及び49Cのリン酸銅を用いることにより、TMSに対する望ましい選択性が維持されることを示す。TMOS量は、コントロールの反応(実施例49A)試験と比較して約40%減少した。リン酸銅を用いた場合、CH3SiH(OCH32はコントロールと比較して少なくとも2倍増加した。
(14)実施例50Aから50C
本実施例では、トリメトキシシランの直接合成工程におけるTMOS形成を<6重量%に抑制するための、リン酸ナトリウム12水和物(Na3PO4.12H2O)の使用を例示する。
3つの別々のバッチ試験を示す。実施例50Aは比較実施例であり、0.05重量%のリン酸銅を含んでなるSULCOSA社製のCu(OH)2を、リン酸ナトリウム添加なしで用いた。実施例50B及び50Cでは、13.2gのCu(OH)2あたり、0.51gのNa3PO4.12H2O(Aldrich社製)を用いた。実施例50Cでは、最初にリン酸ナトリウムと水酸化銅を、200gのTherminol(登録商標)59中で一緒に加熱し、250℃で1時間反応させた。リアクター中のこの混合物に、1750gのシリコン及び更なるTherminol(登録商標)59溶媒を添加した。データを表15に示す。
実施例50B及び50Cでは、リン酸ナトリウムの使用による、TMOS形成の減少、並びにTMS及びMDMS形成の増加が示された。
テーブル15:リン酸ナトリウムによるTMOSの形成の減少
Figure 0005294861
(15)実施例51Aから51B
本実施例では、リン酸塩含有の低い水酸化銅との組み合わせでトリメチルリン酸を用いることにより生じる、トリメトキシシランの直接合成工程における選択性の向上を例示する。
2つの試験を示す。両方とも、実施例1から21で開示される標準的な条件下で実施した。いずれの場合においても、7ppmのリン酸塩を有するSULCOSA社製の水酸化銅(13.2g)を銅触媒の供給源とした。実施例51Bの試験では、メタノールフローの開始直前にトリメチルリン酸(0.7g)をリアクターに注入した(窒素加圧下)。テーブル16に、両方の試験結果のデータを示す。
テーブル16:TMSの直接合成方法における、トリメチルリン酸の添加により生じるTMOS形成の減少
Figure 0005294861
実施例51Aでは、反応の最初の段階においてTMOS形成は5.5〜7.6重量%(<20%のSi転換)であった。その後、4.5〜5.5重量%で維持された。生成混合物中のTMOS含有は6重量%より大きかった。対照的に、実施例51Bの試験では全体にわたり、TMOSは<5重量%に維持された。明らかに、トリメチルリン酸の添加による主要な効果として、TMOS形成の減少及びTMSへの選択性の増加が見られた。MDMSも著しく増加した。
(16)実施例52A−52D
本実施例では、400ppmのトリメチルリン酸の使用により、トリメトキシシランの直接合成方法において、TMOS形成を6重量%超から望ましいレベルまで減少させることができることを例示する。本実施例ではまた、トリメチルリン酸により誘導されるMDMSの増加を例示する。
実施例52Bの試験では、実施例31Dの残余物に、更なる水酸化銅及びシリコンと共に0.7gのトリメチルリン酸を添加し、マルチバッチ試験を継続させた。実施例52A(実施例31Dとしての同一データ)を比較例として示す。同様に、実施例52Dは、実施例25Cにて上記した試験の残余物に水酸化銅、シリコン及び0.7gのトリメチルリン酸を添加することにより継続させた、実施例25のマルチバッチ試験である。実施例31Dのデータを実施例52Cとして表17に示し、また実施例25Cのデータを実施例52Aとして同様に示す。
実施例52Bでは、実施例52A(実施例31D)の反応スラリーにトリメチルリン酸を添加することにより、>6重量%から<5重量%までTMOSが減少したことが示されている。同様に実施例52Dでは、実施例25C(実施52C)に対するトリメチルリン酸の添加による、>9重量%から<6重量%までTMOSが減少したことが示されている。これらのデータは、400ppmのトリメチルリン酸(添加するシリコンの重量に対する)の添加による、トリメトキシシランに対する選択性を向上させる効果を例示するものである。同時に、メチルジメトキシシランは、コントロールと比較し少なくとも40%増加した。
テーブル17:実施例52Aから52Dのデータのまとめ
Figure 0005294861
(17)実施例53A−53D
実施例52A〜52D、並びに実施例22〜31から自明のように、TMOSはマルチバッチ試験では通常増加する。この試験から得られた証拠によると、溶媒を処理して縮合シリケートを除去した場合、有効なリン酸塩濃度が次の反応においても維持されると仮定するならば、マルチバッチ反応による望ましい収率が回復されうることが示される。試験結果によると、使用済の、未処理の溶媒(例えばマルチバッチ処理の後の反応液に存在する)では好適な反応性能が損なわれていることが示される。水酸化銅の熱分解処理の間、又はその後のメタノールとの反応の間における有機若しくは無機リン酸塩の存在により、信頼性の高い反応性能が得られる。本実施例では、トリメトキシシランの直接合成工程を水酸化銅(縮合シリケートの除去のために処理されなかった使用済溶媒中で分解された)を用いて実施したとき、トリメチルリン酸(実施例53B)、ジメチル亜リン酸(実施53C)及びトリブチルリン酸(実施例53D)の改善効果が見られることが例示されている。
本実施例で4つの試験結果をまとめる。上記の実施例6及び24で使用したPHIBROTECH社製の水酸化銅を用いて全ての試験を実施した。使用する原料の組成及び反応条件下は、上記の実施例1から19で開示されたものと同じである。実施例53Aをコントロール試験とし、それは水酸化銅をin situで新鮮なTherminol(登録商標)59中で分解させることを特徴とする。実施例53B、53C及び53Dの各々では、同じ水酸化銅13.2gを、トリメトキシシランの産業的な直接合成工程から得られた(米国特許第6090965号の実施例1、表3を参照)、250gの使用済、無処理のTherminol(登録商標)59中で、250℃でex situで分解させた(米国特許出願公開第2003/0051580号及び第2003/0032829号を参照)。得られる混合物を3.25kgの新しいTherminol(登録商標)59と混合し、直接合成工程の試験に使用した。
実施例53Aの試験を10時間行い、それにより添加したシリコンの78.23%が6125.07gの粗生成物に変換された。この生成物の組成は、1.38重量%のMDMS、89.67重量%のTMS、0.19重量%のMTMS、4.72重量%のTMOS及び4.04重量%のHVSであった。銅活性化シリコンとメタノールとの反応を表す水素発生が当初から見られた。11〜71%のシリコン変換の間、定常期が存在した。2.5〜9.5時間後、温度が254〜260℃まで上昇した。
実施例53Bの試験を10.5時間実施した。水素発生は、最初の4.5時間において断続的に見られた。リアクターの温度を249.4℃〜250℃に維持した。サンプルの分析結果から、その期間においては1.2%のシリコン変換しか生じないことが示された。85.71重量%のTMS及び6.69重量%のTMOSを含有する92.40gの粗生成物が得られた。更にトリメチルリン酸(0.7g)をリアクターに注入し、更に反応を6時間継続させた。水素の発生が増加し、発熱も生じ、それにより試験の終了時点でリアクター温度が261.8℃まで上昇した。4時間後に定常期となった。トリメチルリン酸の注入後の6時間において、2447.09gの更なる粗生成物が形成された。テーブル18は定常期におけるサンプルの分析結果を示す。
テーブル18:(CH 3 O) 3 PO注入後のTMOS形成の減少
Figure 0005294861
実施例53A及び53Bの結果の比較により、水酸化銅が使用済みの未処理の溶媒中で分解されたとき、直接合成工程における反応速度及び選択性が損なわれることが示された。トリメチルリン酸の添加により、トリメトキシシランの直接合成工程における反応速度及び選択性が増加した。TMOSは、トリメチルリン酸注入前の6重量%超から、注入後の定常期における3〜5重量%まで減少した。TMSは86重量%未満から90重量%超まで増加し、同に期間においてMDMSはゼロから>2重量%まで増加した。
トリメトキシシランの直接合成工程の試験の間にトリメチルリン酸を反応液に添加すると、有機亜リン酸のはっきりした匂いが、GC分析用に収集した幾つかのサンプルにおいて検出された。GC/MS分析の結果、ジメチル亜リン酸(CH3O)2POHの存在を確認した。したがって、その直接合成工程に与える効果が確認された。結果を実施例53Cに示す。
上記の通り、水酸化銅を、使用済みの、無処置のTherminol(登録商標)59中で別々に分解させ、本実施例の試験に用いた。ジメチル亜リン酸(0.96g)を、1.75時間後に直接合成方法工程に添加した。その時点に至るまでは反応は非常に遅く、選択性は<5であった。対照実験(実施例52A)では128.95gのSi(7.37%の転換)が、1.5時間で粗生成物に変換され、一方、実施例52Cではわずか19.84gのSi(1.13%の転換)のみが同じ時間で反応した。反応速度及び選択性は、ジメチル亜リン酸の添加後に顕著に増加した。反応温度はジメチルリン酸の添加後のその時間、250℃〜254.3℃に上昇した。3.75時間から試験終了の9.75時間(69.28%のシリコン変換)まで、温度を260℃〜263℃に維持した。データをテーブル19に示す。
テーブル19は、約550ppmのジメチル亜リン酸(添加するシリコンの重量に対する)の添加後に主要な反応インデックスが顕著に改善されることを示す。特に、TMSは80未満重量%から88重量%超まで増加した。TMOSは17重量%超から5重量%未満に減少し、選択性は18〜23の範囲であった。更に、MDMSは0から1〜3.5重量%に増加した。すなわち、トリメチルリン酸と同様、ジメチル亜リン酸塩は、直接合成工程における反応スラリー中での縮合シリケートの蓄積を防止及び逆転させる効果を有する。
テーブル19:(CH 3 O) 2 POHの添加後におけるTMOS形成の減少
Figure 0005294861
トリブチルリン酸(1.33g)を反応開始後1.75時間で注入したことを除き、実施例53B及び53Cと同様の方法で実施例53Dの試験を実施した。最初の1.5時間では、36.66gのSi(2.09%の転換)のみが反応した。反応混合物中に16重量%超のTMOSが含まれていた。リン酸トリブチルの注入の15分後のサンプルには21.68重量%のTMOSが含まれていたが、もう15分後にサンプリングした結果、TMOSは9.40重量%に減少していた。テーブル20は、その後、生成物組成が許容できる程度に安定であったことを示す。
テーブル20:(C 4 9 O) 3 POの添加後における、TMOS形成の減少
Figure 0005294861
トリブチルリン酸の添加によりTMOSが減少し、TMS及びMDMSが増加し、並びに反応速度が許容できるレベルにまで上昇したことが、これらのデータから明らかとなった。
(18)実施例54Aから54C
本実施例では、有効量のリン酸銅及びトリメチルリン酸の使用により、マルチバッチ操作の間、TMOSが6重量%以下に維持され、反応安定性及びTMSに対する選択性が維持されることを例示する。
9.8ppmのリン酸塩を含有するSULCOSA社製の水酸化銅(実施例9で使用)を、この試験の3バッチで用いた。最初のバッチ(実施例54A)では、12.39gの水酸化銅、1gのCu3(PO42.2H2O(Fluka社製)及び1750gのシリコンを用いた。次のバッチを、トリメチルリン酸を用いて継続させた。0.35gのトリメチルリン酸、9.912gの水酸化銅及び1400gのシリコンを実施例54Aの残余物に添加し、実施例54Bを継続させた。同様に、0.18gのトリメチルリン酸、9.295gの水酸化銅及び1312.5gのシリコンを実施例54Bの残余物に添加し、第3のバッチを開始させた(実施54C)。実施例54B及び54Cにおいて、メタノールフローの開始直前にトリメチルリン酸を窒素圧下で注入した。使用したリン酸銅は、45.84重量%のCu、及び14.51重量%のPを含有していた。Cu/P原子比率が1.54であり、期待値1.5と良好に一致した。X線回折パターンは、公表されているオルトリン酸のそれに一致していた。テーブル21に、直接合成工程の試験データを示す。
テーブル21:Cu 3 (PO 4 2 AND(CH 3 O) 3 POを用いたマルチバッチ試験
Figure 0005294861
SULCOSA社製の水酸化銅を用いた単一バッチ反応(例9)から得られた生成物混合物は、4.95重量%のTMOSを含有していた。水酸化銅への約8重量%のリン酸銅の添加により、実施例54Aの反応混合物中のTMOSが3.46重量%に減少した。実施例54C及び54Bそれぞれにおける100〜200ppmのトリメチルリン酸の存在は、次の2バッチの反応の間においてTMOSを<5重量%に維持するのに十分であった。また十分なリン酸塩濃度に対するMDMSの依存度を示すデータも得られた。
(19)実施例55Aから55C
本実施例では、トリメトキシシランの直接合成工程においてリン酸銅を銅触媒の唯一の供給源として使用した場合に、6重量%より大きいTMOSのレベルとなることを示す。
3つの試験の結果を本実施例にまとめた。18.52gのCu3(PO42.2H2O(Fluka社製)及び1750gのシリコンを用いて実施例55Aを実施した。実施例55B及び55Cは、シリコン及び塩基性リン酸銅(Aldrich社製Cu3(PO42.Cu(OH)2)を同じ重量で使用した。実施例55Bで13.2gの塩基性リン酸銅を、実施例55Cで66gを用いた。実施例55Cは実施例55Bを継続したものであり、すなわち反応後の残余物にシリコン及び塩基性リン酸銅を添加して継続させたものである。他の全ての反応条件は、実施例1から21及び実施例22から32にて説明したとおりとした。データをテーブル22に示す。
テーブル22:銅触媒の供給源としてリン酸銅を用いた、TMS直接合成方法
Figure 0005294861
実施例55Aの試験では、スラリー中の銅の濃度が(シリコンに対して)約0.5重量%となるようにCu3(PO42.2H2Oの重量を調節した。なお、その数値は水酸化銅が触媒銅の供給源である場合に有効な値であることが公知である。試験データから、シリコン活性化のための銅の供給源としてリン酸銅を用いても、トリメトキシシランの直接合成工程が実施できることが確認された。しかしながら反応は遅く(2.23%のSi変換/時間)、生成物中に37.70重量%のTMOSが含まれていた。GC/MS分析の結果、表18に示すように、主要生成物に加えてH2Si(OCH32が含まれることが確認された。遅い反応速度と高いTMOS含量は、TMS形成のための活性部位が不十分であることを示唆する。したがって、過剰なメタノールの大半が上記の反応式[2]に示される連続的な反応を経てTMOSに変換されたことになる。
塩基性リン酸銅を実施例55B及び55Cで用いたときに反応速度がわずかに上昇したが、結果に大差はなかった。すなわち、リン酸銅は、水酸化銅との組み合わせで用いた場合、TMSに対する選択性を向上させ、TMOSの産生を6重量%未満に抑制する有効なプロモータとなりうるが、それ単独での使用では選択的な触媒としての効果を有さない。
これらの実施例の試験中に収集したサンプルは、ドライアイスで冷却した場合でも活発なガス発生を示した。刺激的なオルガノ亜リン酸塩の匂いもまた発生した。選択されたサンプルをGC/MS分析した結果、トリメチルリン酸及びジメチルリン酸塩の存在が確認された。下記の反応式は、これらの化合物を形成させるものとして考えられる経路である。銅メトキシド(II)が中間体として形成された場合、米国特許出願公開2003/0051580号及び第2003/0032829号を参照に開示されるようにナノサイズの銅に分解させる。
Cu3(PO42+6CH3OH → 2(CH3O)3P=O+3Cu(OH)2
(CH3O)3P=O+HSi(OCH33 → (CH3O)2POH+(CH3O)4Si
以下の先行技術文献は本願明細書に援用され、本願明細書の不可欠な一部をなすものである:米国特許第1867357号、第1800828号、第2525242号、第2924505号、第3194749号、第3428731号、第4490337号、第4727173号、第4761492号、第4808406号、第4999446号、第5084590号、第5166384号、第6166237号、第6090965号、米国再発行特許第24324号、及び米国特許出願公開第2002/0136685号。
本発明に係る工程を特定の実施態様に関して記載したが、当業者であれば、本発明の範囲内において様々な変更を施すことが可能であり、また発明の構成要素をその同等物で置換することが可能であることを理解するであろう。更に、その技術的範囲から逸脱することなく、具体的な条件又は材料に対して多くの修飾を施し、本発明の教示に適応させることも可能と考えられる。

Claims (22)

  1. トリアルコキシシランの直接合成方法であって、任意に溶媒において、直接合成方法における触媒的に有効な量の、シリコンと、銅及び、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、水酸化銅(II)、水酸化物・酸化物の混合物、塩基性の銅炭酸塩、銅カルボン酸塩、銅アルコキシド及び銅シロキシドからなる群より選択される銅含有化合物からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーとを接触させて得られる触媒、及び直接合成方法における触媒の活性化に有効な量の少なくとも1つの触媒プロモータの存在下で、シリコンとアルコールを直接反応させることを特徴とし、前記触媒プロモータが、一般式:
    (RO) (OH) 3−n PO;
    MD M;

    (ROSi) (R’OP=O)
    (RO) Si(CH (R’O) P=O;
    (RO) P(OH) 3−n ;及び
    (RO) (OH) 4−m
    のリン含有化合物から選択される、少なくとも1つのリン−酸素結合を有する有機若しくは無機の化合物であり、
    それぞれRは独立にC −C 20 の、アルキル基、アリール基、脂環基、又はアルカリル基であり;
    それぞれR’は独立にC −C 20 の、アルキル基、アリール基、脂環基、又はアルカリル基であり;
    それぞれMは(CH SiO 1/2 であり;
    それぞれDは(CH SiO 2/2 であり;
    それぞれD はCH SiZO 2/2 であり;
    それぞれM はZ(CH SiO 1/2 であり;
    それぞれ、mは2〜4の整数であり;
    nは0〜3の整数であり;
    qは1〜8であり;
    uは0より大きく;
    vは0以上であり;
    wは0.5〜25であり;
    xは0より大きく;
    yは0より大きく;
    zは0.5〜25であり;
    Zはリン酸化オキシアルキレン基である方法。
  2. 前記トリアルコキシシランが一般式HSi(OR)で表される、請求項1記載の方法。(式中、各Rは1〜6の炭素原子数の、同じ若しくは異なるアルキル基である。)
  3. Rがメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基である、請求項2記載の方法。
  4. Si(OR)、RSi(OR)、(RO)SiOSi(OR)、H(RO)SiOSi(OR)H、HSi(RO)SiOSi(OR)、(RO)SiOSi(OR)R、(RO)SiOSi(RO)OSi(RO)、(RO)SiOSi(OR)HOSi(OR)、(RO)SiOSi(OR)ROSi(OR)、(RO)Si[OSi(OR)、(RO)SiOSi(OR)(OSi(RO))OSi(OR)及び[OSi(OR)]nからなる群から選択される少なくとも1つの更なる反応生成物が得られる、請求項2記載の方法。(式中、nは少なくとも4である。)
  5. 直接合成方法に用いる前記触媒が、シリコンと、少なくとも1つの銅含有化合物との接触により得られる、請求項1記載の方法。
  6. 直接合成方法に用いる前記触媒が、銅−シリコン合金、銅及びシリコンの金属間化合物、シリコン含有分散銅及びシリコンと銅含有化合物との反応生成物からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1記載の方法。
  7. 前記銅含有化合物が、54〜62重量%の銅含有量、及び170〜230kg/m のバルク密度を有する水酸化銅(II)である、請求項5記載の方法。
  8. 前記銅含有化合物が、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、水酸化銅(II)、水酸化物・酸化物の混合物、塩基性の銅炭酸塩、銅カルボン酸塩、銅アルコキシド及び銅シロキシドからなる群のうちの少なくとも1つのメンバーである、請求項6記載の方法。
  9. 直接合成方法に用いる前記触媒が、0.1〜100nmの範囲の粒径を有する、請
    求項1記載の方法。
  10. 直接合成方法に用いる前記触媒が、0.1〜100nmの範囲の粒径を有する、請
    求項5記載の方法。
  11. 直接合成方法に用いる前記触媒が、0.1〜100nmの範囲の粒径を有する、請
    求項6記載の方法。
  12. 直接合成方法に用いる前記触媒が無水物である、請求項1記載の方法。
  13. 直接合成方法に用いる前記触媒が無水物である、請求項5記載の方法。
  14. 直接合成方法に用いる前記触媒が無水物である、請求項6記載の方法。
  15. 少なくとも1つのリン−酸素結合を有する、直接合成方法に用いる前記触媒プロモータが、
    (RO) (OH) 3−n PO;
    (RO) P(OH) 3−n ;及び
    (RO) (OH) 4−m
    からなる群から選択される少なくとも1つの有機リン含有化合物であり、
    それぞれRは独立にC −C 20 の、アルキル基、アリール基、脂環基、又はアルカリル基であり;
    それぞれ、mは2〜4の整数であり;
    nは1〜3の整数である、請求項1記載の方法。
  16. 前記リン含有化合物が、
    (RO) (OH) 3−n PO;及び
    (RO) P(OH) 3−n
    からなる群より選択され、
    それぞれRは独立にC −C 20 の、アルキル基、アリール基、脂環基、又はアルカリル基であり;
    nは0である、請求項記載の方法。
  17. 直接合成方法に用いる前記触媒プロモータが0.1〜600nmの範囲の粒径を有する、請求項1記載の方法。
  18. 直接合成方法に用いる前記触媒プロモータが0.1〜600nmの範囲の粒径を有する、請求項15記載の方法。
  19. 直接合成方法に用いる前記触媒プロモータが0.1〜600nmの範囲の粒径を有する、請求項9記載の方法。
  20. 直接合成方法に用いる前記触媒プロモータが無水物である、請求項1記載の方法。
  21. 直接合成方法に用いる前記触媒プロモータが無水物である、請求項12記載の方法。
  22. 直接合成方法に用いる前記触媒プロモータが、Si(OR)形成をシラン生成物の合計量に対して6重量%以下に抑制し、HSi(OR)形成を85重量%超で提供するのに有効な量で反応溶媒に存在する、請求項4記載の方法。
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