以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
本発明における(A)成分のバインダーポリマーとしては、感光性樹脂組成物のバインダーとして機能するポリマーであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位若しくは芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、下記一般式(5)で表される。一般式(5)中、R8は水素原子又はメチル基を示し、R9は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示す。R9が有する置換基としては、水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等がある。
R9中のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。
一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有するバインダーポリマーは、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体の中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
また、バインダーポリマーは、耐薬品性の見地からスチレン又はスチレン誘導体をモノマー単位として含有することが好ましい。スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分として密着性及び剥離特性を共に良好にするには、バインダーポリマーがこれらを2〜40質量%含むことが好ましく、3〜28質量%含むことがより好ましく、5〜27質量%含むことが特に好ましい。この含有量が2質量%未満では密着性が低下する向があり、40質量%を超えると剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向がある。
バインダーポリマーの重量平均分子量は、20000〜300000であることが好ましく、40000〜150000であることがより好ましい。この重量平均分子量が20000未満では耐現像液性が低下する傾向があり、300000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
バインダーポリマーの酸価は、30〜250mgKOH/gであることが好ましく、40〜200mgKOH/gであることがより好ましく、50〜150mgKOH/gであることがより好ましい。この酸価が30mgKOH/g未満では現像時間が長くなる傾向があり、250mgKOH/gを超えると光硬化したレジストの耐現像液性が低下する傾向がある。
これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーの組み合わせとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーが挙げられる。
(B)成分である重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物は、上記一般式(1)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、上記一般式(2)で表されるアルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート化合物、及び上記一般式(3)で表されるノニルフェニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート化合物を含む。
一般式(1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレン基を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、p及びqは、p+q=4〜40となる正の整数を示す。X1又はX2の炭素数が2〜6の範囲内にないか、又はp+qが4〜40の範囲内にない場合、密着性が十分に得られにくくなるか、レジストの剥離時間が遅くなる傾向がある。密着性及びレジストの剥離性の観点から、X1及びX2はエチレン基であることが好ましく、p+qが10〜30であることが好ましい。
一般式(1)の化合物の好適な具体例としては、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン)がある。2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300N(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
一般式(2)中、X3、X4及びX5はそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレン基を示し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、k、m及びnは、k+m+n=3〜30となる正の整数を示す。X3、X4又はX5の炭素数が2〜6の範囲内にないか、又はk+m+n=3〜30の範囲内にない場合、レジストの強靭性やレジストの剥離性が低下する傾向がある。レジストの強靭性とレジストの剥離性を共に向上できる観点から、X3、X4及びX5としてはエチレン基が好ましい。また、k+m+n=6〜27の範囲内であることが好ましく、9〜27の範囲内であることがより好ましい。一般式(2)の化合物の好適な具体例としては、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートがある。
一般式(3)中、X6は炭素数2〜6のアルキレン基を示し、R6は水素原子又はメチル基を示し、rは1〜20の正の整数を示す。X6の炭素数が2〜6の範囲内にないか、又はrが1〜20の範囲内にない場合、レジストの剥離残りが生じたり、剥離時間が遅延したりする傾向がある。レジストの剥離残りとレジストの剥離性を共に向上できる観点から、X6としてはエチレン基が好ましい。また、rが1〜8の範囲内であることが好ましく、1〜4の範囲内であることがより好ましい。一般式(3)の化合物の好適な具体例としては、ノニルフェニルポリエチレングリコールアクリレートが挙げられる。
(B)成分は、上記以外の光重合性化合物を更に含んでいてもよい。他の光重合性化合物としては、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
(C)成分の光重合開始剤は、上記一般式(4)で表されるアクリジン化合物を含む。一般式(4)中、R7は炭素数2〜20のアルキレン基、オキサジアルキレン基又はチオジアルキレン基を示す。光感度、無電解めっき耐性及び剥離特性のバランスをより良好にする見地から、炭素数2〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜14のアルキル基であることがより好ましく、炭素数6〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
一般式(4)で表されるアクリジン化合物としては、例えば、1,2−ビス(9−アクリジニル)エタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、1,4−ビス(9−アクリジニル)ブタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン、1,14−ビス(9−アクリジニル)テトラデカン、1,16−ビス(9−アクリジニル)ヘキサデカン、1,18−ビス(9−アクリジニル)オクタデカン、1,20−ビス(9−アクリジニル)エイコサン等のビス(9−アクリジニル)アルカン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−オキサプロパン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−チアプロパン、1,5−ビス(9−アクリジニル)−3−チアペンタンなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
上記一般式(4)で表される化合物のうち、光感度、無電解めっき耐性及び剥離特性のバランスを一層良好にする見地から、一般式(4)中、R7が炭素数7のアルキレン基である1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン(例えば、旭電化工業株式会社製、製品名「N−1717」)を含むことがより好ましい。
また、(C)成分の光重合開始剤は、感光性樹脂組成物の光感度を一層良好にする見地から、さらにN,N−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンを含むことが好ましい。N,N−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンとしては、例えば、N,N'−テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N'−テトラエチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。中でも、N,N'−テトラエチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノンが好ましい。
(C)成分は、上記一般式(4)以外の光重合開始剤を含んでいてもよい。他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。前記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体は、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基が同一である対称な化合物であってもよいし、置換基が異なる非対称な化合物であってもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
バインダーポリマーの量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部中、40〜80質量部とすることが好ましく、45〜75質量部とすることがより好ましく、50〜70質量部とすることが特に好ましい。この配合量が40質量部未満では光硬化物が脆くなり易く、感光性エレメントとして用いた場合に塗膜性が低下する傾向があり、80質量部を超えると光感度が低下する傾向がある。
(B)成分の光重合性化合物の量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部中、20〜60質量部とすることが好ましく、25〜55質量部とすることがより好ましく、30〜50質量部とすることが特に好ましい。この量が20質量部未満では光感度が低下する傾向があり、60質量部を超えると光硬化物が脆くなる傾向がある。
(B)成分の総量中、一般式(1)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の含有割合は、10〜60質量%であることが好ましく、15〜55質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。10質量%未満では剥離特性が低下する傾向があり、60質量%を超えると密着不足によるめっきもぐりが発生する傾向がある。
また、(B)成分の総量中、一般式(2)で表されるアルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート化合物の含有割合は、10〜60質量%であることが好ましく、15〜55質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。10質量%未満では密着不足によるめっきもぐりが発生する傾向があり、60質量%を超えると剥離特性が低下し、またレジストが脆くなる傾向がある。
更に、また、(B)成分の総量中、一般式(3)で表されるノニルフェニルポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート化合物の含有割合は、3〜40質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。3質量%未満では剥離特性が悪化する傾向があり、40質量%を超えると密着不足になる傾向がある。
(C)成分の光重合開始剤の量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。この量が0.1質量部未満では光感度が低下する傾向があり、20質量部を超えると露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が十分でなくなり易くなる傾向がある。
感光性樹脂組成物は、以上のような成分の他、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを含有していてもよい。これらの成分の量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度であることが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜60質量%程度の溶液(液状レジスト)の状態で好適に用いられる。
この液状レジストは、例えば、金属面上に塗布し、乾燥して感光層を形成し、必要に応じて保護フィルムを被覆してレジストパターンの形成に用いられる。この場合の金属としては、特に制限はないが、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金が挙げられるが、レジストとの密着性及び電子導電性の見地から銅、銅系合金、鉄系合金であることが好ましい。
あるいは、本発明の感光性樹脂組成物は、感光性エレメントの状態で好適に用いられる。図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性エレメント1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光層20と、感光層20上に設けられた保護フィルム30で構成される。
感光層20は、上述した本発明の感光性樹脂組成物からなる。感光層20の厚みは、用途により異なるが、1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。この厚みが1μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると本発明の効果が小さくなり、接着力、解像度が低下する傾向がある。
感光層20は、波長405nmの紫外線に対する透過率が5〜75%であることが好ましく、7〜60%であることがより好ましく、10〜40%であることが特に好ましい。この透過率が5%未満では密着性が低下する傾向があり、75%を超えると解像度が低下する傾向がある。この透過率は、UV分光計により測定することができる。UV分光計としては、株式会社日立製作所製228A型Wビーム分光光度計等が挙げられる。
感光層20は、本発明の感光性樹脂組成物の溶液を調製し、これを支持体10上に塗布して形成することが好ましい。塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。また、乾燥は、70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。
支持体10は、厚みが5〜25μmあることが好ましく、8〜20μmであることがより好ましく、10〜16μmであることが特に好ましい。この厚みが5μm未満では現像前の支持体をはく離する際に破れやすくなる傾向があり、25μmを超えると解像度が低下する傾向がある。
支持体10のヘーズは0.001〜5.0%であることが好ましく、0.001〜2.0%であることがより好ましく、0.01〜1.8%であることが特に好ましい。このヘーズが2.0%を超えると、解像度が低下する傾向がある。ヘーズはJIS K 7105に準拠して測定したものであり、例えば、NDH−1001DP(日本電色工業株式会社製、商品名)等の市販の濁度計などで測定が可能である。
支持体10及び保護フィルム30としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムが、耐熱性及び耐溶剤性の点で優れるため好適に用いられる。
保護フィルム30は、厚みが5〜30μmであることが好ましく、10〜28μmであることがより好ましく、15〜25μmであることが特に好ましい。この厚みが5μm未満ではミネートの際に保護フィルムが破れ易くなる傾向があり、30μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
保護フィルム30の長手方向の引張強さは13MPa以上であることが好ましく、13〜100MPaであることがより好ましく、14〜100MPaであることが更に好ましく、15〜100MPaであることがより一層好ましく、16〜100MPaであることが更により一層好ましい。この引張強さが13MPa未満であると、ラミネートの際に保護フィルム30が破れ易くなる傾向がある。
保護フィルム30の幅方向の引張強さは9MPa以上であることが好ましく、9〜100MPaであることがより好ましく、10〜100MPaであることが更に好ましく、11〜100MPaであることがより一層好ましく、12〜100MPaであることが更により一層極めて好ましい。この引張強さが9MPa未満ではラミネートの際に保護フィルム30が破れ易くなる傾向がある。
上記引張強さはJIS C 2318−1997(5.3.3)に準拠して測定することができ、例えば、東洋ボールドウィン株式会社製商品名テンシロン等の市販の引張強さ試験機などで測定が可能である。
支持体10及び保護フィルム30は、後に感光層20から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような表面処理が施されたものであってはならないが、特に制限はなく必要に応じて処理を行ってもよい。支持体10及び保護フィルム30は必要に応じて帯電防止処理が施されていてもよい。
本発明の感光性エレメントは上記実施形態に限定されず、感光層、支持体及び保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
感光性エレメントは、例えば、そのままで又は感光層20の他の面に保護フィルム30をさらに積層して円筒状の巻芯に巻きとって貯蔵される。
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたプリント配線板の製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態のプリント配線板の製造方法において、回路形成済基板とは、プリント配線板に含まれるものであり、回路形成用基板及び回路パターン(回路導線)を有する。回路形成済基板は、スルーホール等を有してもよく、多層構造を有してもよい。
本実施形態では、レジストを用いる。レジストとは、エッチング、はんだ付け又は膜形成を選択的に行うため、プリント配線板の特定領域をマスク又は保護する被覆材料であり、めっき保護膜としても機能する。通常、フォトレジストを用い、その感光性を利用して、微細且つ正確なパターンを所定の領域に高い精度で被覆形成して、被保護物を保護する。本発明のプリント配線板の製造方法において、レジストは目的により2種類に分けられる。
その一方は、ソルダーレジストであり、例えば、はんだ付けにより接合部分を形成する領域のみが露出するように塗布、露光して、所望の被覆(保護)パターンを有するよう形成したものである。すなわちソルダーレジストは、回路パターンの一部又は全部を除いた回路形成済基板の全面を被覆するように形成される。
もう一つは、めっきレジストである。めっきレジストは、感光性エレメントを用いて感光層を積層し、露光して無電解めっきを行う領域のみが露出するような被覆(保護)パターンを有するように形成したレジストパターンである。すなわち、このレジストパターンは、実装パッドの部分等のめっきによる金属の付着が望ましくない回路形成済基板の全面を被覆するように形成される。
以下に図を用いて本実施形態をより詳細に説明する。図2は、本発明のプリント配線板の製造方法の一実施形態を示す工程図である。図2に示す実施形態では、まず、回路形成用基板40上に回路パターン50が形成された回路形成済基板80と回路形成済基板80上に形成されたソルダーレジスト60とを有する第1の積層基板100を準備する(図2の(a))。ソルダーレジスト60には、回路パターン50の露出部50aが露出する開口部70が形成されている。そして、第1の積層基板100のソルダーレジスト60側の面上に感光性エレメント1を感光層20がソルダーレジスト60と密着するように積層する(図2の(b))。
次に、回路形成済基板80上に積層された感光層20に対して、活性光線92を画像状に照射する(図2の(c))。これにより、感光層20の一部(露光部22)を露光し、感光性樹脂組成物の硬化物を形成させる。露光後、支持体10を除去して現像し、未露光部を除去してレジストパターン24を形成させる(図2の(d))。このようにして、回路形成済基板80上にソルダーレジスト60及びレジストパターン24をこの順に備えた第2の積層基板200を得る。レジストパターン24は、回路パターン50の露出部50aが露出するように、めっきレジストの目的で形成させる。このレジストパターン24は、その後任意に後硬化させることができる。
ソルダーレジスト60及びレジストパターン24をマスクとして、第2の積層基板200に対してNi無電解めっきを行い、回路パターン50上にめっき層55を形成する(図2の(e))。続いて、無電解めっきがされた第2の積層基板200からレジストパターン24を除去してプリント配線板300を得る(図2の(f))。
図3及び図4は、本発明のプリント配線板の他の実施形態を示す工程図であり、図3はその第2の工程までを、図4はその第3の工程を示す工程図である。図3に示す第1の工程では、まず、回路形成用基板40に回路パターン50及び51が形成された回路形成済基板80と回路形成済基板80上に形成されたソルダーレジスト60とを有する第1の積層基板100を準備する(図3の(a))。ソルダーレジスト60には、回路パターン50及び51の露出部50a及び51aが露出する開口部70が形成されている。そして、第1の積層基板100のソルダーレジスト60側の面上に感光性エレメント1を感光層20がソルダーレジスト60と密着するように積層する(図3の(b))。
第2の工程では、回路形成済基板80上に積層された感光層20に対して、活性光線92を画像状に照射する(図3の(c))。これにより、感光層20の一部(露光部22)を露光し、感光性樹脂組成物の硬化物を形成させる。露光後、支持体10を除去して現像し、未露光部を除去してレジストパターン24を形成させる(図3の(d))。このようにして、回路形成済基板80上にソルダーレジスト60及びレジストパターン24をこの順に備えた第2の積層基板200を得る。レジストパターン24は、無電解めっきを行う回路パターン50のみが露出し、めっきによる金属の付着が好ましくない回路パターン51等の領域を被覆するめっきレジストとして機能する。このレジストパターン24は、その後任意に後硬化させることができる。
図4に示す第3の工程では、ソルダーレジスト60及びレジストパターン24をマスクとして、第2の積層基板200に対してNi無電解めっきを行い、マスクされていない回路パターン50の表面にめっき層55aを形成する(図4の(e))。続いて、置換Auめっきを行い、Niめっき層の上にAuめっき層55bを形成する(図4の(f))。このようにして、所用の部分にのみ金属めっき加工を施し、レジストパターン24を剥離して、実装部品の信頼性に優れたプリント配線板300を得る(図4の(g))。
図2及び図3に示す第1の積層基板100は、例えば、回路形成用基板40上に感光性エレメント1をその感光層20が回路形成用基板40と密着するようにして積層し、活性光線を画像状に照射してから現像する方法により、パターニングされたソルダーレジスト60を形成させる工程と、ソルダーレジスト60をマスクとしてエッチング又はめっきして回路パターン50を形成する工程とを経て作製される。
上記第1の工程においては、保護フィルム30を除去後、感光層20を加熱しながらソルダーレジスト60上に圧着することにより感光性エレメント1が積層される。この際、密着性及び追従性の見地から、減圧下で積層することが好ましい。より具体的には積層の際、感光層20を70〜130℃に加熱することが好ましく、圧着圧力は0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm2程度)とすることが好ましい。感光層20をこのように70〜130℃に加熱すれば、予め回路形成済基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性をさらに向上させるために、回路形成済基板の予熱処理を行ってもよい。
活性光線92を画像状に照射する方法としては、例えば、パターンのデジタルデータを直接感光層に照射する直接描画法と、活性光線92を遮蔽する遮蔽部及び活性光線92を透過する透明部を有するマスクパターンを通して照射する一括露光法が挙げられる。本発明の効果を一層効率よく得る観点から、直接描画法を用いることが好ましい。
活性光線92の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、YAGレーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。直接描画法を用いる場合の活性光線92の光源としては、本発明の効果を一層効率よく得る観点から、YAGレーザ又は半導体レーザを光源とすることが好ましい。
また、活性光線92の波長としては、波長350〜420nmの紫外線が好ましく、波長390〜420nmがより好ましく、波長405nmが特に好ましく用いられる。
露光後の現像は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の感光性樹脂組成物に対応した現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去して行う。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには最も適している。
現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好である点から、アルカリ性水溶液等が好ましく用いられる。アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
アルカリ性水溶液は、より具体的には、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。また、アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は感光層の現像性に合わせて調節される。
アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。この場合に用いられるアルカリ物質としては、前記物質以外に、例えば、ホウ砂やメタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2、モルホリン等が挙げられる。現像液のpHは、レジストの現像が充分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。
上記有機溶剤としては、例えば、三アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、現像性にあわせて調整することができる。また、有機溶剤が混入された水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量添加することもできる。
単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。また、必要に応じて2種以上の現像方法を併用してもよい。
現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.2〜10mJ/cm2程度の露光を行うことによりレジストパターンをさらに硬化してもよい。
無電解めっきとしては、無電解Niめっきが挙げられる。無電解Niめっき上に、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、銅、スズ等の金属めっきを行ってもよい。
無電解ニッケルめっきの後のレジストパターンの除去は、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液よりさらに強アルカリ性の水溶液で剥離することにより行うことができる。強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。剥離方式としては、例えば、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜3
(バインダーポリマー1の合成)
メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレンを質量比28/60/12の割合で共重合させ、重量平均分子量60,000、ガラス転移温度124℃、酸価68mgKOH/gの共重合体(バインダーポリマー1)を得た。該バインダーポリマー1を、メチルセルソルブ/トルエン(6/4、質量比)に不揮発成分(固形分)50質量%になるように溶解させ、バインダーポリマー1の溶液を得た。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの測定条件は、以下に示す。
(GPC測定条件)
・ポンプ:日立 L−6000型[株式会社日立製作所製]
・カラム:Gelpack GL−R420+Gelpack GL−R430+Gelpack GL−R440(計3本)[以上、日立化成工業株式会社製、製品名]
・溶離液:テトラヒドロフラン
・測定温度:25℃
・流量:2.05mL/分
・検出器:日立 L−3300型RI[株式会社日立製作所製、製品名]
表1に示す(A)成分及びその他の添加剤成分を同表に示す混合比で混合し、この混合物に(B)成分及び(C)成分を溶解させて、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
*1:固形分としての質量
*2:ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート:新中村化学工業株式会社製商品名(一般式(1)において、R1及びR2がメチル基、X1及びX2がエチレン基、p+qの平均値が約10)
*3:ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート:新中村化学工業株式会社製商品名(一般式(1)において、R1及びR2がメチル基、X1及びX2がエチレン基、p+qの平均値が約30)
*4:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート:日本化薬株式会社製品名(一般式(2)において、R3、R4及びR5が水素原子、X3、X4及びX5がエチレン基、k+m+nの平均値が約9)
*5:ノニルフェニルポリエチレングリコールアクリレート:東亜合成株式会社製品名(一般式(3)において、R6が水素原子、X6がエチレン基、rの平均値が約4)
*6:ノニルフェニルポリエチレングリコールアクリレート:新中村化学工業株式会社製品名(一般式(3)において、R6が水素原子、X6がエチレン基、rの平均値が約8)
次いで、得られた感光性樹脂組成物の溶液を、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(ヘーズ:1.7%、商品名GS−16、帝人株式会社製)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥した後、ポリエチレン製保護フィルムで保護し感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、50μmであった。
(回路形成済基板の作製)
縦12.5cm、横20cm、厚さ1.6mmの両面銅張りエポキシ積層板(日立化成工業株式会社製、商品名:MCL−E−61)の片面の銅箔表面に、周縁部1cmを残して、所定のパターンを有するエッチングレジストを形成した。エッチングレジストに覆われていない部分の銅箔をエッチング除去し、金属端子(パッド)や配線を有する回路パターンを形成した。残りのエッチングレジストをはく離して、回路形成済基板を得た。裏面は全面エッチングし、ガラスエポキシ表面が露出した状態にした。
(ソルダーレジストの形成)
得られた回路形成済基板の回路面に、フォトレジスト(太陽インキ株式会社製、商品名:PSR−4000)を、周縁部1cmを残して全面に塗布し、80℃で30分間乾燥した。その後、フォトツールを介し、露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:HMW−590)を用いて、めっきする実装パッド部を除く全面を露光した。未露光部分を1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で60秒間スプレー現像し、パッド部上のフォトレジストを除去して、パターンを形成し、その後、150℃で1時間加熱することにより熱硬化させ、回路形成済基板上にソルダーレジストを形成した。
(レジストパターンの形成)
ソルダーレジストを備えた回路形成済基板の両面に、実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた感光性エレメントの感光層(感光性樹脂組成物層)を、圧力0.4MPa、温度110℃、ラミネート速度1.5m/分でラミネートし、積層した。積層された感光層のうち、無電解めっき加工を行う回路パターンを除く全面を405nm対応DLP露光機(DE-1AH、日立ビアメカニクス株式会社製)を用いてストーファー21段ステップタブレットにおける現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー露光量で露光し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で80秒間スプレー現像してレジストパターンを形成した。
その後、150℃で1時間加熱することによりレジストパターンをさらに熱硬化させ、回路形成済基板上にソルダーレジスト及びレジストパターンがこの順に形成された積層基板を得た。
以上により得られた感光性エレメント及び積層基板について、以下の方法により特性評価を行った。表2にその評価結果を示す。
(無電解めっき耐性)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた積層基板を、Pro Select SF(アトテックジャパン株式会社、製商品名)に、50℃にて5分間浸漬し、脱脂処理を行った。室温(25℃)にて1分間、流水で洗浄後、Micro Etch SF(アトテックジャパン株式会社、製商品名)に30℃にて1分間浸漬し、ソフトエッチング処理を行った。室温にて1分間流水で洗浄後、5質量%硫酸溶液に室温にて1分間浸漬し、酸洗処理を行った。
その後、積層基板を、無電解めっき用触媒溶液オーロテック1000(アトテックジャパン株式会社、製商品名)に室温にて90秒間浸漬し、活性化させた。室温にて2分間流水で洗浄後、Ni−Pめっき液であるオーロテックHP(アトテックジャパン株式会社、製商品名)に83℃にて40分間浸漬し、無電解Niめっきを行った。
室温にて2分間流水で洗浄後、オーロテックCS4000(アトテック株式会社製、オーロテックCS4000:150mL/L,シアン化金カリウム:1.47g/L,オーロテックSF:1mL/L)に、85℃にて10分間浸漬し、置換型無電解Auめっきを行った。
こうしてめっき層が形成された積層基板について、目視でレジストパターンの破れ及び膨れの有無(特にパッド部周囲)を、以下の基準により判定し、無電解めっき耐性を評価した。無電解めっき耐性の評価は、破れ及び膨れが無いほうが良好であることを意味する。
「○」:全面破れ及び膨れなし
「△」:一部破れ及び膨れ有り
「×」:全面破れ及び膨れ有り
(剥離時間)
縦4cm、横5cm、厚さ1.6mmの両面銅張りエポキシ積層板(日立化成工業株式会社製、商品名:MCL−E−61)の片面に、フォトレジスト(太陽インキ株式会社製、商品名:PSR−4000)を全面塗布し、80℃で30分間乾燥した。
上記フォトレジストを塗布した積層板に対して、図5に示す格子状フォトツール(マスクパターン)90を介して全面露光を行った。格子状フォトツール(マスクパターン)90は、活性光線を遮蔽する複数の遮蔽部90aと、活性光線を透過する透明部90bとを有している。遮蔽部90aは、横(図5のA)が2.6mm、縦(図5のB)が0.8mmであり、0.45mmの感覚(図5のC)をあけて並んでいる。露光には露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:HMW−590)を用いた。
露光後、未露光部分を1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で60秒間スプレー現像した。続いて150℃で1時間加熱して熱硬化させ、上記積層板上にソルダーレジストを形成した。このソルダーレジストには、上記積層板の一部の銅が露出する開口部が形成されている。
上記ソルダーレジストを備えた積層板の両面に、実施例1〜4及び比較例1〜2の感光性エレメントの感光層を、圧力0.4MPa、温度110℃、ラミネート速度1.5m/分でラミネートし、積層した。積層された感光層に対して、405nm対応DLP露光機(DE-1AH、日立ビアメカニクス株式会社製)を用いてストーファー21段ステップタブレットにおける現像後の残存ステップ段数が8.0となる露光エネルギー量で全面露光を行い、硬化物層(レジスト)を形成した。こうして、上記ソルダーレジストを備えた積層板の上下両面を硬化物層(レジスト)が覆う評価用積層板を得た。
この評価用積層板に対し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で80秒間スプレー現像し、上記無電解めっき耐性評価と同様の方法でめっき処理を行った。その後、50℃に加温した3質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、硬化物層が上記ソルダーレジストを備えた積層板から剥離するまでの時間を測定した。剥離時間の評価は、時間が短いほど良好であることを意味する。
(ソルダーレジスト上の剥離残り)
剥離時間測定後の上記評価用積層板を用いて、ソルダーレジスト上に完全に剥離できずに付着しているレジスト残渣の有無を目視で観察し、以下の基準でソルダーレジスト上の剥離残りを評価した。ソルダーレジスト上の剥離残りの評価は、レジスト残渣が少ないほど良好であることを意味する。
「○」:レジスト残渣が10%未満
「△」:レジスト残渣が10〜50%
「×」:レジスト残渣が50%以上
(光感度)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた感光性エレメントにおける感光層を、圧力0.4MPa、温度110℃、ラミネート速度1.5m/分の条件で上記銅張り積層板にラミネートし、積層した。得られた積層体の上に、ネガとして日立41段ステップタブレットを置いて、405nm対応DLP露光機(DE-1AH、日立ビアメカニクス株式会社製)を用いて、30、60、120mJ/cm2の露光エネルギー量で露光した。次いで、前記と同条件で現像し未露光部を除去した。各露光量において銅張り積層板上に形成された硬化物層(レジスト)のステップタブレットの段数を測定し、41段ステップタブレットの14段を硬化させるのに必要な露光エネルギー量(mJ/cm2)を算出し、これを光感度とした。なお、この露光エネルギー量が低いほど感光性樹脂組成物の光感度が高いことを意味する。
表2より、本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例1〜4は、405nmのレーザ直接描画露光機で露光した場合にも光感度に優れ、また、ソルダーレジスト上に硬化物を形成した場合に、無電解めっき耐性及び剥離特性の双方に優れることが明らかである。これに対して比較例1は光感度に劣り、比較例2は無電解めっき耐性に劣り、さらにソルダーレジスト上に剥離残りを生じる。
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物を用いた実施例1〜4は、レーザ直接描画法に適用可能であり、また、ソルダーレジスト上に光硬化物を形成した場合にも剥離残りを生じることなく、作業性よく信頼性の高いプリント配線板を製造することができる。
1…感光性エレメント、10…支持体、20…感光層、22…露光部、24…レジストパターン、30…保護フィルム、40…回路形成用基板、50、51…回路パターン、50a、51a…露出部、55…めっき層、55a…Niめっき層、55b…Auめっき層、60…ソルダーレジスト、70…開口部、80…回路形成済基板、90…マスクパターン、90a…遮光部、90b…透明部、92…活性光線、100…第1の積層基板、200…第2の積層基板、300…プリント配線板