JP5291515B2 - 多板式クラッチ - Google Patents
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Description
しかしながら、シムを用いて皿ばねの高さ寸法を調節する場合、シムが必要になって部品点数が増加する上に、皿ばねの高さ寸法を正確に調節しようとすると、様々な厚みのシムが必要になる。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、皿ばねの高さ寸法を容易に調節可能な多板式クラッチを提供することにある。
上記構成によれば、スプリング保持部材の軸方向位置を無段階に調節できるので、皿ばねの高さ寸法を容易に調節できるとともに、シムを必要とせず部品点数の削減を図ることができる。さらに、スプリング保持部材には皿ばねの付勢力が常に作用するので、スプリング保持部材が調整した位置から回転して移動することを抑制できる。
また、上記構成によれば、皿ばねとスプリング保持部材との接触点において摩擦係数が小さくなるので、皿ばね及びスプリング保持部材の接触面に表面処理等を施すことなく、皿ばねの荷重特性を調節できる。
上記構成によれば、スプリング保持部材が出力軸に直接固定される場合に比べ、ねじ部の周長さが長くなるので、ねじ部の接触面積を広げてねじ部の摩擦力を増加させ、スプリング保持部材が調整した位置から回転して移動することを抑制できる。
上記構成によれば、多板式クラッチがカム機構を備えて出力軸の軸方向に大型化しても、スプリング保持部材がカム機構を構成する部材の外周に固定されるので、カム機構とスプリング保持部材とを軸方向に並べて配置する場合に比べ、多板式クラッチの軸方向の長さを短くできる。
上記構成によれば、皿ばねの高さ寸法を測定する際に基準面となる支持部材がプレッシャプレートの支持面より多板式クラッチの外方側に位置するので、プレッシャプレートの支持面を基準面とする場合に比べ、基準面へのアクセス性が向上し、組み付け後の皿ばねの高さ寸法を多板式クラッチの外方側から容易に測定できる。
図1は、本発明の実施の形態に係る多板式クラッチを示す断面図であり、図2及び図3は、図1の多板式クラッチの一部を拡大して示す断面図である。なお、図1〜図3において、図の左側を多板式クラッチの内方側、図の右側を多板式クラッチの外方側として説明する。
図1に示すように、多板式クラッチ10は、自動二輪車等の車両に搭載されるエンジンのクランクシャフトから変速機(不図示)の主軸を構成するメインシャフト11へ向かう回転動力伝達経路上に設置され、運転者のクラッチ操作に応じて回転動力(トルク)の伝達を遮断及び接続させるものである。
スリッパカム29の外方側には、プレッシャプレート22の円筒部22Aから半径方向内側に突出する突出部22Cがプレッシャプレート22に一体に形成されている。
皿ばね54は、皿ばね52より付勢力が大きくなるよう形成されており、エンジン停止時、及び通常運転時には、皿ばね52,54の付勢力の和は、プレッシャプレート22をクラッチセンタ26側へ付勢するようになっているので、フリクションプレート23及びクラッチプレート24は、プレッシャプレート22とクラッチセンタ26との間で圧接されている。
センタカム25のねじ部25Dは、スプリング保持プレート27のねじ部27Cよりも軸方向に長く形成されている。スプリング保持プレート27は、図1及び図2では、その基部27Aの外方側側面27Dがセンタカム25の端面25Eと略同一となるようにねじ締結されているが、基部27Aの外方側側面27Dがセンタカム25の端面25Eよりも内方側となるようにねじ締結されることも可能である。
スプリング保持プレート27は、外形を形成する複数(本実施の形態では、6つ)の平面39A〜39Fを備え、平面視で外形が多角形(本実施の形態では、六角形)に形成されている。平面39Aと平面39Dとは互いに平行に対向し、平面39Bと平面39Eとは互いに平行に対向し、平面39Cと平面39Fとは互いに平行に対向している。このスプリング保持プレート27は、平行に対向する一対の平面(例えば、平面39A,39D)に工具(不図示)を嵌め合わせ、工具を矢印D方向に回動させることで、スプリング保持プレート27を容易に回転させることが可能となり、スプリング保持プレート27の軸方向位置を容易に調整することが可能となる。
この多角形は、平行に対向する一対の平面を備えていればよく、四角形、八角形といった偶数多角形であればよい。また、スプリング保持プレート27は、平行に対向する一対の平面を円弧で結んだ形状であってもよい。
スリッパカム29は、略円板状に形成され、その内周はセンタカム25の円筒部25Aの外周に支持され、外周はプレッシャプレート22の円筒部22Aの内周にスプライン結合されている。このスリッパカム29は、メインシャフト11からのバックトルクの増加に応じて加圧板部22Bをクラッチセンタ26から離間させる側にプレッシャプレート22を移動させるカム機構37をセンタカム25と協働して構成している。
プレッシャプレート22の円筒部22Aの内周には、アシストカム28及びスリッパカム29間に配置され、アシストカム28及びスリッパカム29の間隔を規制するカラー部材38の外周がスプライン結合されている。
図1及び図5に示すように、ベアリングホルダ42は、略円板状の円板部42Aと、この円板部42Aの外周からメインシャフト11の軸方向に略円筒状に延びる延長筒部42Bと、延長筒部42Bの先端部を半径方向外側に突出させた鍔部42Cとを備えている。円板部42Aの略中央部には、軸孔42Dが形成されており、この軸孔42Dに作動軸41を挿入することとなる。
ベアリングホルダ42の円板部42Aには、軸孔42Dの半径方向外側となる位置に、複数(本実施の形態では、5つ)の貫通孔42Eが形成されている。これら貫通孔42Eは、同形状に形成され、周方向に等間隔に設けられている。このようにベアリングホルダ42に複数(5つ)の貫通孔42Eが形成されているので、貫通孔42Eの分の材料を削減し、ベアリングホルダ42の軽量化を図ることが可能となる。
リフタプレート44は、略円板状の円板部44Aと、この円板部44Aの内周からメインシャフト11の軸方向に略円筒状に延びる延長筒部44Bと、延長筒部44Bの先端部を半径方向内側に突出させた鍔部44Cとを備えている。円板部44Aの略中央部には、ベアリングホルダ42を通すための貫通孔44Dが形成されている。したがって、貫通孔44Dにベアリングホルダ42を通すように、リフタプレート44を多板式クラッチ10の外方側から組み付けることで、ボールベアリング43は、ベアリングホルダ42の延長筒部42Bの外周とリフタプレート44の延長筒部44Bの内周に挟まれるとともに、ベアリングホルダ42の鍔部42Cとリフタプレート44の鍔部44Cに挟まれて支持される。リフタプレート44の外周は、プレッシャプレート22に形成された溝22Eに嵌め込まれたサークリップ45によって固定される。
したがって、ベアリングホルダ42は、作動軸41の凸部41A及びボールベアリング43によって軸方向の移動が規制され、リフタプレート44は、ボールベアリング43及びサークリップ45によって軸方向の移動が規制される。
リフタプレート44の円板部44Aには、円板部44Aの外周から延長筒部44Bの外周まで半径方向の大きさを小さくした複数(本実施の形態では、4つ)の肉抜き部44Eが形成されている。肉抜き部44Eは、同形状であって周方向に等間隔に設けられている。円板部44Aには、肉抜き部44Eを形成することによって延長筒部44Bから半径方向外側に突出した突出部44Fが複数(本実施の形態では、4つ)形成されている。各突出部44Fには、複数(本実施の形態では、2つ)の凹部44Gが形成されている。これら凹部44Gは、リフタプレート44の剛性を低下させない位置に配置されている。このように、リフタプレート44の円板部44Aに複数(4つ)の抜き部44Eが形成され、抜き部44Eによって形成された突出部44Fのそれぞれにも複数(2つ)の凹部44Gが形成されているので、抜き部44E及び凹部44Gの分の材料を削減し、リフタプレート44の軽量化を図ることが可能となる。さらに凹部44Gは、リフタプレート44の剛性を低下させない位置に設けられているので、材料を削減することによってリフタプレート44の剛性が低下することを抑制できる。
レバー47が操作されると、操作軸46が回動し、伝動軸49が矢印P方向に移動する。伝動軸49が図中P方向に移動すると、作動軸41、ベアリングホルダ42、ボールベアリング43、及びリフタプレート44を介して、プレッシャプレート22が皿ばね54の付勢力に抗して図中P方向に移動する。これにより、プレッシャプレート22とクラッチセンタ26との間に挟まれて圧接されていたフリクションプレート23とクラッチプレート24との圧接力が弱められて摩擦係合が解除し、クラッチアウタ21とメインシャフト11との間の動力(トルク)伝達が遮断される。
ここで、本構成では、プレッシャプレート22の加圧板部22Bとクラッチプレート24との間に、ジャダースプリング及びスプリングシートからなるスプリング部材31を介挿している。このため、このスプリング部材31により、クラッチ接続時に出る振動(いわゆるジャダー)を回避することが可能である。
一方、動力伝達状態において減速側のトルク変動が生じたときには、スリッパカム29の凸部29Aにセンタカム25の凹部25Gが当接し、スリッパカム29には、センタカム25の円板部25Bから離反する側の力が円板部25Bから作用し、皿ばね54によるプレッシャプレート22に対する付勢力を緩和させ、フリクションプレート23及びクラッチプレート24を軸方向において離間方向に移動させることになる。
本実施の形態では、スプリング保持プレート27を、センタカム25の円筒部25Aにねじ締結により軸方向位置を調整可能に固定したので、スプリング保持プレート27の軸方向位置を無段階に調節できる。したがって、皿ばね54の高さ寸法Hを容易に調節できるとともに、シムを必要とせず部品点数の削減を図ることができる。さらに、スプリング保持プレート27には皿ばね54の付勢力が常に作用するので、スプリング保持プレート27が調整した位置から回転して移動することを抑制でき、その結果、調整後の狂いを抑制できる。
また、ワッシャ35の外径はスプリング保持部材27の内周よりも大きく形成されているので、スプリング保持プレート27が緩んだとしても、ワッシャ35によってスプリング保持プレート27の軸方向の移動が規制され、スプリング保持プレート27の脱落を防止することができる。
また、スプリング支持プレート53により、皿ばね54の付勢力を確実にプレッシャプレート22に作用させることができる。さらに、スプリング保持プレート27とプレッシャプレート22との間に回転差が生じた場合でも、スプリング支持プレート53によって、皿ばね54とプレッシャプレート22との間に生じる回転摩擦を回避することができる。
本実施の形態では、皿ばね54に当接する鍔部27Eが、皿ばね54とスプリング保持プレート27との接触点Aにおいて摩擦係数が小さくなる傾斜角度θ(図3参照)(例えば、0〜30度)で傾斜されているので、圧縮時及び伸張時における皿ばね54の荷重特性のばらつき(ヒステリシス特性)を抑えることができる。したがって、スプリング保持プレート27及び皿ばね54の接触面に表面処理等を施すことなく、また、接触面の形状を変更することなく、荷重特性を調節できる。
センタカム25のねじ部25C及びクラッチセンタ26のねじ部26Aのねじ切りの方向は、メインシャフト11(センタカム25)の回転方向に対しクラッチセンタ26が締まる方向に設定されている。したがって、常にクラッチセンタ26とセンタカム25が締まる方向に力を受けるので、クラッチセンタ26の緩みを防止することができ、クラッチセンタ26の調整後の狂いを抑制できる。
また、皿ばね52とスリッパカム29との間にスプリング支持プレート51を配置したので、皿ばね52の付勢力を確実にスリッパカム29に作用させることができる。さらに、クラッチセンタ26とスリッパカム29との間に回転差が生じた場合でも、スプリング支持プレート51によって、皿ばね52とスリッパカム29との間に生じる回転摩擦を回避することができる。
上記実施の形態では、スプリング保持プレート27はワッシャ35によって軸方向の移動を規制されていたが、本実施の形態では、ワッシャ35に代えて皿ばねワッシャ135が用いられている。この場合、皿ばねワッシャ135の外周をスプリング保持プレート27に当接させ、皿ばね54がスプリング保持プレート27を付勢する方向に対して抗う方向に、皿ばねワッシャ135によってスプリング保持プレート27を付勢させることで、スプリング保持プレート27の緩みの発生を確実に防止することが可能になる。
Fa×Ra=Fb×Rb・・・(1)
これにより、スプリング保持プレート27においてトルクが打ち消し合って回転差が生じなくなり、スプリング保持プレート27の緩みを防止することが可能になる。
11 メインシャフト(出力部材、出力軸、回転軸)
14 ドリブンギヤ(入力部材)
21 クラッチアウタ
22 プレッシャプレート
22D 支持面
23 フリクションプレート(摩擦板)
24 クラッチプレート(摩擦板)
25 センタカム(出力部材、円筒部材)
25F,25G 凹部(カム部)
26 クラッチセンタ(スプリング保持部材)
27 スプリング保持プレート(スプリング保持部材)
27E 鍔部
28A,29A 凸部(カム部)
36,37 カム機構
51,53 スプリング支持プレート(支持部材)
52,54 皿ばね
54A,54B 端部
Claims (4)
- 入力部材(14)に接続されるクラッチアウタ(21)と協働して複数の摩擦板(23,24)を狭持するプレッシャプレート(22)を備え、このプレッシャプレート(22)を付勢する皿ばね(52,54)の端部(54A)を、スプリング保持部材(26,27)を用いて回転軸(11)の軸方向に移動不能に保持することにより付勢力を発揮するようにした多板式クラッチ(10)において、
前記スプリング保持部材(26,27)を、このスプリング保持部材(26,27)に挿入されて一体回転する出力部材(11,25)にねじ締結により軸方向位置を調整可能に固定し、
前記スプリング保持部材(27)は、前記皿ばね(54)の端部(54A)の軸方向の移動を規制する鍔部(27E)を備え、
前記鍔部(27E)を前記皿ばね(54)に干渉しない範囲で該皿ばね(54)側に傾斜させたことを特徴とする多板式クラッチ。 - 前記出力部材(11,25)は、出力軸(11)と、この出力軸(11)の外周に相対回転不能に固定される円筒部材(25)とを備え、
前記スプリング保持部材(26,27)は、前記円筒部材(25)の外周にねじ締結されることを特徴とする請求項1に記載の多板式クラッチ。 - 前記入力部材(14)と前記出力部材(11,25)とのトルク変動に応じて、プレッシャプレート(22)に作用する付勢力を増強又は緩和させ、複数の摩擦板(23,24)を軸方向において圧接方向又は離間方向に移動させるカム機構(36,37)を備え、
前記円筒部材(25)は、前記カム機構(36,37)を構成するカム部(25F,25G,28A,29A)が設けられる部材の一部であることを特徴とする請求項2に記載の多板式クラッチ。 - 前記皿ばね(54)の反対側の端部(54B)をプレッシャプレート(22)と別体の支持部材(53)を介してプレッシャプレート(22)の支持面(22D)から離間した位置で支持させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多板式クラッチ。
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