JP5291414B2 - 軌道車両用駆動システム及び軌道車両 - Google Patents
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Description
ここでいう回生ブレーキ時の減速比とは、「前記変速機の前記出力軸を入力軸とし前記差動機構の前記差動出力軸を出力軸とするときの減速比」のことを意味する。
差動機構に係合された接続ギア列の当該ギアの回転を拘束する固定クラッチを設けているので、固定クラッチの締結によって両中間軸のうち差動機構を介さないで接続される一方の中間軸の回転が停止され、発電電動機を電動機として作動させて発進するときのモータ発進や、発電電動機を発電機として作動させるときの発電時に、制御の容易さと発電効率を高めることができる。
特に、回生ブレーキ時には、変速ギア段を軌道車両の速度が低下するに応じて減速比が小さく、即ち発電電動機の回転速度が低下しないよう増速側へと選択的に切り換えて締結し発電することから、差動機構を介して伝達される出力軸の回転を、効率上より好ましい回転速度で発電電動機に入力することができ、効率よく回生エネルギーを得ることとなり、省エネルギーが図られ、且つ、それにより軌道車両は、最大限の回生ブレーキ力を得ることとなり、機械ブレーキの負担を軽減し、省メンテナンスが図られる。
また、中間軸と差動機構とを接続する接続ギア列のギアの回転を拘束する固定クラッチを設け、回生ブレーキ時に、固定クラッチを締結し、接続ギア列が直接接続されていない方の中間軸に配置された変速ギア段を軌道車両の速度が低下するのに応じて減速比が小さくなるよう選択的に切り換えて締結し発電することから、差動機構を介して伝達される出力軸の回転を、効率上より好ましい回転速度で発電電動機に入力することができ、加えて、接続ギア列が直接接続されている中間軸を固定させることができ、固定クラッチを設けない場合(両中間軸の回転速度差が差動機構を介して発電電動機に入力される)に比べ、中間軸の回転によるエネルギーの損失を避けて更に効率よく回生エネルギーを得ることとなり、更に省エネルギーが図られる。また、切り換えに要する手順がシンプルになり切り換え時間が短縮されるメリットがある。
[停車状態] 停車状態では、第3クラッチ46を第1変速ギア段51に係合させるのみとし、他のクラッチは開放する。発電電動機18の出力は無しとされる。エンジン14は、補機の必要性に応じてのみ運転する。
[停車発電] 停車発電では、第1クラッチ43を中立位置とし、第2クラッチ44を前進(又は後進)用ギア列31(又は32)側にシフトする。各変速ギア段51〜54は中立位置を占める。固定クラッチ61を締結状態とすることで、差動機構55の反第2中間軸側(即ち、第1中間軸41)が回転しないようにして、エンジン14の出力を、第2中間軸42、差動機構55の取り出しギア57及び取り出し軸58を介して発電電動機18に出力する。惰行発電についても同等の状態である。また、バッテリ10、21等の温度が0℃以下のような場合において、バッテリを加温する暖機運転の場合も同等の状態である。
[力行発電] 車両がエンジン14の出力で力行をしつつその出力の一部で発電を行うモードである。第1変速段〜第4変速段については、上記のとおり第3クラッチ46又は第4クラッチ47による各変速ギア段51〜54の選択的なシフト・締結が行われる。第1変速段又は第3変速段で走行する場合には第1中間軸41が動力伝達経路として用いられている。固定クラッチ61は開放されているので、第1中間軸41の回転が接続ギア列60を介して差動機構55に入力される。出力軸45からいずれかの方向にシフトされた第4クラッチ47を介して第2中間軸42を回転させることで、差動機構55における第1中間軸41側からの入力と第2中間軸42からの入力との差動として、取り出し軸58から発電電動機18に発電トルクが掛けられる。第2変速段又は第4変速段で走行する場合には、第2中間軸42が既に動力伝達経路となっている。出力軸45からいずれかの方向にシフトされた第3クラッチ46を介して第1中間軸41を回転させ、第1中間軸41の回転を、固定クラッチ61が開放された接続ギア列60を介して差動機構55に入力する。差動機構55における第1中間軸41側からの入力と第2中間軸42からの入力との差動として取り出し軸58から発電電動機18に発電トルクが掛けられる。図5は一例として第1変速段で走行中に第4変速段を締結して発電する場合を示す。
[回生] 固定クラッチを使用する場合の回生時の動作について図6を参照して説明する。モータの回転数を高くするため、例えば第4変速段又は第2変速段での走行時に行う回生では、出力軸45の回転を第4クラッチ47のいずれかの方向へのシフト・締結によって第2中間軸42を回転させることができる。差動機構55において、固定クラッチ61を締結することによって第1中間軸41を停止させることができるので、第2中間軸42の回転を差動機構55における両入力の差動として取り出し軸58から発電電動機18に発電トルクが掛けられ、回生動作を得ることができる。第1変速段又は第3変速段での走行時に固定クラッチ61を締結して回生を行うには、先ず第3クラッチ46を中立にし、第4クラッチ47を車速に応じて第2変速段又は第4変速段に締結すると共に固定クラッチ61を締結して回生する。
固定クラッチを使用しない場合の回生を第1変速段又は第3変速段走行時を例に取り、図7を参照して説明する。固定クラッチ61は開放されているので、出力軸45の回転を第3クラッチ46のいずれかの方向へのシフト・締結によって第1中間軸41を回転させると共に、出力軸45の回転を第4クラッチのいずれかの方向へのシフト・締結によって第2中間軸42を回転させ、差動機構55における両入力の差動として取出し軸58から発電電動機18に発電トルクが掛けられ、回生動作を得ることができる。
車両の走行速度に応じて変速段を切り換えて、より効率的に行う回生動作については後述する。
[電動機発進(第1変速段発進)] エンジン14が停止しているときに、第3クラッチ46を第1変速ギア段51側にシフト・締結し、同時に第4クラッチ47を第4変速ギア段54側にシフト・締結する。第1及び第2のクラッチ43,44並びに固定クラッチ61は開放状態とされる。モータとして作動する発電電動機18の出力は、差動機構55を介して、更に一方では第4変速ギア段54を介して出力軸45に、また他方では接続ギア列60、第1中間軸41及び第1変速ギア段51を介して出力軸45に伝達される。両経路の回転差は、差動機構55が吸収する。車両速度が例えば20km/hに加速したときに、エンジン14が始動される。エンジン14の始動後、エンジン回転数を制御して第1クラッチ43を同期させて締結すると、エンジン動力は第1中間軸41、第1変速ギア段51を介して出力軸45に伝達され、エンジン走行モードに移行する。
[電動機発進(第2変速段発進)] エンジン14が停止しているときに、第3クラッチ46を開放状態とし、第4クラッチ47を第2変速ギア段52側にシフト・締結する。第1及び第2のクラッチ43,44は開放状態とされるが、固定クラッチ61は締結される。モータとして作動する発電電動機18の出力は、差動機構55、第2中間軸42、第2変速ギア段52及び出力軸45の経路で伝達される。固定クラッチ61が締結されることで、差動機構55は発電電動機18の出力と固定クラッチ61側との差を第2中間軸42に出力する。この発進モードでは、第2変速ギア段52で発進が行われ、車両速度が例えば45km/hに加速したときに、エンジン14が始動される。エンジン14の始動後、エンジン回転数を制御して第2クラッチ44を同期させて締結すると、エンジン動力は第2中間軸42、第2変速ギア段52を介して出力軸45に伝達され、エンジン走行モードに移行する。この発進モードは、駅構内では45km/hに加速されるまでモータ発進・走行となり騒音低減に効果的であるので、ターミナル駅のような利用客の多い大きな駅での発進に適している。
[エンジン発進] 駆動用バッテリ10の充電率が低下している場合などに、エンジン14を起動後、発電電動機18の回転数を制御して第2クラッチ44を同期させて締結し、発電電動機18にトルクをかける。停車状態では第3クラッチ46が第1変速ギア段51に締結されているので、エンジン14の出力は第2中間軸42、差動機構55、接続ギア列60側、第1中間軸41及び第1変速ギア段51を介して出力軸45に伝達される。この時、第2中間軸42の回転数と差動機構55の接続ギア列60側に連結された軸との回転数差は差動機構55が吸収し、両回転軸の差の出力によって、取り出しギア57及び取り出し軸58を介して発電電動機18が発電する。
図6は、本発明による軌道車両用駆動システムにおいて、固定クラッチを締結し、変速ギア段を2速としたときの、回生時の発電トルク伝達経路を示す説明図であり、図11は、本発明による軌道車両用駆動システムにおいて、固定クラッチを締結し、変速ギア段を4速としたときの、回生時の発電トルク伝達経路を示す説明図である。
軌道車両が高速(例えば、55km/hから110km/h)で走行している場合において、制動をかけるときには、第4クラッチ47を第4変速ギア段54側にシフト・締結することによって出力軸45の回転は第2中間軸42に伝達される。固定クラッチ61を締結することによって、第1中間軸41は停止されるので、第2中間軸42の回転が差動機構55における差動として取り出し軸58から発電電動機18に発電トルクが掛けられ、4速における回生動作が得られる(図11参照)。回生ブレーキ(及び機械ブレーキ)の作用によって軌道車両の走行速度が低下した場合(例えば、55km/h以下になった場合)には、取り出し軸58から発電電動機18に入力される回転速度が低下し発電電動機18の発電効率も低下する。この事態に対処するため減速比が小さくなるよう変速ギア段を切り換える。即ち、第4クラッチ47の第4変速ギア段54との締結を一旦解除し、発電電動機18を電動機モードで作動させることで差動機構55を介しての第2中間軸42の回転速度を、出力軸45からの第2変速ギア段52の回転速度に同期させる。固定クラッチ61は締結状態が維持される。この状態で発電電動機18を発電モードに復帰させるとともに第4クラッチ47を第2変速ギア段52側にシフト・締結することで、図6に示すような変速ギア段を2速とした回生動作が得られる。発電電動機18に入力される回転速度は上昇し、効率の良い回生動作、即ち、最大限の回生ブレーキが得られる。
なお、ここでいう回生ブレーキ時の減速比とは、「変速機15のプロペラシャフト16を入力軸とし差動機構55の取り出し軸58を出力軸とするときの減速比」のことを意味する。
図7は、本発明による軌道車両用駆動システムにおいて、変速ギア段の2速と3速を締結したときの、回生時の発電トルク伝達経路を示す説明図であり、図12は、本発明による軌道車両用駆動システムにおいて、変速ギア段の1速と4速を締結したときの、回生時の発電トルク伝達経路を示す説明図である。
軌道車両が高速(例えば、55km/hから110km/h)で走行している場合において、制動をかけるときには、第3クラッチ46を第3変速ギア段53側に、第4クラッチ47を第2変速ギア段52側にシフト・締結することによって出力軸45の回転は第1中間軸41及び第2中間軸42に伝達される。よって、第1中間軸41及び第2中間軸42の回転が差動機構55における差動として取り出し軸58から発電電動機18に発電トルクが掛けられ、2速及び3速締結における回生動作が得られる(図7参照)。この場合、第1中間軸41の回転速度をn41、第2中間軸42の回転速度をn42、差動機構55のリングギア56の回転速度をn56とすれば、この3つの回転速度の関係式は差動機構の特性から、n56=(n42−n41)/2となる。
回生ブレーキ(及び機械ブレーキ)の作用によって軌道車両の走行速度が低下した場合(例えば、55km/h以下になった場合)には、取り出し軸58から発電電動機18に入力される回転速度が低下し発電電動機18の発電効率も低下する。この事態に対処するため減速比が小さくなるよう変速ギア段を切り換える。即ち、第3クラッチ46の第3変速ギア段53との締結及び第4クラッチ47の第2変速ギア段52との締結を一旦解除し、第3クラッチ46を第1変速ギア段51側にシフト・締結し、第4クラッチ47を第4変速ギア段54側にシフト・締結することで、図12に示すような1速及び4速締結における回生動作が得られる。差動機構55において第1中間軸41及び第2中間軸42の差動として取り出し軸58に取り出されて発電電動機18に入力される回転速度の絶対値は前記関係式により上昇し、効率の良い回生動作、即ち、最大限の回生ブレーキが得られる。
なお、ここでは、高速で走行している場合に、図7に示すような2速及び3速を締結した状態から回生ブレーキの動作を開始する場合について説明したが、1速及び2速を締結した状態、3速及び4速を締結した状態から回生ブレーキの動作を開始するよう構成しても良い。
3 床 4,4 台車
5 車輪 6 減速機
10 駆動用バッテリ 11 駆動用バッテリリアクトル
12 断流器 13 燃料タンク
14 エンジン 15 変速機(アクティブシフトトランスミッション)
16 プロペラシャフト 17 インバータ
18 発電電動機 19 エンジン制御器
20 変速機制御器 21 制御用バッテリ
22 ラジエータ
25 撓み継ぎ手
29 出力軸(エンジンの) 30 入力軸(変速機15の)
31 前進用ギア列 32 後進用ギア列
33 入力ギア
34 第1ギア 35 第2ギア
36 入力ギア 37,38 反転ギア
39 第3ギア 40 第4ギア
41 第1中間軸 42 第2中間軸
43 第1クラッチ 44 第2クラッチ
45 出力軸(変速機15の)
46 第3クラッチ 47 第4クラッチ
51 第1変速ギア段 52 第2変速ギア段
53 第3変速ギア段 54 第4変速ギア段
55 差動機構 57 取り出しギア
58 取り出し軸 60 接続ギア列
61 固定クラッチ
Claims (2)
- エンジン、及び当該エンジンの回転出力が入力される入力軸と当該回転出力を変速して出力する出力軸とを有する変速機を備え、当該変速機の前記出力軸の回転が軌道車両の駆動輪に伝達される軌道車両用駆動システムにおいて、
前記変速機は、前記入力軸と並列に設けられた第1中間軸及び第2中間軸、前記入力軸と前記両中間軸との間に設けられていて前記入力軸の回転を選択的に伝達する前進用ギア列及び後進用ギア列、及び前記第1中間軸又は第2中間軸と前記出力軸との間に噛み合って設けられており選択的に動力伝達が行われる複数組の変速ギア段、を備えていて、前記前進用ギア列又は前記後進用ギア列の選択と複数組の前記変速ギア段の選択との組合せで得られる速度段数が前進と後進とで等しくなっており、
更に、インバータを介してバッテリとの間で電力を出し入れし前記変速機に備わる前記第1中間軸及び/又は前記第2中間軸との間で回転力を授受する発電電動機、
前記発電電動機と前記第1中間軸及び前記第2中間軸との間に介在されており、差動出力軸に前記発電電動機が接続されている差動機構、並びに
前記差動機構と前記第1中間軸及び前記第2中間軸の少なくとも一方との間に直列配置されている複数のギアから成る接続ギア列を備え、
回生ブレーキ時には、前記変速ギア段を前記軌道車両の速度が低下するに応じて減速比が小さくなるよう選択的に切り換えて締結し、前記出力軸の回転を前記差動機構を介して前記発電電動機に伝達して発電し、
前記変速機は、更に、
前記接続ギア列の当該ギアの回転を拘束する固定クラッチを備え、
前記回生ブレーキ時には、前記固定クラッチを締結し、前記軌道車両の速度が低下するに応じて前記減速比が小さくなるよう選択的に切り換えて締結する前記変速ギア段を、前記接続ギア列が直接接続されていない方の前記中間軸に配置された前記変速ギア段とする
ことを特徴とする軌道車両用駆動システム。 - 請求項1に記載の軌道車両用駆動システムを備え、当該軌道車両用駆動システムによって回生ブレーキ時に発電する
ことを特徴とする軌道車両。
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