以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の自己位置推定補正システムの構成を示すブロック図である。
第1の実施形態として、本発明の自己位置推定補正システムを車両の位置の推定及び補正に適用する例を示す。
本実施形態の自己位置推定補正システムは、データ配信サーバ100、一つ以上の車載端末120及びそれらを接続するネットワーク150を含む。
データ配信サーバ100は、車載端末120に参照情報等のデータを配信するサーバであり、センシングデータ管理部101、環境センシングデータ受信部102、参照情報生成部103、参照情報送信部104、センシングデータ蓄積部111、地図データベース(DB)112、参照情報DB113及びセンシング条件DB114を備える。これらの詳細については後述する。
車載端末120は、自己位置推定部121、環境センシングデータ送信部122、参照情報受信部123、環境センサ124、ジャイロスコープ125、オドメトリ(走行距離計)126、GPS(Global Positioning System)127、参照情報照合部128、地図DB141及び参照情報DB142を備える。
環境センサ124は、車載端末120の環境(すなわちその車載端末120を搭載した車両の環境)に関する情報を取得するセンサであり、例えば、カメラ、レーザスキャナ、音場センサ又は地磁気センサ等であってもよい。本実施形態では、一例として環境センサ124が3次元レーザスキャナである場合について説明する。
ジャイロスコープ125、オドメトリ126及びGPS127は、他の情報を参照せずに車載端末120の位置(すなわちその車載端末120を搭載した車両の位置)を特定できる位置センサである。車載端末120は、上記の位置センサの全てを備えなくてもよいし、上記の位置センサの代わりに(又は上記の位置センサに加えて)上記以外の位置センサ、例えば3軸加速度センサ又はRFID(Radio Frequency Identification)センサ等を備えてもよい。
その他の各部の詳細については後述する。
ネットワーク150は、それを介してデータ配信サーバ100と車載端末120との間の通信を実行できる限り、いかなる種類のものであってもよい。例えば、ネットワーク150は、有線又は無線によるIP(Internet Protocol)ネットワークであってもよい。また、データ配信サーバ100と車載端末120とが常にネットワーク150を介して接続されている必要はなく、通信する必要があるときのみ接続されてもよい。
図2は、本発明の第1の実施形態の自己位置推定補正システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
データ配信サーバ100は、例えば、プロセッサ201、メインメモリ202、インターフェース(I/F)203、入力装置204、出力装置205及び記憶装置206を備える計算機によって実現することができる。
プロセッサ201は、メインメモリ202に格納されたプログラムに従って種々の処理を実行することによって、データ配信サーバ100の種々の処理を制御する。
メインメモリ202は、例えば半導体メモリであり、プロセッサ201によって実行されるプログラム及びプロセッサ201によって参照されるデータを格納する。具体的には、記憶装置206に格納されたプログラム及びデータの少なくとも一部が、必要に応じてメインメモリ202にコピーされてもよい。
I/F203は、ネットワーク150に接続され、車載端末120と通信するインターフェースである。
入力装置204は、ユーザ又はシステム管理者からの入力を受ける装置であり、例えばキーボードのような文字入力装置及びマウスのようなポインティングデバイス等を含んでもよい。
出力装置205は、システム管理者等に情報を出力する装置であり、例えば液晶ディスプレイのような画像表示装置であってもよい。
記憶装置206は、例えばハードディスク装置(HDD)又はフラッシュメモリのような不揮発性の記憶装置である。本実施形態のセンシングデータ管理部101、環境センシングデータ受信部102、参照情報生成部103及び参照情報送信部104は、記憶装置206に格納されたプログラムをプロセッサ201が実行することによって実現される。また、センシングデータ蓄積部111は記憶装置206内の記憶領域であり、地図DB112、参照情報DB113及びセンシング条件DB114は記憶装置206に格納される。
車載端末120は、車両220に搭載される。車両220の代表的な例は自動車であるが、いわゆるパーソナルモビリティ等、任意の種類の車両に本発明を適用することができる。また、車両220を任意の移動体(例えば自走するロボット等)に置き換えた場合にも本発明を適用することができる。
車載端末120は、例えば、車両220に搭載された計算機、及び、車両220に取り付けられ、その計算機に接続された種々の機器によって構成される。具体的には、例えば、車載端末120は、プロセッサ211、メインメモリ212、記憶装置213、入力装置214、出力装置215及びI/F216を備える。
プロセッサ211は、メインメモリ212に格納されたプログラムに従って種々の処理を実行することによって、車載端末120の種々の処理を制御する。
メインメモリ212は、例えば半導体メモリであり、プロセッサ211によって実行されるプログラム及びプロセッサ211によって参照されるデータを格納する。具体的には、記憶装置213に格納されたプログラム及びデータの少なくとも一部が、必要に応じてメインメモリ212にコピーされてもよい。
記憶装置213は、例えばハードディスク装置(HDD)又はフラッシュメモリのような不揮発性の記憶装置である。本実施形態の自己位置推定部121、環境センシングデータ送信部122、参照情報受信部123及び参照情報照合部128は、記憶装置213に格納されたプログラムをプロセッサ211が実行することによって実現される。また、地図DB141及び参照情報DB142は記憶装置213に格納される。
図2では省略されているが、環境センサ124、ジャイロスコープ125、オドメトリ126及びGPS127は、上記のプロセッサ211等によって構成される計算機に接続される機器である。これらは、車両220に取り付けられ、ケーブル等によって計算機に接続されてもよい。
また、図2には一つの車両220のみを示すが、実際にはそれぞれが車載端末120を搭載する複数の車両220が本実施形態の自己位置推定補正システムに含まれる。
次に、本実施形態の自己位置推定補正システムの運用フローについて、図3A〜図3Cを参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の車載端末120はGPS127等の位置センサを備え、これらを用いて自車(すなわち車載端末120を搭載した車両220)の位置を計測することができる。しかし、そのようにして計測された位置の精度は、車両220の自律走行の制御に使用できる程度に高くはない。本実施形態では、自律走行に使用できる程度に高精度の位置情報は、例えば、車両220に取り付けられた環境センサ124が取得したセンシングデータに含まれる環境情報と、予め取得された参照情報とを比較することによって得ることができる。
具体的には、例えば環境センサ124がカメラである場合、カメラによって撮影された画像と、参照情報として予め用意された参照画像とを比較することによって、それらが同一の(又は同一とみなせる程度に近い)位置から撮影されたものであるか否かが判定される。それらの画像が撮影された地点が同一であると判定された場合において、参照画像が撮影された地点が予めわかっていれば、その地点を、当該画像が撮影された時点における車両220の位置として特定することができる。また、このような比較の結果に基づいて、参照画像が撮影された地点を経由するように車両220の走行を制御する技術も既に知られている。
従来、参照情報は、システムの運用を開始する際に、システムの管理者等によって収集された。例えば、自律走行ロボットにある決まった経路を走らせたい場合、その経路上の複数の地点のセンシングデータ、例えばそれらの地点から見える光景を撮影した画像を管理者等が収集し、それを参照情報としてロボットに記憶させる。その後、ロボットに設置されたカメラから参照情報と同等の画像が見えるように、ロボットの制御装置がロボットの走行を制御することによって、当該ロボットは当該決まった経路を自律走行することができる。
自動車等の車両の場合も同様であり、例えば管理者等が車両220を運転してある経路を実際に走行し、その際に、車両220に設置された環境センサ124が経路上の複数の地点のセンシングデータを収集してもよい。その後、上記のロボットの場合と同様に、車両220は参照情報を用いて、決まった経路を自律走行することができる。
しかし、車両220に例えば任意の目的地までの経路を自律走行させたい場合、選択される可能性がある全ての経路(つまり、道路ネットワーク上の全ての経路)についてセンシングデータを収集する必要がある。また、一つの地点から取得されるセンシングデータは、種々の条件に応じて変化し得る。例えば、経路の周囲において建造物が新設又は撤去された場合には経路上の地点から見える光景も変化する。あるいは、例えば街路樹のような植物は、季節によって外観が変化し得る。さらに、天候又は時間帯によって経路の周囲の明るさ及び光線の方向等が異なることによって光景が変化する場合もある。
このような状況下においても自律走行に使用できる参照情報を保持しようとすれば、広範囲の地域の参照情報を取得し、かつ、それを頻繁に更新する必要があるが、これを管理者等が実行することは主にコストの観点から困難である。
上記のような課題を解決するため、本実施形態のデータ配信サーバ100は、センシングデータ集積処理(図3Aに示すステップ1)、参照情報生成処理(図3Bに示すステップ2)及び参照情報配信処理(図3Cに示すステップ3)を実行する。以下、これらの処理について説明する。
図3Aは、本発明の第1の実施形態の自己位置推定補正システムが実行するセンシングデータ集積処理の説明図である。
本実施形態の自己位置推定補正システムの運用が開始された時点で、データ配信サーバ100の地図DB112には地図データが格納されているが、センシングデータ蓄積部111及び参照情報DB113には、車両220の自律走行に使用できる程度に十分なデータが格納されていない。この時点で、センシングデータ集積処理(ステップ1)が開始される。
センシングデータ集積処理は、データ配信サーバ100が車載端末120からセンシングデータを取得してそれらを蓄積する処理である。具体的には、車載端末120のジャイロスコープ125、オドメトリ126及びGPS127等の位置センサが位置情報を取得し、環境センサ124が環境センシングデータを取得する。環境センシングデータは、カメラが撮影した車両220の周囲の画像又はレーザスキャナが計測した車両220の周囲の物体の3次元座標のような、環境情報を含む。
そして、車載端末120の環境センシングデータ送信部122が、位置情報及び環境情報を含むセンシングデータを、ネットワーク150を介してデータ配信サーバ100に送信する。送信されるセンシングデータの例については後述する(図4A等参照)。データ配信サーバ100の環境センシングデータ受信部102がセンシングデータを受信し、それらをセンシングデータ管理部101がセンシングデータ蓄積部111に格納する。このようにして蓄積されたセンシングデータは、後に参照情報として車載端末120に配信される可能性がある。
図3Aには一つの車載端末120のみを示すが、実際には多くの車両220に搭載された多くの車載端末120からセンシングデータ等が収集される。例えば通勤又はレジャーに使用される自家用車、荷物の運搬に使用されるトラック、乗客を運ぶためのバス等、一般の車両220に車載端末120を搭載して、それらからセンシングデータ等を収集してもよい。後述するように、参照情報の配信を受ける車両220と、その参照情報を取得した車両220とは同一であってもなくてもよいが、同種であることが望ましい。また、ある経路を走行するための参照情報を配信するためには、その経路を最低でも1回は車両220が走行してその経路のセンシングデータを取得する必要がある。したがって、より多くの種類の車両220に任意の経路を走行するための参照情報を配信するためには、多くの種類の多くの車両220に車載端末120を搭載してそれらからセンシングデータ等を収集することが望ましい。
なお、上記のように、自己位置推定補正システムの運用が開始された初期の時点では、データ配信サーバ100は車両220の自律走行に使用できる程度の情報を車載端末120に配信することができない。このため、初期の時点では、人が車両220を運転し、その間に車載端末120のセンサがセンシングデータを取得することが想定される。しかし、ある程度のセンシングデータが蓄積され、それに基づいて参照情報の配信が可能になった後は、人が運転する車両220だけでなく、自律走行する車両220に搭載された車載端末120からセンシングデータ等が収集されてもよい。
図3Bは、本発明の第1の実施形態の自己位置推定補正システムが実行する参照情報生成処理の説明図である。
センシングデータ集積処理(ステップ1)によって、環境情報を含むセンシングデータがセンシングデータ蓄積部111に蓄積される。しかし、蓄積されたセンシングデータの全てが参照情報として利用できるとは限らない。例えば、路上の一時的な障害物(例えば駐車車両等)を避ける動作を行った車両220が取得したセンシングデータをそのまま参照情報として他の車両220に配信した場合、その参照情報を取得した車両220は、障害物が取り除かれた後であっても、障害物を避けるように走行する可能性がある。このようなことを避けるため、参照情報生成部103は、蓄積されたセンシングデータから他の車両220の走行を制御するために適していると判定されるものを抽出し、それを参照情報DB113に格納する。これが参照情報生成処理(ステップ2)である。
このとき、参照情報生成部103は、センシングデータ蓄積部に環境センシングデータと対応付けて格納された位置情報と、地図DB112に格納された地図データとを参照して、車両220の高精度な位置を推定する。このようにして推定された高精度な位置情報が、当該センシングデータが他の車両220の制御への使用に適しているか否かの判定に使用される。そして、他の車両220の走行を制御するために適していると判定されたセンシングデータと、それに対応する高精度な位置情報とが参照情報DB113に格納される。
参照情報生成処理の詳細については、図6等を参照して後述する。
図3Cは、本発明の第1の実施形態の自己位置推定補正システムが実行する参照情報配信処理の説明図である。
参照情報配信処理(ステップ3)は、データ配信サーバ100が参照情報DB113から読み出した参照情報を車載端末120に配信する処理である。例えば、車載端末120が位置センサから取得した大まかな位置をデータ配信サーバ100に送信し、データ配信サーバ100の参照情報送信部104がその大まかな位置の周辺の位置と対応付けられた参照情報を車載端末120に送信してもよい。参照情報を受信した車載端末120は、自身の環境センサ124が取得したセンシングデータに含まれる環境情報と参照情報とを比較することによって、自車の位置を推定し、その位置を用いて自車の走行を制御する。
図4Aは、本発明の第1の実施形態の車載端末120が送信するセンシングデータの説明図である。
センシングデータ集積処理(ステップ1)において車載端末120からデータ配信サーバ100に送信されるセンシングデータ400は、例えば、位置センサデータ401、時刻402、センシング条件403及び環境センシングデータ404を含む。
位置センサデータ401は、GPS127、ジャイロスコープ125及びオドメトリ126等の位置センサが取得した位置情報を含むデータであり、例えば位置センサが取得した車両220の座標値を含む。
時刻402は、位置センサが位置情報を取得した時刻を示す。この時刻402は、一日の中の時刻だけでなく、年月日を含む。なお、時刻402は、時刻を一意に特定できる限り、どのような方法で表現されてもよい。例えば、特定の時刻からの経過秒数(いわゆるエポック時刻)であってもよい。
センシング条件403は、環境センサ124によるセンシング条件を示す情報であり、例えば環境センサ124の種類及び設置方向等を示す情報を含む。センシング条件403の例については後述する(図4B参照)。
環境センシングデータ404は、時刻402が示す時刻に環境センサ124が取得したデータであり、その時刻における車両220の環境情報を含む。例えば環境センサ124がレーザスキャナである場合、環境センシングデータは車両220の周囲の物体の3次元座標であり、環境センサ124がカメラである場合、環境センシングデータは車両220から見える光景の画像である。
センシングデータ集積処理(ステップ1)において環境センシングデータ送信部122は、位置センサデータ401及び環境センシングデータ404を、加工又は間引き等をすることなく、そのままデータ配信サーバ100に送信することが望ましい。データ配信サーバ100は、受信したセンシングデータ400をセンシングデータ蓄積部111に格納する。
なお、図4Aでは時刻402とセンシング条件403を独立に扱っているが、これらをまとめてセンシング条件として扱ってもよい。
図4Bは、本発明の第1の実施形態において送信されるセンシングデータ400に含まれるセンシング条件403の説明図である。
図4Bには、環境センサ124がレーザスキャナである場合のセンシング条件403の例を示す。この場合、センシング条件403は、例えばレーザスキャナの設置位置、設置方向及び周回速度等を含む。レーザスキャナの設置位置は、例えば地表からレーザスキャナの設置位置までの高さ、及び車両220の先端からレーザスキャナの設置位置までの距離等を含んでもよい。設置方向は、例えばレーザスキャナの水平面内の方向及び仰角等を含んでもよい。
このようなセンシング条件403は、例えば、参照情報を利用する車両220を限定するために使用される。これは、一つの地点において取得された環境センシングデータ404の内容が、センシング条件403に依存して大きく異なる可能性があるためである。例えば、同じ地点から取得された環境センシングデータ404であっても、環境センサ124の設置方向が異なっていれば、それらの内容は異なっていると考えられる。車両220の位置を高精度に特定するためには、その車両220に設置された環境センサ124のセンシング条件と類似した条件の下で取得された参照情報を、その環境センサ124が取得した情報と比較することが望ましい。
このため、センシング条件403は、参照情報を利用する車両220を限定するために使用可能な上記以外の情報をさらに含んでもよい。例えば、センシング条件403は、環境センサ124が設置された車両220の種別(例えば乗用車、バス又はトラック等)を示す情報、当該車両220の車高を示す情報、当該車両220がライトを点灯していたか否かを示す情報、レーザスキャナの画角(言い換えるとレーザスキャナによってセンシングされる範囲)を示す情報、及び解像度を示す情報等を含んでもよい。
あるいは、センシングデータ400は、センシング条件403として上記のような情報を含む代わりに、環境センサ124を識別する情報(ID)を含んでもよい。センシング条件DB114に環境センサ124のIDと上記のようなセンシング条件とを対応付ける情報が格納されていれば、データ配信サーバ100は、その情報に基づいて、受信したセンシングデータ400に対応するセンシング条件を特定することができる。
図5Aは、本発明の第1の実施形態の地図DB112に格納された地図データの説明図である。
本実施形態の地図DB112は、少なくとも、道路ネットワークを記述するデータを含む。図5に示す道路ネットワークデータ500は、道路リンクID501、始点ノードID502、終点ノードID503、道路属性504及び道路形状505を含む。このようなデータは従来のナビゲーションシステム等において使用されるものと同様であってよいため、詳細な説明は省略するが、概要は次の通りである。
道路リンクID501は、道路(より詳細には、例えば道路上の二つの交差点を接続する区間)の識別子である。
始点ノードID502及び終点ノードID503は、それぞれ、道路リンクID501によって識別される道路における進行方向の始点及び終点に相当する交差点の識別子である。
道路属性504は、道路リンクID501によって識別される道路の属性(例えば有料道路であるか無料道路であるか等)を示す。
道路形状505は、道路リンクID501によって識別される道路の形状を示す点列であり、具体的には、その道路上の複数の地点の座標値の列である。
図5Bは、本発明の第1の実施形態の地図DB112に格納された地図データによって表現される道路ネットワークの説明図である。
本実施形態における道路ネットワーク510は、従来から知られているものと同様、交差点に相当する複数の交差点ノード512と、それぞれが二つの交差点を接続する複数の道路リンク511とによって表現される。
図6は、本発明の第1の実施形態のデータ配信サーバ100の参照情報生成部103が実行する参照情報生成処理を説明するフローチャートである。この処理は、図3Bのステップ2において実行される。
最初に、参照情報生成部103は、位置センサ誤差推定処理を実行する(ステップ601)。既に説明したように、GPS127等の位置センサによって取得した車両220の位置情報の精度は十分に高くない。しかし、センシングデータ蓄積部111に一つの車両220から取得された複数の時刻における位置センサデータ401(言い換えると、その車両220の走行軌跡を示す情報)が格納されていれば、それらの位置センサデータ401と地図情報とを参照することによって、位置センサデータ401の誤差を推定し、その推定の結果に基づいて位置センサデータ401の誤差を補正することができる。このとき、後述するように、位置センサの特性(具体的には、位置センサの種類に対応する誤差モデル)が考慮されてもよいし、一つの車両220だけでなく、複数の車両220から取得された位置センサデータ401が利用されてもよい。これによって、高精度な位置情報が取得される。ステップ601の詳細については、図7及び図8を参照して後述する。
次に、参照情報生成部103は、位置センサ情報分割処理を実行する(ステップ602)。具体的には、参照情報生成部103は、各位置センサデータ401を交差点又は道路のいずれかに対応付ける。この処理の詳細については、図9を参照して後述する。
次に、参照情報生成部103は、位置・環境センシング情報評価処理を実行する(ステップ603)。既に説明したように、車載端末120から送信されるセンシングデータ400は、参照情報DB113に登録するのに妥当でない情報を含んでいる場合がある。ステップ603において、参照情報生成部103は、センシングデータ400に含まれる位置情報及び環境情報が参照情報DB113に登録するのに妥当か否かを判定する。この処理の詳細については、図10を参照して後述する。
最後に、参照情報生成部103は、参照情報DB113に登録するのに妥当であると判定された情報を参照情報DB113に格納する(ステップ604)。
以上で参照情報生成処理が終了する。
図7は、本発明の第1の実施形態のデータ配信サーバ100の参照情報生成部103が実行する位置センサ誤差推定処理を説明するフローチャートである。この処理は、図6のステップ601において実行される。
最初に、参照情報生成部103は、位置センサの誤差モデルを選択する(ステップ701)。具体的には、例えば、位置センサの種類に応じて、誤差を表現するモデルが予め特定され、そのモデルに応じて誤差を補正する方法が決定されてもよい。
例えば、右左折時に本来以上の一定加速度が誤差として加算されるような誤差モデルが選択されてもよい。この場合、誤差を補正するために、例えば、車両220が右折又は左折したと判定されたときに加速度を一定値ずつ減算する。他に、加算される誤差が次第に増加する(すなわち累積される)誤差モデル、又は、時系列データの全体に同等の誤差が加算される誤差モデル(後述する平行移動誤差モデル)等が選択され得る。それぞれの場合に、それぞれの誤差モデルに適した補正方法が決定される。選択される誤差モデルは位置センサの特性に依存する。例えば、オドメトリ126の誤差は累積される傾向がある。
なお、実際にはランダムな誤差も発生し得るが、そのような誤差は平均化等によって軽減することができる。
次に、参照情報生成部103は、位置センサの誤差モデルのパラメータを更新する(ステップ702)。具体的には、参照情報生成部103は、位置センサの誤差を減らす方向にパラメータを更新する。例えば上記のように右左折時に加速度が加算される場合、ステップ702で更新されるパラメータは「加算される値」である。
なお、後述するように、ステップ702〜704は、誤差が収束するまで繰り返し実行される。1回目のステップ702では、パラメータがある値に設定され、その後、2回目以降のステップ702において、誤差を減らす方向にパラメータが更新される。例えば、上記のように右左折時に加速度が加算される場合において、前回のステップ702で加算される値を増やした結果、誤差が増えた場合、加算される値を減らしてもよい。あるいは、加算される値をランダムな方向に変更してもよい。
次に、参照情報生成部103は、ステップ702で更新されたパラメータを用いて誤差を補正し、補正後の誤差を評価する(ステップ703)。具体的には、補正後の値と地図データ又は他の車両220の位置とのずれを計算することによって補正後の誤差が評価される。
次に、参照情報生成部103は、ステップ703の評価結果に基づいて、誤差の補正が収束したか否かを判定する(ステップ704)。例えば、今回のステップ703における誤差と、前回のステップ703における誤差との差が所定の値以下である場合に、誤差がこれ以上小さくならない(すなわち誤差の補正が収束した)と判定してもよい。
ステップ704において、誤差が収束していないと判定された場合、処理はステップ702に戻り、再度ステップ702〜704が実行される。一方、誤差が収束したと判定された場合、位置センサ誤差推定処理が終了する。
図8は、本発明の第1の実施形態のデータ配信サーバ100の参照情報生成部103が実行する位置センサ誤差推定処理の説明図である。この図は、図7のフローチャートに基づく処理の一例を説明するものである。
図8(a)に示す走行軌跡801は、誤差を補正する前の車両220の移動軌跡、すなわち、車載端末120から送信されたセンシングデータ400に含まれる、複数の時刻402に対応する位置センサデータ401によって特定される位置を、時刻402の順に連結したものである。一方、走行軌跡802は、1回目の補正を行った後の車両220の移動軌跡である。この例では平行移動誤差モデルが選択されているため、走行軌跡802は、走行軌跡801を、走行軌跡801に最も近い道路に向かう方向に、移動距離δx及びδyだけ平行移動させたものに相当する。
移動後の走行軌跡802と、その走行軌跡802に最も近い道路との間の距離は、移動によって小さくはなったが、依然として残っている。このため、走行軌跡802について2回目の補正が行われる。それによって、走行軌跡802がその走行軌跡802に最も近い道路に向かう方向(図8(a)のベクトルvの方向)に平行移動する。
図8(b)に示す走行軌跡803は、図8(a)の走行軌跡802に相当する。一方、走行軌跡804は、2回目の補正を行った後の車両220の移動軌跡である。2回目の補正も、1回目と同様、走行軌跡803を平行移動距離δx及びδyだけ移動させることによって行われる。ただし、図8(b)における平行移動距離δx及びδyは、図8(a)における平行移動距離δx及びδyと異なる。図8の例では、平行移動距離δx及びδyが、図7のステップ702におけるパラメータに相当する。
1回目の補正における平行移動距離より2回目の補正における平行移動距離が小さければ、誤差がまだ収束していないと考えられるため、さらに3回目の補正、すなわち、走行軌跡804をその走行軌跡804に最も近い道路に向かう方向(図8(b)のベクトルvの方向)に平行移動させる補正が行われる。
このように、参照情報生成部103は、位置センサデータの誤差が小さくなるようにδx及びδyを変更しながら走行軌跡のv方向への平行移動を繰り返し(ステップ702〜704)、誤差が収束した場合に位置センサ誤差推定処理を終了する。なお、走行軌跡に含まれる複数の位置センサデータの誤差は、例えば、各位置センサデータと、走行軌跡に最も近い道路との距離の統計値(例えば平均値)によって評価される。なお、当該道路との距離を計算する際に道路幅などを考慮してもよい。あるいは、ある一つの位置センサデータの誤差を評価する際に、他の一つ以上の位置センサデータを用いることもできる。たとえば、位置センサデータから右左折地点を抽出し、他の位置センサデータから抽出された右左折地点との距離によって評価するなどである。
図7及び図8には、位置センサ誤差推定処理の例として、複数の時刻における位置センサデータ401と道路ネットワークデータ500とを比較することによって誤差を推定する方法の一例を説明したが、これ以外の方法によって誤差が推定されてもよい。例えばカーナビゲーションシステムにおいて自車の現在位置を表示する場合と異なり、本実施形態の位置センサ誤差推定処理には即時性が要求されない。このため、たとえ多くの計算時間を要する方法であっても、高精度な誤差の推定(言い換えると位置センサデータの高精度な補正)を実現できる方法があれば、その方法を用いて位置センサ誤差推定処理を実行することが望ましい。図7及び図8に示したようにパラメータの変更とそれに基づく誤差の評価とを繰り返すことで誤差を収束させる処理は、例えばEM(Expectation-Maximization)法のような公知の方法によって実現することができるが、上記のように高精度に誤差を推定できる方法であれば、その他の方法が採用されてもよい。
図9は、本発明の第1の実施形態のデータ配信サーバ100の参照情報生成部103が実行する位置センサ情報分割処理の説明図である。これは、図6のステップ602において実行される処理を説明するものである。
参照情報生成部103は、ステップ601において補正された位置センサデータ401が示す位置が、交差点の位置(すなわち道路ネットワークデータ500から特定される交差点ノードの座標)を含む所定の範囲内である場合、その位置センサデータ401を含むセンシングデータ400をその交差点(すなわちその交差点に対応するノード)に対応付ける。交差点の位置を含む所定の範囲とは、例えば交差点の位置からの距離が所定の値以下の領域である。以下、この範囲を、交差点センシングデータ範囲とも記載する(図11A参照)。例えば図9の円901の範囲が交差点センシングデータ範囲に相当する。
一方、位置センサデータ401が示す位置が交差点センシングデータ範囲外である場合、参照情報生成部103は、その位置センサデータ401を含むセンシングデータ400を、その位置センサデータ401が示す位置から最も近い道路(すなわちその道路に対応するリンク)に対応付ける。なお、道路がポリゴンによって表現されている場合、参照情報生成部103は、位置センサデータ401が示す位置を内包するポリゴンに対応する道路に、その位置センサデータ401を含むセンシングデータ400を対応付けてもよい。以下、交差点センシングデータ範囲以外の範囲を道路センシングデータ範囲とも記載する(図11A参照)。例えば図9の楕円902の範囲が道路センシングデータ範囲に相当する。
交差点内を走行する車両220から取得されるセンシングデータは、その交差点における車両220の挙動(例えば車両220がどの道路から交差点に進入してどの道路に脱出するか)から大きな影響を受けると考えられる。このため、ある交差点を走行する車両220から取得されたセンシングデータは、同じ交差点においてその車両220と同じ挙動をする別の車両220が参照情報として利用できる可能性はあるが、それ以外の挙動をする車両220が利用する参照情報としては適していない。
これに対して、交差点からある程度以上離れた道路上を走行する車両220から取得されるセンシングデータは、その道路の前後の交差点における車両220の挙動の影響を受けないと考えられる。このため、ある道路を交差点からある程度以上離れた道路上を走行する車両220から取得されたセンシングデータは、進行方向が同一であれば、その前後の交差点における挙動にかかわらず、その道路を走行する別の車両220が参照データとして利用できる可能性がある。
このように、センシングデータを当該道路における挙動の単位に分類することによって、センシングデータを利用できる可能性のある車両220が増えるため、取得されたセンシングデータを有効に利用することができる。特に車両のみが走行する道路では、交差点への進入・脱出と、道路での走行とに分類される。他にも、信号、横断歩道、踏切など、道路における挙動が特殊な単位に分類することもできる。
図9に示すような分割は、道路ネットワークを、交差点を含む領域(交差点センシングデータ範囲に相当する)と、それ以外の範囲を含む領域(道路センシングデータ範囲に相当する)とに分割し、領域ごとに走行軌跡を分類することに相当する。交差点センシングデータ範囲に相当する領域における走行軌跡は、進入方向と脱出方向との組み合わせごとに分類される。すなわち、その領域を走行した車両から取得された参照情報は、進入方向と脱出方向との組み合わせごとに分類される(図11C参照)。一方、道路センシングデータ範囲に相当する領域における走行軌跡は、進行方向ごとに分類される。すなわち、その領域を走行した車両から取得された参照情報は、進行方向ごとに分類される(図11B参照)。
図10は、本発明の第1の実施形態のデータ配信サーバ100の参照情報生成部103が実行する位置・環境センシング情報評価処理を説明するフローチャートである。この処理は、図6のステップ603において実行される。
最初に、参照情報生成部103は、典型軌道モデルを初期化する(ステップ1001)。
次に、参照情報生成部103は、典型軌道モデルを生成する(ステップ1002)。
次に、参照情報生成部103は、ステップ601において補正された位置センサデータによって特定される走行軌跡の、典型軌道モデルからのずれを評価する(ステップ1003)。
次に、参照情報生成部103は、計算が収束したか否かを判定する(ステップ1004)。例えば、図7のステップ704の場合と同様、ステップ1003で評価されたずれの量と前回のステップ1003で評価されたずれの量との差が所定の値以下である場合に計算が終了したと判定されてもよい。
次に、参照情報生成部103は、生成された典型軌道モデルからのずれが最小である車両220の走行軌跡(すなわち軌道)を取得する(ステップ1005)。
以上で位置・環境センシング情報評価処理が終了する。
上記の位置・環境センシング情報評価処理は、車両220から取得され、位置センサ誤差推定処理によって補正された多数の車両220の走行軌跡から、典型的なものを選択する処理である。ある道路を多数の車両220が走行する場合、それらの走行軌跡は相互に少しずつ相違する。相違の原因は、例えば偶発的なばらつき、運転者の癖、又は道路上の一時的な障害物等である。参照情報生成部103は、このような多数の走行軌跡に基づいて、最も典型的な軌道を特定し、その典型的な軌道に最も近い走行軌跡を取得する。
最も典型的な軌道とは、言い換えると、最も多くの走行軌跡に「似ている」走行軌跡である。軌道が典型的であるということは、その軌道に類似した走行実績が特に多数であることを意味するため、もっとも安全に走行が可能な軌道であることを意味する。したがって、より多くの走行軌跡に似ている軌跡を走行した車両220から取得されたセンシングデータであるほど、より多くの車両220が参照情報として利用できる可能性が高い。このため、最も典型的な走行軌跡に対応するセンシングデータが参照情報として選択される。
本実施形態において、最も典型的な軌道とは、走行実績が多いものに近いと推定される軌跡であり、より具体的には、取得された複数の移動体の軌跡を統計処理することによって得られた、当該複数の移動体の軌跡を代表する軌跡に相当する。例えば、参照情報生成部103は、道路の端(又は中心等の基準位置)からそれぞれの走行軌跡までの距離の分布に近似する確率モデルを典型軌道モデルとして選択する(ステップ1002)。例えば、正規分布(又は混合正規分布)が典型軌道モデルとして選択されてもよい。そして、参照情報生成部103は、実際の走行軌跡の分布の、生成された典型軌道モデルからのずれを評価する(ステップ1003)。このずれが小さくなるように典型軌道モデルを変更しながら、ステップ1002及び1003が繰り返される。例えば、上記のずれが小さくなるように正規分布のパラメータが変更されてもよい。このような計算は、例えばEM法又は変分ベイズ法のような公知の方法によって実装することができる。
計算が収束した場合(ステップ1004)、最終的な典型軌道モデルとして取得された確率モデルの期待値からのずれが最も小さい走行軌跡が取得される(ステップ1005)。例えば、走行軌跡ごとに、その走行軌跡上の複数の点の確率モデルにおける対数尤度の合計値を計算し、その値が最も大きい走行軌跡を最も典型的な走行軌跡として取得してもよい。特に典型軌道モデルとして正規分布が選択された場合は、正規分布の中心からの距離が対数尤度と等しくなるため、正規分布の中心からの距離の和を計算するだけで、容易に典型的な走行軌跡を抽出できる。
このような典型軌道モデルからのずれが最も小さい走行軌跡は、センシング条件403が同一又は類似するセンシングデータ400のグループごとに選択されてもよい。例えば、バスは、バスによって取得された参照情報を利用することが望ましい。このため、バスの走行軌跡のうち典型軌道モデルからのずれが最も小さいものが選択され、その選択された走行軌跡に対応する環境センシングデータ404が参照情報として利用される。さらに、典型軌道モデル自体を、センシング条件403が同一又は類似するセンシングデータ400のグループごとに決定してもよい。
交差点内の走行軌跡についても上記と同様の処理が実行される。ただし、交差点の場合は進入する道路と脱出する道路との組み合わせが同一である走行軌跡のグループごとに典型軌道モデルが取得される。
次に、参照情報の形式及びその配信について説明する。
図11Aは、本発明の第1の実施形態において配信される参照情報と道路又は交差点との対応付けの説明図である。
交差点ノード1105は、道路リンク1101〜1104の始点又は終点に相当する。ここで、交差点ノード1105に対応する交差点を単に交差点1105とも記載し、道路リンク1101〜1104に対応する道路の区間を単に道路1101〜1104とも記載する。交差点1105を通過する走行軌跡1106〜1108に対応する参照情報は、道路リンク又は交差点ノードと対応付けられる。
より詳細には、各走行軌跡のうち交差点センシングデータ範囲1110内の部分に対応する参照情報は、交差点、進入リンク及び脱出リンクの組み合わせと対応付けられる。例えば走行軌跡1106は道路1102から交差点1105に進入して道路1101に脱出し、その方向に道路1101を走行する車両220の走行軌跡である。この例における進入リンク及び脱出リンクはそれぞれ道路リンク1102及び道路リンク1101である。この場合、道路1102から交差点1105に進入して道路1101に脱出する(すなわち走行軌跡1106と同様の軌跡を描いて走行する)車両220が交差点センシングデータ範囲1110を走行している(又はこれから走行する)場合、その車両220には、交差点1105、進入リンク1102及び脱出リンク1101に対応付けられた参照情報が配信される。この参照情報は、走行軌跡1106と同様の軌跡を描いて走行した別の車両220から取得されたセンシングデータを含む。このような参照情報の詳細については図11Bを参照して後述する。
一方、各走行軌跡のうち道路センシングデータ範囲1109内の部分に対応する参照情報は、道路リンク及び進行方向の組み合わせと対応付けられる。例えば走行軌跡1106と同様の軌跡を描いて走行した車両220が道路1101の道路センシングデータ範囲1109を走行している(又はこれから走行する)場合、その車両220には、道路リンク1101、及び、交差点1105から脱出する進行方向に対応付けられた参照情報が配信される。この参照情報は、走行軌跡1106と同様の軌跡を描いて走行した別の車両220、道路1103から交差点1105に進入して道路1101に脱出した(すなわち走行軌跡1107と同様の軌跡を描いて走行した)別の車両220、又は、道路1104から交差点1105に進入して道路1101に脱出した(すなわち走行軌跡1108と同様の軌跡を描いて走行した)別の車両220、のいずれから取得されたセンシングデータを含んでもよい。このような参照情報の詳細については図11Cを参照して後述する。
図11Bは、本発明の第1の実施形態において配信される道路参照情報の説明図である。
図11Bに示す道路参照情報1120は、道路リンクに対応付けられた情報であり、道路センシングデータ範囲における車両220の位置を特定するために配信される。道路参照情報1120は、道路リンクID1121、リンク方向1122、位置1123、センシング条件1124及びセンシングデータ1125を含む。
道路リンクID1121は、当該道路参照情報1120が対応付けられた道路リンクの識別子(すなわちその道路リンクに対応する道路の区間の識別子)である。
リンク方向1122は、車両220の進行方向を表すフラグである。
位置1123は、道路内の位置を示す情報(例えば座標値)である。
センシング条件1124は、センサの種類及び設置方向等に関する情報であり、センシングデータ400のセンシング条件403に相当する。
センシングデータ1125は、環境センサによって取得された環境情報を含むデータであり、少なくとも、道路リンクID1121、リンク方向1122、位置1123及びセンシング条件1124の組に適合するセンシングデータ400の環境センシングデータ404に相当する情報又はそれを加工することによって得られた情報を含む。
なお、参照情報DB113には上記のような道路参照情報1120の複数の組が格納され、それらのうち配信先の車両220の条件に適合するものが検索されて車両220に配信される。
例えば、図11Aの道路センシングデータ範囲1109を走行する車両220には、道路リンクID1121として道路リンク1101の識別子を、リンク方向1122として交差点1105から脱出する方向を示す情報を、それぞれ含む道路参照情報1120のセンシングデータ1125が配信される。このセンシングデータ1125は、走行軌跡1106〜1108のいずれと同様の軌跡を描いて走行した車両220から取得されたものであってもよい。
図11Cは、本発明の第1の実施形態において配信される交差点参照情報の説明図である。
図11Cに示す交差点参照情報1130は、交差点ノードに対応付けられた情報であり、交差点センシングデータ範囲における車両220の位置を特定するために配信される。交差点参照情報1130は、進入道路リンクID1131、交差点ノードID1132、脱出道路リンクID1133、位置1134、センシング条件1135及びセンシングデータ1136を含む。
進入道路リンクID1131及び脱出道路リンクID1133は、それぞれ、当該交差点参照情報1130が対応付けられた交差点への進入方向及びその交差点からの脱出方向を示す道路リンクの識別子である。
交差点ノードID1132は、進入道路リンクID1131によって識別される道路と、脱出道路リンクID1133によって識別される道路とを接続する交差点を識別する情報である。
位置1134は、交差点内の位置を示す情報(例えば座標値)である。
センシング条件1135は、センサの種類及び設置方向等に関する情報であり、センシングデータ400のセンシング条件403に相当する。
センシングデータ1136は、環境センサによって取得された環境情報を含むデータであり、少なくとも、進入道路リンクID1131、脱出道路リンクID1133、位置1134及びセンシング条件1135の組に適合するセンシングデータ400のセンシングデータ400の環境センシングデータ404に相当する情報又はそれを加工することによって得られた情報を含む。
例えば、図11Aの交差点センシングデータ範囲1110を、道路1102から進入して道路1101に脱出する方向に走行する車両220には、進入道路リンクID1131、交差点ノードID1132及び脱出道路リンクID1133としてそれぞれ道路リンク1102、交差点ノード1105及び道路リンク1101を識別する情報を含む交差点参照情報1130のセンシングデータ1136が配信される。このセンシングデータ1136は、道路1102から交差点1105に進入して道路1101に脱出する方向に走行した車両220から取得されたものである。
図12は、本発明の第1の実施形態の自己位置推定補正システムが実行する参照情報の配信処理を説明するフローチャートである。
最初に、車載端末120の参照情報受信部123が、端末側のセンサ条件をデータ配信サーバ100に送信する(ステップ1201)。ここで、センサ条件として、例えば、自車に設置された環境センサ124の種類、設置位置及び設置方向等を示す情報が送信される。
データ配信サーバ100の参照情報送信部104は、送信されたセンサ条件と、参照情報に含まれるセンシング条件(すなわちセンシング条件1124及び1135)とを比較した結果に基づいて、利用可能と判定された参照情報を選択する(ステップ1202)。例えば、データ配信サーバ100は、送信されたセンサ条件と整合する値をセンシング条件1124等として含む道路参照情報1120又は交差点参照情報1130を選択する。
ここで、送信されたセンサ条件の値とセンシング条件1124等の値とが同一である場合に両者が整合すると判定されてもよいし、それらの値が所定の範囲内にある場合(又は所定の関係にある場合)に両者が整合すると判定されてもよい。例えばセンサ条件として環境センサ124の設置位置を示す値が送信された場合、その値を含む所定の範囲内の値をセンシング条件1124等として含む参照情報が選択されてもよい。あるいは、例えばセンサ条件として車両220の種別を示す値が送信された場合、それと同一の値をセンシング条件1124等として含む参照情報が選択されてもよいし、予め定められた関係を満たすセンシング条件1124等を含む参照情報が選択されてもよい。具体的には、種別の異なる車両であっても、それらの車両の形状及び走行の性質等が類似していれば、それらから取得された参照情報も類似していると考えられるため、このような場合には参照情報を流用することを許容してもよい。
なお、道路参照情報1120及び交差点参照情報1130のいずれを選択するかは、車両220の位置情報に基づいて定められてもよい。例えば、車載端末120又はデータ配信サーバ100が車両220の現在地から目的地までの経路を探索する。データ配信サーバ100は、探索の結果として得られた経路上の複数の地点に対応する参照情報を、送信されたセンサ条件及び各地点の座標に基づいて選択してもよい。より詳細には、例えば、探索された経路上の交差点に対応付けられた交差点参照情報1130及び経路上の道路に対応付けられた道路参照情報1120のうち、進入道路リンクID1131、脱出道路リンクID1133及びリンク方向1122が探索された経路と整合し、かつ、センシング条件1124及び1135が自車のセンサ条件と一致する(又は所定の範囲内である)ものが選択される。
ステップ1202において、データ配信サーバ100の参照情報送信部104は、選択した参照情報を車載端末120に送信する。
車載端末120の参照情報受信部123は、データ配信サーバ100から送信された参照情報を受信して参照情報DB142に格納する(ステップ1203)。
以上で参照情報の配信処理が終了する。
図13は、本発明の第1の実施形態の車載端末120が実行する参照情報照合処理を説明するフローチャートである。
図12に示す処理によって参照情報を配信された車載端末120の参照情報照合部128は、自車の位置の推定結果を用いて自車の周辺の道路及び交差点を検索する(ステップ1301)。ここで、自車の位置の推定は、従来の車載ナビゲーションシステム等と同様、自己位置推定部121が位置センサから取得した情報と地図DB141に格納された地図データとを比較することによって実行されてもよい。そして、例えば、推定された自車の現在の位置の周辺の所定の範囲内の道路及び交差点が検索されてもよい。
次に、参照情報照合部128は、検索された道路及び交差点に対応付けられた参照情報(すなわち道路参照情報1120及び交差点参照情報1130)を参照情報DB142から取得する(ステップ1302)。
次に、参照情報照合部128は、ステップ1302において取得した参照情報に含まれるセンシングデータ1125又は1136と、車載端末120の環境センサ124が取得した環境センシングデータとを比較することによって、自車の位置を特定する(同一地点検索処理、ステップ1303)。具体的には、例えば、参照情報照合部128は、参照情報に含まれるセンシングデータ及び環境センサ124が取得した環境センシングデータがいずれもレーザスキャナによる3次元データである場合、取得した複数のセンシングデータと一つの環境センシングデータとの類似度を計算してもよい。このとき、データ全体の類似度ではなく、それぞれのデータの特徴部分の類似度が計算されてもよい。このような類似度の計算は公知の方法によって実行できるため、詳細な説明は省略する。そして、環境センシングデータとの類似度が最も高いと判定されたセンシングデータに対応する位置1123又は1134を、当該環境センシングデータが取得された時刻における自車の位置として特定してもよい。
以上で参照情報照合処理が終了する。
以上の本発明の第1の実施形態によれば、車両220に環境の状況を把握するための環境センサと、位置を推定するための位置センサとが搭載され、それらが取得した情報を含むセンシングデータが、多くの種類の多くの車両220から収集される。位置センサが取得した位置情報は、地図データを用いて十分な時間をかけた処理を行うことによって高精度化される。これによって得られたセンシングデータは、それを取得した車両220がそれを取得するために走行している時点で利用することはできないが、その後、同じ道路を走行する当該車両220又は別の車両220に参照情報として配信することができる。参照情報を受信した車両220は、参照情報を用いて自車の位置を高精度に推定することができる。
さらに、データ配信サーバ100は、取得されたセンシングデータのうち参照情報として適切であり、かつ、配信先の車両220の走行経路及びセンサ条件に適合するものを車両220に配信する。収集されたセンシングデータから、配信される参照情報を選択する処理は、所定の条件に従って自動的に実行される。このため、データのメンテナンスコストを抑えながら、車両220の位置推定精度を向上させることができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態のうち、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略する。
図14は、本発明の第2の実施形態の自己位置推定補正システムの構成を示すブロック図である。
本実施形態のデータ配信サーバ1400は、外部情報送信部105をさらに備えること、及び、ネットワーク151を介して外部情報サーバ160に接続されること、を除いて、第1の実施形態のデータ配信サーバ100と同等である。
外部情報サーバ160は、例えば気象情報等を配信するサーバであり、通常のいわゆるWebサーバ等によって実現できるため、これに関する詳細な説明は省略する。
ネットワーク151は、外部情報サーバ160とデータ配信サーバ1400との通信を可能にするものである限りいかなる種類のものであってもよい。図14にはネットワーク151をネットワーク150から独立したものとして表示しているが、これらは同一のものであってもよい。
外部情報送信部105の処理については後述する。
本実施形態の車載端末1420は、環境センサ124がカメラであること、及び、カメラ画像処理部129及びヘッドライト(すなわち照明装置)130をさらに備えること、を除いて、第1の実施形態の車載端末120と同等である。これらの各部については後述する。
環境センサ124がカメラである場合、センシングデータは、環境情報として、カメラが撮影した画像のデータを含む。レーザスキャナが取得した3次元データと比較すると、カメラが撮影した画像は、被写体の周囲の明るさ及び光線の方向等の影響を受けやすい。例えば、同一地点から同一対象物を朝と夕方にそれぞれ撮影した場合、朝と夕方では光線の方向や色が異なるため、それによって、撮影された画像の特徴が異なる。同様に、撮影した時点の天候、及び、撮影したときにヘッドライト130を点灯していたか否か、等によっても、撮影された画像の特徴が異なる。
第2の実施形態では、センシングデータに撮影の状況(天候等)が追加される。一方、参照情報の配信を受ける車載端末1420は、現在の状況を取得し、その状況に適合するセンシングデータが参照情報として利用される。
さらに、参照情報と現在のセンシングデータとを比較するときに、後述する画像処理の結果が使用されてもよい。
画像に影響を与える周囲の状況としては種々のものが考えられるが、例えば、天候のほか、日照条件(日照の有無及び光線の方向等)、周囲の車両又は歩行者の数などが挙げられる。このため、外部情報サーバ160がデータ配信サーバ1400に提供する情報は、気象情報のほか、日照条件を示す情報(日の出・日没の時刻の情報)、渋滞情報及びイベント情報等を含んでもよい。渋滞情報からは自車の周囲の車両の混雑を、イベント情報からは自車の周囲の歩行者の混雑を推定することができる。
本実施形態のデータ配信サーバ1400及び車載端末1420のハードウェア構成は、それぞれ、第1の実施形態のデータ配信サーバ100及び車載端末120と同様であるため、詳細な説明を省略する。データ配信サーバ1400の外部情報送信部105は、プロセッサ201がメインメモリ202に格納されたプログラムを実行することによって実現される。車載端末1420のカメラ画像処理部129は、プロセッサ211がメインメモリ212に格納されたプログラムを実行することによって実現される。ヘッドライト130は、車両220に取り付けられた機器であり、車載端末1420を構成する計算機とケーブル等によって接続されてもよい。これによって車載端末1420は、ヘッドライト130が点灯しているか否かを知ることができる。
外部情報サーバ160のハードウェア構成についても図示を省略する。外部情報サーバ160は、例えば一般的なWebサーバ等であってもよく、データ配信サーバ1400と同様の一般的な計算機のハードウェアによって実現することができる。
本実施形態の自己位置推定補正システムは、第1の実施形態と同様、センシングデータ集積処理(ステップ1)、参照情報生成処理(ステップ2)及び参照情報配信処理(ステップ3)を実行する(図3A〜図3C参照)。ただし、本実施形態において実行される各ステップは、下記の点で第1の実施形態と異なる。まず、ステップ1において、集積される環境センシングデータが第1の実施形態において集積されるものと異なり、このためにセンシング条件も第1の実施形態のセンシング条件403と異なる可能性がある(図15A及び図15B参照)。参照情報生成処理(ステップ2)によって生成される参照情報は、センシングの状況を示す情報(例えば天候の情報等)を含む(図16A及び図16B参照)。参照情報配信処理(ステップ3)では、センシングの状況を示す情報を使用したフィルタ処理が行われる(図17参照)。
図15Aは、本発明の第2の実施形態の車載端末1420が送信するセンシングデータの説明図である。
センシングデータ集積処理(ステップ1)において車載端末1420からデータ配信サーバ1400に送信されるセンシングデータ1500は、例えば、位置センサデータ1501、時刻1502、センシング条件1503及び環境センシングデータ1504を含む。これらは、それぞれ、第1の実施形態のセンシングデータ400に含まれる位置センサデータ401、時刻402、センシング条件403及び環境センシングデータ404と同様であるため、説明を省略する。ただし、本実施形態の環境センサ124の種類(カメラ)は、第1の実施形態の環境センサ124の種類(レーザスキャナ)と異なるため、それに応じてセンシング条件1503がセンシング条件403と異なってもよい。また、環境センシングデータ1504は、カメラが撮影した画像データを含む。
図15Bは、本発明の第2の実施形態において送信されるセンシングデータ1500に含まれるセンシング条件1503の説明図である。
図15Bには、環境センサ124がカメラである場合のセンシング条件1503の例を示す。この場合、センシング条件1503は、例えばカメラの設置位置、設置方向、画角(言い換えるとカメラによって撮影される範囲)及び解像度等を含む。レーザスキャナの設置位置は、例えば地表からレーザスキャナの設置位置までの高さ、及び車両220の先端からレーザスキャナの設置位置までの距離等を含んでもよい。設置方向は、例えばレーザスキャナの水平面内の方向及び仰角等を含んでもよい。
上記のようなセンシング条件1503は、第1の実施形態のセンシング条件403と同様の目的で使用される。また、第1の実施形態と同様、センシングデータ1500がセンシング条件1503の代わりに環境センサ124のIDを含み、それに基づいてセンシング条件が特定されてもよい。
図16Aは、本発明の第2の実施形態において配信される道路参照情報の説明図である。
図16Aに示す道路参照情報1620は、道路リンクID1621、リンク方向1622、位置1623、センシング条件1624及びセンシングデータ1626を含む。これらは、それぞれ、第1の実施形態の道路参照情報1120の道路リンクID1121、リンク方向1122、位置1123、センシング条件1124及びセンシングデータ1125と同様であるため(図11B参照)、説明を省略する。
本実施形態の道路参照情報1620は、さらに、計測条件1625を含む。これは、センシングの状況を示す情報、例えば、センシングデータが取得された時点のその地点の気象条件(天候)を示すコード値等を含む。
例えば、本実施形態の参照情報生成部103は、センシングデータ1500の位置センサデータ1501及び1502を参照して、当該センシングデータ1500が取得された位置及び時刻を特定し、それらの位置及び時刻における天候等、センシングの状況を示す情報を外部情報サーバ160から取得する。そして、取得した情報を計測条件1625として保持する。
計測条件1625の別の例は、日照条件、渋滞情報及びイベント情報等である。
計測条件1625は、ヘッドライト130の点灯状況を示す情報、例えば、点灯の有無及びハイビーム/ロービームの区別を示す情報を含んでもよい。このような情報は、車両220から取得される。
図16Bは、本発明の第2の実施形態において配信される交差点参照情報の説明図である。
図16Bに示す交差点参照情報1630は、進入道路リンクID1631、交差点ノードID1632、脱出道路リンクID1633、位置1634、センシング条件1635及びセンシングデータ1637を含む。これらは、それぞれ、第1の実施形態の交差点参照情報1130の進入道路リンクID1131、交差点ノードID1132、脱出道路リンクID1133、位置1134、センシング条件1135及びセンシングデータ1136と同様であるため(図11C参照)、説明を省略する。
本実施形態の交差点参照情報1630は、さらに、計測条件1636を含む。計測条件1636は、道路参照情報1620の計測条件1625と同様である。
なお、図16A及び図16Bではセンシング条件と計測条件とを独立に扱っているが、これらをまとめてセンシング条件として扱ってもよい。
図17は、本発明の第2の実施形態の車載端末1420が実行する参照情報照合処理を説明するフローチャートである。
ステップ1701、1702及び1705は、それぞれ、第1の実施形態の参照情報照合処理のステップ1301、1302及び1303と同様であるため、説明を省略する。ただし、ステップ1702では、図16A及び図16Bに示す道路参照情報1620及び交差点参照情報1630が取得される。
ステップ1702において参照情報が取得されると、車載端末1420の参照情報照合部128は、計測条件フィルタ処理を実行する(ステップ1703)。具体的には、例えば取得した参照情報が気象条件を示すコードを含む場合、参照情報照合部128は、外部情報サーバ160から現在の気象条件を示すコードを取得し、これらを比較する。そして、参照情報照合部128は、取得した参照情報から、現在の気象条件に整合するもののみを選択する。
参照情報が現在の気象条件に整合するか否かは、予め設定された判定条件に従って判定されてもよい。通常は、現在の天候と同一の天候下で取得された参照情報を同一地点検索処理(ステップ1705)に使用することが望ましいが、天候が同一でなくても使用できる場合がある。例えば、曇りの日に取得された参照情報を雨の日の同一地点検索処理に使用することができるのであれば、計測条件1625又は1636として曇天を示すコードを含む参照情報が雨天に整合すると判定されるように、判定条件を設定してもよい。計測条件フィルタ処理において気象条件以外の計測条件が参照される場合にも同様である。例えば、計測条件1625等がヘッドライト130の点灯状況を示す情報を含む場合、その情報と現在の点灯状況とが比較されてもよい。
次に、参照情報照合部128は、選択された参照情報に含まれる画像について、画像処理を実行する(ステップ1704)。ここで実行される画像処理は、例えば二値化又はエッジ抽出など、画像の特徴量を抽出するための公知の処理である。
次に、参照情報照合部128は、ステップ1704において処理された画像を用いて、同一地点検索処理を実行する(ステップ1705)。
以上で参照情報照合処理が終了する。
以上の本発明の第2の実施形態によれば、参照情報が取得されたときの計測条件(例えば気象条件)が記録され、現在の計測条件に整合する参照情報が使用される。これによって、車両220の位置推定精度を向上させることができる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態のうち、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略する。
図18は、本発明の第3の実施形態の自己位置推定補正システムの構成を示すブロック図である。
本実施形態のデータ配信サーバ100は、第1の実施形態と同じである。
本実施形態の車載端末1820は、自律走行計画策定部131及び自律走行制御部132をさらに備えることを除いて、第1の実施形態の車載端末120と同等である。
本発明の第1及び第2の実施形態におけるセンシングデータ集積処理(図3Aのステップ1)は、基本的に、人が車両220を運転することによって実行された。特に、車載端末120等が位置センサから取得できる位置情報の精度が十分に高くないため、参照情報が蓄積されていない時点では、人が車両220を運転する必要があった。
しかし、取得できる位置情報の精度が十分でない場合であっても、車両220の走行速度を十分に低い値に制限するなどの方法によって、自律走行を行える場合がある。本実施形態の車載端末1820は、まだ参照情報が蓄積されていない道路又は交差点が残っている場合に、それらの道路等を走行する走行計画を策定し、その計画に沿って車両220の自律走行を制御する。ここで、まだ参照情報が蓄積されていない道路又は交差点とは、まだセンシングデータが取得されていない道路又は交差点のほか、センシングデータは取得されたが、それが参照情報として不適切と判定された道路又は交差点を含んでもよい。
具体的には、自律走行計画策定部131が地図DB141を参照して、まだ参照情報が蓄積されていない道路等を走行経路として含む走行計画を策定する。道路又は交差点に対応する参照情報が蓄積されているか否かは、参照情報DB113に格納された参照情報の道路リンクID1121、進入道路リンクID1131及び脱出道路リンクID1133等を参照することによって判定できる。例えば、車載端末1820が自車の現在位置をデータ配信サーバ100に通知し、データ配信サーバ100が、地図DB112及び参照情報DB113を参照して、通知された現在位置を含む所定の範囲の道路等のうち参照情報がまだ蓄積されていない道路等のIDを車載端末1820に送信してもよい。
車載端末1820の自律走行計画策定部131は、データ配信サーバ100から受信したIDに基づいて、参照情報がまだ蓄積されていない一つ以上の道路等を経由する経路を走行する走行計画を策定する。この処理(自律走行軌道生成処理)については、図19を参照して後述する。このとき、上記の所定の範囲内の、参照情報がまだ蓄積されていない全ての道路等を経由する経路を走行するように、走行計画を策定することが望ましい。なお、この走行計画の策定のための補助情報をデータ配信サーバ100から受け取るようにしてもよい。たとえば、参照情報がまだ蓄積されていない一つ以上の道路等を経由する経路を走行経路の候補として受け取るようにしてもよい。
自律走行制御部132は、策定された走行計画に従って、定められた経路を走行するように、車両220の走行を制御する。このとき、自律走行制御部132は、自車の現在位置を特定するために位置センサからの情報しか使用できないため、現在位置の精度が低いことに起因する衝突等の事故を防ぐために、走行速度を十分に低い値に制限することが望ましい。
本実施形態の車載端末1820のハードウェア構成は、それぞれ、第1の実施形態の車載端末120と同様であるため、詳細な説明を省略する。車載端末1820の自律走行計画策定部131及び自律走行制御部132は、プロセッサ211がメインメモリ212に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
図19は、本発明の第3の実施形態の自律走行計画策定部131が実行する自律走行軌道生成処理の説明図である。
例えば、図19に細い実線で示す道路ネットワーク1901のうち、太い実線で表示された道路1902について参照情報がまだ蓄積されていない場合、自律走行計画策定部131は、これらの道路1902を経由する経路1903を自律走行によって走行する軌道として決定する。このような経路1903はどのような方法で決定されてもよいが、例えばいわゆる巡回セールスマン問題の解法として知られる公知の方法のように、全ての道路1902を経由しながら、走行する距離が最短になる(又は走行に要する時間が最短になる)経路の決定方法を採用することが望ましい。
自律走行制御部132は、このようにして決定された経路1903を走行するように車両220の走行を制御する。車載端末1820の環境センサ124は道路1902を走行中にセンシングデータを取得してデータ配信サーバ100に送信する。データ配信サーバ100の参照情報生成部103は、取得されたセンシングデータが参照情報として適切である場合に、これを道路1902に対応する参照情報として参照情報DB113に格納する。以後、道路1902を走行する車載端末1820の自律走行制御部132は、道路1902に対応する参照情報を使用して、より高精度な自車の位置に基づく自律走行の制御を行うことができる。
なお、図1及び図14では省略されているが、第1の実施形態の車載端末120及び第2の実施形態の車載端末1420も自律走行制御部132を備え、位置センサから取得された位置情報及び参照情報に基づく位置情報を用いた自律走行を制御することができる。後述する第4の実施形態の車載端末2020も同様である。
上記の第3の実施形態によれば、車両220を自律走行させることによってセンシングデータを収集し、それを参照情報として利用することができるため、データの収集コストを抑えることができる。
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態のうち、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略する。
図20は、本発明の第4の実施形態の自己位置推定補正システムの構成を示すブロック図である。
本実施形態のデータ配信サーバ2000は、信頼度情報生成部106をさらに備えること、及び、参照情報DB113に格納される参照情報が信頼度情報生成部106によって生成された信頼度情報を含むこと(図22A及び図22B参照)を除いて、第1の実施形態のデータ配信サーバ100と同等である。
本実施形態の車載端末2020は、車両制御装置センサ133をさらに備えることを除いて、第1の実施形態の車載端末120と同等である。車両制御装置センサ133は、車両の制御に使用される装置(例えば加速装置、制動装置及び操舵装置等)による制御の量を検出する。
本実施形態のデータ配信サーバ2000及び車載端末2020のハードウェア構成は、それぞれ、第1の実施形態のデータ配信サーバ100及び車載端末120と同様であるため、詳細な説明を省略する。データ配信サーバ2000の信頼度情報生成部106は、プロセッサ201がメインメモリ202に格納されたプログラムを実行することによって実現される。車両制御装置センサ133は、例えば、車両220の種々の制御装置に取り付けられた機器であり、車載端末2020を構成する計算機とケーブル等によって接続されてもよい。
図21は、本発明の第4の実施形態の自己位置推定補正システムが実行する信頼度収集処理を説明するシーケンス図である。
最初に、データ配信サーバ2000は、信頼度が付与された参照情報を車載端末2020に送信する(ステップ2101)。ここで送信される参照情報については後述する(図22A及び図22B参照)。
車載端末2020は、受信した参照情報を、信頼度に基づいて使用し(ステップ2102)、その使用結果の報告をデータ配信サーバ2000に送信する(ステップ2103)。
データ配信サーバ2000は、受信した使用結果の報告に基づいて、参照情報に付与された信頼度を更新する(ステップ2104)。
以上で信頼度収集処理が終了する。この処理の詳細については後述する。
図22Aは、本発明の第4の実施形態において配信される道路参照情報の説明図である。
図22Aに示す道路参照情報2210は、道路リンクID2211、リンク方向2212、位置2213、センシング条件2214、信頼度2215及びセンシングデータ2216を含む。これらのうち道路リンクID2211、リンク方向2212、位置2213、センシング条件2214及びセンシングデータ2216は、それぞれ、第1の実施形態の道路参照情報1120に含まれる道路リンクID1121、リンク方向1122、位置1123、センシング条件1124及びセンシングデータ1125と同様であるため、これらについての説明は省略する(図11B参照)。
信頼度2215は、道路参照情報2210の信頼度を示す情報であり、例えば整数のコード値である。
図22Bは、本発明の第4の実施形態において配信される交差点参照情報の説明図である。
図22Bに示す交差点参照情報2220は、進入道路リンクID2221、交差点ノードID2222、脱出道路リンクID2223、位置2224、センシング条件2225、信頼度2226及びセンシングデータ2227を含む。これらのうち進入道路リンクID2221、脱出道路リンクID2223、位置2224、センシング条件2225及びセンシングデータ2227は、それぞれ、第1の実施形態の交差点参照情報1130の進入道路リンクID1131、交差点ノードID1132、脱出道路リンクID1133、位置1134、センシング条件1135及びセンシングデータ1136と同様であるため、これらについての説明は省略する(図11C参照)。
信頼度2226は、交差点参照情報2220の信頼度を示す情報であり、例えば整数のコード値である。
第1の実施形態の場合と同様、道路参照情報2210及び交差点参照情報2220は参照情報DB113に格納され、必要に応じて車載端末2020に送信される。
ここで、図20から図22Bを参照して、信頼度の収集及び信頼度に基づく参照情報の利用について説明する。
参照情報生成部103は、センシングデータに基づいて新たな参照情報を生成したとき、その参照情報の信頼度(すなわち信頼度2215又は2226)として所定の値を与える。新たに生成された参照情報には使用実績がないため、この時点では中程度又はそれ以下の信頼度を与えることが望ましい。
データ配信サーバ2000の参照情報送信部104は、信頼度が付与された参照情報を車載端末2020に送信する(ステップ2101)。このとき、参照情報送信部104は、車載端末2020に送信できる参照情報が複数存在する場合、それらのうち、より高い信頼度が付与されたものを優先的に送信してもよい。
車載端末2020は、信頼度に基づいて参照情報を使用する(ステップ2102)。例えば、信頼度に応じて参照情報の使用目的を決定してもよいし、信頼度に応じて参照情報に基づく自律走行の制御方法を変更してもよい。具体的には、例えば、車載端末2020は、所定の閾値より高い信頼度が付与された参照情報のみを自律走行に用いる自車の位置計測に使用し、所定の閾値より低い信頼度が付与された参照情報によって得られた位置は、自律走行以外の用途、例えば車両220のユーザへの警告タイミングの決定などに使用してもよい。あるいは、例えば、所定の閾値より低い信頼度が付与された参照情報を自律走行の際の自車の位置計測に使用する場合、自車の走行速度を所定の値以下に制限してもよい。信頼度が高くなるほど制限速度が高くなるように走行速度を設定してもよい。これによって、使用実績の乏しい参照情報を用いることによる不測の事故の発生を防止することができる。
参照情報を使用した車載端末2020は、その使用結果の報告をデータ配信サーバ2000に送信する(ステップ2103)。この報告は、当該参照情報が適切なものであるか否かを示す情報、例えば、その参照情報を使用することによって問題が発生したか否かを示す情報を含む。参照情報が適切か否かは、例えば次のように評価することができる。
通常、車載端末2020は、自車の現在地から目的地までの経路が決定すると、その経路上を走行するように、自車の速度及び進行方向を制御するための走行計画を策定し、その走行計画に沿って自車の走行を制御する。このとき、車載端末2020は、自車の位置を正確に計測するために、位置センサが取得した位置情報に加えて、環境センサ124が取得したセンシングデータと、データ配信サーバ2000から配信された参照情報とを比較した結果を使用する。
しかし、その走行の途中で例えば車両220が障害物等に遭遇した場合、車載端末2020は走行計画にない制御(例えば障害物を回避するための制動、操舵又は加速等)を行う。このような制御が行われたか否か、及び行われた場合の制御量は、車両制御装置センサ133が取得した情報に基づいて評価することができる。このような制御が例えば歩行者の飛び出しのような突発的な事象に起因する場合には、配信された参照情報に問題があったとはいえないが、例えば同じ参照情報を使用した多くの車両220が走行計画にない制御を行う頻度が高ければ、その参照情報が適切でない可能性が高いと判定できる。このため、ステップ2103における報告は、走行計画と実際の走行との相違の程度を示す情報、具体的には、例えば、上記のような走行計画にない制御の回数又は量等を示す情報を含んでもよい。
この場合、データ配信サーバ2000の参照情報生成部103は、走行計画と実際の走行との相違の程度に応じて、参照情報の信頼度を更新する。例えば、走行計画と実際の走行との相違の程度が所定の値より小さければ、参照情報の信頼度を増加させてもよいし、その相違の程度が所定の値より大きければ、信頼度を低下させてもよい。
また、参照情報は道路等を走行する車両220の周囲の物体(例えば建造物)の3次元形状データ又は画像等を含むが、建造物等は新設又は撤去などによって更新される場合があり、また、道路又は交差点自体の位置又は形状が変更される場合もある。このため、一般に古い参照情報ほど信頼性が低いと考えられる。このため、参照情報生成部103は、参照情報が作成されてからの経過時間が大きいほど低くなるように、参照情報に付与された信頼度を更新してもよい。
参照情報送信部104は、所定の値より低い信頼度が付与された参照情報(例えば極端に古い参照情報又は使用結果が極端に悪かった参照情報)を送信しないように参照情報の配信を制御してもよい。参照情報生成部103は、所定の値より低い信頼度が付与された参照情報を参照情報DB113から削除してもよい。
図23は、本発明の第4の実施形態のデータ配信サーバ100が実行する車線抽出の説明図である。
この車線抽出の処理は、参照情報生成部103が、位置・環境センシング情報評価処理のステップ1002〜1004(図10参照)において、必要に応じて実行する。既に説明したように、位置・環境センシング情報評価処理における走行軌跡の確率モデルへの当てはめは、例えばEM法又は変分ベイズ法などの公知の方法によって実装することができる。一般的には、道路に複数の車線が含まれる場合、走行軌跡の分布は車線と同数のピークを持ち、それぞれのピークがそれぞれの車線を走行する車両の典型軌道に対応する。車線数が既知ではなく、走行軌跡の分布から推定する必要がある場合には、取得された走行軌跡の分布を、いくつのピークを持つ確率モデルに当てはめるのが適切であるかを決定する必要がある。
図23(a)〜図23(c)には、二つの車線(実際の車線)を含む道路の区間2301が長方形の枠によって表示され、二つの車線を区切る車線境界線2302が破線の直線によって表示され、複数の走行軌跡2303が実線の曲線によって表示される。複数の走行軌跡2303は、二つの車線のいずれか一方を走行する車両220の軌跡のほか、一方の車線からもう一方に車線変更しながら走行する車両220の軌跡も含む。
実線の矢印2304は、位置・環境センシング情報評価処理によって抽出された典型軌道の概略の位置及び方向を示す。すなわち、矢印2304は、抽出された車線の数である。
図23(a)には、走行軌跡2303を一つのピークを持つ確率モデル(例えば一つの正規分布)に割り当てた場合に抽出される車線を示す。その結果、矢印2304のような一つの典型軌道のみが抽出される。これは、道路の区間2301において実際の車線数より少ない一つの車線のみが抽出されたことを意味する。このようにして抽出された典型軌道の位置は、二つの車線のいずれを走行する車両220の走行軌跡とも類似しない可能性が高い。例えば図23(a)に示す矢印2304は車線境界線2302に近い。このような典型軌道が抽出された場合、その典型軌道からのずれが最も小さい走行軌跡が、最も典型的な軌道に近い走行軌跡として取得される(図10のステップ1005)。しかし、上記のように、このような走行軌跡は実際の二つの車線のいずれの走行軌跡とも類似しない可能性が高いため、このような走行軌跡を走行した車両220から取得されたセンシングデータを参照情報として使用することは望ましくない。
図23(b)には、走行軌跡2303を二つのピークを持つ確率モデル(例えば二つの正規分布からなる混合正規分布)に割り当てた場合に抽出される典型軌道を示す。その結果、二つの矢印2304のような二つの典型軌道が抽出される。これは、道路の区間2301から、実際の車線数と同じ二つの車線が抽出されたことを意味する。これらの典型軌道の各々は、実際の二つの車線を走行する車両220の最も典型的な軌道であると考えられる。このため、これらの典型軌道からのずれが最も小さい走行軌跡を走行した車両220から取得されたセンシングデータは、参照情報としての利用に適していると考えられる。
図23(c)には、走行軌跡2303を三つのピークを持つ確率モデル(例えば三つの正規分布からなる混合正規分布)に割り当てた場合に抽出される典型軌道を示す。その結果、三つの矢印2304のような三つの典型軌道が抽出される。これは、道路の区間2301から、実際の車線数より多い三つの車線が抽出されたことを意味する。これらの典型軌道のうち一つは、それぞれの車線を走行する場合の典型軌道とは異なるもの、例えば車両220が車線変更するときの軌道を反映していると考えられる。したがって、このような典型軌道からのずれが小さい走行軌跡を走行した車両220から取得されたセンシングデータを参照情報として使用することは望ましくない。
このように、適切な参照情報を取得するためには、適切な車線数に対応する典型軌道を特定する必要がある。例えばAIC(赤池情報量規準)など、公知の評価基準に基づいて、適切な車線数(具体的には、当てはめられる確率モデルのピークの数など)を決定することができる。
上記のようにして決定された車線に関する情報は、道路参照情報2210及び交差点参照情報2220に格納される。具体的には、例えば道路参照情報2210の道路リンクID2211として、道路だけでなく車線まで特定するIDが格納される。交差点参照情報2220の進入道路リンクID2211及び脱出道路リンクID2223についても同様である。これによって、走行車線に応じた高精度な車両220の位置情報を取得することができる。
上記のような車線の抽出は、第1〜第3の実施形態において行われてもよい。
以上の本発明の第4の実施形態によれば、信頼度の高い参照情報を優先的に配信し、信頼度の低い参照情報を配信せざるを得ない場合には走行速度を制限するなどの方法によって、車両220の位置推定精度及び安全性を向上させることができる。