JP5286123B2 - バクテリオファージの検出方法 - Google Patents

バクテリオファージの検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)を含む複数種類の乳酸菌を含むサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージを検出する検出方法に関する。
従来、ヨーグルト、チーズ等の乳酸菌を利用した発酵乳製品の製造において、バクテリオファージの乳酸菌への感染と、それに伴う溶菌が、酸生成の低下や発酵の遅延、発酵乳製品の製造の失敗等を惹起することが知られている。
そのため、発酵乳製品の製造においては、バクテリオファージの乳酸菌への感染を防止することが重要となる。該感染を防止するための施策としては、カルチャー及びスターターの無菌的取扱い、施設(工場、試験室等)内や使用原料の厳密な殺菌操作、多菌株カルチャーの使用、カルチャーの交代、ファージ耐性菌株の導入等が知られている(非特許文献1参照。)。
また、上記のような発酵不良を防止するうえで、バクテリオファージの検出も重要となる。従来、バクテリオファージの検出方法としては、検出対象のバクテリオファージに対応する宿主細菌を寒天重層法により培養し、プラークを形成させて観察するのが一般的である(たとえば非特許文献2〜4参照)。
すなわち、バクテリオファージは、宿主細菌に感染(宿主細菌の細胞壁への吸着→遺伝子の細胞内注入)すると、細胞内で増殖し、宿主細菌の溶菌を生じさせる。培地上、宿主細菌が存在する部分は濁った不透明な状態だが、溶菌が生じると、その部分が透明となる。この透明な部分がプラークである。
寒天重層法は、菌の生育の栄養源を含む平板培地(下層)上に、プラーク形成用の上層(宿主細菌を加えた軟寒天培地)を積層して培養を行う方法である。軟寒天培地は、寒天含量が0.5%程度(通常の寒天平板培地の寒天含量は1.5%程度)の培地であり、かかる軟寒天培地を用いることで、溶菌により放出されたバクテリオファージが当該培地中を移動可能となっている。
そのため、寒天重層法では、溶菌により細胞外へ放出されたバクテリオファージがさらに周囲の宿主細菌に感染し、上記一連の過程が繰り返されることで、プラークが大きくなっていき、肉眼での検出が可能となる。
曽根敏麿監訳、「ヨーグルト」、第30〜32頁、第170頁、実業図書株式会社、1986年4月10日発行。 社団法人日本化学会編、「第5版 実験化学講座29 バイオテクノロジーの基本技術」、第104〜105頁、丸善株式会社、平成18年7月25日発行。 農芸化学学会誌、第43巻第5号、第311〜316頁、1969年発行。 農芸化学学会誌、第39巻第12号、第472〜476頁、1965年発行。
発酵乳製品の製造現場においては、発酵不良等を防止するために、また、発酵不良に至らないような低濃度の段階でバクテリオファージを検出し、その感染拡大を防止するためにも、随時、種々のサンプルについて、バクテリオファージを高感度かつ迅速に検出できることが求められる。しかしながら、従来の寒天重層法を利用した検出方法は、煩雑な操作を要するため、検出に時間がかかり、実用に適していない。
操作の簡便な培養方法の1つとして、サンプルを平板寒天培地上に塗布して培養する塗布培養法(平板塗沫法ともいう。)がある。しかし、本発明者らの検討によれば、従来、乳酸菌の培養に用いられている平板寒天培地を用いて上記のようなバクテリオファージの検出に適用しようとしても、明瞭なプラークが形成されず、検出感度が低い問題がある。検出感度が低いと、バクテリオファージの定量的な検出や、汚染レベルの把握、発酵不良の原因追及等は困難である。この問題は、特に、サンプルに複数種類の乳酸菌が含まれる場合に顕著である。たとえばヨーグルトやチーズの製造においては、一般的に、スターターとして複数菌種の乳酸菌が併用されているが、このようなスターターを用いた発酵乳製品の製造過程においてバクテリオファージの検出を行おうとしても、明瞭なプラークは形成されない。
さらに、これらの方法では、サンプル中に複数種類の乳酸菌が含まれる場合、それらのうちの特定の乳酸菌に感染するバクテリオファージの特異的に検出することは困難である。たとえば、乳酸菌球菌の一種であるラクトコッカス・ラクチスは、チーズやヨーグルトの製造に非常によく使用されている菌種であり、その汎用性の影響もあって、製造現場でラクトコッカス・ラクチスへのバクテリオファージ感染が発生しやすい。そのため、その感染対策が特に重要となっているが、複数種類の乳酸菌が含まれるサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージを特異的に検出することは難しい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数種類の乳酸菌を含むサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージを簡便、迅速、高感度かつ特異的に検出できる検出方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を行った結果、所定量の塩化ナトリウムを培地に添加した場合、培養を塗布培養法により行っても、明瞭なプラークが形成され得ることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決する本発明は以下の態様を有する。
[1]ラクトコッカス・ラクチスと、それ以外の他の乳酸菌とを含有するサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージを検出する検出方法であって、
前記サンプルを、塩化ナトリウムを2質量%以上6質量%以下含有する寒天平板培地上に塗布し、培養を行った後、該寒天平板培地表面のプラークの有無を肉眼にて観察することを特徴とする検出方法。
[2]前記培養を、20〜37℃で5〜16時間行う[1]に記載の検出方法。
[3]前記ラクトコッカス・ラクチスが、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスおよびラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスからなる群から選択される少なくとも1種である[1]または[2]に記載の検出方法。
[4]前記他の乳酸菌として、ラクトバチルス属菌およびストレプトコッカス属菌からなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]〜[3]のいずれか一項に記載の検出方法。
本発明によれば、複数種類の乳酸菌を含むサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージを簡便、迅速、高感度かつ特異的に検出できる検出方法を提供できる。
試験例2の結果のうち、ラクトコッカス・ラクチスFERM BP−10746株に感染するバクテリオファージの検出結果を示す写真である。 試験例3の結果のうち、M17平板使用、培養温度25℃での検出結果を示す写真である。 試験例3の結果のうち、標準寒天平板使用、培養温度25℃での検出結果を示す写真である。
本発明の検出方法では、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)と、それ以外の他の乳酸菌とを含有するサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージ(以下、検出対象ファージということがある。)を検出する。
本発明の検出方法では、まず、前記サンプルを、塩化ナトリウムを2質量%以上含有する寒天平板培地上に塗布する。塩化ナトリウムの含有量が2質量%未満であると、他の乳酸菌の増殖が完全には抑えられず、本発明の効果が充分に得られない。これらの観点から、該含有量は、3質量%以上が好ましい。
該含有量の上限は、検出対象のサンプルに含まれるラクトコッカス・ラクチスの耐塩性等を考慮して適宜設定すればよい。通常、6質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。該含有量が6質量%を超えると、ラクトコッカス・ラクチスの増殖が抑制されるおそれがある。
ここで、塩化ナトリウムの含有量は、寒天平板培地の総質量に対する割合を示す。以下、「質量%」を「%(w/w)」と記載することがある。
本発明に用いる寒天平板培地の、塩化ナトリウム以外の組成は、ラクトコッカス・ラクチスが増殖可能であれば特に限定されず、乳酸球菌の培養に通常用いられている培地と同様であってよい。かかる培地としては、たとえば、M17ブロス(M17 BROTH)(Difco(登録商標)製品、ベクトン・ディッキンソン社製)に寒天を配合したものや、M17寒天培地(M17 AGAR)(Difco(登録商標)製品、ベクトン・ディッキンソン社製)、標準寒天培地(極東製薬株式会社製)等が挙げられる。これらの培地は、寒天平板培地を作製する際、殺菌処理が施されていることが好ましい。該殺菌処理は、通常用いられる方法、たとえば、メーカー推奨の121℃で15分間程度の加熱処理により行うことができる。
前記寒天平板培地には、塩化ナトリウム以外に、必要に応じて、ラクトコッカス・ラクチスの生育を促進する成分、たとえば、グルコース、乳糖、酵母エキスなどを添加してもよい。また、ファージの感染を促進する成分として、カルシウム塩、たとえば塩化カルシウムを添加することが望ましい。塩化カルシウムの添加量は、培地中のモル濃度が、0.01M(mol/dm)前後となる量が望ましい。
前記寒天平板培地は、これらの培地に所定量の塩化ナトリウムおよびその他の任意成分を配合する以外は常法により作製できる。
前記寒天平板培地に塗布するサンプルとしては、ラクトコッカス・ラクチスと、それ以外の他の乳酸菌とを含有するものが用いられる。
ラクトコッカス・ラクチスとしては、特に限定されず、たとえば従来、発酵乳製品の製造に用いられているもののなかから任意に選択できる。具体的には、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ジアセチルラクチス等が挙げられる。これらの中でも、乳中での発酵性や風味などの点から、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスおよびラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これらのうち、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスの菌株としては、たとえば、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスATCC19435株(標準株)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスFERM BP−10746株、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスFERM BP−10757株等が挙げられる。
また、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスの菌株としては、たとえば、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625株、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC11602株、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスP−21490株等が挙げられる。
ラクトコッカス・ラクチス以外の他の乳酸菌としては、特に限定されず、たとえば発酵乳製品の製造に用いられている乳酸菌のなかから任意に選択できる。
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「乳酸菌」は、発酵によって糖を50質量%以上の乳酸に変換する細菌を示す。
該他の乳酸菌としては、たとえば、ラクトバチルス属菌(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus)、ビフィドバクテリウム属菌(Bifidobacterium)等が挙げられる。
ラクトバチルス属菌としては、公知のもののなかから適宜選択でき、たとえばラクトバチルス・ブルガリクス等が挙げられる。
ストレプトコッカス属菌としては、公知のもののなかから適宜選択でき、たとえばストレプトコッカス・サーモフィリス等が挙げられる。
ビフィドバクテリウム属菌(ビフィズス菌)としては、公知のもののなかから適宜選択でき、たとえばビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・インファンチス、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ラクティス等が挙げられる。
本発明においては、サンプルが、前記他の乳酸菌として、ラクトバチルス属菌およびストレプトコッカス属菌からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、なかでも、ストレプトコッカス・サーモフィリスおよびラクトバチルス・ブルガリクスからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの乳酸菌は、塩化ナトリウムを2%以上含む培地上ではほとんど生育しないため、本発明の有効性が高い。
前記寒天平板培地に塗布するサンプルとして、具体的には、ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料等の発酵乳製品の製造に用いられているスターター、該スターターを発酵乳製品のベース(発酵用ベース)に接種したもの、これを発酵させて発酵乳製品とする際の発酵過程のもの、発酵終了後、冷却した製品等が挙げられる。
前記発酵用ベースとしては、発酵乳製品の製造に通常用いられるものであってよく、たとえば牛乳、脱脂乳、生クリーム、バター、全粉乳、脱脂粉乳等に、必要に応じて、蔗糖等の甘味料、ペクチン、果実、フルーツジュース、寒天、ゼラチン、油脂、香料、着色料、安定剤、還元剤等を配合し、常法に従って殺菌、均質化、冷却等することにより調製することができる。
これらのサンプルは、そのまま寒天平板培地上に塗布してもよく、また、必要に応じて、生理食塩水等の希釈液中に分散させ、懸濁液として塗布してもよい。
サンプルの塗布は公知の方法、たとえばガラスのコンラージ棒または市販のガンマ線滅菌コンラージ棒(日水製薬社製)を用いて実施できる。
培養温度は、検出対象のサンプルに含まれているラクトコッカス・ラクチス菌株の増殖に適した温度であればよい。具体的には、20〜37℃が好ましく、25〜30℃がより好ましい。
培養時間は、培養温度によっても異なるが、たとえば培養温度が20〜37℃の場合、5〜16時間が好ましく、8〜16時間がより好ましい。5時間以上培養すれば、サンプル中に検出対象ファージが含まれていた場合に、該ファージによるプラークが肉眼で検出可能な大きさで形成される。16時間を超えることは、迅速性の点で好ましくない。
このようにして培養を行った後、該寒天平板培地を肉眼にて観察する。このとき、サンプル中に検出対象ファージ、つまりラクトコッカス・ラクチスに感染して溶菌を引き起こすバクテリオファージが存在していた場合は、該寒天平板培地の表面にプラークが形成される。そのため、該寒天平板培地表面のプラークの有無を観察することで、検出対象ファージによる汚染の有無を高感度かつ特異的に判断できる。
つまり、サンプル中に複数の乳酸菌が含まれていても、ラクトコッカス・ラクチス以外の乳酸菌は当該寒天平板培地で生育せず、ラクトコッカス・ラクチスのみが生育する。そのため、培養後に形成されるプラークは、該ラクトコッカス・ラクチスの溶菌を引き起こすバクテリオファージによるものであり、該プラークを計測することで、検出対象ファージを特異的に検出できる。
次に、試験例および実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<試験例1(各種乳酸菌の耐塩性の評価)>
[寒天平板培地の作製]
以下の手順で2種の寒天平板培地(M17平板、標準寒天平板)を作製した。
M17平板:M17ブロス(M17 BROTH)(Difco(登録商標)製品、ベクトン・ディッキンソン社製)にグルコース、乳糖および寒天を配合して、0.5%(w/w)のグルコース、0.5%(w/w)の乳糖、および1.5%(w/w)の寒天を含むM17培地を調製した。該M17培地に、塩化ナトリウムを所定量(0、1、2、3、4、5または6%(w/w))添加し、121℃で15分間滅菌した。滅菌後、該培地を55℃に保温し、ここに、121℃で15分間滅菌した塩化カルシウム溶液(1モル濃度)を、培地(100質量%)に対して1質量%添加した。これを、直径9cmのプラスティック製滅菌シャ−レに、1枚あたり15〜20mL分注し、室温(25℃前後)に冷却することで、M17平板を作製した。
標準寒天平板:前記M17培地の代わりに、0.1(w/w)%の酵母エキスを含む標準寒天培地(極東化学社製)を用いた以外は前記M17平板と同様の手順で標準寒天平板を作製した。
[各種乳酸菌の培養菌液の調製]
乳酸菌として、以下の4種6菌株を用意した。これらは、醗酵乳製品に一般的に用いられている乳酸菌種である。
(1)ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)ATCC19435株(標準株)、FERM BP−10746株、FERM BP−10757株。
(2)ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)ATCC9625株。
(3)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)ATCC19258株(標準株)。
(4)ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)ATCC11842株(標準株)。
これらの菌株を、それぞれ、酵母エキス0.1%(w/w)含有10%(w/w)脱脂粉乳還元培地(115℃15分滅菌)にて、25〜37℃で、pHが4.6前後となるまで培養することにより、各菌株の純粋培養菌液を得た。
[試験方法]
上記各菌株の純粋培養菌液0.1mlを、上記2種の寒天平板培地上に、コンラージ棒を用いて均一に塗布し、37℃で16時間培養した。
培養後、各寒天平板培地を肉眼で観察し、各菌株の生育状態を下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
+++:よく生育している。
++:ややよく生育している。
+:弱く生育している。
±:ほとんど生育していない。
−:全く生育していない。
[試験結果]
試験結果を表1に示す。表1に示すとおり、ラクトコッカス・ラクチスの各菌株は、M17平板および標準寒天平板のいずれの培地でも、また、塩化ナトリウムを2%以上含有する場合でも、よく生育し、菌株によっては6%でも生育した。
一方、ストレプトコッカス・サーモフィルスの各菌株は、塩化ナトリウムにより増殖が抑制され、塩化ナトリウムを2%以上含有する場合はほとんど生育しなかった。
また、ラクトバチルス・ブルガリクスの菌株は、M17平板では全く生育せず、標準寒天平板でも、塩化ナトリウムを2%以上含有する場合は全く生育しなかった。
なお、菌株として、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株を用いた以外は上記と同様の試験を行ったところ、M17平板および標準寒天平板のいずれの培地でも、全く生育しなかった。
<試験例2(塗布培養法と寒天重層法との比較)>
[寒天平板培地の作製]
塩化ナトリウムの添加量が0%(無添加)または3%のM17平板および標準寒天平板を、それぞれ、試験例1と同様の手順で作製した。
[各種乳酸菌の培養菌液の調製]
ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスFERM BP−10746株、FERM BP−10757株それぞれの純粋培養菌液を、試験例1と同様の手順で調製した。
[ファージ液の調製]
森永乳業(株)の製造工場で分離した、FERM BP−10746株に感染するバクテリオファージ(以下、ファージAという。)を、生理食塩水で適当な濃度まで希釈して、ファージA液を調製した。
また、森永乳業(株)の製造工場で分離した、FERM BP−10757株に感染するバクテリオファージ(以下、ファージBという。)を、生理食塩水で適当な濃度まで希釈して、ファージB液を調製した。
[試験方法]
(1)塗布培養法による培養:
前記ファージA液またはファージB液と、FERM BP−10746株の純粋培養菌液またはFERM BP−10757株の純粋培養菌液とを、それぞれ、1:1(質量比)で混合し、得られた混合液を、それぞれ、前記M17平板または標準寒天平板上に、コンラージ棒を用いて均一に塗布し、30℃で16時間培養した。
培養後、形成されたプラークの肉眼での観察およびプラーク数の測定を行った。
(2)寒天重層法による培養(対照):
M17ブロス(M17 BROTH)(Difco(登録商標)製品、ベクトン・ディッキンソン社製)にグルコース、乳糖および寒天を配合して、0.5%(w/w)のグルコース、0.5%(w/w)の乳糖および0.5%の寒天を含有するM17培地を調製し、121℃で15分間滅菌した。滅菌後、該培地を55℃に保温し、ここに、121℃で15分間滅菌した塩化カルシウム溶液(1モル濃度)を1%添加することにより上層培地を調製した。該上層培地を3mlずつ滅菌試験管に分注した。そこに、前記FERM BP−10746株の純粋培養菌液またはFERM BP−10757株の純粋培養菌液の0.2mlと、前記ファージA液またはファージB液の0.1mlとを添加、混合し、その後すぐに前記M17平板(塩化ナトリウム無添加のもの)上に流し込み、均一に重層させた。上層培地が固まった後、30℃で16時間培養した。
培養後、形成されたプラークの肉眼での観察およびプラーク数の測定を行った。
同様の操作を3回行い、それらの平均値と誤差を求めた。
[試験結果]
プラーク数の測定結果を表2に示す。
また、ファージA液とFERM BP−10746株の純粋培養菌液とを混合した例について、培養後の各平板を上方から撮像した。得られた写真(各平板の状態が実際に肉眼で見える様子を示す写真)を図1に示す。図1中、図1(a)が、寒天重層法により培養した結果を示す写真である。また、図1(b)が、M17平板(NaCl無添加および3%添加)を用いて、塗布培養法により培養した結果を示す写真であり、図1(c)が、標準寒天平板(NaCl無添加および3%添加)を用いて、塗布培養法により培養した結果を示す写真である。なお、図1には、ファージAとFERM BP−10746株との組み合わせた場合の結果を示しているが、ファージBとFERM BP−10757株との組み合わせについても同様な傾向であった。
これらの結果に示すとおり、塩化ナトリウムを3%添加した寒天平板培地を用いて塗布培養法による培養を行った場合、従来の寒天重層法と同等以上の数のプラークが明瞭に形成され、高感度な検出を行うことが確認できた。一方、塩化ナトリウムを添加しなかった寒天平板培地を用いた場合、明瞭なプラークが形成されず、観察に適していなかった。
また、対照の寒天重層法が、上層培地の調製後、培養を開始するまでに25分間以上を要したのに対して、塗布培養法は、操作が簡便で、各ファージ液と各純粋培養菌液との混合から培養開始までに要する時間が約1分間であり、検出に要する時間を大幅に短縮できた。
<試験例3(複合菌種含有サンプルからのファージ検出)>
塩化ナトリウムの添加量が0%、2%、3%または4%のM17平板および標準寒天平板を、それぞれ、試験例1と同様の手順で作製した。
サンプルとして、森永乳業工場で製造したラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスFERM BP−10746株、ストレプトコッカス・サーモフィルス(ハンゼン株)、ラクトバチルス・ブルガリクス(ハンゼン株)、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株を含む醗酵乳を用意した。
また、試験例2と同様の手順で、ファージA(FERM BP−10746株に感染するバクテリオファージ)液を調製した。
上記サンプルとファージA液とを1:1(質量比)で混合し、各M17平板および標準寒天平板に塗布し、25℃、30℃または37℃で16時間培養した。
培養後、形成されたプラークの明瞭さ(プラークの縁部の明瞭さ)を肉眼で観察し、以下の判定基準で評価した。その結果を表3に示す。
(判定基準)
◎:極めて明瞭なプラークが形成された。
○:明瞭なプラークが形成された。
×:明瞭なプラークが形成されなかった。
また、25℃で培養した例について、培養後の各平板を上方から撮像した。得られた写真(各平板の状態が実際に肉眼で見える様子を示す写真)を図2〜3に示す。図2がM17平板を用いた結果を示す写真であり、図3が標準寒天平板を用いた結果を示す写真である。なお、図2〜3には、25℃で培養した結果を示しているが、30℃、37℃で培養した場合も同様な傾向であった。
これらの結果に示すように、塩化ナトリウムを含有しない培地を用いた場合、表面に菌がよく生育し、明瞭なプラークは形成されなかった。これは、複合菌種を含むサンプルに含有されるラクトコッカス・ラクチス以外の乳酸菌が生育したことにより、実際ラクトコッカス・ラクチスにファージが感染し、形成したプラークを覆ったことによるものと思われる。このようにプラークが明瞭に見えない場合、ファージが存在したとしても、プラークと判定できず、ファージが検出できないことがある。
一方、塩化ナトリウムを2%以上、特に3〜4%含有する培地では、明瞭なプラークが形成されており、複合菌種を含むサンプルからもラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージが高感度に検出できた。
以上詳記したとおり、本発明の検出方法は、従来の寒天重層法を用いた検出方法に比べて、簡便性および迅速性が向上している。また、複数の乳酸菌種を含むサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージを高感度に検出できる。
したがって、本発明の検出方法は、ヨーグルト、チーズ等の、乳酸菌を利用した発酵乳製品の製造現場において、前記バクテリオファージの感染の有無やその程度を検査する上での実用性が高く、たとえばスターターや製造過程の発酵乳製品について、バクテリオファージによる汚染の程度を迅速かつ高感度にモニタリングすることが可能である。そのため、製造現場におけるバクテリオファージによる汚染の防止、汚染の早期発見および拡大防止等を図る上で、大変利用性の高い方法である。

Claims (4)

  1. ラクトコッカス・ラクチスと、それ以外の他の乳酸菌とを含有するサンプルから、ラクトコッカス・ラクチスに感染するバクテリオファージを検出する検出方法であって、
    前記サンプルを、塩化ナトリウムを2質量%以上6質量%以下含有する寒天平板培地上に塗布し、培養を行った後、該寒天平板培地表面のプラークの有無を肉眼にて観察することを特徴とする検出方法。
  2. 前記培養を、20〜37℃で5〜16時間行う請求項1に記載の検出方法。
  3. 前記ラクトコッカス・ラクチスが、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスおよびラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の検出方法。
  4. 前記他の乳酸菌として、ラクトバチルス属菌およびストレプトコッカス属菌からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出方法。
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