JP5284871B2 - センサ及びセンサチップ - Google Patents
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Description
透明な素材で出来た基材とその基材表面に設けた多孔質薄膜とその多孔質薄膜中の細孔内に保持されるガス検出試薬とから構成され検出対象ガスとガス検出試薬との反応により光学特性が変化する光導波路として機能する検出素子、検出素子の一方の端部から入射し検出素子内を伝播される光のための光源、検出素子の他方の端部から放出される光を受ける光検出器、光検出器からの信号を処理する信号処理装置、信号処理装置の出力を表示する表示装置からなるガス検出装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。
また、特許文献2記載のセンサ(糖センサ)や特許文献3記載のセンサ(化学センサ材)は、色変化を目視により判定可能であるが、メソポーラス構造を有する金属酸化物や規則的細孔構造を持つシリカは脆く、取り扱い難いという問題がある。
また、これらのセンサは、十分な感度を得るために前処理や後処理が必要であるなど取り扱いが面倒である。
検出対象物質を検出するセンサにおいて、
前記検出対象物質と選択的に反応する反応物質と、
前記検出対象物質と前記反応物質との反応に基づいて色変化を生じる色素と、
前記反応物質と前記色素とを保持するゲル体と、
複数の細孔を有する反応物質固定化用担体と、
を備え、
前記反応物質は、生体物質であり、前記反応物質固定化用担体が有する細孔の内部に固定化された状態で、前記ゲル体に保持されており、
前記反応物質固定化用担体が有する細孔のサイズは、前記反応物質のサイズの0.5〜2.0倍であることを特徴とする。
請求項1に記載のセンサにおいて、
複数の細孔を有する色素固定化用担体を備え、
前記色素は、前記色素固定化用担体が有する細孔の内部に固定化された状態で、前記ゲル体に保持されており、
前記色素固定化用担体が有する細孔のサイズは、前記色素のサイズの0.5〜2.0倍であることを特徴とする。
請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
当該センサは、略球状に形成されており、
前記ゲル体は、前記検出対象物質と前記反応物質との反応に必要な水分子を含有していることを特徴とする。
センサチップにおいて、
所定の基板と、
前記基板上に配置された請求項1から3の何れか一項に記載のセンサと、
を備えることを特徴とする。
すなわち、センサは、検出対象物質の検出をセンサの色変化によって判定可能であるとともに、脆性が低く壊れ難いゲル体により形成されているため、取り扱い易い。
本実施形態のセンサ10は、検出対象物質の検出に伴い色変化を生じるセンサである。
したがって、ユーザは、例えば、センサ10を試料(気体試料や液体試料)と接触させ、目視により(或いは、分光光度計等の装置を用いて)そのセンサ10の色変化を観察することによって、検出対象物質が試料中に含有されているか否か判定できるようになっている。
ここで、センサ10のサイズは、センサ10の色変化を視認可能なサイズであれば任意であるが、センサ10を試料中に投入しやすい等の観点から、指やピンセットなどで摘むことができるサイズが好ましい。
具体的には、反応物質固定化用担体が有する細孔のサイズは、例えば、固定される酵素(酵素分子又は活性部位を含む酵素の断片)のサイズの0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、固定される酵素のサイズの0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、固定される酵素のサイズとほぼ同一であることが最も好ましい。すなわち、反応物質固定化用担体が有する細孔の直径(中心細孔直径)は、固定される酵素の直径の0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、固定される酵素の直径の0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、固定される酵素の直径とほぼ同一であることが最も好ましい。
なお、具体的な中心細孔直径の値は、酵素の直径との関係で決定されるので一律には規定できないが、例えば、酵素がホルムアルデヒド脱水素酵素である場合、ホルムアルデヒド脱水素酵素の直径は約8nmであるため、4nm〜16nm程度が好ましい。
ここで、酵素が多量体を形成する場合には、固定される酵素のサイズ(直径)は、多量体のサイズ(直径)とすることができる。ここで、多量体とは、2以上の酵素(タンパク質)が、直接に、或いは、水などの低分子を介して結合してなる化合物をいい、結合には、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合が含まれる。しかし、これらの結合の種類は、特に制限されない。
具体的には、色素固定化用担体が有する細孔のサイズは、例えば、固定される色素(色素分子)のサイズの0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、固定される色素のサイズの0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、固定される色素のサイズとほぼ同一であることが最も好ましい。すなわち、色素固定化用担体が有する細孔の直径(中心細孔直径)は、固定される色素の直径の0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、固定される色素の直径の0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、固定される色素の直径とほぼ同一であることが最も好ましい。
なお、具体的な中心細孔直径の値は、色素の直径との関係で決定されるので一律には規定できないが、例えば、色素がINT(2-(4-Iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H- tetrazolium chloride)である場合、INTの直径は約1.4nmであるため、0.7nm〜2.8nm程度が好ましい。
シリカ系メソ多孔体は、例えば、ケイ酸やアルミナなどの各種金属酸化物、ケイ酸と他種の金属との複合酸化物等によって構成することができる。
例えば、ケイ酸により構成されるシリカ系メソ多孔体の作製においては、例えば、カネマイトのような層状シリケート、アルコキシシラン、シリカゲル、水ガラス、ケイ酸ソーダ等を好ましく用いることができる。
また、シリカ系メソ多孔体の作製において、水ガラス等のケイ素含有物質を出発材料とする場合には、例えば、ミセルの周囲にシリケート分子を集合させて重合させることによりシリカを形成し、その後、ミセルを除去することによって細孔を形成することができる。この場合、通常、ミセルの形状は柱状となり、その結果、シリカ系メソ多孔体に、柱状の細孔が形成されることになる。
すなわち、反応物質固定化用担体の場合、反応物質固定化用担体(シリカ系メソ多孔体)の細孔のサイズ(細孔の径)は、固定する酵素のサイズ(酵素の径)に応じて決定される。したがって、例えば、ミセルのサイズ(ミセルの径)が、酵素のサイズの0.5〜2.0倍となる界面活性剤を用いてシリカ系メソ多孔体を作製することによって、細孔のサイズが、固定する酵素のサイズの0.5〜2.0倍となるシリカ系メソ多孔体を得ることができる。
また、色素固定化用担体の場合、色素固定化用担体(シリカ系メソ多孔体)の細孔のサイズは、固定化する色素のサイズ(色素の径)に応じて決定される。したがって、例えば、ミセルのサイズが、色素のサイズの0.5〜2.0倍となる界面活性剤を用いてシリカ系メソ多孔体を作製することによって、細孔のサイズが、固定する色素のサイズの0.5〜2.0倍となるシリカ系メソ多孔体を得ることができる。
なお、シリカ系メソ多孔体における細孔の貫通方向は、任意であり、ランダムであっても良いし、一次元シリカナノチャンネルの集合体のように方向性が制御されたものであっても良い。
さらに、シリカ系メソ多孔体の種類としては、細孔のサイズが均一であり、かつ、細孔(チャンネル)の方向が一方向に向いているという特徴を有する、CTAB−M、P123−M、F127-M等の公知の種類を採用することができる。具体的には、CTAB−M、P123−M、F127-M等は、例えば、円筒形のアルミナ細孔内に界面活性剤を鋳型として作製され、アルミナ細孔の方向と同一のチャンネル方向を有するメソポーラスシリカナノチャンネル集合体(一次元シリカナノチャンネルの集合体)が充填された膜状のシリカ系メソ多孔体である。これらを乳鉢で細砕したものや、リン酸溶液等でアルミナ基板を溶解・除去して取り出したシリカチューブなどを利用することができる。
具体的には、酵素は、例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素等の酵素(酵素タンパク質)であるが、これらに限定されるものではない。
また、酵素は、例えば、生来の酵素分子であっても良いし、活性部位を含む酵素の断片であっても良い。当該酵素分子又は当該活性部位を含む酵素の断片は、例えば、動植物や微生物から抽出したものであっても良いし、所望によりそれを切断したものであっても良いし、遺伝子工学的に又は化学的に合成したものであっても良い。
また、反応物質固定化用担体に固定する酵素が2種類以上である場合、酵素は、例えば、同種の検出対象物質(基質)に作用する2種類以上の酵素であっても良いし、異種の検出対象物質に作用する2種類以上の酵素であっても良いし、同種及び/又は異種の検出対象物質に作用する2種類以上の酵素であっても良い。
また、反応物質固定化用担体に固定する酵素が2種類以上である場合、その2種類以上の酵素は、反応物質固定化用担体が有する別々の細孔の内部に固定されていても良いし、同一の細孔の内部に固定されていても良い。
さらに、必要に応じて、公知の酵素固定化法(例えば、導電性高分子、グルタルアルデヒド、光架橋性樹脂等を用いる固定化法等)と併用することもできる。
なお、補酵素や補酵素酸化酵素は、所定の担体に担持された状態(すなわち、所定の担体が有する細孔の内部に固定化された状態)で、ゲル体13に保持されていても良い。ここで、所定の担体とは、反応物質固定化用担体や色素固定化用担体であっても良いし、その他の担体であっても良い。
酵素としてホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH)、色素としてINTを用いて、ホルムアルデヒド(検出対象物質)を検出するセンサ10を構成する場合、FDHは補酵素依存型酵素であるため、ゲル体13に補酵素(NAD+)を保持させるとともに、補酵素酸化酵素(ジアホラーゼ)が担持された担体を保持させておくことが好ましい。
この場合、(1)HCHO+NAD++3H2O―(FDH)→HCOO−+NADH+2H3O+、(2)H++NADH+INT(薄黄色)―(ジアホラーゼ)→NAD++INTH2(暗赤色)という2段階の反応が起こる。具体的には、反応の第1段階で、ホルムアルデヒドがFDHの触媒によりギ酸に変化し、同時に、NAD+がNADH/H+になる。次いで、反応の第2段階で、ジアホラーゼによりNADH/H+からH/H+が黄色テトラゾリウム塩INT(2-(4-Iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H-tetrazolium chloride)に移動して、赤色ホルマザンとなる。
なお、2酵素系を利用せず、ジアホラーゼの代わりに電子伝達体を使用して、酵素反応を高速化することも可能である。
ここで、「色の変化」とは、発色(着色)、脱色、色相の変化、明度の変化、彩度の変化、蛍光強度の変化等、或いは、これらの組み合わせであり、目視にて判定可能な変化であることが好ましい。
具体的には、色素としては、例えば、INT、MTT(3-(4,5-dimethyl-2-thiazolyl)-2,5- diphenyl-2H-tetrazolium bromide)、NTB(3,3'-[3,3'-Dimethoxy-(1,1'-biphenyl)- 4,4'-diyl]-bis[2-(4-nitrophenyl)-5-phenyl-2H-tetrazolium chloride])、XTT(2,3- bis-(2-methoxy-4-nitro-5-sulfophenyl)-2H-tetrazolium-5-carboxanilide)、WST−1(2-(4-Iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt)、WST−3(2-(4-Iodophenyl)-3-(2,4-dinitrophenyl)-5-(2,4- disulfophenyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt)、WST−8(2-(2-methoxy-4- nitrophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium, monosodium salt)等のアゾ色素が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、水溶性のものであっても、水不溶性のものであっても良く、感度、安定性、検出方式の簡便さ等を考慮して、適宜、適切な色素を選択することができる。
また、色素固定化用担体に固定する色素が2種類以上である場合、色素は、例えば、同種の反応(検出対象物質と酵素との反応)に基づいて色変化を生じる2種類以上の色素であっても良いし、異種の反応に基づいて色変化を生じる2種類以上の色素であっても良いし、同種及び/又は異種の反応に基づいて色変化を生じる2種類以上の酵素であっても良い。
また、色素固定化用担体に固定する色素が2種類以上である場合、その2種類以上の色素は、色素固定化用担体が有する別々の細孔の内部に固定されていても良いし、同一の細孔の内部に固定されていても良い。
したがって、ゲル体13は、検出対象物質や生成物が透過可能であり、かつ検出対象物質と酵素との反応に必要な水分子を含有するヒドロゲルであれば任意であり、具体的には、例えば、コラーゲン、フィブリン、アルブミン、カゼイン、セルロースファイバー、セルローストリアセタール、寒天、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、アガロース等の天然高分子、ポリアクリルアミド、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリル酸、ポリビニルクロリド、γ−メチルポリグルタミン酸、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリウレタン、光硬化樹脂(ポリビニルアルコール誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリブタジエン誘導体等)等の合成高分子、或いはこれらの複合体等のゲル体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
センサ10の製造方法は、以下の[1]〜[4]の工程を含む。
反応物質複合体作製工程は、酵素と、反応物質固定化用担体と、により反応物質複合体11…を作製する工程である。
具体的には、例えば、酵素を電解液(緩衝液)に溶解させて酵素溶液を作製する。次いで、この酵素溶液と、反応物質固定化用担体と、を接触させて、反応物質固定化用担体の細孔の内部に酵素を吸着固定することによって、反応物質複合体11…を作製する。
色素複合体作製工程は、色素と、色素固定化用担体と、により色素複合体12…を作製する工程である。
具体的には、例えば、色素を電解液(緩衝液)に溶解させて色素溶液を作製する。次いで、この色素溶液と、色素固定化用担体と、を接触させて、色素固定化用担体の細孔の内部に色素を吸着固定することによって、色素複合体12…を作製する。
複合体含有ゾル作製工程は、反応物質複合体11…と、色素複合体12…と、を含有する複合体含有ゾルを作製する工程である。
具体的には、例えば、ゲル化剤を電解液(緩衝液)に溶解させて当該電解液をゾル化する。次いで、このゾル化した電解液中に、作製した反応物質複合体11…や色素複合体12…などを分散させることによって、複合体含有ゾルを作製する。
センサ作製工程は、複合体含有ゾルからセンサ10を作製する工程である。
具体的には、例えば、作製した複合体含有ゾルを、マイクロピペット等を用いて所定の水溶液中に滴下し、略球状に形成することによって、ゲル状のセンサ10を作製する。
なお、上記センサ10の製造方法は、一例であって、これに限定されるものではない。
本実施形態のセンサチップ100は、センサ10を備えるセンサチップである。
ここで、図2〜図5においては、センサ10のみ、断面図ではなく側面図となっている。
基板20の上面略中央には上方に向かって突出する収容部20aが設けられている。収容部20aは、逆円錐形の凹部を有し、この凹部内にセンサ10が収容されている。
基板30の上面略中央には略円柱形の凹陥部30aが設けられており、この凹陥部30a内にセンサ10が収容されている。また、基板30には、センサ10よりも小さな径を有する貫通孔30bが、凹陥部30aの底面から基板30の下面に亘って設けられている。これにより、例えば、センサ10の上側から気体試料を吹き付けた際、当該気体試料が貫通孔30bから排気されるようになっている。
基板40の上面略中央には略半球形の凹陥部40aが設けられており、この凹陥部40a内にセンサ10が収容されている。
透過膜41は、センサ10の乾燥を抑制するために備えられている。透過膜41は、少なくとも検出対象物質が透過する透過膜であれば任意であり、検出対象物質の種類によって適宜選択可能である。
固定部42は、センサ10よりも大きな径の開口を有する略円環形状の上面部と、当該上面部の縁部から全周に亘り下方に向かって突出する周面部と、を備えている。固定部42の周面部の内径は基板40の径と略同一又はそれ以上に設定されており、センサ10及び透過膜41が上面に載置された基板40に、上側から固定部42を被せると、固定部42の上面部と基板40とで透過膜41を挟むことができるようになっている。
基板50の上面略中央には上方に向かって突出する略円環形状の収容部50aが設けられており、この収容部50aが有する開口内にセンサ10が収容されている。また、基板50の上面には、透過膜41を位置決めするための位置決め部50bが設けられている。位置決め部50bは、略円環形状の上面部と、当該上面部の縁部から全周に亘り下方に向かって突出して基板50の上面の縁部に連結された周面部と、を備えており、位置決め部50bの上面部と基板50との間に透過膜41の端部が挿入できるようになっている。
固定部52は、収容部50aの外径よりも大きな径の開口を有する略円環形状の上面部と、当該上面部の下面から下方に向かって突出する略円環形状の突出部と、を備えている。固定部52の突出部は、固定部52の上面部が有する開口よりも大きな内径を有し、かつ、位置決め部50bの上面部が有する開口よりも小さな外径を有しており、センサ10及び透過膜41が上面に載置された基板50に、上側から固定部52を被せると、固定部52の突出部と基板50とで透過膜41を挟み込み、透過膜41を押さえつけることができるようになっている。
具体的には、例えば、センサチップ100は、センサ10を1個備えるものに限ることはなく、複数個備えるものであっても良い。
また、例えば、センサチップ100の基板20,30,40,50は、略円板形状のものに限ることはなく、略平板矩形状のもの等であっても良い。
以下に、具体的な実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1では、色素複合体12を評価した。
比較のために、色素(INT(20mg))をpH7.4のリン酸緩衝液(5cc)に溶解させ、一晩攪拌し、それを、色素固定化用担体(FSM1.5(100mg))が入ったファルコンチューブに添加して、比較用の複合体を作製した。
その結果、色素複合体12の色は淡黄色、比較用の複合体の色は赤色であることが分かった。すなわち、比較用の複合体においては、色素固定化用担体にINTを担持させる前(すなわち、一晩攪拌している間)に、有機色素であるINTが酸化してしまって赤色に変色したのに対し、色素複合体12においては、FSM(色素固定化用担体)にINTを担持させた状態で一晩攪拌したため、INTの酸化が抑えられ、変色(自然発色)しないことが分かった。
以上の結果から、色素(特に有機色素)は溶液に含まれる酸化剤等の影響によって当該溶液中で酸化されて徐々に変色するが、色素を色素固定化用担体に担持させると(すなわち、色素固定化用担体が有する細孔内に色素を固定化すると)、色素の変色を抑制でき、溶液中での色素の安定性が向上することが分かった。これは、色素が、色素固定化用担体の細孔の内部に、酸化剤等の影響を受け難い程度にしっかりと固定されているためであると考えられる。また、本実施例で使用した色素固定化用担体は還元剤であるFSMであるため、より一層、色素の酸化を抑えることができたと考えられる。
実施例2では、色素固定化用担体の細孔のサイズを評価した。
比較のために、色素(INT(20mg))をpH7.4のリン酸緩衝液(5cc)に溶解させ、それを、細孔径が4.0nmの色素固定化用担体(FSM4.0(100mg))が入ったファルコンチューブに添加し、一晩攪拌して、比較用の複合体を作製した。
その結果、2か月後の色素複合体12の色は淡黄色、比較用の複合体の色は赤色であることが分かった。すなわち、比較用の複合体においては、FSMにINTを担持させても、保存している間にINTが酸化してしまって赤色に変色したのに対し、色素複合体12においては、FSM(色素固定化用担体)の細孔のサイズがINTのサイズ(直径:約1.4nm)の0.5〜2.0倍の範囲内にあり、INTを、酸化剤等の影響を受け難い程度にFSMの細孔の内部にしっかりと固定することができるため、INTの酸化が抑えられ、変色(自然発色)しないことが分かった。
その結果、時間が経過するにつれて、色素複合体12も比較用の複合体も徐々に変色していったが、変色の度合いは、比較用の複合体の方が大きかった。
実施例3では、検出対象物質(ホルムアルデヒド)を含有するガスを用いて、センサ10を評価した。
まず、センサ10を作製した。
具体的には、検出対象物質と選択的に反応する酵素(ホルムアルデヒド脱水素酵素(20mg))をpH7.4のリン酸緩衝液(3cc)に溶解させ、それを、細孔径が8.0nmの反応物質固定化用担体(FSM8.0(100mg))が入ったファルコンチューブに添加して、一晩攪拌した。
次いで、遠心分離を行い、上澄み液を捨てて、反応物質複合体11を取り出した。
次いで、取り出した反応物質複合体11にpH7.4のリン酸緩衝液を加えて1ccとした。以下、これを「反応物質複合体含有液」という。
次いで、遠心分離を行い、上澄み液を捨てて、補酵素酸化酵素複合体を取り出した。
次いで、取り出した補酵素酸化酵素複合体にpH7.4のリン酸緩衝液を加えて1ccとした。以下、これを「補酵素酸化酵素複合体含有液」という。
次いで、遠心分離を行い、上澄み液を捨てて、色素複合体12を取り出した。
次いで、アルギン酸ゲル(5cc)に、補酵素(NAD+(50mg))をpH7.4のリン酸緩衝液(1cc)に溶解したものを添加して、15分間攪拌した。
次に、作製したセンサ10を目視にて評価した。
具体的には、作製したセンサ10を、ホルムアルデヒド濃度が60ppbのホルムアルデヒドガスと接触させて、センサ10の色変化を目視にて観察した。
その結果、センサ10は、淡黄色から赤色へと色変化を呈し、ホルムアルデヒドガスと5分程度接触させただけで、十分な色変化を確認できることが分かった。
以上の結果から、センサ10は、迅速かつ高感度に検出対象物質を検出できることが分かった。
次に、作製したセンサ10を、分光光度計を用いて評価した。
具体的には、作製したセンサ30を、ホルムアルデヒド濃度が1ppbのホルムアルデヒドガスと5分間接触させ、分光光度計を用いて波長500nmでの反射による吸光度を測定することにより、センサ30の色変化を観察した。また、ホルムアルデヒド濃度が6ppb、60ppb、100ppb、200ppb、300ppb、400ppb、600ppb、800ppb及び1200ppbのホルムアルデヒドガスそれぞれを使用して同様の測定を行った。そして、これらの測定結果に基づいて、ホルムアルデヒド濃度と吸光度(=Log(I0/I)、I0:入射光の強度,I:反射光の強度)との関係を示す検量線を作成した。その結果を図6に示す。
具体的には、上記と同様の方法で作製した複合体含有ゾルをシート状に形成し、比較用のセンサを作成した。そして、センサ10と同様の方法で、ホルムアルデヒド濃度と吸光度との関係を示す検量線を作成した。その結果を図6に示す。
一方、シート状に形成された比較用のセンサ(比較例)においては、1ppb〜600ppbの濃度範囲で線形性を有する検量線は得られたが、略球状に形成されたセンサ10(実施例)よりも感度が低く、色判別もしにくい(傾きが小さいため)ことが分かった。
以上の結果から、三次元形状のセンサ10は、二次元形状の比較用のセンサよりも、迅速かつ高感度に検出対象物質を検出できることが分かった。これは、センサ10が、ガスを、平面拡散ではなく、球面拡散で集めることができるためであると考えられる。
実施例2では、検出対象物質(ホルムアルデヒド)を含有する溶液を用いて、センサ10を評価した。
実施例3と同様の方法で、略球状のセンサ10を作製した。
次に、作製したセンサ10を目視にて評価した。
具体的には、作製したセンサ10を、ホルムアルデヒド濃度が20ppbのホルムアルデヒド溶液(2cc)と接触させて、センサ10の色変化を目視にて観察した。
その結果、センサ10は、淡黄色から赤色へと色変化を呈し、ホルムアルデヒド溶液と2分程度接触させただけで、十分な色変化を確認できることが分かった。
以上の結果から、センサ10は、迅速かつ高感度に検出対象物質を検出できることが分かった。
次に、作製したセンサ10を、分光光度計を用いて評価した。
具体的には、作製したセンサ10を、ホルムアルデヒド濃度が1ppbのホルムアルデヒド溶液(2cc)と5分間接触させて、センサ10の色変化を、分光光度計を用いて測定した。また、ホルムアルデヒド濃度が5ppb、10ppb、20ppb、40ppb、60ppb、80ppb、100ppb、500ppb及び1000ppbのホルムアルデヒド溶液(2cc)それぞれを使用して同様の測定を行った。そして、これらの測定結果に基づいて、ホルムアルデヒド濃度と吸光度との関係を示す検量線を作成した。その結果を図7に示す。
以上の結果から、センサ10は、迅速かつ高感度に検出対象物質を検出できることが分かった。
すなわち、センサ10は、検出対象物質の検出をセンサ10の色変化によって判定可能であるとともに、従来のセンサ(メソポーラス構造を有する金属酸化物からなるセンサや、色素をシリカ細孔内に担持させたセンサ)よりも脆性が低く壊れ難いゲル体13により形成されているため、取り扱い易い。したがって、センサ10は、一般家庭等でも気軽に使うことができ、好適である。
また、以上説明した本発明のセンサ10及びセンサチップ100によれば、センサ10は、複数の細孔を有する色素固定化用担体を備え、色素は、色素固定化用担体が有する細孔の内部に固定化された状態で、ゲル体13に保持されている。すなわち、ゲル体13は、複数の細孔を有する色素固定化用担体と、当該細孔の内部に固定化され、検出対象物質と酵素との反応に基づいて色変化を生じる色素と、を備える色素複合体12を保持している。そして、色素固定化用担体が有する細孔のサイズは、色素のサイズの0.5〜2.0倍に設定されている。
さらに、酵素や色素は溶液中での経時変化が大きく、すぐに劣化してしまうため、溶液中で安定的に保存することは困難である。そのため、酵素や色素を使用した従来のセンサにおいては、例えば、乾燥状態のまま冷蔵庫等で保存して、使用時に高純度蒸留水等を滴下する必要があり、使い勝手が悪いという問題があった。これに対し、本発明のセンサ10においては、酵素は反応物質固定化用担体の細孔の内部に固定化されるとともに、色素は色素固定化用担体の細孔の内部に固定化されているため、ゲル体13(水を含むヒドロゲル)に保持された状態でも安定的に保存することができる。したがって、センサ10は、使用時に高純度蒸留水等を滴下する必要がなく、そのまま使用できるため、使い勝手が良い。
したがって、センサ10は、検出対象物質を、平面拡散ではなく、球面拡散で集めることができるため、迅速かつ高感度に検出対象物質を検出できる。
すなわち、ゲル体13は水を含むヒドロゲルであるため、ゲル体13内で、検出対象物質と酵素との反応や、当該反応により生じる生成物と色素との反応などが効率よく行われることとなる。また、ゲル体13は、水を含むヒドロゲルであり、高い粘弾性を有するため、センサ10が取り扱い易いものとなる。
センサ10は、単独でも(すなわち、センサチップ100を構成しなくても)、検出対象物質を検出することはできるが、例えば、センサ10に気体試料を吹き付けて当該気体試料を検査する場合、センサ10に液体試料を滴下して当該液体試料を検査する場合、センサ10の色変化を分光光度計等の装置を用いて観察する場合等は、センサ10は略球状に形成されているため、センサ10を基板20,30,40,50上に固定したセンサチップ100を使用する方が使い勝手が良い。
また、検出対象物質と選択的に反応する酵素と、当該反応に基づいて色変化を生じる色素と、を別々の担体に固定化するようにしたが、これに限ることはなく、同一の担体に固定化するようにしても良い。この場合、当該担体としては、酵素のサイズの0.5〜2.0倍のサイズを有する細孔(第1細孔)と、色素のサイズの0.5〜2.0倍のサイズを有する細孔(第3細孔)と、の両方を有する担体が好ましい。
また、色素を、色素固定化用担体が有する細孔の内部に固定化された状態で、ゲル体13に保持するようにしたが、これに限ることはなく、例えば、色素は、色素固定化用担体に担持されずに、ゲル体13に直接保持されていても良い。
すなわち、酵素及び色素の両方が、ゲル体13に直接保持されていても良いし、酵素及び色素の何れか一方が、ゲル体13に直接保持されて、何れか他方が、担体が有する細孔の内部に固定化された状態でゲル体13に保持されていても良い。
なお、反応物質複合体11を構成する反応物質の種類は、1種類であっても良いし、複数種類であっても良い。
ここで、ホルムアルデヒド等の検出対象物質は油脂膜を透過することができる。したがって、高い検出性能を維持したまま、ゲル体13内部の水分の蒸発を防ぐことができるため、安定性をより一層向上させることができ、かつ、更なる長寿命化を図ることができる。
11 反応物質複合体
12 色素複合体
13 ゲル体
20,30,40,50 基板
100 センサチップ
Claims (4)
- 検出対象物質を検出するセンサにおいて、
前記検出対象物質と選択的に反応する反応物質と、
前記検出対象物質と前記反応物質との反応に基づいて色変化を生じる色素と、
前記反応物質と前記色素とを保持するゲル体と、
複数の細孔を有する反応物質固定化用担体と、
を備え、
前記反応物質は、生体物質であり、前記反応物質固定化用担体が有する細孔の内部に固定化された状態で、前記ゲル体に保持されており、
前記反応物質固定化用担体が有する細孔のサイズは、前記反応物質のサイズの0.5〜2.0倍であることを特徴とするセンサ。 - 請求項1に記載のセンサにおいて、
複数の細孔を有する色素固定化用担体を備え、
前記色素は、前記色素固定化用担体が有する細孔の内部に固定化された状態で、前記ゲル体に保持されており、
前記色素固定化用担体が有する細孔のサイズは、前記色素のサイズの0.5〜2.0倍であることを特徴とするセンサ。 - 請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
当該センサは、略球状に形成されており、
前記ゲル体は、前記検出対象物質と前記反応物質との反応に必要な水分子を含有していることを特徴とするセンサ。 - 所定の基板と、
前記基板上に配置された請求項1から3の何れか一項に記載のセンサと、
を備えることを特徴とするセンサチップ。
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