JP5284075B2 - 脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用厚鋼板 - Google Patents

脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用厚鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、主として船舶や橋梁の構造物を構築する素材として用いられる構造用厚鋼板に関するものであり、特に発生した脆性亀裂の伝播を停止する特性(アレスト特性)を改善した厚鋼板に関するものである。
船舶、建築物、タンク、海洋構造物、ラインパイプ等の構造物を構築する際に用いられる厚鋼板には、構造物の脆性破壊を抑制するために、脆性亀裂の伝播による破壊を抑制する能力であるアレスト特性(以下、「脆性亀裂伝播停止特性」と呼ぶことがある)が求められることになる。近年、構造物の大型化に伴い、降伏応力が390MPa以上、板厚が50mm以上の高強度厚鋼板を使用するケースが多くなっている。しかしながら、上記のような脆性亀裂伝播停止特性は、一般に鋼板が高強度・厚肉化になるにつれてそれを確保することが困難になる。
一方、コンテナ船においても効率化のために大型化が進んでおり、それに伴って厚肉・高強度の鋼板が使用されるようになっている。船体の破壊安全性を考えると、脆性破壊を発生させないことは第一に重要であるが、仮に脆性破壊が発生した場合であっても、船体の全崩壊を避けるために、亀裂の伝播を停止させるように船体に脆性亀裂伝播停止特性を具備させることが重要である。このような背景から、ハッチコーミング部から発生した脆性亀裂をアッパーデッキ部にて停止させることが求められている。脆性亀裂を停止させるためにアッパーデッキ部に求められる脆性亀裂伝播停止特性に関しては、これまでにも検討がなされてきており、負荷応力や脆性亀裂進展長さが大きくなっても厚板鋼板での応力拡大係数K値は飽和し、−10℃でのKca値(脆性亀裂伝播停止特性の指標となる数値)が7000MPa・mm1/2を超えれば、脆性亀裂の進展を停止させることができると考えられている。従って、特にコンテナ船においては高強度厚鋼板において上記脆性亀裂伝播停止特性を付与させる技術が望まれている。
脆性亀裂伝播停止特性を向上させる方法としては、鋼板の所定位置の結晶粒径を微細化する方法が知られている。こうした技術としては、例えば特許文献1には、フェライト若しくはベイナイトを母相とし、圧延条件を最適化し、表層近傍の平均結晶粒径を2.5μm以下とすることによって、良好な脆性亀裂伝播停止特性を確保する技術が提案されている。しかしながら、表層部の結晶粒の微細化だけでは、脆性亀裂伝播停止特性が必ずしも良好にならない場合がある。
また特許文献2のような技術も提案されている。この技術では、引張強度が800MPaを超える鋼板において、板厚中央部の結晶粒の微細化を図ることによって、脆性亀裂伝播停止特性を向上させるものである。この技術は、合金元素を多量に含有させて引張強度が800MPaを超えるような鋼板においては有用な技術といえる。しかしながら、合金元素を多く含有させることができない引張強度700MPa以下の鋼板への適用は困難である。
特開平11−140584号公報 特開平5−1323号公報
本発明は前記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、板厚が50mmを超える場合においても高強度(引張強度:510〜700MPa)を満足し、且つ−10℃におけるKca値で7000MPa・mm1/2以上を満足する様な脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用厚鋼板を提供することにある。
前記目的を達成することのできた本発明の構造用厚鋼板とは、C:0.05〜0.12%(「質量%」の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.0〜1.8%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.03%、Cu:0.7〜2.0%、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.010%以下(0%を含まない)、Al:0.01〜0.06%を夫々含有し、残部:鉄および不可避的不純物からなり、且つ下記(1)式で規定されるX値が(X値>1)の関係を満足すると共に、ミクロ組織がベイナイトを主体とするものである点に要旨を有するものである。
X値={0.08[Mn]+0.04([Cu]+[Ni])+2[Nb]}/5[C]
…(1)
但し、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Nb]および[C]は、夫々Mn、Cu、Ni、NbおよびCの含有量を示す。
本発明の厚鋼板には、必要によって、Ni:2%以下(0%を含まない)を含有させることも有用であり、これによって鋼板内部の結晶粒の微細化が図れ、脆性亀裂伝播停止特性が更に改善されることになる。
上記のような要件を満足する構造用厚鋼板では、表面から深さt/4(t:板厚、以下同じ)およびt/2の位置の平均結晶粒径を、夫々d(t/4)およびd(t/2)としたとき、下記(2)式で規定されるK0値が、K0値>10500の関係を満足するものとなる。
0=5.68×10-20{2.25×10-2[−400・d(t/2)-1/2+313]2−15[−400・d(t/2)-1/2+313]+6418}6.25/{1−3.288×10-9(−92[−400・d(t/4)-1/2+313]+32700)2} …(2)
本発明の鋼板においては、ベイナイトを主体とする厚鋼板の化学成分組成を厳密に規定して適正化を図ることによって、脆性亀裂伝播停止特性に優れた厚鋼板が実現でき、こうした鋼板は、船舶、建築物を始めとする各種大型構造物の構成素材として有用である。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、脆性亀裂伝播停止特性に及ぼす要因についてかねてより研究を重ねてきた。その結果、破壊力学の観点から、脆性亀裂伝播停止特性向上には、板厚表面(表層部)よりも、内部の靭性値を向上する方が優位である事を明らかにし、その技術的意義が認められたので先に出願している(特願2007−262872)。即ち、脆性亀裂伝播停止特性については、鋼板表層部の靭性を良好にすれば良いと考えられていたのであるが、本発明者らが検討したところによれば、鋼板表面から深さt/4〜t/2(t:板厚)の位置(即ち、鋼板表面から深さt/4から内部の位置)での靭性を高めることによって脆性亀裂が効果的に停止することが判明したのである。
また上記の技術においては、アレスト特性を示す評価パラメータとして従来から使用されているKca値(この値の測定方法については後述する)の代わりにアレスト特性を簡便に評価できる指標として、亀裂進展駆動力K0(設定温度T0における亀裂進展駆動力:単位MPa・mm1/2)を想定し、下記(3)式の関係を提案している[(3)式の技術的意義については、後述する]。
0=5.68×10-20{2.25×10-2×[vTrs(板厚中央部近傍)]2−15×[vTrs(板厚中央部近傍)]+6418}6.25/{1−3.288×10-9(−92[vTrs(表層近傍)]+32700)2} …(3)
尚、「vTrs(板厚中央部近傍)」はシャルピー衝撃試験によって求められる板厚中央部近傍の脆性破面遷移温度vTrsであり、「vTrs(表層近傍)」はシャルピー衝撃試験によって求められる表層近傍の脆性破面遷移温度vTrsである。
そして、亀裂進展駆動力K0の値が10500(MPa・mm1/2)を超えると、Kca値が7000(MPa・mm1/2)以上の優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する厚鋼板となり得ることを明らかにしている。
ここで、脆性破面遷移温度vTrsは、一般に平均結晶粒径dとの間に、1/d=(−A×vTrs+B)2(A,Bは定数)の関係にあると考えられている。上記関係は、vTrs=−1/A・[√(1/2)]+B/Aと書き換えることができ、従って、亀裂進展駆動力K0は、脆性破面遷移温度vTrsだけではなく、表層近傍[代表的には、表面からt/4(t:板厚)の位置]および板厚中央部近傍[代表的には、表面からt/2(t:板厚)の位置]の平均結晶粒径によっても表現できるものである。そして、例えば文献(栗飯原周二「へき開破壊のマイクロメカニズムについて」 鉄鋼協会フォーラム 「構造材料の強度と破壊」2006年11月発行)に示された実験結果から、脆性破面遷移温度vTrsは、下記(4)式のように表すことができる。
vTrs=−400・[√(1/d)]+313 …(4)
上記亀裂進展駆動力K0の式[前記(3)式]を平均結晶粒径dによって、改めて展開すると、下記(2)式が求められる。
0=5.68×10-20{2.25×10-2[−400・d(t/2)-1/2+313]2−15[−400・d(t/2)-1/2+313]+6418}6.25/{1−3.288×10-9(−92[−400・d(t/4)-1/2+313]+32700)2} …(2)
本発明者らは、前記(2)式で与えられる亀裂進展駆動力K0の値(以下、単に「K0値」と呼ぶことがある)が10500(MPa・mm1/2)を超えるような鋼板を実現するために、様々な角度、特に結晶粒径バランスの観点から検討した。
上記条件を満足するような鋼板を実現するために、表面からt/4(t:板厚)の位置(以下、単に「t/4部」と呼ぶことがある)よりも内部[表面からt/2(t:板厚)の位置を「t/2部」と呼ぶことがある]の靭性を向上させることが重要である。一般に、鋼板内部は表層部に比べ圧延時の冷却速度が遅いために、表層部と異なる結晶粒径が得られることが多く、通常は表層部に比べ結晶粒は粗大化する。t/4部よりも内部の靭性を向上させるには、内部の結晶粒の微細化を図ることが必要であり、そのためには、圧延プロセス時の冷却速度の影響を受けにくく結晶粒を微細にする化学成分組成に設計することが有効となる。
そこで本発明者らは、圧延プロセスの影響を受けず、且つ微細な結晶粒を得るための化学成分組成について更に検討を重ねた。その結果、下記(1)式で規定されるX値が(X値>1)の関係を満足するようにすれば、上記目的に適う厚鋼板が実現できることを見出し、本発明を完成した。
X値={0.08[Mn]+0.04([Cu]+[Ni])+2[Nb]}/5[C]
…(1)
但し、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Nb]および[C]は、夫々Mn、Cu、Ni、NbおよびCの含有量を示す。
上記(1)式は、圧延プロセスの影響を受けず、且つ微細な結晶粒を得るための化学成分組成を検索するために、様々な元素について実験を重ねた結果、求められたものである。そして、前記(2)式で規定されるK0値が10500(MPa・mm1/2)を超えるような条件、即ち表層近傍(代表的にt/4部)および板厚中央部近傍(代表的にt/2部)の結晶粒径バランスが得られる条件が、X値>1であることを見出したものである。
尚、上記(1)式には、本発明の厚鋼板の基本成分に含まれる成分(C,Mn,Nb,,Cu)以外にも、必要によって含有する成分(例えば、Ni)も含まれるが、この元素を含まないときにはその項目がないものとしてX値を計算し、この元素を含むときにはこの項目も含めてX値を計算すればよい。
本発明では、上記のように化学成分組成および特定領域での組織を規定することによって、脆性亀裂伝播停止特性に優れた厚鋼板が実現できるのであるが、基本的な機械的特性(例えば、引張強度:510〜700MPa)を確保するためには、そのミクロ組織を、ベイナイトを主体としたものとする必要がある。但し、100%のベイナイトとする必要はなく、95%以上であればよく、少量の他の相[例えば、フェライト、島状マルテンサイト(MA)等]を含んでいてもよい。
本発明の厚鋼板は、化学成分組成が適正に調整されていることも特徴の1つとする。以下では、化学成分の範囲限定理由を説明する。
[C:0.05〜0.12%]
Cは鋼板の強度を確保するために必要な元素であり、所望の強度(即ち、引張強度で510MPa以上)を確保するためには0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cを過剰に含有させると、オーステナイト再結晶温度が冷却速度の影響を大きく受け、板中央部の粒径が粗大化する。しかも、Cを0.12%よりも過剰に含有させると溶接性も劣化する。こうしたことから、C含有量は0.05〜0.12%と規定した。C含有量の好ましい下限は0.06%であり、好ましい上限は0.10%である。
[Si:0.05〜0.30%]
Siは脱酸と強度確保のために必要な元素であり、そのためには0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.30%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。したがって、Si含有量は0.05〜0.30%と規定した。Si含有量の好ましい下限は0.10%であり、好ましい上限は0.28%である。
[Mn:1.0〜1.8%]
Mnは鋼板の強度上昇のために有効な元素であると同時に、オーステナイト再結晶温度への冷却速度の影響を緩和させる作用があるため、冷却速度の影響には関係なく鋼板表面から深さt/4より内部の結晶粒を微細化する効果がある。こうした効果を発揮させるためには、Mnは1.0%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mnを過剰に含有させると溶接性が劣化するので、1.8%以下とする必要がある。従って、Mn含有量は1.0〜1.8%と規定した。Mn含有量の好ましい下限は1.4%であり、好ましい上限は1.6%である。
[Nb:0.005〜0.05%]
Nbはオーステナイトの再結晶を抑制し、且つオーステナイト再結晶温度への冷却速度の影響を緩和させる作用があるため、冷却速度の影響には関係なく鋼板表面から深さt/4より内部の結晶粒を微細化する効果がある。こうした効果を発揮させるためには、Nbは0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Nbを過剰に含有させると溶接性が損なわれるので、0.05%以下とする。
[Ti:0.005〜0.03%]
Tiは鋼中にTiNを微細分散させて加熱中のオーステナイト粒の粗大化を防止するとともに、Nbと同様にオーステナイトの再結晶を抑制する作用があるため、オーステナイト粒を微細化し、変態後の組織を微細化する効果を発揮する。また、TiNは溶接時におけるHAZのオーステナイト粒を微細化し、HAZ靭性改善に有効である。こうした効果を発揮させるためには、Tiを0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると溶接性が損なわれるので、0.03%以下とする。
[Cu:0.7〜2.0%]
Cuは鋼板の強度上昇のために有効な元素であると同時に、オーステナイトの再結晶を抑制し、且つオーステナイト再結晶温度への冷却速度の影響を緩和させる作用があるため、冷却速度の影響には関係なく鋼板表面から深さt/4より内部の結晶粒を微細化する効果がある。こうした効果を発揮させるためには、Cuは0.7%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cuの含有量が過剰になると析出強化が過多となり、靭性に悪影響を及ぼすので、2.0%以下とする必要がある。
[P:0.025%以下(0%を含まない)]
Pは結晶粒に偏析し、延性や靭性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましいのであるが、実用鋼の清浄度の程度を考慮して0.025%以下とする。尚、Pは鋼に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは工業生産上困難である。
[S:0.010%以下(0%を含まない)]
Sは鋼板中の合金元素と化合して種々の介在物を形成し、鋼板の延性や靭性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましいのであるが、実用鋼の清浄度の程度を考慮して0.010%以下に抑制するのがよい。尚、Sは鋼に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%とすることは工業生産上困難である。
[Al:0.01〜0.06%]
Alは脱酸剤として有効であると共に、AlNを形成して結晶粒の微細化に有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Alは0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、Alの含有量が過剰になると、母材靭性および溶接部の靭性を劣化させるので、0.06%以下とする必要がある。
本発明の鋼板において、上記成分の他は、鉄および不可避的不純物(例えば、O等)からなるものであるが、その特性を阻害しない程度の微量成分(許容成分)も含み得るものであり、こうした鋼板も本発明の範囲に含まれるものである。また必要によって、(a)Ni:2%以下(0%を含まない)、(b)B:0.0005〜0.003%、(c)N:0.002〜0.009%、等を含有させることも有効である。これらの成分を含有させるときの範囲限定理由は、次の通りである。
[Ni:2%以下(0%を含まない)]
Niはオーステナイトの再結晶を抑制し、且つオーステナイト再結晶温度への冷却速度の影響を緩和させる作用があるため、冷却速度の影響には関係なく鋼板表面から深さt/4より内部の結晶粒を微細化する効果がある。しかしながら、Ni含有量が2%を超えると、靭性改善の効果が小さくなり、経済性で不利となる。従って、Niを含有させるときの量は2%以下とすることが好ましい。
[B:0.0005〜0.003%]
BはNと窒化物を形成して溶接時におけるHAZのオーステナイト粒内組織を微細化し、HAZ靱性改善に有効な元素であるとともに、固溶B(フリーB)は鋼板の焼入れ性を高めて母材強度を向上させる。こうした効果を発揮させるには、0.0005%以上含有させることが好ましいが、過剰に含有させると溶接性が損なわれるので、0.003%以下とするのが良い。
[N:0.002〜0.009%]
Nは基本的に不可避的不純物と考えられているのであるが、Al,Ti,Nb,B等と結合し、窒化物を形成して母材組織を微細化させる効果があると共に、溶接時のオーステナイト粒の微細化や粒内組織を微細化し、HAZ靭性を向上させる効果を発揮する。こうした効果を発揮させるには、Nは0.002%以上含有させることが好ましい。しかしながら、固溶NはHAZ靭性を劣化させる原因となる。全窒素量の増加により、前述の窒化物は増加するが固溶Nも過剰となり、有害となるため、0.009%以下に制限すべきである。
本発明では、化学成分組成を上記のように制御することによって、アレスト特性に優れた厚鋼板が実現できるのであるが、安定したベイナイト主体の微細組織を得るためには、上記化学成分量を満たす鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとした後、例えば、950〜1350℃の範囲に加熱した後熱間圧延を行い、引き続きベイナイト変態開始点(Bs点)以上の温度域での累積圧下率を40%以上となるようにして圧延をし、その後400〜500℃までを5℃/秒以上の平均冷却速度で冷却するようにすればよい。こうした条件を範囲設定理由は次の通りである。尚上記で示した温度は、表面の温度で管理したものである。
[加熱温度:950〜1350℃]
鋼板における材質の均一化のためには、950℃以上に加熱する必要があり、一方急激な粒成長を抑えるため、また表面酸化を抑制するためには加熱温度は1350℃以下とする必要がある。特に、靭性を確保するためには、加熱温度の上限を1150℃とすることが好ましい。
[Bs点以上の温度での累積圧下率:40%以上]
この温度域での圧延により均一化したオーステナイト粒を潰して一層の細粒化が図れる。更に、成分調整により再結晶が抑制されていることから未再結晶での圧延が容易であり、効率的に細粒化が可能となる。但し、累積圧下率を40%未満とすると、十分な細粒化が得られないことから40%以上の累積圧下率とする。尚、上記累積圧下率は、下記(5)式によって求められるものである。
累積圧下率=(t0−t1)/t0×100 … (5)
〔式(4)中、t0は当該温度域での鋼片の圧延開始厚(mm)を表し、t1は当該温度域での鋼板の圧延終了厚(mm)を表す。〕
[圧延後に400〜500℃まで平均冷却速度:5℃/秒以上で冷却]
圧延後の冷却は5℃/秒以上の平均冷却速度で400〜500℃まで冷却を行い、ベイナイト単相組織とする。冷却停止温度を400〜500℃とするのは、この温度範囲未満であると島状マルテンサイト相(MA相)による母材靭性の劣化を招き、この温度範囲を超えるとベイナイト変態が十分でなく、フェライト・パーライト組織主体となり、強度確保が困難となる。
尚、本発明で対象とする鋼板は、基本的には板厚が50mm以上の厚鋼板を想定したものであるが、それ以下の板厚においても同等の特性を有するものとなり、本発明の対象に含まれるものである。
本発明においては、前記(1)式を満足させつつ化学成分組成を調整することによって、アレスト特性に優れた鋼板が実現できるのであるが、こうした鋼板は前記(2)式で規定するK0値が(K0>10500)の関係を満足したものとなる。アレスト特性を評価する基準としては、ESSO試験よって求められるKca値が一般的に採用されている(後記実施例参照)。しかしながら、このKca値を求めるには、煩雑な実験が必要になることから、アレスト特性を簡便に評価する基準として、前記(2)式で規定するK0値を規定したものである。この式が求められた経緯について説明する。
上記ESSO試験において、試験体に応力σ0が加わっている場合に対し、脆性亀裂がある温度T0を通過すると想定し、このときの亀裂進展駆動力をK0とする。この亀裂進展駆動力K0に対する抵抗としては、鋼板表層(即ち、t/4部)で発生する延性破壊(シアリップ)による抵抗K(単位:MPa・mm1/2)と、板厚中央部(t/2部)における抵抗Kd(単位:MPa・mm1/2)の2つがある。このうち、抵抗Kは上記亀裂進展駆動力をK0に比例するものと考えられることから、K=K0・r(r:比例定数)と表すことができる。これらの抵抗Ks、Kdが、亀裂停止に大きな影響を与えることになる。
このとき、温度T0において、亀裂を停止させるためには、下記(6)式の関係が成立する必要がある。また、このとき亀裂進展駆動力K0が、温度T0におけるKca値に対応すると考えられる。下記(6)式は、下記(7)式のように変形できる。
0=Ks+Kd=K0・r+Kd …(6)
0=K/(1−r) …(7)
次に、技術文献「圧力技術 Vol.31、No.2(1993),p2」(以下、「参考文献1」と呼ぶ)によれば、比例定数rは、板厚表層近傍の動的破壊靭性値KD(B)と関連があるとされている。動的破壊靭性値は、高速進展する亀裂に対する破壊靭性値であり、一般的な破壊靭性値(Kci)とは異なるとされている。一方、技術文献「日本造船学会論文集 Vol.177(1995),p243」(以下、「参考文献2」と呼ぶ)によれば、高速に進展する脆性亀裂も、シアリップが発生する表層近傍では亀裂進展速度は極めて低下するとされている。ここで、表層近傍では、亀裂進展速度は極めて低いため、その動的破壊靭性値も通常の破壊靭性値と等価となる。これにより、比例定数rは、表層近傍の破壊靭性値Kciと相関があることになる。
更に、上記参考文献2によれば、破壊靭性値Kciは、脆性破面遷移温度vTrs(破面遷移温度vTrs)と相関があるとされており、これにより比例定数rは、表層近傍の破面遷移温度vTrsと相関があることになる。例えば、表層近傍の材料特性は、t/4部の材料特性で代表できると考えると、比例定数rは、t/4部の破面遷移温度vTrs(以下、[vTrs(t/4)]と略記する)と相関があるといえる。
一方、板厚中央部の抵抗Kは同部の動的破壊靭性値であり、通常の破壊靭性値と異なる。上記参考文献2によると、動的破壊靭性値(即ち、抵抗K)は、局部限界応力σFと相関がある。局部限界応力σFは、亀裂先端の極微小領域の引張破壊応力である。この引張破壊は結晶物の劈開破壊と粒界の延性破壊の連続である。
ここで、粒界の延性破壊に対する強度(応力)は、延性破壊部が多いほど高くなると考えられる。延性破壊部は、粒界が多いほど多く、即ち、結晶粒径dが小さいほど延性破壊に対する強度は高くなると考えられる。即ち、局部限界応力σは結晶粒径dに反比例するといえる。一方、d-1/2は一般的に破面遷移温度vTrsと比例関係にあるとされている。以上のことから、局部限界応力σは破面遷移温度vTrsと相関があるといえる。
例えば、板厚中央部近傍の材料特性は、t/2部の材料特性で代表できるとすると、Kdはt/2部の破面遷移温度vTrs(以下、[vTrs(t/2)]と略記する)と相関があるといえる。以上より、Kcaの代替パラメータである亀裂進展駆動力K0は、下記(8)式のように表すことができる。
0=Kd/(1−r)=f2(vTrs(t/2)/(1−f1(vTrs(t/4)))) …(8)
上記(8)式のf1( )、f2( )は夫々関数であり、例えば室温(25℃)での降伏応力σy、板厚t、および設計要件から得られる温度条件T0が把握できれば、破面遷移温度vTrs(t/4)およびvTrs(1/2)の関数として定式化できる。この定式化の手順は次の通りである。
まず、上記比例定数rについては、下記(9)式のように表すことができる(前記参考文献1)。
r=(4/π)(ts1/t)(σY1/σ0)cos-1{(a−1s1)/a} …(9)
但し、ts1:表層部の延性破壊(シアリップ)の幅(mm)、σY1:温度T0における鋼板表層近傍の高速引張変形時の降伏応力(MPa)、σ0:ESSO試験時の降伏応力(MPa)、a:亀裂長さ(mm)、1s1:サイドリガメント長さ(mm)、を夫々示す。
上記表層部の延性破壊(シアリップ)の幅ts1は、下記(10)式のように表すことができる。尚、下記(10)式において、ks1は係数(シアリップ幅と塑性域寸法の比)であり、前記参考文献2よりks1=2とする。
ts1=ks1・rp …(10)
また、上記(10)式において、rpは塑性域寸法(mm)であり、下記(11)式のように表わされる。
rp=1/6π・(KD(B)/σY12 …(11)
但し、KD(B):表層部近傍の動的破壊靭性値(MPa・mm1/2
前記参考文献2によれば、シアリップの発生部では、亀裂進展速度は極めて低速であることが示されているから、通常の破壊靭性値Kciと同等とできる。即ち、下記(12)式に示す通りである。
D(B)=Kci …(12)
破壊靭性値Kciは、例えば文献(北田博重著、博士論文「TMCPによる降伏点40kgf/mm2級鋼板の実船適用にあっての靭性要求基準に関する研究」(1990)、p32:以下、「参考文献3」と呼ぶ)によって、下記(13)〜(15)式のように、破面遷移温度vTrsとの相関が示されている。
Kci=3.81×(σy0/9.8)・exp{k0(1/iTk−1/T0)} …(13)
0=6.65・iTk−290 …(14)
iTk=(0.0032×σy0/9.8+0.391)vTrs+2.74(t)1/2+17.3 …(15)
但し、σy0:鋼材の室温(25℃)での降伏応力
ここで、板厚=60mm、降伏応力σy0=500MPaの鋼材を具体的に、応力σ0でESSO試験を実施した場合に、船舶等の設計要件から得られる温度条件T0でのK0を定式化してみる。船舶の場合、設計要件から得られる温度条件T0は、0〜−10℃であることが多いことから、ここではT0=−10℃と設定する。またESSO試験では、様々な応力条件で実験が行なわれるが、応力が低過ぎると亀裂進展量は、極めて小さく温度T0=−10℃の温度域まで、亀裂が進展しない可能性が高い。従って、十分に高い応力とする必要がある。船舶の場合、設計要件から設計応力が決められることが多く、この設計応力での亀裂停止性能を把握することが最も合理的である。そこで、ここではABS規格(アメリカ船級協会規格)ET40に対する設計使用応力(例えば、「日本船舶海洋工学講演論文集」 Vol.3(2006)、p359:以下「参考文献4」と呼ぶ)を用いて、σ0=252MPaとする。
このような例の場合には、vTrsとKciとは、比例関係を示すようになる。この関係から、本発明者らは、表層部のKci(Kci(B))を用いて、下記(16)式が得られることを明らかにしている。
D(B)=Kci(B)d=―92vTrs+32700 …(16)
尚、前記した(9)式のσY1は、温度T0(=−10℃)における鋼材表層近傍の高速引張変形時の降伏応力である。この降伏応力σY1は、表層近傍の亀裂進展速度に依存し、この速度を前記参考文献2に基づき100m/秒とすると、降伏応力σY1を参考文献のFig1(b)より、降伏応力σY1=800MPaが得られる。また前記(9)式に示したaは亀裂長さ、1s1はサイドリガメント長さであるが、1s1は前記参考文献2によれば、10〜20mm程度となる。また通常のESSO試験での亀裂長さaは300mm程度となることが多いことから、(a−1s1)/aは、およそ0.95程度となる。
以上より、比例定数rは、下記(17)式のように定式化できることになる。尚、ここでのvTrsは、表層近傍における材料の破面遷移温度vTrs[vTrs(表層近傍)]となる。例えば、前述のとおり、表層近傍のvTrsがt/4部のvTrsと同等と考えると、下記(18)式の関係が成立することになる。
r=3.288×10-9(−92v[Trs(表層近傍)]+32700)2…(17)
r=3.288×10-9(−92[vTrs(t/4)]+32700)2 …(18)
以上が、比例定数rの具体的な定式化例であるが、比例定数rの定式化については、以下のように理解することができる。即ち、比例定数rは、以下のような関数である。
r=f1’(ts1、σY1、σ0、(a−1s1)/a)
=f1’(KD(B)、ks1、σY1、σ0、(a−1s1)/a)
=f1’([vTrs(表層近傍)]、σy0、T0、t、ks1、σY1、σ0、(a−1s1)/a)
ここで、パラメータは、以下のように求められる。
vTrs(表層近傍):表面近傍の破面遷移温度(℃)→鋼材から採取
σy0:鋼材の室温(25℃)での降伏応力→鋼材から採取
0:設計要件から得られる温度条件である。
t:鋼板の厚さ→鋼材から採取
ks1:シアリップ幅と塑性域寸法の比→一般的な鋼材に対して参考文献2等に示されている。
σY1:温度T0における鋼材表層近傍の高速引張変形時の降伏応力→一般的な鋼材に対して参考文献2等に示されている。
σ0:設計要件から得られる負荷応力条件である。
(a−1s1)/a:aは亀裂長さ、1s1はサイドリガメント長さであり、いずれも一般的な鋼材に対して参考文献2により類推できる。
以上より、設計要件から求められる値と、文献から得られる値を除くと、
r=f1’([vTrs(表層近傍)]、σy0、t)となり、
ある降伏応力σy0および板厚tの条件に対して、r=f1’([vTrs(表層近傍)])と表すことができる。
一方、Kdの定式化の手順について詳細に説明する。前記参考文献2より、Kdは下記(19)式のように定式化される。
σF=σY2・Σyy{(1−ν2)(Kd/σY22/rc-s …(19)
上記(19)式において、σY2は温度T0(=−10℃)における板厚中央部近傍の高速引張変形時の降伏応力(MPa)であり、この降伏応力σY2は板厚中央部近傍の亀裂進展速度にも依存し、同速度を600m/秒(標準的なESSO試験で得られる亀裂進展速度)とすると、前記参考文献2のFig11(b)より、800MPaとなる。
上記νは、ポアソン比であり、0.3である。またrcは、局部領域を表す定数であり(単位:mm)、前記参考文献2より0.3mmとした。−sは、応力特異性の強さを表す指数であり、ここでは−10℃、亀裂進展速度600mm/秒での−sを前記参考文献2のFig11(c)から0.08とした。Σyyは、応力の強さを表す係数であり、前記参考文献2より、Σyy=4とする。
σFは、局部限界応力(MPa)であり、結晶粒径dを用いると、前述のとおり、1/d(=(−A・vTrs+B)2)と比例すると考えられる。ここで、A,Bは、文献(「熱処理」、Vol.47、No.2(2007)、p66:以下「参考文献5」と呼ぶ)から、A=3、B=1000とする。破面遷移温度vTrsの単位はKである。また、参考文献2により、局部限界応力σFは、4000〜4500MPaまでの値になるとし、それが破面遷移温度vTrsの変化(273〜263K)に対応すると仮定すると、下記(20)式のように表される。
σF=2.25×10-2vTrs2−15vTrs+6418 …(20)
以上より、Kdは下記の(21)式のように定式化されることになる。Kdの単位はMPa・mm1/2である。
d=5.68×10-20(2.25×10-2vTrs2−15vTrs+6418)6.25
…(21)
尚、ここでの破面遷移温度vTrsは、板厚中央部近傍の材料のvTrs[vTrs(板厚中央部近傍)]となる。例えば、前述のとおり、板厚中央部近傍の破面遷移温度vTrsがt/2部のvTrs[vTrs(t/2)]と同等と考えると、上記(21)式は、下記(22)式のように表すことができる。
d=5.68×10-20(2.25×10-2[vTrs(板厚中央部近傍)]2−15[vTrs(板厚中央部近傍)]+6418)6.25
=5.68×10-20(2.25×10-2[vTrs(t/2)]2−15[vTrs(t/2)]+6418)6.25 …(22)
以上が、Kdの具体的な定式化例であるが、Kdの定式化については、以下のように理解することができる。即ち、Kdは下記(23)式に示すような関数である。
d=f2’(σ、σY2、rc、ν、−s、Σyy
=f2’([vTrs(板厚中央部近傍)]、σY2、rc、ν、−s、Σyy)…(23)
ここで、各パラメータは、以下のように求められる。
vTrs(板厚中央部近傍):板厚中央部近傍の破面遷移温度(℃)→鋼材から採取
σY2:温度T0における板厚中央部近傍の高速引張変形時の降伏応力→一般的な鋼材に対して参考文献2等に示されている。
c:局部領域を示す定数→一般的な鋼材に対して参考文献2等に示されている。
ν:ポアソン比→一般的な鋼材に対し0.3とされている。
−s:応力特異性の強さを表す指数→一般的な鋼材に対して参考文献2等に示されている。
Σyy:応力の強さを表す係数→一般的な鋼材に対して参考文献2等に示されている。
以上より、設計要件から求められる値と、文献から得られる値を除くと、Kd=f2’([vTrs(板厚中央部近傍)])と表すことができる。
以上のようにして定式化されたrおよびKdによって、Kcaの代替評価パラメータK0値は、下記の(24)、(25)式[即ち、前記(3)式]のように表すことができる。
0=Kd(1−r)=5.68×10-20{2.25×10-2[vTrs(板厚中央部近傍)]2−15[vTrs(板厚中央部近傍)+6418}6.25/{1−3.288×10-9(−92[vTrs(表層近傍)]+32700)2} …(24)
=5.68×10-20{2.25×10-2[vTrs(t/2)]2−15[vTrs(t/2)]+6418}6.25/{1−3.288×10-9(−92[vTrs(t/4)]+32700)2} …(25)
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変形することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
実験例1
下記表1に化学成分組成を示す各種溶鋼を、転炉によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとした後、下記表2に示した条件で熱間圧延および冷却を行い、各種鋼板(厚み:60mm)を得た。
Figure 0005284075
Figure 0005284075
得られた各鋼板について、ミクロ組織(ベイナイト分率、t/4部およびt/2部の平均結晶粒径)、機械的特性(鋼板の引張特性、脆性亀裂伝播停止特性)を下記の方法によって測定した。測定結果を、下記表3に示す。
[ベイナイト分率]
各鋼板のt/4、t/2(t:板厚)の各位置から試験片を採取し、圧延方向断面を鏡面研磨し、これをナイタール腐食液(2%硝酸−エタノール溶液)でエッチング後、5視野において光学顕微鏡を用いて400倍の観察を行ない、画像解析によって鋼組織中のベイナイト分率(面積%)を測定した。
[結晶粒径の平均サイズの測定]
1.鋼板の圧延方向に平行な方向に切断した、板厚の表裏面を含むサンプルを準備する。
2.♯150〜♯1000までの湿式エメリー研磨紙あるいはそれと同等の機能を有する研磨方法(研磨紙、ダイヤモンドスラリー等の研磨剤)を用いて鏡面仕上げを施す。
3.鋼板のt/4〜t/2部において、FE−SEM−EBSP(電子放出型走査電子顕微鏡を用いた電子後方散乱回折像法)によって結晶粒径を測定した。具体的には、Tex SEM Laboratries社のEBSP装置(商品名:「OIM」)をFE−SEMと組み合わせて用い、傾角(結晶方位差)が15°以上の境界を結晶粒界として、結晶粒径を測定した。このときの測定条件は測定領域:200μm×200μm、測定ステップ:0.5μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外した。このようにして求められる結晶粒径の平均値を算出して、本発明における平均結晶粒径dとした。
4.テキストデータの解析法として、結晶粒径が2.5μm以下のものについては、測定ノイズと判断し、平均値計算の対象から除外した。
[母材の引張特性の評価]
各鋼板のt/4(t:板厚)の位置からNK U14A試験片を採取し、JIS Z2241に従って引張試験を行うことによって、降伏点YPおよび引張強度TSを測定した。
[脆性亀裂伝播停止特性]
脆性亀裂伝播停止特性(アレスト特性)は、社団法人日本溶接協会(WES)発行の鋼種認定試験方法(2003年3月31日制定)で規定される「脆性破壊伝播停止試験」に準じて行った。試験は、脆性破壊伝播停止試験方法の図7.2に示されている形状の試験片を用い、該試験片に−190℃〜+60℃の範囲から選ばれる任意の温度範囲で温度勾配をつけて4試験体分行った。Kca値は下記(26)式で算出した。下記(26)式中、cは伝播部入口から脆性亀裂先端までの長さ、σは伝播部入り口から脆性亀裂先端までの長さ、Wは伝播部幅を、夫々示している。
Figure 0005284075
Tを脆性亀裂先端の温度(単位はK)とし、X軸を1/T、Y軸を算出したKca値として1/TとKca値の相関関係を示すグラフを作成し、4点の近似曲線と273Kとの交点を−10℃でのKca値とした。−10℃でのKca値を下記表3に示した。本発明では、−10℃でのKcaが7000MPa・mm1/2を超える場合を合格(脆性亀裂伝播停止特性に優れる)とする。
Figure 0005284075
これらの結果から明らかなように、実験No.1〜5は、本発明で規定する要件を満足するものであり、脆性亀裂伝播停止特性に優れた厚鋼板が得られている。これに対して、実験No.6〜8のものでは、本発明で規定するいずれかの要件を外れており、いずれかの特性が得られていないことが分かる。

Claims (3)

  1. C:0.05〜0.12%(「質量%」の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.05〜0.30%、Mn:1.0〜1.8%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.03%、Cu:0.60〜2.0%、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.010%以下(0%を含まない)、Al:0.01〜0.06%を夫々含有し、残部:鉄および不可避的不純物からなり、且つ下記(1)式で規定されるX値が(X値>1)の関係を満足すると共に、ミクロ組織がベイナイトを主体とするものであることを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用厚鋼板。
    X値={0.08[Mn]+0.04([Cu]+[Ni])+2[Nb]}/5[C]
    …(1)
    但し、[Mn]、[Cu]、[Ni]、[Nb]および[C]は、夫々Mn、Cu、Ni、NbおよびCの含有量を示す。
  2. 更に、Ni:2%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の構造用厚鋼板。
  3. 表面から深さt/4(t:板厚、以下同じ)およびt/2の位置の平均結晶粒径を、夫々d(t/4)およびd(t/2)としたとき、下記(2)式で規定されるK0値が、(K0>10500)の関係を満足する請求項1または2に記載の構造用厚鋼板。
    0値=5.68×10-20{2.25×10-2[−400・d(t/2)-1/2+313]2−15[−400・d(t/2)-1/2+313]+6418}6.25/{1−3.288×10-9(−92[−400・d(t/4)-1/2+313]+32700)2} …(2)
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