JP5283424B2 - 腹圧性尿失禁症モデル動物の作製方法 - Google Patents

腹圧性尿失禁症モデル動物の作製方法 Download PDF

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本発明は、腹圧性尿失禁症モデル動物の作製方法および前記動物を用いた腹圧性尿失禁症に作用効果を有する薬物のスクリーニング方法に関するものである。
腹圧性尿失禁症とは、咳をした時など急に腹圧がかかった際に尿がもれる状態をいい、骨盤底筋群が弱くなることで、尿道が上記腹圧に絶えきれないために起きるものである。この腹圧性尿失禁症の治療法としては、無張力膣テープ設置術(TVT:Tension-free
Vaginal Tape)が一般的である。一方、治療薬の開発も行われており、一般的には、ミ
ルナシプランなどの薬剤が開示されているが、より有効な治療薬の開発が求められている。
腹圧性尿失禁症の治療薬の開発には、モデル動物が用いられるが、現在、腹圧性尿失禁症のモデル動物としては、例えば尿道括約筋を支配している神経を外科的に損傷、あるいは部分切断することにより作製されたものや(例えば非特許文献1)、子宮内にバルーンカテーテルを挿入して極限まで膨張させ、子宮を弛緩させることにより作製されたもの(例えば、非特許文献2、3及び4)などが開示されている。しかし、これら公知のモデル動物は、いずれも外科的処置を行って神経や筋肉の損傷があることから必ずしも適切なモデルとは言えなかった。そこで、より患者の病態に近いモデル動物の開発が望まれていた。
また、前記モデル動物を用いて、腹圧性尿失禁症の治療薬などのスクリーニングを行う場合、腹圧性尿失禁症状の適切な検定が行われることが好ましい。これまでに、動物のヒゲで鼻腔を刺激してくしゃみを起こさせ、その際の尿道内圧(歪センサー使用)を測定して指標とする方法(例えば非特許文献5を参照)や、麻酔下の動物の腹部を電気刺激してくしゃみ様筋収縮を誘発し、陰部の湿り気をセンサーで感知あるいはLUV(Leak Urine Volume)を測定して指標とする方法(例えば非特許文献6)などが開示されている。しかし、上記検定方法では、排尿を直接検出していないことや、麻酔下の動物を検定を行ことなどから、適切な病態の検定方法とは言えなかった。
特表平10−506803号公報 J. M.Kerriis et al. , Neurourology and Urodynamics;23:166-171(2004) Lin AS,Carrier S et al., Urology.1998 Jul,52(1):143-51 T.W.Cannon et al.,BJU International.2002;90:403-407 Kaiho, Y. et al., Am J Physiol Renal Physiol. 2007 Feb;292:F639-46 Kaiho,Y. et al., Am J Physiol Renal Physiol. 2007 Feb;292:F639-46 河合裕子ら、日本排尿機能学会誌;第18巻第1号(2007)
本発明は、腹圧性尿失禁症モデル動物の作製方法を提供することを課題とする。さらには、前記モデル動物を用いて被検物質をスクリーニングする方法、および被検動物における腹圧性尿失禁症状のより良い検定方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、ラットの骨盤底筋付近にボツリヌス毒素Aを投与し、該動物に電気刺激を与えて腹圧の上昇を確認した後、排尿までにかかる
時間を測定したところ、対照とした正常ラットでは、腹圧の上昇から排尿まで6〜8秒のタイムラグがあるのに対し、ボツリヌス毒素を投与したラットでは、腹圧の上昇とほぼ同時に排尿が観察された。また、ボツリヌス毒素を投与したラットに、腹圧性尿失禁症の治療薬として公知のミルナシプランを投与したところ、腹圧上昇直後の排尿は観察されず、約20分後に自然排尿が観察された。本発明は、これらの知見をもとに完成されたものである。
即ち、本発明の要旨は、
(1)非ヒト哺乳動物の骨盤底筋あるいは括約筋の周辺に、骨格筋を局所的に弛緩させる作用を有する薬物を投与することを特徴とする、腹圧性尿失禁症モデル動物の作製方法、(2)骨格筋弛緩作用を有する薬物が、ボツリヌス毒素である上記(1)に記載の方法、(3)非ヒト哺乳動物が、サル、イヌ、ウサギ、モルモット、ハムスター、マウスまたはラットである上記(1)または(2)に記載の方法、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法で作製された腹圧性尿失禁症モデル動物、
(5)上記(4)に記載の動物に被検物質を投与し、腹圧性尿失禁の抑制または増強効果を検定することを特徴とする腹圧性尿失禁症に作用効果を有する薬物のスクリーニング方法、
(6)腹圧性尿失禁の抑制または増強効果の検定が、前記動物に腹圧を上昇させる刺激を与えた後、前記動物の腹圧の上昇を確認し、前記腹圧の上昇から排尿までの時間を測定することを特徴とする上記(5)に記載の方法、
(7)被検動物に腹圧を上昇させる刺激を与えた後、前記動物の腹圧の上昇を確認し、前記腹圧の上昇から排尿までの時間を測定することを特徴とする腹圧性尿失禁症状の検定方法、である。
本発明の方法により製造された腹圧性尿失禁症モデル動物は、外科的処置がされておらず、より患者の病態に近いものであるため、腹圧性尿失禁症へ作用効果を有する薬物のスクリーニングに効果的に用いることができる。また、本発明の腹圧性尿失禁症状の検定方法は、無麻酔下の動物を用い、かつ実際の排尿を検出する方法であるので、被検物質の該症状への効果を的確に検定することができる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
<腹圧性尿失禁症モデル動物の作製>
本発明の腹圧性尿失禁症モデル動物(以下、「本発明のモデル動物」と称することがある)は、非ヒト哺乳動物の骨盤底筋あるいは括約筋の周辺に骨格筋を局所的に弛緩させる作用を有する薬物を投与することにより作製することができる。
「非ヒト哺乳動物」とは、後述する腹圧性尿失禁症に作用効果を有する薬物のスクリーニング(以下、「本発明のスクリーニング方法」と称することがある)に被検動物として用いられるものであれば特に制限はないが、具体的には、サル、イヌ、ウサギ、モルモット、ハムスター、マウス、またはラットなどが挙げられる。このうち、ラットが好ましく用いられる。これらの動物は、正常動物でもよいが、例えば、高血圧、腎疾患、糖尿病発症モデル、高脂血症発症モデル、あるいは筋ジストロフィーモデル動物などの公知の疾患モデル動物を用いてもよい。
「骨格筋を局所的に弛緩させる作用を有する薬物」とは、投与した付近の骨格筋を局所的に弛緩させる作用を有し、かつその作用効果が少なくとも1ヶ月以上維持されるものが好ましく、3ヶ月程度維持されるものがさらに好ましい。また、投与により、動物に対して骨格筋弛緩作用以外の効果(毒性など)が無いものが好ましい。具体的には、ボツリヌス毒素A、塩化スキサメトニウム、サクシニルコリン、カルバミン酸クロルフェネシン、
クロルゾキサゾン、臭化パンクロニウム、臭化ベクロニウム、d−ツボクラリン、ダントロレンナトリウム、フェンプロバメート、メシル酸プリジノール、メトカルバモール、テトロドトキシン、局所麻酔薬一般(キシロカイン、テトラカイン、ジブカインなど)、アルコール、およびフェノールなどが用いられる。これらのうち、ボツリヌス毒素、特にボツリヌス毒素Aが好ましく用いられる。
上記薬物の前記動物への投与方法は、局所的効果を得るために骨盤底筋あるいは括約筋の周辺へ筋肉内注射などで投与する方法が好ましいが、これらに限るものではない。また、投与量は、用いる動物の種類や、週齢、体重、および投与する薬剤に応じて適宜調整することができるが、例えば12週齢のSD雌ラットで、骨盤底筋あるいは括約筋の周辺にボツリヌス毒素Aを投与する場合には、0.01μgを投与することが好ましい。投与量の選択の指標としては、刺激によりLUV(Leak Urine Volume)確認する方法などが好ましく用いられる。また、投与回数も、前記薬剤の効果に応じて適宜選択することができる。
本発明のモデル動物を、腹圧性尿失禁の症状の検定に用いる場合には、さらに腹圧を測定するための装置(バルーンカテーテルなど)、腹圧上昇を誘導する刺激を与えるための電極、及び膀胱内へ生理食塩水を送入したり膀胱内圧を測定するための装置(カテーテルなど)をそれぞれ手術により留置する。
前記薬物を投与して検定に必要な器具を装着した動物は、適当な馴化期間の後に、好ましくは後述する腹圧性尿失禁症状の検定により該症状を呈することを確認した後に、モデル動物として薬物のスクリーニングなどに用いられる。
<腹圧性尿失禁症に作用効果を有する薬物のスクリーニング方法>
上記腹圧性尿失禁症モデル動物は、これに被検物質を投与した後に、腹圧性尿失禁の抑制または増強効果を検定することにより腹圧性尿失禁症に作用効果を有する薬物のスクリーニングを行うことができる。
本発明のスクリーニング方法において、「被検物質」とは、本発明のモデル動物の腹圧性尿失禁症状に影響を及ぼす可能性のある物質であれば如何なるものであってもよい。具体的には、例えばぺプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、低分子化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、動物組織抽出液などが挙げられる。これらの物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。
被検物質の本発明のモデル動物への投与の時期、順序、および添加量などは被検物質の種類や動物の種類、体重、週齢などによって適宜選択することができる。具体的には、例えば約0.01〜1000mg/kgの被検物質を本発明のモデル動物に投与することができる。
被検物質を投与して適当な時間後に、該動物の腹圧性尿失禁症状を検定することによって被検物質のスクリーニングを行う。腹圧性尿失禁症状の検定は、それ自体公知の方法を用いることもできるが、後述の腹圧上昇から排尿までの時間を測定してこれを指標とする方法を用いることが好ましい。
本発明のモデル動物に被検物質を投与した後、腹圧性尿失禁症状の抑制効果が認められれば、該被検物質は腹圧性尿失禁症の治療薬となる可能性がある。逆に腹圧性尿失禁症状が増強(悪化)した場合には、該被検物質には腹圧性尿失禁症を悪化させる作用があることが検出でき、薬物の安全性試験として該スクリーニングを用いることができる。また、本発明のモデル動物として、他疾患のモデル動物を材料として用いた場合には、該疾患と腹圧性尿失禁症の合併症などへの影響を有する薬物のスクリーニングに用いることができる。
本発明のスクリーニング方法で得られた、腹圧性尿失禁症に対し抑制効果を有すると判定される医薬物質は、それ自体既知の方法により試験管内、あるいは生体内における薬理学的または生理学的試験により、その医薬としての活性や安全性のスクリーニングを行なうことにより該疾病治療薬とすることができる。また、上記医薬物質はそれ自体を単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬組成物として用いることもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。かくして得られる腹圧性尿失禁症治療薬は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、液剤などの剤形として経口的に投与してもよいし、あるいは薬学的に許容し得る液との無菌性溶液または懸濁剤形などの注射剤として非経口的投与、例えば静脈内投与、筋肉内投与、局所内投与、皮下投与してもよい。また坐薬としての投与も可能である。
経口、経腸、非経口の組成物を調製する場合には、有機または無機の固体か液体の担体や希釈剤とともに通常用いられる単位容量形態で混和することによって行うことができる。これら製剤における有効成分量は、指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。固形製剤を製造する際に用いられる賦形剤としては、例えば乳糖、ショ糖、デンプン、タルク、セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウムなどが用いられる。経口投与のための液体製剤、すなわちシロップ剤、懸濁剤、液剤などは、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水、植物油などを含む。この製剤は、不活性な希釈剤以外に補助剤、例えば湿潤剤、懸濁補助剤、甘味剤、香味剤、着色剤、保存剤、安定剤などを含むこともできる。非経口投与の製剤、すなわち注射剤、坐剤などの製造に用いられる溶剤または懸濁化剤としては、例えば水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、オレイン酸エチル、レシチンなどが挙げられる。坐剤に用いられる基剤としては、例えばカカオ脂、乳化カカオ脂、ラウリン脂、ウィテップゾールなどが挙げられる。
<腹圧性尿失禁症状の検定>
腹圧性尿失禁症状の検定は、被検動物に腹圧を上昇させる刺激を与えたことによる前記動物の腹圧の上昇を確認し、腹圧の上昇から排尿までにかかる時間を測定することにより行われる(以下、これを「本発明の検定方法」と称することがある)。ここで、「被検動物」とは、本発明のモデル動物を用いることもできるし、公知の腹圧性尿失禁症のモデル動物を用いることもできる。さらに、正常動物を用いることによれば、腹圧性尿失禁症の発症や増強などを観察することもできる。
「本腹圧を上昇させる刺激」とは、前記動物の腹圧を、例えば20〜30mmHGとなる程度に上昇させる刺激をいう。具体的には、被検動物の腹部皮下に設置した電極から1〜15Vの電流を流すことなどで誘導することが好ましいが、これに限らず、音、物理的刺激、超音波、熱、くしゃみや咳の誘導などにより行われる。本発明の検定方法では、この刺激による腹圧の上昇度が、いずれの被検動物においても常に同じとなるように調整して、その後の検討を行うことが好ましい。この調整を行うことは、本発明のスクリーニング方法などにおいてより正確に被検物質の影響を検出するために有効である。
上記刺激による被検動物の腹圧上昇の確認は、動物の腹腔内に手術的処置により留置したバルーンカテーテルなどを用いて、上記非特許文献2に記載の方法などにより腹圧を測定することにより行うことができる。
腹圧の上昇から排尿までにかかる時間の測定方法は、特に制限はないが、より正確な測定のためには実際の排尿を検出することが好ましい。そこで、被検動物が排尿をすることが必要となるので、該動物の膀胱へ生理食塩水を導入しておくことが好ましい。生理食塩水などの被検動物の膀胱への導入は、予め該動物の膀胱へカテーテルなどを外科的処置により留置しておいて、該カテーテルを用いて導入する方法(例えば、非特許文献2、3及び4に記載)が好ましい。また、被検動物の排尿の確認は、排尿のタイミングを測定できる方法であれば如何なるものでもよいが、例えば、飼育ケージから排出された水分量を重量などで測定する方法などが挙げられる。さらに、膀胱内圧を測定することにより、律動的膀胱収縮が観察される自然排尿とこれを伴わない失禁との区別がつくため、より正確な検定を行うことができる。
かくして測定された腹圧上昇から排尿までにかかる時間が、被検物質を投与していないなどの対照と比べて、短くなっていれば腹圧性尿失禁症状が増強(悪化)していると判断することができる。また、上記対照と比べて変化が無い場合には、該被検物質には腹圧性尿失禁症状への影響がないと判断することができる。また、対照を正常動物とすれば、正常状態との比較を行うこともできる。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 腹圧性尿失禁症モデル動物の製造
(1)ボツリヌス毒素の投与
12週齢のSD雌ラット(日本チャールスリバー社製)10匹の陰部に、生理食塩液に0.01μg/mLの濃度で溶解したボツリヌスA毒素(和光純薬工業社製)1mLを筋
肉内投与して1週間の馴化期間を置いた。また、コントロールとして同様のラット10匹の
陰部に、生理食塩液1mLを投与して、同様に1週間馴化期間を置いた。
(2)測定用器具の装着
1週間馴化した後の前記ラットを麻酔下で開腹し、膀胱頂部に膀胱内圧測定および、生理食塩液注入用のカテーテル(ベクトンディッキンソン社製、INTRAMEDIC Polyethylene Tubing)を留置した。また、同じラットの腹腔内には、以下の方法で作製した腹圧測定用のバルーンカテーテルを留置し、さらに、腹部皮下に電気刺激用の電極を留置した。これらは皮下を通し背部に導き、途中をステンレス製スプリングで保護して、シーベルに接続してフリームービング処置を施した。上記バルーンカテーテルは、ポリエチレンチューブ(INTRAMEDIC社製:PE50)のチューブの先端を火で炙り丸くした後、注射針を切って作製した芯を上記チューブの先端に根本まで挿入し、スキンの先端部を上記チューブに被せて糸で縛り、糸の結び目とスキンの断端をシリコンでコーティングして作製した。
膀胱内圧測定用カテーテルおよび腹圧測定用のバルーンカテーテルはそれぞれ一方を圧トランスデューサーに接続した。尿の量を測定するため、ケージ下に天秤を設置した。
(3)腹圧性尿失禁症状の確認
上記(2)の手術の4日後に、以下の測定を実施した。(1)で作製したボツリヌス毒
素を投与したラット(以下、「モデルラット」と称する)と、(1)で作製したコントロール用ラットの膀胱内に3mL/minの流速で生理食塩液を注入しながら、膀胱内圧および腹圧を連続測定し、同時に排尿状況も連続的に記録した。
生理食塩水の注入から約10分後に、上記ラットの腹部皮下に留置した電極から延長したリード線を電気刺激装置(日本光電社製SS106型)に接続し、矩形波(刺激電圧:1〜15V、パルス幅0.05msec)の刺激を送り、腹圧を20〜30mmHGに上昇させた。
この時のモデルラットの代表例およびコントロール用ラットの代表例における膀胱内圧、腹圧、および排尿状況の結果を、図1(モデルラット)および図2(コントロール用ラット)に示した。
図2より、コントロール用ラット(正常動物)では、電気刺激(図の点線時)を与えると同時に腹圧が上昇して、その後約8秒後に排尿が観察された。これに対して、モデルラ
ットでは、電気刺激とともに腹圧が上昇して、ほぼ同時に排尿が観察された。つまり、モデルラットには、正常動物に見られる腹圧上昇から排尿までのタイムラグが見られず、腹圧性尿失禁症の症状を呈していることが確認された。
[実施例2] 腹圧性尿失禁症治療薬のモデルラットへの影響
(1)ミルナシプランの投与
実施例1の(1)および(2)に記載のとおり作製したモデルラット5匹に、それぞれ腹圧性尿失禁症治療薬として公知のミルナシプラン(シグマ社製)を注射用水(株式会社大塚製薬工場)に溶解して5mg/kg(人の臨床1日最大量の3倍量)経口投与した。また、コントロールとして、上記モデルラットに、上記注射用水を5mL/kg投与した。
(2)腹圧性尿失禁症状の検定
上記でミルナシプランを投与してから30分後、及び2時間後に、実施例1(3)に記載と同様の測定を行った。この結果を図3〜5に示す。図3は、モデルラットにミルナシプラン投与して30分後の様子であるが、投与前には、図1のように、電気刺激とほぼ同時に排尿していたのが、投与後には電気刺激には反応せず、そのおよそ17分後に自然排尿を観察した。また、図4は、モデルラットにミルナシプラン投与して2時間後の結果で
あるが、ここでも、電気刺激には反応せず、その29分後に自然排尿が観察された。また、コントロールの動物では、実施例1での測定と同様に、電気刺激とほぼ同時(約2秒後)に排尿を観察した(図5)。これらのことから、ミルナシプランは、上記腹圧性尿失禁症モデルラットの症状を抑制することがわかった。
本発明の腹圧性尿失禁症モデル動物は、外科的処置などを行っていないため、腹圧性尿失禁症患者における病態に近いモデル動物として、該疾患の治療薬などのスクリーニングに有用である。
本発明のモデル動物の電気刺激から腹圧上昇、排尿を経時的に観察した結果を示すグラフである。 正常動物の電気刺激から腹圧上昇、排尿を経時的に観察した結果を示すグラフである。 本発明のモデル動物にミルナシプランを投与した30分後の電気刺激から腹圧上昇、排尿を経時的に観察した結果を示すグラフである。 本発明のモデル動物にミルナシプランを投与した2時間後の電気刺激から腹圧上昇、排尿を経時的に観察した結果を示すグラフである。 本発明のモデル動物に生理食塩水を投与した30分後の電気刺激から腹圧上昇、排尿を経時的に観察した結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 非ヒト哺乳動物の骨盤底筋あるいは括約筋の周辺に、ボツリヌス毒素を投与することを特徴とする、腹圧性尿失禁症モデル動物の作製方法。
  2. 非ヒト哺乳動物が、サル、イヌ、ウサギ、モルモット、ハムスター、マウスまたはラットである請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法で作製された腹圧性尿失禁症モデル動物。
  4. 請求項に記載の動物に被検物質を投与し、前記動物に腹圧を上昇させる刺激を与えた後、前記動物の腹圧の上昇を確認し、前記腹圧の上昇から排尿までの時間を測定することを特徴とする腹圧性尿失禁症に作用効果を有する薬物のスクリーニング方法。
  5. 被検動物に腹圧を上昇させる刺激を与えた後、前記動物の腹圧の上昇を確認し、前記腹圧の上昇から排尿までの時間を測定することを特徴とし、前記動物は非ヒト哺乳動物である腹圧性尿失禁症状の検定方法。
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