(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1による通信システムについて説明する。図1は、本発明の実施の形態1による通信システムを構成するノードのブロック図を示している。ノードは、図略のネットワークに接続された通信装置により構成され、他のノードとの間において、通信信号を送受信する。
本実施の形態では、ネットワークとして、例えば、電話網(固定電話網および移動体電話網)、ISDN網、光通信網、WAN(Wide Area Network)、及びIEEE802.11aの無線LAN(Local Area Network)等の通信網を採用することができる。なお、本実施の形態においては、各ノードは等間隔で(距離:L)で接続されているものとする。
図1に示すノードは、マルチホップ通信を行うものであり、ソースノード、ディスティネーションノード、及び中継ノードとして機能する。
ノードは、ルート情報に基づいて、ディスティネーションノードまで通信ルートを決定する機能を備えている。なお、ネットワークの伝送路としては、有線及び無線のいずれを採用してもよい。
ノードは、受信部10、記憶部20、送信部30、送受信切替部40、及び制御部50を備えている。受信部10は、伝送路からの通信信号を制御部50が処理可能な形式のデータに変換し、制御部50に出力する。
記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の書換え可能な不揮発性記憶素子、及びROM(Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子等の半導体記憶素子により構成される。
本実施の形態では、記憶部20は、特に、送信電力テーブルを記憶している。送信電力テーブルは、隣接ノードが通信信号を正常に受信することができる送信電力の最小値を決定するために、隣接ノード毎に予め定められた電力調整情報が記載されたテーブルである。なお、隣接ノードとは、あるノードから送信された通信信号を後述する基準送信電力値で送信した場合に到達させることができる当該あるノードの周囲のノード、つまり1ホップで送信可能なノードを示している。
図2(B)はある1つのノードであるノードTxにおける送信電力テーブルの一例を示す図であり、図2(A)はノードTxと隣接ノードとの接続関係を示したネットワーク図を示している。なお、図2(B)の送信電力テーブルにおいては、ノードTxから通信距離が2ホップの範囲内に位置する12個のノードA〜Lが隣接ノードとされている。
図2(B)に示すように送信電力テーブルは、送信先ノード、電力レベル、及び送信電力の欄を備えている。なお、図2(B)では、電力レベル及び送信電力の欄に格納された各数値が電力調整情報となる。送信先ノードの欄には、ノードTxの隣接する12個のノードA〜Lを識別するための識別データが格納されている。なお、識別データとしては、各ノードに一意的に割り付けられた記号列が採用され、例えばMACアドレスを採用することができる。
電力レベルの欄には、各送信先ノードに通信信号を転送する際の送信電力のレベルが格納されている。ここで、送信電力のレベルは、送信電力のレベルを段階的に示す数値であり、例えば1〜4等の整数で表され、数値が大きくなるにつれて送信電力が大きくなることを示している。
送信電力の欄には、送信電力のレベルに対応する具体的な送信電力を決定するための数値が格納されている。図2(B)では、送信電力の欄には、所定の基準送信電力値に対する比が格納されている。したがって、基準送信電力値に送信電力の欄に格納された比を乗じることで、送信電力の実際の値が算出される。
その他、記憶部20は最小受信電力値、基準送信電力値、及びルーティングテーブルを記憶している。最小受信電力値は、各ノードが通信信号を受信することができる予め定められた最小の電力値であり、各ノード共通の値が設定されている。
基準送信電力値は、各ノードが通信信号を送信することができる予め定められた最大の電力値であり、各ノード共通の値が設定されている。
ルーティングテーブルは、通信ルートを決定する際に使用される種々の情報を格納する。本実施の形態では、ソースノードが通信ルートを決定し、決定した通信ルートをルート情報として通信信号に含ませて送信し、中継ノードは受信した通信信号に含まれるルート情報と、記憶部20に記憶されたルーティングテーブルとを参照して、次の中継ノードに通信信号を転送する。そのため、ルーティングテーブルは、ソースノードが通信ルートを決定する際、及び通信信号を転送する際に使用される。
なお、ルーティングテーブルは、例えばRIP(Routing Information Protocol)やOSPF(Open Shortest Path First)等の手法を用いて各ノードにより作成される。
受信部10は、例えば専用のハードウエア回路により構成され、伝送路を流れる通信信号を受信する。本実施の形態では、受信部10は、特に、測定部11、設定部12、及び判定部13を備えている。
測定部11は、各隣接ノードから所定の基準送信電力値で送信された通信信号である基準通信信号の電力値を測定する。
ここで、基準通信信号は、例えば、ネットワークの構築時やネットワークの変更時等の実際の通信に先立って実行される電力測定モードにおいて送信される。各ノードは、基準通信信号を例えばブロードキャストにより他のノードに向けて送信する。基準通信信号には、送信元であるソースノードを識別するための識別データ(例えばMACアドレス)、基準通信信号であることを示すデータ等が含まれている。
設定部12は、最小受信電力値と測定部11により測定された測定値とを基に、各隣接ノードの通信信号の受信電力が最小受信電力値を超えるような送信電力の最小値を求め、求めた最小値を基に各隣接ノードの電力調整情報を設定する。
以下、基準通信信号を受信するノードを図2(A)のノードTxとし、基準通信信号を送信するノードを図2(A)のノードCとした場合を例に挙げて、ノードTxの設定部12の処理を図3〜図5を用いて具体的に説明する。
本実施の形態では、各ノードは、受信電力及び送信電力を例えば4ビットのデジタルデータ、すなわち16段階で測定及び設定できる。したがって、受信電力及び送信電力の最大値を共に基準送信電力値とすると、受信電力及び送信電力の基準送信電力値比は、それぞれ図3及び図4で示すテーブルで表すことができる。なお、上記の4ビットは一例であり、他のビット数を採用してもよい。
図3及び図4は、本実施の形態におけるノードが測定及び設定することができる受信電力及び送信電力を示したテーブルである。ここで、ノードTxは、図3及び図4に示すテーブルを記憶部20に記憶しているものとする。
図3に示すテーブルは、電力レベルの欄と受信電力の欄とを備えている。電力レベルの欄には、受信電力の電力レベルが記載され、受信電力の欄には、基準送信電力値P0を最大値としたときの受信電力の基準送信電力値比が記載されている。
ノードTxの測定部11が測定したノードCからの基準通信信号の測定値が図5に示すように0.8125P0であった場合、基準通信信号の減衰量は0.1875P0(=P0−0.8125P0)である。
ここで、最小受信電力値Pminを0.0625P0とすると、ノードCが受信できるためのノードTxの送信電力の最小値は0.0625P0/0.8125=0.0769P0と計算できる。
したがって、ノードTxの設定部12は、測定部11により測定された測定値である0.8125P0をP0で除した値(=0.8125)を算出し、得られた値で、最小受信電力値Pminを除すことで(=Pmin/(測定値/P0))、ノードCが受信することのできる送信電力の最小値を算出する。
ここで、0.0769P0の基準送信電力値比である0.0769は図4に示すテーブルに存在しない。そのため、設定部12は、図4に示すテーブルの中から0.0769以上であって、0.0769に最も近い値である0.1250を、図2(B)のノードCに対する送信電力の欄に書き込む。また、設定部12は、図4に示すテーブルから0.1250に対応する電力レベルを送信電力レベルの電力レベルに書き込む。
図1に戻り、判定部13は、受信した通信信号が自身ノードで受信すべき信号であるか否かを判定する。ここで、判定部13は、電力測定モードにおいて隣接ノードから送信された通信信号、通信モードにおいて自身を中継ノードとする通信信号、又は自身をディスティネーションノードとする通信信号を受信した場合、この通信信号を制御部50に出力し、それ以外の通信信号を受信した場合、この通信信号を破棄すればよい。
この場合、制御部50は、不要な通信信号に対する処理を実施せずに済む。なお、電力測定モードにおいて、隣接ノードから送信された通信信号を破棄しないのは、隣接ノードから送信電力テーブルを作成するための基準通信信号が送信されるからである。
制御部50は、例えばCPUにより構成され、ノードの全体制御を司る。本実施の形態では、制御部50は、特に調整部51を備えている。調整部51は、隣接ノードのうち通信対象の隣接ノードの電力調整情報を記憶部20に記憶された送信電力テーブルから特定し、特定した電力調整情報を基に、通信対象の隣接ノードに送信する通信信号の送信電力を調整する。
具体的には、自身のノードが図2(A)に示すノードTx、送信対象のノードがノードCであるとすると、調整部51は、図2(B)の送信電力テーブルを参照して、基準送信電力値比で示されたノードCの送信電力である0.1250を特定し、ノードCに送信する通信信号の送信電力を0.1250P0に設定する。
図1に戻り、送信部30は、ネットワークの通信プロトコルに従った通信信号を生成し、ネットワークに送信する。本実施の形態では、特に送信部30は、調整部51により設定された送信電力で通信信号をネットワークに送信する。
送受信切替部40は、伝送路に接続され、制御部50から通信信号を送信する指示を受けた場合、送信部30を伝送路に接続し、通信信号を受信するときは受信部10を伝送路に接続することで、通信動作を切り替える。
なお、送信電力テーブルには、隣接ノードの電力調整情報を格納することが好ましい。隣接ノードの定義は、アプリケーションによって異なるが、一例として、図19では、各ノードの通信距離をLとし、2L離れたノードを隣接ノードとした場合が示され、図20では、各ノードの間隔をLとし、L離れたノードを隣接ノードとした場合が示されている。なお、ここで、隣接ノードは、予め外部から設定してもよいし、RIP等により、ネットワーク内におけるノードの配置情報を取得し、取得した配置情報を用いて設定してもよい。この場合、配置情報から所定の距離範囲内に配置されたノードを隣接ノードとすればよい。
図19及び図20を比較すると、L離れたノードを隣接ノードとする図20の方が、到達範囲ZDが小さくなり、輻輳が発生し難くなっている。そのため、輻輳を防止するという観点からは、L離れたノードを隣接ノードとすることが好ましい。
また、図2に示す送信電力テーブルは、自律的に作成する必要はなく、外部の装置により予め作成された送信電力テーブルを記憶部20に書き込むようにしてもよい。この場合、測定部11及び設定部12を省くことができ、装置の低コスト化及び小型化を図ることができる。
また、記憶部20は、図2(B)に示す通信電力テーブルに変えて、図6に示す通信電力テーブルを記憶してもよい。
図6は、通信電力テーブルの他の一例を示した図である。図6に示す送信電力テーブルは、図2(B)の送信電力テーブルに加えて更に、2列目に示す受信電力の電力レベルの欄と、3列目に示す受信電力の欄とが含まれている。ここで、受信電力の欄には、測定部11が測定した基準通信信号の測定値を基準送信電力値比で示した値が格納され、電力レベルの欄には、測定値の基準送信電力値比の電力レベルが格納されている。
この場合、調整部51は、図2(A)において距離がL離れたノードC,F,G,Jの全てに通信信号を送信したい場合、図6に示すノードC,F,G,Jの送信電力の基準送信電力値比である0.1250,0.1250,0.1250,0.2500のうち、最大の値である0.2500に基準送信電力値P0を乗じた値を送信電力として設定すればよい。これにより、通信信号はノードC,F,G,Jにおいて、最小受信電力値Pmin以上で到達し、ノードC,F,G,Jは、ノードTxからの通信信号を受信することができる。
なお、調整部51は少し余裕をみて、ノードC,F,G,Jの送信電力の基準送信電力値比の最大の値である0.2500よりも1段階大きい値である0.3125に基準送信電力値P0を乗じた値を送信電力として設定してもよい。これにより、より確実にノードC,F,G,Jに通信信号を到達させることができる。
更に、送信電力テーブルを作成した際にノードC,F,G,Hの全てに通信信号を受信させることができる送信電力を設定しておき、以後、実際の通信において通信信号を送信するときは、自動的にこの送信電力で通信信号を送信するようにしてもよい。
この場合、調整部51は、通信信号を送信する際の送信電力を設定するための処理が簡略化され、処理負担が軽減されることになる。
また、調整部51は、ノードCのみに通信信号を送信したい場合は、図6に示す送信電力テーブルを参照して、0.1250P0をこの通信信号の送信電力として設定する、又は少し余裕をみて、0.1875P0を通信信号の送信電力として設定すればよい。
以上説明したように、本実施の形態による通信システムによれば、通信対象の隣接ノードに送信される通信信号の送信電力は、当該通信対象の隣接ノードが通信信号を正常に受信することができる送信電力の最小値に調整される。
そのため、隣接ノードのうち通信対象外の隣接ノードへの通信信号の到達が抑制され、通信信号の到達範囲ZDが縮小する。その結果、通信に全く関係のない伝送路が占拠されることを抑制することができる。
また、上記説明では、各ノードを繋ぐ伝送路の伝搬損失は上りと下りとで同一、つまり対称であることを前提に説明したが、各ノードを繋ぐ伝送路の伝搬損失が上りと下りとで異なる、つまり非対称の場合であっても、本発明は適用可能である。この場合、図2(B)に示す受信電力の測定値をノードTxに測定させるのではなく、ノードTxがノードA〜Lに測定させたものを採用すればよい。
具体的には、まず、ノードTxは、ノードA〜Lに基準通信信号を送信し、ノードA〜Lに基準通信信号の受信電力を測定させる。次に、ノードA〜Lは、測定した受信電力をノードTxに通知する。
そして、ノードTxは、ノードA〜Lから通知された受信電力の測定値を用いて、対称の場合と同様にしてノードA〜Lのそれぞれの送信電力の最小値を求める。
これにより、例えばノードTxがノードCに通信信号を送信する場合の通信信号の流れる方向と、ノードCの送信電力の最小値を求める際に送信した基準通信信号の流れる方向とが同じになる。その結果、非対称の場合であってもより適切な送信電力の最小値を定めることができる。
また、非対称の場合、下記のようにしてもよい。まず、ノードTxは、ノードA〜Lに基準通信信号を送信し、ノードA〜Lに基準通信信号の受信電力を測定させる。
次に、ノードA〜Lは、それぞれ、ノードTxから送信された基準通信信号の受信電力の測定値を用いて、対称の場合と同様にして、送信電力の最小値を求め、求めた送信電力の最小値をノードTxに送信する。そして、ノードTxは、ノードA〜Lのそれぞれから送信された送信電力の最小値をノードA〜Lの電力調整情報として設定する。
(実施の形態2)
実施の形態2による通信システムは、減衰器の減衰率を調整して、到達範囲ZDを縮小させることを目的とする。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一のものは説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2による通信システムを構成するノードのブロック図を示している。図7に示すノードの図1に示すノードに対する大きな相違点は、減衰部60が更に設けられている点にある。
減衰部60は、通信信号の送信電力を減衰させるものであり、4つの減衰器61〜64を備えている。減衰器61〜64は、それぞれ、距離がL離れた隣接ノードに対応して設けられている。
また、本実施の形態において、調整部51は、電力調整情報を基に、通信対象の隣接ノードが最小受信電力値を超える受信電力で通信信号を受信することができる最大減衰率に減衰器の減衰率を設定されるようにしてもよい。
記憶部20は、送信電力テーブルに代えて減衰率テーブルを記憶している。図8(B)は減衰率テーブルの一例を示す図である。図8(A)は自身のノードをノードEとした場合において、ノードEとノードEに対して距離がL離れた隣接ノードであるノードB,D,F、Hとを示した図である。
図8(B)に示すように、減衰率テーブルは、減衰器の欄と減衰率の欄とを備えている。減衰率の欄には、自身が備える減衰器G2,G4,G5,G7の減衰率ATT2,ATT4,ATT5,ATT7と、ノードBの減衰器G1の減衰率ATT1と、ノードDの減衰器G3の減衰率ATT3と、ノードFの減衰器G6の減衰率ATT6と、ノードHの減衰器G8の減衰率ATT8とが格納されている。
なお、伝送路T1はノードB及びノードE間を繋ぐ伝送路であり、伝送路T2はノードD及びノードE間を繋ぐ伝送路であり、伝送路T3はノードH及びノードE間を繋ぐ伝送路であり、伝送路T4はノードF及びノードE間を繋ぐ伝送路である。
図8(A)においては、伝送路T1〜T4として有線を想定しているが伝送路T1〜T4として無線を採用してもよい。この場合、ノードEは、通信信号をノードBに送信するときは減衰器G2を介して通信信号を出力すればよく、通信信号をノードDに送信するときは減衰器G4を介して通信信号を出力すればよく、通信信号をノードHに送信するときは減衰器G7を介して通信信号を出力すればよく、通信信号をノードFに送信するときは減衰器G5を介して通信信号を出力すればよい。
但し、無線通信では、無指向性の送信を行うことが多いので、その場合はノードEの減衰器G2,G4,G5,G7は一つの減衰器に置き換えて使用すればよい。
なお、図8(A)ではノードEは4個の減衰器を備えているが、これに限定されず、距離がL離れたノードが3個以下又は5個以上である場合は、近傍のノードに応じた個数の減衰器を設ければよい。
また、伝送路が無線の場合においては、距離がL離れた4個の隣接ノードに加えて、距離が2L離れた8個の隣接ノード(図2(A)に示すノードA,B,E,I,L,K,H,D)のそれぞれに対応する12個の減衰器を設けてもよい。
本実施の形態で採用されるネットワークは、以下の第1又は第2の通信方式を採用することができる。
第1の通信方式は、各ノードが予め定められた隣接ノードに通信信号を転送する方式である。この場合、各ノードは、実際の通信に先立って、減衰率設定モードとなって自身の減衰器の減衰率を設定する。そして、通信モードでは、減衰率設定モードで設定した減衰率を用いて通信を行う。
そのため、第1の通信方式が採用される場合、各ノードは通信モードにおいて、通信を行う都度、減衰器の減衰率を設定する処理は行わない。つまり、各ノードは、減衰率設定モードで設定した減衰率を固定した状態で、実際の通信を行う。
第2の通信方式は、各ノードが通信モードにおいて通信を行う都度、減衰率を設定する方式である。
以下、第1の通信方式を採用した場合において減衰率設定モードでの減衰率の設定処理について説明する。
この場合、図7に示す設定部12は、記憶部20に記憶された最小受信電力値Pminと、測定部11により測定された測定値とを基に、各隣接ノードの通信信号の受信電力が最小受信電力値Pminを超えるような各隣接ノードに対応する減衰器の最大減衰率を求め、求めた最大減衰率で各隣接ノードの電力調整情報を設定する。
以下、具体的に説明する。以下の説明では、図8(A)に示すノードEがノードB,D,F,Hになるべく小さな受信電力で通信信号が受信されるように、自身の減衰器G2,G4,G5,G7の減衰率ATT2,ATT4,ATT5,ATT7を設定する場合を例に挙げて説明する。
まず、ノードEの設定部12は、測定部11により測定されたノードB,D,F,Hから送信された基準通信信号の受信電力の測定値をP0で除して、図9(A)に示すように、ノードB,D,F,Hのそれぞれの測定値の基準送信電力値比を算出する。
図9(A)は、図8(A)に示すノードB,D,F,Hから送信された基準通信信号のノードEにおける測定値の基準送信電力値比を示し、図9(B)は、図8(A)に示すノードB,D,F,HのそれぞれとノードEとの間の伝送路T1〜T4の減衰率の基準送信電力値比を示している。
図9(A),(B)に示すように、ノードB,D,F,Hのそれぞれから送信された基準通信信号のノードEにおける測定値の基準送信電力値比が0.750,0.8125,0.8125,0.8750である。また、減衰率は、減衰を受ける前の通信信号の強度に対する、減衰を受けた後の通信信号の強度の比を示す。そのため、ノードB,D,F,HとノードEとの間の伝送路の減衰率は0.7500(=0.7500P0/P0),0.8125(=0.8125P0/P0),0.8125(=0.8125P0/P0),0.8750(=0.8750P0/P0)となる。
次に、ノードEの設定部12は、減衰器G2,G4,G5,G7のそれぞれの設定可能な減衰率の最大値を求める。ここで、設定可能な減衰率とは、ノードEが基準送信電力値P0でノードB,D,F,Hのそれぞれに通信信号を送信した場合、ノードB,D,F,Hのそれぞれがこの通信信号を最小受信電力値Pmin以上で受信することが可能な減衰率のことを指す。
本実施の形態では、ノードB,D,E,F,Hの減衰率の最大値ATT1_Hi〜ATT8_Hiは、ATT1_Hi=ATT2_Hi、ATT3_Hi=ATT4_Hi、ATT5_Hi=ATT6_Hi、ATT7_Hi=ATT8_Hiとなるように設定されるものとする。
したがって、ノードEの設定部12は、最小受信電力値Pminの基準送信電力値比Pmin´(=0.0625)を、図9(A)に示すノードB,D,F,Hの測定値の基準送信電力値比で除し、得られた値の平方根をとることで、ATT2_Hi,ATT4_Hi,ATT5_Hi,ATT7_Hiを求める。
ATT2_Hi=√(Pmin´/0.7500)
ATT4_Hi=√(Pmin´/0.8125)
ATT5_Hi=√(Pmin´/0.8125)
ATT7_Hi=√(Pmin´/0.8750)
一方、ノードB,D,F,Hは、それぞれ、ノードEと同様にして、ノードEから送信された基準通信信号の測定値を用いて、ATT1_Hi,ATT3_Hi、ATT6_Hi、ATT8_Hiを算出する。
伝送路T1〜T4の伝搬喪失は上り下りとも一定であり、対称であると仮定すると、ノードB,D,F,Hは、それぞれ、ノードEからの基準通信信号を図9(A)で示す0.750,0.8125,0.8125,0.8750で受信する。よって、ATT1_Hi、ATT3_Hi、ATT6_Hi、ATT8_Hiは、下式で表され、ATT1_Hi=ATT2_Hi、ATT3_Hi=ATT4_Hi、ATT5_Hi=ATT6_Hi、ATT7_Hi=ATT8_Hiとなる。
ATT1_Hi=√(Pmin´/0.7500)
ATT3_Hi=√(Pmin´/0.8125)
ATT6_Hi=√(Pmin´/0.8125)
ATT8_Hi=√(Pmin´/0.8750)
次に、ノードEの設定部12は、ATT2≦ATT2_Hi、ATT4≦ATT4_Hi、ATT5≦ATT5_Hi、ATT7≦ATT7_Hiを満たすATT2、ATT4、ATT5、ATT7を算出する。
本実施の形態では、各ノードは、減衰率を4ビットのデジタルデータ、すなわち16段階で設定できる。図10は、各ノードが設定することができる減衰率の値を示した減衰率テーブルを示している。図10に示すように、減衰率は0.0625〜1.000の16段階で表されたいずれかの値が設定される。また、本実施の形態では、各ノードは、ある減衰器Gjの減衰率ATTjを求めるに際し、図10に示す減衰率テーブルに記載された減衰率において、ATTj≦ATTj_Hiを満たす減衰率のうち何番目に大きな減衰率を設定すればよいかが予め全ノード共通に定められている。
例えば、ATTj_Hi=0.3125が得られた場合、1番目に大きな減衰率を設定するように予め定められている場合は、図10の減衰率テーブルを参照して、ATTj=0.3125が設定され、2番目の減衰率を設定するように予め定められている場合は、図10の減衰率テーブルを参照して、ATTj=0.2500が設定される。
また、減衰器Gjと伝送路を介して対向する減衰器Gj´の減衰率ATTj´もATTj´≦ATTj_Hiの条件に基づいて決定され、この条件を満たす減衰率のうち減衰率テーブルの何番目に大きな減衰率を設定するかは全ノード共通である。したがって、ATTj=ATTj´となる。
これにより、ATT1=ATT2、ATT3=ATT4、ATT5=ATT6、ATT7=ATT8となるように、ATT1〜ATT8が算出される。
このようにして、ATT1〜ATT8が設定されると、通信モードにおいて、ノードEは最大送信電力P0で伝送路T1〜T4に通信信号を送信すると、この通信信号は減衰器G1〜G8により減衰され、ノードB,D,F,Hの受信電力がなるべく小さくなるため、図19、図20に示す到達範囲ZDをなるべく小さくすることが可能となり、通信の輻輳を防止することが可能となる。
なお、上記説明では、伝送路T1〜T4は伝搬損失が上り下りとも一定であり、対称な伝送路であるとして説明したが、伝搬損失が上りと下りとで異なる非対称の伝送路であってもよい。この場合は、下記のようにして減衰率ATT1〜ATT8を算出すればよい。
まず、ノードEがノードB〜Hのそれぞれに基準通信信号を送信し、ノードB〜Hのそれぞれに基準通信信号の受信電力を測定させる。ここで、ノードB〜Hにより測定された受信電力の基準送信電力値比が、例えば図9(A)に示すように0.7500、0.8125、0.8125、0.8750であったとする。
次に、ノードB〜Hは、それぞれ、ATT1_Hi、ATT3_Hi、ATT6_Hi、ATT8_Hiを下記の式により算出する。
ATT1_Hi=√(Pmin´/0.7500)
ATT3_Hi=√(Pmin´/0.8125)
ATT6_Hi=√(Pmin´/0.8125)
ATT8_Hi=√(Pmin´/0.8750)
次に、ノードB〜Hは、それぞれ算出したATT1_Hi、ATT3_Hi、ATT6_Hi、ATT8_HiをノードEに通知する。そして、ノードB〜Hは対称の場合と同様にしてATT1、ATT3、ATT6、ATT8を求める。
次に、ノードEは、ノードB〜Hにより通知されたATT1_Hi、ATT3_Hi、ATT6_Hi、ATT8_Hiを、ATT1_Hi=ATT2_Hi、ATT3_Hi=ATT4_Hi、ATT6_Hi=ATT5_Hi、ATT8_Hi=ATT7_Hiとし、伝送路が対称の場合と同様にして、ATT2、ATT4、ATT5、ATT7を求める。
これにより、通信モードにおいて、例えばノードEがノードBに通信信号を送信する際、減衰率ATT1,ATT2がノードEからノードBに基準通信信号を送信した場合のノードBによる受信電力の測定値から算出された値となる。つまり、ATT1、ATT2の算出時の基準通信信号の流れる方向と、通信モードにおいて通信信号が流れる方向とが同一となる。そのため、ノードEは伝送路が非対称であっても適切な送信電力で通信信号をノードBに送信することができる。
また、伝送路が対象の場合の減衰率の算出手法と上記伝送路が非対称の場合の減衰率の算出手法とを組み合わせた減衰率の算出手法を採用してもよい。
具体的には、図8(A)に示すノードEがノードBに通信信号を送信する場合を例に挙げて説明すると、以下のようにして、減衰率ATT1,ATT2を算出すればよい。
まず、ノードBは、ノードEから送信された基準通信信号の受信電力の測定値から、ATT1_Hiを求め、ノードEに送信する。
次に、ノードEは、ノードBから送信された基準通信信号の受信電力の測定値からATT2_Hiを求め、ノードBに送信する。
ここで、ノードE→ノードBの伝送路の方が、ノードE←ノードBの伝送路よりも減衰が大きいとする。すると、ATT1_Hi<ATT2_Hiとなるので、ノードE,Bは、ATT1_Hi,ATT2_Hiを比較し、ノードEは、小さい方のATT1_Hiを用いてATT2を求め、ノードBは、小さい方のATT1_Hiを用いてATT1を求めればよい。
次に、第2の通信方式を採用した場合における減衰率の設定処理について説明する。以下の説明では、図8(A)に示すノードBにより通信信号が送信されるに際し、ノードBから送信された通信信号がノードEのみで受信され、ノードD,F,Hには受信されないように、ATT1〜ATT8が設定される場合を例に挙げて説明する。
まず、ノードBは例えば図8(A)以外の他のノードから送信された通信信号を受信する。この通信信号のルート情報には、この通信信号をノードEに転送することが示されているため、ノードBは、転送先であるノードEに送信要求信号を送信する。
ここで、送信要求信号は、上記の基準通信信号と同一の信号である。つまり、ノードBは、基準送信電力値P0で送信要求信号をノードEに送信する。
ノードEは、この送信要求信号を受信すると、減衰率の設定処理を開始する。まず、ノードEの設定部12は、図9(A)に示すテーブルを参照して、図11に示すようにノードB→E、B→E→D、B→E→F、B→E→Hのそれぞれの減衰率を算出する。図11は、減衰率の算出結果を示した表である。
なお、第2の通信方式を採用する場合は、図9(A)のテーブルを電力調整情報として採用すればよい。そして、このテーブルは、通信モードに先立って、減衰率設定モードを実行するなどして、予め作成すればよい。
図11の2列目に示すように、ノードB→E、B→E→D、B→E→F、B→E→Hの通信ルートの減衰率は、それぞれ、0.7500,0.6093(=0.7500×0.8125),0.6093(=0.7500×0.8125),0.6562(=0.7500×0.8750)と算出される。
次に、ノードEの設定部12は、B→Eにおいて通信が成立し、B→E→D、B→E→F、B→E→Hのそれぞれの通信ルートにおいて通信が成立しないための減衰率を求める。図11の3列目に示すように、全ノードの最小受信電力値の基準送信電力値比Pmin´は、0.0625である。そのため、図11の4列目に示すように、B→Eの通信ルートにおいて通信が成立し、B→E→D、B→E→F、B→E→Hのそれぞれの通信ルートにおいて通信が成立しないための減衰率の最大値は、0.0834(=0.0625/0.7500),0.1026(=0.0625/0.6093),0.1026(=0.0625/0.6093),0.0953(=0.0625/0.6562)となる。
ここで、減衰率の最大値が図10に示す減衰率テーブルに存在しない値である場合、その値よりも大きくて、最も近い値を通信が成立しないための減衰率として採用してもよい。
B→E、B→E→D、B→E→F、B→E→Hの通信ルートにおいて、B→Eの通信ルートの通信が成立し、それ以外の通信ルートで通信が成立しないためには、図12に示すように、0.0834<ATT1・ATT2、ATT1・ATT2・ATT3・ATT4<0.1026、ATT1・ATT2・ATT5・ATT6<0.1026、ATT1・ATT2・ATT7・ATT8<0.0953の4つの条件を満たす必要がある。
また、本実施の形態では、ATT1〜ATT8をそれぞれ同じ値であるXに設定するものとする。したがって、ノードEの設定部12は、図13に示すように、0.0834<X2、X4<0.1026、X4<0.1026、X4<0.0953を満たすXを求める。
この場合、0.2888<X<0.5556が得られる。そして、ノードEの設定部12は、図10に示す減衰率テーブルから、0.2888<X<0.5556を満たすXを特定する。図10においては、0.2888<X<0.5556を満たすXは、0.3125,0.3750,0.4375、0.5000である。従って、ノードEの設定部12は、これらの値のうちいずれかの値をXとして求める。この場合、設定部12は、最大の値である0.5000をXとして求めても良いし、少し余裕を持たせて2番目に大きな値である0.4375をXとして求めても良い。
そして、設定部12は求めたXで自身の減衰器G2,G4,G5,G7の減衰率ATT2,ATT4,ATT5,ATT7を設定する。
次に、ノードEは、ノードBに対して受信準備完了信号を送信し、ノードBにATT1をXに設定させると共に、ノードD,F,Hにも信号を送信し、ノードD,F,HにATT3,ATT6,ATT8をXに設定させる。
通信準備完了信号を受信したノードBは、ノードEに対して通信信号を転送する。この場合、ATT1〜ATT8は、図13に示す条件を満たすXが設定されるため、通信信号は、ノードEのみに受信され、他のノードには受信されなくなる。よって、図19及び図20に示す到達範囲ZDが小さくなり、通信の輻輳が抑制され、通信速度の低下を抑制することができる。
ノードBから転送された通信信号を受信したノードEは、ノードBと同様にして、転送先のノードに送信要求信号を送信し、転送先のノードに減衰率を設定させ、通信信号を転送する。なお、ノードBによる通信信号の転送が終了すると、ノードEは、減衰率ATT2,ATT4,ATT5,ATT7をデフォルトの値(例えば0)に戻す。また、ノードB,D,F,HもノードBから送信された通信信号のノードEへの受信が終了したと想定される所定時間経過したときに、設定した減衰率をデフォルトの値に戻す。
また、別の方法として、B→E→D、B→E→F、B→E→Hの通信が成立しないように、E→D、E→F、E→Hの通信が成立しないように接続を電気的に切断する、または非常に大きな減衰を与えることも可能である。これは、ATT4=ATT5=ATT7=0にすることと同じである。
(実施の形態3)
実施の形態3における通信システムは、ネットワーク形状に特徴がある。ノードの間隔が等間隔でない場合、送信電力の制御は、通信ルート毎に行わなければならない。例えば、図14に示すようにノードTxから距離が極端に長いノードGに通信信号を転送する場合、送信電力が大きく設定されるため、この通信信号の到達範囲ZDが増大し、通信信号が衝突する可能性が高くなる。
よって、実施の形態3における通信システムでは、ノードを等間隔でメッシュ状に配置している。図15(A)〜(C)は、本実施の形態における通信システムのネットワーク構成を示した図である。図15(A)のネットワークにおいては、メッシュの構成要素として、正六角形が採用され、各ノードは正六角形の頂点に配置されている。
図15(B)のネットワークにおいては、メッシュの構成要素として正三角形が採用され、各ノードは、正三角形の頂点に配置されている。
図15(C)のネットワークにおいては、メッシュの構成要素として、正方形が採用され、四角柱ができるように複数のメッシュ層が層状に重ねられ、各ノードが各正方形の頂点に配置されている。
なお、図15(A)、(B)においても、図15(C)と同様に、各構成要素が重なるように複数のメッシュ層を層状に重ねて、ネットワークを立体的に構成してもよい。
このようにネットワークを等間隔でのメッシュ状に構成することで、より確実に輻輳状態を回避し、通信速度の低下を抑制することができる。
なお、本発明においては、メッシュ状に限定されず、ネットワークを図16に示すように、ノードの間隔が等間隔になるようにバス接続してもよい。この場合、実施の形態1,2と同様の手法を用いて、ノードTxがノードB,Cにのみに通信信号が送信されるような送信電力又は減衰率を設定することで、ノードA,Dに通信信号が到達することが防止され、到達範囲ZDを小さくすることができる。
また、本発明においては、メッシュ状に限定されず、図17に示すように、各ノードを等間隔で縦列接続されたネットワークを採用してもよい。この場合も、図16の場合と同様、実施の形態1,2と同様の手法を用いて、ノードTxがノードB,Cにのみに通信信号が送信されるような送信電力又は減衰率を設定することで、ノードA,Dに通信信号が到達することが防止され、到達範囲ZDを小さくすることができる。