本発明は、高炉内に装入された鉱石、コークス等の装入物の炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を測定する方法、及びこの方法を用いた層厚分布測定装置に関する。
高炉の操業を安定して行うためには、炉内に装入されて堆積した装入物によって形成される層(鉱石層とコークス層)の炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布の調整が重要となる。
この層厚分布の調整方法としては、ベルアーマ式高炉ではムーバルアーマが操作され、又はベルレス式高炉では旋回シュートが操作され、鉱石やコークス等の装入物の炉内への装入位置が変更されることにより調整される。この調整方法においては、装入物の層厚分布を的確に把握し、この把握した層厚分布に基づいて次の装入物により形成される層の層厚分布がより適した分布となるように前記ムーバルアーマや旋回シュート等の装入装置の操作が行われる。
装入物の層厚分布を把握するためには、該当バッチ(炉内への装入物の装入の単位)の装入物の層上面の形状、即ち表面プロフィールと、その一つ前のバッチの表面プロフィールと、該当バッチの装入物全体の体積とを用いる。具体的には、該当バッチの表面プロフィールと一つ前のバッチの表面プロフィールとで挟まれる部分の体積が、該当バッチの装入物全体の体積と同一になるように、一つ前のバッチの表面プロフィールを下方にして上下二つの表面プロフィールの間隔を設定する。このように設定された上下二つの表面プロフィール間の上下幅を層厚と擬制することで層厚分布を推定(測定)する。
前記の表面プロフィールを得るためには、例えば、図2に示されるような、マイクロ波プロフィールメーター12によって装入物の層上面の形状を直接計測する方法が知られている。このマイクロ波プロフィールメーター12は、マイクロ波の反射を利用し、所定位置の炉半径に沿って一定のピッチで表面プロフィールの高さ(マイクロ波照射位置からの深度)を計測する。
具体的には、所定のバッチでの装入物の層上面における前記所定位置の炉半径に沿って計測して得られた各計測値を、炉中心軸をY軸、前記所定位置の炉半径をX軸としてプロットする。このプロットした点を結ぶことで前記所定位置の炉半径における当該半径に沿った装入物の層上面形状が得られる。この形状を炉中心軸(Y軸)が回転中心となるように一回転させることにより、当該バッチの装入物の層上面形状、即ち、表面プロフィールが得られる。
また、別の方法として、過去の実績データから装入条件と表面プロフィールとの関係を割り出し、種々の装入条件(例えば、アーマストローク、シュートの傾動角、装入物の装入重量、サウジングレベル等)を計算条件として表面プロフィールを算出し、この表面プロフィールに基づいて層厚分布を推定するシミュレーションモデルを用いた方法が知られている(特許文献1参照)。
特開2001−323306号公報
しかしながら、前記マイクロ波プロフィールメーター12を用いて表面プロフィールを得る場合、計測値から得られた表面プロフィールと実際の表面プロフィールとの間には誤差が生じる。即ち、前記計測によって得られた各計測値が前記のようにプロットされ、このプロットされた点を結ぶことにより得られる線には、実際の表面プロフィールとは異なる凹凸の激しい形状が現れる場合が多い。これは、装入物を炉内に装入する際にたまたま生じた部分的な突出等が前記計測された層上面形状に存在し、この突出等が計測値にノイズとして含まれるためである。そのため、前記プロットによって得られた所定位置の炉半径に沿った装入物の層上面形状を炉中心軸を回転中心として回転させても実際の表面プロフィールとは異なった表面プロフィールとなっている場合が多い。
前記のように、上下2つの表面プロフィールに挟まれた空間の体積が該当バッチの装入物全体の体積と同一となるように下側の表面プロフィールの降下量を推定する場合において、特に、炉壁側に生じる前記誤差が大きい場合は、算定される前記プロフィール間の間隔が大きく異なってしまい、正確な層厚分布を算出することができない。
前記部分的な突出等による誤差を解消するために、数十バッチの表面プロフィールをそれぞれ計測し、この数十回分の計測値を平均した値を用いて表面プロフィールを算出することが考えられる。
しかし、このような方法では、過去において計測した数十回のバッチ毎の計測値の平均値を求めた上で表面プロフィールを算出して直近の層厚を計算しなければならないため、炉内状況に変化が生じた際、この変化を素早く把握することができず、前記の変化に素早く対応して操業条件の変更をすることができないといった問題が生じる。
一方、前記シミュレーションモデルは、種々の計算条件が集積されたものであるため、操業条件毎にこれらの計算条件のパラメータを調整するには、多数の計測プロフィールと各操業条件の関係を分析しなければならず、非常に長い時間が必要となる。
また、このように求めたパラメータを用いたとしても、前記シミュレーションモデルを用いて表面プロフィールを算出する場合、同一の操業条件においては同一の結果しか算出することができない。しかし、現実の高炉内に形成される装入物の表面プロフィールは、同一の操業条件であるにも関わらず、全て同一の表面プロフィールとはならず、バッチ毎に異なった表面プロフィールとなる場合が多い。
このように、シミュレーションモデルを用いた場合には、操業条件が一部でも異なれば、当該操業条件に合致する計算条件のパラメータを調整するのに非常に時間がかかる。また、同一操業条件下における層厚分布の変化に対応できないといった問題が生じる。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、装入物の炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を短時間で精度よく得ることができる高炉装入物の層厚分布測定方法、及びこの方法を用いた高炉装入物の層厚分布測定装置を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意研究を行った結果、以下のことを発見した。
通常、高炉の操業において高炉内へ装入物が装入されるときには、高炉の操業を安定維持させるために表面プロフィールを調整する必要から、炉壁近傍においては装入装置によって高炉の半径方向に沿って落下位置を変えながら装入物が装入され、炉中心部においては装入された装入物が盛上るように装入(中心装入)される。このような操業状態における過去の実績データ等の多数の表面プロフィールのデータを解析したところ、操業中の高炉内では、何れの表面プロフィールにおいても、所定位置の炉半径における表面プロフィールが曲線を有する線(推定形状線)で擬制された場合、この線の中に、炉壁近傍の水平若しくは略水平な直線部分と、この直線部分の炉中心側に位置し、炉中心に向かって一定の下り勾配となる傾斜部分と、炉中心部において上方に膨出するような曲線部分とが現れる傾向がある。
そこで、この発見に基づき、前記発明者らは、直線部及び曲線部をその一部に有する推定形状線に着目し、以下の構成の高炉装入物の層厚分布測定方法及びこの方法を用いた測定装置を創作した。
本発明に係る高炉装入物の層厚測定方法は、高炉内に装入物を装入するバッチをn回(但し、nはn>1の範囲で任意に選ばれる自然数)繰り返すことによって当該高炉内に積層された装入物のうち、第n回目バッチの装入物が形成する層における炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を測定する方法であって、第n−1回目バッチと第n回目バッチとの各バッチにおいて所定位置の炉半径における前記装入物の層上面形状を計測する計測ステップと、前記層上面形状を曲線を有する線として擬制する推定形状線を前記計測ステップで得られた前記各バッチの計測値に基づいて第n−1回目バッチと前記第n回目バッチとのバッチ毎に導出する形状線導出ステップと、この形状線導出ステップで導出した2本の推定形状線を炉中心軸が回転中心となるように回転させて推定表面プロフィールをそれぞれ求めた場合に両推定表面プロフィールに挟まれた空間の体積が第n回目バッチの装入物全体の体積と等しくなるような間隔で、前記第n回目バッチの推定形状線の下方に前記第n−1回目バッチの推定形状線が位置するように前記2本の推定形状線の少なくとも一方を補正する補正ステップと、このように補正した前記第n−1回目バッチと前記第n回目バッチとの各推定形状線における炉半径方向に沿った各位置での上下間隔に基づいて第n回目バッチの装入物における炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を導出する層厚分布導出ステップとを備え、前記形状線導出ステップでは、前記推定形状線を規定する第1の連続関数を予め設定しておき、この第1の連続関数は、前記所定位置の炉半径方向に連なる複数の関数であって、各関数の係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲が未定で且つ隣接する関数同士がその境界において連続するように炉壁から炉中心側に向って順に並ぶ第1の一次関数、第1の曲線関数、第2の一次関数、及び第2の曲線関数により規定され、前記第1の一次関数は、当該関数によって規定される線が炉壁近傍に位置し、水平若しくは略水平方向の直線となる関数であり、前記第2の一次関数は、当該関数によって規定される線が前記第1の一次関数よりも炉中心側に位置し、炉中心に向って一定の下り勾配の直線となる関数であり、前記第1の曲線関数は、当該関数によって規定される線が前記第1の一次関数と前記第2の一次関数との間に位置し、前記第1の一次関数に規定される略水平な直線の炉中心側端部と前記第2の一次関数に規定される下り勾配の直線の炉壁側端部とを滑らかに接続する曲線となる関数であり、前記第2の曲線関数は、当該関数によって規定される線が炉中心部に位置し、上方に膨出する曲線となる関数であり、各バッチにおいて、前記計測ステップで得た当該バッチの計測値に基づいてバッチ毎に前記各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲を算出することにより、前記第n―1回目バッチと前記第n回目バッチとのバッチ毎の推定形状線を導出することを特徴とする。ここで、本発明において線とは、両端を有する有限な長さの線のことをいう。
かかる構成によれば、連続した2バッチ(第n−1回目バッチと第n回目バッチ)の前記所定位置における炉半径に沿った層上面形状(以下、単に「表面プロフィール」とも称する。)を計測するだけで、装入物が装入されたバッチ(第n回目バッチ)における装入物の層厚分布を測定することができる。そのため、従来のように数十バッチの表面プロフィールを計測して計測値の平均を求める必要がなく、短時間(連続した2バッチに要する時間)で最上層の装入物が装入されたバッチ(第n回目バッチ)の前記層厚分布を測定することができる。しかも、表面プロフィールを擬制する推定形状線を規定するために、炉壁近傍の部位が直線(第1の一次関数)となる第1の連続関数を用いることによって、高炉の半径方向(炉半径方向)に沿って落下位置を変えながら炉壁側へ装入物を装入する操業状態においても実際の表面プロフィールに即した推定形状線を導出することができ、これにより前記層厚分布を精度よく測定することができる。
具体的に、炉半径方向に沿って落下位置を変えながら炉壁側へ装入物が装入されることにより、表面プロフィールのうち炉壁近傍において水平若しくは略水平となっている領域(いわゆるテラス部)が形成される。このテラス部の上面形状は前記所定位置の炉半径においては水平若しくは略水平な直線形状となるため、複数の関数が連なる第1の連続関数においてその最も炉壁側の区間に第1の一次関数が用いられることにより、このテラス部の形状が精度よく擬制される。このように、推定形状線における炉壁近傍の部位が表面プロフィールを精度よく擬制することによって層厚分布をより精度よく測定することができる。
即ち、炉中心軸を回転中心に推定形状線を回転させて推定表面プロフィールを求めるため、推定形状線の炉壁側ほど回転させたときの誤差の生じている部位の移動距離が長くなり、これにより炉壁側の誤差ほど推定表面プロフィールに対する影響が大きく現れる。そのため、補正ステップにおいて、前記のような炉壁側に誤差が生じている推定形状線が用いられ、上下2つの推定表面プロフィールに挟まれた空間の体積が第n回目バッチの装入物全体の体積と同一となるように第n回目バッチの推定形状線の下方に第n―1回目バッチの推定形状線が位置するように補正されると、前記の誤差の影響が大きく現れて層厚分布の測定精度が低下する。従って、前記のように導出された推定形状線において、炉壁近傍の部位が実際の表面プロフィールのテラス部の形状に即した、即ち、誤差の少ない形状となることで、連続する2バッチ(第n−1回目バッチ及び第n回目バッチ)の各推定表面プロフィールの形状、及びこれら2つの推定表面プロフィール間の間隔を精度よく導出することが可能となる。
また、第1の連続関数は、所定位置の炉半径において、表面プロフィールのテラス部だけでなく、このテラス部より炉中心側の部位においても表面プロフィールを精度よく擬制することができる。具体的に、所定位置の炉半径における表面プロフィールの前記テラス部より炉中心側に位置して炉中心に向って一定の下り勾配となる部位を下り勾配の直線である第2の一次関数が精度よく擬制し、炉中心部において、中心装入により盛上った部位を上方に膨出する曲線である第2の曲線関数が精度よく擬制することができる。そのため、第1の連続関数を用いることにより、所定位置の炉半径における炉壁から炉中心までの全範囲において実際の表面プロフィールに即した推定形状線を得ることができる。
さらに、推定表面プロフィールの導出に推定形状線が用いられるので、前記表面プロフィールの計測により得られた計測値にノイズが含まれていても、これら計測値に基づいて前記層厚分布を容易且つ正確に導出することが可能となる。
具体的に、前記所定位置の炉半径における推定形状線を規定し、複数の関数が連なる第1の連続関数が予め設定され、前記複数の計測値に基づいて各関数の係数及び前記所定位置の炉半径の範囲が算出されることにより、各計測値に含まれるノイズの大きさや量に関わらず、曲線を有する線としての推定形状線が導出される。そして、前記所定位置の炉半径における表面プロフィールがこの推定形状線で擬制されることにより、計測した層上面形状にたまたま生じた部分的な突出等(ノイズ)があったとしても、この部分的な突出等に影響されることなく精度のよい表面プロフィールが得られる。
さらに、直近のバッチ(第n回目バッチ)及びその前の回のバッチ(第n−1回目バッチ)において、それぞれ前記所定位置の炉半径における表面プロフィールが実際に計測され、その計測値(実測値)に基づいて予め設定された第1の連続関数を規定する各関数の係数及び前記所定位置の炉半径の範囲が算出されることにより、当該表面プロフィールに即した精度のよい推定形状線が導出され、これにより高炉の同一操業条件下における層厚分布の変化にも対応した層厚分布の測定が精度よく行われる。
また、上記課題を解消すべく、本発明に係る高炉装入物の層厚測定方法は、バッチ毎に、炉半径方向に沿って落下位置を変えながら炉壁側へ装入物を装入する場合と、炉半径方向の落下位置を一定位置に保ちつつ炉壁側へ装入物を装入する場合とを切り換える高炉操業においては、炉半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物を装入するか否によって前記推定形状線を導出するときに用いられる連続関数が変更されるように構成されてもよい。即ち、前記形状線導出ステップでは、前記推定形状線を規定する係数未定の第2の連続関数をさらに設定しておき、この第2の連続関数は、前記所定位置の炉半径方向に連なる複数の関数であって、各関数の係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲が未定で且つ隣接する関数同士がその境界において連続するように前記所定位置の炉半径に沿って炉壁から炉中心側に向って順に並ぶ第3の曲線関数、第3の一次関数、及び第4の曲線関数により規定され、前記第3の曲線関数は、当該関数によって規定される線が炉壁近傍に位置し、上方に膨出する曲線となる関数であり、前記第4の曲線関数は、当該関数によって規定される線が炉中心部に位置し、上方に膨出する曲線となる関数であり、前記第3の一次関数は、当該関数によって規定される線が前記第3の曲線関数と前記第4の曲線関数との間に位置し、炉中心に向って一定の下り勾配の直線となる関数であり、第n−1回目バッチと第n回目バッチとの各バッチにおいて、前記装入物の炉壁側への装入のときに炉半径方向に沿って落下位置を変えながら前記装入物を高炉内へ装入する場合には、前記計測ステップで得た当該バッチの計測値に基づいて前記第1の連続関数を規定する各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲を算出することにより当該バッチの推定形状線を導出し、前記装入物の炉壁側への装入のときに炉半径方向の落下位置を変えずに装入物を高炉内へ装入する場合には、前記計測ステップで得た当該バッチの計測値に基づいて前記第2の連続関数を規定する各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲を算出することにより当該バッチの推定形状線を導出するのが好ましい。
このように構成されることで、前記炉半径方向の落下位置を変えずに炉壁側へ装入物を装入するバッチにおいても、計測ステップで得た計測値に基づいて第2の連続関数を規定する各関数の係数及び前記所定位置の炉半径における範囲をそれぞれ導出することによって該当バッチの表面プロフィールに即した形状の推定形状線を得ることが可能となる。
具体的に、炉半径方向の落下位置を変えずに装入することで、前記所定位置の炉半径において装入物は前記落下位置を頂上とする山のように盛上った形状となるため、テラス部が形成され難い。そのため、炉壁近傍の部位が山のように盛上った形状(上方に膨出した曲線(第3の曲線関数))である第2の連続関数を用いることによって、この表面プロフィールにおける炉壁近傍の部位の形状(山のように盛上った形状)を精度よく擬制することができる。即ち、テラス部が形成されない場合には、炉壁近傍が直線となる第1の連続関数を用いるのではなく、炉壁近傍が上方に膨出する曲線となる第2の連続関数を用いることにより、表面プロフィールの形状を精度よく擬制することができる。従って、炉半径方向の落下位置を変えずに炉壁側へ装入物が装入されるバッチにおいても、前記の炉壁近傍が山のように盛上った部位を有する表面プロフィールに近似した推定形状線を導出することができ、これにより前記層厚分布を精度よく測定することが可能となる。
また、第1の一次関数、第1の曲線関数、第2の一次関数、及び第2の曲線関数により規定される連続関数(第1の連続関数)を用いるよりも第3の曲線関数、第3の一次関数、及び第4の曲線関数により規定される連続関数(第2の連続関数)を用いた方が連続関数を規定する関数の数が少ないため計算が簡素化されて容易になり、炉半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物を装入するか否かに関わらず第1の連続関数を用いて前記推定形状線が導出される場合に比べ、容易且つ短時間で実際の表面プロフィールに即した形状の推定形状線を得ることが可能となる。
前記第1の連続関数又は前記第2の連続関数は、炉中心軸をy軸、前記所定位置の炉半径をx軸とするxy平面上で表される関数であるのが好ましい。このようにすることで、連続関数を規定する各関数がy=f(x)の形で表され、前記各関数の取り扱いが容易になる。
また、前記第1の曲線関数、前記第2の曲線関数、前記第3の曲線関数又は前記第4の曲線関数は、当該曲線関数によって規定される曲線の接線とx軸とのなす角におけるx軸方向の位置に対する角度変化率が一定の関数であるのが好ましい。具体的には、前記第1の曲線関数、前記第2の曲線関数、前記第3の曲線関数又は前記第4の曲線関数は、以下の(1)式又は(2)式で表される関数であることが好ましい。
y=(−1/a)・log|cos(ax+b)|+c ・・・(1)
y=αx2+βx+γ ・・・(2)
ここで、a,b,c,α,β,γは、係数。
このように前記第1の曲線関数、前記第2の曲線関数、前記第3の曲線関数、又は前記第4の曲線関数が簡単な関数であり係数も少ないため前記計測値に基づく各関数の係数やx軸方向の範囲、即ち、前記所定位置の炉半径の範囲の算出もより容易となる。そのため、表面プロフィールの計測値に基づいて、各関数の係数やx軸方向の範囲の算出が容易となり、前記推定形状線の導出が容易になる。
また、前記形状線導出ステップでは、前記計測ステップで得た計測値から最急降下法を用いて前記第1の連続関数又は前記第2の連続関数を規定する全ての関数における係数及び前記x軸方向における範囲を同時に求めることにより、前記計測ステップで得た計測値から容易に当該連続関数を規定する全ての関数の係数及びx軸方向における範囲を同時に求めることができる。
また、上記課題を解消すべく、本発明に係る高炉装入物の層厚測定装置は、高炉内に装入物を装入するバッチをn回(但し、nはn>1の範囲で任意に選ばれる自然数)繰り返すことによって当該高炉内に積層された装入物のうち、第n回目バッチの装入物が形成する層における炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を測定する装置であって、第n−1回目バッチと第n回目バッチとの各バッチにおいて所定位置の炉半径における前記装入物の層上面形状の計測によって得られた計測値に基づいて第n回目バッチの装入物における炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を導出する層厚分布導出手段と、この層厚分布導出手段によって導出された層厚分布を外部に出力する出力手段とを備え、前記層厚分布導出手段は、前記層上面形状を曲線を有する線として擬制する推定形状線を規定し、複数の関数が各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲が未定で且つ隣接する関数同士がその境界において連続するように当該所定位置の炉半径方向に沿って連なることにより規定される第1の連続関数を予め格納しておく関数記憶部と、第n回目バッチにおいて高炉内へ装入された装入物全体の体積の値を格納する体積記憶部と、前記第n−1回目バッチと前記第n回目バッチとの各バッチの計測値に基づいてバッチ毎に前記関数記憶部に格納されている前記第1の連続関数を規定する前記各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲を算出することにより、前記第n−1回目バッチと第n回目バッチとのバッチ毎の推定形状線を導出し、これら導出された2本の推定形状線の値をそれぞれ格納する推定形状線導出部と、この推定形状線導出部にその値が格納された2本の推定形状線を炉中心軸が回転中心となるように回転させて推定表面プロフィールをそれぞれ求めた場合に両推定表面プロフィールに挟まれた空間の体積が前記体積記憶部に格納された第n回目バッチの装入物全体の体積と等しくなるような間隔で、前記第n回目バッチの推定形状線の下方に前記第n−1回目バッチの推定形状線が位置するように前記2本の推定形状線の少なくとも一方を補正する位置補正部と、このように補正された前記第n−1回目バッチと前記第n回目バッチとの各推定形状線における炉半径方向に沿った各位置での上下間隔に基づいて第n回目バッチの装入物における炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を導出し、この導出された層厚分布の値を前記出力手段に伝達する層厚分布導出部とを有し、前記関数記憶部に予め格納されている第1の連続関数は、前記所定位置の炉半径に沿って炉壁から炉中心側に向って順に並ぶ第1の一次関数、第1の曲線関数、第2の一次関数、及び第2の曲線関数により規定され、前記第1の一次関数は、当該関数によって規定される線が炉壁近傍に位置し、水平若しくは略水平方向の直線となる関数であり、前記第2の一次関数は、当該関数によって規定される線が前記第1の一次関数よりも炉中心側に位置し、炉中心に向って一定の下り勾配の直線となる関数であり、前記第1の曲線関数は、当該関数によって規定される線が前記第1の一次関数と前記第2の一次関数との間に位置し、前記第1の一次関数に規定される水平若しくは略水平な直線の炉中心側端部と前記第2の一次関に規定される下り勾配の直線の炉壁側端部とを滑らかに接続する曲線となる関数であり、前記第2の曲線関数は、当該関数によって規定される線が炉中心部に位置し、上方に膨出する曲線となる関数であることを特徴とする。
かかる構成によれば、既に操業中の高炉内で実用されている計測手段等によって直近の連続した2バッチ(第n−1回目バッチと第n回目バッチ)の表面プロフィールにおける所定位置の炉半径に沿った複数箇所での計測値を得ることで、最上層の装入物が装入されたバッチ(第n回目バッチ)における装入物の層厚分布の精度よい測定が可能となる。しかも、関数記憶部に予め格納された第1の連続関数が規定する推定形状線の炉壁近傍の部位が直線形状(第1の一次関数)であることから、炉半径方向に沿って落下位置を変えながら炉壁側へ装入物を装入する操業状態においても、テラス部を有する表面プロフィールに即した推定形状線を導出することができ、これにより前記層厚分布を精度よく測定することができる。
また、推定形状線を用いることで前記計測値にノイズが含まれていても前記層厚分布を容易且つ正確に導出することが可能となる一方、導出された層厚分布が前記出力手段によって出力されることで、高炉の操業を行う作業者が迅速且つ的確に最上層の装入物が装入されたバッチの層厚分布を把握することが可能となる。
また、本発明に係る高炉装入物の層厚分布測定装置は、第n回目バッチにおいて半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物の装入が行われたか否かの装入状態情報を入力する入力部又は前記装入状態情報が外部から伝達される受信部の少なくとも一方と、この入力され又は伝達された前記装入状態情報を格納する状態記憶部と、をさらに備え、前記関数記憶部は、前記推定形状線を規定し、複数の関数が各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲が未定で且つ隣接する関数同士がその境界において連続するように当該所定位置の炉半径方向に沿って連なる第2の連続関数をさらに格納しておき、この関数記憶部に格納されている第2の連続関数は、前記所定位置の炉半径に沿って炉壁から炉中心側に向って順に並ぶ第3の曲線関数、第3の一次関数、及び第4の曲線関数により規定され、前記第3の曲線関数は、当該関数によって規定される線が炉壁近傍に位置し、上方に膨出する曲線となる関数であり、前記第4の曲線関数は、当該関数によって規定される線が炉中心部に位置し、上方に膨出する曲線となる関数であり、前記第3の一次関数は、当該関数によって規定される線が前記第3の曲線関数と前記第4の曲線関数との間に位置し、炉中心に向って一定の下り勾配の直線となる関数であり、前記推定形状線導出部では、前記状態記憶部に格納された前記装入状態情報に基づき、前記第n−1回目バッチと前記第n回目バッチとの各バッチにおいて、前記装入物の炉壁側への装入のときに炉半径方向に沿って落下位置を変えながら装入物を高炉内へ装入する場合には、当該バッチの前記計測値に基づいて前記関数記憶部に格納されている第1の連続関数を規定する各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲を算出し、前記装入物の炉壁側への装入のときに炉半径方向の落下位置を変えずに装入物を高炉内へ装入する場合には、当該バッチの前記計測値に基づいて前記関数記憶部に格納されている第2の連続関数を規定する前記各関数における係数及び前記所定位置の炉半径方向の範囲を算出することにより、前記第n−1回目バッチ及び第n回目バッチのバッチ毎の推定形状線を導出し、これら導出された2本の推定形状線の値をそれぞれ格納する構成であってもよい。
かかる構成によれば、炉半径の落下位置を変えながら炉壁側への装入物が装入されるか否かが高炉の操業を行う作業者によって入力され又は高炉の制御部等から伝達されることによって、表面プロフィールに即した形状の推定形状線をより短時間で導出できるように前記推定形状線導出部で用いられる連続関数の切り換えが行われる。
尚、前記高炉装入物の層厚分布測定装置には、前記所定位置の炉半径における前記装入物の層上面形状を計測し、この計測によって得られた計測値を前記推定形状線導出手段に伝達する計測手段がさらに備えられてもよい。
以上より、本発明によれば、装入物の炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を短時間で精度よく得ることができる高炉装入物の層厚分布測定方法、及びこの方法を用いた高炉装入物の層厚分布測定装置を提供することができる。
以下、本発明の第1実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
高炉装入物の層厚分布測定装置(以下、単に「測定装置」とも称する。)は、高炉内にコークスや鉱石等の装入物を装入するバッチ(装入物の高炉内への装入単位)をN回(但し、Nは自然数、且つ1<N)繰り返すことによって高炉内に積層された装入物のうち、第N回目バッチの装入物が形成する層における炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を測定する装置である。この層厚分布は、装入物の堆積層を適切な形状に維持して高炉の操業を安定維持させるために用いられる。
具体的には、測定装置は、図1に示されるように、計測手段12と層厚分布導出手段20と出力手段14とを備える。
計測手段12は、所定位置の炉半径における表面プロフィールを計測し、この計測によって得られた計測値を出力信号によって層厚分布導出手段20に送信(伝達)するものであり、本実施形態においては、いわゆるマイクロ波プロフィールメーターが用いられている。この計測手段12は、図2にも示されるように、炉外から炉壁を貫通するように挿入された計測ロッド12aを有し、その先端に計測部12bが設けられる。そして、この計測ロッド12a先端の計測部12bが炉の所定位置の炉半径に沿って往復動し、その先端(計測部)12bから照射したマイクロ波の反射波に基づいて、装入物の層上面の高さ(プロフィール深度)が計測される。尚、計測手段12は、本実施形態においては測定装置10に設けられているが、例えば、高炉にマイクロ波プロフィールメーターが既に設けられている場合には、これを当該測定装置10の計測手段12として用いてもよい。
層厚分布導出手段20は、第N−1回目バッチと第N回目バッチとの各バッチにおいて計測手段12での表面プロフィールの計測によって得られた計測値に基づいて第N回目バッチの装入物の層厚の炉半径方向における分布(層厚分布)を導出するものであり、関数記憶部21と体積記憶部22と推定形状線導出部23と位置補正部24と層厚分布導出部25とを有する。
関数記憶部21は、第1の連続関数F1を格納する。この第1の連続関数F1は、所定位置の炉半径における表面プロフィールを擬制するための推定形状線50を規定するためのもので、この推定形状線50は、曲線を有する線として規定される。尚、本実施形態において、推定形状線50を規定する前記の線とは、直線部と曲線部とを有し、両端を有する有限な長さの線のことをいう。
この第1の連続関数F1は、過去の実績データ等の多数の表面プロフィールのデータを解析した結果、得られたものであり、その実績データ等には、炉壁近傍においては炉半径方向の落下位置を変えながら装入物が装入され、炉中心部においては装入された装入物が盛上るように中心装入される操業状態を前提としたものが用いられる。具体的には、前記の操業状態の高炉内では、何れの表面プロフィールにおいても、所定位置の炉半径における表面プロフィールが曲線を有する線(推定形状線)で擬制されると、この線の中に、炉壁近傍の水平若しくは略水平な直線部分と、この直線部分の炉中心側に位置し、炉中心に向かって一定の下り勾配となる傾斜部分と、炉中心において上方に膨出するような曲線部分とが現れる傾向があるのに着目して設定された関数である。
このように設定された第1の連続関数F1は、炉中心軸をY軸、所定位置の炉半径方向をX軸とするXY平面上で表される関数であり、この第1の連続関数F1が規定する推定形状線50は、図3にも示されるように、直線部52、傾斜部54、これら直線部52と傾斜部54とを滑らかに接続する接続曲線部53、及び中心曲線部55を有する。ここで、直線部52とは、第1の連続関数F1によって規定される線(推定形状線)50のうちの炉壁近傍に位置し、水平若しくは略水平方向の直線となる部位であり、傾斜部54とは、第1の連続関数F1によって規定される線のうちの直線部52よりも炉中心側に位置し、炉中心に向かって一定の下り勾配の直線となる部位であり、接続曲線部53とは、第1の連続関数F1のうちの直線部52と傾斜部54との間に位置し、直線部52の炉中心側端部(図3においては左側端部)と傾斜部54の炉壁側端部(図3においては右側端部)とを滑らかに接続する曲線となる部位であり、中心曲線部55とは、第1の連続関数F1のうちの炉中心部に位置し、上方に膨出する曲線となる部位である。そして、直線部52の勾配や長さ、傾斜部54の勾配や長さ、接続曲線部53の形状、及び中心曲線部55の形状等は、表面プロフィール毎に異なるため決まっていないが、計測手段12によって表面プロフィールを計測して得た複数の計測値に基づいて第1の連続関数F1の係数が算出されることにより、前記の直線部52の勾配や長さ、傾斜部54の勾配や長さ、接続曲線部53の形状、及び中心曲線部55の形状等がそれぞれ決定され、実際の表面プロフィールに近似した推定形状線50を得ることができる。
詳細には、第1の連続関数F1は、X軸方向に沿って複数の関数が連なることで規定されている。これら複数の関数は、それぞれ係数及びX軸方向の範囲が未定で且つ隣接する関数同士の境界において連続するように設定されている。本実施形態においては、X軸に沿って炉壁から炉中心側に向かって順に並ぶ第1の一次関数f11、第1の曲線関数f21、第2の一次関数f12、及び第2の曲線関数f22により規定されている。そして、第2の曲線関数f22を除く各関数、即ち、第1の一次関数f11、第1の曲線関数f21及び第2の一次関数f12は、各境界位置r1,r2において微分可能となるように関数同士が接続されている。
第1の一次関数f11は、当該関数f11によって規定される線が直線部52に相当する直線となる関数であり、第1の曲線関数f21は、当該関数f21によって規定される線が接続曲線部53に相当する曲線となる関数であり、第2の一次関数f12は、当該関数f12によって規定される線が傾斜部54に相当する直線となる関数であり、第2の曲線関数f22は、当該関数f22によって規定される線が中心曲線部55に相当する曲線となる関数である。
各関数f11,f12,f21,f22をより具体的に示すと、第1の一次関数f11は、
y=e1x+f1(以下、単に「式(10)」とも称する。)
で表され、第2の一次関数f12は、
y=e2x+f2(以下、単に「式(12)」とも称する。)
で表される。また、第1の曲線関数f21は、
y=(−1/a)・log|cos(ax+b)|+c(以下、単に「式(11)」とも称する。)
で表され、第2の曲線関数f22は、
y=αx2+βx+γ(以下、単に「式(13)」とも称する。)
で表される。尚、a,b,c,e1,e2,f1,f2,α,β,γは、係数である。
尚、以下では、前記所定位置の炉半径(X軸)において、直線部52と接続曲線部53との境界位置をr1、接続曲線部53と傾斜部54との境界位置をr2、傾斜部54と中心曲線部55との境界位置をr3とする。
体積記憶部22は、高炉の制御部からの出力信号等によって伝達された各バッチにおいて高炉内へ装入された装入物全体の体積の値(体積情報)を格納する部位である。
推定形状線導出部23は、関数記憶部21に格納されている第1の連続関数F1を取得すると共に、第N−1回目バッチと第N回目バッチとの各バッチの計測値に基づいて第1の連続関数F1の係数をそれぞれ算出し、第N−1回目バッチと第N回目バッチとのバッチ毎の推定形状線50n−1,50n(図5(b)参照)を導出し、これら導出された2本の推定形状線50n−1,50nの値をそれぞれ格納する部位である。尚、本実施形態における第1の連続関数F1の係数の算出とは、第1の連続関数F1を規定する各関数f11,f12,f21,f22の係数及び各関数f11,f12,f21,f22のX軸方向の範囲とを求めることをいう。
位置補正部24は、体積記憶部22からこの体積記憶部22に格納された第N回目バッチの装入物全体の体積の値を取得すると共に、この体積に基づいて第N−1回目バッチの推定形状線50n―1と第N回目バッチの推定形状線50nとの間隔を補正する部位である。具体的に、位置補正部24は、推定形状線導出部23に格納された2本の推定形状線50n−1,50nを炉中心軸が回転中心となるように回転させて推定表面プロフィールをそれぞれ求めた場合に、両推定表面プロフィールに挟まれた空間の体積が前記体積記憶部22から取得した装入物全体の体積と等しくなるような間隔で、推定形状線50nの下方に推定形状線50n―1が位置するように推定形状線50n−1を引き下げる(補正する)。尚、本実施形態では、位置補正部24は、推定形状線50n―1を引き下げることにより2本の推定形状線50n―1,50nの間隔を調節するよう構成されるが、これに限定されず、2本の推定形状線50n―1,50nの少なくとも一方を補正することにより前記間隔を調節するように構成されていればよい。
層厚分布導出部25は、第N回目バッチの装入物における炉中心から炉壁までの炉半径方向に沿った層厚分布を導出し、この導出された層厚分布の値を出力信号によって出力手段14に送信(伝達)する部位であり、その層厚分布は、位置補正部24において補正された第N−1回目バッチと第N回目バッチとの各推定形状線50n―1,50nにおける炉半径方向に沿った各位置での上下間隔に基づいて導出される。
出力手段14は、層厚分布導出部25から送信された出力信号を受信し、これを外部に出力するためのものである。本実施形態においては、出力手段14として、CRTディスプレイが用いられる。しかし、これに限定される必要はなく、FPD等の他の表示手段であってもよく、印字手段等であってもよい。また、これらを組み合わせたものであってもよい。
本実施形態に係る測定装置10は、以上の構成からなり、次に、この測定装置10の作用について図4に基づいて説明する。
計測手段12によって所定の炉半径における第N−1回目バッチの表面プロフィールが計測され、この計測によって得られた計測値が層厚分布導出手段20(推定形状線導出部23)に出力信号によって送信される(ステップ1)。本実施形態においては、所定位置の炉半径(X軸)に沿って、炉壁から10cm間隔で炉中心に向って計測が行われる。このとき、高炉の炉半径が3.675mであるため、X軸上に等間隔に38箇所の層上面の高さの計測値(深度データ)が得られる(図5(a)及び図5(b)参照)。
前記出力信号を受信した推定形状線導出部23は、この出力信号によって得た計測値に関数記憶部21に格納されている第1の連続関数F1(図3照)を当て嵌めることで、当該第1の連続関数F1の係数を導出する(ステップ2)。このとき、第1の連続関数F1を規定する全ての関数f11,f12,f21,f22における係数及びX軸方向の範囲が前記の計測値に基づいて以下のように算出される。
第1の連続関数F1が前記の計測値と最もよく合うように、第1の連続関数F1の係数(パラメータ)の値が決定される。具体的には、任意の計測点の炉半径位置をXiとし、その炉半径位置における実際の表面プロフィールの計測値をYiとし、炉半径Xにおける第1の連続関数F1をY=F1(X)とすると、
Σ{Yi−F1(Xi)}2
が最小になるように、第1の連続関数F1のパラメータ(上記の式(10)の係数e1,f1、上記の式(11)の係数a,b,c、上記の式(12)の係数e2,f2、及び上記の式(13)の係数α,β,γ)とその関数のX軸方向の範囲(直線部52と接続曲線部53との境界位置r1、接続曲線部53と傾斜部54との境界位置r2、傾斜部54と中心曲線部55との境界位置r3)とが非線形最適化手法の一つである最急降下法により同時に求められる。このように、最急降下法が用いられることで、全ての関数f11,f12,f21,f22における係数と各関数が定義されるX軸方向の範囲とを容易に求めることができる。
推定形状線導出部23は、このようにして得られた各関数f11,f12,f21,f22の係数及び前記X軸方向における範囲が代入された、即ち、係数が決定された第1の連続関数F1を第N−1回目バッチの推定形状線50n―1として格納する。
尚、これらステップ1及び2は、例えば、以前の層厚分布の測定のとき等において、既に第N−1回目バッチの推定形状線50n―1が導出され、推定形状線導出部23に格納されている場合には省略される。即ち、この場合、層厚分布の測定は以下のステップ3から始まる。
計測手段12によって、前記の第N−1回目バッチと同様に、第N回目バッチの表面プロフィールが計測され、この計測によって得られた計測値が層厚分布導出手段20(推定形状線導出部23)に送信される(ステップ3)。
前記出力信号を受信した推定形状線導出部23は、前記の第N−1回目バッチと同様に、この出力信号によって得た計測値に関数記憶部21に格納されている第1の連続関数F1(図3照)を当て嵌めることで、当該第1の連続関数F1の係数を導出し、この導出された第1の連続関数F1を第N回目バッチの推定形状線50nとして格納する(ステップ4)。
このように第N−1回目バッチの推定形状線50n―1と第N回目バッチの推定形状線50nとが導出され、推定形状線導出部23にそれぞれ格納されると、位置補正部24は、体積記憶部22から第N回目バッチの装入物全体の体積の値を取得すると共に、推定形状線導出部23にその値が格納された2本の推定形状線50n−1,50nの間隔を補正する(ステップ5)。具体的には、前記2本の推定形状線50n−1,50nを炉中心軸(Y軸)が回転中心となるように回転させて推定表面プロフィールをそれぞれ求めた場合に、両推定表面プロフィールに挟まれた空間の体積が体積記憶部22から取得した第N回目バッチの装入物全体の体積と等しくなるような間隔で、第N回目バッチの推定形状線50nの下方に第N−1回目バッチの推定形状線50n―1が位置するように、前記2本の推定形状線50n−1,50nの間隔を補正する。本実施形態においては、前記のように第N−1回目バッチの推定形状線50n−1を引き下げることにより、前記2本の推定形状線50n−1,50nの間隔を補正する(図5参照)。
このように位置補正部24において前記2本の推定形状線50n−1,50nの間隔が補正されると、次に、この第N−1回目バッチと第N回目バッチとの各推定形状線50n−1,50nにおけるX軸に沿った各位置での上下間隔に基づいて、層厚分布導出部25が第N回目バッチの装入物における炉中心から炉壁までのX軸(炉半径方向)に沿った層厚分布を導出し、この層厚分布の値(層厚分布情報)を出力信号によって出力手段14に送信する(ステップ6)。
この出力信号を受信した出力手段14は、第N回目バッチにおける層厚分布を層厚分布情報として表示する(ステップ7)。この表示に基づいて、高炉の操業を行う作業者は、迅速且つ的確に第N回目バッチ(最上層)の装入物の炉半径方向における層厚分布を的確に把握することが可能となる。
このように層厚分布情報が出力手段14によって表示されることにより第N回目バッチの層厚分布の測定が終了する。続けて第N+1回目バッチの層厚分布を測定する場合には、第N回目バッチの推定形状線50nが既に導出されて推定形状線導出部23に格納されているため、ステップ3から始まる(ステップ8)。
以上のような測定装置10によれば、既に操業中の高炉内で実用されている計測手段12等によって直近の連続した2バッチ(第N−1回目バッチと第N回目バッチ)の表面プロフィールにおける所定位置の炉半径に沿った複数箇所での計測値を得ることで、最上層の装入物が装入されたバッチ(第N回目バッチ)における装入物の層厚分布の精度よい測定が可能となる。そのため、従来のように数十バッチの表面プロフィールを計測して計測値の平均を求める必要がなく、短時間(連続した2バッチに要する時間)で最上層の装入物が装入されたバッチ(第N回目バッチ)の層厚分布を測定することができる。
しかも、表面プロフィールを擬制する推定形状線50を規定するために、炉壁近傍の部位が直線(第1の一次関数f11)である第1の連続関数F1を用いることによって、高炉の半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物を装入する操業状態においても実際の表面プロフィールに即した推定形状線50を導出することができ、これにより層厚分布を精度よく測定することができる。
具体的に、炉半径方向(X軸方向)の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物が装入されることにより、表面プロフィールのうち炉壁近傍において水平若しくは略水平となっている領域(いわゆるテラス部)が形成される(図2参照)。これは、装入物が炉半径方向の一定の位置に落下するように装入されると、炉半径方向に沿った装入物の層上面形状がこの位置を頂上とした山のように盛上った形状となるが、装入物が炉半径方向に沿って落下位置を変えながら装入されると、炉半径方向に装入物が略均一に行き亘るため装入物の層上面形状が略平坦となるからである。このテラス部の上面形状は所定位置の炉半径においては水平若しくは略水平な略直線形状となるため、複数の関数が連なる第1の連続関数F1においてその最も炉壁側の区間に第1の一次関数f11が用いられることにより、このテラス部の形状が精度よく擬制される。このように、推定形状線50において炉壁近傍の部位52が表面プロフィールを精度よく擬制することにより層厚分布をより精度よく測定することができる。
即ち、炉中心軸を回転中心に推定形状線50を回転させて推定表面プロフィールを求めるため、推定形状線の炉壁側ほど回転させたときの誤差の生じている部位の移動距離が長くなり、これにより炉壁側の誤差ほど推定表面プロフィールに対する影響が大きく現れる。そのため、位置補正部24において、前記のような炉壁側に誤差が生じている推定形状線50n―1,50nが用いられ、上下2つの推定表面プロフィールに挟まれた空間の体積が第N回目バッチの装入物全体の体積と同一となるように第N回目バッチの推定形状線50nの下方に第N−1回目バッチの推定形状線50n―1が位置するように補正されると、前記の誤差の影響が大きく現れ、層厚分布の測定精度が低下する。従って、推定形状線50の導出において、炉壁近傍の部位が実際の表面プロフィールのテラス部の形状に即した、即ち、誤差の少ない形状となることで、連続する2バッチ(第N−1回目バッチ及び第N回目バッチ)の各推定表面プロフィールの形状、及びこれら2つの推定表面プロフィール間の間隔を精度よく導出することが可能となる。
また、第1の連続関数F1は、所定位置の炉半径において、表面プロフィールのテラス部だけでなく、このテラス部より炉中心側の部位においても表面プロフィールを精度よく擬制することができる。具体的に、所定位置の炉半径における表面プロフィールの前記テラス部より炉中心側に位置して炉中心に向って一定の下り勾配となる部位を下り勾配の直線である第2の一次関数f12が精度よく擬制し、炉中心部において、中心装入により盛上った部位を上方に膨出する曲線である第2の曲線関数f22が精度よく擬制することができる。そのため、第1の連続関数F1を用いることにより、所定位置の炉半径における炉壁から炉中心までの全範囲において実際の表面プロフィールに即した推定形状線50を得ることができる。
さらに、推定表面プロフィールの導出に推定形状線50が用いられので、表面プロフィールの計測により得られた計測値にノイズが含まれていても、これら計測値に基づいて前記層厚分布を容易且つ正確に導出することが可能となる。
具体的に、所定の炉半径における推定形状線50を規定し、複数の関数f11,f12,f21,f22が連なる第1の連続関数F1が予め設定され、複数の計測値に基づいて各関数f11,f12,f21,f22の係数及び所定位置の炉半径の範囲が算出されることにより、各計測値に含まれるノイズの大きさや量に関わらず、曲線を有する線としての推定形状線50が導出される。そして、所定位置の炉半径における表面プロフィールがこの推定形状線50で擬制されることにより、計測した層上面形状にたまたま生じた部分的な突出等(ノイズ)があったとしても、この部分的な突出等に影響されることなく精度のよい表面プロフィールが得られる。
さらに、層厚分布を直近のバッチ(第N回目バッチ)及びその前の回のバッチ(第N−1回目バッチ)において、それぞれ所定位置の炉半径における表面プロフィールが実際に計測され、その計測値(実測値)に基づいて予め設定された第1の連続関数F1を規定する各関数f11,f12,f21,f22の係数及び所定位置の炉半径の範囲が算出されることにより、当該表面プロフィールに即した精度のよい推定形状線50が導出され、これにより高炉の同一操業条件下における層厚分布の変化にも対応した層厚分布の測定が精度よく行われる。
操業中の高炉において、連続する2つのバッチ(C2バッチ(第N−1回目バッチ)とO1バッチ(第N回目バッチ))の表面プロフィールを計測手段12で計測し、この計測によって得られた計測値に基づいて、上記の第1実施形態に係る層厚分布測定方法(第1の連続関数F1で規定される推定形状線)によって層厚分布を推定した場合と、前記層厚分布測定方法を用いることなく(未処理の前記計測値を用いる方法で)層厚分布を測定した場合とを比較し、その結果を図6(a)乃至図7に示す。尚、当該実施例において、上記の第1実施形態に係る層厚分布測定方法を用いたものが「本手法」で、用いなかったものが「未処理」である。
図6(a)は、C2バッチとO1バッチとをそれぞれ1バッチずつ行い、バッチ毎に取得した計測値を未処理でXY座標上にプロットすることによって得られた表面プロフィールを示す。図6(b)は、図6(a)において用いたのと同一の計測値から本手法を用いて導出した値をXY座標上にプロットすることによって得られた表面プロフィールを示す。図6(c)は、C2バッチとO1バッチとをそれぞれ30バッチずつ行い、バッチ毎に取得した計測値を平均したものをXY座標上にプロットすることによって得られた表面プロフィールを示す。この平均した30バッチは、装入物の装入量やアーマストローク等の操業条件が一定であり、且つ炉況の変化も殆どない時期のバッチである。そのため、得られた表面プロフィールはノイズの影響が少ないと考えられる。図7は、図6(a)乃至図6(c)において示したO1バッチ(第N回目バッチ)の層厚を示している。
図7からわかるように、C2バッチとO1バットとを各1バッチずつ行い、バッチ毎に取得した計測値を未処理で用いた表面プロフィール(図6(a))の層厚は、30バッチを平均した表面プロフィール(図6(c))の層厚に対して炉半径1.775m付近の位置で大きくずれている。これに対して本手法を用いた表面プロフィール(図6(b))は、30バッチを平均した表面プロフィール(図6(c))の層厚に近似している。また、図8は、30バッチを平均した表面プロフィールの層厚に対する、前記のバッチ毎に取得した計測値を本手法で処理した場合の層厚の誤差と、未処理の場合の層厚の誤差とを示した表である。この表から本手法で処理した場合の方が未処理の場合に比べて誤差が小さくなっていることがわかる。
以上のことから、上記の層厚分布測定方法を用いることにより、数十バッチの計測を行わなければ得られなかった精度のよい層厚分布が、連続する2バッチの表面プロフィールの計測によって精度よく得られることが確認できる。
次に、本発明の第2実施形態について図9を参照しつつ説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。
本実施形態に係る測定装置110の層厚分布導出手段20は、受信部30と状態記憶部32とをさらに有する。
受信部30は、高炉の制御部等と接続され、この制御部等から送信される高炉内への新たな装入物の装入のときに炉半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物の装入が行われたか否かの情報(装入状態情報)を出力信号として受信する部位である。尚、層厚分布導出手段20は、外部から送られてくる前記装入状態情報を出力信号として受信部30で受信する構成に限定されず、装入状態情報が高炉の操業を行う作業者等によって入力部から入力される構成であってもよい。この入力部は、例えば、キーボードやタッチパネル等で構成される。
状態記憶部32は、受信部30が受信した装入状態情報を格納する部位である。また、状態記憶部32は、層厚分布導出手段20に前記入力部が設けられている場合、この入力部から入力された装入状態情報も格納可能である。
関数記憶部121には、2つの係数未定の連続関数F1,F2が格納されている。具体的には、第1実施形態同様の4つの関数f11,f12,f21,f22が連なることにより規定される第1の連続関数F1の他に、3つの関数f13,f23,f24が連なることにより規定される第2の連続関数F2が格納されている。
第2の連続関数F2は、図10にも示されるように、炉中心軸をY軸、所定位置の炉半径方向をX軸とするXY平面上で表される関数であり、炉壁曲線部51、傾斜部54、及び中心曲線部55を有する。ここで、炉壁曲線部51とは、第2の連続関数F2によって規定される線のうちの炉壁近傍に位置し、上方に膨出する曲線となる部位であり、中心曲線部55とは、第2の連続関数F2のうちの炉中心部に位置し、上方に膨出する曲線となる部位であり、傾斜部54とは、第2の連続関数F2によって規定される線のうちの炉壁曲線部51と中心曲線部55との間に位置し、炉中心に向かって一定の下り勾配の直線となる部位である。そして、第1実施形態同様、炉壁曲線部51の形状、傾斜部54の勾配や長さ、及び中心曲線部55の形状等は、表面プロフィール毎に異なるため決まっていないが、計測手段12によって表面プロフィールを計測して得た複数の計測値に基づいて第2の連続関数F2の係数が算出されることによりそれぞれが決定され、実際の表面プロフィールに近似した推定形状線150を得ることができる。
詳細には、第2の連続関数F2は、X軸方向に沿って複数の関数が連なることで規定される。この第2の連続関数F2は、X軸に沿って炉壁から炉中心側に向かって順に並ぶ第3の曲線関数f23、第3の一次関数f13、及び第4の曲線関数f24により規定されている。そして、第3の一次関数f13と第3の曲線関数f23とは、その境界位置r4において微分可能となるように接続されている。
第3の曲線関数f23は、当該関数f23によって規定される線が炉壁曲線部51に相当する曲線となる関数であり、第3の一次関数f13は、当該関数f13によって規定される線が傾斜部54に相当する直線となる関数であり、第4の曲線関数f24は、当該関数f24によって規定される線が中心曲線部55に相当する曲線となる関数である。
各関数f13,f23,f24をより具体的に示すと、第3の一次関数f13は、
y=e11x+f11(以下、単に「式(110)」とも称する。)
で表される。また、第3の曲線関数f23は、
y=(−1/a1)・log|cos(a1x+b1)|+c1(以下、単に「式(111)」とも称する。)
で表され、第4の曲線関数f24は、
y=α1x2+β1x+γ1(以下、単に「式(113)」とも称する。)
で表される。尚、a1,b1,c1,e11,f11,α1,β1,γ1は、係数である。
以下では、前記所定位置の炉半径(X軸)において、炉壁曲線部51と傾斜部54との境界位置をr4、第2の傾斜部と中心曲線部との境界位置をr5とする。
推定形状線導出部123は、状態記憶部32に格納された装入状態情報(炉半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物の装入が行われたか否かの情報)に基づいて、計測した表面プロフィールに即した形状の推定形状線50(又は150)をより短時間で導出できるように推定形状線50(又は150)の導出に用いられる連続関数(第1の連続関数F1と第2の連続関数F2と)の切り換えを行い、選択された第1の連続関数F1又は第2の連続関数F2の何れか一方の係数を算出する。そして、推定形状線導出部123は、この算出された係数を代入した連続関数F1又はF2を格納する。
本実施形態に係る測定装置110は、以上の構成からなり、次に、この測定装置110の作用について図11に基づいて説明する。
まず、第N−1回目バッチにおいて高炉内に新たな装入物が装入されたときに、この高炉の制御部から出力信号として送信される装入状態情報(炉半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物の装入が行われたか否かの情報)を層厚分布導出手段20の受信部30が受信し、この受信した装入状態情報が状態記憶部32に格納される(ステップ0)。
一方、計測手段12によって第N−1回目バッチの装入物の所定の炉半径における表面プロフィールが計測され、この計測によって得られた計測値が層厚分布導出手段20(推定形状線導出部123)に出力信号によって送信される(ステップ1)。本実施形態においては、炉半径に沿った落下位置を変えながら炉壁側へ装入物が装入された場合には、第1実施形態同様、X軸上において等間隔に38箇所の層上面の高さが計測され(図6(b)参照)、炉半径の落下位置を変更せずに炉壁側へ装入物が装入された場合には、X軸上において等間隔に26箇所の層上面の高さが計測される(図12参照)。
尚、ステップ0とステップ1とは順に行われてもよく並行に行われてもよい。また、ステップ1において、X軸上の計測点の数は、炉半径の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物が装入されるか否かによって変更される必要はないが、導出される層厚分布がより正確となるため多い方が好ましい。
計測手段12からの出力信号を受信した推定形状線導出部123は、状態記憶部32に格納された第N−1回目バッチの装入状態情報を取得し、この情報に基づいて前記出力信号によって得た計測値に関数記憶部121に格納されている第1の連続関数F1(図3参照)又は第2の連続関数F2(図10参照)を当て嵌めることで、連続関数F1又はF2の係数を導出する(ステップ2a)。
具体的には、推定形状線導出部123は、状態記憶部32に格納された第N−1回目バッチの装入状態情報が炉半径方向に沿って落下位置を変えながら炉壁側へ装入物の装入が行われた情報である場合には、計測手段12の計測によって得た計測値に基づいて、第1の連続関数F1の係数を第1実施形態同様に最急降下法によって算出し、この係数が代入された第1の連続関数F1を第N−1回目バッチの推定形状線50として格納する。一方、推定形状線導出部123は、状態記憶部32に格納された装入状態情報が炉半径方向の落下位置を変えずに炉壁側へ装入物の装入が行われた情報である場合には、計測手段12によって得た計測値に基づいて、第2の連続関数F2の係数を前記最急降下法によって算出し、この係数が代入された第2の連続関数F2を第N−1回目バッチの推定形状線150として格納する。尚、本実施形態においては、第N−1回目バッチ(C2バッチ)では炉半径方向の落下位置を変えながら装入物が装入され、第N回目バッチ(O1バッチ)では炉半径方向の落下位置を変えずに装入物が装入される(図12参照)。
次に、第N回目バッチにおいて高炉の制御部から出力信号として送信される装入状態情報を層厚分布導出手段20の受信部30が受信し、この受信した装入状態情報が状態記憶部32に格納される(ステップ3a)。一方、計測手段12によって第N回目バッチの表面プロフィールが計測され、この計測によって得られた計測値が層厚分布導出手段20(推定形状線導出部123)に送信される(ステップ3)。
計測手段12からの出力信号を受信した推定形状線導出部123は、第N−1回目バッチ同様、状態記憶部32に格納された第N回目バッチの装入状態情報に基づいて、前記出力信号によって得た計測値に関数記憶部22aに格納されている第1の連続関数F1(図3参照)又は第2の連続関数F2(図10参照)を当て嵌めることで、当該連続関数F1又はF2の係数を導出する。そして、推定形状線導出部123は、導出された係数を第1の連続関数F1又は第2の連続関数F2に代入し、これを第N回目バッチの推定形状線50又は150として格納する(ステップ4a)。
このように第N−1回目バッチの推定形状線50n―1と第N回目バッチの推定形状線150nとが導出され、推定形状線導出部123にそれぞれ格納されると、第N−1回目バッチ同様に(図11のステップ2a)、位置補正部24は、体積記憶部22から第N回目バッチの装入物全体の体積の値を取得すると共に、推定形状線導出部123にその値が格納された2本の推定形状線50n−1,150nの間隔を補正する(ステップ5:図12参照)。
次に、第N−1回目バッチと第N回目バッチとの各推定形状線50n−1,150nにおけるX軸に沿った各位置での上下間隔に基づいて、層厚分布導出部25が第N回目バッチの装入物における炉中心から炉壁までのX軸に沿った層厚分布を導出し、この層厚分布の値を出力信号によって出力手段14に送信する(ステップ6)。そして、この出力信号を受信した出力手段14が第N回目バッチにおける層厚分布を層厚分布情報として表示し(ステップ7)、層厚分布の測定が終了する。尚、第1実施形態同様、続けて第N+1回目バッチの層厚分布を測定する場合には、ステップ3aから始まる(ステップ8)。
以上のように高炉等から取得し、状態記憶部32に格納された装入状態情報に基づいて、推定形状線導出部123が推定形状線50又は150を導出するときに用いる連続関数F1又はF2を切り換える構成とすることで、炉半径方向の落下位置を変えずに炉壁側へ装入物を装入するバッチにおいても、計測手段12で得た計測値に基づいて第2の連続関数F2を規定する各関数の係数及び所定位置の炉半径における範囲をそれぞれ導出することによって該当バッチの表面プロフィールに即した形状の推定形状線150を得ることが可能となる。
具体的に、炉半径方向の落下位置を変えずに装入することで、所定位置の炉半径(X軸)において装入物は落下位置を頂上とする山のように盛上った形状となるため、テラス部が形成され難い。そのため、炉壁近傍の部位が山のように盛上った形状(上方に膨出した曲線(第3の曲線関数f23))である第2の連続関数F2を用いることによって、この表面プロフィールにおける炉壁近傍の部位の形状(山のように盛上った形状)を精度よく擬制することができる。即ち、テラス部が形成されない場合には、炉壁近傍が直線となる第1の連続関数F1を用いるのではなく、炉壁近傍が上方に膨出する曲線となる第2の連続関数F2を用いることにより、表面プロフィールの形状を精度よく擬制することができる。従って、炉半径方向の落下位置を変えずに炉壁側へ装入物が装入されるバッチにおいても、前記の炉壁近傍が山のように盛上った部位を有する表面プロフィールに近似した推定形状線150を導出することができ、これにより前記層厚分布を精度よく測定することが可能となる。
また、第1の一次関数f11、第1の曲線関数f21、第2の一次関数f12、及び第2の曲線関数f22により規定される連続関数(第1の連続関数)F1を用いるよりも第3の曲線関数f23、第3の一次関数f13、及び第4の曲線関数f24により規定される連続関数(第2の連続関数)F2を用いた方が連続関数を規定する関数の数が少ないため計算が簡素化されて容易になり、炉半径方向の落下位置を変えながら炉壁側へ装入物を装入するか否かに関わらず第1の連続関数F1を用いて推定形状線50が導出される場合(第1実施形態の測定装置100)に比べ、容易且つ短時間で実際の表面プロフィールに即した形状の推定形状線150を得ることが可能となる。
尚、本発明に係る測定装置10,110は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、本実施形態においては、第1の連続関数F1は、上記の式(10)乃至(13)が炉壁から炉中心側に順に連なることにより規定されているが、これに限定される必要はない。具体的に、第1の連続関数F1において、接続曲線部53と中心曲線部55とを規定する各関数は、当該関数によって規定される曲線の接線とx軸とのなす角におけるx軸方向の位置に対する角度変化率が一定の関数であればよい。例えば、第1の連続関数F1において、接続曲線部53を規定する関数と中心曲線部55を規定する関数とが逆、即ち、接続曲線部53を規定する関数が式(13)で中心曲線部55を規定する関数が式(11)であってもよく、接続曲線部53を規定する関数と中心曲線部55を規定する関数とが同じ関数、即ち、接続曲線部を規定する関数と中心曲線部を規定する関数とが共に式(11)、又は式(13)であってもよい。また、第2の連続関数F2においても、第1の連続関数F1と同様に、炉壁曲線部51と中心曲線部55とを規定する各関数は、当該関数によって規定される曲線の接線とx軸とのなす角におけるx軸方向の位置に対する角度変化率が一定の関数であればよい。
また、連続関数を規定する関数の数は、3つ又は4つに限定されず、5つ以上であってもよい。
また、高炉への装入物の装入において、中心装入が行われない高炉操業が行われた場合、中心曲線部55(第2の曲線関数又は第4の曲線関数)がない推定形状線を用いて、上記同様の手法に適用して層厚分布を得ることができる。即ち、前記中心装入が行われない場合、推定形状線を規定する連続関数は、X軸に沿って炉壁から炉中心側に向って順に並ぶ第1の一次関数f11,第1の曲線関数f21及び第2の一次関数f12により規定され、又は第3の曲線関数f23及び第3の一次関数f13により規定される。
第1実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置のブロック図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置の計測手段の概略図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置における第1の連続関数とこの第1の連続関数を規定する複数の関数とを示す図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置における動作のフローを示す図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置の位置補正部での補正を示す図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置での層厚分布の測定において、(a)は実測値の表面プロフィールを示し、(b)は当該実施形態に係る層厚分布推定方法で求めた表面プロフィールを示し、(c)は30バッチの平均の表面プロフィールを示す図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置での層厚分布の測定において、図6(a)乃至図6(c)における各プロフィールに基づく層厚を示す図である。
図7での層厚の誤差を示す図である。
第2実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置のブロック図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置における第2の連続関数とこの第1の連続関数を規定する複数の関数とを示す図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置における動作のフローを示す図である。
同実施形態に係る高炉装入物の層厚分布測定装置の位置補正部での補正を示す図である。
符号の説明
10 測定装置
12 計測手段(マイクロ波プロフィールメーター)
14 出力手段
20 層厚分布導出手段
21 関数記憶部
22 体積記憶部
23 推定形状線導出部
24 位置補正部
25 層厚分布導出部
50 推定形状線
50n−1 第N−1回目バッチの推定形状線
50n 第N回目バッチの推定形状線
51 炉壁曲線部
52 直線部
53 接続曲線部
54 傾斜部
55 中心曲線部
F1 第1の連続関数
f11 第1の一次関数
f12 第2の一次関数
f21 第1の曲線関数
f22 第2の曲線関数