JP5278007B2 - ヒューズの温度推定方法及びヒューズ装置 - Google Patents
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Description
この車両用電源供給装置は、異常検出手段が電源線の異常を検出するに応じて、演算手段が、流出電流及び流入電流の差電流とサンプリング周期とに基づいてジュール積分量を求める。
ところが、ある電流値が継続的に流れた場合、実際のヒューズでは、ジュール熱の一部が外部へ放出されるので、時間の経過に従って温度が上昇して行くことになる。それに対して、上述した車両用電源供給装置のように、ヒューズに代えて、電源線開閉手段で電流を遮断する場合、ジュール熱の外部への放出分を考慮しないので、サンプリング周期より充分長い間隔でチャタリングショートが発生している場合、実際のヒューズより電流を遮断するのが早くなるという問題がある。
第2,3発明では、第1発明に係るヒューズの温度推定方法により、電線に仮想接続されたヒューズの温度を推定できるヒューズ装置を提供することを目的とする。
先ず、ヒューズエレメントに流れる電流によるヒューズエレメントの発熱量、ヒューズエレメントからヒューズフレームへの熱抵抗、並びに熱抵抗及びヒューズエレメントの熱容量を乗算して求めた温度上昇に係る第1の時定数に基づく温度上昇分を算出する。
次に、ヒューズエレメントの発熱量、ヒューズフレームから電線及び外気への合成熱抵抗、並びにこの合成熱抵抗及びヒューズフレームと電線と外気との合成熱容量を乗算して求めた温度上昇に係る第2の時定数に基づく温度上昇分を算出する。
次に、ヒューズの周辺の温度と、算出した前記2つの温度上昇分とを加算して、ヒューズの温度を算出する。
図1は、本発明に係るヒューズ装置の実施の形態の要部構成を示すブロック図である。
このヒューズ装置は、バッテリ等の電源3に接続された電線9が、スイッチ接点4及びIPS(Intelligent Power Switch)5を通じて、負荷8のプラス端子に接続され、負荷8のマイナス端子は接地されている。スイッチ接点4はスイッチ2のオン/オフ操作によりオン/オフされ、その操作情報はマイクロコンピュータ等で構成された制御部1に与えられる。
制御部1は、温度検出器7から与えられた温度値、及び電流検出手段6から与えられた電流値に基づき、IPS5をオン/オフ制御する。
このヒューズは、車両等で一般的に使用されているものであり、U字形に折り曲げられた線状のヒューズエレメント11の両端部が、それぞれ棒状のヒューズフレーム10aの中間部に接続されている。2つのヒューズフレーム10aの各一端は、コネクタのオス部として形成されており、それぞれコネクタの鞘状のメス部として形成されたヒューズフレーム10bに嵌入される。
図2に示すようなヒューズ及び電線9に電流を流して、ヒューズエレメント11の温度を測定すると、ヒューズエレメント11の温度θ(t)は、(1)式のように、短い時定数を有する一次遅れ式と長い時定数を有する一次遅れ式との和で表現できると推定された。
ここでは、ヒューズエレメント11(He)に発生した熱量Q0 及び熱量Q0 からの移動熱量を電流量に、熱の伝え難さを示す熱抵抗を抵抗に、熱の容量をコンデンサにそれぞれ譬えている。
ヒューズエレメント11から外気への熱抵抗を抵抗Re 、ヒューズエレメント11からヒューズフレーム10a,10bへの熱抵抗を抵抗Ref、ヒューズフレーム10a,10bから電線9及び外気への合成熱抵抗を抵抗Rf とする。また、ヒューズエレメント11の熱容量をコンデンサCe 、ヒューズフレーム10a,10b、電線9及び外気の合成熱容量をコンデンサCf とする。
ここで、抵抗Re に流れる電流量Q1 、コンデンサCe に流れる電流量Q2 、抵抗Refに流れる電流量Q3 、抵抗Rf に流れる電流量Q4 、コンデンサCf に流れる電流量Q5 とすると、(2)式及び(3)式の関係が成立する。また、抵抗Re とコンデンサCe とにかかる電圧が等しく、抵抗Rf とコンデンサCf とにかかる電圧が等しいから、(4)式及び(5)式の関係が成立する。更に、抵抗Re ,Ref,Rf にそれぞれ流れる電流量Q1 ,Q3 ,Q4 の関係から、(6)式の関係が成立する。
先ず、(1)式に示すヒューズの温度式を作成する(S1)。
次に、(2)〜(6)式から、電流量Q2 ,Q3 ,Q5 を消去して、(7)式の電流量Q1 に関する微分方程式、及び(8)式の電流量Q4 に関する微分方程式からなる連立微分方程式を作成して、(9)式に示すように行列表示する(S3)。
以下、必要に応じて、(9)式の行列表示された連立微分方程式の係数行列の各要素を、(10)式に示すように、a,b,c,dで置換えて示す。
尚、(1)(21)式の係数比較から、λ1 t=−t/τ1 、λ2 t=−t/τ2 である。また、(16)(17)式から、τ1 =RefCe 、τ2 =Rf Cf とすることができる。
熱抵抗Refは、実験で得たデータから算出する。
合成熱抵抗Rf は、実験で得たデータ、又は電線への熱抵抗として(外気その他への熱抵抗は充分大きい)JASO(自動車技術協会)規格の電線の導体/被覆の外径データから算出する。
合成熱容量Cf は、電線の熱容量として(外気その他の熱容量は充分小さい)JASO(自動車技術協会)規格の電線の導体/被覆の質量及び比熱のデータから算出する。
(24)式の周辺の温度Ta(t)には、温度検出器7(図1)が検出した温度を使用し、ヒューズエレメント11に流れる電流I(t)には、電流検出手段6(図1)が検出した電流値を使用する。ヒューズエレメント11の抵抗値r(T)は、電流を遮断するときの温度における抵抗値を使用する。
ヒューズ装置の制御部1(図1)には、(24)式を離散化した(25)〜(28)式を記憶させておき、IPS5のオン/オフ制御の為の温度算出に使用する。尚、(25)(26)式におけるΔtは、制御部1のサンプリング周期を表す。
図5(a)では、先ず、定格20Aのヒューズの合成熱抵抗Rf 、熱抵抗Ref、熱容量Ce 、及び合成熱容量Cf を実測又は実験により求める。
実験で得たデータから算出して、熱抵抗Ref=62(K/W)を得た。
ヒューズエレメントの比熱及び重さを乗算して、熱容量Ce =0.00712(J/gK)を得た。
電線の導体/被覆の質量及び比熱のデータから算出して、合成熱容量Cf =3.29(J/gK)を得た。
尚、ここでは、電線の長さは14cmとした。
また、ここでは、ヒューズの温度式(24)(25)〜(28)に適用する電線の長さを14cmとすることにより、ヒューズとヒューズ装置とで、Rf ,Ref,τ1 ,τ2 の各値が比較的に一致することが分かる。
ここでは、定格20Aのヒューズに24Aの電流を流し、その流し始めから溶断時を含むヒューズエレメントの温度推移を測定した。次いで、図5(a)の場合と同様にして、Rf ,Ref,Ce ,Cf の各値を調整しながら温度推移を算出した。
また、ここでも、ヒューズの温度式(24)(25)〜(28)に適用する電線の長さを14cmとすることにより、ヒューズとヒューズ装置とで、Rf ,Ref,τ1 ,τ2 の各値が比較的に一致することが分かる。
図6(a)では、先ず、図5(a)の場合と同様にして、Rf =19.7(K/W)、熱抵抗Ref=63(K/W)、熱容量Ce =0.00712(J/gK)、合成熱容量Cf =6.39(J/gK)を得た。
尚、ここでは、電線の長さは18cmとした。
また、ここでは、ヒューズの温度式(24)(25)〜(28)に適用する電線の長さを18cmとすることにより、ヒューズとヒューズ装置とで、Rf ,Ref,τ1 ,τ2 の各値が比較的に一致することが分かる。
ここでは、定格20Aのヒューズに24Aの電流を流し、その流し始めから溶断時を含むヒューズエレメントの温度推移を測定した。次いで、図5(a)の場合と同様にして、Rf ,Ref,Ce ,Cf の各値を調整しながら温度推移を算出した。
また、ここでも、ヒューズの温度式(24)(25)〜(28)に適用する電線の長さを18cmとすることにより、ヒューズとヒューズ装置とで、Rf ,Ref,τ1 ,τ2 の各値が比較的に一致することが分かる。
図7では、先ず、図5(a)の場合と同様にして、Rf =22.2(K/W)、熱抵抗Ref=46(K/W)、熱容量Ce =0.00966(J/gK)、合成熱容量Cf =5.68(J/gK)を得た。
尚、ここでは、電線の長さは16cmとした。
また、ここでは、ヒューズの温度式(24)(25)〜(28)に適用する電線の長さを16cmとすることにより、ヒューズとヒューズ装置とで、Rf ,Ref,τ1 ,τ2 の各値が比較的に一致することが分かる。
このヒューズ装置の制御部1は、先ず、フラグFをリセット(=0)した(S21)後、温度検出器7が検出した周辺の温度の値を取得し(S23)、電流検出手段6が検出した電流値を取得する(S25)。次いで、スイッチ2のオン/オフ情報を取得する(S27)。
制御部1は、スイッチ2のオン/オフ情報がオンであれば(S41)、計時時間が、例えば(24)式の長い方の時定数((26)式の時定数)τ2 の3倍以上であるか否かを判定する(S43)。計時時間が3τ2 以上でなければ、温度検出器7が検出した周辺の温度の値を取得する(S23)。
制御部1は、ヒューズ推定温度が第2温度より低ければ(S45)、IPS5をオンにする(S47)。次いで、フラグをリセット(=0)し(S49)、計時を終了してリセットした(S51)後、温度検出器7が検出した周辺の温度の値を取得する(S23)。
ここで、亜鉛の溶断温度420℃を限界値とすると、(24)式において、θ(t)=420である。また、ヒューズエレメントについては、温度は420℃に収束しているものとすると、τ1 →0であり、(24)式のヒューズエレメントの温度上昇分を示す項は、(29)式に示すようになる。
(31)式のI,tに、ヒューズの溶断特性(図9)から任意に抽出した2点の各電流値及び溶断までの時間をそれぞれ代入して、変数Rf ,Refの2元連立方程式を作成する。次いで、この2元連立方程式を解くと、例えばRf =25(K/W),Ref=62(K/W)が求められる。
求めたRf =25(K/W),Ref=62(K/W),τ2 =95(s)を(31)式に適用し、改めて任意の電流値Iを代入すると、図9の「温度モデル」の溶断特性を得ることができる。
ヒューズ溶断特性のデータは、ヒューズ毎に備わっているので、それらのデータからRf ,Refを求めることができる。データからRf ,Refを求めることができれば、わざわざ実測又は実験により求める必要はなくなる。
2 スイッチ
3 電源
4 スイッチ接点
5 IPS
6 電流検出手段
7 温度検出器
8 負荷
9 電線
10a,10b ヒューズフレーム
11 ヒューズエレメント
Ce 熱容量(コンデンサ)
Cf 合成熱容量(コンデンサ)
Ref 熱抵抗(抵抗)
Rf 合成熱抵抗(抵抗)
Claims (3)
- 所定温度に達したときに溶断するヒューズエレメントと、該ヒューズエレメント及び電線を接続する為のヒューズフレームとを備えたヒューズの温度推定方法であって、
前記ヒューズの周辺の温度と、
前記ヒューズエレメントに流れる電流による該ヒューズエレメントの発熱量、該ヒューズエレメントからヒューズフレームへの熱抵抗、並びに該熱抵抗及び前記ヒューズエレメントの熱容量を乗算して求めた温度上昇に係る第1の時定数に基づき算出した温度上昇分と、
前記発熱量、前記ヒューズフレームから電線及び外気への合成熱抵抗、並びに該合成熱抵抗及び前記ヒューズフレームと電線と外気との合成熱容量を乗算して求めた温度上昇に係る第2の時定数に基づき算出した温度上昇分とを加算して、前記ヒューズの温度を算出することを特徴とするヒューズの温度推定方法。 - その周辺の温度を検出する温度検出手段と、ヒューズが接続されたと仮想した電線に流れる電流値を検出する電流検出手段と、前記温度検出手段が検出した温度、前記電流検出手段が検出した電流値、及び請求項1に記載されたヒューズの温度推定方法により、前記電線に接続されたと仮想したヒューズの温度を推定する推定手段と、該推定手段が推定した温度が所定温度を超えたか否かを判定する手段と、該手段が所定温度を超えたと判定したときに、前記電線に流れる電流を遮断する遮断手段とを備えることを特徴とするヒューズ装置。
- 前記遮断手段が前記電線に流れる電流を遮断してからの経過時間を計時する計時手段と、該計時手段が計時した時間が所定時間以上であるか否かを判定する手段と、該手段が所定時間以上であると判定したときに、前記推定手段が推定したヒューズの温度が、前記所定温度より低い第2温度より低いか否かを判定する手段とを備え、該手段が第2温度より低いと判定したときに、前記遮断手段が遮断状態から導通状態へ回復するように構成してある請求項2記載のヒューズ装置。
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